特許第5697007号(P5697007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5697007ポリオレフィン系樹脂組成物製の波付可とう管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697007
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂組成物製の波付可とう管
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/11 20060101AFI20150319BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20150319BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20150319BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   F16L11/11
   C08K3/26
   C08K3/34
   C08L23/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-121858(P2009-121858)
(22)【出願日】2009年5月20日
(65)【公開番号】特開2010-270811(P2010-270811A)
(43)【公開日】2010年12月2日
【審査請求日】2011年7月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】安東 和哉
(72)【発明者】
【氏名】飯田 英邦
【審査官】 北村 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−006293(JP,U)
【文献】 特開2008−029176(JP,A)
【文献】 特開昭60−069145(JP,A)
【文献】 特開2006−177496(JP,A)
【文献】 特開2003−004178(JP,A)
【文献】 特開2000−309648(JP,A)
【文献】 特開平10−173386(JP,A)
【文献】 特開平08−118504(JP,A)
【文献】 特開平07−228726(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/017028(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/00−11/18
C08K 3/00−3/40
C08L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100重量部あたり、平均粒子径が0.5〜5.0μmの炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウムとタルクの両方を5〜60重量部含み、前記炭酸カルシウムが、累積粒度分布90重量%の粒径が30μm以下であり、かつ45μmふるい残分が1.0%以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物からなり、肉厚が6.5mm以下の波付可とう管。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂100重量部あたり、平均粒子径が0.5〜5.0μmのタルクまたは炭酸カルシウムとタルクの両方を5〜60重量部含み、前記タルクが、45μmふるい残分が1.0%以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物からなり、肉厚が6.5mm以下の波付可とう管。
【請求項3】
管内径の6倍の曲げ半径に曲げるときの荷重が300N以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の波付可とう管。
【請求項4】
60℃における加熱圧縮試験で、長さ250mmの波付可とう管を全長にわたり平板間に挟み、20mm/minの圧縮速度で、荷重P(N)=7.1×(D+d)/4 (Dは管外径(mm)、dは管内径(mm))をかけた際に、管外径のたわみ率が3.5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の波付可とう管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線、ケーブルを保護する波付可とう管であって、環境負荷の小さいポリオレフィン系樹脂組成物で、ケーブル発熱時の圧縮強度を保ちつつ、可とう性や耐衝撃性に優れた作業性の良い波付可とう管に関する。
