(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
回折格子を用い、空間的に可干渉な光源からの光を透過させると、回折格子から特定の距離において、回折格子の自己像を形成するタルボ効果が知られている。近年、このタルボ効果を用い、透過X線の位相シフトを検出するX線タルボ干渉計が開発されている。タルボ効果を利用し、X線の位相シフトにより得られる画像は、従来の透過X線の吸収の大小によって得られる画像に比べ、特に原子番号の小さな物質でコントラストが高いという利点がある。
このようなX線タルボ干渉計100として、
図1に示すように、第1の回折格子10および第2の回折格子20と、X線画像検出器30とを備えた構成が知られている(特許文献1参照)。第1の回折格子10および第2の回折格子20は、
図2に示すように、金属板の一方向に所定間隔で溝部10aおよび20aを形成し、溝部10aおよび20aからX線を透過させる。又、隣接する溝部10aの間の畝部10bでX線の位相をπ/2だけシフトして透過させ、溝部20aの間の畝部20bではX線を遮蔽(吸収)するようになっている。回折格子の材料としては、通常、X線吸収能の高い金(Au)を用いている。
【0003】
このX線タルボ干渉計において、X線源2から試料4を介して第1の回折格子10にX線を照射すると、溝部10aを透過したX線と畝部10bを透過したX線が互いに干渉する。そして、第一の回折格子10のタルボ距離d
2/2λ(dは回折格子の周期、λはX線の波長)の整数倍の位置には、第一の回折格子10の自己像が現れる(タルボ効果)。この自己像には試料4による歪みが生じ、この歪みは試料の情報を持っている。第二の回折格子20は第一の回折格子10の自己像が現れる位置に配置される。そして第二の回折格子20を透過するX線の分布には、第一の回折格子10の自己像が重なってモアレ縞が生じている。このX線の分布をX線画像検出器で検出して、画像解析を行って試料4の像を得る。画像コントラストを向上させるには、第2の回折格子20の溝部20aのX線透過率が高く、畝部20bのX線透過率が低いと良い。そのため、第2の回折格子20は第1の回折格子10より厚い振幅型回折格子であることが好ましい。
【0004】
ここで、タルボ効果を生じさせるため、回折格子の畝部(X線吸収部)をX線の可干渉性を確保した周期にする必要がある。そのため畝部の厚さを10μm以下程度としなければならない。さらに、位相型回折格子においては、位相シフト量がπ/2になるときに自己像のコントラストが最も高くなることから、これを実現するには、畝部の厚さ(溝部の深さ)を1〜10μm程度とする必要があり、微細な加工や製造技術が要求される。
一方、振幅型回折格子として機能するためには、回折格子の溝部20aのX線透過率が高く、畝部20bのX線透過率が低いとよい。このため、金を用いたとしても溝部の深さを10〜100μm程度に深掘りすることが要求される。従って、回折格子の(溝部の深さ)/(溝部の幅)で表されるアスペクト比が非常に大きくなり、回折格子の製造が困難となる。
【0005】
このようなことから、X線マスクを使ったX線リソグラフィーによって樹脂に深い溝部を形成し、この溝に電鋳法によってX線吸収部を形成させ、X線タルボ干渉計用の回折格子を製造する技術が開示されている(特許文献2参照)。
又、シリコン基板表面の感光性樹脂をリソグラフィー法でパターニングして除去し、次にICPプラズマエッチング法で感光性樹脂が除去されたシリコン基板をエッチングしてスリット溝を形成した後、スリット溝に絶縁物を堆積し、さらに残った感光性樹脂及びシリコン基板をICPプラズマエッチング法でエッチングして第2のスリット溝を形成し、第2のスリット溝に電鋳法によってX線吸収金属部を形成する技術が開示されている(特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献2、3記載の技術の場合、微細な溝(スリット)内に電鋳を行うため、溝のアスペクト比が高くなるほど、電鋳を確実に行うことが難しくなる。又、レジスト樹脂を用いてアスペクト比の高い溝を形成しようとすると、樹脂が柔らかくて絶縁物であるために変形して隣接する畝部が接触し(スティッキング)、精度の高い回折格子の製造が難しいという問題がある。さらに、アスペクト比の高い溝を作製するためには、シンクロトロン放射による放射光を用い、直線性の高いX線で露光する必要があり、製造コストが大幅に上昇する。
