特許第5694453号(P5694453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5694453電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔及びこれらを用いた電子回路の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694453
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔及びこれらを用いた電子回路の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/09 20060101AFI20150312BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20150312BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20150312BHJP
   C23F 1/18 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   H05K1/09 C
   H05K3/06 A
   C23C28/00 C
   C23F1/18
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-142701(P2013-142701)
(22)【出願日】2013年7月8日
(62)【分割の表示】特願2010-548480(P2010-548480)の分割
【原出願日】2010年1月21日
(65)【公開番号】特開2013-254961(P2013-254961A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2013年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2009-18441(P2009-18441)
(32)【優先日】2009年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX日鉱日石金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山西 敬亮
(72)【発明者】
【氏名】神永 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】福地 亮
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/087268(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/09
C23C 28/00
C23F 1/18
H05K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストを使用しエッチングにより銅の不必要部分を除去して回路形成を行う電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔であって、該圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面のエッチングされる部分及びエッチングされない部分の全ての部分に、銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を備えており、該銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層の付着量が75μg/dm2以上1000μg/dm2以下である電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔。
【請求項2】
レジストを使用しエッチングにより銅の不必要部分を除去して回路形成を行う電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔であって、該圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面のエッチングにより除去される部分及びエッチングにより除去されない部分に、銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を備えており、該銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層の付着量が75μg/dm2以上1000μg/dm2以下である電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔。
【請求項3】
エッチングにより銅の不必要部分を除去して回路形成を行う電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔であって、該圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面側に、銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を備えており、該銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層の付着量が75μg/dm2以上1000μg/dm2以下であることを特徴とする電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔(但し、圧延銅箔又は電解銅箔の回路となる部分のみに電気めっき法にて形成された貴金属皮膜を備えている銅箔を除く)。
【請求項4】
前記銅よりもエッチングレートの低い層(A)が、白金又は白金合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔。
【請求項5】
前記銅よりもエッチングレートの低い層(A)が白金合金であって、該白金合金の白金比率が50wt%を超えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔。
【請求項6】
前記銅よりもエッチングレートの低い層(A)が白金合金であって、該白金合金に含まれる合金成分が亜鉛、リン、ホウ素、モリブデン、タングステン、ニッケル、鉄又はコバルトから選ばれる少なくとも一種以上の元素であることを特徴とする請求項5に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔。
【請求項7】
前記銅よりもエッチングレートの低い層(A)の上または下に、さらに耐熱層(B)を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔。
【請求項8】
