(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体と、該単量体と共重合可能な他の(メタ)アクリル系単量体とを、前記単量体の合計量100質量部に対して0.016質量部以上0.1質量部以下の、計量・重合中に揮発しない程度の沸点を有する塩基性化合物共存下で重合するレジスト用共重合体の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリル系単量体」とは、アクリル系単量体又はメタクリル系単量体を意味する。
【0017】
(アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体)
上記アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、特に限定されず、一分子中にアセタール基を1個以上有していればよく、例えば、下記の式で表されるようなものが挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
上記アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量は、特に制限されないが、共重合体の構成単位である全単量体の合計の仕込み量(100モル%)に対して、1〜30モル%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは、5〜15モル%の範囲である。上記アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が1モル%以上、好ましくは5モル%以上であれば、ラインエッジラフネスが小さく、ディフェクトが少なくなる傾向にあり、また、この含有量が30モル%以下、好ましくは15モル%以下であれば、ディフェクトが少なく、有機溶媒への溶解性が良好になる傾向がある。
【0021】
(共重合可能な他のアクリル系単量体)
上記アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な他の(メタ)アクリル系単量体としては、アセタール基を有さない(メタ)アクリル系単量体であれば、特に限定されないが、基板密着性付与等の観点からラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体、レジストパターン形成等の観点から酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体、及び、レジスト溶媒への溶解性向上やエッチング耐性付与等の観点から親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を任意に組み合わせることができる。
【0022】
(ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体)
ラクトン骨格としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族又は芳香族の炭素環又は複素環が縮合していてもよい。
上記ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体としては、基板等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する(メタ)アクリル系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する(メタ)アクリル系単量体が特に好ましい。
【0023】
上記ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、β−メタクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−メタクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、メタクリル酸パントイルラクトン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシコハク酸無水物等も挙げられる。
上記ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量は、特に限定されないが、共重合体の構成単位である全単量体の合計の仕込み量(100モル%)中、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましい。また、上記含有量の上限値としては、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
上記ラクトン骨格を有する単量体の含有量が20モル%以上、好ましくは30モル%以上であれば、基板等との密着性が良好になる傾向があり、また、この含有量が60モル%以下、好ましくは55モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下であれば、感度や解像度が向上し、ディフェクトが少なくなる傾向がある。
【0025】
(酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体)
酸不安定基とは、酸の作用によって脱離する構造を有する基であり、酸不安定基を含む構成単位は、酸により分解してアルカリ可溶性基と酸不安定基由来の残基となる。このような酸不安定基は、重合体をレジスト用重合体として供した場合、酸によってアルカリに可溶となり、レジストパターン形成を可能とする作用を奏する。
【0026】
上記酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、特に限定されないが、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸の作用により脱離可能な基を有している(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。このような脂環式炭化水素基を有する単量体は、ドライエッチング耐性に優れる傾向にあるため好ましい。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
【0027】
上記酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等が挙げられる。
また、上記酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量は、特に制限されないが、共重合体の構成単位である全単量体の合計の仕込み量(100モル%)中、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、上記含有量の上限値としては、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
