(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における検査装置のシステム構成図である。本実施の形態においては、フォトリソグラフィ法などで使用されるマスクを検査対象としている。
【0046】
図1に示すように、検査装置100aは、光学画像取得部Aと制御部Bを有する。
【0047】
光学画像取得部Aは、レーザ光を照射する光源103と、水平方向(X方向、Y方向)および回転方向(θ方向)に移動可能なXYθテーブル102と、透過照明系を構成する照明光学系170と、拡大光学系104と、フォトダイオードアレイ105と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。
【0048】
制御部Bでは、検査装置100a全体の制御を司る制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照回路112、展開回路111、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置116、CRT117、パターンモニタ118およびプリンタ119に接続されている。XYθテーブル102は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータ、Y軸モータおよびθ軸モータによって駆動される。これらのモータには、例えば、ステップモータを用いることができる。
【0049】
データベース方式の基準データとなる設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路111に送られる。展開回路111では、設計パターンデータがイメージデータ(ビットパターンデータ)に変換される。その後、このイメージデータは、参照回路112に送られて、基準画像となる参照画像の生成に用いられる。
【0050】
尚、
図1では、本実施の形態で必要な構成成分を記載しているが、マスクを検査するのに必要な他の公知成分が含まれていてもよい。また、本実施の形態では、ダイ−トゥ−データベース検査方式を例にしているが、ダイ−トゥ−ダイ検査方式であってもよい。この場合には、マスク内の異なる領域にある同一パターンの一方の光学画像を基準画像として取り扱う。
【0051】
図2は、本実施の形態におけるデータの流れを示す概念図である。
【0052】
図2に示すように、設計者(ユーザ)が作成したCADデータ201は、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データ202に変換される。設計中間データ202には、レイヤ(層)毎に作成されて各マスクに形成される設計パターンデータが格納される。ここで、一般に、検査装置100aは、OASISデータを直接読み込めるようには構成されていない。すなわち、検査装置100aの製造メーカー毎に、独自のフォーマットデータが用いられている。このため、OASISデータは、レイヤ毎に各検査装置に固有のフォーマットデータ203に変換された後に検査装置100aに入力される。尚、フォーマットデータ203は、検査装置100aに固有のデータとすることができるが、描画装置と互換性のあるデータとしてもよい。
【0053】
フォーマットデータ203は、
図1の磁気ディスク装置109に入力される。すなわち、フォトマスク101のパターン形成時に用いた設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に記憶される。
【0054】
設計パターンに含まれる図形は、長方形や三角形を基本図形としたものである。磁気ディスク装置109には、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納される。
【0055】
さらに、数十μm程度の範囲に存在する図形の集合を一般にクラスタまたはセルと称するが、これを用いてデータを階層化することが行われている。クラスタまたはセルには、各種図形を単独で配置したり、ある間隔で繰り返し配置したりする場合の配置座標や繰り返し記述も定義される。クラスタまたはセルデータは、さらにフレームまたはストライプと称される、幅が数百μmであって、長さがフォトマスクのX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の短冊状領域に配置される。
【0056】
入力された設計パターンデータは、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して展開回路111によって読み出される。
【0057】
展開回路111は、設計パターンを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データを展開する。展開された設計画像データは、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算する。そして、各画素内の図形占有率が画素値となる。
【0058】
上記のようにして2値ないしは多値のイメージデータ(ビットパターンデータ)に変換された設計パターンデータは、次に参照回路112に送られる。参照回路112では、送られてきた図形のイメージデータである設計画像データに対して適切なフィルタ処理が施される。
【0059】
図3は、フィルタ処理を説明する図である。
【0060】
後述する、センサ回路106から得られた光学画像としてのマスク採取データ204は、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果等によってぼやけを生じた状態、言い換えれば空間的なローパスフィルタが作用した状態にある。したがって、画像強度(濃淡値)がデジタル値となった、設計側のイメージデータである設計画像データにもフィルタ処理を施すことで、マスク採取データ204に合わせることができる。このようにしてマスク採取データ204と比較する参照画像を作成する。
【0061】
次に、
図1および
図4を用いてマスク採取データ204の取得方法を説明する。
【0062】
図1において、光学画像取得部Aによって、フォトマスク101の光学画像、すなわち、マスク採取データ204が取得される。ここで、マスク採取データ204は、設計パターンに含まれる図形データに基づく図形が描画されたマスクの画像である。マスク採取データ204の具体的な取得方法は、例えば、次に示す通りである。
【0063】
検査対象となるフォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向および回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置される。そして、フォトマスク101に形成されたパターンに対し、XYθテーブル102の上方に配置された光源103から光が照射される。より詳しくは、光源103から照射される光束が、照明光学系170を介してフォトマスク101に照射される。フォトマスク101の下方には、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106が配置されている。フォトマスク101を透過した光は、拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像する。ここで、拡大光学系104は、図示しない自動焦点機構によって自動的に焦点調整がなされるように構成されていてもよい。さらに、図示しないが、検査装置100aは、フォトマスク101の下方から光を照射し、反射光を拡大光学系を介して第2のフォトダイオードアレイに導き、透過光と反射光を同時に採取するように構成されていてもよい。
【0064】
図4は、マスク採取データ204の取得手順を説明するための図である。
【0065】
検査領域は、
図4に示すように、Y方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20に仮想的に分割され、さらにその分割された各検査ストライプ20が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105には、
図4に示されるようなスキャン幅Wの画像が連続的に入力される。第1の検査ストライプ20における画像を取得すると、今度はXYθテーブル102が逆方向に移動しながら、第2の検査ストライプ20について同様にスキャン幅Wの画像が連続的に入力される。第3の検査ストライプ20については、第2の検査ストライプ20における画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプ20における画像を取得した方向に移動しながら取得する。このように、連続的に画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。
【0066】
図1のフォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、センサが配置されている。このセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサが挙げられる。XYθテーブル102がX軸方向に連続的に移動しながら、TDIセンサによってフォトマスク101のパターンが撮像される。ここで、光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成される。
【0067】
XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下、テーブル制御回路114によって駆動され、X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータには、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。また、XYθテーブル102上のフォトマスク101は、オートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後には自動的に排出されるようになっている。
【0068】
センサ回路106から出力されたマスク採取データ204は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上でのフォトマスク101の位置を示すデータとともに、比較回路108(第1の比較部)に送られる。マスク採取データ204は、例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を表現している。また、上述した参照画像も比較回路108に送られる。
【0069】
比較回路108では、センサ回路106から送られたマスク採取データ204と、参照回路112で生成した参照画像とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。比較は、透過画像のみ、反射画像のみ、または、透過と反射を組み合わせたアルゴリズムで行われる。比較の結果、両者の差異が所定の値を超えた場合にその箇所を欠陥と判断する。欠陥と判断されると、その座標と、欠陥判定の根拠となったマスク採取データ204および参照画像とが磁気ディスク装置109に保存される。
【0070】
ところで、微細なパターンに生じる欠陥としては、パターンエッジの凹凸(エッジラフネス)に代表される形状欠陥だけでなく、パターンの線幅異常やパターンの位置ずれによって隣接パターンとの空隙が適正でないことによる現象が重要になっている。このため、パターン精度に対する要求は極めて高くなってきており、マスク製造における難易度も益々高くなっている。それ故、基準を満たすマスクの歩留まりが低下して、マスクの製造コストの高騰を招いている。こうしたことから、欠陥の判定方法にウェハ転写シミュレータ(リソグラフィ・シミュレータまたはプロセス・シミュレータとも言う。)を用いる方法が提案されている。この方法では、露光装置によってマスクからウェハに転写される露光イメージを推定し、この露光イメージ上でパターンの良否を判断する。尚、ウェハ転写シミュレータは、本発明における転写像推定部である。
【0071】
従来の検査装置では、欠陥ありと判断された場合、その判定根拠となったマスク採取データと、それに対応する参照画像とがこれらの座標とともに検査装置内に保存される。マスク1枚について検査が終了すると、検査装置内の観察光学系を利用してオペレータが目視で欠陥箇所のパターンを確認する。そして、修正の必要性や修正の可否を判断して、修正すべき欠陥を弁別した後、修正に必要な情報とともにこのマスクを修正装置に送る。ここで、修正に必要な情報とは、例えば、マスク内の座標、欠陥が凸形か凹型の区別、すなわち遮光膜を削るのか補填するのかの区別、および、修正装置で修正すべき箇所のパターンを認識するための切り出したパターンデータである。パターンデータには、上述のマスク採取データを利用できる。
【0072】
図5(a)は、マスクの形状欠陥の一例である。この例では、領域1003にアシストパターン1002の断裂がある。尚、アシストパターン1002は、メインパターン1001のパターニング特性を向上させる目的で補助的にマスクに設けられるパターンであり、それ自体はウェハに転写されない。
図5(a)のマスクのウェハ転写像をシミュレーションにより推定すると、
図5(b)のようになる。すなわち、ウェハ転写像では、欠陥箇所の線幅が正常部のパターンの線幅に比べて細くなる。この細くなる程度が規定値を超えた場合、領域1004は修正すべき欠陥箇所と判定される。尚、細くなる程度は、正常部と欠陥部の推定線幅の差で規定する場合と、正常部に対する欠陥部の推定線幅の比率で規定する場合とがある。