【0007】
一方、単結晶ダイヤモンドからなり、光学用の回折格子の微細な溝を加工するための切削工具が開示されている(特許文献4参照)。この切削工具は、前切れ刃の幅を5μm以下とすることで、5μm以下の狭い溝を彫ることを可能としており、又、すくい面に垂直な方向の大きさtを前切れ刃の幅の2倍以上として刃の強度を確保している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、回折格子10、20を用いたX線タルボ干渉計100の概略構成を示す図である。X線タルボ干渉計100は、X線源2と、第1の回折格子10および第2の回折格子20と、X線画像検出器30とを備えている。第1の回折格子10および第2の回折格子20はZ方向に所定距離だけ離間して平行に配置され、第1の回折格子10にZ方向に沿って対向してX線源2が配置されている。又、第2の回折格子20にZ方向に沿って対向してX線画像検出器30が配置されている。そして、観察対象となる試料4がZ方向に沿って第1の回折格子10とX線源2の間に配置されている。
第1の回折格子10および第2の回折格子20は、その平面に平行な一方向(
図1ではy方向)に沿って延びつつ、互いに所定周期で離間する複数の溝部10a、20aが形成され(
図2の溝部の断面図参照)、溝部10a、20aからX線を透過させる一方、隣接する溝部10aの間の短冊状の畝部10bでX線の位相をπ/2だけシフトして透過させ、畝部20bでX線を遮蔽(吸収)するようになっている。各溝部10a、20a及び畝部10b、20bは、
図1のY方向に延びている。回折格子の材料としては、X線吸収能の高い金を用いると好ましい。なお、この実施形態では、畝部10bの幅(間隔)と溝部10aの幅(間隔)が等しく、畝部20bの幅(間隔)と溝部20aの幅(間隔)が等しい。
【0018】
X線タルボ干渉計100において、X線源2から試料4を介して第1の回折格子10にX線を照射すると、溝部10aを透過したX線と畝部10bを透過回折したX線とが互いに干渉する。そして、タルボ距離だけ離れた位置で透過直後と同じパターンの自己像が形成される。つまり、第1の回折格子10は、照射X線に位相変調を与える位相型回折格子を構成する。ここで、タルボ効果を生じさせるため、第1の回折格子10の畝部(X線吸収部)の周期d(
図2(a)参照)を、X線源2から照射されるX線の可干渉性を確保するよう調整する必要がある。
又、第1の回折格子10の後方(自己像の位置)に配置された第2の回折格子20は、第1の回折格子10により回折されたX線を回折して画像コントラストを形成し、第2の回折格子20の後方のX線画像検出器30で回折X線を検出する。画像コントラストを向上させるには、第2の回折格子20の溝部20aのX線透過率が高く、畝部20bのX線透過率が低いと良い。そのため、第2の回折格子20は第1の回折格子10より厚い振幅型回折格子であることが好ましい。
【0019】
ここで、第1の回折格子10の前方に試料4が配置され、照射X線は試料4内部において僅かに異なる光路を通過するため、このときの位相差によって干渉縞の様子が変化する。従って、自己像は変形し、自己像の位置に第2の回折格子20を重ねると、タルボ干渉像(画像コントラスト)にモアレ縞が生じ、X線画像検出器30で検出される。生成されたモアレ縞が試料4によって受ける変調量は、試料4により照射X線が曲げられた角度に比例するため、モアレ縞を解析することで試料4とその内部構造を知ることができる。
