特許第5697006号(P5697006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697006
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】スライドシート用配線構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/06 20060101AFI20150319BHJP
   B60N 2/44 20060101ALI20150319BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20150319BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   B60N2/06
   B60N2/44
   B60R16/02 620A
   H02G11/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2008-332790(P2008-332790)
(22)【出願日】2008年12月26日
(65)【公開番号】特開2010-149807(P2010-149807A)
(43)【公開日】2010年7月8日
【審査請求日】2011年10月3日
【審判番号】不服2014-7696(P2014-7696/J1)
【審判請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】牛山 政利
【合議体】
【審判長】 江成 克己
【審判官】 黒瀬 雅一
【審判官】 畑井 順一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−215322(JP,A)
【文献】 特開2005−59745(JP,A)
【文献】 特開2007−283833(JP,A)
【文献】 特開平10−109574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06
B60N 2/44
B60R 16/02
H02G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドシートに給電するための配線と、
前記配線の一方の端部が前記スライドシートの移動方向に伴って回動可能に取付けられる取付部を備えた車両フロア側接続部と、
前記スライドシートに取付けられ、前記配線の他方の端部が前記車両フロアと略平行に接続されるスライドシート側接続部とを備え、
前記車両フロア側接続部は、前記配線の前記一方の端部を収納する配線収納部を備え、
前記取付部は、前記配線収納部の中に配置され、
前記スライドシート側接続部は、前記配線収納部の外に配置され、
前記スライドシート側接続部は、前記配線を支持する支持部材を備え、
前記配線は、当該配線の一部を収納している前記配線収納部の内部から車両フロアに沿って車両の前方側に向かって延伸して半円弧を描いて前記スライドシート側接続部に接続される屈曲状態と、前記配線収納部の内部から配線のほぼすべてが繰り出されて前記取付部から上方へ立ち上がることで前記配線収納部から上方へ向かって延伸して前記スライドシート側接続部に接続される伸長状態と、をとることができ、
前記配線の屈曲・伸長および前記取付部の回動によって、前記スライドシートの移動に伴って前記配線を変形追従可能としたことを特徴とするスライドシート用配線構造。
【請求項2】
前記配線収納部が、前記配線の一部が前記配線収納部に収納された状態で、前記配線収納部の上部の少なくとも一部を閉じる蓋部材を更に備えていることを特徴とする請求項に記載のスライドシート用配線構造。
【請求項3】
前記蓋部材が、前記車両フロア側接続部の支持部材を兼ねることを特徴とする請求項に記載のスライドシート用配線構造。
【請求項4】
前記取付部が、前記配線収納部の後端部側に設けられ、
前記スライドシート側接続部が、前記スライドシートの後方側に設けられ、
前記配線の前記他方の端部が、前記スライドシート側接続部から前方へ伸びるように接続されることを特徴とする請求項1に記載のスライドシート用配線構造。
【請求項5】
前記配線が、1以上の扁平導体を被覆したフラットケーブルであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のスライドシート用配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスライドシートに設けた電装品へ配電するための配線構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のスライドシートには、サイドエアバックや電動シートのためのモータ等の電装品が搭載されるようになっている。このようなスライドシートに搭載された電装品への配線構造としては、従来、図7に示すようなスライドシート用給電装置が知られている。このスライドシート用給電装置は、ハーネス収容部6を有するケース2と、可動体3と、該ハーネス収容部6内で屈曲するワイヤーハーネス4とからなり、可動体3がケース2に形成されたスリット10内でケース2に沿って進退するように取り付けられている。(特許文献1)
【0003】
【特許文献1】特開2005−059745
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記図7のスライドシート用給電装置では、配線をU字に折り返して収納するため、ハーネス収容部6のように、車両側に大きな収納スペースが必要であり、また、配線が常にU字に折り返されているため、余分な長さが必要となって重量が増加してしまうといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、スライドシートを大きく移動させることができるとともに、大きな収納スペースを必要としない軽量なスライドシート用配線構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスライドシート用配線構造の第1の態様は、スライドシートに給電するための配線と、前記配線の一方の端部が前記スライドシートの移動方向に伴って回動可能に取付けられる取付部を備えた車両フロア側接続部と、前記スライドシートに取付けられ、前記配線の他方の端部が前記車両フロアと略平行に接続されるスライドシート側接続部とを備え、前記配線の屈曲・伸長および前記取付部の回動によって、前記スライドシートの移動に伴って前記配線を変形追従可能としたことを特徴とする。
