(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カソードが、下記の工程(i)および工程(ii)を有する製造方法で製造されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
(i)前記ガス拡散層に、前記カーボンファイバー(C1)および前記含フッ素イオン交換樹脂(F1)を含む第1の中間層形成用塗工液を塗工し、乾燥して、第1の中間層を形成する工程。
(ii)前記工程(i)で形成した第1の中間層に、前記カーボンファイバー(C2)および前記含フッ素イオン交換樹脂(F2)を含む第2の中間層形成用塗工液を塗工し、乾燥して、第2の中間層を形成する工程。
前記第1の中間層形成用塗工液に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F1)とカーボンファイバー(C1)との質量比(F1/C1)が、0.5〜1.5である、請求項4に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
前記第2の中間層形成用塗工液に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F2)とカーボンファイバー(C2)との質量比(F2/C2)が、0.1〜0.5である、請求項4または5に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
前記第1の中間層形成用塗工液に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F1)とカーボンファイバー(C1)との質量比(F1/C1)が、0.5〜1.5である、請求項7に記載の固体高分子形燃料電池用カソードの製造方法。
前記第2の中間層形成用塗工液に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F2)とカーボンファイバー(C2)との質量比(F2/C2)が、0.1〜0.5である、請求項7または8に記載の固体高分子形燃料電池用カソードの製造方法。
前記工程(i)における塗工した第1の中間層形成用塗工液の乾燥温度が40〜130℃であり、前記工程(ii)における塗工した第2の中間層形成用塗工液の乾燥温度が40〜130℃である、請求項7〜11のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用カソードの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書においては、式(U1)で表される繰り返し単位を単位(U1)と記す。他の式で表される繰り返し単位も同様に記す。
また、本明細書においては、式(M1)で表される化合物を化合物(M1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
【0018】
本発明における繰り返し単位とは、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
本発明におけるモノマーとは、重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
【0019】
本発明におけるイオン交換基とは、H
+、一価の金属カチオン、アンモニウムイオン等を有する基を意味する。イオン交換基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンメチド基等が挙げられる。
本発明における前駆体基とは、加水分解処理、酸型化処理等の公知の処理によりイオン交換基に変換できる基を意味する。前駆体基としては、−SO
2F基等が挙げられる。
【0020】
<膜電極接合体>
図1は、本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、膜電極接合体と記す。)の一例を示す断面図である。
膜電極接合体10は、触媒層22、目止め層24およびガス拡散層28を順に有するアノード20と;触媒層32、第2の中間層34、第1の中間層36およびガス拡散層38を順に有するカソード30と;アノード20の触媒層22とカソード30の触媒層32との間に配置される高分子電解質膜40とを備えたものである。
【0021】
(触媒層)
触媒層22および触媒層32(以下、まとめて触媒層とも記す。)は、触媒およびイオン交換樹脂を含む層である。触媒層22および触媒層32は、成分、組成、厚さ等が同じ層であってもよく、異なる層であってもよい。
【0022】
触媒としては、固体高分子形燃料電池における酸化還元反応を促進するものであればよく、白金を含む触媒が好ましく、白金または白金合金がカーボン担体に担持された担持触媒が特に好ましい。
【0023】
カーボン担体としては、活性炭、カーボンブラック等が挙げられ、化学的耐久性が高い点から、熱処理等によりグラファイト化したものが好ましい。
カーボン担体の比表面積は、200m
2/g以上が好ましい。カーボン担体の比表面積は、BET比表面積装置により、カーボン表面への窒素吸着により測定する。
【0024】
白金合金としては、白金を除く白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)、金、銀、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、およびスズからなる群から選ばれる1種以上の金属と、白金との合金が好ましい。該白金合金には、白金と合金化される金属と、白金との金属間化合物が含まれていてもよい。
白金または白金合金の担持量は、担持触媒(100質量%)のうち、10〜70質量%が好ましい。
【0025】
イオン交換樹脂としては、耐久性の点から、含フッ素イオン交換樹脂が好ましく、イオン性基を有するペルフルオロカーボンポリマー(エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)がより好ましい。該ペルフルオロカーボンポリマーとしては、下記のポリマー(H)またはポリマー(Q)が好ましい。
【0026】
ポリマー(H):
ポリマー(H)は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)に基づく単位と、単位(U1)とを有するコポリマーである。
【0028】
ただし、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1である。
【0029】
ポリマー(H)は、TFEおよび化合物(M1)の混合物を重合して前駆体ポリマーを得た後、前駆体ポリマー中の−SO
2F基をスルホン酸基に変換することにより得られる。−SO
2F基のスルホン酸基への変換は、加水分解および酸型化処理により行われる。
【0030】
CF
2=CF(OCF
2CFX)
m−O
p−(CF
2)
n−SO
2F ・・・(M1)。