なお、モアレ縞の解析法の一つである縞走査法では、第1の回折格子10および第2の回折格子20をX方向に相対的にずらすことで、モアレ縞の位相が変化することに着目している。すなわちモアレ縞の位相を変化させて複数のタルボ干渉像を得た後、これを積分処理等して合成することにより、位相像(試料4とその内部構造)を得ることができる。 又、試料4を回転させて多数の投影方向から微分位相像を取得し、これを積分処理等して合成して試料4の断層像(CT像)を得ることも可能である。
【0020】
なお、X線タルボ干渉計100は、X線源2と試料4との間にマルチスリットを配置したタルボ・ロー干渉計も含む。マルチスリットを用いない場合、X線源2としては微小焦点X線源を用いる必要があるが、タルボ・ロー干渉計の場合は通常X線源を用いることができる。
【0021】
ところでX線は波長が短いので、可干渉性を確保するためには、第1の回折格子10および第2の回折格子20の畝部の厚さを10μm以下程度としなければならない。さらに、位相型回折格子においては、位相シフト量がπ/2になるときに自己像のコントラストが最も高くなることから、これを実現するには、金を用いても畝部の厚さ(溝の深さ)を1〜10μm程度とする必要があり、微細な加工や製造技術が要求される。
一方、振幅型回折格子として機能するためには、回折格子の溝部のX線透過率を高くし、畝部のX線透過率を低くする必要がある。このため、金を用いても畝部の厚さ(溝の深さ)を10〜100μm程度に深くすることが要求される。従って、回折格子の(溝の深さ)/(溝の幅)で表されるアスペクト比が3以上(場合によっては10以上)と非常に大きくなる。
【0022】
このようなことから、硬度が高く精密な溝加工が可能な単結晶ダイヤモンドを用い、深さが幅の3倍以上の深い溝の切削が可能な切削刃具が必要となる。以下、本発明の実施形態に係る単結晶ダイヤモンド切削刃具について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る単結晶ダイヤモンド切削刃具200を取り付けた工具本体(バイト)400を示す。単結晶ダイヤモンド切削刃具200は、略台形の台金300の先端に取り付けられて工具本体400を構成し、台金300の先端から単結晶ダイヤモンド切削刃具200の切れ刃(
図4参照)が突出している。工具本体400は、図示しない切削加工機のホルダに固定され、後述するように、単結晶ダイヤモンド切削刃具200により被切削物に溝を彫ることができるようになっている。
【0023】
図4に示すように、単結晶ダイヤモンド切削刃具200は、すくい面201と、すくい面201にそれぞれ隣接する側面となる2つの第1逃げ面203、204と、すくい面201に隣接し、被削物500の切削面S(
図6参照)に対向する前逃げ面205と、すくい面201と前逃げ面205との境界部に形成される前切れ刃210と、すくい面201と第一逃げ面203、204との境界部に形成される2つの第1切れ刃213、214とを備えている。前逃げ面205及び第一逃げ面203、204の形状は限定されず、平面であってもよく、曲面であってもよい。なお、すくい面201の表面は平滑であることが好ましい。
第一逃げ面203、204及び/又は前逃げ面205は、集束イオンビーム(FIB)のエッチングにより形成されている。FIBのエッチングは、複雑な形状の加工ができると共に、結晶面を選ばずに加工ができるという利点がある。従って、ダイヤモンドの一番固い結晶面である(111)面をも容易に加工ができる。これに対し、例えば砥石による研磨では、ダイヤモンドの(111)面の研磨ができない。
なお、第一逃げ面203、204及び前逃げ面205をFIBでエッチングする際、単結晶ダイヤモンド素材に対して浅い角度(<3°)でFIBを照射すると、照射面が平滑になり、鋭い切れ刃を形成できる。
【0024】
図5は、
図4のA点から見た単結晶ダイヤモンド切削刃具200の平面図である。第1逃げ面203、204同士の間隔W
2は、前切れ刃210の幅W
1以下である。つまり、W
2≦W
1の部分が第1逃げ面203、204を構成し、第1逃げ面203、204より後端側(前切れ刃210と反対側)の部分の幅はW