【背景技術】
【0002】
電線管に収められた電力ケーブルは通電により発熱し、配管状態によっては管内温度が60℃に達する場合がある。一方、地中に埋設される電線管には、埋設土による荷重と車両の通行による荷重などがかかっており、圧縮強度が求められる。従来、耐熱圧縮強度を管に持たせる場合は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂製ではなく、素材自体の耐熱性が高い塩化ビニル樹脂製の可とう管が用いられてきた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−128862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、塩化ビニル樹脂は、燃焼時のダイオキシン発生や、安定剤として鉛や錫などが含有されるなどの問題があり、環境意識の高まりによって使用量を削減する方向に向かっており、塩化ビニル樹脂を使用しないポリオレフィン系樹脂製の電線管が求められている。
【0005】
また、ポリオレフィン系樹脂で耐熱圧縮強度を上げる場合には、単に管の肉厚を厚くして、圧縮強度を上げる手法が用いられてきた。しかしながら、波付可とう管の場合、単に管の肉厚を厚くすると可とう性が損なわれ、人力で曲げることが困難となり、作業効率が悪くなるといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、環境負荷の小さいポリオレフィン系樹脂組成物製で、ケーブル発熱時の圧縮強度を保ちつつ、可とう性や耐衝撃性に優れた波付可とう管を提供することである。
【0007】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、ポリオレフィン系樹脂100重量部あたり、平均粒子径が0.5〜5.0μmの炭酸カルシウムまたはタルク、あるいは炭酸カルシウムとタルクの両方を5〜20重量部含むポリオレフィン系樹脂組成物からなり、肉厚が6.5mm以下の波付可とう管である。
【0008】
また、第2の発明は、ポリオレフィン系樹脂100重量部あたり、平均粒子径が0.5〜5.0μmの炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウムとタルクの両方を5〜60重量部含み、前記炭酸カルシウムが、累積粒度分布90重量%の粒径が30μm以下であり、かつ45μmふるい残分が1.0%以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物からなり、肉厚が6.5mm以下の波付可とう管である。
【0009】
また、第3の発明は、ポリオレフィン系樹脂100重量部あたり、平均粒子径が0.5〜5.0μmのタルクまたは炭酸カルシウムとタルクの両方を5〜60重量部含み、前記タルクが、45μmふるい残分が1.0%以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物からなり、肉厚が6.5mm以下の波付可とう管である
【0010】
また、管内径の6倍の曲げ半径に曲げるときの荷重が300N以下であることが好ましい。
【0011】
また、60℃における加熱圧縮試験で、長さ250mmの波付可とう管を全長にわたり平板間に挟み、20mm/minの圧縮速度で、荷重P(N)=7.1×(D+d)/4 (Dは管外径(mm)、dは管内径(mm))をかけた際に、管外径のたわみ率が3.5%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、環境負荷の小さいポリオレフィン系樹脂組成物で、ケーブル発熱時の圧縮強度を保ちつつ、可とう性や耐衝撃性に優れた波付可とう管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る波付可とう管1を示す図。
図2】本発明に係る波付可とう管7を示す図。
図3】波付可とう管製造装置13の全体図。
図4】実施例における可とう試験を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る波付可とう管1を示す図である。図1の左部分は波付可とう管1の側面図、右部分は断面図である。波付可とう管1は可とう性を有する管体である。波付可とう管1の外周には、山部3と谷部5とが交互に形成される。なお、図1においては、山部3、谷部5をらせん状に連続して配置しているが、図2に示すように、隣り合う山部9どうしおよび谷部11どうしが独立する波付可とう管7としてもよい。
【0015】
波付可とう管1は、ポリオレフィン系樹脂100重量部あたり、充填材を5〜60重量部含むポリオレフィン系樹脂組成物からなり、肉厚が6.5mm以下の波付可とう管である。
