【実施例】
【0030】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
分子生物学的手法はとくに断らない限り、Molecular Cloning(Sambrook and Russell, 2001)に依った。
実施例1:シソアントシアニン3−アシル基転移酵素染色体遺伝子のクローニング
シソにはアントシアニンを葉に蓄積する赤い変種と蓄積しない緑色の変種が知られている。前者の葉から、その染色体DNAを、報告されている方法(Plant Mol Biol. December 1997; 35(6):915-27参照)で調製した。この染色体DNAをSau3AI(TOYOBO社製)で部分分解し、ショ糖密度勾配法により10〜15kbのDNA断片を含む画分を回収した。この断片を、公知の方法を用いてラムダファージベクターの一種であるEMBL3(Promega社製)のBamHI部位に挿入することにより、染色体DNAライブラリーを作製した。得られたライブラリーをシソに由来するアントシアニン3−アシル基転移酵素のcDNAであるpSAT208(Plant Cell Physiol. April 2000; 41(4):495-502参照)をプローブとして用いてスクリーニングした。ライブラリーのスクリーニングは、既に報告されている方法(Plant Cell Physiol. July 1996; 37(5):711-6参照)に拠った。プローブとハイブリダイズしたプラークを純化後、培養し、得られたファージからDNAを調製した。
【0031】
実施例2:シソアントシアニン3−アシル基転移酵素染色体遺伝子の塩基配列決定
上記で得たDNA10μgをXbaIで消化し、0.7%アガロースゲルで分離した後、ハイボンドN(アマシャム社製)にブロットした。この膜を上記と同じようにハイブリダイズしたところ、約6.8kbのDNA断片がプローブとハイブリダイズすることが分かった。同じDNA20μgをXbaIで消化し、0.7%アガロースゲルで分離した後、約6.8kbのDNA断片を、ジーンクリーン(フナコシ株式会社)を用いて精製し、XbaIで消化したpBluescriptSKII-と連結した。得られたプラスミドをpSPB513とした。このプラスミドに含まれるシソ由来のDNA配列をプライマーウォーキング法により決定した。その塩基配列を配列番号4に示す。この配列には、アントシアニン3−アシル基転移酵素cDNAであるpSAT208と高い相同性を示す領域があり、この領域がコードする蛋白質のアミノ酸配列(配列番号6)は、pSAT208のコードするアミノ酸配列と比べて19個のアミノ酸残基の置換と2個のアミノ酸の欠失が見られ、イントロンは観察されなかった。また、上記pSAT208と高い相同性を示す領域を含む配列は、その開始コドンと考えられるATGの上流に3438bpの配列と、その終止コドンと考えられるTAAの下流に2052bpの配列を含んでいた。上記3438bpの配列内には、アントシアニン3−アシル基転移酵素ではない別のオープンリーディングフレーム(ORF、配列番号5)が存在した。この部分を除く、シソアントシアニン3−アシル基転移酵素遺伝子の転写調節領域を増幅するために、以下の実験を行った。
【0032】
実施例3:シソアントシアニン3−アシル基転移酵素遺伝子の転写調節領域の増幅
1ngのpSPB513を鋳型として2種のプライマー(5’-
AAGCTTAACTATTATGATCCCACAGAG-3’(配列番号7、下線部はHindIIIの認識配列)、5’-
GGATCCGGCGGTGTTGAACGTAGC-3’(配列番号8、下線部はBamHIの認識配列)を用いて、PCR(95℃1分間保持後、52℃1分間、72℃2分間、95℃1分間からなる反応を25サイクル)を行なった。増幅された約1.1kbのDNA断片をHindIIIとBamHIで消化した。
【0033】
特許文献4に記載されたプラスミドpSPB567(エンハンサーが付加されたカリフラワーモザイク35Sプロモーターの3'側にパンジー由来のF3'5'H遺伝子が連結され、さらにその3'側にノパリンシンターゼのターミネーターが連結されている)をPacIで消化し、パンジー由来のF3'5'H遺伝子を含むDNA断片をpBin+(Transgenic Research 4, 288-290, 1995参照)のPacI部位にクローニングした。得られたプラスミドの内、エンハンサーが付加されたカリフラワーモザイク35SプロモーターがpBin+のAscI部位近くに存在するところのプラスミドをpSPB575とした。このプラスミドをHindIIIとBamHIで消化し、これに、前記したシソアントシアニン3−アシル基転移酵素の転写調節領域を含む約1.1kbのDNA断片をHindIIIとBamHIで消化したDNA断片を、挿入した。得られたプラスミドをpSFL205とした。
