【実施例】
【0034】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
(波付可とう管の作製)
波付可とう管は、押出機で成形材料を溶融混練して、環状ダイから円筒管形状のポリエチレン管を押出し、次にいわゆるコルゲート成形機により波付管に波付成形して得た。ベース材料は高密度ポリエチレン(密度:0.956g/cm
3、メルトフローレート(MFR):0.04g/10min)とし、充填剤は炭酸カルシウムやタルクとし、その添加量と粒径を変えて試作した。管は、内径200mm、外径253mm、波のピッチ55mmの螺旋波管とし、肉厚を変えて試作した
【0035】
使用した炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムであり、下記粒子径のものを使用した。
1)平均粒子径1.0μm、累積粒度分布90重量%の粒径4.2μm、45μmふるい残分が0.0%
2)平均粒子径2.2μm、累積粒度分布90重量%の粒径13μm、45μmふるい残分が0.0%
3)平均粒子径5.0μm、累積粒度分布90重量%の粒径28μm、45μmふるい残分が0.3%
4)平均粒子径8.0μm、累積粒度分布90重量%の粒径35μm、45μmふるい残分が8.0%
炭酸カルシウムは、脂肪酸による表面処理を行ったものと、表面処理を行なわないものの両者を用いた。また、タルクは、表面処理を行なわない下記粒子径のものを使用した。
1)平均粒子径4.0μm、45μmふるい残分が0.05%
2)平均粒子径1.0μm、45μmふるい残分が0.0%
【0036】
平均粒子径の測定は、空気透過法で行った。また、粒度分布はX線透過式粒度分布測定法で測定した。
【0037】
空気透過法とは、以下のような方法である。粒子充填層を透過する流体の透過性と粉体比表面積の関係は、Kozeny−Carman(コゼニー カーマン)の式で与えられるため、粉体充填層を透過する空気量と透過するのに要する時間およびそのときの圧力差を測定すると、試料粉体の比表面積S
wが求められる。球形粒子を仮定すると次式から平均粒子径d
pを計算することができる。
d
p=6/(ρ
p・S
w)
【0038】
また、X線透過式粒度分布測定法とは、Stokes(ストークス)の液相沈降法を測定原理とし、X線透過法により検出を行うX線透過式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所製セディグラフ5000等)により測定する方法である。
【0039】
(評価方法)
試作した波付可とう管に対し、A:60℃における圧縮試験、B:可とう性試験(常温)、C:低温衝撃試験を行った。
【0040】
A:60℃における圧縮試験
JIS C3653「電力ケーブルの地中埋設の施工工法」では、埋設深さが0.3m以上と規定している。また、公道を通行する車両で最も輪荷重が大きいのは20tトラックである。そこで、圧縮試験荷重は、管を0.3mの深さに埋めたときにかかる土圧と、20tトラックが通行したときにかかる活荷重を算出し、これから埋設時に管にかかる曲げモーメントを算出し、これを空気中で平板による圧縮荷重に換算して得た。
【0041】
具体的には、
埋設時にかかる土圧(死荷重)W
1は、
W
1=1.8×10
−6×9.8×H=5.3×10
−3 (N/mm
2)
(土の密度:1.8×10
−6kg/mm
3 H:埋設深さ300mm)
埋設時にかかる活荷重W
2は
(T−20荷重、後輪荷重:8000kg、車幅:2750mm、後輪接地長:200mm、車輪重複数:2、衝撃率:0.5)
W
2=(2×8000×9.8×(1+0.5))÷2750÷(2×H+200)=0.11 (N/mm
2)
このとき、埋設深さHで管に作用する曲げモーメントMは、
M=0.132×W
1×R
2+0.076×W
2×R
2
=(7.0×10
−4+8.36×10
−3)×R
2
=9.06×10
−3×R
2 (N/mm)
R=(D+d)/4 (mm)
(D:管外径(mm)、d:管内径(mm))
一方、管を平板で荷重Pを加えたときの曲げモーメントMとの関係は、
P=M÷0.318÷R=0.0285×R (N/mm)
よって、管長さ250mmあたりの平板圧縮荷重は、
P=7.1×R (N/250mm)
【0042】
上記管寸法の場合、管長さ250mmでの試験荷重は804Nとなる。そこで、圧縮試験は試作した長さ250mmの波付可とう管を60℃±2℃の恒温槽に入れ、この恒温槽中で金属製の平板を用いて全長に渡って均等になるように、20mm/minの圧縮速度で804Nの荷重を加え、管外径たわみ率を測定した。たわみ率の上限はJIS C3653付属書1波付硬質合成樹脂管の許容たわみ率3.5%とした。
【0043】
B:可とう性試験
図4に示すように、管内径の6倍=1200mmの半径を持つ曲げ枠25に、
図4に示すLの管長さが1mとなるように長さ調整した管27を固定し、曲げ半径1200mmとして90°曲げたときの荷重P(N)を測定した。
【0044】
C:低温衝撃試験
全長40mの管を外径2.25m、幅1.1mのコイル状に把ね、出荷状態とした把を、温度−10℃で2時間保管し、高さ1mから落下させたのち、管にひび、割れなどの異常がないか確認した。異常のないものを○とし、異常のあるものを×とした。
表1に実施例を、表2に比較例を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
実施例1は炭酸カルシウムを5重量部添加した場合であるが、比較例2と比較すると加熱圧縮たわみ率が低下して3.5%以下となっており、炭酸カルシウムを添加することで加熱圧縮たわみ率が低下することが確認できる。
【0048】
実施例2,3は、炭酸カルシウムの添加量を増加させた例で、60重量部までは加熱圧縮たわみ率は低下し、低温衝撃試験、可とう性に問題ないことがわかるが、比較例3のように65重量部添加すると、低温衝撃試験で割れが発生する。比較例4は、炭酸カルシウム平均粒径を2.2μmとしたもので、粒子径を比較例3よりも小さくしたことにより、耐衝撃性が改善され、低温衝撃試験は問題なくなるものの、曲げ弾性率が向上するため、可とう性が300Nを上回り、人力での曲げ配管が困難となる。よって、炭酸カルシウムの添加量は5〜60重量部が望ましい。
【0049】
また比較例5は、実施例3の製品肉厚を6.5mmから7.5mmとしたものであるが、肉厚を大きくしたことにより、加熱圧縮たわみ率は低下するものの、可とう性、低温衝撃試験で不合格となるため、製品肉厚は6.5mm以下であることが望ましい。
【0050】
さらに、実施例2、4、比較例6は、炭酸カルシウムの平均粒径を振ったものであるが、実施例2のように平均粒径が5μmまでは低温衝撃試験をクリアするものの、比較例6のように平均粒径8μmにもなると、低温衝撃試験において割れが発生するため、炭酸カルシウムの平均粒径は5μm以下が望ましい。
【0051】
なお、粒子径を小さくしていくと比表面積が増大し、相互作用も大きくなって弾性率が向上し、たわみ率は小さくなるため、実施例5のように平均粒径1μmの炭酸カルシウムを用いると、肉厚を5.5mmと薄肉化しても許容たわみ率以下とすることができた。さらに、表面処理した炭酸カルシウムは分散性が向上していることが作用して、実施例6のようにたわみ率を小さくできた。
【0052】
さらに、実施例7、8、9はタルクを添加した場合であるが、炭酸カルシウム同等以上の効果が確認できた。