【0007】
すなわち、スライドシートを後側(または前側)へ移動させた場合には、配線が伸長し、かつ取付部が上向きに回動する。また、スライドシートを前側(または後側)へ移動させた場合には、配線がスライドシート側接続部から車両フロア側接続部に向かって屈曲し、かつ取付部はスライドシートが移動した側へ回動する。このような構成にすることで、スライドシートを大きく移動させることができるとともに、大きな収納スペースを必要とせず、更に必要最低限の長さの配線で構成できるため軽量なスライドシート用配線構造を得ることができる。
【0008】
また、本発明のスライドシート用配線構造の第2の態様は、前記車両フロア側接続部が、前記配線の前記一方の端部を収納する配線収納部を備える。そして、前記取付部は、前記配線収納部の中に配置され、前記スライドシート側接続部は、前記配線収納部の外に配置され、前記スライドシート側接続部は、前記配線を支持する支持部材を備え、前記配線は、当該配線の一部を収納している前記配線収納部の内部から車両フロアに沿って車両の前方側に向かって延伸して半円弧を描いて前記スライドシート側接続部に接続される屈曲状態と、前記配線収納部の内部から配線のほぼすべてが繰り出されて前記取付部から上方へ立ち上がることで前記配線収納部から上方へ向かって延伸して前記スライドシート側接続部に接続される伸長状態と、をとることができることを特徴とする。
【0009】
このような構成とすることで、車内で人が移動するときにも安全で、見栄えの良いスライドシート用配線構造を得ることができる。
【0010】
また、本発明のスライドシート用配線構造の第3の態様は、前記スライドシート側接続部は、前記配線を支持する支持部材を更に備えることを特徴とする。
【0011】
このような構成にすることで、車両の振動に対しても配線の振動を抑制することができ、また、所定の位置に配線を支持・固定することができるため、車内で人が移動するときにも安全で、見栄えの良いスライドシート用配線構造を得ることができる。
【0012】
また、本発明のスライドシート用配線構造の第4の態様は、前記配線収納部が、前記配線の一部が前記配線収納部に収納された状態で、前記配線収納部の上部の少なくとも一部を閉じる蓋部材を更に備えていることを特徴とする。
【0013】
このような構成にすることで、配線収納部に収納された配線が踏まれる等して断線することを防止し、また、車体フロアに埋設された配線収納部に、ごみや砂などの異物が入ることを抑制することができる。
【0014】
また、本発明のスライドシート用配線構造の第5の態様は、前記蓋部材が、前記車両フロア側接続部で、前記配線を支持する支持部材を兼ねることを特徴とする。
【0015】
このような構成にすることで、配線が屈曲している場合には、蓋部材として配線収納部に収納された配線を保護し、配線が伸長している場合には、所定の位置に配線を支持・固定することができる。すなわち、部品点数を増やすことなく、上記の優れた効果を得ることができる。
【0016】
また、本発明のスライドシート用配線構造の第6の態様は、前記取付部が、前記配線収納部の後端部側に設けられ、前記スライドシート側接続部が、前記スライドシートの後方側に設けられ、前記配線の前記他方の端部が、前記スライドシート側接続部から前方へ伸びるように接続されることを特徴とする。
【0017】
このような構成にすることで、配線の屈曲部をスライドシートの下に位置することができ、更に配線を省スペース化、軽量化することができる。
【0018】
また、本発明のスライドシート用配線構造の第7の態様は、前記配線が、1以上の扁平導体を被覆したフラットケーブルであることを特徴とする。
【0019】
このような構成にすることで、配線の屈曲半径の小さくすることができ、更に軽量化したスライドシート用配線構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、スライドシートを大きく移動させることができるとともに、大きな収納スペースを必要としない軽量なスライドシート用配線構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造の屈曲状態を示す模式図である。図1に示すように、スライドシート用配線構造100は、スライドシートに給電するための配線110と、車両フロア側接続部111と、スライドシート側接続部112とを備えている。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造を屈曲状態で車両に取り付けた状態を示す側面模式図である。図2に示すように、本発明のスライドシート用配線構造では、車両フロア側接続部111が車両フロア120に埋設され、スライドシート側接続部112がスライドシート130の後部側に接続される。
【0024】
すなわち、本発明のスライドシート用配線構造は、屈曲状態では、配線110が車両フロア側接続部111から車両の前方向に向って延伸し、半円弧を描いてスライドシート側接続部112に接続される。ここで、車両フロア側接続部111とスライドシート側接続部112は、車両の同一の向き(前方向)に向って接続されている。
【0025】
車両フロア側接続部111は、配線110の一部を収納する配線収納部111a、配線110の一方の端部が取付けられた取付部(図示せず)、および配線収納部111aの上部の少なくとも一部を閉じる蓋部材111bを有している。配線収納部111aは、配線110が屈曲された状態で配線110の一部を収納している。蓋部材111bは、配線収納部111aに収納された配線110の上部の少なくとも一部、すなわち配線110が配線収納部111aから繰り出される部分以外の部分を覆うように配設されている。
【0026】
ここで、取付部は、車両フロアとの角度が0度〜120度程度の範囲で、スライドシート(図示せず)の移動方向に伴って回動可能に、配線収納部111a内に取付けられている。また、蓋部材111bも配線110と同様に、回動可能に配線収納部111aにとりつけられている。
【0027】