2より広がって強度を確保している。幅W
1を4μm以下とすると、微小な溝部を彫ることができるので好ましい。
【0025】
なお、この実施形態では、前切れ刃210から後端に向かって幅W
1で平行に延びた部分が第一切れ刃213、214を構成し、第一切れ刃213、214は前切れ刃210の近傍のみに形成されている。そして、第一切れ刃213、214より後端側では、第1逃げ面203、204同士の間隔W
2が幅W
1以下になっている。このため、切削加工時に単結晶ダイヤモンド切削刃具200と被切削物との接触面積が減り、工具のビビリが起こり難くなるので精密な切削加工が行える。
なお切削を複数回くり返して行うことにより、所定の深さの溝を形成する。1回の切削で削る溝の深さは0.3μmから1μm程度なので、第一切れ刃213,214の長さは1μmから2μm程度が良い。そして
図6に示すように、本発明では、前切れ刃210からの第1逃げ面203、204の長さL(
図6参照)を前切れ刃の幅W
1の3倍以上とし、深い溝の切削を行うため、W
2≦W
1とすると被切削物との接触面積(摩擦)を低減する効果が大きい。
【0026】
図6は、
図4のB点から見た単結晶ダイヤモンド切削刃具200の側面図である。被削物500の切削面Sに垂直な方向Pとすくい面201がなす角(すくい角θ)は、
0°からわずかに正に傾いていて、切削くず501をすくい取るようになっている。なおすくい面201が平滑であると、切削くず501は素直に外部に排出される。又、切削面Sに対し、前逃げ面205は逃げ角φだけ傾いていて、被削物500との接触を防止している。
又、方向Pに沿い、前切れ刃210からの第1逃げ面203、204の長さLを前切れ刃の幅W
1の3倍以上とする。これにより、深さが幅の3倍以上の深い溝部の切削が可能となる。
なお、通常、逃げ角φを3〜8°程度とする。前逃げ面205と逃げ角φからLを算出することができる。なお、前逃げ面205が曲面の場合は、前切れ刃210の近傍での前逃げ面205の接線と切削面Sとのなす角を逃げ角φとする。
【0027】
ところで、長さLを幅W
1の3倍以上とした単結晶ダイヤモンド切削刃具200を製造しようとすると、FIBでエッチングする第一逃げ面203、204の加工量(エッチング量)が大きくなり、エッチング時間が長くなって生産コストが上昇する。
又、FIBによるダイヤモンドのエッチングレートは約0.07μm
3/ナノクーロンでありビーム電流に比例するが、加工精度が要求される部分にはビーム電流を下げてビーム径を微小に絞る必要がある。一方、全ての部分でビーム電流を下げてエッチングすると、エッチング時間が長くなり過ぎる。
【0028】
そこで、以下のようにして単結晶ダイヤモンド切削刃具200を製造することが好ましい。すなわち、単結晶ダイヤモンド素材に対し、最初は比較的高いビーム電流で集束イオンビームのエッチングにより、第一逃げ面203、204及び/又は前逃げ面205を粗加工する。この粗加工では、加工量(エッチング量)を大きくし、第一逃げ面203、204及び前逃げ面205のおおまかな形状を作製する。
次に、粗加工工程より低いビーム電流で、ガリウム液体金属イオン源で発生したガリウムイオンの集束イオンビームのエッチングにより、第一逃げ面203、204及び前逃げ面205を仕上げ加工する。仕上げ加工では加工精度を高くし、第一逃げ面203、204及び/又は前逃げ面205の最終形状を作り込む。特に、前切れ刃210や第一切れ刃213、214の近傍の面について、粗加工と仕上げ加工とを行うと、これら切れ刃が高精度でエッチングされて鋭利になると共に、生産性も向上する。
【0029】
なお、ガリウムイオンの集束イオンビームを大電流で使用した場合、ビーム電流が増えるに従って急激にビーム径が大きくなってしまう。一方、誘導結合プラズマ型のイオン源で発生した希ガスイオン又は酸素イオンの集束イオンビームを大電流で使用した場合、ガリウムイオンの集束イオンビームを大電流で使用した場合よりもビーム径を細く絞ることができるが、小電流で使用する場合にはガリウムイオンの集束イオンビームよりビーム径を絞ることができない。これは誘導プラズマ型イオン源がガリウム液体金属イオン源よりも、線源サイズおよび角電流密度が大きいことによる。
