(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1は光コネクタ10の分解斜視図、
図2はコネクタ付光ファイバケーブル11のコネクタ部分の横断平面図、
図3は
図2に示すコネクタ部分の縦断側面図、
図4はコネクタ付光ファイバケーブル11の縦断側面図及び部分拡大断面図である。
【0033】
また、
図5は端子付光ファイバケーブル12の分解斜視図、
図6はフェルール220に付設した凸部221aの配置を示す説明図、
図7はフェルール挿通孔111に付設した凸部111aの配置を示す説明図である。
【0034】
光コネクタ10は、
図1〜
図4に示すように、雄型コネクタ10Aを備えた雄型のコネクタ付光ファイバケーブル11と、該雄型コネクタ10Aを嵌合する雌型コネクタ10Bとで構成している。
【0035】
また、雌型コネクタ10Bが搭載される基板16には、2つのFOT14(Fiber Optical Transceiver)と、各FOT14に対応して配置したレンズ13と、雄型コネクタ10Aの雌型コネクタハウジング130(以降、これをハウジング130と略記する)に対するFOT14の位置を背面側から規制するスペーサ15と、ハウジング130に被覆したメタルケース140を固定するための係止孔(図示せず)とを配置している。
【0036】
以下、雄型のコネクタ付光ファイバケーブル11を例にしてその構成を説明するが、雌型のコネクタ付光ファイバケーブルを構成する場合でも、雄型コネクタ付光ファイバケーブル11と同様に構成される。
雄型のコネクタ付光ファイバケーブル11は、雄型コネクタ10Aを端子付光ファイバケーブル12の先端に装着して構成している。
【0037】
端子付光ファイバケーブル12は、
図5に示すように、光ファイバケーブル20の先端に光ファイバ端子210を装着して構成している。より詳しくは、光ファイバケーブル20の先端より所定の長さ露出させた光ファイバ204を、光ファイバ端子210を構成する筒体のフェルール220に挿通して固定することにより構成している。
【0038】
光ファイバケーブル20は、光ファイバ素線201と、光ファイバ素線201の外周に長手方向に沿って複数本配置した例えばケブラー(登録商標)等のアラミド樹脂繊維製の抗張力体202と、抗張力体202の外側を長手方向に沿って覆うケーブル外被覆部203とで構成している(
図5参照)。
【0039】
光ファイバ素線201は、ガラス製のファイバである光ファイバ204と、光ファイバ204の外周を長手方向に沿って覆うポリアミド樹脂製の素線ケーブル被覆部205とで構成している。
光ファイバ204としては、図示しないが、石英系ガラスからなるコア部と、このコア部よりも屈折率が低い硬質プラスチックからなるクラッド部を有する、いわゆるHCS(Hard Clad Silica)光ファイバが用いられる。
【0040】
このように構成した光ファイバケーブル20の先端において、ケーブル外被覆部203及び素線ケーブル被覆部205の一部を除去して、光ファイバ204、素線ケーブル被覆部205、及び抗張力体202のそれぞれを所定の長さ分露出し、後述する光ファイバ端子210を装着可能に構成している。
【0041】
上述の光ファイバケーブル20の先端に装着する光ファイバ端子210は、筒体であるフェルール220と、抗張力体固定部材としてのかしめ部材であるカシメリング230と、光ファイバ素線201をフェルール220に固定する光ファイバ固定部材240と、光ファイバケーブル20の折れ曲がりを防止する保護ブーツ250とで構成している。
【0042】
フェルール220は、例えば耐熱性、機械強度、成型性に優れるポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)で構成している。また、フェルール220は、
図5、
図6(a)に示すように、全体的にほぼ円筒状に形成され、先端側から順に、先端筒部221と、光ファイバ固定部材240の嵌着が許容される固定部材装着凹部222を有するフェルール本体部223と、フェルール本体部223の直後に配置した環状の固定部材係止溝224と、カシメリング230による抗張力体202の固定が許容される台座部225とを配置して構成している。
【0043】
フェルール220の先端筒部221は、フェルール先端面221cを有するとともに、フェルール本体部223の外径よりひとまわり小さな径の円筒形状に形成している。
また、フェルール220には、先端筒部221のフェルール先端面221cから台座部225の後端面に貫通して、光ファイバケーブル20の光ファイバ素線201の挿通が許容される光ファイバ挿通孔226を形成している。
なお、光ファイバ挿通孔226において先端筒部221に対応する部分は、光ファイバ204のみの挿通を許容するファイバ挿通孔226aとしている。
【0044】
フェルール本体部223は、フェルール220の全長に対してほぼ1/2〜1/3程度の長さを有する筒体であり、長手方向の中央上部に、光ファイバ固定部材240の嵌着が許容する固定部材装着凹部222を配置している。
先端筒部221は、雄型コネクタ10Aの雄型コネクタハウジング110(以下、ハウジング110と略記する)に形成したフェルール挿通孔111に対して挿通が許容される外径に形成している。
【0045】
また、先端筒部221のフェルール挿通孔111に挿通される先端側外周面には、フェルール挿通孔111の内周面に向けて突出する凸部221aを周方向に連続して形成している(
図2〜
図6(a)参照)。
