【実施例】
【0041】
以下、
図2(A)、(B)の構成概略図および
図3のフローチャートを用いて、ページデータ番号1〜2N(但し、Nは2以上の整数)の各ページデータについて角度多重記録/再生する様子を説明する。
【0042】
まず、ディスク型のホログラム記録媒体101の記録または再生のための照射がなされるよう、ホログラム記録媒体101の位置決めを行う。この位置決めにより選択された所望の一領域(選択された領域)において、ページデータ番号1〜Nの各ページデータについての角度多重の記録または再生を行う(
図2(A)参照)。
【0043】
この後、当該所望の一領域にページデータ番号N+1〜2Nの各ページデータを角度多重により追記録または追再生するには、まず、ホログラム記録媒体101の中心位置を回転軸(回転中心)102として面内で180度回転させ、さらに当該所望の一領域に光が照射されるよう直線移動手段104(
図4(B)参照)により直線移動させる。この転置作用により、ページデータ番号1〜Nの各ページデータが記録/再生された同一領域に、異なる照射光入射角度で記録/再生することができ、ページデータ番号N+1〜2Nの各ページデータについて角度多重記録/再生することができる(
図3、ステップS1)。
【0044】
すなわち、
図2(A)に示すように、SLM8から出射された信号光は、第1レンズ10を介し、入射角φにてホログラム記録媒体101の所望の一領域に照射される。一方、参照光は、入射角−θによりホログラム記録媒体101上の、上記所望の一領域(信号光照射領域)に照射される(再生時には参照光のみが照射される)。
【0045】
このとき、参照光の入射が上記直線移動方向に直交する方向からの入射とならず、また移動中および記録/再生処理中は一定方向から入射するように設定される。
【0046】
この参照光の入射角θは、例えば30度(第1レンズ10と参照光との物理的干渉やホログラム記録媒体101の表面における参照光の端面反射等の影響を考慮して決定する)の範囲において、例えば、β度づつN−1回に亘って変化するようになっており、この入射角θの変化の度に、ホログラム記録媒体101の同一領域に記録/再生処理がなされることから、結局、N回(θ
1、θ
2…θ
N)の角度多重記録/再生を行うことができるようになっている。この例において、βを0.3度とすれば、最大で101多重が可能となるから、本実施例では、N=100に設定するようにしている。
【0047】
より具体的には、ページデータ番号1のページデータをSLM8に表示し、ホログラム記録媒体101の所望の一領域に、信号光を照射するのと同時に参照光も入射角度θ
1で照射することで一つのページデータ(ページデータ番号1)をホログラムとして記録再生する(再生時には参照光のみが照射される)。次に、参照光のホログラム記録媒体101への入射角度θを0.3度減少させたθ
2にてページデータ番号2のページデータを記録/再生する。その後、参照光の入射角度を0.3度ずつ減少させながら順次ページデータを記録/再生していき、最終的に、参照光入射角度θ
Nにてページデータ番号Nすなわちページデータ番号100のページデータを記録/再生する(
図2(A)参照)。
【0048】
次に、前述したように、ホログラム記録媒体101の中心位置を回転軸(回転中心)102として面内方向で180度回転させ、さらに現在選択している記録/再生処理位置105に信号光および参照光(再生時には参照光のみ)が照射されるよう直線移動手段104によりホログラム記録媒体101を直線移動させ、ホログラム記録媒体101を転置させる(
図2(B)参照)。すなわち、A点―B点側とC点―D点側が入れ替わるよう、ホログラム記録媒体101の配置を変えることになる(
図3、ステップS2)。
【0049】
この後、ホログラム記録媒体101の上述した所望の一領域に、ページデータ番号N+1から2Nすなわちページデータ番号101からページデータ番号200について、参照光の入射角度θをθ
1からθ
Nまで変化させつつ順次記録/再生する(
図3、ステップS3)。
【0050】
この後、回転移動手段103に取り付けられたホログラム記録媒体101が回転することによりタンジェンシャル方向に移動し、また直線移動手段104が回転移動手段103とホログラム記録媒体101をラジアル方向に移動することにより、ホログラム記録媒体101の任意の位置を選択して異なる所望の一領域に記録または再生が可能である。
【0051】
なお、上記手順によりページデータ番号1〜200を記録した後において、ポストキュアと称される定着処理を行う必要がある。これは緑色LEDをホログラム記録媒体101の記録済み領域に照射することで活性化したモノマーを完全に重合させ、これ以上の反応が生じないようにするためのものである。