ただし、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1である。
【0031】
化合物(M1)としては、化合物(M1−1)〜(M1−3)が好ましい。
CF
2=CFO(CF
2)
n1SO
2F ・・・(M1−1)、
CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
n2SO
2F ・・・(M1−2)、
CF
2=CF(OCF
2CF(CF
3))
m3O(CF
2)
n3SO
2F ・・・(M1−3)。
ただし、n1、n2、n3は1〜8の整数であり、m3は1〜3の整数である。
【0032】
ポリマー(Q):
ポリマー(Q)は、単位(U2)と単位(U3)とを有するコポリマーである。
【0034】
ただし、Q
1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Q
2は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、R
f1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、X
1は、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、aは、X
1が酸素原子の場合0であり、X
1が窒素原子の場合1であり、X
1が炭素原子の場合2であり、Y
1は、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、sは、0または1であり、Q
3は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、R
f2は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、X
2は、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、bは、X
2が酸素原子の場合0であり、X
2が窒素原子の場合1であり、X
2が炭素原子の場合2であり、Y
2は、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、tは、0または1である。
単結合は、CY
1またはCY
2の炭素原子と、SO
2のイオウ原子とが直接結合していることを意味する。
有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0035】
単位(U2):
Q
1、Q
2のペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、原料の含フッ素モノマーの沸点が低くなり、蒸留精製が容易となる。
【0036】
Q
2は、エーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。Q
2がエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であれば、Q
2が単結合である場合に比べ、長期にわたって固体高分子形燃料電池を運転した際に、発電性能の安定性に優れる。
Q
1、Q
2の少なくとも一方は、エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基を有する含フッ素モノマーは、フッ素ガスによるフッ素化反応を経ずに合成できるため、収率が良好で、製造が容易である。
【0037】
R
f1のペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
ペルフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基等が好ましい。
単位(U2)が2つ以上のR
f1を有する場合、R
f1は、それぞれ同じ基であってもよく、それぞれ異なる基であってもよい。
【0038】
−(SO
2X
1(SO
2R
f1)
a)
−H
+基は、イオン性基である。
−(SO
2X
1(SO
2R
f1)
a)
−H
+基としては、スルホン酸基(−SO
3−H
+基)、スルホンイミド基(−SO
2N(SO
2R
f1)
−H
+基)、またはスルホンメチド基(−SO
2C(SO
2R
f1)
2)
−H
+基)が挙げられる。
Y
1としては、フッ素原子、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0039】
単位(U2)としては、単位(U2−1)が好ましく、ポリマー(Q)の製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(U2−11)、単位(U2−12)または単位(U2−13)がより好ましい。
【0041】
ただし、R
F11は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状のペルフルオロアルキレン基であり、R
F12は、炭素数1〜6の直鎖状のペルフルオロアルキレン基である。
【0042】
単位(U3):
Q
3のペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。
【0043】
R
f2のペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
ペルフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基等が好ましい。
【0044】
−(SO
2X
2(SO
2R
f2)
b)
−H
+基は、イオン性基である。
−(SO
2X
2(SO
2R
f2)
b)
−H
+基としては、スルホン酸基(−SO
3−H
+基)、スルホンイミド基(−SO
2N(SO
2R
f2)
−H
+基)、またはスルホンメチド基(−SO
2C(SO
2R
f2)
2)
−H
+基)が挙げられる。
Y
2としては、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0045】
単位(U3)としては、単位(U3−1)が好ましく、ポリマー(Q)の製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(U3−11)、単位(U3−12)、単位(U3−13)または単位(U3−14)がより好ましい。
【0047】
ただし、Zは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは、0〜3の整数であり、nは、1〜12の整数であり、pは、0または1であり、かつ、m+p>0である。
【0048】
他の単位:
ポリマー(Q)は、さらに、後述する他のモノマーに基づく繰り返し単位(以下、他の単位と記す。)を有していてもよい。他の単位の割合は、ポリマー(Q)の、イオン交換容量が後述の好ましい範囲となるように、適宜調整すればよい。
【0049】