【0073】
図5(a)および(b)の例では、ウェハ転写推定像でメインパターン1001の線幅が細くなることから、メインパターン1001の線幅を修復することも考えられる。しかし、この場合の修正は、メインパターン1001に対して行うのではなく、アシストパターン2に対して行う。すなわち、メインパターン1001の線幅を修正するのではなく、アシストパターン1002の断裂を修正する。
【0074】
また、最近では、マスクに形成するパターンと、露光装置で用いられる光源の強度や照射方向をともに最適化し、マスクに微細なパターンを形成することが行われている。こうした場合、マスクには非常に複雑な形状のパターンが描画される。
【0075】
図6(a)は、露光光源の照射面形状1を模式的に示した一例であり、光の強度分布は照射面内で一様で照射方向における指向性もない。この露光光源と、
図6(b)に示すパターン形状2のマスクとを組み合わせて、ウェハにパターンを転写したときの転写像3を推定すると、
図6(c)のようになる。
図6(c)では各パターンの線幅が一様でなく、判定基準によっては欠陥とされる形状となっている。
【0076】
これに対して、
図7(a)のように、露光光源の照射面形状4において、光の強弱に分布があり照射方向に指向性を有する光源と、
図7(b)に示すパターン形状5のマスクとを組み合わせて、ウェハにパターンを転写する。推定される転写像6は、
図7(c)のようになる。このように、光源の形状とマスクパターンとを最適化することによって、所望の線幅および空隙を備えた微細パターンを形成することができる。
【0077】
しかしながら、
図7(b)のパターンに欠陥があった場合、マスク上での修正箇所と、ウェハ転写像での改善箇所との対応関係を把握するのは困難である。すなわち、ウェハ転写シミュレーションにより、マスクからウェハに転写される露光イメージを推定し、この露光イメージ上に何らかの形状欠陥が検出された場合、
図7(b)のようなパターンではマスクのどこを修正するとウェハ転写像が改善するのかを推定するのは容易でない。
【0078】
図8(a)はマスクの参照画像であり、
図8(b)はこの参照画像から推定したウェハ転写像である。また、
図9(a)は欠陥を含むマスクの光学画像(マスク採取データ)であり、
図9(b)はこの光学画像から推定したウェハ転写像である。
【0079】
図8(b)のウェハ転写像8と、
図9(b)のウェハ転写像12を比較すると、ウェハ転写像12には、パターン線幅が狭くなっている欠陥箇所13がある。一方、
図8(a)の参照画像7と、
図9(a)の光学画像9を比較すると、光学画像9には、パターンが断裂している2つの欠陥箇所10、11がある。このように、光学画像に複数の欠陥が存在しても、ウェハにこれらのそれぞれに対応する座標近傍に欠陥が生じるとは限らない。すなわち、
図9(a)および(b)では、マスクの欠陥箇所は2つあるが、ウェハ転写像の欠陥箇所は1つである。このため、欠陥箇所10および11と、欠陥箇所13との対応関係を推定するのは難しい。つまり、欠陥箇所10および11のいずれを修復するとウェハ転写像12の欠陥箇所13が改善するのか、あるいは、欠陥箇所10および11の両方を修復しないと欠陥箇所13は改善しないのかといったことを推定するのは困難である。
【0080】
マスクの欠陥箇所とウェハ転写像の欠陥箇所の対応関係は、欠陥箇所が増えるほど複雑になる。そして、こうしたことは、欠陥箇所がマスクまたはウェハ上で互いに近接している場合に起こり易い。例えば、マスクの欠陥箇所がI、II、IIIの3箇所あり、ウェハ転写像の欠陥箇所が1箇所であった場合、I、II、IIIのいずれによってウェハ転写像に欠陥が生じているのか、あるいは、I、II、IIIのどの組み合わせ(IとIIの組み合わせ、I、IIおよびIIIの組み合わせなど。)によってウェハ転写像に欠陥が生じているのか、一見したところでは分からない。
【0081】
マスクに複数の欠陥がある場合、これらの組み合わせを変えて修正を行い、修正後のマスクの光学画像からウェハ転写像を推定して、ウェハ転写像が正常な状態に復元するか否かを確認することが考えられる。しかし、検査装置内で欠陥を有するマスクの光学画像を模擬修正し、そのウェハ転写像をシミュレーションできるようにすれば、実際に修正を行わずに修正箇所や修正の程度の適正を評価することができる。
【0082】
マスクの光学画像を模擬修正して修正後のウェハ転写像を推定するため、本実施の形態の検査装置100aは、模擬修正回路300とウェハ転写シミュレータ400を有する。但し、ウェハ転写シミュレータは、検査装置100aの外部装置としてもよい。この場合、検査装置100aは、ウェハ転写シミュレータとの間でデータのやりとりが可能なインターフェース部を有し、検査装置100aからウェハ転写シミュレータへ必要な情報が送信される。
【0083】
図2を用いて、検査装置100a内でのデータの流れを説明する。
【0084】
マスク検査結果205のうち、欠陥箇所のマスク採取データは、模擬修正回路300に送られて模擬修正が行われる。マスク採取データに複数の欠陥箇所がある場合には、修正箇所を変えて複数の模擬修正が行われる。
【0085】
例えば、1箇所の修正でウェハ転写像が正常な状態に復元する場合には、その箇所が問題となる欠陥位置として特定される。一方、全ての欠陥個所について1箇所ずつ修正を行っても、ウェハ転写像が正常な状態に復元しない場合には、2箇所を組み合わせて修正を行う。ウェハ転写像が正常な状態に復元される組み合わせが、問題となる欠陥位置として特定される。また、いずれの組み合わせについてもウェハ転写像が正常な状態に復元しない場合には、3箇所を組み合わせて修正を行う。以下、同様に、マスク上での欠陥個所の組み合わせ数を変えて順次修正を行い、問題となる欠陥個所がどれであるかを特定する。
【0086】
マスク上での欠陥座標同士が近接しているときは、欠陥毎にウェハ転写像を推定するのではなく、これらの欠陥が含まれる領域単位で推定する。すなわち、所定の範囲内にある全ての欠陥が含まれる光学画像を基にウェハ転写像を推定する。
【0087】
例えば、
図9(a)の例では、2つの欠陥箇所10、11がある。検査工程で、これらの欠陥箇所は別々に検出され、欠陥箇所の座標と光学画像はそれぞれ個別に保存される。しかし、
図9(a)のパターンは、複数のパターンの組み合わせにより成り立っているものであり、これらのパターンが互いに影響し合ってウェハ上に1つのパターンが転写される。このため、ウェハ転写像を推定する場合にも、複数の欠陥箇所同士の影響を考慮すべきであり、欠陥毎にウェハ転写像を推定するのでは、真のウェハ転写像を推定することにはならない。つまり、欠陥箇所10、11が影響し合うことによって、マスクの欠陥形状からは連想できない形状の欠陥がウェハに転写されたり、あるいは、マスク上で欠陥が含まれるパターンとは対応しないウェハ上のパターンへ欠陥の影響が及んだりすることなどが考えられる。
【0088】
模擬修正されたマスク採取データは、再びマスク検査結果205に戻された後、対応する箇所の参照画像とともにウェハ転写シミュレータ400に送られる。尚、参照画像に代えて、マスク設計のRETパターン付加前のパターンデータからマスク製造プロセスをシミュレーションして得られた像を用いてもよい。
【0089】
ウェハ転写シミュレータ400では、シミュレーションによってウェハ転写像の推定が行われる。具体的には、手本となる参照画像からウェハ転写像を推定するとともに、模擬修正後のマスク採取データからもウェハ転写像を推定する。尚、修正する欠陥箇所を変えて複数の模擬修正を行った場合には、修正後のマスク採取データから推定されるウェハ転写像は複数になる。その後、これらのウェハ転写像は、ウェハ転写シミュレータ400から比較回路301(第2の比較部)に送られる。
【0090】
比較回路301では、参照画像から推定されたウェハ転写像と、模擬修正後のマスク採取データから推定されたウェハ転写像とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。比較の結果、欠陥と判定された場合には、その座標と、欠陥判定の根拠となったウェハ転写像とが、転写像検査結果206として保存される。
【0091】
尚、本実施の形態の検査装置では、模擬修正を行わずに転写シミュレータでウェハ転写像を推定してもよい。すなわち、
図2の比較回路108での比較の結果、欠陥と判断された箇所の座標、光学画像および対応する参照画像をウェハ転写シミュレータ400に送り、このパターンがウェハに転写されたときのウェハ転写像を推定する。その後、比較回路301において、参照画像から推定されたウェハ転写像と、光学画像から推定されたウェハ転写像との比較を行う。比較の結果、欠陥と判定された場合には、その座標と、欠陥判定の根拠となったウェハ転写像とが、転写像検査結果206として保存される。
【0092】
また、本実施の形態では、模擬修正を行わずにウェハ転写像を推定し、マスク上での欠陥とウェハ上での欠陥とを指摘した後、マスク上での欠陥に対して模擬修正を行い、模擬修正後のパターンについてウェハ転写像を推定してもよい。参照画像から推定されたウェハ転写像と、模擬修正後のマスク採取データから推定されたウェハ転写像とを比較することにより、最初に指摘したウェハ上での欠陥が解消されたか否かを確認することができる。
【0093】
マスク検査結果205と転写像検査結果206は、検査装置100aの外部装置であるレビュー装置500に送られる。レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が問題となるものであるかどうかを判断する動作である。レビュー装置500では、欠陥1つ1つの欠陥座標が観察できるように、マスクが載置されたテーブルを移動させながら、マスクの欠陥箇所の画像を表示する。また同時に欠陥判定の判断条件や、判定根拠になった光学画像と参照画像を確認できるよう、画面上にこれらを並べて表示する。マスク上での欠陥とウェハ転写像への波及状況とをレビュー工程で並べて表示することで、マスクパターンを修正すべきか否かを判断するのが容易になる。尚、一般に、マスクからウェハへは1/4程度の縮小投影が行われるので、並べて表示する際にはこの縮尺も考慮する。
【0094】
検査装置100aが検出した全欠陥は、レビュー装置500で判別される。但し、ウェハ転写像で検知された欠陥が軽微である場合には、事前処理によってレビュー対象から除くようにすることも可能である。
【0095】
判別された欠陥情報は、検査装置100aに戻されて磁気ディスク装置109に保存される。そして、レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスクは、欠陥情報リスト207とともに、検査装置100aの外部装置である修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト207には、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0096】
尚、本実施の形態においては、検査装置100a自身がレビュー機能を有していてもよい。この場合には、マスク検査結果205と転写像検査結果206とが、制御計算機110の画面上、または、別途準備される計算機の画面上に、欠陥判定の付帯情報とともに画像表示される。また、マスクの欠陥箇所の画像は、検査装置100aの観察光学系画像を使って表示される。
【0097】
図10は、ウェハ転写像やレジスト像を基に欠陥判定した結果をオペレータが閲覧するための画面である。上段は、参照画像またはダイ−トゥ−ダイ比較方式の検査の場合の手本側の光学画像である。また、下段は、欠陥を含む検査対象側の光学画像である。それぞれ図の左から順に、(1)検査装置の透過光学系により撮影された画像、(2)検査装置の反射光学系により撮影された画像、(3)これらの画像から推定されたマスク像、(4)マスク像を基に露光条件を模擬して推定したウェハ転写像、(5)レジストの特性を模擬して推定したレジスト像である。
【0098】
図10に示すレビュー画面によれば、参照画像、光学画像、および、これらから推定した転写像が並べて表示されるので、オペレータはこれらの画像を見比べて、レビューすべき欠陥を絞ることができる。
【0099】
図11に検査装置におけるレビュー画面の別の例を示す。この画面は、欠陥判定の根拠となった参照画像と、欠陥が含まれる光学画像とを、オペレータが見比べられるように表示するウィンドウや、マスク上の検査範囲の欠陥分布を表示するウィンドウなどで構成される。また、光学画像と参照画像の差を表示したり、光学画像や参照画像の各画素の輝度を数値でダンプ表示したり、欠陥を解析する目的でセンサ輝度をX軸とY軸で断面をとって表示するプロファイル画面ウィンドウが追加される場合もある。
【0100】
本実施の形態においては、
図10のレビュー画面と
図11のレビュー画面とを選択的に表示させるようにすることができる。
図12を用いてこの場合のレビュー方法について説明する。
【0101】
図12のマスク検査30は、
図2で述べた光学画像(マスク採取データ)取得工程、参照画像生成工程および比較工程によって行われる。マスク検査30では、マスク採取データと、参照画像とを、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較し、両者の差異が所定の値を超えた場合にその箇所を欠陥箇所と判定する。欠陥と判定した場合には、その座標と、欠陥判定の根拠となったマスク採取データと、参照画像とが、マスク検査結果として保存される。
【0102】
マスク検査結果はレビュー装置に送られ、オペレータによるレビューによって修正の要否が判断される(第1のレビュー31)。第1のレビュー31には、