【0034】
pSFL205をHindIIIとSacIで消化して、約100bpのDNA断片を回収した。このDNA断片と、pSPB513をSacIとXbaIで消化して得られる約4kbのDNA断片と、HindIIIとXbaIで消化したプラスミドpBin+とを連結して、プラスミドpSPB3311を得た。このプラスミドpSPB3311は、配列番号2に示す塩基配列を含むバイナリーベクターとなっていて、シソアントシアニン3−アシル基転移酵素遺伝子の転写調節領域と該遺伝子の翻訳領域とその3'側の非翻訳領域を含む。
【0035】
実施例4:pSPB3323の構築
パンジーのF3'5'H遺伝子BP#40(WO 04/020637参照)の転写調節領域をTaKaRa LA PCR
TM in vitro Cloning Kitを用いて、以下のように増幅した。
パンジーの葉からDNA easy plant kit (QIAGEN社)を用いて染色体DNAを調製した。3μgの染色体DNAを制限酵素HindIIIにより消化した。消化したDNAを、HindIII末端DNA(TaKaRa LA PCR
TM in vitro Cloning Kitに含まれる)と、Ligation High (TOYOBO)を用いて、16℃で40分間反応させ、連結した。反応液4μlを10μlの水で薄め、連結したDNAを94℃10分間の処理により変性させた後、氷中で冷却した。5pmolのプライマーC1 (5’-GTACATATTGTCGTTAGAACGCGTAATACGACTCA-3’、配列番号9、HindIIIカセット配列の一部の配列でKitに含まれる)と5pmolのプライマーBP40-i5 (5’-AGGTGCATGATCGGACCATACTTC-3’、配列番号10、BP#40の翻訳領域の相補鎖に相当する)を加え、キットのプロトコールに従い、25μlの反応液で、98℃20秒間、68℃で15分間の反応を30回繰り返した。反応液を水で10倍に希釈した。このうち、0.5μlを鋳型として、5pmolのプライマーC2(5’-CGTTAGAACGCGTAATACGACTCACTATAGGGAGA-3’、配列番号11、HindIIIカセット配列の一部の配列でKitに含まれる)と5pmolのプライマー BP40-i7 (5’-GACCATACTTCTTAGCGAGTTTGGC-3’、配列番号12)を含む25μlの反応液で、98℃で5分間反応後、98℃で20秒間、68℃で15分間の反応を30回繰り返した。
【0036】
得られたDNA断片を、プラスミドpCR2.1 (Invitrogen社)に導入した。挿入されたDNAの塩基配列を決定したところ、その配列はBP#40のcDNA塩基配列と一致しない箇所が見られた。これはPCRの際にエラーが起こったためと考えられる。エラーのない配列を増幅するために以下の操作を行なった。
約2kbのBP#40の5’非翻訳領域と200bpの翻訳領域を増幅するために、200ngのパンジーの染色体DNAを鋳型として、50pmolのプライマー BP40-i7 (配列番号12)と50pmolのプライマーBP40 pro-F (5’-ACTCAAACAAGCATCTCGCCATAGG-3’、配列番号13、BP#40遺伝子の5’非翻訳領域にある配列)を用いて、25μlの反応液でPCRを行なった。98℃5分間処理した後、98℃20秒間と68℃15分間からなる反応を30回繰り返した。増幅されたDNA断片をpCR2.1に挿入した。このDNA断片には約2.1kbの5’非翻訳領域と200bpの翻訳領域が含まれていた。このプラスミドをpSFL614とした。プラスミドpSFL614配列の塩基配列を配列番号14に示す。
【0037】
pSFL614に含まれる約2.1kbの5’非翻訳領域(BP40pro,配列番号15)をBP#40遺伝子を転写させるために用いた。この際にBamHI部位をNheIに変更した。1ngのpSFL614プラスミドを鋳型とし、50pmolのプライマーBP40pro-HindIII-F (5’-AAG CTT GTG ATC GAC ATC TCT CTC C-3’、配列番号16)と50pmolのプライマーBP40pro-NheI-R (5’-CGA GGC TAG CTA AAC ACT TAT-3’、配列番号17)、Ex-Taq DNAポリメラーゼを加え、25μlの反応液で98℃5分間保持した後、98℃20秒間、68℃15分間の反応を25回繰り返した。増幅したDNA断片をpCR2.1にクローニングした。この配列にPCRによるエラーがないことを、塩基配列を確認することにより決定した。このプラスミドをHindIIIとNheIで消化し、470bpのDNA断片を得た。このDNA断片を断片Aとした。