他の単位としては、機械的強度および化学的な耐久性の点から、ペルフルオロモノマーに基づく繰り返し単位が好ましく、TFEに基づく繰り返し単位がより好ましい。
TFEに基づく繰り返し単位の割合は、機械的強度および化学的な耐久性の点から、ポリマー(Q)を構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。
TFEに基づく繰り返し単位の割合は、電気抵抗の点から、ポリマー(Q)を構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、92モル%以下が好ましく、87モル%以下がより好ましい。
【0050】
ポリマー(Q)は、単位(U2)、単位(U3)、他の単位を、それぞれ1種ずつ有していてもよく、それぞれ2種以上有していてもよい。
ポリマー(Q)は、化学的な耐久性の点から、ペルフルオロポリマーであることが好ましい。
【0051】
含フッ素イオン交換樹脂のイオン交換容量は、導電性およびガス透過性の点から、0.5〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.8〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂が特に好ましい。
【0052】
触媒層に含まれる白金量は、電極反応を効率よく行うための最適な厚みの点から、0.01〜0.5mg/cm
2が好ましく、原料のコストと性能とのバランスの点から、0.05〜0.35mg/cm
2がより好ましい。
【0053】
触媒層の厚さは、触媒層中のガス拡散を容易にし、固体高分子形燃料電池の発電性能を向上させる点から、20μm以下が好ましく、1〜15μmがより好ましい。また、触媒層の厚さは、均一であることが好ましい。触媒層の厚さを薄くすると、単位面積あたりに存在する触媒量が少なくなって反応活性が低くなるおそれがあるが、該場合は触媒として白金または白金合金が高担持率で担持された担持触媒を用いれば、薄くても触媒量が不足することなく電極の反応活性を高く維持できる。
触媒層の厚さは、触媒層の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)等によって観察することにより測定する。
【0054】
(第2の中間層)
第2の中間層34は、カーボンファイバー(C2)および含フッ素イオン交換樹脂(F2)を含む層である。
【0055】
第2の中間層34に含まれるカーボンファイバー(C2)としては、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ(シングルウォール、ダブルウォール、マルチウォール、カップ積層型等)、PAN系カーボンファイバー、ピッチ系カーボンファイバー等が挙げられる。
カーボンファイバー(C2)の形態としては、チョップドファイバー、ミルドファイバー等が挙げられる。
【0056】
第2の中間層34に含まれるカーボンファイバー(C2)の平均繊維径は、30〜200nmが好ましく、50〜150nmがより好ましい。カーボンファイバー(C2)の平均繊維径が30nm以上であれば、第2の中間層34が良好なガス拡散性、排水性を有する。カーボンファイバー(C2)の平均繊維径が200nm以下であれば、分散媒にカーボンファイバー(C2)を良好に分散できる。
【0057】
第2の中間層34に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F2)としては、イオン交換基を有するペルフルオロポリマーが好ましく、上述のポリマー(H)またはポリマー(Q)が特に好ましい。第2の中間層34に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F2)は、触媒層32に含まれるイオン交換樹脂が含フッ素イオン交換樹脂である場合には触媒層32に含まれる含フッ素イオン交換樹脂と同じであってもよく、異なってもよい。
含フッ素イオン交換樹脂(F2)のイオン交換容量は、導電性およびガス透過性の点から、0.5〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.8〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂が特に好ましい。
【0058】
第2の中間層34の厚さは、5〜30μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。第2の中間層34の厚さが5μm以上であれば、ガス拡散層38のカーボンファイバーが貫通しにくくなる。第2の中間層34の厚さが30μm以下であれば、第2の中間層34が良好なガス拡散性、排水性を有する。
第2の中間層34の厚さは、第2の中間層34の断面をSEM等によって観察することにより測定する。
【0059】
(第1の中間層)
第1の中間層36は、カーボンファイバー(C1)および含フッ素イオン交換樹脂(F1)を含む層である。
【0060】
第1の中間層36に含まれるカーボンファイバー(C1)としては、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ(シングルウォール、ダブルウォール、マルチウォール、カップ積層型等)、PAN系カーボンファイバー、ピッチ系カーボンファイバー等が挙げられる。
カーボンファイバー(C1)の形態としては、チョップドファイバー、ミルドファイバー等が挙げられる。
【0061】
第1の中間層36に含まれるカーボンファイバー(C1)の平均繊維径は、30〜200nmが好ましく、50〜150nmがより好ましい。カーボンファイバー(C1)の平均繊維径が30nm以上であれば、第1の中間層36が良好なガス拡散性、排水性を有する。カーボンファイバー(C1)の平均繊維径が200nm以下であれば、分散媒にカーボンファイバー(C1)を良好に分散できる。
【0062】
第1の中間層36に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F1)としては、イオン交換基を有するペルフルオロポリマーが好ましく、上述のポリマー(H)またはポリマー(Q)が特に好ましい。第1の中間層36に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F1)は、第2の中間層34に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F2)と同じであってもよく、異なってもよい。
含フッ素イオン交換樹脂(F1)のイオン交換容量は、導電性およびガス透過性の点から、0.5〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.8〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂が特に好ましい。
【0063】