図11のレビュー画面を用いることができ、欠陥判定の根拠となった参照画像と、欠陥が含まれる光学画像とをオペレータが見比べてレビューする。このとき、マスクに形成されるパターン形状が比較的単純なものであれば、オペレータは、ウェハ転写シミュレータを起動せずにマスクの欠陥箇所からウェハ上での欠陥箇所を予測して、修正の要否を判断することができる。一方、
図7で説明したように、マスクに形成するパターンと露光装置で用いられる光源との組み合わせを考慮して、マスクに微細なパターンを形成する場合、ウェハ転写像を推定せずに修正の要否を判断するのは困難である。
【0103】
そこで、第1のレビュー31を行った後は、ウェハ転写像要否の判断32を行う。ウェハ転写像が不要であると判断した場合には、ウェハ転写シミュレータを起動しない。そして全ての欠陥をレビューしたか否かの判断35を行い、レビューしていない場合には、第1のレビュー31に戻り、レビューした場合には、一連の検査工程とレビュー工程を終了する。一方、ウェハ転写像が必要であると判断した場合には、ウェハ転写像の推定33を行う。尚、
図2で述べたように、欠陥箇所の模擬修正を行った後にウェハ転写像の推定33を行ってもよい。転写像検査結果はレビュー装置に送られ、オペレータによる第2のレビュー34が行われる。第2のレビュー34には、
図10のレビュー画面が用いられる。すなわち、オペレータは、参照画像、光学画像、および、これらから推定した転写像を見比べてレビューする。その後は、全ての欠陥をレビューしたか否かの判断35を行い、レビューしていない場合には、第1のレビュー31に戻り、レビューした場合には、一連の検査工程とレビュー工程を終了する。
【0104】
以上述べたように、本実施の形態1では、検査装置でマスクの欠陥が検出される都度、ウェハ転写シミュレータを起動してウェハ転写像を推定することができるが、レビューを行った後にウェハ転写像の要否を判断し、必要と判断した場合にウェハ転写シミュレータを起動することもできる。後者は、マスクからウェハへパターンを転写する際の露光条件、例えば、照射量や光源などを変えたときのマスク欠陥への影響度を調べるのに有効である。
【0105】
実施の形態1の特徴と利点は、次のようにまとめられる。
【0106】
本実施の形態によれば、マスクの欠陥判定処理を容易にすることができ、また、マスク上の欠陥とその結果として生じるウェハ像への波及を推定しながら欠陥判定処理を行うことのできる検査装置および検査方法が提供される。
【0107】
本発明は、実施の形態1に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0108】
例えば、
図1の光学画像取得部Aでは、レーザ光を照射する光源103を用いたが、電子ビームを用いて光学画像を取得することもできる。具体的には、SEM(Scanning Electron Microscope)またはMEM(Mirror Electron Microscope;ミラー電子顕微鏡)などを用いて光学画像を取得することができる。
【0109】
図20は、
図1の光学画像取得部AにSEMを用いた例である。尚、この図で
図1と同じ符号を用いた部分は、同じものであることを示している。
【0110】
図20の例では、電子銃40から放出された電子ビームは、コンデンサレンズ41で収束されて、ステージ43上に載置されたマスク39に照射される。マスク39上における電子ビームの走査ラインや走査速度は、走査コイル45によって制御される。マスク39上に電子ビームを照射した後、反射電子は検出器42に導かれる。検出器42からの出力信号は、センサ(図示せず)で増幅され、さらにデジタルデータに変換された後、比較回路108(第1の比較部)へ送られる。
【0111】
また、
図21は、
図1の光学画像取得部AにMEMを用いた例である。尚、この図で
図1と同じ符号を用いた部分は、同じものであることを示している。
【0112】
図21の例では、マスク53は、絶縁体60を介してステージ55上に載置されている。電子銃50から放出された電子ビームは、コンデンサレンズ51で収束され、E×B偏向器52で偏向された後、対物レンズ54によりマスク53に対し垂直な方向に入射する面状のビームとなる。電子ビームはマスク53上で反射した後、反射電子は、対物レンズ54と結像系レンズ56を透過した後、蛍光板57に投影される。その後、光学レンズ58によって、蛍光板57上の光学像は、CCD59の受光面上に結像される。次いで、CCD59上に結像されたパターンの像は、デジタルデータに変換された後、比較回路108(第1の比較部)へ送られる。
【0113】
また、実施の形態1では、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全てのパターン検査装置およびパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【0114】
実施の形態2.
図5(a)は、マスクの形状欠陥の一例である。この例では、領域1003にアシストパターン1002の断裂がある。尚、アシストパターン1002は、メインパターン1001のパターニング特性を向上させる目的で補助的にマスクに設けられるパターンであり、それ自体はウェハに転写されない。
図5(a)のマスクのウェハ転写像をシミュレーションにより推定すると、
図5(b)のようになる。すなわち、ウェハ転写像では、欠陥箇所の線幅が正常部のパターンの線幅に比べて細くなる。この細くなる程度が規定値を超えた場合、領域1004は修正すべき欠陥箇所と判定される。尚、細くなる程度は、正常部と欠陥部の推定線幅の差で規定する場合と、正常部に対する欠陥部の推定線幅の比率で規定する場合とがある。
【0115】
図5(a)および
図5(b)の例では、ウェハ転写推定像でメインパターン1001の線幅が細くなることから、メインパターン1001の線幅を修復することも考えられる。しかし、この場合の修正は、メインパターン1001に対して行うのではなく、アシストパターン1002に対して行う。すなわち、メインパターン1001の線幅を修正するのではなく、アシストパターン1002の断裂を修正する。
【0116】
また、最近では、マスクに形成するパターンと、露光装置で用いられる光源の強度や照射方向をともに最適化し、マスクに微細なパターンを形成することが行われている。こうした場合、マスクには非常に複雑な形状のパターンが描画される。
【0117】
図6(a)は、露光光源の照射面形状1を模式的に示した一例であり、光の強度分布は照射面内で一様で照射方向における指向性もない。この露光光源と、
図6(b)に示すパターン形状2のマスクとを組み合わせて、ウェハにパターンを転写したときの転写像3を推定すると、
図6(c)のようになる。
図6(c)では各パターンの線幅が一様でなく、判定基準によっては欠陥とされる形状となっている。
【0118】
これに対して、
図7(a)のように、露光光源の照射面形状4において、光の強弱に分布があり照射方向に指向性を有する光源と、
図7(b)に示すパターン形状5のマスクとを組み合わせて、ウェハにパターンを転写する。推定される転写像6は、
図7(c)のようになる。このように、光源の形状とマスクパターンとを最適化することによって、所望の線幅および空隙を備えた微細パターンを形成することができる。
【0119】
しかしながら、
図7(b)のパターンに欠陥があった場合、マスク上での修正箇所と、ウェハ転写像での改善箇所との対応関係を把握するのは困難である。すなわち、ウェハ転写シミュレーションにより、マスクからウェハに転写される露光イメージを推定し、この露光イメージ上に何らかの形状欠陥が検出された場合、
図7(b)のようなパターンではマスクのどこを修正するとウェハ転写像が改善するのかを推定するのは容易でない。
【0120】
図8(a)はマスクの参照画像であり、
図8(b)はこの参照画像から推定したウェハ転写像である。また、
図9(a)は欠陥を含むマスクの光学画像(マスク採取データ)であり、
図9(b)はこの光学画像から推定したウェハ転写像である。
【0121】
図8(b)のウェハ転写像8と、
図9(b)のウェハ転写像12を比較すると、ウェハ転写像12には、パターン線幅が狭くなっている欠陥箇所13がある。一方、
図8(a)の参照画像7と、
図9(a)の光学画像9を比較すると、光学画像9には、パターンが断裂している2つの欠陥箇所10、11がある。このように、光学画像に複数の欠陥が存在しても、ウェハにこれらのそれぞれに対応する座標近傍に欠陥が生じるとは限らない。すなわち、
図9(a)および
図9(b)では、マスクの欠陥箇所は2つあるが、ウェハ転写像の欠陥箇所は1つである。このため、欠陥箇所10および11と、欠陥箇所13との対応関係を推定するのは難しい。つまり、欠陥箇所10および11のいずれを修復するとウェハ転写像12の欠陥箇所13が改善するのか、あるいは、欠陥箇所10および11の両方を修復しないと欠陥箇所13は改善しないのかといったことを推定するのは困難である。
【0122】
マスクの欠陥箇所とウェハ転写像の欠陥箇所の対応関係は、欠陥箇所が増えるほど複雑になる。そして、こうしたことは、欠陥箇所がマスクまたはウェハ上で互いに近接している場合に起こり易い。例えば、マスクの欠陥箇所がI、II、IIIの3箇所あり、ウェハ転写像の欠陥箇所が1箇所であった場合、I、II、IIIのいずれによってウェハ転写像に欠陥が生じているのか、あるいは、I、II、IIIのどの組み合わせ(IとIIの組み合わせ、I、IIおよびIIIの組み合わせなど。)によってウェハ転写像に欠陥が生じているのか、一見したところでは分からない。
【0123】
マスクに複数の欠陥がある場合、これらの組み合わせを変えて実際に修正を行い、修正後のマスクの光学画像からウェハ転写像を推定して、ウェハ転写像が正常な状態に復元するか否かを確認することが考えられる。しかし、欠陥を有するマスクの光学画像を模擬修正し、得られた画像からウェハ転写像を推定できるようにすれば、実際に修正を行わずに修正箇所や修正の程度の適正を評価することが可能になる。そして、この機能を検査装置に持たせれば、マスク欠陥がウェハへ及ぼす影響の程度や、検出された欠陥がマスク上のどこのパターンを修正すると解消されるのかを、検査装置に指摘させることができる。
【0124】
以下では、本実施の形態の各態様について図面を参照しながら説明する。
【0125】
(1)欠陥推定装置および欠陥推定方法
図13を用いて、実施の形態2の第1の態様による欠陥推定装置および欠陥推定方法を説明する。尚、
図13で
破線に囲まれた部分が、この欠陥推定装置を構成する主要部である。
【0126】
欠陥推定装置は、シミュレータ(推定部とも称する。本願において同じ。)700と、比較回路302と、模擬修正回路303とを有する。シミュレータ700には、参照画像データD
1および光学画像データD
2が入力される。これらは、実施の形態2で説明するように、検査装置の内部で生成することができる。
【0127】
シミュレータ700は、参照画像データD
1および光学画像データD
2を用いて、マスクからウェハに転写されるパターンイメージを推定する。このパターンイメージは、現像やエッチングなどの一連のリソグラフィプロセスにおけるどの段階のレジストパターンイメージでもよく、あるいは、ウェハに最終的に形成される回路パターンイメージでもよい。尚、ウェハは本発明における基板の一例である。
【0128】
例えば、所定の回路パターンが形成されたフォトマスクを検査対象とする。このフォトマスクは、ウェハにその回路パターンを転写する目的で使用されるものである。転写は、例えば、次のような工程によって行われる。まず、ウェハ上にレジスト膜を設ける。次に、上記のフォトマスクを介して露光装置によりウェハを露光し、レジスト膜に回路パターンの露光イメージを転写する。次いで、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをマスクとして下層の膜をエッチングした後、レジスト膜を剥離する。これにより、下層の膜を目的とする形状のパターンに加工することができる。次に、下層膜の凹部に銅(Cu)などを充填した後、CMP(Chemical Mechanical Planarization)法により不要な部分を除去することで配線パターンが形成される。
【0129】
上記例の場合、シミュレータ700は、例えば、露光装置でマスクからウェハに転写される露光イメージを推定することができる。また、ウェハ上に形成されるレジストパターンイメージを推定することもできる。あるいは、下層膜に形成される凹部のパターンイメージや、銅などを埋め込んだ後の配線パターンイメージを推定することもできる。尚、これらのパターンイメージには、参照画像データD
1から推定されるパターンイメージI
1と、光学画像データD
2から推定されるパターンイメージI
2の両方が含まれる。また、本実施の形態では、シミュレータ700で推定されるもの、すなわち、露光装置でマスクからウェハに転写される露光イメージ、ウェハ上に形成されるレジストパターンイメージ、配線パターンイメージなどをパターンイメージと総称して、参照画像データD
1および光学画像データD
2と区別する。
【0130】
シミュレーションは、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0131】
<露光イメージのシミュレーション>