前記耐熱層(B)は、亜鉛又は亜鉛合金のいずれかからなる層であり、該亜鉛合金は、白金族元素、金、パラジウム族元素及び銀の群から選択した一種又は二種以上を合金元素として含有することを特徴とする請求項7に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔。
【請求項9】
前記耐熱層(B)の上に、さらにクロム層若しくはクロメート層及び/又はシラン処理層を備えていることを特徴とする請求項7〜8のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔。
【請求項10】
前記銅よりもエッチングレートの低い層(A)が付着量75μg/dm2以上1000μg/dm2以下の1.1〜2倍の付着量であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔。
【請求項11】
レジストを使用し圧延銅箔又は電解銅箔を含む銅張積層板を用いて、エッチングにより前記圧延銅箔又は電解銅箔の不必要部分を除去して電子回路を製造する方法であって、前記圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面のエッチングされる部分及びエッチングされない部分の全ての部分に、銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種の金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を形成し、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いて該銅箔をエッチングし、前記銅の不必要部分を除去して、銅の回路を形成することを含む電子回路の製造方法。
【請求項12】
レジストを使用し圧延銅箔又は電解銅箔を含む銅張積層板を用いて、エッチングにより前記圧延銅箔又は電解銅箔の不必要部分を除去して電子回路を製造する方法であって、前記圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面のエッチングされる部分及びエッチングされない部分に、銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種の金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を形成し、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いて該銅箔をエッチングし、前記銅の不必要部分を除去して、銅の回路を形成することを含む電子回路の製造方法。
【請求項13】
レジストを使用し圧延銅箔又は電解銅箔を含む銅張積層板を用いて、エッチングにより前記圧延銅箔又は電解銅箔の不必要部分を除去して電子回路を製造する方法であって、前記圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面に、銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種の金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を形成し(但し、圧延銅箔又は電解銅箔の回路となる部分のみに電気めっき法にて貴金属皮膜を形成することを除く)、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いて該銅箔をエッチングし、前記銅の不必要部分を除去して、銅の回路を形成することを含む電子回路の製造方法。
【請求項14】
レジストを使用し圧延銅箔又は電解銅箔を含む銅張積層板を用いて、エッチングにより前記圧延銅箔又は電解銅箔の不必要部分を除去して電子回路を製造する方法であって、前記圧延銅箔又は電解銅箔として請求項1〜7、9及び10のいずれか一項に記載の圧延銅箔又は電解銅箔を用い、前記請求項1〜7、9及び10のいずれか一項に記載の圧延銅箔又は電解銅箔のエッチングレートの低い層(A)を有する側の面をエッチング面として前記銅張積層板を作製し、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いて前記圧延銅箔又は電解銅箔をエッチングし、前記圧延銅箔又は電解銅箔の不必要部分を除去して、銅の回路を形成することを特徴とする電子回路の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔を用いた回路。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔を有する銅箔。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔を用いて製造した銅張積層板。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔を用いて形成した電子回路を有するプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングにより回路形成を行う電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔及びこれらを用いた電子回路の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子・電気機器に印刷回路用銅箔が広く使用されているが、この印刷回路用銅箔は、一般に合成樹脂ボードやフイルム等の基材に接着剤を介して、あるいは接着剤を用いずに高温高圧下で接着して銅張り積層板を製造し、その後、目的とする回路を形成するためにレジスト塗布及び露光工程により回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を経、またさらに各種の素子が半田付けされてエレクトロデバイス用の印刷回路が形成されている。
【0003】
このような印刷回路に使用する銅箔は、その製造方法の種類の違いにより電解銅箔及び圧延銅箔に大別されるが、いずれも印刷回路板の種類や品質要求に応じて使用されている。
これらの銅箔は、樹脂基材と接着される面と非接着面があり、それぞれ特殊な表面処理(トリート処理)が施されている。また、多層プリント配線板の内層に使用する銅箔のように両面に樹脂との接着機能をもつようにされる(ダブルトリート処理)場合もある。
【0004】
電解銅箔は一般に回転ドラムに銅を電着させ、それを連続的に剥がして銅箔を製造しているが、この製造時点で回転ドラムに接触する面は光沢面で、その反対側の面は多数の凹凸を有している(粗面)。しかし、このような粗面でも樹脂基板との接着性を一層向上させるために、0.2〜3μm程度の銅粒子を付着させるのが一般的である。