第1の中間層36の厚さは、5〜30μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。第1の中間層36の厚さが5μm以上であれば、ガス拡散層38のカーボンファイバーが貫通しにくくなる。第1の中間層36の厚さが30μm以下であれば、第1の中間層36が良好なガス拡散性、排水性を有する。
第1の中間層36の厚さは、第1の中間層36の断面をSEM等によって観察することにより測定する。
【0064】
(アノードの中間層)
アノード20は、触媒層22と目止め層24との間(目止め層がない場合は、触媒層22とガス拡散層28との間)に、カーボンファイバーおよび含フッ素イオン交換樹脂を含む中間層を有していてもよい。
【0065】
アノードの中間層に含まれるカーボンファイバーとしては、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ(シングルウォール、ダブルウォール、マルチウォール、カップ積層型等)、PAN系カーボンファイバー、ピッチ系カーボンファイバー等が挙げられる。
カーボンファイバーの形態としては、チョップドファイバー、ミルドファイバー等が挙げられる。
【0066】
アノードの中間層に含まれるカーボンファイバーの平均繊維径は、30〜200nmが好ましく、50〜150nmがより好ましい。カーボンファイバーの平均繊維径が30nm以上であれば、アノードの中間層が良好なガス拡散性、排水性を有する。カーボンファイバーの平均繊維径が200nm以下であれば、分散媒にカーボンファイバーを良好に分散できる。
【0067】
アノードの中間層に含まれる含フッ素イオン交換樹脂としては、イオン交換基を有するペルフルオロポリマーが好ましく、上述のポリマー(H)またはポリマー(Q)が特に好ましい。アノードの中間層に含まれる含フッ素イオン交換樹脂は、触媒層22に含まれるイオン交換樹脂が含フッ素イオン交換樹脂である場合には触媒層22に含まれる含フッ素イオン交換樹脂と同じであってもよく、異なってもよい。
含フッ素イオン交換樹脂のイオン交換容量は、導電性およびガス透過性の点から、0.5〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.8〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂が特に好ましい。
【0068】
アノードの中間層の厚さは、3〜60μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。アノードの中間層の厚さが3μm以上であれば、ガス拡散層28のカーボンファイバーが貫通しにくくなる。アノードの中間層の厚さが60μm以下であれば、アノードの中間層が良好なガス拡散性、排水性を有する。
アノードの中間層の厚さは、アノードの中間層の断面をSEM等によって観察することにより測定する。
【0069】
(ガス拡散層)
ガス拡散層28およびガス拡散層38(以下、まとめてガス拡散層とも記す。)は、ガス拡散性基材からなる層である。ガス拡散層28およびガス拡散層38は、成分、組成、厚さ等が同じ層であってもよく、異なる層であってもよい。
ガス拡散性基材としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が挙げられる。
【0070】
ガス拡散層の厚さは、100〜400μmが好ましく、120〜300μmがより好ましい。
ガス拡散層の厚さは、デジマチックインジケータ(ミツトヨ社製、543−250、フラット測定端子:φ5mm)を用いて4箇所の厚さを測定し、これらを平均して算出する。
【0071】
(目止め層)
目止め層24は、カーボン粒子と結着剤とを含む層である。なお、目止め層24は、アノード20に必ずしも設けなくともよい。また、目止め層は、カソード30の第2の中間層36とガス拡散層38との間に設けてもよい。
【0072】
触媒層または中間層とガス拡散層との間に、カーボン粒子を主体とする目止め層を設けることにより、水がガス拡散層の細孔を塞ぎにくくなり、ガス拡散性の低下が抑えられる。
目止め層に含まれるカーボン粒子としては、カーボンブラック等が挙げられる。
目止め層に含まれる結着剤としては、撥水性の含フッ素ポリマーが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。
【0073】
目止め層は、アノード20およびカソード30の両方に設けてもよく、アノード20およびカソード30の一方に設けてもよい。アノード20およびカソード30の一方が目止め層を有し、他方が目止め層を有さない場合、カソード30が目止め層を有することが好ましい。
【0074】
(高分子電解質膜)
高分子電解質膜40は、イオン交換樹脂の膜である。
イオン交換樹脂としては、耐久性の点から、含フッ素イオン交換樹脂が好ましく、イオン性基を有するペルフルオロカーボンポリマー(エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)がより好ましく、上述のポリマー(H)またはポリマー(Q)が特に好ましい。
含フッ素イオン交換樹脂のイオン交換容量は、0.5〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.8〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂が特に好ましい。
【0075】
高分子電解質膜40の厚さは、10〜30μmが好ましく、15〜25μmがより好ましい。高分子電解質膜40の厚さが30μm以下であれば、低加湿条件での固体高分子形燃料電池の発電性能の低下が抑えられる。また、高分子電解質膜40の厚さを10μm以上とすることにより、ガスリークや電気的な短絡を抑えることができる。
高分子電解質膜40の厚さは、高分子電解質膜40の断面をSEM等によって観察することにより測定する。
【0076】
(作用効果)
以上説明した膜電極接合体10にあっては、カソード30が、触媒層32とガス拡散層38との間に、ガス拡散層38側から順に、カーボンファイバー(C1)および含フッ素イオン交換樹脂(F1)を含む第1の中間層36と、カーボンファイバー(C2)および含フッ素イオン交換樹脂(F2)を含む第2の中間層34とを有するため、第2の中間層34が触媒層32の水を速やかに排水しつつ、第1の中間層36が高分子電解質膜40の湿潤状態を維持できる。その結果、低加湿ないし無加湿条件下においても高分子電解質膜40の導電性を充分に維持でき、発電性能が低下しにくい。
【0077】
<カソードの製造方法>
カソード30は、下記の方法(I)または方法(II)によって製造できる。
【0078】
方法(I):下記の工程(i)〜(iii)を有する方法。
(i)ガス拡散層38に、カーボンファイバー(C1)および含フッ素イオン交換樹脂(F1)を含む第1の中間層形成用塗工液を塗工し、乾燥して、第1の中間層36を形成する工程。