【0038】
1ngのpSFL614プラスミドを鋳型とし、50pmolのプライマーBP40pro-NheI-F (5’-TTT AGC TAG CCT CGA AGT TG-3’、配列番号18)と50pmolのプライマーBP40pro-BamHI-R (5’-GGA TCC CTA TGT TGA GAA AAA GGG ACT-3’、配列番号19)、Ex-Taq DNAポリメラーゼを加え、25μlの反応液で98℃5分間保持した後、98℃20秒間、68℃15分間の反応を25回繰り返した。増幅したDNA断片をpCR2.1にクローニングした。この配列にPCRによるエラーがないことを、塩基配列を決定することにより確認した。このプラスミドをHindIIIとNheIで消化し、630bpのDNA断片を得た。このDNA断片を断片Bとした。
【0039】
特許文献4に記載されたプラスミドpSPB567をBamHIとHindIIIで消化して生じるDNA断片のうち大きいほうの断片を回収し、上述の断片Aと断片Bとを連結し、pSFL620とした。
pSFL620をPacIで消化後、約3.2kbのDNA断片を回収した。このDNA断片をpBin+のPacI部位に挿入した。得られたプラスミドをpSPB3317とした。上述のpSPB3311をAscIとXbaIで消化して得られた断片を、pSPB3317のAscIとXbaI部位に導入し、得られたプラスミドをpSPB3323とした。
【0040】
実施例5:シソアントシアニン3−アシル基転移酵素染色体遺伝子のキクでの発現
実施例3で調製したpSPB3311をアグロバクテリウムに導入し、このアグロバクテリウムを用いてキク品種94-765(精興園、未発売)を公知の方法により形質転換した。キクの形質転換は、例えば、非特許文献8に記載されているが、形質転換の方法はこれに限定されない。6系統の形質転換系統を取得した。この舌状花弁を凍結後に粉砕し、粉砕した花弁50〜100mgを500μLの50%酢酸水溶液で抽出し、0.45μmのフィルターで濾過した。この抽出液に含まれるアントシアニンを蒸留水で5倍に希釈したものを分析サンプルとし、高速液体クロマトグラフィーを用いて以下の条件で分析した。カラムはInertsil ODS-2(粒径5μm、4.6×250mm、ジーエルサイエンス)を用い、流速0.8ml/minで、移動相は1.5%リン酸を含む、4%酢酸、5%アセトニトリルから20%酢酸、25%アセトニトリルの直線濃度勾配40分間の後、1.5%リン酸及び20%酢酸を含む25%アセトニトリルで10分間のイソクラティック溶出を行った。検出はAgilent 1100シリーズ・ダイオードアレイ検出器(ジーエルサイエンス)を用い、250nm〜600nmの波長領域を検出し、530nmの吸光度の面積により各アントシアニンの存在比を求めた。
【0041】
形質転換体である分析系統1275-13、1275-14、1275-15、及び1275-17におけるアントシアニンの内、それぞれ、23%、1%、17%、及び34%は、保持時間20分以上であり、これらのアントシアニンは芳香族アシル基により修飾されていることが示唆された。保持時間20分以上に溶出されるアントシアニンの吸収極大は長波長側にシフトされており、上記形質転換により、既存の花色に青みを持たせることが可能になった。一方、元のキク品種94−765の花弁中のアントシアニンには、保持時間20分以上のものはなかった。
LC-FT-ICR-MSの手法(J. Japan. Soc. Hort. Sci. 77:94-102 (2008), Plant J. 54:949-962)により組換えキク1275-17のアントシアニンを分析した。この手法を用いるとアントシアニンの精密マススペクトルを測定でき、タンデム質量分析によりMS/MSスペクトルを得ることができる。キク1275-17には、宿主には検出されないシアニジン(クマロイル)グルコシドに相当する化合物(検出m/z:595.146259)、MSMSによるフラグメントはシアニジンに相当するm/z 287.1のみ)のピークが検出された。
以上の結果から、異種であるシソの3ATの転写調節領域がキク植物において機能したこと、シソの3ATもキクにおいて機能し、アントシアニンの構造と花の色を変化させたことが明らかとなった。また、本発明により、3AT等のアシル基転移酵素を機能させて芳香族アシル基をアントシアニンに転移させることで、アントシアニンの吸収極大を長波長にシフトさせることが分った(