さらに、このような凹凸を増強した上に銅粒子の脱落を防止するために薄いめっき層を形成する場合もある。これらの一連の工程を粗化処理と呼んでいる。このような粗化処理は、電解銅箔に限らず圧延銅箔でも要求されることであり、同様な粗化処理が圧延銅箔においても実施されている。
【0005】
以上のような銅箔を使用してホットプレス法や連続法により銅張り積層板が製造される。この積層板は、例えばホットプレス法を例にとると、エポキシ樹脂の合成、紙基材へのフェノール樹脂の含浸、乾燥を行ってプリプレグを製造し、さらにこのプリプレグと銅箔を組合せプレス機により熱圧成形を行う等の工程を経て製造されている。これ以外にも、銅箔にポリイミド前駆体溶液を乾燥及び固化させて、前記銅箔上にポリイミド樹脂層を形成する方法もある。
【0006】
このようにして製造された銅張り積層板は、目的とする回路を形成するためにレジスト塗布及び露光工程により回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を経るが、エッチングして回路を形成する際に、その回路が意図した通りの幅にならないという問題がある。
それは、エッチング後の銅箔回路の銅部分が、銅箔の表面から下に向かって、すなわち樹脂層に向かって、末広がりにエッチングされる(ダレを発生する)ことである。通常は、回路側面の角度が50°前後の「ダレ」となり、特に大きな「ダレ」が発生した場合には、樹脂基板近傍で銅回路が短絡し、不良品となる場合もある(後述する図2参照)。
【0007】
このような「ダレ」は極力小さくすることが必要であるが、このような末広がりのエッチング不良を防止するために、エッチング時間を延長して、エッチングをより多くして、この「ダレ」を減少させることも考えた。
しかし、この場合は、すでに所定の幅寸法に至っている箇所があると、そこがさらにエッチングされることになるので、その銅箔部分の回路幅がそれだけ狭くなり、回路設計上目的とする均一な線幅(回路幅)が得られず、特にその部分(細線化された部分)で発熱し、場合によっては断線するという問題が発生する。
電子回路のファインパターン化がさらに進行する中で、現在もなお、このようなエッチング不良による問題がより強く現れ、回路形成上で、大きな問題となっている。
【0008】
本発明者らは、これらを改善するために、エッチング面側の銅箔に銅よりもエッチング速度が遅い金属又は合金層を形成した銅箔を提案した(特許文献1参照)。この場合の金属又は合金としては、ニッケル、コバルト及びこれらの合金である。
回路設計に際しては、レジスト塗布側、すなわち銅箔の表面からエッチング液が浸透するので、レジスト直下にエッチング速度が遅い金属又は合金層があれば、その近傍の銅箔部分のエッチングが抑制され、他の銅箔部分のエッチングが進行するので、「ダレ」が減少し、より均一な幅の回路が形成できるという効果をもたらし、回路側面の角度が63°〜75°という、従来技術と比較して急峻な回路形成が可能となり、大きな進歩があったと言える。
【0009】
その後、回路の微細化、高密度化に従って、このような「ダレ」はより小さいことが求められ、回路側面の傾斜角がより急峻な75°を超えること、できれば80°以上を実現することが求められるようになってきた。特許文献1のように、銅よりもエッチング速度が遅い金属又は合金層を銅箔上に形成する場合、効果が銅とのエッチング速度の違いに因るものとすると、他の材料も特許文献1と同程度の効果となるだろうと予想される。
また、さらに改良を進める段階で、問題がいくつか浮上した。それは回路を形成した後、レジンの除去、さらには「ダレ」防止用に形成したエッチング速度が遅い金属又は合金層をソフトエッチングにより除去する必要があること、さらには前記エッチング速度が遅い金属又は合金層付き銅箔を、銅張積層板とし電子回路を形成する工程で、樹脂の貼付けなどの工程で銅箔を、高温処理する必要があることである。
【0010】
前者については、エッチング除去の時間をなるべく短縮し、きれいに除去するためには、エッチング速度が遅い金属又は合金層の厚さを極力薄くすることが必要であること、また後者の場合には、熱を受けるために、下地の銅層が酸化され(変色するので、通称「ヤケ」と言われている。)、レジストの塗布性(均一性、密着性)の不良やエッチング時の界面酸化物の過剰エッチングなどにより、パターンエッチングでのエッチング性、ショート、回路幅の制御性などの不良が発生するという問題があるので、さらに改良を進めるか又は他の材料に置換することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
特許文献1:特開2002−176242号公報
特許文献2:特開2006−261270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、銅張り積層板の銅箔をエッチングにより回路形成を行うに際し、エッチングによるダレを防止して、従来よりもさらに急峻にすることにより、目的とする回路幅の均一な回路を形成でき、エッチングによる回路形成の時間をなるべく短縮し、ショートや回路幅の不良の発生を防止できる電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔及びこれらを用いた電子回路の形成方法を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面に、白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を形成して、銅箔の厚み方向のエッチング速度を調節することにより、これまで知られていたニッケル、コバルトなどよりも「ダレ」の小さい急峻な銅回路を形成し、ダレのない回路幅の均一な回路を形成することができるとの知見を得た。
【0014】
本発明は、この知見に基づいて、
1.エッチングにより回路形成を行う電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔において、該圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面側に形成された銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を備えていることを特徴とする電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔
2.前記銅よりもエッチングレートの低い層(A)が、白金又は白金合金であることを特徴とする上記1記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔
3.前記銅よりもエッチングレートの低い層(A)が白金合金であって、該白金合金の白金比率が50wt%を超えることを特徴とする上記1記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔
4.前記銅よりもエッチングレートの低い層(A)が白金合金であって、該白金合金に含まれる合金成分が亜鉛、リン、ホウ素、モリブデン、タングステン、ニッケル、鉄又はコバルトから選ばれる少なくとも一種以上の元素であることを特徴とする上記1又は2記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔、を提供する。
【0015】
また、本発明は、
5.前記層(A)の上または下に、さらに耐熱層(B)を備えることを特徴とする上記1〜4のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔
6.前記耐熱層(B)は、亜鉛又は亜鉛合金のいずれかからなる層であり、該亜鉛合金は、白金族元素、金、パラジウム族元素及び銀の群から選択した一種又は二種以上を合金元素として含有することを特徴とする上記1〜5のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔、を提供する。
【0016】
また、本発明は、
7.前記耐熱層(B)の上に、さらにクロム層若しくはクロメート層及び/又はシラン処理層を備えていることを特徴とする上記1〜6のいずれか一項に記載の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔
【0017】
さらに、本発明は、
8.圧延銅箔又は電解銅箔からなる銅張り積層板の、該銅箔をエッチングし電子回路を形成する方法において、銅箔のエッチング面側に銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種の金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を形成し、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いて該銅箔をエッチングし、銅の不必要部分を除去して、銅の回路を形成することを特徴とする電子回路の形成方法
9.圧延銅箔又は電解銅箔からなる銅張り積層板の、該銅箔をエッチングし電子回路を形成する方法において、上記1〜12の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔を用い、エッチングレートの低い層(A)をエッチング面として銅張積層板を作製し、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いて該銅箔をエッチングし、銅の不必要部分を除去して、銅の回路を形成することを特徴とする電子回路の形成方法、を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、銅張り積層板の銅箔をエッチングにより回路形成を行うに際し、エッチングによる「ダレ」が小さく急峻に回路形成することによって、目的とする回路幅のより均一な回路を実現し、提供することができるという効果を有する。
これによってショートや回路幅の不良の発生を防止できる電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔を提供することができ、優れた電子回路の形成方法を提供することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】エッチングファクター(EF)の計算方法の概略説明図である。
図2】銅回路形成時に「ダレ」を生じて樹脂基板近傍で銅回路が短絡した例を示す写真である。
図3】実施例1により形成された回路およびその断面を示す写真である。
図4】比較例2により形成された回路およびその断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のエッチングにより回路形成を行う電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔は、圧延銅箔又は電解銅箔のエッチング面側に形成された銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を有する。
このようにして作製した銅箔を用いて銅張り積層板とする。この銅箔は、電解銅箔及び圧延銅箔のいずれにも適用できる。また、電解銅箔の場合、粗面(M面)又は光沢面(S面)にも同様に適用できるが、エッチングされる面は、通常光沢面側を使用する。圧延銅箔の中には高純度銅箔又は強度を向上させた合金銅箔も存在するが、本件発明はこれらの銅箔の全てを包含する。
【0021】
銅張積層板の表面にレジストを塗布し、マスクによりパターンを露光し、現像することによりレジストパターンを形成したものをエッチング液に浸漬する。
エッチングを抑制する白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金は、銅箔上のレジスト部分に近い位置にあり、レジスト側の銅箔のエッチングは、この白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層近傍がエッチングされていく速度よりも速い速度でこの層から離れた部位の銅層のエッチングが進行することにより、銅回路がほぼ垂直にエッチングが進行し、矩形の銅箔回路が形成される。
【0022】
白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層は、50μg/dm以上1000μg/dm以下が望ましい。50μg/dm未満では、銅回路がほぼ垂直にエッチングが進行し、矩形の銅箔回路が形成される層の効果が少なく、1000μg/dmを超えると、矩形の銅箔回路が形成する効果が飽和し、一方、厚くなると、貴金属は基本的に塩化第二鉄水溶液(エッチング液)に溶解しないため、エッチングできなくなる。また、回路形成後、この層を除去する場合、薄いほうが除去しやすく望ましい。
【0023】
銅張積層板に電子回路パターンを形成するために用いるエッチング液(塩化第二銅水溶液、塩化第二鉄水溶液など)に対しては、白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層(A)のエッチング速度は、銅よりも十分に小さいためエッチングファクターを改善する効果を有する。
【0024】
白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の中でも、白金又は白金合金は特に有効である。
白金合金に含まれる合金成分は通常知られている合金であれば何れも使用できる。例えば、亜鉛、リン、ホウ素、モリブデン、タングステン、ニッケル、鉄又はコバルトから選ばれる少なくとも一種以上の元素との合金は、エッチング速度が銅より遅く、エッチングファクターを改善する効果があることを確認できる。
【0025】