(ii)工程(i)で形成した第1の中間層36に、カーボンファイバー(C2)および含フッ素イオン交換樹脂(F2)を含む第2の中間層形成用塗工液を塗工し、乾燥して、第2の中間層34を形成する工程。
(iii)工程(ii)で形成した第2の中間層34に、触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層形成用塗工液を塗工し、乾燥して、触媒層32を形成し、カソード30を得る工程。
【0079】
方法(II):下記の工程(i)〜(iii’)を有する方法。
(i)ガス拡散層38に、カーボンファイバー(C1)および含フッ素イオン交換樹脂(F1)を含む第1の中間層形成用塗工液を塗工し、乾燥して、第1の中間層36を形成する工程。
(ii)工程(i)で形成した第1の中間層36に、カーボンファイバー(C2)および含フッ素イオン交換樹脂(F2)を含む第2の中間層形成用塗工液を塗工し、乾燥して、第2の中間層34を形成する工程。
(iii’)工程(ii)で得られた中間層付きガス拡散層38と、別途作製された中間層24付きのガス拡散層28とで、高分子電解質膜40の両面に触媒層を形成した膜触媒層接合体を挟み、これらを接合して膜電極接合体10を得ると同時に、カソード30を形成する工程。
【0080】
塗工方法としては、公知の方法を用いればよい。
乾燥温度は、40〜130℃が好ましく、50〜100℃がさらに好ましい。これにより、低加湿ないし無加湿の運転条件下にて高い発電性能をより一層得ることができる。
接合方法としては、ホットプレス法、ホットロールプレス法、超音波融着法等が挙げられ、面内の均一性の点から、ホットプレス法が好ましい。
プレス機内のプレス板の温度は、100〜150℃が好ましい。
プレス圧力は、0.5〜4.0MPaが好ましい。
【0081】
(第1の中間層形成用塗工液)
第1の中間層形成用塗工液としては、カーボンファイバー(C1)および含フッ素イオン交換樹脂(F1)を分散媒に分散したものが挙げられる。
分散媒としては、アルコール類と水とを含む分散媒が好ましい。また、フッ素系溶媒(ただし、下記のフッ素系アルコール類を除く。)をさらに添加してもよい。
【0082】
アルコール類としては、非フッ素系アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等)、フッ素系アルコール類(2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール等)等が挙げられる。
【0083】
アルコール類の割合は、分散媒100質量%のうち、30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。アルコール類の割合が該範囲内であれば、塗工性、分散安定性が良好となる。
水の割合は、分散媒100質量%のうち、30〜60質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。水の割合が該範囲内であれば、塗工性、分散安定性が良好となる。
【0084】
第1の中間層形成用塗工液の固形分濃度は、5〜40質量%が好ましく、8〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。固形分濃度が5質量%以上であれば、塗工液の粘度を分散媒の組成で調整することによって、第1の中間層36を1回の塗工で形成できる。固形分濃度が40質量%以下であれば、カーボンファイバー(C1)の分散状態を長期間保持できる。
第1の中間層形成用塗工液の固形分濃度は、塗工液の総質量におけるカーボンファイバー(C1)および含フッ素イオン交換樹脂(F1)の質量の和の割合で表す。
【0085】
第1の中間層形成用塗工液に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F1)とカーボンファイバー(C1)との質量比(F1/C1)は、0.5〜1.5が好ましく、0.5〜1.2がより好ましい。F/Cが0.5以上であれば、第1の中間層36の保湿性が高くなり、高分子電解質膜40の乾燥を抑制できる。F/Cが1.5以下であれば、第1の中間層36のガス透過性をより向上させることができる。
【0086】
第1の中間層用塗工液は、たとえば、下記のようにして調製される。
分散媒の一部に含フッ素イオン交換樹脂(F1)を分散させて、含フッ素イオン交換樹脂(F1)の分散液を調製する。
カーボンファイバー(C1)、残りの分散媒、前記含フッ素イオン交換樹脂(F1)の分散液を混合し混合液を得る。該混合液を撹拌し、分散媒にカーボンファイバー(C1)を分散させ、第1の中間層形成用塗工液を得る。
混合液の撹拌の際には、カーボンファイバー(C1)が適当な長さに揃えられ、分散性が向上する点から、ホモジナイザー、ビーズミル等を用いることが好ましい。
【0087】
(第2の中間層形成用塗工液)
第2の中間層形成用塗工液としては、カーボンファイバー(C2)および含フッ素イオン交換樹脂(F2)を分散媒に分散したものが挙げられる。
分散媒としては、上述のアルコール類と水とを含む分散媒が好ましい。また、フッ素系溶媒(上述のフッ素系アルコール類を含む)をさらに添加してもよい。
【0088】
アルコール類の割合は、分散媒100質量%のうち、30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。アルコール類の割合が該範囲内であれば、塗工性、分散安定性が良好となる。
水の割合は、分散媒100質量%のうち、30〜60質量%が好ましく、40〜60質量%がさらに好ましい。水の割合が該範囲内であれば、塗工性、分散安定性が良好となる。
【0089】
第2の中間層形成用塗工液の固形分濃度は、5〜40質量%が好ましく、8〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。固形分濃度が5質量%以上であれば、塗工液の粘度を分散媒の組成で調整することによって、第2の中間層34を1回の塗工で形成できる。固形分濃度が40質量%以下であれば、カーボンファイバー(C2)の分散状態を長期間保持できる。
第2の中間層形成用塗工液の固形分濃度は、塗工液の総質量におけるカーボンファイバー(C2)および含フッ素イオン交換樹脂(F2)の質量の和の割合で表す。
【0090】
第2の中間層形成用塗工液に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F2)とカーボンファイバー(C2)との質量比(F2/C2)は、0.1〜0.5が好ましく、0.2〜0.4がより好ましい。F/Cが0.1以上であれば、分散媒にカーボンファイバーを良好に分散できる。F/Cが0.5以下であれば、第2の中間層34が良好なガス拡散性、排水性を有する。
第2の中間層用塗工液は、第1の中間層用塗工液と同様にして調製される。
【0091】
(触媒層形成用塗工液)
触媒層形成用塗工液としては、触媒および含フッ素イオン交換樹脂を分散媒に分散したものが挙げられる。
分散媒としては、アルコール類と水とを含む分散媒が好ましい。