露光装置でウェハに転写される回路パターンなどの露光イメージのシミュレーションには、非特許文献3(H.H.Hopkins、 On the di_raction theory of optical images, In Proc. Royal Soc. Series A., volume 217 No.1131, pages 408−432,1953)と、非特許文献6(N.B.Cobb,「Fast Optical and Process Proximity Correction Algorithms for Integrated Circuit Manufacturing」 A dissertation submitted in partial satisfaction of the requirements for the degree of Doctor of Philosophy in Engineering: Electrical Engineering and Computer Science in the Graduate Division of the University of California at Berkeley, Spring 1988)を参照することができる。
【0132】
露光装置の光学系は、部分コヒーレントな光学系である。露光装置でマスクに描かれたパターンをウェハに転写した場合、ウェハ上の点(x,y)における光強度I(x,y)は、そのフーリエ変換した量I
*(f
x,f
y)を求めることにより、下式を用いて計算できる。但し、iは純虚数であり、i=(−1)
1/2である。
【0134】
I
*(f
x,f
y)は、次のHopkinsの公式を用いて求められる。
【0136】
上記のHopkinsの公式において、G(f
x,f
y)はマスクのフーリエ変換した量を表す。また、T(f
x’,f
y’;f
x,f
y)は相互透過係数(transmission cross coeffcients)であり、次のように計算される。
【0138】
上式において、J
0−(f
x,f
y)は、実効光源(effective source)における光源強度分布である。また、K(f
x,f
y)は、瞳関数(コヒーレント透過関数:coherent transmission function)である。SMO(source mask optimization)により光源の形状を変化させて最適化されたマスクの場合、光源の形状変化は光源強度分布J
0−(f
x,f
y)に反映される。
【0139】
<露光イメージからレジストパターンのシミュレーション>
露光イメージからレジストパターンのシミュレーションには、非特許文献4(N.B.Cobb, A.Zakhor, M.Reihani, F.Jahansooz, and V.N.Raghavan: Proc.SPIE 3051(1997)458)と、非特許文献6(N.B.Cobb,「Fast Optical and Process Proximity Correction Algorithms for Integrated Circuit Manufacturing」 A dissertation submitted in partial satisfaction of the requirements for the degree of Doctor of Philosophy in Engineering: Electrical Engineering and Computer Science in the Graduate Division of the University of California at Berkeley, Spring 1988)を参照することができる。
【0140】
非特許文献4と非特許文献6に記載の方法は、以下の通りである。まず、事前に複数の設計パターンを用意し、それを実際に、転写、現像して、出来上がったレジストパターンを測定、計測しておく。また、各パターンを露光装置で転写したときの光量分布を露光イメージのシミュレーションによって求めておく。
図14にその一例を示す。
【0141】
図14に示すように、各パターンについて、露光量分布から(1)光量と、(2)設計パターンの端部(辺)における光量の傾きを求める。また、対応する出来上がりのパターンの計測結果から図形辺の位置が分かるので、その位置に対応する光量を求める。この光量がパターンの辺の位置を決める閾値であり、(1)光量と、(2)設計パターンの端部(辺)における光量の傾きの関数となっている。
【0144】
実際のシミュレーションは次のようにして行う。レジスト形状についてシミュレーションをしたいパターンに対し、露光イメージシミュレーションにより光学分布を求めて、光量と辺の位置での傾きを求める。そして、光量分布と傾きから、光量の閾値を、表1に示すような関係を用いて求める。次に、露光イメージシミュレーションによって得られた光学分布と閾値から辺の位置を計算する。これにより、辺の位置の移動が分かるので、出来上がりのパターンをシミュレーションすることができる。
【0145】
<エッチングなどのウェハプロセス処理後におけるパターン形状のシミュレーション>
LSIの製造工程では、ウェハ上にレジストパターンを形成した後、このレジストパターンをマスクとして下層の膜をエッチングし、下層に目的とする形状のパターンを形成する。また、ダマシン法により、多層配線構造を形成する場合には、下層膜を絶縁膜として、エッチング後の絶縁膜の凹部に導電性バリア膜と銅の主導体膜を充填し、銅配線パターンを形成する。
【0146】
このように、一連のLSI製造プロセスにおいては、レジストパターン以外の各種パターンが形成される。これらのパターンのシミュレーションには、非特許文献5(M.Osawa, T.Yao, H.Aoyama, K.Ogino, H.Hoshino, Y.Machida, S.Asai, and H.Arimoto, J.Vac.Sci.Technol. B21(2003)2806)と、非特許文献6(N.B.Cobb,「Fast Optical and Process Proximity Correction Algorithms for Integrated Circuit Manufacturing」 A dissertation submitted in partial satisfaction of the requirements for the degree of Doctor of Philosophy in Engineering: Electrical Engineering and Computer Science in the Graduate Division of the University of California at Berkeley, Spring 1988)を参照することができる。
【0147】
非特許文献5と非特許文献6によれば、辺上の点(x,y)が辺と直角且つ外側にδ(x,y)だけ移動するとすれば、その移動量は次式で表される。
【0149】
上記式において、Lは、注目する辺上の点が属する図形のサイズである。また、第2項のf(L)は、かかる図形のサイズにより決定される点(x,y)の移動量である。また、第1項は、注目とする点が属する図形に加えて、周辺の図形の影響も受けて生じる点(x,y)の移動量である。この第1項は、非特許文献5に記載の寄与である。さらに、γは、移動量がパターンに依存して変化する量の目安である。尚、g(x,y)は以下のように規格化しておく。
【0151】
上記関数やパラメータγは、エッチングなどの対象となる膜の材質や加工方法、加工時間などにより異なるため、予め実験で決定しておく。これにより、辺の位置の移動が分かるので、出来上がりのパターンをシミュレーションすることができる。
【0152】
上記のようなシミュレーション方法により、シミュレータ700で推定されたパターンイメージI
1、I
2は、比較回路302に送られる。比較回路302では、参照画像データD
1から推定されたパターンイメージI
1と、光学画像データD
2から推定されたパターンイメージI
2とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。例えば、レジストパターンの場合、パターンイメージI
1、I
2に記されるパターンの情報を比較し、対応する辺の位置の違いが所定の量、例えば4nmを超えれば欠陥とみなす。比較の結果、欠陥と判定された場合には、その座標と、欠陥判定の根拠となったパターンイメージI
1、I
2とが、比較回路302に保存される。例えば、
図9(b)において、パターンイメージI
2の欠陥位置は符号13である。
【0153】
パターンイメージI
1、I
2から欠陥と判定された箇所について、対応する位置のマスクの参照画像データD
1と光学画像データD
2が模擬修正回路303に送られる。模擬修正回路303では、送られた欠陥箇所に対する模擬修正が行われる。この模擬修正は次のようにして行う。すなわち、欠陥と推定された位置の周辺について、マスクの参照画像データD
1と光学画像データD
2とを比較して異なる場所を見出す。この異なった場所での光学情報を参照画像の対応した光学情報と置き換える。例えば、
図9(a)に符号10で示す欠陥箇所の情報を、
図7(b)に符号701、702で示す欠陥箇所の情報に置き換える。パターンイメージI
2に複数の欠陥箇所がある場合には、修正箇所を変えて複数の模擬修正を行えば、根本となる原因箇所の欠陥を特定することができる。
【0154】
例えば、1箇所の修正でウェハ転写像が正常な状態に復元する場合には、その箇所が問題となる欠陥位置として特定される。一方、全ての欠陥個所について1箇所ずつ修正を行っても、ウェハ転写像が正常な状態に復元しない場合には、2箇所を組み合わせて修正を行う。ウェハ転写像が正常な状態に復元される組み合わせが、問題となる欠陥位置として特定される。また、いずれの組み合わせについてもウェハ転写像が正常な状態に復元しない場合には、3箇所を組み合わせて修正を行う。以下、同様に、マスク上での欠陥個所の組み合わせ数を変えて順次修正を行い、問題となる欠陥個所がどれであるかを特定する。
【0155】
近接する欠陥座標がそれぞれ異なる光学画像データD
2として比較回路302に保存されている場合、模擬修正回路303では、これらの欠陥が含まれる領域単位で模擬修正が行われるようにする。すなわち、所定の範囲内にある全ての欠陥が含まれる光学画像データD
2に対して模擬修正する。
【0156】
例えば、
図9(a)の例では、2つの欠陥箇所10、11がある。比較回路302において、これらの欠陥箇所は別々に検出され、欠陥箇所の座標とパターンイメージI
2はそれぞれ個別に保存される。しかし、
図9(a)のパターンは、複数のパターンの組み合わせにより成り立っているものであり、これらのパターンが互いに影響し合ってウェハ上に1つのパターンが転写される。このため、パターンイメージI
2を推定する場合にも、複数の欠陥箇所同士の影響を考慮すべきであり、欠陥毎にパターンイメージI
2を推定するのでは、真のパターンイメージI
2を推定することにはならない。つまり、欠陥箇所10、11が影響し合うことによって、マスクの欠陥形状からは連想できない形状の欠陥がウェハに転写されたり、あるいは、マスク上で欠陥が含まれるパターンとは対応しないウェハ上のパターンへ欠陥の影響が及んだりすることなどが考えられる。
【0157】
模擬修正された光学画像データD
2は、新たな光学画像データD
2’となって、再びシミュレータ700に戻される。そして、シミュレータ700において、手本となる参照画像データD
1から新たなパターンイメージI
3が推定され、模擬修正された光学画像データD
2’からも新たなパターンイメージI
4が推定される。修正する欠陥箇所を変えて複数の模擬修正を行った場合には、修正後の光学画像データD
2’から推定される新たなパターンイメージI
4は複数になる。
【0158】
パターンイメージI
3、I
4は、パターンイメージI
1、I
2より、リソグラフィプロセスの段階が同じものであってもよく、また、進んだ状態のものであってもよい。例えば、パターンイメージI
1、I
2、I
3、I
4のいずれについても露光装置でマスクからウェハに転写される露光イメージとすることができる。また、パターンイメージI
1、I
2がウェハ上に形成されるレジストパターンイメージであれば、パターンイメージI
3、I
4は、ウェハ上に形成される配線パターンイメージとすることもできる。
【0159】
シミュレータ700で新たに推定されたパターンイメージI
3、I
4は、シミュレータ700から再び比較回路302に送られる。手本となるパターンイメージI
3と、模擬修正後のパターンイメージI
4とを比較することにより、最初に指摘したウェハ上での欠陥が解消されたか否かを確認することができる。比較の結果、欠陥と判定された座標と、欠陥判定の根拠となったパターンイメージI
3、I
4とは、参照画像データD
1および光学画像データD
2とともに、欠陥情報リスト208aとして外部装置に出力される。
【0160】
本実施の形態では、欠陥情報リスト208aはレビュー装置500に送られる。レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が問題となるものであるかどうかを判断する動作である。レビュー装置500では、欠陥1つ1つの欠陥座標が観察できるように、マスクが載置されたテーブルを移動させながら、マスクの欠陥箇所の画像を表示する。また同時に、欠陥判定の判断条件や、判定根拠になったパターンイメージI
3、I
4や、参照画像データD
1および光学画像データD
2を確認できるよう、画面上にこれらを並べて表示する。これにより、マスクパターンを修正すべきか否かを判断するのが容易になる。尚、一般に、マスクからウェハへは1/4程度の縮小投影が行われるので、並べて表示する際にはこの縮尺も考慮する。
【0161】
レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスクは、欠陥情報リスト208bとともに修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト208bには、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0162】
以上述べたように、本実施の形態2の第1の態様の欠陥推定装置および欠陥推定方法では、光学画像からウェハに転写された後のパターンイメージを推定し、同様にして参照画像から推定したパターンイメージと比較することによって欠陥の有無を判定する。そして、欠陥と判定された個所のパターンイメージについて模擬修正を行った後、再び手本となる画像と比較して欠陥の有無を判定する。このようにすることで、マスク上の欠陥とそれがウェハに及ぼす影響、さらには修正による改善の程度まで推定することができる。
【0163】
尚、実施の形態2の第1の態様の欠陥推定装置および欠陥推定方法では、参照画像を基準画像としているが、これに限られるものではない。すなわち、基準画像は、パターンの設計データから作成された参照画像、または、マスク上で対象としている光学画像とは異なる領域にある同じパターンの光学画像とすることができる。
【0164】
(2)検査装置
実施の形態2の第2の態様による検査装置は、上記の第1の態様による欠陥推定装置の機能を内部に備えていることを特徴とする。
【0165】
図15は、この検査装置のシステム構成図である。本実施の形態においては、フォトリソグラフィ法などで使用されるフォトマスクを検査対象としている。
【0166】
図15に示すように、検査装置100bは、光学画像取得部Aと制御部Bを有する。
【0167】
光学画像取得部Aは、光源103と、水平方向(X方向、Y方向)および回転方向(θ方向)に移動可能なXYθテーブル102と、透過照明系を構成する照明光学系170と、拡大光学系104と、フォトダイオードアレイ105と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。
【0168】
制御部Bでは、検査装置100b全体の制御を司る制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較回路302、参照回路112、展開回路111、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置116、CRT117、パターンモニタ118およびプリンタ119に接続されている。XYθテーブル102は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータ、Y軸モータおよびθ軸モータによって駆動される。これらのモータには、例えば、ステップモータを用いることができる。
【0169】
データベース方式の基準データとなる設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路111に送られる。展開回路111では、設計パターンデータがイメージデータ(ビットパターンデータ)に変換される。その後、このイメージデータは、参照回路112に送られて、基準画像となる参照画像の生成に用いられる。
【0170】
尚、
図15では、本実施の形態で必要な構成成分を記載しているが、フォトマスクを検査するのに必要な他の公知成分が含まれていてもよい。また、本実施の形態では、ダイ−トゥ−データベース検査方式を例にしているが、ダイ−トゥ−ダイ検査方式であってもよい。この場合には、マスク内の異なる領域にある同一パターンの一方の光学画像を基準画像として取り扱う。
【0171】
図16は、本実施の形態におけるデータの流れを示す概念図である。
【0172】
図16に示すように、設計者(ユーザ)が作成したCADデータ201は、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データ202に変換される。設計中間データ202には、レイヤ(層)毎に作成されて各マスクに形成される設計パターンデータが格納される。ここで、一般に、検査装置100bは、OASISデータを直接読み込めるようには構成されていない。すなわち、検査装置100bの製造メーカー毎に、独自のフォーマットデータが用いられている。このため、OASISデータは、レイヤ毎に各検査装置に固有のフォーマットデータ203に変換された後に検査装置100bに入力される。尚、フォーマットデータ203は、検査装置100bに固有のデータとすることができるが、描画装置と互換性のあるデータとしてもよい。
【0173】
フォーマットデータ203は、
図15の磁気ディスク装置109に入力される。すなわち、フォトマスク101のパターン形成時に用いた設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に記憶される。
【0174】
設計パターンに含まれる図形は、長方形や三角形を基本図形としたものである。磁気ディスク装置109には、例えば、図形の基準位置における座標(x,y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納される。
【0175】
さらに、数十μm程度の範囲に存在する図形の集合を一般にクラスタまたはセルと称するが、これを用いてデータを階層化することが行われている。クラスタまたはセルには、各種図形を単独で配置したり、ある間隔で繰り返し配置したりする場合の配置座標や繰り返し記述も定義される。クラスタまたはセルデータは、さらにフレームまたはストライプと称される、幅が数百μmであって、長さがフォトマスクのX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の短冊状領域に配置される。
【0176】
入力された設計パターンデータは、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して展開回路111によって読み出される。
【0177】
展開回路111は、設計パターンを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データを展開する。展開された設計画像データは、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算する。そして、各画素内の図形占有率が画素値となる。
【0178】
上記のようにして2値ないしは多値のイメージデータ(ビットパターンデータ)に変換された設計パターンデータは、次に参照回路112に送られる。参照回路112では、送られてきた図形のイメージデータである設計画像データに対して適切なフィルタ処理が施される。
【0179】
図3は、フィルタ処理を説明する図である。
【0180】
後述する、センサ回路106から得られた光学画像(マスク採取データ)は、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果等によってぼやけを生じた状態、言い換えれば空間的なローパスフィルタが作用した状態にある。したがって、画像強度(濃淡値)がデジタル値となった、設計側のイメージデータであるビットパターンデータにもフィルタ処理を施すことで、光学画像に合わせることができる。このようにして光学画像と比較する参照画像を作成する。
【0181】
次に、
図15および
図4を用いて光学画像の取得方法を説明する。
【0182】
図15において、光学画像取得部Aによって、フォトマスク101の光学画像が取得される。ここで、光学画像は、設計パターンに含まれる図形データに基づく図形が描画されたマスクの画像である。光学画像の具体的な取得方法は、例えば、次に示す通りである。
【0183】
検査対象となるフォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向および回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置される。そして、フォトマスク101に形成されたパターンに対し、XYθテーブル102の上方に配置された光源103から光が照射される。より詳しくは、光源103から照射される光束が、照明光学系170を介してフォトマスク101に照射される。フォトマスク101の下方には、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106が配置されている。フォトマスク101を透過した光は、拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像する。ここで、拡大光学系104は、図示しない自動焦点機構によって自動的に焦点調整がなされるように構成されていてもよい。さらに、図示しないが、検査装置100bは、フォトマスク101の下方から光を照射し、反射光を拡大光学系を介して第2のフォトダイオードアレイに導き、透過光と反射光を同時に採取するように構成されていてもよい。
【0184】
図4は、光学画像の取得手順を説明するための図である。
【0185】
検査領域は、
図4に示すように、Y方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20に仮想的に分割され、さらにその分割された各検査ストライプ20が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105には、
図4に示されるようなスキャン幅Wの画像が連続的に入力される。第1の検査ストライプ20における画像を取得すると、今度はXYθテーブル102が逆方向に移動しながら、第2の検査ストライプ20について同様にスキャン幅Wの画像が連続的に入力される。第3の検査ストライプ20については、第2の検査ストライプ20における画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプ20における画像を取得した方向に移動しながら取得する。このように、連続的に画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。
【0186】
図15のフォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、センサが配置されている。このセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサが挙げられる。XYθテーブル102がX軸方向に連続的に移動しながら、TDIセンサによってフォトマスク101のパターンが撮像される。ここで、光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成される。
【0187】
XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下、テーブル制御回路114によって駆動され、X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータには、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。また、XYθテーブル102上のフォトマスク101は、オートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後には自動的に排出されるようになっている。
【0188】
図15および
図16に示すように、センサ回路106から出力された光学画像データD2は、シミュレータ700に送られる。また、参照回路112で生成した参照画像データD1もシミュレータ700に送られる。
図16で
破線で囲んだ部分は、第1の態様で説明した欠陥推定機能を有する部分である。
【0189】
シミュレータ700は、参照画像データD
1および光学画像データD
2を用いて、マスクからウェハに転写されるパターンイメージを推定する。このパターンイメージは、現像やエッチングなどの一連のリソグラフィプロセスにおけるどの段階のレジストパターンイメージでもよく、あるいは、ウェハに最終的に形成される回路パターンイメージでもよい。
【0190】
例えば、所定の回路パターンが形成されたフォトマスクを検査対象とする。このフォトマスクは、ウェハにその回路パターンを転写する目的で使用されるものである。転写は、例えば、次のような工程によって行われる。まず、ウェハ上にレジスト膜を設ける。次に、上記のフォトマスクを介して露光装置によりウェハを露光し、レジスト膜に回路パターンの露光イメージを転写する。次いで、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをマスクとして下層の膜をエッチングした後、レジスト膜を剥離する。これにより、下層の膜を目的とする形状のパターンに加工することができる。次に、下層膜の凹部に銅(Cu)などを充填した後、CMP法により不要な部分を除去することで配線パターンが形成される。
【0191】
上記例の場合、シミュレータ700は、例えば、ウェハ上に形成されるレジストパターンイメージを推定することができる。あるいは、下層膜に形成される凹部のパターンイメージや、銅などを埋め込んだ後の配線パターンイメージを推定することもできる。尚、これらのパターンイメージには、参照画像データD
1から推定されるパターンイメージI
1と、光学画像データD
2から推定されるパターンイメージI
2の両方が含まれる。
【0192】
シミュレータ700で推定されたパターンイメージI
1、I
2は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上でのフォトマスク101の位置を示すデータとともに、比較回路302に送られる。