図4、
図5、
図6参照)。
【0042】
実施例6:シソアントシアニン3−アシル基転移酵素染色体遺伝子とパンジーF3’5’H遺伝子のキクでの発現
実施例4で調製したpSPB3323をアグロバクテリウムに導入し、このアグロバクテリウムを用いてキク品種94-765(精興園、未発売)を公知の方法により形質転換した。6系統の形質転換系統を取得した。この花弁に含まれるアントシアニンを、実施例5に記載の方法で高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。
【0043】
形質転換体である分析系統1300-2、1300-3、及び1300-4のそれぞれにおけるアントシアニンの20%、2%、及び50%は、保持時間20分以上であり、これらのアントシアニンは芳香族アシル基により修飾されていることが示唆された。宿主のアントシアニンには、保持時間20分以上のものはなかった。以上のことから、異種であるシソの3ATの転写調節領域がキク植物において機能したこと、シソの3ATがキクのなかで機能して、アントシアニンの構造と花の色を変化させたことが明らかとなった。したがって、シソアントシアニン3−アシル基転移酵素遺伝子の転写調節領域を、様々な遺伝子の発現に用いることで、キクの舌状花弁で効率的かつ安定的に外来遺伝子を機能させることができるようになる。
【0044】
また、以下の方法で抽出したアントシアニジンの分析を行った。舌状花弁を凍結後に粉砕し、粉砕した花弁50〜100mgを500μLの1%塩酸メタノールで抽出し、この抽出液に500μLの4N 塩酸(HCl)を加えて混合し、100℃で1時間、加水分解を行った。分解後の溶液を冷却後、1mlの0.05M トリフルオロ酢酸(TFA)を添加して混合した。次に、この溶液をSep-Pak C18(ミリポア)に添加して加水分解産物を吸着させた。Sep-Pak C18は予め80%アセトニトリル(MeCN)で洗浄後、0.05M TFAで平衡化した。Sep-Pak C18に吸着した加水分解産物を0.05M TFAで洗浄後、さらに20%MeCN, 0.05M TFAで洗浄した後に、80%MeCN, 0.05M TFAで加水分解産物を溶出し、分析サンプルとした。
分析サンプルは、高速液体クロマトグラフィーを用いて以下の条件で分析した。カラムはInertsil ODS-2(粒径5μm, 4.6×250mm, ジーエルサイエンス)を用い、流速0.8ml/minで、移動相は1.5%リン酸を含む、5%酢酸、6.25%アセトニトリルから20%酢酸、25%アセトニトリルの直線濃度勾配20分間の後、1.5%リン酸及び20%酢酸を含む25%アセトニトリルで5分間のイソクラティック溶出を行った。検出はAgilent 1100シリーズ・ダイオードアレイ検出器(ジーエルサイエンス)を用い、250nm〜600nmの波長領域を検出し、530nmの吸光度の面積により各アントシアニジンの存在比を求めた。
分析の結果、形質転換体である分析系統1300-3、1300-4、1300-5、及び1300-6において、それぞれ、デルフィニジンが全アントシアニジンの0.9%、0.8%、1.4%、及び0.6%検出された。これは、パンジーのBP40転写調節領域がBP40の転写を司ったことを示唆する。デルフィニジン及び芳香族アシル基で修飾されていることが示唆されるアントシアニンが検出された1300-3及び1300-4においては、芳香族アシル基で修飾されたデルフィニジン型アントシアニンをも含むことが示唆された。このようにF3'5'Hと3ATを同時に発現させることでフラボノイド合成系を制御することができ、青色アントシアニンの基本骨格であるデルフィニジンの配糖体を、芳香族アシル基により修飾することができ、青いキクを作出することが可能になる。
【0045】
実施例7:pBI121-シソ3ATpro::ADHNF-パンジーF3'5'H#40::シソ3ATterの作製
実施例3で得られたプラスミドpSPB3311を鋳型に、HAP_gPf3ATpro_long_Fd(5'-AAGCTTGGCGCGCCGTTTAAACAACTATTATGATCCCACAG-3'、配列番号20)とX-gPf3ATpro-Rv(5'-TCTAGAGGCGGTGTTGAACGTAGCTGTGG-3'、配列番号21)をプライマーとして用い、Prime Star DNAポリメラーゼ(Takara)でPCRを行って、約1.1kbpのシソアントシアニン3-アシル基転移酵素遺伝子(Pf3AT)のプロモーター領域(Pf3ATpro)を増幅した。得られたPCR産物をpCR-BluntII-TOPO(Invitrogen)にクローニングして得られたプラスミドをpCR-Pf3ATproとした。
