(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジエン系ゴム、熱可塑性エラストマー、カーボン及び有機液状物質を含んでなる組成物であって、かつ該組成物3mL中に含まれる最大径が10μm以上である粗大粒子の数が10個以下であることを特徴とする二次電池用シール材組成物。
前記ジエン系ゴムと熱可塑性エラストマーとの重量比率(ジエン系ゴム/熱可塑性エラストマー)が60/40〜99/1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用シール材組成物。
発電要素を収納した金属容器の開口部を塞ぐ封口体に装着された絶縁ガスケットと前記金属容器との間、および/または前記絶縁ガスケットと前記封口体との間に請求項1〜6のいずれか1項に記載の二次電池用シール材組成物からなる密閉層を有することを特徴とする二次電池。
【背景技術】
【0002】
従来、アルカリ二次電池は、酸化ニッケルを主とするペーストを基板に塗布乾燥した正極板と、カドミウム又は水素吸蔵合金粉を主とするペーストを基板に塗布乾燥した負極板とを、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなる不織布であるセパレータを間に介在させ、渦巻状に捲回して発電要素としている。
【0003】
また、リチウム二次電池では、リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出可能な活物質層を有する正極板および負極板との間にセパレータを間に介在させ、渦巻状に捲回して発電要素としている。
【0004】
この発電要素を、開口部を拡口した円筒形又は角形の金属容器に圧挿入し、高濃度で粘度の高い電解液を注液し、絶縁ガスケットを介して封口蓋等の封口体で封口し、金属容器の開口部を縮径しさらに開口端を内方へ折曲して、電池を密閉している。絶縁ガスケットと金属容器の開口部の内面との間には、封口をより完全にするためシール材組成物を塗布介在させて密閉層を形成している。
【0005】
しかしながら、通常用いられている金属容器の開口部の内側の表面には、絞り加工の時に形成された縦方向の細かい凹凸があり、粘着性のシール材組成物が充分に凹凸の谷底まで埋めることができていないことがあるので、電池内部に注液された電解液が電気毛管現象により這い上り電池外部へ漏液することがある。このため電池性能を損なうのみならず、使用機器までアルカリ電解液により損傷させてしまうといった問題がある。また、リチウム二次電池では、電解液の溶媒として有機溶媒が使用されており、電池内に水分が浸入することで、サイクル特性が大幅に劣化することが知られている。
【0006】
アルカリ二次電池およびリチウム二次電池は近年車載用に多用されており、その使用範囲の拡大に伴い、非常に過酷な環境下においても、従来以上に高い安全性が要求されて来ている。例えば万一二次電池が異常に高温となったり、電池内部が高圧になったりした場合においても、電解液の漏液による機器の損傷が全くないことが強く望まれている。こうした性能を得るため、各種の方法が検討されているが、シール材組成物についても、従来のものではまだ充分でなく、高温でのシール材そのものの安定性や電解液や金属容器材料への安定性、及び電解液の漏液防止性について、より高いレベルが要求されつつある。
【0007】
このような要求を満足させるために、特殊なシール材の使用、クリンプ型の改良、封口圧の強化、絶縁ガスケット材質の改良等が試みられている。例えばシール材としてはピッチ、タール、アスファルト;ポリスルフォン化エチレンにタールやアスファルトなどを混合したもの;RSH(Rはアルキル基)で表わされるメルカプタン;ポリフッ化ビニリデン;カルシウム、リチウムおよびバリウムからなる群から選択された一種以上の金属を含有する金属石ケンを含むグリスをアスファルトに添加した組成物:ポリブタジエンをベースとしたウレタン液状ゴムに硬化剤を混合したもの:更には溶剤に溶解もしくは分散せしめたポリアミド樹脂等を生乾燥状態としたもの等によって電解液の漏液の防止等が図られている。
【0008】
さらに、例えば、特許文献1には、ポリメチレンタイプの飽和主鎖を持つゴムおよびジエン系ゴムより選ばれる1種または2種以上のゴムを主成分とするシール材で封口部を密封することによって水分の浸入や電解液の漏液のない安全性に優れたアルカリ二次電池が得られると記載されている。
【0009】
特許文献2には、2以上のガラス転移温度を有することによって特徴づけられるブロック共重合体から構成される熱可塑性エラストマーが記載されているが、特許文献2のシール材組成物では高温領域においてのシール性が不十分である。
【0010】
特許文献3ではポリブタジエンをベースとしたウレタン液状ゴムに、あらかじめ適当量の硬化剤を混合したエラストマーでシールする方法が記載されているが、特許文献3のシール材組成物では低温領域でのシール性が不十分である為、さらなる改善が必要となってきている。
【0011】
特許文献4には、ポリメチレンタイプの飽和主鎖を持つゴムを主成分とする電池用シール材を用いることで、シール性が向上し安全性の極めて高い二次電池が得られる旨が記載されている。
【0012】
特許文献5には、重量平均分子量が10000〜1500000のジエン系ゴムを主成分とする電池用シール材を用いることで、高温時の密閉性が向上し、幅広い環境で使用可能な二次電池が得られる旨が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の二次電池用シール材組成物は、ジエン系ゴム、熱可塑性エラストマー、カーボン及び有機液状物質を含んでなり、かつ該組成物3mL中に含まれる最大径が10μm以上である粗大粒子の数が10個以下であることを特徴とする。
【0030】
まず、本発明で使用するジエン系ゴム、熱可塑性エラストマー、カーボン及び有機液状物質について説明する。
【0031】
(ジエン系ゴム)