白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層(A)の上または下に、さらに耐熱層(B)を形成することができる。また、前記耐熱層は、亜鉛又は亜鉛合金であり、該亜鉛合金は、白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の一種又は二種を合金元素として含有することが望ましい。
前記白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層(A)上には、さらにクロム層若しくはクロメート層及び又はシラン処理層を形成することができる。
【0026】
本発明の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔における、前記耐熱層(B)及び前記層(A)に含まれる合計の亜鉛含有量が、金属亜鉛換算で、30μg/dm〜1000μg/dmであることが望ましい。
30μg/dm未満では、耐酸化性(ヤケ性改善)に効果がない。また、1000μg/dmを超えると、効果が飽和すると共に、前記層(A)の効果を減殺させてしまうので、金属亜鉛換算で、30μg/dm〜1000μg/dmとすることが好ましい。
【0027】
また、本発明の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔において、前記クロム層若しくはクロメート層を設ける場合には、クロム量を金属クロム換算で、100μg/dm以下とする。また、前記シラン処理層を形成する場合には、シリコン単体換算で、20μg/dm以下であることが望ましい。これは、パターンエッチング液に対するエッチング速度の相異が生ずるのを抑制するためである。
【0028】
また、本発明は、圧延銅箔又は電解銅箔からなる銅張り積層板の、該銅箔をエッチングし電子回路を形成する方法において、銅箔のエッチング面側の銅よりもエッチングレートの低い白金族、金、銀のいずれか1種の金属の層又はこれらを主成分とする合金の層を形成した後、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いて該銅箔をエッチングし、銅の不必要部分を除去して、銅の回路を形成する電子回路の形成方法、を提供することができる。
エッチング液は、いずれも使用可能であるが、特に塩化第二鉄水溶液が有効である。これは、微細回路はエッチングに時間が掛かるが、塩化第二鉄水溶液の方が塩化第二銅水溶液よりもエッチング速度が早いという理由による。
【0029】
さらに、本発明は、圧延銅箔又は電解銅箔からなる銅張り積層板の、該銅箔をエッチングし電子回路を形成する方法において、上記1〜12の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔を、塩化第二鉄水溶液又は塩化第二銅水溶液を用いて該銅箔をエッチングし、銅の不必要部分を除去して、銅の回路を形成することを特徴とする電子回路の形成方法、を提供するものである。この方法は、上記の電子回路用の圧延銅箔又は電解銅箔をいずれも使用することができる。
【0030】
下記に好適な成膜条件の例を示す。
白金族、金、銀のいずれか1種の金属の層又はこれらを主成分とする合金(白金−亜鉛合金、白金−リン合金、白金−モリブデン合金、白金−タングステン合金、白金−鉄合金、白金−コバルト合金等)については、いずれもスパッタリング法により成膜することができる。また、いずれも、電気めっき、無電解めっき等の湿式めっき法でもよい。
【0031】
(スパッタリング条件)
装置:HITACHI製、E−102イオンスパッタ装置
真空度:0.01〜0.1Torr
電流:5〜30mA
時間:5〜150秒
【0032】
(亜鉛めっき)
Zn:1〜20g/L
pH:3〜3.7
温度:常温〜60°C
電流密度Dk:1〜15A/dm
時間:1〜10秒
【0033】
(クロムめっきの条件)
Cr(NaCr或いはCrO
Cr:40〜300g/L
SO :0.5〜10.0g/L
浴温:40〜60°C
電流密度Dk :0.01〜50A/dm
時間:1〜100秒
アノード:PtめっきTi 板、ステンレス鋼板、鉛板等
【0034】
(クロメート処理の条件)
(a)電解クロメート処理の例
CrO又はKCr:1〜12g/L
Zn(OH)又はZnSO・7HO:0(0.05)〜10g/L
NaSO:0(0.05)〜20g/L
pH:2.5〜12.5
温度:20〜60°C
電流密度:0.5〜5A/dm
時間:0.5〜20秒
【0035】
(ニッケルめっき)
Ni:10〜40g/L
pH:2.5〜3.5
温度:常温〜60°C
電流密度Dk:2〜50A/dm
時間:1〜4秒
【0036】
(シラン処理の条件)
下記のような色々な系列のシランから選択。
濃度:0.01wt%〜5wt%
種類:オレフィン系シラン、エポキシ系シラン、アクリル系シラン、アミノ系シラン、メルカプト系シラン
アルコールに溶解したシランを所定の濃度まで水で希釈し、銅箔表面へ塗布するもの。
【0037】
(白金付着量分析方法)
白金処理面を分析するため、反対面をFR−4樹脂でプレス作製し、マスキングする。そのサンプルを王水にて表面処理被膜が溶けるまで溶解させ、ビーカー中の溶解液を稀釈し、原子吸光分析により白金の定量分析を行う。
その他の白金族、金、銀の分析も同様に行うことができる。
【0038】
(亜鉛、クロムの付着量分析方法)
処理面を分析するため、反対面をFR−4樹脂でプレス作製し、マスキングする。そのサンプルを濃度30%硝酸にて3分間煮沸して処理層を溶解させ、その溶液を原子吸光分析により亜鉛、クロムの定量分析を行う。
【0039】
(熱影響の考慮)
銅張り積層板(CCL)の製造の段階で、銅箔に熱がかかる。この熱によって、銅箔表層に設けられたエッチング改善処理層は銅層へ拡散する。そのため、当初期待したエッチング改善効果が減退し、エッチングファクターは減少する傾向がある。このことから、拡散していない状態と同等の効果を出すには、CCL作製時の銅箔にかかる熱量を考慮して、改善処理層の付着量を1.1〜2倍程度増やすことが必要である。
【0040】
銅張り積層板の銅箔のエッチングに際しては、銅箔のエッチング面側に銅よりエッチングレートの遅い金属又は合金層を形成した後、塩化第二銅水溶液又は塩化第二鉄水溶液を用いて該銅箔をエッチングする。
上記の条件でエッチングすることにより、エッチングファクターを3.7以上、すなわち銅箔回路のエッチング側面と樹脂基板との間の回路側面の傾斜角を75度以上とすることができる。特に望ましい傾斜角は80〜95度の範囲であるが、本願発明はこれを実現することが可能であり、これによって、ダレのない矩形のエッチング回路が形成できる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本実施例はあくまで1例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0042】
(実施例1)