【0193】
比較回路302では、参照画像データD
1から推定されたパターンイメージI
1と、光学画像データD
2から推定されたパターンイメージI
2とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。例えば、エッチング後の欠陥を推定する場合には、パターンイメージI
1、I
2に記されるエッチング後のパターンの情報を比較するものとし、対応する辺の位置の違いが所定の量、例えば4nmを超えれば欠陥とみなす。比較の結果、欠陥と判定された場合には、その座標と、欠陥判定の根拠となったパターンイメージI
1、I
2とが、比較回路302に保存される。
【0194】
パターンイメージI
1、I
2から欠陥と判定された箇所について、対応する位置のマスクの参照画像データD
1と、光学画像データD
2とが模擬修正回路303に送られる。模擬修正回路303では、送られた欠陥箇所に対する模擬修正が行われる。この模擬修正は次のようにして行う。すなわち、欠陥と推定された位置の周辺について、マスクの参照画像データD
1と、光学画像データD
2とを比較して異なる場所を見出す。この異なった場所での光学情報を参照画像データD
1の対応した光学情報と置き換える。例えば、
図9(a)に符号10で示す欠陥箇所の情報を、
図7(b)に符号701、702で示す欠陥箇所の情報で置き換える。このとき、パターンイメージI
2に複数の欠陥箇所がある場合には、修正箇所を変えて複数の模擬修正が行われる。
【0195】
例えば、1箇所の修正でウェハ転写像が正常な状態に復元する場合には、その箇所が問題となる欠陥位置として特定される。一方、全ての欠陥個所について1箇所ずつ修正を行っても、ウェハ転写像が正常な状態に復元しない場合には、2箇所を組み合わせて修正を行う。ウェハ転写像が正常な状態に復元される組み合わせが、問題となる欠陥位置として特定される。また、いずれの組み合わせについてもウェハ転写像が正常な状態に復元しない場合には、3箇所を組み合わせて修正を行う。以下、同様に、マスク上での欠陥個所の組み合わせ数を変えて順次修正を行い、問題となる欠陥個所がどれであるかを特定する。
【0196】
近接する欠陥座標がそれぞれ異なる光学画像D
2として比較回路302に保存されている場合、模擬修正回路303では、これらの欠陥が含まれる領域単位で模擬修正が行われるようにする。すなわち、所定の範囲内にある全ての欠陥が含まれる光学画像D
2に対して模擬修正する。
【0197】
模擬修正された光学画像D
2は、新たな光学画像D
2’となって、再びシミュレータ700に戻される。そして、シミュレータ700において、手本となる参照画像データD
1から新たなパターンイメージI
3が推定され、模擬修正された光学画像データD
2’からも新たなパターンイメージI
4が推定される。修正する欠陥箇所を変えて複数の模擬修正を行った場合には、修正後の光学画像データD
2’から推定される新たなパターンイメー
ジI
4は複数になる。
【0198】
パターンイメージI
3、I
4は、パターンイメージI
1、I
2より、リソグラフィプロセスの段階が同じものであってもよく、また、進んだ状態のものであってもよい。例えば、パターンイメージI
1、I
2、I
3、I
4のいずれについても露光装置でマスクからウェハに転写される露光イメージとすることができる。また、パターンイメージI
1、I
2がウェハ上に形成されるレジストパターンイメージであれば、パターンイメージI
3、I
4は、ウェハ上に形成される配線パターンイメージとすることもできる。
【0199】
シミュレータ700で新たに推定されたパターンイメージI
3、I
4は、シミュレータ700から再び比較回路302に送られる。手本となるパターンイメージI
3と、模擬修正後パターンイメージI
4とを比較することにより、最初に指摘したウェハ上での欠陥が解消されたか否かを確認することができる。比較の結果、欠陥と判定された座標と、欠陥判定の根拠となったパターンイメージI
3、I
4とは、参照画像データD
1および光学画像データD
2とともに、欠陥情報リスト208aとして検査装置の外部装置であるレビュー装置500に送られる。
【0200】
検査装置100bが検出した全欠陥は、レビュー装置500で判別される。但し、比較回路302で検知された欠陥が軽微である場合には、事前処理によってレビュー対象から除くようにすることも可能である。
【0201】
レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が問題となるものであるかどうかを判断する動作である。レビュー装置500では、欠陥1つ1つの欠陥座標が観察できるように、マスクが載置されたテーブルを移動させながら、マスクの欠陥箇所の画像を表示する。また同時に、欠陥判定の判断条件や、判定根拠になったパターンイメージI
3、I
4や、参照画像データD
1および光学画像データD
2を確認できるよう、画面上にこれらを並べて表示する。これにより、マスクパターンを修正すべきか否かを判断するのが容易になる。尚、一般に、マスクからウェハへは1/4程度の縮小投影が行われるので、並べて表示する際にはこの縮尺も考慮する。
【0202】
判別された欠陥情報は、検査装置100bに戻されて磁気ディスク装置109に保存される。そして、レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスクは、欠陥情報リスト208bとともに、検査装置100bの外部装置である修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト208bには、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0203】
尚、実施の形態2の第2の態様においては、検査装置100b自身がレビュー機能を有していてもよい。この場合には、パターンイメージI
3、I
4と、参照画像データD
1および光学画像データD
2とが、制御計算機110の画面上、または、別途準備される計算機の画面上に、欠陥判定の付帯情報とともに画像表示される。また、マスクの欠陥箇所の画像は、検査装置100bの観察光学系画像を使って表示される。
【0204】
以上述べたように、実施の形態2の第2の態様の検査装置では、光学画像からウェハに転写された後のパターンイメージを推定し、同様にして参照画像から推定したパターンイメージと比較することによって欠陥の有無を判定する。そして、欠陥と判定された個所のパターンイメージについて模擬修正を行った後、再び手本となる画像と比較して欠陥の有無を判定する。このようにすることで、マスク上の欠陥とそれがウェハに及ぼす影響、さらには修正による改善の程度まで推定することができる。したがって、本実施の形態の検査装置および検査方法によれば、マスク欠陥自体のウェハへの影響の程度や、検出された欠陥がマスク上のどこのパターンを修正すると解消されるのかを指摘することができる。
【0205】
尚、実施の形態2の第2の態様の検査装置は、
図15の例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0206】
例えば、
図15の光学画像取得部Aでは、レーザ光を照射する光源103を用いたが、電子ビームを用いて光学画像を取得することもできる。具体的には、SEM(Scanning Electron Microscope)またはMEM(Mirror Electron Microscope;ミラー電子顕微鏡)などを用いて光学画像を取得することができる。
【0207】
図22は、
図15の光学画像取得部AにSEMを用いた例である。尚、この図で
図15と同じ符号を用いた部分は、同じものであることを示している。
【0208】
図22の例では、電子銃40から放出された電子ビームは、コンデンサレンズ41で収束されて、ステージ43上に載置されたマスク39に照射される。マスク39上における電子ビームの走査ラインや走査速度は、走査コイル45によって制御される。マスク39上に電子ビームを照射することによって発生した反射電子は、検出器42に導かれる。検出器42からの出力信号は、センサ(図示せず)で増幅され、さらにデジタルデータに変換された後、シミュレータ700へ送られる。
【0209】
また、
図23は、
図15の光学画像取得部AにMEMを用いた例である。尚、この図で
図15と同じ符号を用いた部分は、同じものであることを示している。
【0210】
図23の例では、マスク53は、絶縁体60を介してステージ55上に載置されている。電子銃50から放出された電子ビームは、コンデンサレンズ51で収束され、E×B偏向器52で偏向された後、対物レンズ54によりマスク53に対し垂直な方向に入射する面状のビームとなる。電子ビームはマスク53上で反射した後、反射電子は、対物レンズ54と結像系レンズ56を透過した後、蛍光板57に投影される。その後、光学レンズ58によって、蛍光板57上の光学像は、CCD59の受光面上に結像される。次いで、CCD59上に結像されたパターンの像は、デジタルデータに変換された後、シミュレータ700へ送られる。
【0211】
(3)欠陥推定装置および欠陥推定方法
図17を用いて、本実施の形態2の第3の態様による欠陥推定装置および欠陥推定方法を説明する。尚、
図17で
破線に囲まれた部分が、この欠陥推定装置を構成する主要部である。
【0212】
欠陥推定装置は、第1のシミュレータ401と、第1の比較回路402と、模擬修正回路403と、第2のシミュレータ404と、第2の比較回路405とを有する。第1のシミュレータ401は第1のパターンイメージを推定し、第2のシミュレータ404は第2のパターンイメージを推定する。ここで、第2のパターンイメージは、第1のパターンイメージよりリソグラフィプロセスが進んだものである。すなわち、実施の形態1ではシミュレータ700のみであったため、模擬修正の前後で行う計算処理は基本的に同じものである。これに対して、本実施の形態では、2つのシミュレータを有しているので、これらの処理方法を変える点を特徴としている。
【0213】
第1のシミュレータ401には、参照画像データD
1および光学画像データD
2が入力される。これらは、実施の形態2で説明するように、検査装置の内部で生成することができる。
【0214】
第1のシミュレータ401は、入力された参照画像データD
1と光学画像データD
2を用いて第1のパターンイメージI
5、I
6を推定する。
【0215】
例えば、所定の回路パターンが形成されたフォトマスクを検査対象とする。このフォトマスクは、ウェハにその回路パターンを転写する目的で使用されるものである。転写は、例えば、次のような工程によって行われる。まず、ウェハ上にレジスト膜を設ける。次に、上記のフォトマスクを介して露光装置によりウェハを露光し、レジスト膜に回路パターンの露光イメージを転写する。次いで、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをマスクとして下層の膜をエッチングした後、レジスト膜を剥離する。これにより、下層の膜を目的とする形状のパターンに加工することができる。次に、下層膜の凹部に銅(Cu)などを充填した後、CMP法により不要な部分を除去することで配線パターンが形成される。
【0216】
上記例の場合、第1のシミュレータ401は、例えば、ウェハ上に転写される回路パターンの露光イメージを推定することができる。この露光イメージには、参照画像データD
1から推定されるパターンイメージI
5と、光学画像データD
2から推定されるパターンイメージI
6の両方が含まれる。
【0217】
第1のシミュレータ401で推定された第1のパターンイメージI
5、I
6は、第1の比較回路402に送られる。第1の比較回路402では、参照画像データD
1から推定されて、手本となるパターンイメージI
5と、光学画像データD
2から推定されたパターンイメージI
6とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。例えば、CMP処理の後のパターンの場合、CMPのシミュレーション自身は、エッチングの例と同様とし、得られたパターンメージに記される情報を比較して、対応する辺の位置の違いが所定の量、例えば4nmを超えれば欠陥とみなす。比較の結果、欠陥と判定された場合には、その座標と、欠陥判定の根拠となった第1のパターンイメージI
5、I
6とが、第1の比較回路402に保存される。
【0218】
第1のパターンイメージI
5、I
6から欠陥と判定された箇所について、対応する位置のマスクの参照画像データD
1と光学画像データD
2が、第1の比較回路402から模擬修正回路403に送られる。模擬修正回路403では、送られた欠陥箇所に対する模擬修正が行われる。この模擬修正は次のようにして行う。すなわち、欠陥と推定された位置の周辺について、マスクの参照画像データD
1と光学画像データD
2とを比較して異なる場所を見出す。この異なった場所での光学情報を参照画像の対応した光学情報と置き換える。例えば、
図9(a)に符号10で示す欠陥箇所の情報を、
図7(b)に符号701、702で示す欠陥箇所の情報に置き換える。パターンイメージI
6に複数の欠陥箇所がある場合には、修正箇所を変えて複数の模擬修正を行えば、根本となる原因箇所の欠陥を特定することができる。
【0219】
例えば、1箇所の修正でウェハ転写像が正常な状態に復元する場合には、その箇所が問題となる欠陥位置として特定される。一方、全ての欠陥個所について1箇所ずつ修正を行っても、ウェハ転写像が正常な状態に復元しない場合には、2箇所を組み合わせて修正を行う。ウェハ転写像が正常な状態に復元される組み合わせが、問題となる欠陥位置として特定される。また、いずれの組み合わせについてもウェハ転写像が正常な状態に復元しない場合には、3箇所を組み合わせて修正を行う。以下、同様に、マスク上での欠陥個所の組み合わせ数を変えて順次修正を行い、問題となる欠陥個所がどれであるかを特定する。