次に、pSPB3311を鋳型に、SSS-gPf3ATter-Fd(5'-GAGCTCACTAGTGTCGACTAAATGTATGTAATTAAACTAAT-3'、配列番号22)、及びESS-gPf3ATter-Rv(5'-GAATTCAGGCCTGCCCGGGCTATCTTTATCATATTTCGTCTAC-3'、配列番号23)をプライマーとして用い、Prime Star DNAポリメラーゼ(Takara)で、約1.5kbpのシソアントシアニン3-アシル基転移酵素遺伝子の3'側非翻訳領域(Pf3ATter)をPCRにより増幅した。PCR産物をpCR-BluntII-TOPO(Invitrogen)にクローニングして得られたプラスミドをpCR-Pf3ATterとした。
pCR-Pf3ATterをSacIとEcoRIで消化して得られるPf3ATter DNA断片を、pBI121-ADHNF のSacIとEcoRIに挿入した。次に、得られたプラスミドを、HindIIIとXbaIで消化し、pCR-Pf3ATproをHindIIIとXbaIで消化して得られるPf3ATpro DNA断片を連結して得られたバイナリーベクターを、pBI121-Pf3ATp-GUS-Pf3ATtとした。
【0046】
ハマナスの染色体DNAライブラリーを、λBlueSTAR
TM Xho I Half-Site Arms Kit (Novagen, http://www.merckbiosciences.com/product/69242)を用いて、以下のように作製した。ハマナスの若い葉から、Nucleon Phytopure [Registered] (TEPNEL Life Sciences)を用いて染色体DNAを調製した。約100μgの染色体DNAを制限酵素Sau3AIで部分消化した。
このDNA断片をdGTP とdATPの存在下においてDNA polymerase I Klenow fragment (TOYOBO)で部分的にフィルインをし、ショ糖密度勾配遠心により分画した。約13kbの大きさにDNAを回収し、エタノール沈殿により濃縮した。約180ngのDNAを1μL の λBlueSTAR
TM Xho I Half-Site Arms Kitと4℃で15時間連結した後、in vitro packaging反応を行ない、染色体ライブラリーを得た。
このハマナス染色体DNAライブラリーをトレニアのフラバノン3-水酸化酵素(F3H) cDNA (NCBI No. AB211958)によりスクリーニングし、シグナルを示すプラークを得た。そのうち1プラークから、製造者(Novagen)が推奨する方法を用いてin vivoの切り出しを行い、プラスミドに変換した。これを制限酵素SpeIで消化し、2.6kbのDNA断片を回収し、pBluescript SKII- (STRATAGENE)のSpeI部位にサブクローングすることにより、プラスミドpSPB804を得た。このプラスミドはF3Hに相同性を示す塩基配列を有していた。
F3Hの5'-非翻訳領域を増幅するために、1ngのpSPB804を鋳型に、プライマーRrF3H-F (5’-AAGCTTCTAGTTAGACAAAAAGCTA-3’、配列番号26)、プライマーRrF3H (5’-GGATCCTCTCTTGATATTTCCGTTC-3’、配列番号27)、及びEx-Taq DNA Polymerase (Takara)を用いて50μLの反応液でPCRを行なった。PCRの反応条件は、94℃5分間反応後、94℃30秒間、50℃30秒間、72℃30秒間を1サイクルとする反応を30回繰り返し、さらに72℃で7分間保持した。得られたDNA断片をpCR-TOPO (INVITROGEN)に挿入し、プラスミドpSPB811を得た。このプラスミドからは、HindIIIとBamHIを用いて約1.2kbのF3Hの5'-非翻訳領域を回収できる。
【0047】
特許文献4に記載されたpSPB567(El2エンハンサーが付加されたCaMV35Sプロモーター、パンジーのF3'5'HBP40、ノパリンシンターゼターミネーターを含むプラスミドpUC)のプロモーター部分をHindIIIとBamHIを用いて約1.2kbのF3Hの5'-非翻訳領域に置き換えて、プラスミドpSFL814 (R. rugosa F3H 5': BPF3'5'H#40: nos 3'を含む)を得た。