上記含有量が、20モル%以上、好ましくは25モル%以上であれば、感度や解像度が向上する傾向にあり、また、この含有量が、60モル%以下、好ましくは55モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下であれば、解像性が向上する傾向にある。
【0029】
(親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体)
「親水性基」としては、特に限定されないが、−C(CF
3)
2−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基及びアミノ基の少なくとも1種が挙げられる。
上記親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体は、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル、単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体、環式炭化水素基を有する単量体((メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有する単量体が挙げられる。環式炭化水素基を有する単量体は、ドライエッチング耐性に優れる傾向にあるため好ましい。
【0030】
上記親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル等が挙げられ、基板等に対する密着性の点から、1−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン等が好ましい。
上記親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量は、レジストパターン矩形性の点から、共重合体の構成単位である全単量体の合計の仕込み量(100モル%)中、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。上記含有量が5モル%以上、好ましくは10モル%以上であれば、レジストパターンが良好となる傾向があり、上記含有量が20モル%以下、好ましくは25モル%以上であれば、マイクロゲルやディフェクトが少ない傾向にある。
【0032】
(塩基性化合物)
上記単量体の重合は、塩基性化合物の共存下で行われる。
本明細書において、上記塩基性化合物の「共存下」とは、重合反応系に該塩基性化合物が存在していることをいい、例えば、上記単量体や重合開始剤と共に塩基性化合物を添加してもよく、あるいは、上記単量体や重合開始剤とは別に塩基性化合物を添加してもよい。
上記各単量体中には、酸や酸発生物質等の微量の不純物が含まれており、該不純物に由来する酸によって、重合時に、アセタール基を有する単量体の分解が生じうる。しかしながら、上記重合反応系に、所定量の塩基性化合物が存在することによって、上記微量の不純物由来の酸が中和されるため、重合時に、該不純物に由来する酸によるアセタール基を有する単量体の分解を抑制することができる。
【0033】
なお、上記単量体中に含まれる微量の不純物によってアセタール基の分解が生じるメカニズムの一例として、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(α−GBLMA)等中に含まれるブロモ体により酸が発生し、結果として、アセタールの分解が引き起こされる場合や、アセタールの分解によって生じる酸によってさらにアセタールの分解が引き起こされる場合等が考えられるが、これらの理論に限定されるわけではない。
【0034】
上記塩基性化合物としては、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン又はヘキサメチレンジアミン等を用いることができる。
これらのうち、計量・重合中に揮発しない程度の沸点を有し、かつ、精製時には除去することができる観点から、トリエチルアミンを用いることが好ましい。
【0035】
上記塩基性化合物の量は、共重合体を構成する単量体の合計量100質量部に対して0.016質量部以上である。上記量が0.016質量部以上であれば、単量体中に含まれる微量の不純物等が中和され、該不純物によるアセタール基の分解を抑制することができる。なお、上記量の上限としては、リソグラフィー性能等の観点から、2質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。
【0036】
(重合方法)
重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が挙げられる。これらのうち、光線透過率を低下させないために、重合反応終了後に残存する単量体を除去する必要がある点、重合体の分子量を比較的低くする必要がある点から、溶液重合法が好ましい。
【0037】
溶液重合法においては、単量体及び重合開始剤の重合容器への供給は、連続供給であってもよく、あるいは、間欠供給であってもよい。溶液重合法としては、製造ロットの違いによる平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性のある重合体が簡便に得られる点から、単量体及び重合開始剤を重合容器内に滴下する滴下重合法が好ましい。
【0038】
滴下重合法においては、重合容器内を所定の重合温度まで加熱した後、単量体及び重合開始剤を、それぞれ独立に、又は任意の組み合わせで、重合容器内に滴下できる。
単量体は、単量体のみで滴下してもよく、あるいは、単量体を溶媒(以下、「滴下溶媒」とも記す。)に溶解させた単量体溶液として滴下してもよい。
【0039】
溶媒をあらかじめ重合容器に仕込んでもよく、あるいは、溶媒をあらかじめ重合容器に仕込まなくてもよい。溶媒をあらかじめ重合容器に仕込まない場合、単量体又は重合開始剤は、溶媒がない状態で重合容器中に滴下される。
上記重合開始剤は、単量体に直接に溶解させてもよく、あるいは、単量体溶液に溶解させてもよく、滴下溶媒のみに溶解させてもよい。
【0040】
また、上記単量体及び重合開始剤は、同じ貯槽内で混合した後、重合容器中に滴下してもよく、あるいは、それぞれ独立した貯槽から重合容器中に滴下してもよく、あるいは、それぞれ独立した貯槽から重合容器に供給する直前で混合し、重合容器中に滴下してもよい。
【0041】
また、単量体及び重合開始剤は、一方を先に滴下した後、遅れて他方を滴下してもよく、あるいは、両方を同じタイミングで滴下してもよい。滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、あるいは、単量体又は重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に変化させてもよい。
【0042】
また、上記単量体及び重合開始剤の滴下は、連続的に行ってもよく、あるいは、間欠的に行ってもよい。
【0043】
上記したような各種の重合条件や方法を適宜選択することにより、共重合体の組成や分子量のコントロールが可能である。例えば、所望の分子量の共重合体や、均一な組成の共重合体等を得ることができる。
【0044】