本発明で用いるジエン系ゴムとは、ジエン系単量体単位を50質量%以上含有する重合体であり、ジエン系単量体の単独重合体若しくは共重合体又はジエン系単量体とこれと共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体である。ジエン系単量体は、特に限定されず、その具体例としては、ブタジエン、クロロプレンまたはイソプレンが挙げられる。本発明で用いるジエン系ゴムは、後述する熱可塑性エラストマーとは異なり、高温では流動性を示さないものである。
【0032】
ジエン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、エチレン、プロピレン、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。共重合体におけるジエン系単量体と共重合可能な他の単量体の比率は50質量%未満であり、シール材の耐熱性の観点から好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0033】
また、共重合体はランダム構造、分岐型構造など様々な構造をとりうる。また、これらの複数のジエン系ゴムの混合物であってもよい。
【0034】
これらの中でも電解液への耐溶解性の理由から、ポリブタジエン、ポリイソプレンが好ましく、特にポリブタジエンが好ましい。ジエン系ゴムとして、ブタジエンゴムを用いることにより、シール材の柔軟性が向上し、密閉性の高いシール材組成物が得られる。
【0035】
(1,4−シス含有量)
ポリブタジエンとしては、特に1,4−シス含有量が90%以上のポリブタジエンが好ましく用いられる。1,4−シス含有量は、
1H−NMR分析により1,4−結合単位(5.4−5.6ppm)と1,2−結合単位(5.0−5.1ppm)の比を求め、
13C−NMR分析からシス結合(28ppm)とトランス結合(38ppm)の比を求めることによって決定することができる。ポリブタジエンゴム中のジエン構造部分における1,4−シス含有量は、より好ましくは93%以上、更に好ましくは95%以上である。シス体含量が高い方が密閉性の良いシール材組成物が得られる。
【0036】
(分子量)
本発明で使用するジエン系ゴムの重量平均分子量は、トルエンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜1,500,000、好ましくは20,000〜800,000、より好ましくは50,000〜700,000である。重量平均分子量が1,500,000を超えると、ジエン系ゴムを有機溶媒に溶解させ、シール材組成物としたとき、粘度が高くなりすぎて、絶縁ガスケットに塗布する際のシール材層の厚さの制御が困難となる。逆に重量平均分子量が10,000未満になると、シール材としての強度が弱く、絶縁ガスケットを装着する際、シール材層に亀裂が入り、シール効果が悪くなるおそれがある。
【0037】
(熱可塑性エラストマー)
本発明における熱可塑性エラストマーは、使用温度では加硫ゴムと同様の性質を持つが、高温ではポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂と同様に流動性を示し、溶融成形または再成形することができるものであり、上述のジエン系ゴムとは異なるものである。
【0038】
具体例としては、芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーのブロックポリマーまたはブロックポリマーの混合物、その水素添加物などのスチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0039】
これらの中でも、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー(芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーとの共重合体、およびその水素添加物)は、カーボンの分散性が良いので好ましい。芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーとの共重合体はブロック共重合体が良い。ブロック共重合体は、直鎖状ブロック共重合体でも放射状ブロック共重合体でもよい。具体的には、例えば芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーとの共重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロックポリマー等のジブロック型ブロックポリマー;スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロックポリマー等のトリブロック型ブロックポリマー;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエンブロックポリマー、スチレン−イソプレン−スチレン−イソプレンブロックポリマー、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロックポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレン−イソプレンブロックポリマーなどのようなマルチブロック型スチレン含有ブロックポリマーおよびこれらの水素添加物または部分水素添加物などが挙げられる。これらのポリマーは単独で用いても、混合比を目的に応じ適宜設定して2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも100℃〜200℃の範囲でジエン系ゴムと均一に混練可能で、また有機液状物質に溶解するものが好ましい。
【0040】
(ジエン系ゴム/熱可塑性エラストマー比率)
本発明において、前記ジエン系ゴムと熱可塑性エラストマーとの重量比率は、ジエン系ゴム/熱可塑性エラストマー=60/40〜99/1であることが好ましい。
【0041】