【0220】
近接する欠陥座標がそれぞれ異なる光学画像データD
2として第1の比較回路402に保存されている場合、模擬修正回路403では、これらの欠陥が含まれる領域単位で模擬修正が行われるようにする。すなわち、所定の範囲内にある全ての欠陥が含まれる光学画像データD
2に対して模擬修正する。複数のパターンの組み合わせにより成り立っているパターンでは、各構成パターンが互いに影響し合いながらウェハ上に1つのパターンとして転写される。このため、模擬修正されたパターンイメージを推定する場合にも、複数の欠陥箇所同士の影響を考慮すべきであり、欠陥毎に推定するのでは、真のパターンイメージを推定することにはならないからである。
【0221】
模擬修正された光学画像データD
2は、光学画像データD
2’となって、第2のシミュレータ404に送られる。そして、第2のシミュレータ404において、手本となる参照画像データD
1から新たに第2のパターンイメージI
7が推定され、光学画像データD
2’からも第2のパターンイメージI
8が推定される。修正する欠陥箇所を変えて複数の模擬修正を行った場合には、修正後の光学画像データD
2’から推定される第2のパターンイメージI
8は複数になる。
【0222】
第2のパターンイメージI
7、I
8は、第1のパターンイメージI
5、I
6より、リソグラフィプロセスの段階が進んだ状態である。例えば、第1のパターンイメージI
5、I
6をウェハ上に転写される回路パターンの露光イメージとすれば、第2のパターンイメージI
7、I
8は、現像やエッチングなどの一連のリソグラフィプロセスにおけるいずれかの段階のレジストパターンイメージとすることができる。あるいは、ウェハに最終的に形成される回路パターンイメージとすることもできる。さらに、回路パターンは、CMP処理前および後のいずれのものとすることもできる。
【0223】
第2のパターンイメージI
7、I
8を具体的にどの段階のイメージとするかは、プロセスに応じて適宜選択することができる。
【0224】
例えば、レジストパターンをマスクとする配線材料のエッチング工程で、マイクロローディング効果による寸法変動を生じる場合がある。この寸法変動は回路パターンにおける疎密差が大きくなるにつれて増大する。これは、ウェハ上に形成すべき回路パターンが密な領域と疎な領域とでは、後者の方がエッチングに必要な活性種がより多く阻害されるためである。その結果、回路パターンの密度に依存して、所望とする寸法(基になるパターンデータで定まる寸法)の回路パターンが得られなくなる。すなわち、ウェハ上に形成すべき回路パターンが疎な領域では、エッチングにより形成されたパターンの寸法が所望のパターン寸法より大きくなる一方、ウェハ上に形成すべき回路パターンが密な領域では、エッチングにより形成されたパターンの寸法が所望のパターン寸法より小さくなる。
【0225】
上記問題に対しては、回路パターン内の微小な区画全てにわたるパターンデータの補正処理が行われる。これにより、現像処理後のパターン寸法は所望とする寸法から外れるが、エッチング後のパターン寸法は所望とする寸法にすることができる。したがって、この例において、第2のシミュレータ404で推定する第2のパターンイメージを現像後のレジストパターンイメージとすると、全てのパターンについて欠陥と判断されるおそれがあるが、エッチング後のレジストパターンイメージや、配線パターンイメージとすれば、欠陥の有無を正確に判定することが可能である。
【0226】
第2のシミュレータ404で推定された第2のパターンイメージI
7、I
8は、第2の比較回路405に送られる。第2の比較回路405において、手本となる第2のパターンイメージI
7と、模擬修正後の光学画像データD
2’から推定された第2のパターンイメージI
8とを比較することにより、最初に指摘したウェハ上での欠陥が解消されたか否かを確認することができる。比較の結果、欠陥と判定された座標と、欠陥判定の根拠となった第2のパターンイメージI
7、I
8とは、参照画像データD
1および光学画像データD
2とともに、欠陥情報リスト209として外部装置に出力される。
【0227】
尚、実施の形態2の第3の態様による欠陥推定装置には第2の比較装置405がなくてもよい。この場合、欠陥推定装置は、第2のシミュレータ404で推定された第2のパターンイメージI
7、I
8を参照画像データD
1および光学画像データD
2とともに外部装置に出力する。外部装置を検査装置とすれば、検査装置は欠陥推定装置から上記データを受け取り、内部の比較回路において、手本となる第2のパターンイメージI
7と、模擬修正後の光学画像データD
2’から推定された第2のパターンイメージI
8とを比較する。これにより、欠陥推定装置で最初に指摘されたウェハ上での欠陥が解消されたか否かを確認することができる。
【0228】
図17の例において、欠陥情報リスト209はレビュー装置500に送られる。レビュー装置500では、欠陥1つ1つの欠陥座標が観察できるように、マスクが載置されたテーブルを移動させながら、マスクの欠陥箇所の画像を表示する。また同時に、欠陥判定の判断条件や、判定根拠になった第2のパターンイメージI
7、I
8や、参照画像データD
1および光学画像データD
2を確認できるよう、画面上にこれらを並べて表示する。これにより、マスクパターンを修正すべきか否かを判断するのが容易になる。尚、一般に、マスクからウェハへは1/4程度の縮小投影が行われるので、並べて表示する際にはこの縮尺も考慮する。
【0229】
レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスクは、欠陥情報リスト210とともに修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト210には、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0230】
以上述べたように、実施の形態2の第3の態様による欠陥推定装置および欠陥推定方法では、光学画像からウェハに転写された後のパターンイメージを簡易的に推定し、同様にして参照画像から推定したパターンイメージと比較することによって欠陥の有無を判定する。そして、欠陥と判定された個所のパターンイメージについて模擬修正を行った後、このパターンイメージと手本となる参照画像を用いて詳細なシミュレーションを行い、プロセスがより進んだ段階のパターンイメージを推定する。このようにすることで、マスク上の欠陥とそれがウェハに及ぼす影響、さらには修正による改善の程度まで推定することができる。
【0231】
また、最初のシミュレーションを簡易的なものとするので、全体の計算処理を速くすることが可能である。
【0232】
尚、実施の形態2の第3の態様による欠陥推定装置および欠陥推定方法では、参照画像を基準画像としているが、これに限られるものではない。すなわち、基準画像は、パターンの設計データから作成された参照画像、または、マスク上で対象としている光学画像とは異なる領域にある同じパターンの光学画像とすることができる。
【0233】
(4)検査装置
実施の形態2の第4の態様による検査装置は、上記の第3の態様による欠陥推定装置の機能を内部に備えていることを特徴とする。
【0234】
図18は、実施の形態2の第4の態様による検査装置100cのシステム構成図である。
図18に示すように、検査装置100cは、光学画像取得部Aと制御部Bを有する。尚、
図18において、
図15と同じ符号を付した部分は同じものであるので説明を省略する。また、
図18では、本実施の形態で必要な構成成分を記載しているが、検査対象であるフォトマスクを検査するのに必要な他の公知成分が含まれていてもよい。また、本実施の形態では、ダイ−トゥ−データベース検査方式を例にしているが、ダイ−トゥ−ダイ検査方式であってもよい。この場合には、マスク内の異なる領域にある同一パターンの一方の光学画像を基準画像として取り扱う。
【0235】
図19は、本実施の形態におけるデータの流れを示す概念図である。
【0236】
図19に示すように、設計者(ユーザ)が作成したCADデータ201は、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データ202に変換される。設計中間データ202には、レイヤ(層)毎に作成されて各マスクに形成される設計パターンデータが格納される。ここで、一般に、検査装置100cは、OASISデータを直接読み込めるようには構成されていない。すなわち、検査装置100cの製造メーカー毎に、独自のフォーマットデータが用いられている。このため、OASISデータは、レイヤ毎に各検査装置に固有のフォーマットデータ203に変換された後に検査装置100cに入力される。尚、フォーマットデータ203は、検査装置100cに固有のデータとすることができるが、描画装置と互換性のあるデータとしてもよい。
【0237】
フォーマットデータ203は、
図18の磁気ディスク装置109に入力される。そして、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して展開回路111によって読み出される。
【0238】
展開回路111は、設計パターンを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データを展開する。展開された設計画像データは、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算する。そして、各画素内の図形占有率が画素値となる。
【0239】
上記のようにして2値ないしは多値のイメージデータ(ビットパターンデータ)に変換された設計パターンデータは、次に参照回路112に送られる。参照回路112では、送られてきた図形のイメージデータである設計画像データに対して適切なフィルタ処理が施される。
【0240】
図18および
図19に示すように、センサ回路106から出力された光学画像データD2は、第1のシミュレータ401に送られる。また、参照回路112で生成した参照画像データD1も第1のシミュレータ401に送られる。
図19で
破線で囲んだ部分は、実施の形態3で説明した欠陥推定機能を有する部分である。
【0241】
第1のシミュレータ401は、参照画像データD
1と光学画像データD
2を用いて第1のパターンイメージを推定する。
【0242】
例えば、所定の回路パターンが形成されたフォトマスクを検査対象とする。このフォトマスクは、ウェハにその回路パターンを転写する目的で使用されるものである。転写は、例えば、次のような工程によって行われる。まず、ウェハ上にレジスト膜を設ける。次に、上記のフォトマスクを介して露光装置によりウェハを露光し、レジスト膜に回路パターンの露光イメージを転写する。次いで、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをマスクとして下層の膜をエッチングした後、レジスト膜を剥離する。これにより、下層の膜を目的とする形状のパターンに加工することができる。次に、下層膜の凹部に銅(Cu)などを充填した後、CMP法により不要な部分を除去することで配線パターンが形成される。
【0243】
上記例の場合、第1のシミュレータ401は、第1のパターンイメージとしてウェハ上に転写される回路パターンの露光イメージを推定することができる。このパターンイメージには、参照画像データD
1から推定されるパターンイメージI
5と、光学画像データD
2から推定されるパターンイメージI
6の両方が含まれる。
【0244】
第1のシミュレータ401で推定された第1のパターンイメージI
5、I
6は、第1の比較回路402に送られる。第1の比較回路402では、参照画像データD
1から推定されて、手本となる第1のパターンイメージI
5と、光学画像データD
2から推定された第1のパターンイメージI
6とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。例えば、第1のパターンイメージとしてエッチング後のレジストパターンを推定する場合には、シミュレーションで得られた第1のパターンメージI
5、I
6に記されるパターンの情報を比較し、対応する辺の位置の違いが所定の量、例えば4nmを超えれば欠陥とみなす。比較の結果、欠陥と判定された場合には、その座標と、欠陥判定の根拠となった第1のパターンイメージI
5、I
6とが、第1の比較回路402に保存される。
【0245】
第1のパターンイメージI
5、I
6から欠陥と判定された箇所について、対応するマスクの参照画像データD
1と光学画像データD
2とが模擬修正回路403に送られる。模擬修正回路403では、送られた欠陥箇所に対する模擬修正が行われる。この模擬修正は次のように行う。すなわち、欠陥と推定された位置の周辺について、参照画像データD
1と光学画像データD
2とを比較して異なる場所を見出す。この異なった場所での光学情報を参照画像データD
1の対応した光学情報と置き換える。例えば、
図9(a)に符号10で示す情報を、
図7(b)に符号701、702で示す情報で置き換える。このとき、第1のパターンイメージI
6に複数の欠陥箇所がある場合には、修正箇所を変えて複数の模擬修正が行われる。
【0246】