重合温度は、特に制限されないが、通常、50〜150℃の範囲で行うのが好ましい。また、重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0045】
上記溶媒としては、例えば、下記のものが挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル等。)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(以下、「THF」と記す。)等。)等。
エステル類:乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記す。)、γ−ブチロラクトン等。
ケトン類:メチルエチルケトン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
上記溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて併用してもよい。
【0046】
上記重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。該重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物(2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート、2,2´−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等。)、有機過酸化物(2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等。)等が挙げられる。
【0047】
本発明のレジスト組成物は、上記共重合体を溶媒に溶解したものである。また、本発明のレジスト組成物を化学増幅型レジスト組成物として用いる場合は、さらに光酸発生剤を溶解したものである。
【0048】
溶媒としては、上記重合体の製造に用いた溶媒と同様のものが挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて併用してもよい。
【0049】
光酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物の光酸発生剤として使用可能なものの中から任意に選択できる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて併用してもよい。
【0050】
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
光酸発生剤の量は、重合体100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0051】
化学増幅型レジスト組成物は、含窒素化合物を含んでいてもよい。含窒素化合物を含むことにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。つまり、レジストパターンの断面形状が矩形により近くなり、また、レジスト膜に光を照射し、ついでベーク(PEB)した後、次の現像処理までの間に数時間放置されることが半導体素子の量産ラインではあるが、そのような放置(経時)したときにレジストパターン断面形状の劣化の発生がより抑制される。
【0052】
上記含窒素化合物としては、アミンが好ましく、第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンがより好ましい。
上記含窒素化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましい。
【0053】
化学増幅型レジスト組成物は、有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体(以下、これらをまとめて酸化合物と記す。)を含んでいてもよい。酸化合物を含むことにより、含窒素化合物の配合による感度劣化を抑えることができ、また、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。
【0054】
上記有機カルボン酸としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。
上記リンのオキソ酸またはその誘導体としては、リン酸またはその誘導体、ホスホン酸またはその誘導体、ホスフィン酸またはその誘導体等が挙げられる。
上記酸化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
【0055】
上記本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。該添加剤は、当該分野で公知のものであればいずれも使用可能である。また、これら添加剤の量は、特に限定されず、適宜決めることができる。
【0056】
次いで、本発明にかかるパターンが形成された基板の製造方法の一例について説明する。
まず、所望の微細パターンを形成しようとするシリコンウエハー等の被加工基板の表面に、本発明のレジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、該レジスト組成物が塗布された被加工基板を、ベーキング処理(PAB)等で乾燥することにより、基板上にレジスト膜を形成する。
【0057】
次いで、レジスト膜に、フォトマスクを介して、450nm以下、好ましくは250nm以下の波長の光を照射して潜像を形成する(露光)。照射光としては、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F
2エキシマレーザー、EUVエキシマレーザーが好ましく、ArFエキシマレーザーが特に好ましい。また、電子線を照射してもよい。
また、該レジスト膜と露光装置の最終レンズとの間に、純水、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロトリアルキルアミン等の高屈折率液体を介在させた状態で光を照射する液浸露光を行ってもよい。
【0058】
露光後、適宜熱処理(PEB)し、レジスト膜にアルカリ現像液を接触させ、露光部分を現像液に溶解させ、除去する(現像)。アルカリ現像液としては、公知のものが挙げられる。
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが形成される。
【0059】
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(PEB)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にエッチングする。
エッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターンが形成された基板が得られる。
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例、比較例中「部」とあるのは、特に断りがない限り、「質量部」を意味する。