pSFL814を鋳型に、ADH-BP40-Fd(5'-CAAGAAAAATAAATGGCAATTCTAGTCACCGAC-3'、配列番号28)とNcoI-BP40-Rv(5'-CTCGAGCGTACGTGAGCATC-3'、配列番号29)をプライマーに用いてPCRで増幅したDNA断片、及びpBI221 ADH-221を鋳型にBamHI-ADH-Fd(5'-CGCGGATCCGTCTATTTAACTCAGTATTC-3'、配列番号30)とBP40-ADH-Rv(5'-TAGAATTGCCATTTATTTTTCTTGATTTCCTTCAC-3'、配列番号31)をプライマーに用いてPCRで増幅したDNA断片を混合して鋳型に用い、BamHI-ADH-FdとNcoI-BP40-Rvをプライマーに用いて、PCRにより、タバコADH-5'UTR 94bpがパンジーF3'5'H#40の開始コドンに直結したDNA断片を得た。
このDNA断片をpCR2.1にTAクローニングした後に、BamHI及びNcoIで消化して得られる約600bpのDNA断片と、pSFL814をBamHI及びNcoIで消化して得られるバイナリーベクター断片とを連結させることにより、pBinPLUS ハマナスF3Hpro::ADHNF-パンジーF3'5'H#40:: NOSterを得た。
【0048】
pBINPLUSハマナスF3Hpro:: ADHNF-パンジーF3'5'H#40::NOSterを鋳型に、SpeISmaI-ADH-Fd(5'-ACTAGTCCCGGGGTCTATTTAACTCAGTATTCAG-3'、配列番号24)とSacI-BP40-Rv(5'-GAGCTCTCAGGTTGCGTACGGGTTTGAGG-3'、配列番号25)をプライマーとして用い、Prime Star DNA polymeraseを用いたPCRによりADHNF-パンジーF3'5'H #40 DNA断片を増幅した。このDNA断片をpCR-BluntII-TOPOにクローニングして得られたプラスミドをpCR-ADHBP40-SpeSacとした。
pCR-ADHBP40-SpeSacをSpeI及びEcoICRIで消化して得られるADHNF-パンジーF3'5'H #40 DNA断片を、pBI121-Pf3ATp-GUS-Pf3ATtをSalIで消化した後、Blunting High(TOYOBO)を用いて平滑末端化し、さらにXbaIで消化して得られるバイナリーベクターの断片に、連結することにより、pBI121-シソ3ATpro::ADHNF-パンジーF3'5'H#40::シソ3ATterを得、これを、Agrobacterium tumefaciens EHA105株に形質転換した。
この形質転換アグロバクテリウムを用いて、キク品種大平由来の組換えキク7系統を得た。このうち5系統でデルフィニジンが検出され、デルフィニジン含有率は17.7%に達した。
また、pBI121-シソ3ATpro::ADHNF-パンジーF3'5'H#40::シソ3ATterから得たシソ3ATpro::ADHNF-パンジーF3'5'H#40::シソ3ATterの発現カセットをpWTT2132(WO96/36716)に導入することによりpSPB3718を構築し、Agrobacterium tumefaciens Agl0株に形質転換した。これを用いてキク品種Improved Regan(精興園)を形質転換した。25系統の形質転換キクを取得し、そのうち7系統で花色変化が見られた。デルフィニジン含有率は最高20%であった。
【0049】
実施例8
pSFL535(WO2008/156206に記載)をPacIで部分消化し、パンジーF3'5’H遺伝子を含む発現カセットを除去したDNA断片を回収した。このDNA断片と、実施例4に記載のpSFL620をPacIで消化して得られる約3.2kbのDNA断片とを連結し、
図7に示す構造をもつプラスミドpSFL635を得た。このプラスミドのT-DNAが植物に導入されると、トレニア由来のフラボン合成酵素遺伝子とトレニア由来のアントシアニンメチル基転移酵素が構成的に発現し、パンジーF3'5’H遺伝子が花弁特異的に発現されることが期待される。このプラスミドをWO2008/156206に記載に方法を用いてアグロバクテリウムに導入し、バラ品種WKS124に導入し、83系統の形質転換体を得た。これらの花弁にはWKS124には見られないマルビジン、ペチュニジン、デルフィニジンが含まれていた。総アントシアニジンのうちこれらの合計は平均73%、最高85%であった。この結果は本実験で得たパンジーBP40由来のプロモーター領域(pSFL514に含まれる約2.1kbの5'非翻訳領域(BP40pro、配列番号15、実施例4参照)は、外来遺伝子を植物、特にバラで発現させるのに適していることを示す。