【0016】
充填材としては、炭酸カルシウム、タルクがコストと効果のバランスから望ましく、炭酸カルシウムとタルクを組み合わせて用いてもよい。炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウムと呼ばれる、石灰石を粉砕して得られる炭酸カルシウムを用いることが、安価で好ましい。充填材として用いる炭酸カルシウムとタルクは、オレイン酸やステアリン酸等の脂肪酸などで表面活性処理したものが樹脂中での分散性がよく望ましいが、未処理のものでもよい。また、平均粒子径は0.5〜5μmであることが望ましい。さらには、累積粒度分布90重量%の粒径が30μm以下であり、かつ45μmふるい残分が1%以下(JIS K5101−14−1あるいは5101−14−2準拠)であることが望ましい。平均粒子径が5μmよりも大きかったり、また累積粒度分布90重量%の粒径が30μm以上であったり、45μmふるい残分が1%以上であったりするなどして、大粒径の比率が高くなると、粒子が異物として作用しやすく、ポリオレフィン系樹脂組成物の引張強度や耐衝撃強度が大幅に低下してしまうため、管の割れなどがおこりやすくなる。また、平均粒子径が小さすぎると凝集したり、樹脂中での分散性が悪くなったりするため、平均粒子径は0.5μm以上が望ましい。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。高密度ポリエチレンとしては、密度0.94〜0.96g/cm、メルトフローレート(メルトフローインデックス)の測定時の試験条件が温度190℃×荷重2.16Kgの試験条件で0.03〜0.2g/10minの範囲のものを用いることができる。このポリオレフィン系樹脂中には、耐候性向上のためのカーボンを配合しても、酸化劣化を防止するための酸化防止剤、顔料などが含まれていてもよい。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂100重量部あたり、充填剤が5重量部以下では、耐熱圧縮強度向上の効果はほとんどない。一方、60重量部以上では耐衝撃性の低下や、製造時の押出トルク上昇による生産性低下が問題となる。
【0019】
また、波付可とう管1の肉厚は6.5mm以下であることが望ましく、上記の組成で6.5mmを超えると曲げ剛性が大きくなりすぎ、曲げることが困難になる。
【0020】
管を曲げて施工する場合、例えば管の立ち上がり部などでは、できるだけ小さく曲げた方がコンパクトに配管でき、埋設深さも浅くできるので掘削量も少なくできるメリットがあるが、あまり小さく曲げてしまうと管が坐屈したり、ケーブルの通線性が損なわれたりすることがある。よって、管の最小曲げ半径は、例えば内線規定3115節「合成樹脂管配管」第3115−5条「配管」および3110節「金属管配管」第3110−8条「管の屈曲」で規定されているが、管内径の6倍程度とするのが一般的である。この最小曲げ半径をとるときに、300N以下の荷重で管が曲がることが望ましい。これ以上の荷重になると人力で曲げることが困難となり、作業効率を著しく損なうこと、また、小さな曲げ半径が確保できず、埋設深さが深くなり掘削量が多くなるため、施工費増大の懸念がある。
【0021】
次に、波付可とう管1の製造方法について説明する。図3は、波付可とう管製造装置13を示す図である。波付可とう管製造装置13は、主に、押出機15、無限軌道17a、17b等から構成される。なお、波付可とう管1の製造方法としては、波付可とう管製造装置13を用いる方法に限定するものではなく、他の製造方法も適宜適用可能である。
【0022】
まず、押出機15より、樹脂が筒状に押し出され、筒状素材23が波付可とう管製造装置13の後方(図中矢印A方向)に送られる。筒状素材23は、一対の無限軌道17a、17bにより挟みこまれる。無限軌道17a、17bは互いに逆方向の、それぞれ、B方向、C方向に回転する。無限軌道17a、17bは、複数の金型19から構成される。
【0023】
無限軌道17a、17bは、波付可とう管製造装置13の送り方向に対して同一方向かつ同一速度で移動し、互いに対向する成形部21を有する。成形部21では、筒状素材23の送り速度に同期し、送り方向に金型19が同一速度で移動する。また、成形部21では、無限軌道17a、17bのそれぞれの金型19が互いに向き合って密着する。
【0024】
金型19は、内面に波付可とう管1の外形に応じた凹部、凸部等が形成された半割り状の半筒部材である。一対の金型19が互いに向き合って合わさることで、筒状部材となり、内面に波付可とう管1の外形に応じた波形が形成される。
【0025】