ジエン系ゴムと熱可塑性エラストマーとの重量比率(ジエン系ゴム/熱可塑性エラストマー)は、好ましくは70/30〜97/3、より好ましくは80/20〜95/5である。ジエン系ゴムと熱可塑性エラストマーとの重量比率を上記範囲にすることにより、高温での密閉性が良好なシール材を得ることができる。
【0042】
(カーボン)
本発明におけるカーボンとは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定した一次粒子径が1μm以下である炭素からなる粒子をいう。具体例としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、チャンネルブラック、黒鉛などの炭素粉末が挙げられる。
【0043】
なかでもカーボンブラック、特にファーネスブラック、チャンネルブラック等の一次粒子径が0.1μm以下であるカーボンブラックが好ましい。カーボンを添加する場合、組成物中で十分均一に溶解または分散させる必要がある。カーボンの添加量は、ジエン系ゴム100質量部に対して通常0.01質量部〜20質量部、好ましくは0.01質量部〜5質量部、より好ましくは0.02質量部〜3質量部である。カーボンの添加量を上記範囲にすることにより、柔軟性を有し、ひび割れの発生の少ない密閉層を得ることができる。
【0044】
(有機液状物質)
本発明における有機液状物質とは、常温(25℃)、常圧下で液状状態にある有機化合物であり、例えば炭化水素化合物、含窒素系有機化合物、含酸素系有機化合物、含塩素系有機化合物、含硫黄系有機化合物などである。
【0045】
本発明において、前記有機液状物質が、常圧で50〜170℃の沸点と14.0〜20.0MPa
1/2のSP値(溶解度パラメータ)とを有する有機液状物質であることが好ましい。
【0046】
本発明のシール材組成物を構成する有機液状物質の常圧での沸点は、好ましくは60〜160℃、より好ましくは70〜150℃のものである。沸点が低すぎると揮発性が高すぎて操作性が低下するおそれがあり、逆に沸点が高すぎると塗布後の乾燥に時間がかかり生産性に劣る。
【0047】
本発明のシール材組成物を構成する有機液状物質のSP値は、ジエン系ゴム、熱可塑性エラストマーを溶解するものが塗布性などの点から好ましく、具体的には14.0〜20.0MPa
1/2のものが好ましく、15.0〜19.0MPa
1/2のものがより好ましい。
【0048】
有機液状物質の具体例を以下に挙げる。化合物名の後ろに記載された括弧内に記載した前の数字は常圧での沸点(℃)であり、小数点以下は四捨五入又は切り捨てされた値である。沸点に幅がある場合は下限が70℃以上であることを確認して上限を記載した。また、括弧内に記載した後の数字はSP値(MPa
1/2)である。すなわち、下記では、「化合物名(沸点(℃)、SP値(MPa
1/2))を示した。これらの有機液状物質は2種類以上混合して用いても良い。
【0049】
n−ヘキサン(69℃、15.1)、シクロヘキサン(81℃、16.8)、n−ヘプタン(98℃、15.1)、n−オクタン(125℃、15.6)、イソオクタン(117℃、14.1)、ベンゼン(80℃、18.8)、トルエン(111℃、18.2)、o−キシレン(144℃、18.5)、m−キシレン(139℃、18.0)、p−キシレン(138℃、18.0)、スチレン(145℃、19.0)、エチルベンゼン(136℃、18.0)、メチルイソアミルケトン(145℃、17.2)、メチルイソブチルケトン(145℃、17.2)、酢酸エチル(76.5〜77.5℃、18.6)、n−酢酸ブチル(124〜126℃、18.0)などが挙げられる。
【0050】
(その他の添加剤)
さらに本発明のシール材組成物には上記成分のほかに、さらに分散剤、レベリング剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、密着性向上剤等、その他の成分が含まれていてもよい。これらは絶縁ガスケットの性能を劣化させず、電解液と反応せず、また電解液に溶解しないものであれば特に限られない。
【0051】
分散剤としてはアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物及び高分子化合物が例示される。分散剤は用いるジエン系ゴムや熱可塑性エラストマーに応じて選択される。シール材組成物中の分散剤の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。分散剤量が上記範囲であることによりシール材スラリーの安定性に優れ、均一に塗工することができるため、厚みの薄い密閉層を形成することができ、かつ液漏れを効果的に防止することができる。
【0052】
レベリング剤としてはアルキル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及び金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤を混合することにより、塗工時に発生するはじきを防止し、シール部の平滑性を向上させることができる。シール材組成物中のレベリング剤の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。レベリング剤量が上記範囲であることによりシール時の生産性、均一性に優れ、厚みの薄い密閉層を形成することができ、かつ液漏れを効果的に防止することができる。
【0053】
老化防止剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤及びヒンダートアミン系安定剤が挙げられる。シール材組成物中の老化防止剤の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。老化防止剤量が上記範囲であることにより、酸素、日光、熱、折り曲げ作用、オゾンなどの作用による、ひび割れ、変色、硬化、軟化といった老化を防ぎ、寿命を著しく長くすることができる。
【0054】