【0092】
触媒層形成用塗工液における含フッ素イオン交換樹脂(F)と触媒中のカーボン(C)との質量比(F/C)は、固体高分子形燃料電池の発電性能の点から、0.4〜1.6が好ましく、0.6〜1.2が特に好ましい。
【0093】
(アノードの製造方法)
アノード20は、下記の工程(i”)と、工程(ii”)または工程(ii''')とを有する方法によって製造できる。
(i”)必要に応じて、アノード20の目止め層24付きガス拡散層28に、カーボンファイバーおよび含フッ素イオン交換樹脂を含むアノード中間層形成用塗工液を塗工し、乾燥して、アノードの中間層を形成する工程。
(ii”)目止め層24(またはアノードの中間層)に、触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層形成用塗工液を塗工し、乾燥して、触媒層22を形成し、アノード20を得る工程。
(ii''')別途作製された中間層付きガス拡散層38と、目止め層24付きガス拡散層28(または工程(i”)で得られたアノードの中間層付きのガス拡散層28)とで、高分子電解質膜40の両面に触媒層を形成した膜触媒層接合体を挟み、これらを接合して膜電極接合体10を得ると同時に、アノード20を形成する工程。
【0094】
(アノード中間層形成用塗工液)
アノード中間層形成用塗工液としては、カーボンファイバーおよび含フッ素イオン交換樹脂を分散媒に分散したものが挙げられる。
分散媒としては、アルコール類と水とを含む分散媒が好ましい。
【0095】
アノード中間層形成用塗工液に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F)とカーボンファイバー(C)との質量比(F/C)は、0.5〜2.0が好ましく、0.7〜1.5がより好ましい。F/Cが0.5以上であれば、分散媒にカーボンファイバーを良好に分散できる。F/Cが2.0以下であれば、アノードの中間層が良好なガス拡散性を有する。
【0096】
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体10は、下記の方法(I’)、方法(II’)、方法(III’)、または方法(IV’)によって製造できる。
方法(I’):カソード30と、アノード20とで、高分子電解質膜40を挟み、これらを接合して膜電極接合体10を得る方法。
方法(II’):中間層付きガス拡散層38と、目止め層24付きガス拡散層28(またアノードの中間層付きのガス拡散層28)とで、高分子電解質膜40の両面に触媒層を形成した膜触媒層接合体を挟み、これらを接合して膜電極接合体10を得る方法。
方法(III’):カソード30付き高分子電解質膜40に、触媒層用形成用塗工液を塗工し、その上に目止め層24付きガス拡散層28を接合させてから乾燥させて触媒層24を形成し、膜電極接合体10を得る方法。
方法(IV’):高分子電解質膜40の片面に触媒層用形成用塗工液を塗工、乾燥させて触媒層22を形成した触媒層22付き高分子電解質膜40を、目止め層24付きガス拡散層28(またアノードの中間層付きのガス拡散層28)とカソード30で挟み、これらを接合させて膜電極接合体10を得る方法。
【0097】
(作用効果)
以上説明したカソード30の製造方法にあっては、上述した工程(i)および工程(ii)を有するため、下記の理由から、低加湿ないし無加湿の運転条件下においても高分子電解質膜40の湿潤状態を維持できるカソード30を製造できる。
【0098】
すなわち、工程(i)において、カーボンファイバー(C1)が互いに絡み合って形成された空隙を有する第1の中間層36を形成した後、工程(ii)において、第1の中間層36に第2の中間層形成用塗工液を塗工しているため、第2の中間層形成用塗工液に含まれる含フッ素イオン交換樹脂(F2)の一部が、第1の中間層36に浸透する。その結果、第1の中間層36における含フッ素イオン交換樹脂の割合が高くなって、第1の中間層36の保湿性がさらに高くなり、低加湿ないし無加湿の運転条件下においても高分子電解質膜40の湿潤状態を維持できる。一方、第2の中間層34における含フッ素イオン交換樹脂の割合は低くなり、第2の中間層34のガス拡散性、排水性がさらに高くなる。
【0099】
<固体高分子形燃料電池>
本発明の膜電極接合体は、固体高分子形燃料電池に用いられる。固体高分子形燃料電池は、たとえば、2つのセパレータの間に膜電極接合体を挟んでセルを形成し、複数のセルをスタックすることにより製造される。
セパレータとしては、燃料ガスまたは酸素を含む酸化剤ガス(空気、酸素等)の通路となる溝が形成された導電性カーボン板等が挙げられる。
【0100】
固体高分子形燃料電池の種類としては、水素/酸素型燃料電池、直接メタノール型燃料電池(DMFC)等が挙げられる。DMFCの燃料に用いるメタノールまたはメタノール水溶液は、液フィードであってもよく、ガスフィードであってもよい。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
例3〜11、14は実施例であり、例1、2、12、13は比較例である。
【0102】
(ポリマー(H1)分散液(A))
TFEに基づく単位と単位(U1−21)とを有するポリマー(H1)(イオン交換容量:1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)をエタノールに分散させ、固形分濃度:10質量%のポリマー(H1)分散液(A)を調製した。
【0103】
(ポリマー(H1)分散液(B))
TFEに基づく単位と単位(U1−21)とを有するポリマー(H1)(イオン交換容量:1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)をエタノール/水=6/4(質量比)の分散媒に分散させ、固形分濃度:27.2質量%のポリマー(H1)分散液(B)を調製した。
【0104】
【化5】
【0105】
<触媒層形成用塗工液>
(塗工液(a1))
カーボン担体(比表面積:800m
2/g)に白金・コバルト合金(白金:コバルト=57:6質量比)が触媒全質量の63%含まれるように担持された触媒(田中貴金属工業社製)の10.0gを、蒸留水の59.6gに添加し、よく撹拌した。さらにエタノールの62.8gを添加し、よく撹拌した。これにポリマー(H1)分散液(A)の29.6gを添加し、さらに遊星ボールミルを用いて混合、粉砕し、これを塗工液(a1)とした。
【0106】
(塗工液(a2))
カーボン担体(比表面積:800m
2/g)に白金が触媒全質量の20%含まれるように担持された触媒(田中貴金属工業社製)の10.0gを、蒸留水の94.3gに添加し、よく撹拌した。さらにエタノールの36.7gを添加し、よく撹拌した。これにポリマー(H1)分散液(A)の64.0gを添加し、さらに遊星ボールミルを用いて混合、粉砕し、これを塗工液(a2)とした。
【0107】
<中間層形成用塗工液>
(塗工液(c1))