【0052】
図4は、本実施例におけるホログラム記録媒体101の配置を移動手段との関係で表したものであり、
図4(A)は
図2(A)に、
図4(B)は
図2(B)に、各々対応するものである。
【0053】
すなわち、まず
図4(A)に示すように、直線移動手段104によりホログラム記録媒体101が直線移動され、所望の記録領域107を信号記録/再生処理位置105に一致させ、ページデータ番号1〜Nの各ページデータの多重記録/再生を行う。次に回転移動手段103によりホログラム記録媒体101が180度に亘って回転移動される。この状態で、
図4(B)に示すように、直線移動手段104によりホログラム記録媒体101が直線移動され、上述した所望の記録領域107を信号記録/再生処理位置105に一致させ、ページデータ番号N+1〜2Nの各ページデータの多重記録/再生を行う。
【0054】
図5は、上記実施例を用いて行われるホログラム記録/再生処理において、ホログラム記録媒体101内部でのホログラムの縞角度を説明するための概念図である。ここで、ホログラムの縞角度としては、信号光中心軸のホログラム記録媒体101への入射角度φと参照光入射角度θを加算した角度の半分に相当する角度により示すものとする。
【0055】
まず、ページデータ番号1〜Nの各ページデータの記録については、
図5(A)に示すように、1〜Nまでの縞角度をもつホログラムが記録されることによりなされる。
【0056】
次に、A点―B点側とC点―D点側が180度入れ替わるよう、ホログラム記録媒体101の配置が変更される。
【0057】
これにより、ページデータ番号N+1〜2Nの各ページデータの記録について、
図5(B)に示すように、N+1〜2Nまでの縞角度をもつホログラムが記録されることによりなされる。
【0058】
これにより、2N個のホログラムはそれぞれ異なる格子ベクトルを持つ別個独立のものとなり、所望の一領域に2N個の多重記録をすることが可能となる。
【0059】
以下、本発明の実施例に係るホログラム記録/再生装置の主用光学系を
図6を参照しつつ、情報記録機能と情報再生機能に分けて説明する。
【0060】
<情報記録機能>
図6に示すように、レーザ光源(DPSS(Diode Pumping Solid State:半導体励起固体)レーザ光源)1から出射されたコヒーレントなレーザ光束(波長532nm)は、ビームエキスパンダおよび空間ノイズフィルタとして機能するスペイシャルフィルタ2を通過し、半波長板4を透過し反射ミラー5により反射された後、偏光ビームスプリッタ6により2系の光束に分岐され、それぞれ信号光(物体光:実際にはSLM(空間光変調器)8により信号光とされる)および参照光として機能せしめられる。
【0061】
上記参照光は、光束を適宜通過/遮断するためのシャッタ20を通過し、反射ミラー21により反射されてホログラム記録媒体101上の所定の領域に照射される。また、反射ミラー21は、載設台の略中心位置を回転軸として回動自在とされてなる回転器(回転移動手段)22の載設台上に設置される。具体的には、ガルバノミラーや音響光学変調素子などにより構成される。
【0062】
一方、上記信号光は、偏光ビームスプリッタ7を介してSLM8に照射される。
SLM8としては、例えば0.7型の液晶ディスプレイパネル等の反射型の液晶表示パネルが好適であるが、透過型の液晶パネルやDMD(デジタルマイクロミラーデバイス:Digital Micromirror Device)等の他のライトバルブを用いてもよい。SLM8上の各ピクセルがページデータ上の2値のデジタル情報に応じて光を通過(
図6の例では反射)/遮断することで、空間的に光を変調する。この変調処理によりページデータ情報を担持した信号光が生成される。
【0063】
SLM8として液晶表示パネルを用いているので、SLM8から出射された信号光は、入射した状態とは偏光方向が変化しており、偏光ビームスプリッタ7において反射され、シャッタ9を通過した後、第1レンズ10によって光学的にフーリエ変換されてホログラム記録媒体101へ照射される(入射角φ)。このときホログラム記録媒体101中の信号光が照射される領域へ、別角度から、上記参照光が同時に照射される(入射角θ)ので、ホログラム記録媒体101内部の体積中に干渉縞が生じ、この縞分布を屈折率分布などの形態でホログラム記録媒体101の記録領域に転写することによりホログラム記録が行われる。
【0064】
ここで、上記ホログラム記録媒体101としては、例えば、2枚のガラスディスクに厚さ1mmのフォトポリマ材料を挟んでなるものが使用される。
【0065】
なお、反射ミラー21とホログラム記録媒体101の間には、レンズ23、24が配設されている。
【0066】