紫外線吸収剤としては例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル等の有機物、又は微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物が使用できる。シール材組成物中の紫外線吸収剤の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。紫外線吸収剤が上記範囲であることにより紫外線による劣化を防ぐことができる。
【0055】
密着向上剤としては、特に制限されないが、イミダゾ−ル化合物が好ましい。イミダゾール化合物の具体例としては、アルキル基含有イミダゾール化合物、ベンゼン含有イミダゾール化合物、シアノ基含有イミダゾール化合物、トリメリテイト含有イミダゾール化合物、トリアジン含有イミダゾール化合物、イソシアヌル酸含有イミダゾール化合物、水酸基含有イミダゾール化合物などが挙げられる。
【0056】
アルキル基含有イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが挙げられる。
【0057】
ベンゼン含有イミダゾール化合物としては、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが挙げられる。
【0058】
シアノ基含有イミダゾール化合物としては、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールが挙げられる。
【0059】
トリメリテイト含有イミダゾール化合物としては、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトが挙げられる。
【0060】
トリアジン含有イミダゾール化合物としては、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール イソシアヌル酸付加物が挙げられる。
【0061】
水酸基含有イミダゾール化合物としては、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。
【0062】
その他特殊系として、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライドなどが挙げられる。
【0063】
これらのイミダゾール化合物の中でも、シール材に用いる有機液状媒体への溶解性の点より、アルキル基含有イミダゾール化合物、ベンゼン含有イミダゾール化合物が好ましく、これらの中でも、融点が50℃以下である、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、又は1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールが更に好ましく、ジエン系ゴム又は熱可塑性エラストマーとの相溶性も考慮すると、1,2-ジメチルイミダゾールが特に好ましい。イミダゾール化合物は、1種を単独で用いてもよく、これらを2種以上用いてもよい。
【0064】
本発明のシール材組成物におけるイミダゾール化合物の含有割合は、ジエン系ゴムと熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜10質量部である。イミダゾール化合物の含有割合が、前記範囲にあることで、発電要素を収納した金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および絶縁ガスケットと封口体との密着性がより向上する。
【0065】
その他には、フュームドシリカやフュームドアルミナなどのナノ微粒子を混合することによりシール材組成物のチキソ性をコントロールすることができ、さらにそれにより得られる密閉層のレベリング性を向上させることができる。シール材組成物中のナノ微粒子の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。ナノ微粒子が上記範囲であることにより、シール材組成物スラリーの安定性、生産性、均一性に優れ、厚みの薄い密閉層を形成することができ、かつ液漏れを効果的に防止することができる。
【0066】
(シール材組成物)
本発明のシール材組成物中のその他の添加剤も含めての全固形分濃度は、組成物全量中において0.1質量%〜50質量%、好ましくは0.5質量%〜40質量%、より好ましくは1質量%〜30質量%である。シール剤組成物の固形分濃度を上記範囲にすることにより、密閉層形成時の乾燥時間を短くすることができる。
【0067】
本発明のシール材組成物中におけるジエン系ゴムと熱可塑性エラストマーの合計量は、組成物全量中において、0.1質量%〜50質量%、好ましくは0.5質量%〜40質量%、より好ましくは1質量%〜30質量%である。本発明のシール材組成物中におけるジエン系ゴムと熱可塑性エラストマーの合計量を上記範囲にすることにより塗布に適した粘度のシール材組成物を得ることができる。
【0068】
本発明のシール材組成物における粗大粒子とは、十分に撹拌した3mLのシール材組成物について0〜25μm測定用の粒ゲージを用いて観察される、最大径が10μm以上である一次粒子、もしくは二次粒子である。ここで、「十分に攪拌」とは、一定速度で攪拌しているシール材組成物について一定時間毎に、粗大粒子数を測定した際に、有意な変化がなく一定値に収束する時間まで攪拌を行うことを意味する。本発明のシール材組成物3mL中に含まれる粗大粒子数は、10個以下であり、好ましくは7個以下であり、さらに好ましくは3個以下である。組成物中における粗大粒子数を上記範囲にすることにより、金属容器の開口部を塞ぐ封口体に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間の密閉性を向上することができ、電解液の漏出径路を減らすことができる。
【0069】
(二次電池用シール材組成物の製造方法)
