【実施例】
【0024】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。以下に示す実施例は、理解を容易にするためのものであり、これらの実施例によって本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形及び他の実施例は、当然本発明に含まれる。
【0025】
(実施例1−1〜1−9)
純度6N以上の高純度銅(Cu)と5Nレベルのマンガン(Mn)を調整し、高純度グラファイト坩堝を用いて高真空雰囲気で溶解し、高純度の合金を得た。調整した実施例1−1〜1−9の合金組成を表1に示す。
合金化した溶湯を、高真空雰囲気中で水冷銅鋳型に鋳込んでインゴットを得た。次に、製造したインゴットの表面層を除去してφ160×60tとした後、400°C熱間鍛造でφ200とした。その後、400°Cで熱間圧延してφ270×20tまで圧延し、さらに冷間圧延でφ360×10tまで圧延した。
【0026】
次に、400〜600°C1時間熱処理後、ターゲット全体を急冷してターゲット素材とした。これを機械加工で直径13インチ、厚さ7mmのターゲットに加工し、これをさらにCu合金製バッキングプレートと拡散接合により接合してスパッタリングターゲット組立体とした。
実施例1−1〜1−9は表1に示す通り、溶解時のマンガン添加量を、およそ0.1wt%添加したものである。なお、表1に示す含有量は、Mn量は化学分析値によるものである。さらに、表1にSb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの分析量を示す。これは、GDMS(Glow Discharge Mass Spectrometry)分析による。本実施例に示す、これらの量は、本発明の範囲である総量10wtppm以下を満たしている。
【0027】
本実施例に示す半導体用銅合金配線の評価として、シリコン基板上に酸化シリコンを形成させた後、上記ターゲットでスパッタ成膜して膜抵抗を調べた。その後400°C真空雰囲気で熱処理して酸化マンガン層を形成させた。
200°C未満では、安定な酸化マンガン層が形成されず、また525°C超では酸化マンガン層か形成される前にCuが拡散してしまうので適切ではないことがわかった。好ましくは300°C〜450°Cが最適である。
その後、膜抵抗を測定してから、更に温度上げて(850°C)シリコン基板中へのCuの拡散状況(バリア性)を、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)にて評価した。
【0028】
また、耐EM(エレクトロマイグレーション)特性を評価するためにSiO
2層間絶縁膜を有する配線溝に、上記ターゲットでスパッタ成膜してシード層を形成した。その後400°C真空雰囲気でバリア層を自己形成させた。そしてCu電解メッキにて配線溝を埋め込んでCMP(Chemical Mechanical Polishing)にて上部を平坦化して配線幅0.2μmの配線を形成した。この配線に電流をかけて配線断線率を評価した。
また、層間絶縁膜を有する配線溝に上記ターゲットで配線溝を埋め込んでCMPにて上部を平坦化した。その後400°Cで酸素0.01vol%含有する窒素雰囲気で熱処理して、配線上部にもマンガン酸化膜を形成させた。
【0029】
以上の結果、Mn:0.1wt%近傍において、半導体用銅合金配線及びシード層を作成した場合、いずれもCuの拡散抵抗(バリア性)があり、良好な耐EM特性(断線率5%以下)及び膜抵抗(低抵抗)を示した。これは、特にマンガンが配線の上部、側面、下部に拡散して良好なバリア膜を形成するとともに、配線中央部の抵抗が低下するためである。総合評価としては、可である。
このようにシード層形成用のみに使用されるものではなく半導体の配線材としても有効であることを示すものである。
【0030】
【表1】
【0031】
(実施例2−1〜2−9)
実施例2−1〜2−9は表2に示す通り、溶解時のマンガン添加量を、およそ1wt%程度添加したものである。なお、表2に示す含有量は、Mn量は化学分析値によるものである。
さらに表2に、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの分析量を示す。これは、GDMS分析による。本実施例に示す、これらの量は、本発明の範囲である総量10wtppm以下を満たしている。
スパッタリングターゲットの製造工程、半導体用銅合金配線の評価方法は、実施例1−1〜1−9と同様である。
【0032】
以上の結果、Mn:1wt%近傍において、半導体用銅合金配線及びシード層を作成した場合、表2に示すように、いずれもCuの拡散抵抗(バリア性)に優れており、良好な耐EM特性(断線率5%以下、さらには断線率2.5%以下)及び膜抵抗(低抵抗)を示した。これは、特にマンガンが配線の上部、側面、下部に拡散して良好なバリア膜を形成するとともに、配線中央部の抵抗が低下するためである。総合評価としては、良である。
上記と同様に、シード層形成用のみに使用されるものではなく、半導体の配線材としても、非常に有効であることを示す。
【0033】
【表2】
【0034】
(実施例3−1〜3−9)
実施例3−1〜3−9は表3に示す通り、溶解時のマンガン添加量を、およそ1wt%程度添加したものである。なお、表3に示す含有量は、Mn量は化学分析値によるものである。
さらに表3に、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの分析量を示す。これは、GDMS分析による。本実施例に示す、これらの量は、本発明の範囲である総量5wtppm以下である。この量は、上記実施例2−1〜2−9に比べ、さらに低下させたもので、本実施例における特徴である。
スパッタリングターゲットの製造工程、半導体用銅合金配線の評価方法は、実施例1−1〜1−9と同様である。
【0035】
以上の結果、Mn:1wt%近傍において、半導体用銅合金配線及びシード層を作成した場合、表3に示すように、いずれもCuの拡散抵抗(バリア性)に優れており、良好な耐EM特性(断線率2.5%以下)及び膜抵抗(低抵抗)を示した。これは、特にマンガンが配線の上部、側面、下部に拡散して良好なバリア膜を形成するとともに、配線中央部の抵抗が低下するためである。