気相成長炭素繊維(昭和電工社製、商品名:VGCF−H、平均繊維径:約150nm、繊維長:10〜20μm)の10.0gにエタノールの30.7g、蒸留水の47.3gを添加し、よく撹拌した。これにポリマー(H1)分散液(B)の3.68gを添加し、よく撹拌し、さらにホモジナイザーを用いて混合、粉砕し、これを塗工液(c1)とした。
【0108】
(塗工液(c2))
気相成長炭素繊維(昭和電工社製、商品名:VGCF−H、平均繊維径:約150nm、繊維長:10〜20μm)の10.0gにエタノールの33.3g、蒸留水の54.0gを添加し、よく撹拌した。これにポリマー(H1)分散液(B)の11.03gを添加し、よく撹拌し、さらにホモジナイザーを用いて混合、粉砕し、これを塗工液(c2)とした。
【0109】
(塗工液(c3))
気相成長炭素繊維(昭和電工社製、商品名:VGCF−H、平均繊維径:約150nm、繊維長:10〜20μm)の10.0gにエタノールの34.6g、蒸留水の57.3gを添加し、よく撹拌した。これにポリマー(H1)分散液(B)の14.71gを添加し、よく撹拌し、さらにホモジナイザーを用いて混合、粉砕し、これを塗工液(c3)とした。
【0110】
(塗工液(c4))
気相成長炭素繊維(昭和電工社製、商品名:VGCF−H、平均繊維径:約150nm、繊維長:10〜20μm)の10.0gにエタノールの36.0g、蒸留水の60.7gを添加し、よく撹拌した。これにポリマー(H1)分散液(B)の18.4gを添加し、よく撹拌し、さらにホモジナイザーを用いて混合、粉砕し、これを塗工液(c4)とした。
【0111】
(塗工液(c5))
気相成長炭素繊維(昭和電工社製、商品名:VGCF−H、平均繊維径:約150nm、繊維長:10〜20μm)の10.0gにエタノールの37.3g、蒸留水の64.0gを添加し、よく撹拌した。これにポリマー(H1)分散液(B)の22.1gを添加し、よく撹拌し、さらにホモジナイザーを用いて混合、粉砕し、これを塗工液(c5)とした。
【0112】
(塗工液(c6))
気相成長炭素繊維(昭和電工社製、商品名:VGCF−H、平均繊維径:約150nm、繊維長:10〜20μm)の10.0gにエタノールの38.6g、蒸留水の67.3gを添加し、よく撹拌した。これにポリマー(H1)分散液(B)の25.7gを添加し、よく撹拌し、さらにホモジナイザーを用いて混合、粉砕し、これを塗工液(c6)とした。
【0113】
(塗工液(c7))
気相成長炭素繊維(昭和電工社製、商品名:VGCF−H、平均繊維径:約150nm、繊維長:10〜20μm)の10.0gにエタノールの47.9g、蒸留水の90.6gを添加し、よく撹拌した。これにポリマー(H1)分散液(B)の51.5gを添加し、よく撹拌し、さらにホモジナイザーを用いて混合、粉砕し、これを塗工液(c7)とした。
【0114】
(塗工液(c8))
気相成長炭素繊維(昭和電工社製、商品名:VGCF−H、平均繊維径:約150nm、繊維長:10〜20μm)の10.0gにエタノールの50.6g、蒸留水の97.3gを添加し、よく撹拌した。これにポリマー(H1)分散液(B)の58.8gを添加し、よく撹拌し、さらにホモジナイザーを用いて混合、粉砕し、これを塗工液(c8)とした。
【0115】
〔例1〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c2)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc1)を得た。
目止め層付きガス拡散層基材(SGLカーボン社製、25BC)上に塗工液(a2)を白金量で0.05mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、アノード(ga1)を得た。
【0116】
高分子電解質膜として、スルホン酸基を有するペルフルオロカーボン重合体からなる厚さ20μmのイオン交換膜(旭硝子社製、商品名:フレミオン、イオン交換容量:1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)を用意した。
高分子電解質膜をアノード(ga1)およびカソード(gc1)で挟み、ホットプレス法によりカソード(ga1)およびアノード(gc1)の触媒層を高分子電解質膜に圧着することで膜電極接合体(電極面積:25cm
2)を得た。
【0117】
(発電性能(1))
得られた膜電極接合体を、発電用セルに組み込み、常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率50%)を供給し、セル温度:80℃において電流密度:1.0A/cm
2における運転初期のセル電圧を測定した。なお、アノード側には露点80℃の水素を供給し、カソード側は露点80℃の空気をそれぞれセル内に供給した(セル内の相対湿度:100%RH)。結果を表1に示す。
【0118】
(発電性能(2))
得られた膜電極接合体を、発電用セルに組み込み、常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率50%)を供給し、セル温度:80℃において電流密度:1.0A/cm
2における運転初期のセル電圧を測定した。なお、アノード側には露点53℃の水素を供給し、カソード側は露点53℃の空気をそれぞれセル内に供給した(セル内の相対湿度:30%RH)。結果を表1に示す。
【0119】
〔例2〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c7)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc2)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc2)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0120】
〔例3〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c3)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上に塗工液(c3)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc3)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc3)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0121】
〔例4〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c8)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上に塗工液(c3)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc4)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc4)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0122】