スライドシート側接続部112は、配線110の他方の端部を、車両フロアとほぼ平行になるようにスライドシート(図示せず)に接続する。また、スライドシート側接続部112は、配線110と同じ方向へせり出す、円弧形状の配線支持部112aを備えている。この配線支持部112aによって、配線110はスライドシート側接続部112から常に同じ方向を向いて支持されるため、見栄えがよく、かつ配線110を小スペースに保持することができる。支持部材112aとしては、弾性力を備えた部材、例えば金属バネや樹脂弾性体などを用いることができる。
【0028】
配線110としては、扁平導体を絶縁被覆したフラットケーブルを用いることが好ましい。フラットケーブルを用いることによって、丸線を用いる場合と比較して配線収納部111aを小型にすることができる。また、屈曲性にも優れているため、繰り返しスライドシートをスライドさせた場合の耐久性の面でも優れている。
【0029】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造の伸長状態を示す模式図である。図3に示すように、スライドシート用配線構造100は、図1と同様に、スライドシートに給電するための配線110と、車両フロア側接続部111と、スライドシート側接続部112とを備えている。
【0030】
伸長状態のスライドシート用配線構造100では、車両フロア側接続部111において、配線110は取付部から上方へ向って延伸している。また、スライドシート用配線構造100は、屈曲状態で配線収納部111aの上部を閉じていた蓋部材111bが、伸長状態では、上方へ向う配線110が後方向へ倒れ、取付部で曲がり過ぎてしまうのを防止するための支持部材として機能する。
【0031】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造を伸長状態で車両に取り付けた状態を示す側面模式図である。本発明のスライドシート用配線構造は、伸長状態では、配線110の一方の端部が車両フロア側接続部111から車両フロアの上方向へ向かって延伸し、配線110が弧を描きながらスライドシート130の底部に沿うように伸び、配線110の他方の端部がスライドシート側接続部112によってスライドシート130の後部側に接続されている。
【0032】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造の伸長状態と屈曲状態を示す側面模式図である。図5に示すように、本発明のスライドシート用配線構造は、上記のような屈曲と伸長の状態をとることによってスライドシート130を大きく前後に移動させることができる。すなわち、本発明のスライドシート用配線構造では、車両フロア側接続部111の取付部111cで配線110の一方の端部が回動する(図中R)ことにより、配線110の屈曲、伸長動作が容易となり、かつ、簡易な構造でスライドシート130を大きく前後に移動させることができる。
【0033】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造の車両フロア側接続部の部分断面模式図である。図6(a)は、配線が屈曲した状態、図6(b)は、配線が伸長した状態の車両フロア側接続部をそれぞれ示している。
【0034】
図6(a)に示すように、配線が屈曲した状態では、車両フロア側接続部111は、配線収納部111aに配線110の一部を収納し、蓋部材111bによって配線収納部111aの上部の一部を閉じている。配線110は、一方の端部が配線収納部111aの内部に配置された取付部111cに接続され、他方側が配線収納部111aの上部の蓋部材111bによって閉じられていない部分から車両フロア120に沿って繰り出されている。蓋部材111bによって、車両フロア120に段差が生じることがなく、見栄えが悪くなることもない。
【0035】
また、図6(b)に示すように、配線が伸長した状態では、配線110は、取付部111cから上方へ立ち上がっている。また、蓋部材111bは、上方から後方側へ向って張力のかかる配線110が後方側へ倒れ、取付部111cで曲がりすぎることを防止するための支持部材として機能する。
【0036】
以上説明したように、本発明のスライドシート用配線構造は、スライドシートを大きく移動させることができるとともに、大きな収納スペースを必要としない軽量なスライドシート用配線構造を提供することができるという顕著な効果を奏する。
本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更が可能である。例えば、スライドシート側接続部の支持部材は、常に湾曲した部材を用いる必要はなく、配線の下側に、配線に沿って設けられた樹脂弾性体であっても良い。














【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造の屈曲状態を示す模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造を屈曲状態で車両に取付けた状態を示す側面模式図
図3】本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造の伸長状態を示す模式図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造を伸長状態で車両に取り付けた状態を示す側面模式図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造の伸長状態と屈曲状態を示す側面模式図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係るスライドシート用配線構造の車両フロア側接続部の部分断面模式図
図7】従来のスライドシート用給電装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0038】
100 スライドシート用配線構造
110 配線
111 車両フロア側接続部
111a 配線収納部
111b 蓋部材
111c 取付部
112 スライドシート側接続部
112a 支持部
120 車両フロア
130 スライドシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7