本発明の二次電池用シール材組成物は、カーボンと、ジエン系ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーとを混練しマスターバッチを準備し、これとは別にジエン系ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーを含む有機液状物質溶液を準備し、前記マスターバッチを、前記有機液状物質溶液に、必要に応じ残余量のジエン系ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーとともに、溶解または分散することで得られる。
【0070】
カーボンとジエン系ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーのマスターバッチとは、ジエン系ゴム及び/又は前記熱可塑性エラストマーに前記カーボンを分散させたものである。
【0071】
ジエン系ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーの有機液状物質溶液とは、前記ジエン系ゴム及び/又は前記熱可塑性エラストマーを前記有機液状物質にミキサー等を用いて溶解させたものである。
【0072】
前記カーボンと、前記ジエン系ゴム及び/又は前記熱可塑性エラストマーとのマスターバッチを、予備混練した後に有機液状物質溶液へ溶解または分散することにより、シール材組成物中に含まれる前記カーボンに強い力を加えることができ、前記カーボンを高分散することが可能となり、シール材組成物中の粗大粒子数を低減することができる。
【0073】
(マスターバッチ組成)
マスターバッチにおける前記ジエン系ゴム及び/又は前記熱可塑性エラストマーと前記カーボンとの重量比率は、ジエン系ゴムと熱可塑性エラストマーとの合計/カーボン=50/50〜90/10が好ましい。上記範囲にすることにより該カーボンを高分散することができる。
【0074】
(マスターバッチ混練方法)
本発明におけるマスターバッチを得るための混練法は、特に限定はされないが、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置を使用した方法が挙げられる。また、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、サンドミル、ロールミル、2軸ロール、バンバリーミキサー、異方性2軸混練機および遊星式混練機などの分散混練装置を使用した方法が挙げられ、二次粒子を解砕できるという観点から2軸ロール、バンバリーミキサー、異方性2軸混練機を使用した方法が好ましい。
【0075】
(混練温度)
上記のマスターバッチを得る工程における、混練時の温度としては特に限定はされないが、好ましくは100℃〜200℃、さらに好ましくは120℃〜190℃、特に好ましくは140℃〜180℃である。混練時の温度を上記範囲内とすることで、ジエン系ゴム又は熱可塑性エラストマーの粘度が下がり、カーボンを混練させる為に適した粘度となる。混練時の温度が低すぎる場合には、ジエン系ゴム又は熱可塑性エラストマーの粘度が下がらず、カーボンの分散が不十分になり、またトルクがかかり過ぎる為、ジエン系ゴム又は熱可塑性エラストマーの主鎖切断が起きるおそれがある。逆に、混練時の温度が高すぎる場合には、ジエン系ゴム又は熱可塑性エラストマーの酸化劣化が起こるおそれがある。
【0076】
(混練時間)
上記のマスターバッチを得る工程における、これらの混練時間としては特に限定はされないが、好ましくは5分以上30分以下、さらに好ましくは10分以上25分以下である。マスターバッチの混練時間を上記範囲内とすることで、カーボンを十分に分散することが可能である。混練時間が長すぎる場合には、カーボンが再凝集し、粗大粒子数が増加するおそれがある。
【0077】
(消費エネルギー)
上記のマスターバッチを得る工程における、混練時における消費エネルギーは、好ましくは500〜30,000MJ/m
3であり、さらに好ましくは1,000〜10,0000MJ/m
3、特に好ましくは2,000〜8,000MJ/m
3である。上記範囲内とすることで、カーボンを十分に分散でき、ポリマー分子の切断による劣化の抑制が可能である。前記消費エネルギーは、混練に使用する混合装置の消費電力量を混練した材料の量で割ることに算出される、単位容積あたりの混練に要する比エネルギーを意味する。
【0078】
なお、マスターバッチの混練に際しては、少量の有機液状物質を用いても良いが、剪断力が低下することがあるため、有機液状物質を使用せずに、マスターバッチを調製することが好ましい。
【0079】
(ジエン系ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーの有機液状物質溶液)
前記ジエン系ゴム及び/又は前記熱可塑性エラストマーと有機液状物質の混合方法は特に限定はされないが、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置を使用した方法が挙げられる。
【0080】
有機液状物質溶液の固形分濃度は特に限定はされないが、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは3〜7質量%である。
【0081】
(マスターバッチと有機液状物質溶液との混合)
上記マスターバッチを、有機液状物質溶液に、溶解または分散することで、本発明の二次電池用シール材組成物が得られる。溶解または分散の方法は特に限定はされず、たとえばマスターバッチに有機液状物質溶液を加え、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置などを使用して混合する方法があげられる。また、マスターバッチと有機液状物質溶液との混合の際に、得られる二次電池用シール組成物が、前記した所定濃度となるように、必要に応じ残余量のジエン系ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーを追加してもよく、また前述したカーボン、添加剤、有機液状物質を加えても良い。
【0082】
本発明に係る二次電池としては、特に制限されないが、アルカリ二次電池やリチウム二次電池に好適である。
【0083】
(アルカリ二次電池)