〔例5〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c6)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上に塗工液(c5)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc5)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc5)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0123】
〔例6〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c6)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上に塗工液(c1)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc6)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc6)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0124】
〔例7〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c6)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上に塗工液(c4)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc7)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc7)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0125】
〔例8〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c7)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上に塗工液(c2)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc8)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc8)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0126】
〔例9〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c5)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上に塗工液(c2)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc9)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc9)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0127】
〔例10〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c6)を固形分で1.0mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上に塗工液(c2)を固形分で1.0mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc10)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc10)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0128】
〔例11〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c6)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上に塗工液(c2)を固形分で0.8mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc11)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc11)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0129】
〔例12〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c2)を固形分で1.6mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc12)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc12)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0130】
〔例13〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c7)を固形分で1.6mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、60℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc13)を得た。
カソード(gc1)の代わりにカソード(gc13)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
〔例14〕
目止め層なしガス拡散層基材(NOK製、H2315 T10X6)上に塗工液(c6)を固形分で1.0mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、150℃で乾燥し、その上に塗工液(c2)を固形分で1.0mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、150℃で乾燥し、その上にさらに塗工液(a1)を白金量で0.2mg/cm
2となるようにダイコーターで塗工、乾燥し、カソード(gc14)を得た。カソード(gc1)の代わりにカソード(gc14)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体を得て、発電性能(1)、(2)を評価した。結果を表1に示す。
【0131】
【表1】