箔厚18μmの圧延銅箔を用いた。この圧延銅箔の表面粗さRzは0.7μmであった。この圧延銅箔に、上記白金スパッタ条件で、白金200μg/dmを形成した。
さらに、この白金層を設けた面の逆側を接着面として銅箔を樹脂基板に接着した。
【0043】
次に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。エッチング条件、回路形成条件、エッチングファクターの測定条件、次の通りである。
(エッチング条件)
塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
液温:50°C
スプレー圧:0.15MPa
【0044】
(回路形成条件)
回路ピッチ:30μmピッチ、50μmピッチの2種であるが、銅箔の厚みによって変更する。本実施例1の場合は、18μm厚の銅箔を用いたので、次の条件である。
(50μmピッチ回路形成)
レジストL/S=33μm/17μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:15μm、エッチング時間:105秒前後
【0045】
(エッチングファクターの測定条件)
エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点をP点とし、このP点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。
エッチングファクター(EF)の計算方法の概略を図1に示す。この図1に示すように、EF=b/aとして計算する。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。
【0046】
上記の条件でエッチングを行った。この結果、銅回路の側面のレジスト側から樹脂基板側に向かって、ほぼ垂直にエッチングが進行し、矩形の銅箔回路が形成された。次に、エッチングした銅箔の傾斜角度を測定した(なお、回路長100μmにおける傾斜角の最小値である)。また、エッチングファクターを調べた。以上の結果を、表1に示す。
表1に示すように、左右の傾斜角の平均値は81度となり、ほぼ矩形の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは50μmピッチで6.2となった。
この結果、図3に示すように、良好なエッチング回路が得られた。
【0047】
(実施例2)
実施例1と同様に、箔厚18μmの圧延銅箔を用いた。この圧延銅箔の表面粗さRzは0.7μmであった。この圧延銅箔に、上記白金スパッタ条件で、白金500μg/dmを形成した。
さらに、この白金層を設けた面の逆側を接着面として銅箔を樹脂基板に接着した。
【0048】
次に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。エッチング条件、回路形成条件、エッチングファクターの測定条件は、次の通りである。
(エッチング条件)
塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
液温:50°C
スプレー圧:0.15MPa
【0049】
(50μmピッチ回路形成)
レジストL/S=33μm/17μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:15μm、エッチング時間:105秒前後
【0050】
(エッチングファクターの測定条件)
エッチングファクターの測定条件は、上記実施例1と同様なので省略する。そして、上記の条件でエッチングを行った。この結果、銅回路の側面のレジスト側から樹脂基板側に向かって、ほぼ垂直にエッチングが進行し、矩形の銅箔回路が形成された。
次に、エッチングした銅箔の傾斜角度を測定した(なお、回路長100μmにおける傾斜角の最小値である)。また、エッチングファクターを調べた。以上の結果を、表1に示す。
表1に示すように、左右の傾斜角の平均値は82度となり、ほぼ矩形の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは50μmピッチで7となった。
この結果、良好なエッチング回路が得られた。
【0051】
(実施例3)
本実施例においては箔厚9μmの圧延銅箔を用いた。この圧延銅箔の表面粗さRzは0.7μmであった。この圧延銅箔に、上記白金スパッタ条件で、白金900μg/dmを形成した。
さらに、この白金層を設けた面の逆側を接着面として銅箔を樹脂基板に接着した。
【0052】
次に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。エッチング条件、回路形成条件、エッチングファクターの測定条件は、次の通りである。
(エッチング条件)
塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
液温:50°C
スプレー圧:0.15MPa
【0053】
(30μmピッチ回路形成)
本実施例3の場合は、9μm厚の銅箔を用いたので、次の条件である。
レジストL/S=25μm/5μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:10μm、エッチング時間:76秒前後
【0054】
上記の条件でエッチングを行った。この結果、銅回路の側面のレジスト側から樹脂基板側に向かって、ほぼ垂直にエッチングが進行し、矩形の銅箔回路が形成された。次に、エッチングした銅箔の傾斜角度を測定した(なお、回路長100μmにおける傾斜角の最小値である)。また、エッチングファクターを調べた。以上の結果を、表1に示す。
【0055】
表1に示すように、左右の傾斜角の平均値は81度となり、ほぼ矩形の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは30μmピッチで6.5となった。
この結果、良好なエッチング回路が得られた。
【0056】
(実施例4)
本実施例においては箔厚5μmの電解銅箔を用いた。この電解銅箔の表面粗さRzは3μmであった。この電解銅箔に、上記白金スパッタ条件で、白金75μg/dmを形成した。
さらに、この白金層を設けた面の逆側を接着面として銅箔を樹脂基板に接着した。
【0057】
次に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。エッチング条件、回路形成条件、エッチングファクターの測定条件は、次の通りである。
(エッチング条件)
塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
液温:50°C
スプレー圧:0.15MPa
【0058】
(30μmピッチ回路形成)
本実施例4の場合は、5μm厚の銅箔を用いたので、次の条件である。
レジストL/S=25μm/5μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:10μm、エッチング時間:48秒前後