本発明の好適な実施態様であるアルカリ二次電池は、その概略構成図を
図1に示したように、発電要素を収納した金属容器4の開口部を塞ぐ封口体5に装着された絶縁ガスケット6と金属容器4との間、および/または絶縁ガスケット6と封口体5との間に本発明の二次電池用シール材組成物7からなる密閉層を有する。なお、
図1において、1は負極板、2はセパレータ、3は正極板である。また、電解液はアルカリ性水溶液の電池であればよく、その金属容器の素材、発電要素、絶縁ガスケットは、一般に使用されているものでよい。
【0084】
アルカリ二次電池の発電要素とは、酸化ニッケルを主とするペーストを基板に塗布乾燥した正極板3と、カドミウムもしくは水素吸蔵合金粉を主とするペーストを基板に塗布乾燥した負極板1とを、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなる不織布であるセパレータ2を、間に介在させ、渦巻状に捲回してからなる化学反応によって電子が発生する要素を示す。
【0085】
(リチウム二次電池)
本発明の他の好適な実施態様であるリチウム二次電池の概略構成は、前記アルカリ二次電池と同様であり、
図1に示したように、発電要素を収納した金属容器4の開口部を塞ぐ封口体5に装着された絶縁ガスケット6と金属容器4との間、および/または絶縁ガスケット6と封口体5との間に本発明の二次電池用シール材組成物7からなる密閉層を有する。なお、
図1において、1は負極板、2はセパレータ、3は正極板である。また、電解液に含まれる支持電解質としては、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4などのリチウム系化合物などのような水と反応して加水分解しやすい化合物が用いられている。また有機電解液溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等の可燃性有機化合物が用いられている。その金属容器の素材、発電要素、絶縁ガスケットは、一般に使用されているものでよい。
【0086】
リチウム二次電池の発電要素とは、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなどの正極活物質を含むペーストを基板に塗布乾燥した正極板3と、グラファイトなどの負極活物質を含むペーストを基板に塗布乾燥した負極板1とを、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなる不織布であるセパレータ2を、間に介在させ、渦巻状に捲回してからなる化学反応によって電子が発生する要素を示す。
【0087】
金属容器4とは、発電要素を収納する為の金属製の外装缶であり、通常は発電要素内の負極と接合された負極金属容器であるが、これに限定はされない。形状はボタン、コイン、シート、シリンダー、角などのいずれでも良い。
【0088】
絶縁ガスケット6とは、金属容器4と封口体5の間において絶縁性を保持する材料であり、また、電解液の漏出を防ぐことができればよく、特に限定されるものではないが、材質としてはPP,EPDM、PFA、PTFE、ナイロン66などが挙げられる。
【0089】
封口体5とは、発電要素並びに電解液を負極金属缶内に収納した後、開口した部分に蓋をする金属材料であり、通常は発電要素内の正極と接合されたものを示す。
【0090】
金属容器4、絶縁ガスケット6、封口体5、シール材組成物7によって密閉された空間内に、外気とは隔てられた発電要素、電解液が収納され、二次電池が構成される。
【0091】
本発明のシール材組成物を二次電池用のシール材に用いる場合は特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順でシール材の層を形成すればよい。絶縁ガスケット6表面に、定量ディスペンサーを使用してシール材組成物7の塗布、乾燥を行い、シール材層を形成する。これとは別に金属容器内に正極板3と負極板1を、セパレータ2を介して捲回してなる発電要素を、圧挿入する。この容器の開口部近傍に封口部固定のため、ビードを形成する。このビード部の絶縁ガスケットと接触する部分へ、前記シール材組成物を、定量ディスペンサーを使用して塗布、乾燥を行い、シール材の層を形成する。この後、電解液を注入し、前記の表面にシール材層を形成された絶縁ガスケットを介して、金属容器の開口部に封口蓋板を嵌合し、封口して二次電池を作製する。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、本実施例において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、それぞれ、「質量部」及び「質量%」である。
【0093】
各特性は、以下の方法により評価する。
【0094】
(シール材組成物中の粗大粒子測定方法)
JIS K5600−2−5に基づき、3mLのシール材組成物について25μmの粒ゲージを用いて各3回測定し、10μm以上の粗大粒子数の平均を算出した。
【0095】
(アルカリ二次電池の製造方法)
AAサイズの金属容器内に正極板と負極板とをセパレータを介して捲回してなるアルカリ二次電池の発電要素を圧挿入した。この容器の開口部近傍に、封口部固定のため、ビード部を形成した。このビード部上へ、前記シール材組成物を、定量ディスペンサーを使用して、乾燥後のシール材組成物層厚が13ミクロンとなるように塗布、乾燥を行い、シール材組成物層を形成した。この後、7規定のKOH及び1規定のLiOHからなる電解液を注入し、ビード部表面に絶縁ガスケットを介して、金属容器に封口体である封口蓋板を嵌合し、封口してアルカリ二次電池とした。アルカリ二次電池の概略構成図を
図1に示す。
【0096】
(アルカリ二次電池における密閉性試験)