そこで粗加工では、誘導結合プラズマ型のイオン源で発生した希ガスイオン又は酸素イオンの集束イオンビームを用いてエッチングし、仕上げ加工では、ガリウムイオンの集束イオンビームを用いてエッチングすると、加工精度の更に高い単結晶ダイヤモンド切削刃具を短時間で製造できる。
【0030】
誘導結合プラズマ型のイオン源を備えたFIB装置は、たとえば特開2008-234874号公報に記載されている。又、誘導結合プラズマ型のイオン源で希ガスイオンを発生させた場合、希ガス(Ar,Xeなど)は第一イオン化ポテンシャルが低く、プラズマを安定して維持できる。誘導結合プラズマ型のイオン源で酸素イオンを発生させた場合、酸素はエッチング時にダイヤモンド(炭素)と化学反応するので、大きなエッチング速度が得られることが期待できる。
誘導結合プラズマ型イオン源のFIBで行う粗加工のビーム電流は1nA以上(例えば、2nA)、ビーム径1μm(加速電圧30kV)とすることができる。
一方、ガリウム液体金属イオン源のFIBで行う、仕上げ加工のビーム電流は1nA未満(例えば、30pA)、ビーム径60nm (加速電圧30kV)とすることができる。
【0031】
なお、単結晶ダイヤモンド切削刃具を使用するにつれ、前切れ刃210及び第1切れ刃213、214の境界部(接続部)の角が磨耗するが、前逃げ面205をFIBでエッチングすることにより、角を鋭く再生することができる。
【0032】
以上述べた本発明の単結晶ダイヤモンド切削刃具200(工具本体400)を切削加工機に取り付け、
図7に示すようにしてX線タルボ干渉計用回折格子を製造することができる。
ここで、微小な溝の超精密加工を行えるよう、切削加工機として分解能がnmレベルの超精密ナノ加工機を用いることが好ましい。超精密ナノ加工機としては、例えばファナック株式会社製の製品名「FANUC ROBONANO α-0iB 」が市販されている。この超精密ナノ加工機は、リニアモータと同期ビルトインサーボモータを制御することにより、同時5軸を高精度にダイレクト駆動し、直線軸で1nmの分解能を有する。
【0033】
このような加工機を用い、
図7に示すように前切れ刃210の幅W
1を4μm以下とした単結晶ダイヤモンド切削刃具200により、金属膜20xの一方向(
図7の矢印方向)に沿い、かつ該一方向に垂直な方向に所定の周期W
1+W
3で引き切り加工を行う。これにより、金属膜20xが切削されて溝部20aが形成され、隣接する溝部20aの間に畝状のX線吸収部20bを備えたX線タルボ干渉計用回折格子20を製造することができる。
【0034】
ここで、前切れ刃210の幅W
1が4μm以下で、前切れ刃210からの第1逃げ面の長さLが幅W
1の3倍以上であるため、溝部20aの幅もW
1と同値(4μm以下)となり、溝部20aの深さがLと同値(つまり、溝部20aの幅の3倍以上)となり、(溝部の深さ)/(溝部の幅)で表されるアスペクト比が3以上の回折格子が得られる。又、引き切り加工時の周期W
1+W
3を8μm以下とすれば、X線吸収部20bの幅も4μm以下となる。
そして、金属膜20xの材質である金はレジスト樹脂よりヤング率が1桁高い導体であるため、強度不足や静電気による畝部の接触(スティッキング)が起こらない。また溝の側面の凹凸や、側壁と底との切削隅部の曲率半径は、刃具の形状に依存しており、それぞれ0.1μm以下の良好な溝の加工が可能になる。
【0035】
なお、複数の単結晶ダイヤモンド切削刃具200をシャトルユニット等に取り付け、一度に複数の溝部を引き切り加工してもよい。
又、
図7では、X線タルボ干渉計用回折格子として、振幅型回折格子である第2の回折格子20を製造する場合を例示したが、位相型回折格子である第1の回折格子10も同様にして製造することができる。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。