【0059】
上記の条件でエッチングを行った。この結果、銅回路の側面のレジスト側から樹脂基板側に向かって、ほぼ垂直にエッチングが進行し、矩形の銅箔回路が形成された。次に、エッチングした銅箔の傾斜角度を測定した(なお、回路長100μmにおける傾斜角の最小値である)。また、エッチングファクターを調べた。以上の結果を、表1に示す。
【0060】
表1に示すように、左右の傾斜角の平均値は81度となり、ほぼ矩形の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは30μmピッチで6.5となった。
この結果、良好なエッチング回路が得られた。
【0061】
(実施例5)
実施例1と同様に、箔厚18μmの圧延銅箔を用いた。この圧延銅箔の表面粗さRzは0.7μmであった。この圧延銅箔に、上記金スパッタ条件で、金450μg/dmを形成した。
さらに、この金層を設けた面の逆側を接着面として銅箔を樹脂基板に接着した。
【0062】
次に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。エッチング条件、回路形成条件、エッチングファクターの測定条件は、次の通りである。
(エッチング条件)
塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
液温:50°C
スプレー圧:0.15MPa
【0063】
(50μmピッチ回路形成)
レジストL/S=33μm/17μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:15μm、エッチング時間:105秒前後
【0064】
(エッチングファクターの測定条件)
エッチングファクターの測定条件は、上記実施例1と同様なので省略する。そして、上記の条件でエッチングを行った。この結果、銅回路の側面のレジスト側から樹脂基板側に向かって、ほぼ垂直にエッチングが進行し、矩形の銅箔回路が形成された。
次に、エッチングした銅箔の傾斜角度を測定した(なお、回路長100μmにおける傾斜角の最小値である)。また、エッチングファクターを調べた。以上の結果を、表1に示す。
表1に示すように、左右の傾斜角の平均値は82度となり、ほぼ矩形の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは50μmピッチで6.9となった。
この結果、良好なエッチング回路が得られた。
【0065】
(実施例6)
実施例1と同様に、箔厚18μmの圧延銅箔を用いた。この圧延銅箔の表面粗さRzは0.7μmであった。この圧延銅箔に、上記パラジウムスパッタ条件で、パラジウム550μg/dmを形成した。
さらに、このパラジウム層を設けた面の逆側を接着面として銅箔を樹脂基板に接着した。
【0066】
次に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。エッチング条件、回路形成条件、エッチングファクターの測定条件は、次の通りである。
(エッチング条件)
塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
液温:50°C
スプレー圧:0.15MPa
【0067】
(50μmピッチ回路形成)
レジストL/S=33μm/17μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:15μm、エッチング時間:105秒前後
【0068】
(エッチングファクターの測定条件)
エッチングファクターの測定条件は、上記実施例1と同様なので省略する。そして、上記の条件でエッチングを行った。この結果、銅回路の側面のレジスト側から樹脂基板側に向かって、ほぼ垂直にエッチングが進行し、矩形の銅箔回路が形成された。
次に、エッチングした銅箔の傾斜角度を測定した(なお、回路長100μmにおける傾斜角の最小値である)。また、エッチングファクターを調べた。以上の結果を、表1に示す。
表1に示すように、左右の傾斜角の平均値は82度となり、ほぼ矩形の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは50μmピッチで6.8となった。
この結果、良好なエッチング回路が得られた。
【0069】
(実施例7)
実施例1と同様に、箔厚18μmの圧延銅箔を用いた。この圧延銅箔の表面粗さRzは0.7μmであった。この圧延銅箔に、上記95%Pt−5%Pdスパッタ条件で、95%Pt−5%Pd300μg/dmを形成した。
さらに、この95%Pt−5%Pd層を設けた面の逆側を接着面として銅箔を樹脂基板に接着した。
【0070】
次に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。エッチング条件、回路形成条件、エッチングファクターの測定条件は、次の通りである。
(エッチング条件)
塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
液温:50°C
スプレー圧:0.15MPa
【0071】
(50μmピッチ回路形成)
レジストL/S=33μm/17μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:15μm、エッチング時間:105秒前後
【0072】
(エッチングファクターの測定条件)
エッチングファクターの測定条件は、上記実施例1と同様なので省略する。そして、上記の条件でエッチングを行った。この結果、銅回路の側面のレジスト側から樹脂基板側に向かって、ほぼ垂直にエッチングが進行し、矩形の銅箔回路が形成された。
次に、エッチングした銅箔の傾斜角度を測定した(なお、回路長100μmにおける傾斜角の最小値である)。また、エッチングファクターを調べた。以上の結果を、表1に示す。
表1に示すように、左右の傾斜角の平均値は82度となり、ほぼ矩形の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは50μmピッチで6.8となった。
この結果、良好なエッチング回路が得られた。
【0073】
(実施例8)
実施例1と同様に、箔厚18μmの圧延銅箔を用いた。この圧延銅箔の表面粗さRzは0.7μmであった。この圧延銅箔に、上記スパッタ条件で、Pt210μg/dm上にAu190μg/dm(二層)スパッタ層を形成した。
さらに、この二層のスパッタ層を設けた面の逆側を接着面として銅箔を樹脂基板に接着した。
【0074】
次に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。エッチング条件、回路形成条件、エッチングファクターの測定条件は、次の通りである。
(エッチング条件)
塩化第二鉄水溶液:(37wt%、ボーメ度:40°)
液温:50°C
スプレー圧:0.15MPa
【0075】