アルカリ二次電池を45℃で24時間エージングした後、初充電を行った。初充電が施された電池20個を作製した。その内10個の電池に、アルカリによって黄色から紫に変色するCR試験紙を付着し、温度95℃、湿度90%の恒温恒湿槽で、48時間放置し、アルカリ電解液が漏液して試験紙が変色した電池の有無を調べた(高温高湿試験)。また残りの電池10個は、2.5mの高さから電池の方向を一定にし、10回落下させた後、各々の電池を50mLの水で充分に水洗し、水洗後の水にCR試験紙をひたして、その変色の有無から、アルカリ電解液の漏液の有無を調べた(落下試験)。これらを密閉性の評価基準とし、以下の基準で評価する。この値が高いほど密着性、密閉性に優れている。
A:全て変色しない
B:変色しない電池 7個以上10個未満
C:変色しない電池 5個以上7個未満
D:変色しない電池 3個以上5個未満
E:変色しない電池 1個以上3個未満
F:全て変色
【0097】
(実施例1)
(ブタジエンゴムの重合)
10リットルの攪拌機付きオートクレーブにトルエン5,000g及びブタジエン810gを加え、十分攪拌した後、ジエチルアルミニウムクロライド0.27mol及び塩化クロム・ピリジン錯体0.6mmolを加え、60℃で3時間攪拌しながら重合した。その後、メタノール100mLを加えて重合を停止した。重合停止後、室温まで冷却した後、重合液を取り出した。得られた重合液を水蒸気凝固した後、60℃で48時間真空乾燥してブタジエンゴムを780g得た。得られたブタジエンゴムの重量平均分子量は390,000であった。また、
13C−NMRスペクトルの結果からこのポリマーの1,4−シス体含量は97%であった。
【0098】
(シール材組成物の調製)
ブタジエンゴム308gとカーボン(三菱化学社製 商品名『ダイアブラックI』)77gとを、2軸ロールを用いて装置の初期設定温度160℃で10分間混練し、マスターバッチを得た。このマスターバッチ混練時の消費エネルギーは4,980MJ/m
3であった。混練中の樹脂温度は、混練の経過にともない上昇し、170〜180℃であった。
【0099】
これとは別に熱可塑性エラストマーであるスチレン−イソプレンブロックポリマー(日本ゼオン社製 商品名『Quintac3421』)110gをキシレン2,090gに溶解させた溶液(濃度5%)(以下、『溶液』という。)を調製した。さらに上記で調整したマスターバッチ、スチレン−イソプレンブロックポリマー溶液、ブタジエンゴム957g及びキシレン10,980gを加え、ディスパーで8時間攪拌した。上記で得られた溶液に、イミダゾール化合物として1,2-ジメチルイミダゾール(四国化成製、以下「1,2−DMZ」と記すことがある。)をブタジエンゴム/スチレン−イソプレンブロックポリマー100部に対して5部になるように添加し、さらにディスパーで1時間攪拌し、ブタジエンゴム/スチレン−イソプレンブロックポリマー=92/8のシール材組成物(濃度10%)を得た。得られたシール材組成物中の10μm以上の粗大粒子数の平均は0個であった。また、このシール材組成物を用いた電池において、温度95℃、湿度90%の恒温恒湿槽で、48時間放置し、アルカリ電解液が漏液して試験紙が変色しなかった電池の数は10個中10個であり、2.5mの高さから電池の方向を一定にし、各々の電池を50mLの水で水洗後のCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中10個であった。
【0100】
(実施例2)
マスターバッチの混練時間を30分間にした以外は、実施例1と同様の方法でシール材組成物(濃度10%)を得た。このマスターバッチ混練時の消費エネルギーは12,310MJ/m
3であった。得られたシール材組成物について、実施例1と同様の評価を行なったところ、粗大粒子数の平均は4個、高温高湿試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中10個、落下試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中9個であった。
【0101】
(実施例3)
キシレンに代えてシクロヘキサンを使用し、マスターバッチの混練方法を2軸ロールからバンバリーミキサーに変更し、混練時の設定温度を170℃にした以外は、実施例1と同様の方法でシール材組成物(濃度10%)を得た。このマスターバッチ混練時の消費エネルギーは4,910MJ/m
3であった。得られたシール材組成物について、実施例1と同様の評価を行なったところ、粗大粒子数の平均は0個、高温高湿試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中9個、落下試験でCR試験紙が変色のしなかった電池の数は10個中8個であった。
【0102】
(実施例4)
マスターバッチの混練方法を2軸ロールから異方向2軸混練機に変更し、混練時の設定温度を170℃にした以外は、実施例1と同様の方法でシール材組成物(濃度10%)を得た。このマスターバッチ混練時の消費エネルギーは5,320MJ/m
3であった。得られたシール材組成物について、実施例1と同様の評価を行なったところ、粗大粒子数の平均は2個、高温高湿試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中10個、落下試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中9個であった。
【0103】
(実施例5)
ブタジエンゴムと熱可塑性エラストマーとの比率を92/8から85/15に変更し、マスターバッチ混練時の設定温度を150℃にした以外は実施例1と同様の方法でシール材組成物(濃度10%)を得た。このマスターバッチ混練時の消費エネルギーは4,230MJ/m
3であった。得られたシール材組成物について、実施例1と同様の評価を行なったところ、粗大粒子数の平均は1個、高温高湿試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中8個、落下試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中7個であった。
【0104】
(実施例6)