また、共重合体の組成及び物性の測定は、以下の方法を用いて行った。
さらに、BDADMAの分解物生成物であるメタクリル酸の量(BDADMA/メタクリル酸比)についても測定を行った。
【0061】
・共重合中の各単量体組成(モル%)、BDADMA/メタクリル酸比
下記
1H−NMRの測定により求めた。
日本電子(株)製、GSX−400型FT−NMRを用いて、5質量%の各共重合体の溶液(重水素化ジメチルスルホキシド溶液)を直径5mmφの試験管に入れ、観測周波数400MHz、シングルパルスモードにて、64回の積算で行った。測定温度は、重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とした場合は60℃で行った。
【0062】
・Ethの測定、γ値の測定
(1)リソグラフィー用組成物の調製
以下の組成となるように、下記材料を混合して調製した。
共重合体:10部
光酸発生剤(TPS−105):0.2部
レベリング剤(L−7001):0.2部
溶媒: PGMEA 90部
【0063】
(2)ドライリソグラフィー
リソグラフィー用組成物を、6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベーク(PAB)して、厚さ300nmの薄膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン製VUVES−4500)を用い、露光量を変えて10mm×10mm
2の18ショットを露光した。次いで110℃、60秒間ポストベーク(PEB)した後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン製RDA−790)を用い、23.5℃にて2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で65秒間現像し、各露光量における現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
【0064】
(3)解析
得られたデータを基に、露光量(mJ/cm
2 )の対数と、初期膜厚に対する60秒間現像した時点での残存膜厚率(以下、残膜率という)(%)をプロットした曲線(以下、露光量−残膜率曲線という)を作成し、Eth(残膜率0%とするための必要露光量であり、感度を表す。)とγ値(露光量−残膜率曲線の接線の傾きであり、現像コントラストを表す。)を以下の通り求めた。
Eth:露光量−残膜率曲線が残膜率0%と交わる露光量(mJ/cm
2 )
γ 値:露光量−残膜率曲線の残膜率50%における露光量をE50 (mJ/cm
2)、露光量−残膜率曲線のE50 における接線が、残膜率100%の線及び残膜率0%の線と交わる露光量をそれぞれE100 及びE0 として、以下の計算式で求めた。
γ=1/{log(E0 /E100 )}
なお、γ値が高いほど、解像度が高く、微細パターンの解像性能に優れることを示す。
【0065】
(実施例1)
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA72.3部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(α−GBLMA)25.4部(全単量体の合計仕込み量に対して31.8モル%)、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(MAdMA)35.0部(全単量体の合計仕込み量に対して31.8モル%)、2−シアノ−5−ノルボルネンメタクリレート(CNNMA)26.3部(全単量体の合計仕込み量に対して27.3モル%)、2−プロペン酸−2−メチル−1,4−ブタンジイルビス(オキシエチリデン)エステル(BDADMA)13.4部(全単量体の合計仕込み量に対して9.1モル%)、PGMEA129.9部、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V−601(商品名))24.5部、トリエチルアミン0.023部を混合した単量体溶液を一定速度で4時間かけて、フラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を3時間保持した。次いで、得られた反応溶液を約7倍量のメタノール中に撹拌しながら滴下し、白色の析出物の沈殿を得た。得られた沈殿を濾別し、再び約7倍量のメタノール中に投入した。これを濾別、回収し、減圧下60℃で約40時間乾燥し、共重合体Aの粉末を得た。
【0066】
(実施例2)
異なる製造ロットの原料(GBLMAの製造ロットを変更し、その他の原料については実施例1と同じ製造ロットの原料を使用)を用い、(実施例1)と同様の実験を行い、共重合体Bを得た。
【0067】
(実施例3)
トリエチルアミン量を0.032部に変えて、(実施例1)と同様の実験を行い、共重合体Cを得た(CNNMAの製造ロットを変更し、その他の原料については実施例1と同じ製造ロットの原料を使用)。
【0068】
(比較例1)
トリエチルアミンを加えず、原料製造ロットを変えて(実施例1)と同様の実験を行い、共重合体Dを得た(全ての原料について実施例3と同じ製造ロットの原料を使用)。
【0069】
(比較例2)
トリエチルアミン量を0.015部に変えて、(実施例1)と同様の実験を行い、共重合体Eを得た(全ての原料について実施例3と同じ製造ロットの原料を使用)。
【0070】
上記共重合体A〜Eについて、得られた組成及び物性の測定結果を、以下の表にまとめた。なお、BDADMA/メタクリル酸は、重合体中におけるBDADMAの量を100とした場合の、それに対するメタクリル酸のモル%を示す。
【0071】
【表1】
【0072】
塩基性化合物(トリエチルアミン)を0.016質量部以上添加した場合(実施例1〜3)は、アセタール基を有するアクリル系単量体の分解量は、僅か0.6〜0.7モル%に抑制され、かつ、分解生成物であるメタクリル酸の量(BDADMA100に対して5.65〜7.69モル%)も少ないことが確認された。
また、上記実施例1〜3の場合には、感度や現像コントラスト等のドライリソグラフィー評価結果にも数値のばらつきがなく、レジスト用共重合体としての物性が安定していることが確認された。
一方、実施例3と同じ原料ロットの材料を用いて重合した場合であっても、塩基性化合物を添加しなかった場合(比較例1)や、塩基性化合物(トリエチルアミン)添加量が0.016質量部未満の場合(比較例2)には、塩基性化合物添加量が0.016質量以上添加した場合(実施例3)と比較して、アセタール基を有するアクリル系単量体の分解量(1.9〜2.3モル%)が増加するとともに、分解生成物であるメタクリル酸の量(BDADMA100に対して30.51〜57.41モル%)も増加することが確認された。
また、上記比較例1〜2の場合は、感度や現像コントラスト等のドライリソグラフィー評価結果の数値にもばらつきがあり、レジスト用共重合体として物性が安定していないことが確認された。