さらに断線率の低下は、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの存在量が低下(5wtppm以下)したためと考えられる。総合評価としては、良である。
上記と同様に、シード層形成用のみに使用されるものではなく、半導体の配線材としても、非常に有効であることを示す。
【0036】
【表3】
【0037】
(実施例4−1〜4−9)
実施例4−1〜4−9は表4に示す通り、溶解時のマンガン添加量を、およそ1wt%程度添加したものである。なお、表4に示す含有量は、Mn量は化学分析値によるものである。
さらに表4に、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの分析量を示す。これは、GDMS分析による。本実施例に示す、これらの量は、本発明の範囲である総量1wtppm以下(実施例4−3のみ1.02wtppm)である。
この量は、上記実施例3−1〜3−9に比べ、さらに低下させたもので、本実施例における特徴である。スパッタリングターゲットの製造工程、半導体用銅合金配線の評価方法は、実施例1−1〜1−9と同様である。
【0038】
以上の結果、Mn:1wt%近傍において、半導体用銅合金配線及びシード層を作成した場合、表4に示すように、いずれもCuの拡散抵抗(バリア性)に優れており、良好な耐EM特性(断線は殆んど無い)及び膜抵抗(低抵抗)を示した。これは、特にマンガンが配線の上部、側面、下部に拡散して良好なバリア膜を形成するとともに、配線中央部の抵抗が低下するためである。
【0039】
さらに断線率が殆んど見られなくなったのは、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの存在量が低下(1wtppm以下)したためと考えられる。総合評価としては、最良である。
上記と同様に、シード層形成用のみに使用されるものではなく、半導体の配線材としても、本実施例は極めて有効であることを示す。
【0040】
【表4】
【0041】
(実施例5−1〜5−9)
実施例5−1〜5−9は表5に示す通り、溶解時のマンガン添加量を、およそ4wt%程度添加したものである。なお、表5に示す含有量は、Mn量は化学分析値によるものである。
さらに表5に、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの分析量を示す。これは、GDMS分析による。本実施例に示す、これらの量は、本発明の範囲である総量1wtppm以下である。この量は、上記実施例4−1〜4−9と同レベルのものである。
スパッタリングターゲットの製造工程、半導体用銅合金配線の評価方法は、実施例1−1〜1−9と同様である。
【0042】
以上の結果、Mn:4wt%近傍において、半導体用銅合金配線及びシード層を作成した場合、表5に示すように、いずれもCuの拡散抵抗(バリア性)に優れており、良好な耐EM特性(断線は2.5%以下)は良好であり、膜抵抗は一部を除き、比較的良好な値を示した。これは、特にマンガンが配線の上部、側面、下部に拡散して良好なバリア膜を形成するとともに、配線中央部の抵抗が低下するためである。
さらに断線率が殆んど見られなくなったのは、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの存在量が低下したためと考えられる。総合評価としては、良又は可である。本実施例はMnが多いために、やや膜抵抗が増加するケースもあるが、使用できない範囲ではない。
上記と同様に、シード層形成用のみに使用されるものではなく、半導体の配線材としても、本実施例は利用可能であることを示す。
【0043】
【表5】
【0044】
(比較例A−1〜A−3及び比較例B−1〜B−3)
比較例A−1〜A−3及び比較例B−1〜B−3は表6に示す通り、溶解時のマンガンを添加量したものであるが、比較例A−1〜A−3は、本発明の上記実施例に比べマンガン量が少ないすぎる場合であり、B−1〜B−3は本発明の上記実施例に比べマンガン量が多すぎる場合である。なお、表6に示す含有量は、Mn量は化学分析値によるものである。
さらに表6に、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの分析量を示す。これは、GDMS分析による。これらは、いずれも本発明の範囲に入るレベルのものである。
スパッタリングターゲットの製造工程、半導体用銅合金配線の評価方法は、実施例1−1〜1−9と同様とした。
【0045】
以上の結果、表6に示す通り、Mn量が少ない比較例A−1〜A−3については、膜抵抗が低く良好であるが、バリア性がなく、耐EM性に劣るため、総合評価としては不良(×)である。また、Mn量が多い場合(本発明の範囲を超える場合)は、バリア性が良好で耐EM性が高いが、膜抵抗が増加するという問題があるので、総合評価としては、不良(×)である。
【0046】
【表6】
【0047】
(比較例4−1〜4−9)
本比較例4−1〜4−9は、上記の実施例の中で最も良好な結果を示したMn量と同一レベルのものを使用した(対比を容易にするために、比較例4の数字を用いた)。
表7に示すように、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの量が本発明のレベルを超えた場合の結果を示した。なお、表7に示すMn含有量は上記と同様に、化学分析値によるものである。また、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asの分析量も同様に、GDMS分析による。
スパッタリングターゲットの製造工程、半導体用銅合金配線の評価方法は、実施例1−1〜1−9と同様とした。
以上の結果、表7に示す通り、膜抵抗が低く良好であるが、バリア性がなく、耐EM性に劣るため、総合評価としては不良(×)となった。
【0048】
【表7】
【0049】
以上の実施例及び比較例に示す通り、本願発明のMn0.05〜5wt%を含有し、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asから選択した1又は2以上の元素の総量が10wtppm以下、残部Cuである半導体用銅合金配線及び同配線膜形成用スパッタリングターゲットの有用性は明らかであり、薄膜配線及びシード層は、高導電性を有すると共に、優れた自己拡散抑制機能を備えている。