また、異なるページデータをSLM8に表示させつつ、参照光のホログラム記録媒体101への入射角度θを回転器(回転移動手段)22を用いて少しずつ変化させることにより、互いに異なるページデータをホログラム記録媒体101中の同一領域へ多重記録することが可能となり、より高密度な情報格納が可能となる。なお、回転器(回転移動手段)22に対する回転移動指示および
図6には示されていないキャリッジ(直線移動手段)に対する直線移動指示は、移動制御手段110からの制御信号によりなされる(情報再生時も同じ)。
【0067】
<情報再生機能>
次に、情報再生時においては、シャッタ20を通過した参照光は、所定の参照光入射条件となるように設定して、ホログラム記録媒体101の所定の領域に照射される。なお、シャッタ9は閉じた状態とされる。
【0068】
すなわち、所望のページデータを再生する場合には、原則として、この所望のページデータを記録した情報記録時と同様の入射角度θおよび位置において、参照光をホログラム記録媒体101に入射せしめることにより、所望のページデータ情報を担持した再生光(回折光)がホログラム記録媒体101から出力され、この再生光が第2レンズ12を介してCCDカメラ14の撮像素子に入射し撮像される。
【0069】
次に、上述した実施例により信号記録が行われたホログラム記録媒体101について、信号記録がなされたときと同じ入射角度θにて参照光のみを記録領域に照射し、再生光を得て、誤り率の評価を行った。
【0070】
評価方法は、まずページデータ番号1〜Nの各ページデータの記録情報を多重再生した後に、記録時と同様にしてホログラム記録媒体101の配置を変更し、ページデータ番号N+1〜2Nの各ページデータの記録情報を多重再生した。
【0071】
再生光は第2レンズ12によりCCDカメラ14に結像されるので、これにより取得した撮像データを元データと比較し、ビット誤り率を計算した。
【0072】
ページデータ番号1〜100およびページデータ番号101〜200のページデータにおける、ビット誤り率の測定結果を
図7に示す。
図7に表わされるように、全体に亘って10
-5〜10
-4台の低いビット誤り率が得られた。すなわち、本実施例により、従来と比べて、特段の光学部品・機構部品を追加することなく多重数を倍増させることが可能となり、その誤り率も十分低い値とすることが可能となった。
【0073】
次に、ページデータ番号1〜Nの各ページデータを記録/再生後に、ページデータ番号N+1〜2Nの各ページデータを記録/再生するための直線移動量と回転移動角度について説明する。
【0074】
上述した実施例においては、直線移動をする際に、記録/再生処理位置105が回転軸102上を相対的に通過するように設定されているが、直線移動をする際に、必ずしも記録/再生処理位置105が回転軸102上を相対的に通過せず、いわゆるオフセットを持たせた状態とすることも可能である。
【0075】
図8は、このような状態を説明するものである。
【0076】
ここで、ホログラム記録媒体101の回転軸(回転中心)102を通り、直線移動軸と垂直な線を線分L0(基準線)とし、回転軸(回転中心)102と記録/再生処理位置(光照射位置)105を結ぶ線を線分L1とする。また、線分L0と線分L1がなす角をα(ただし0≦α≦90°)とし、回転軸(回転中心)102と記録/再生処理位置(光照射位置)105との距離をRとする。ページデータ番号1〜Nの各ページデータを記録/再生後、本実施例方法にて同一の記録/再生処理位置(光照射位置)105にページデータ番号N+1〜2Nの各ページデータを記録/再生するには、これら2つの多重記録/再生処理の間で2R・sinαの距離だけ
図8に示す正の直線移動方向に直線移動させるとともに、
図8に示す正の回転移動方向にψ=2αの角度だけホログラム記録媒体101を回転移動させればよい。
【0077】
前述の非特許文献1によれば、照射光の波長を488 nm、参照光と信号光の角度差を60°とした場合、厚さ1 mmのホログラム記録媒体101に対するペリストロフィック多重の選択性はおよそ2.3°であるから、この場合には、αは1°程度以上に設定する必要がある。またクロストークを低減させるという観点からはαが大きいほうが望ましく、本実施例でα=90°と最大値に設定したのはクロストークの影響を最も低減させた状態とするためである。
【0078】
なお、上記直線移動と上記回転移動は同時に行ってもよいし、一方の終了の後、他方を行うようにしてもよい。
【0079】
なお、上記実施例における、角度範囲、角度間隔、参照光入射角度の順番、多重数、光源波長およびSLMやカメラデバイスの種類等は、上記実施例で用いた条件以外の種々の態様のものを採用することが可能である。また、位相共役再生においても上記実施例と同様の構成により実施することが可能である。