二つの金型19で形成された筒状の空間に、筒状素材23が送られる。金型19には、複数の孔が設けられており、外部から内部の空気を吸引する。金型19と筒状素材23との間の空気が金型19の外部に吸引されるため、筒状素材23は金型19の内面に押し付けられる。したがって、筒状素材23は金型19の内面形状に応じた形状に成形される。すなわち、金型19の凹部が山部3となり、凸部が谷部5となる。
【0026】
以上により外周に波型を有する波付可とう管1が形成される。波付可とう管1は、筒状素材23を金型19に押し付けることで成形されるので、波付可とう管1の内面は、波付可とう管1の外面に応じた形状となる。また、筒状素材23は略均一な肉厚であるが、筒状素材23が金型19に押し付けられる際、より大きな外径となる部位は、変形量が大きくなるため、肉厚がやや薄くなる。
【0027】
成形された波付可とう管1は、無限軌道17a、17bからさらに後方の図示を省略した冷却部や巻取り部等に送られて、波付可とう管1が製造される。
【0028】
本実施形態によれば、ポリオレフィン系樹脂で形成されているため、燃焼時のダイオキシンの発生や安定剤としての鉛やスズなどの含有の問題がない。
【0029】
また、本実施形態によれば、低コストの炭酸カルシウムやタルクを用いているため、低コストである。
【0030】
また、本実施形態によれば、加熱圧縮たわみ率が低いため、高電圧のケーブルを管内部に通すことができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、可とう性が300N以下であるため、人の手で十分に曲げられ、作業効率が高い。
【0032】
また、本実施形態によれば、低温衝撃試験において、割れがないため、広い温度範囲で使用可能である。
【0033】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
(波付可とう管の作製)
波付可とう管は、押出機で成形材料を溶融混練して、環状ダイから円筒管形状のポリエチレン管を押出し、次にいわゆるコルゲート成形機により波付管に波付成形して得た。ベース材料は高密度ポリエチレン(密度:0.956g/cm、メルトフローレート(MFR):0.04g/10min)とし、充填剤は炭酸カルシウムやタルクとし、その添加量と粒径を変えて試作した。管は、内径200mm、外径253mm、波のピッチ55mmの螺旋波管とし、肉厚を変えて試作した
【0035】
使用した炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムであり、下記粒子径のものを使用した。
1)平均粒子径1.0μm、累積粒度分布90重量%の粒径4.2μm、45μmふるい残分が0.0%
2)平均粒子径2.2μm、累積粒度分布90重量%の粒径13μm、45μmふるい残分が0.0%
3)平均粒子径5.0μm、累積粒度分布90重量%の粒径28μm、45μmふるい残分が0.3%
4)平均粒子径8.0μm、累積粒度分布90重量%の粒径35μm、45μmふるい残分が8.0%
炭酸カルシウムは、脂肪酸による表面処理を行ったものと、表面処理を行なわないものの両者を用いた。また、タルクは、表面処理を行なわない下記粒子径のものを使用した。
1)平均粒子径4.0μm、45μmふるい残分が0.05%
2)平均粒子径1.0μm、45μmふるい残分が0.0%
【0036】
平均粒子径の測定は、空気透過法で行った。また、粒度分布はX線透過式粒度分布測定法で測定した。
【0037】
空気透過法とは、以下のような方法である。粒子充填層を透過する流体の透過性と粉体比表面積の関係は、Kozeny−Carman(コゼニー カーマン)の式で与えられるため、粉体充填層を透過する空気量と透過するのに要する時間およびそのときの圧力差を測定すると、試料粉体の比表面積Sが求められる。球形粒子を仮定すると次式から平均粒子径dを計算することができる。
=6/(ρ・S
【0038】
また、X線透過式粒度分布測定法とは、Stokes(ストークス)の液相沈降法を測定原理とし、X線透過法により検出を行うX線透過式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所製セディグラフ5000等)により測定する方法である。
【0039】
(評価方法)
試作した波付可とう管に対し、A:60℃における圧縮試験、B:可とう性試験(常温)、C:低温衝撃試験を行った。
【0040】
A:60℃における圧縮試験
JIS C3653「電力ケーブルの地中埋設の施工工法」では、埋設深さが0.3m以上と規定している。また、公道を通行する車両で最も輪荷重が大きいのは20tトラックである。そこで、圧縮試験荷重は、管を0.3mの深さに埋めたときにかかる土圧と、20tトラックが通行したときにかかる活荷重を算出し、これから埋設時に管にかかる曲げモーメントを算出し、これを空気中で平板による圧縮荷重に換算して得た。