(50μmピッチ回路形成)
レジストL/S=33μm/17μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:15μm、エッチング時間:105秒前後
【0076】
(エッチングファクターの測定条件)
エッチングファクターの測定条件は、上記実施例1と同様なので省略する。そして、上記の条件でエッチングを行った。この結果、銅回路の側面のレジスト側から樹脂基板側に向かって、ほぼ垂直にエッチングが進行し、矩形の銅箔回路が形成された。
次に、エッチングした銅箔の傾斜角度を測定した(なお、回路長100μmにおける傾斜角の最小値である)。また、エッチングファクターを調べた。以上の結果を、表1に示す。
表1に示すように、左右の傾斜角の平均値は82度となり、ほぼ矩形の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは50μmピッチで6.9となった。
この結果、良好なエッチング回路が得られた。
【0077】
実施例1と同様の圧延銅箔(18μmの圧延銅箔に白金スパッタ条件で、白金200μg/dm)に、前記亜鉛めっきの条件で45μg/dm、900μg/dmを形成し、耐酸化性(ヤケ改善)を以下の試験方法で確認し、良好な結果を得た。
(ヤケ試験)
大気雰囲気下で、240°Cに10分間保持して、変色の有無で確認する。この亜鉛めっき層及びニッケルめっき層を設けた銅箔をエッチング側として樹脂基板に接着し、銅張り積層板とする条件を想定した条件である。
【0078】
(比較例1)
18μm圧延銅箔を用いた。この圧延銅箔の表面粗さRz:0.7μmであった。この圧延銅箔に、上記ニッケルめっき条件で、1200μg/dmのニッケルめっき層を形成し、樹脂基板に接着した。
次に、実施例1と同様に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。
回路形成条件を除き、エッチング条件、エッチングファクターの測定条件、ヤケ試験は、実施例1と同様にして実施した。実施例1と同様の条件については、記載を省略する。
【0079】
(50μmピッチ回路形成)
レジストL/S=33μm/17μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:15μm、エッチング時間:105秒前後
上記の条件でエッチングを行った。この結果、左右の傾斜角の平均値は73度となり、ほぼ矩形の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは50μmピッチで3.3となった。この結果、図4に示すように、ほぼ矩形ではあるが、傾斜角がやや小さく、エッチングファクターがやや小さいエッチング回路が得られた。
【0080】
(比較例2)
18μm圧延銅箔を用いた。この圧延銅箔の表面粗さRz:0.7μmであった。この圧延銅箔に、上記白金スパッタ条件で、25μg/dmの白金層を形成した。そのまま白金層の逆側の面を接着面として銅箔を樹脂基板に接着した。
【0081】
次に、実施例1と同様に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。
回路形成条件を除き、エッチング条件、エッチングファクターの測定条件、ヤケ試験は、実施例1と同様にして実施した。実施例1と同様の条件については、記載を省略する。
(50μmピッチ回路形成)
レジストL/S=33μm/17μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:15μm、エッチング時間:105秒前後
【0082】
上記の条件でエッチングを行った。この結果、銅回路の側面のレジスト側から樹脂基板側に向かって、エッチングが進行したが、末広がりに銅箔回路が形成された。次に、エッチングした銅箔の傾斜角度を測定した(なお、回路長100μmにおける傾斜角の最小値である)。
以上の結果を、同様に表2に示す。表2に示すように、左右の傾斜角の平均値は52度となり、エッチング性が悪い台形状の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは50μmピッチで1.3となり、不良となった。
【0083】
(比較例3)
5μm電解銅箔を用いた。この電解銅箔の表面粗さRz:3μmであった。この電解銅箔の光沢(S)面に、上記ニッケルめっき条件で、580μg/dmのニッケルめっき層を形成した。さらに、このニッケルめっき層を設けた面の逆側を接着面として銅箔を樹脂基板に接着した。
【0084】
次に、実施例1と同様に、レジスト塗布及び露光工程により10本の回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を実施した。
回路形成条件を除き、エッチング条件、エッチングファクターの測定条件、は、実施例1と同様にして実施した。実施例1と同様の条件については、記載を省略する。
(30μmピッチ回路形成)
レジストL/S=25μm/5μm、仕上がり回路トップ(上部)幅:15μm、エッチング時間:48秒前後
【0085】
上記の条件でエッチングを行った。この結果、左右の傾斜角の平均値は74度となり、ほぼ矩形の銅箔回路が形成された。エッチングファクターは30μmピッチで3.5となった。(なお、回路長100μmにおける傾斜角の最小値である)。
結果を表2に示す。このように、ほぼ矩形ではあるが、傾斜角がやや小さく、エッチングファクターがやや小さいエッチング回路が得られた。
【0086】
表1から明らかなように、白金又は白金合金層を備えている場合には、圧延銅箔又は電解銅箔のいずれも、ほぼ矩形の銅箔回路が形成され、極めて良好なエッチング回路が得られた。
これに対して、本願発明の条件に合わないものは、ほぼ矩形であっても、エッチングファクターがやや小さく急峻でなくなり、ダレが大きく台形状の銅箔回路が形成された。
このような、回路側面の傾斜角75度以上を実現する効果は、白金又は白金合金だけでなく、他の白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層においても同様に得られた。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、銅箔のエッチングにより回路形成を行うに際し、目的とする回路幅のより均一な回路を形成できるという効果を有し、エッチングによるダレの発生を防止し、エッチングによる回路形成の時間を短縮することが可能であり、また銅よりもエッチングレートの低い他の白金族、金、銀のいずれか1種以上からなる金属の層又はこれらを主成分とする合金の層によってパターンエッチングでのエッチング性の向上、ショートや回路幅の不良の発生を防止できるので、銅張り積層板(リジッド及びフレキ用)としての利用、プリント基板の電子回路の形成への利用が可能である。
図1
図2
図3
図4