例えば、1箇所の修正でウェハ転写像が正常な状態に復元する場合には、その箇所が問題となる欠陥位置として特定される。一方、全ての欠陥個所について1箇所ずつ修正を行っても、ウェハ転写像が正常な状態に復元しない場合には、2箇所を組み合わせて修正を行う。ウェハ転写像が正常な状態に復元される組み合わせが、問題となる欠陥位置として特定される。また、いずれの組み合わせについてもウェハ転写像が正常な状態に復元しない場合には、3箇所を組み合わせて修正を行う。以下、同様に、マスク上での欠陥個所の組み合わせ数を変えて順次修正を行い、問題となる欠陥個所がどれであるかを特定する。
【0247】
近接する欠陥座標がそれぞれ異なる第1のパターンイメージI
6として第1の比較回路402に保存されている場合、模擬修正回路403では、これらの欠陥が含まれる領域単位で模擬修正が行われるようにする。すなわち、所定の範囲内にある全ての欠陥が含まれる第1のパターンイメージI
6に対して模擬修正する。複数のパターンの組み合わせにより成り立っているパターンでは、各構成パターンが互いに影響し合いながらウェハ上に1つのパターンとして転写される。このため、模擬修正されたパターンイメージを推定する場合にも、複数の欠陥箇所同士の影響を考慮すべきであり、欠陥毎にパターンイメージを推定するのでは、真のパターンイメージを推定することにはならないからである。
【0248】
模擬修正された光学画像データD
2は、新たな光学画像データD
2’となって、第2のシミュレータ404に送られる。そして、第2のシミュレータ404において、手本となる参照画像データD
1から新たに第2のパターンイメージI
7が推定され、模擬修正された光学画像データD
2’からも第2のパターンイメージI
8が推定される。修正する欠陥箇所を変えて複数の模擬修正を行った場合には、修正後の光学画像データD
2’から推定される第2のパターンイメージI
8は複数になる。
【0249】
第2のパターンイメージI
7、I
8は、第1のパターンイメージI
5、I
6より、リソグラフィプロセスの段階が進んだ状態である。本実施の形態では、例えば、第1のパターンイメージI
5、I
6をウェハ上に転写される回路パターンの露光イメージとすれば、第2のパターンイメージI
7、I
8は、現像やエッチングなどの一連のリソグラフィプロセスにおけるいずれかの段階のレジストパターンイメージとすることができる。あるいは、ウェハに最終的に形成される回路パターンイメージとすることもできる。さらに、回路パターンは、CMP処理前および後のいずれのものとすることもできる。
【0250】
第2のパターンイメージI
7、I
8を具体的にどの段階のイメージとするかは、プロセスに応じて適宜選択することができる。
【0251】
例えば、レジストパターンをマスクとする配線材料のエッチング工程で、マイクロローディング効果による寸法変動を生じる場合がある。この寸法変動は回路パターンにおける疎密差が大きくなるにつれて増大する。これは、ウェハ上に形成すべき回路パターンが密な領域と疎な領域とでは、後者の方がエッチングに必要な活性種がより多く阻害されるためである。その結果、回路パターンの密度に依存して、所望とする寸法(基になるパターンデータで定まる寸法)の回路パターンが得られなくなる。すなわち、ウェハ上に形成すべき回路パターンが疎な領域では、エッチングにより形成されたパターンの寸法が所望のパターン寸法より大きくなる一方、ウェハ上に形成すべき回路パターンが密な領域では、エッチングにより形成されたパターンの寸法が所望のパターン寸法より小さくなる。
【0252】
上記問題に対しては、回路パターン内の微小な区画全てにわたるパターンデータの補正処理が行われる。これにより、現像処理後のパターン寸法は所望とする寸法から外れるが、エッチング後のパターン寸法は所望とする寸法にすることができる。したがって、この例において、第2のシミュレータ404で推定する第2のパターンイメージを現像後のレジストパターンイメージとすると、全てのパターンについて欠陥と判断されるおそれがあるが、エッチング後のレジストパターンイメージや、配線パターンイメージとすれば、欠陥の有無を正確に判定することが可能である。
【0253】
第2のシミュレータ404で推定された第2のパターンイメージI
7、I
8は、第2の比較回路405に送られる。第2の比較回路405において、手本となる参照画像データD
1から推定された第2のパターンイメージI
7と、模擬修正後の光学画像データD
2’から推定された第2のパターンイメージI
8とを比較することにより、最初に指摘したウェハ上での欠陥が解消されたか否かを確認することができる。比較の結果、欠陥と判定された座標と、欠陥判定の根拠となった第2のパターンイメージI
7、I
8とは、参照画像データD
1および光学画像データD
2とともに、欠陥情報リスト209として外部装置に出力される。
【0254】
図19の例において、欠陥情報リスト209はレビュー装置500に送られる。レビュー装置500では、欠陥1つ1つの欠陥座標が観察できるように、マスクが載置されたテーブルを移動させながら、マスクの欠陥箇所の画像を表示する。また同時に、欠陥判定の判断条件や、判定根拠になった第2のパターンイメージI
7、I
8や、参照画像データD
1および光学画像データD
2を確認できるよう、画面上にこれらを並べて表示する。これにより、マスクパターンを修正すべきか否かを判断するのが容易になる。尚、一般に、マスクからウェハへは1/4程度の縮小投影が行われるので、並べて表示する際にはこの縮尺も考慮する。
【0255】
検査装置100cが検出した全欠陥は、レビュー装置500で判別される。但し、ウェハ転写像で検知された欠陥が軽微である場合には、事前処理によってレビュー対象から除くようにすることも可能である。
【0256】
判別された欠陥情報は、検査装置100cに戻されて磁気ディスク装置109に保存される。そして、レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスクは、欠陥情報リスト210とともに、検査装置100cの外部装置である修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト210には、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0257】
尚、実施の形態2の第4の態様においては、検査装置100c自身がレビュー機能を有していてもよい。この場合には、パターンイメージI
7、I
8と、参照画像データD
1および光学画像データD
2とが、制御計算機110の画面上、または、別途準備される計算機の画面上に、欠陥判定の付帯情報とともに画像表示される。また、マスクの欠陥箇所の画像は、検査装置100cの観察光学系画像を使って表示される。
【0258】
また、実施の形態2の第4の態様の検査装置は、
図18の例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0259】
例えば、
図18の光学画像取得部Aでは、レーザ光を照射する光源103を用いたが、電子ビームを用いて光学画像を取得することもできる。具体的には、SEM(Scanning Electron Microscope)またはMEM(Mirror Electron Microscope;ミラー電子顕微鏡)などを用いて光学画像を取得することができる。
【0260】
図24は、
図18の光学画像取得部AにSEMを用いた例である。尚、この図で
図18と同じ符号を用いた部分は、同じものであることを示している。
【0261】
図24の例では、電子銃40から放出された電子ビームは、コンデンサレンズ41で収束されて、ステージ43上に載置されたマスク39に照射される。マスク39上における電子ビームの走査ラインや走査速度は、走査コイル45によって制御される。マスク39上に電子ビームを照射することによって発生した反射電子は、検出器42に導かれる。検出器42からの出力信号は、センサ(図示せず)で増幅され、さらにデジタルデータに変換された後、第1のシミュレータ401へ送られる。
【0262】
また、
図25は、
図18の光学画像取得部AにMEMを用いた例である。尚、この図で
図18と同じ符号を用いた部分は、同じものであることを示している。
【0263】
図25の例では、マスク53は、絶縁体60を介してステージ55上に載置されている。電子銃50から放出された電子ビームは、コンデンサレンズ51で収束され、E×B偏向器52で偏向された後、対物レンズ54によりマスク53に対し垂直な方向に入射する面状のビームとなる。電子ビームはマスク53上で反射した後、反射電子は、対物レンズ54と結像系レンズ56を透過した後、蛍光板57に投影される。その後、光学レンズ58によって、蛍光板57上の光学像は、CCD59の受光面上に結像される。次いで、CCD59上に結像されたパターンの像は、デジタルデータに変換された後、第1のシミュレータ401へ送られる。
【0264】
以上述べたように、実施の形態2の第4の態様の検査装置では、光学画像からウェハに転写された後のパターンイメージを推定し、同様にして参照画像から推定したパターンイメージと比較することによって欠陥の有無を判定する。そして、欠陥と判定された個所のパターンイメージについて模擬修正を行った後、再び手本となる画像と比較して欠陥の有無を判定する。このようにすることで、マスク上の欠陥とそれがウェハに及ぼす影響、さらには修正による改善の程度まで推定することができる。したがって、本実施の形態の検査装置および検査方法によれば、マスク欠陥自体のウェハへの影響の程度や、検出された欠陥がマスク上のどこのパターンを修正すると解消されるのかを指摘することができる。
【0265】
また、最初のシミュレーションを後のシミュレーションよりリソグラフィプロセスの前段階で止めるので、後のシミュレーションと同じ段階のシミュレーションを前でも行う場合と比較して、欠陥推定に関する全体の計算処理を速くすることが可能である。
【0266】
図10は、ウェハ転写像やレジスト像を基に欠陥判定した結果をオペレータが閲覧するための画面である。上段は、参照画像またはダイ−トゥ−ダイ比較方式の検査の場合の手本側の光学画像である。また、下段は、欠陥を含む検査対象側の光学画像である。それぞれ図の左から順に、(1)検査装置の透過光学系により撮影された画像、(2)検査装置の反射光学系により撮影された画像、(3)これらの画像から推定されたマスク像、(4)マスク像を基に露光条件を模擬して推定したウェハ転写像、(5)レジストの特性を模擬して推定したレジスト像である。
【0267】
図10に示すレビュー画面によれば、参照画像、光学画像、および、これらから推定した転写像が並べて表示されるので、オペレータはこれらの画像を見比べて、レビューすべき欠陥を絞ることができる。
【0268】
図11に検査装置におけるレビュー画面の別の例を示す。この画面は、欠陥判定の根拠となった参照画像と、欠陥が含まれる光学画像とを、オペレータが見比べられるように表示するウィンドウや、マスク上の検査範囲の欠陥分布を表示するウィンドウなどで構成される。また、光学画像と参照画像の差を表示したり、光学画像や参照画像の各画素の輝度を数値でダンプ表示したり、欠陥を解析する目的でセンサ輝度をX軸とY軸で断面をとって表示するプロファイル画面ウィンドウが追加される場合もある。
【0269】
本実施の形態2の特徴と利点は、次のようにまとめられる。
【0270】
実施の形態2によれば、マスク上の欠陥とそれが基板に及ぼす影響、さらには修正による改善の程度まで推定することのできる欠陥推定装置が提供される。
【0271】
実施の形態2によれば、マスク上の欠陥とそれが基板に及ぼす影響、さらには修正による改善の程度まで推定することができ、また、全体の計算処理を速くすることが可能な欠陥推定装置が提供される。
【0272】
実施の形態2によれば、マスク上の欠陥とそれが基板に及ぼす影響、さらには修正による改善の程度まで推定することのできる欠陥推定方法が提供される。
【0273】
実施の形態2によれば、マスク上の欠陥とそれが基板に及ぼす影響、さらには修正による改善の程度まで推定することができるので、マスク欠陥自体の基板への影響の程度や、検出された欠陥がマスク上のどこのパターンを修正すると解消されるのかを指摘することのできる検査装置が提供される。
【0274】
実施の形態2によれば、マスク欠陥自体の基板への影響の程度や、検出された欠陥がマスク上のどこのパターンを修正すると解消されるのかを指摘することができ、また、欠陥推定に関する計算処理を速くすることが可能な検査装置が提供される。
【0275】
実施の形態2は、上記の各態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0276】
例えば、最初に欠陥を推定する際、まず、対象となるマスク上のパターンを露光装置で転写して得られる光学像のシミュレーションを行う例について述べたが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、まず、対象となるマスクの参照画像データD
1と光学画像データD
2を比較し、その結果から欠陥の候補を推定した上でシミュレーションすることも可能である。また、この場合、欠陥候補を抽出した後、それら欠陥の候補について、露光装置で転写して得られる光学像のシミュレーション、必要であれば、その後のシミュレーションを行って、欠陥の候補をさらに絞り込んだ後に、模擬修正を行ってもよい。このようにすることで、1回に長い計算時間を要するシミュレーションの回数を減らすことができる。
【0277】
また、上記実施の形態2の各態様では、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての欠陥推定装置、欠陥推定方法、パターン検査装置およびパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。