【0041】
具体的には、
埋設時にかかる土圧(死荷重)Wは、
=1.8×10−6×9.8×H=5.3×10−3 (N/mm
(土の密度:1.8×10−6kg/mm H:埋設深さ300mm)
埋設時にかかる活荷重W
(T−20荷重、後輪荷重:8000kg、車幅:2750mm、後輪接地長:200mm、車輪重複数:2、衝撃率:0.5)
=(2×8000×9.8×(1+0.5))÷2750÷(2×H+200)=0.11 (N/mm
このとき、埋設深さHで管に作用する曲げモーメントMは、
M=0.132×W×R+0.076×W×R
=(7.0×10−4+8.36×10−3)×R
=9.06×10−3×R (N/mm)
R=(D+d)/4 (mm)
(D:管外径(mm)、d:管内径(mm))
一方、管を平板で荷重Pを加えたときの曲げモーメントMとの関係は、
P=M÷0.318÷R=0.0285×R (N/mm)
よって、管長さ250mmあたりの平板圧縮荷重は、
P=7.1×R (N/250mm)
【0042】
上記管寸法の場合、管長さ250mmでの試験荷重は804Nとなる。そこで、圧縮試験は試作した長さ250mmの波付可とう管を60℃±2℃の恒温槽に入れ、この恒温槽中で金属製の平板を用いて全長に渡って均等になるように、20mm/minの圧縮速度で804Nの荷重を加え、管外径たわみ率を測定した。たわみ率の上限はJIS C3653付属書1波付硬質合成樹脂管の許容たわみ率3.5%とした。
【0043】
B:可とう性試験
図4に示すように、管内径の6倍=1200mmの半径を持つ曲げ枠25に、図4に示すLの管長さが1mとなるように長さ調整した管27を固定し、曲げ半径1200mmとして90°曲げたときの荷重P(N)を測定した。
【0044】
C:低温衝撃試験
全長40mの管を外径2.25m、幅1.1mのコイル状に把ね、出荷状態とした把を、温度−10℃で2時間保管し、高さ1mから落下させたのち、管にひび、割れなどの異常がないか確認した。異常のないものを○とし、異常のあるものを×とした。
表1に実施例を、表2に比較例を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
実施例1は炭酸カルシウムを5重量部添加した場合であるが、比較例2と比較すると加熱圧縮たわみ率が低下して3.5%以下となっており、炭酸カルシウムを添加することで加熱圧縮たわみ率が低下することが確認できる。
【0048】
実施例2,3は、炭酸カルシウムの添加量を増加させた例で、60重量部までは加熱圧縮たわみ率は低下し、低温衝撃試験、可とう性に問題ないことがわかるが、比較例3のように65重量部添加すると、低温衝撃試験で割れが発生する。比較例4は、炭酸カルシウム平均粒径を2.2μmとしたもので、粒子径を比較例3よりも小さくしたことにより、耐衝撃性が改善され、低温衝撃試験は問題なくなるものの、曲げ弾性率が向上するため、可とう性が300Nを上回り、人力での曲げ配管が困難となる。よって、炭酸カルシウムの添加量は5〜60重量部が望ましい。
【0049】
また比較例5は、実施例3の製品肉厚を6.5mmから7.5mmとしたものであるが、肉厚を大きくしたことにより、加熱圧縮たわみ率は低下するものの、可とう性、低温衝撃試験で不合格となるため、製品肉厚は6.5mm以下であることが望ましい。
【0050】
さらに、実施例2、4、比較例6は、炭酸カルシウムの平均粒径を振ったものであるが、実施例2のように平均粒径が5μmまでは低温衝撃試験をクリアするものの、比較例6のように平均粒径8μmにもなると、低温衝撃試験において割れが発生するため、炭酸カルシウムの平均粒径は5μm以下が望ましい。
【0051】
なお、粒子径を小さくしていくと比表面積が増大し、相互作用も大きくなって弾性率が向上し、たわみ率は小さくなるため、実施例5のように平均粒径1μmの炭酸カルシウムを用いると、肉厚を5.5mmと薄肉化しても許容たわみ率以下とすることができた。さらに、表面処理した炭酸カルシウムは分散性が向上していることが作用して、実施例6のようにたわみ率を小さくできた。
【0052】
さらに、実施例7、8、9はタルクを添加した場合であるが、炭酸カルシウム同等以上の効果が確認できた。
【符号の説明】
【0053】
1………波付可とう管
3………山部
5………谷部
7………波付可とう管
9………山部
11………谷部
13………波付可とう管製造装置
15………押出機
17a、17b………無限軌道
19………金型
21………成形部
23………筒状素材
25………曲げ枠
27………管
図1
図2
図3
図4