ブタジエンゴムと熱可塑性エラストマーとの比率を85/15から75/25に変更し、マスターバッチの混練時間を10分間から3分間に変更し、設定温度を130℃にした以外は実施例5と同様の方法でシール材組成物(濃度10%)を得た。このマスターバッチ混練時の消費エネルギーは610MJ/m
3であった。得られたシール材組成物について、実施例1と同様の評価を行なったところ、粗大粒子数の平均は8個、高温高湿試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中7個、落下試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中6個であった。
【0105】
(実施例7)
イミダゾール化合物を添加しないこと以外は実施例6と同様の方法でシール材組成物(濃度10%)を得た。このマスターバッチ混練時の消費エネルギーは630MJ/m
3であった。得られたシール材組成物について、実施例1と同様の評価を行なったところ、粗大粒子数の平均は8個、高温高湿試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中5個、落下試験でCR試験紙が変色しなかった電池の数は10個中5個であった。
【0106】
(比較例1)
攪拌方法を2軸ロールからディスパーに変更し、設定温度を55℃にし、原料を一括投入で製造した以外は実施例1と同様の方法でシール材組成物(濃度10%)を得た。この混練時の消費エネルギーは490MJ/m
3であった。得られたシール材組成物について、実施例1と同様の評価を行なったところ、粗大粒子数の平均は30個、高温高湿試験で試験紙が変色しなかった電池の数は10個中1個、落下試験で試験紙の変色のしなかった電池の数は10個中0個であった。
【0107】
(比較例2)
攪拌時間を10分間から60分間に変更し、設定温度を60℃にした以外は比較例1と同様の方法でシール材組成物(濃度10%)を得た。この混練時の消費エネルギーは470MJ/m
3であった。得られたシール材組成物について、実施例1と同様の評価を行なったところ、粗大粒子数の平均は15個、高温高湿試験で試験紙が変色しなかった電池の数は10個中2個、落下試験で試験紙の変色のしなかった電池の数は10個中2個であった。
【0108】
(リチウム二次電池の製造方法)
AAサイズの金属容器内に正極板と負極板とをセパレータを介して捲回してなるリチウム二次電池の発電要素を圧挿入した。この容器の開口部近傍に、封口部固定のため、ビード部を形成した。このビード部上へ、前記シール材組成物を、定量ディスペンサーを使用して、乾燥後のシール材組成物層厚が13ミクロンとなるように塗布、乾燥を行い、シール材組成物層を形成した。この後、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(vol%/vol%)の混合溶媒に、LiPF
6を加え、LiPF
6濃度が1mol/lになるように調整した電解液を注入し、ビード部表面に絶縁ガスケットを介して、金属容器に封口体である封口蓋板を嵌合し、封口してリチウム二次電池とした。リチウム二次電池の概略構成図を
図1に示す。
【0109】
(リチウム二次電池における密閉性試験)
リチウム二次電池を45℃で24時間エージングした後、初充電を行った。初充電が施された電池20個を作製した。その内10個の電池に、温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽で48時間放置した後、ガラス容器に収納しVOC(Volatile Organic Compounds)試験器にて電解液の漏洩の有無を確認した(高温高湿試験)。また残りの電池10個は、2.5mの高さから電池の方向を一定にし、10回落下させた後、各々の電池を50mLの水で充分に水洗し、ガラス容器に収納しVOC試験器にて電解液の漏洩の有無を確認した(落下試験)。これらを密閉性の評価基準とし、以下の基準で評価する。この値が高いほど密着性、密閉性に優れている。
A:全て漏洩しない
B:漏洩しない電池 7個以上10個未満
C:漏洩しない電池 5個以上7個未満
D:漏洩しない電池 3個以上5個未満
E:漏洩しない電池 1個以上3個未満
F:全て漏洩
【0110】
(実施例8)
実施例1で得られたシール剤組成物を用いてリチウム二次電池を作製した。このシール材組成物を用いたリチウム二次電池について高温高湿試験を行ったところ、電解液が漏液しなかった電池の数は10個中10個であり、落下試験で電解液が漏洩しなかった電池の数は10個中10個であった。
【0111】
(実施例9)
実施例7で得られたシール剤組成物を用いたこと以外は、実施例8と同様の方法でリチウム二次電池を作製した。このシール材組成物を用いたリチウム二次電池について高温高湿試験を行ったところ、電解液が漏液しなかった電池の数は10個中6個であり、落下試験で電解液が漏洩しなかった電池の数は10個中6個であった。
【0112】
(比較例3)
比較例1で得られたシール剤組成物を用いたこと以外は、実施例8と同様の方法でリチウム二次電池を作製した。このシール材組成物を用いたリチウム二次電池について高温高湿試験を行ったところ、電解液が漏液しなかった電池の数は10個中2個であり、落下試験で電解液が漏洩しなかった電池の数は10個中1個であった。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
表1および表2の結果から、本発明によれば実施例1〜7及び実施例8,9に示すように、シール材組成物中に含まれる10μm以上の粗大粒子が10個以下の場合、絶縁ガスケットと金属容器の封口部位の高い密着性が得ることができ、シール性に優れる。また、実施例の中でも溶剤に沸点が138〜144℃でSP値が18.0〜18.5であるキシレンを用い、1,4−シス含有量が97%以上のブタジエンゴムを用いた実施例1が最も絶縁ガスケットとの密着性が高く、恒温恒湿試験及び落下試験において、最もシール性が優れている。一方、粗大粒子数の平均が30個である比較例1及び3、15個である比較例2においては粗大粒子が多い為、密閉性が著しく劣化する。