一方、先端筒部221が挿通されるフェルール挿通孔111の後端側内周面には、
図2のa部拡大図、
図7(a)に示すように、先端筒部221の外周面に向けて突出する凸部111aを周方向に連続して形成している。
【0046】
さらに、フェルール220の凸部221aは、先端筒部221の周方向と直交する直交断面形状を挿脱方向Aに向けて滑らかな弧状断面に形成している。
これと対応して、先端筒部221が挿通されるフェルール挿通孔111の凸部111aは、フェルール挿通孔111の周方向と直交する直交断面形状を挿脱方向Aに向けて滑らかな弧状断面に形成している。
【0047】
フェルール220の凸部221aは、先端筒部221をフェルール挿通孔111内に設定した所定位置に挿通した状態において、フェルール挿通孔111の凸部111aよりも奥側となる位置に配置している(
図2のa部拡大図参照)。
つまり、凸部221aは、フェルール挿通孔111の中央部内周面と対向する奥側に配置し、凸部111aは、先端筒部221の後端側外周面と対向する手前側に配置している。
【0048】
詳述すると、フェルール220の先端筒部221をフェルール挿通孔111内に設定した所定位置まで挿通した際、先端筒部221の凸部221aが、フェルール挿通孔111の凸部111aを乗り越えて奥側へ移動し、凸部221aの後側に位置規制される。
【0049】
つまり、凸部221aは、凸部111aに対してフェルール220をフェルール挿通孔111から抜き取られる抜き取り方向Bへ移動する際に当接され、抜き取り方向Bへの移動が規制される高さに形成している。
【0050】
実施形態において、凸部221aは、凸部111aよりも低くなるように高さ設定しているが、例えば凸部221aを、凸部111aよりも高くなるように高さ設定してもよい。
【0051】
本実施形態では、上述の凸部221aを周方向に連続して形成した配置例について説明しているが、下記の
図6(b)(c)に示すように配置してもよい。
図6はフェルール220に付設した凸部221aの配置を示す説明図である。詳述すると、
図6(b)は凸部221bを周方向に等間隔を隔てて複数配置したフェルール220の斜視図、
図6(c)は凸部221a(又は221b)を挿脱方向Aに所定間隔を隔てて2列配置したフェルール220の斜視図である。
【0052】
図6(b)に示す凸部221bは、先端筒部221の外周面に沿って周方向に等間隔を隔てて複数配置している。
詳述すると、フェルール220の先端筒部221をフェルール挿通孔111に挿通する際、先端筒部221の凸部221bが、フェルール挿通孔111の凸部111aに対して部分的に当接されるので、凸部221aの全周を当接するよりも乗り越え抵抗が弱くなる。
この結果、フェルール220を、フェルール挿通孔111内に設定した規定位置までスムーズに挿通することができ、組付け性が向上する。
【0053】
また、
図6(c)に示す凸部221a(又は221b)は、先端筒部221の外周面に対して挿脱方向Aに所定間隔を隔てて2列配置している。
詳述すると、フェルール220の先端筒部221をフェルール挿通孔111に挿通した際、先端筒部221の凸部221aが、フェルール挿通孔111の凸部111aを乗り越えて奥側へ移動し、凸部221a,凸部221aの間に凸部111aが保持される。
【0054】
また、凸部221a,凸部221aが凸部111aを乗り越える際に付与される乗り越え抵抗によって、フェルール220の先端筒部221を、フェルール挿通孔111内に設定した所定位置に保持する。
【0055】
この結果、フェルール挿通孔111に対するフェルール220の位置固定が完了するまで、フェルール220をフェルール挿通孔111内の所定位置に挿通された状態に保つことができ、挿脱方向Aへの移動を規制できる。
【0056】
一方、凸部221aが当接される凸部111aは、周方向に連続して形成した配置例について説明しているが、下記の
図7(b)(c)に示すように配置してもよい。
図7はフェルール挿通孔111に付設した凸部111aの配置を示す説明図である。詳述すると、
図7(b)は凸部111bを周方向に等間隔を隔てて複数配置した拡大断面図、
図7(c)は凸部111a(又は111b)を挿脱方向Aに所定間隔を隔てて複数列配置した拡大断面図である。
【0057】
図7(b)に示す凸部111bは、フェルール挿通孔111の内周面に沿って周方向に等間隔を隔てて複数配置している。また、
図7(c)に示す凸部111a(又は111b)は、フェルール挿通孔111の内周面に対して挿脱方向Aに所定間隔を隔てて複数列配置している。
【0058】
上述の凸部111a,111bを、
図7(b)(c)に示すように配置すれば、
図6に示す凸部221a,221bと略同等の作用及び効果を奏することができる。また、
図6の凸部221a,221bと、
図7の凸部111a,111bとを組み合わせて配置してもよい。
【0059】
先端筒部221の後側に配置したフェルール本体部223の固定部材装着凹部222は、上述の光ファイバ挿通孔226と連通しており、上方に向けて開放された形状に形成している。また、光ファイバ挿通孔226に挿通された光ファイバケーブル20の素線ケーブル被覆部205が露出する程度の深さに形成している(
図1〜
図4、
図5、
図6参照)。
また、後述する光ファイバ固定部材240を嵌着した際、固定部材装着凹部222の内側壁と光ファイバ固定部材240の外側壁とが略隙間無く接触される形状に形成している。
【0060】
光ファイバ固定部材240は、正面視略逆U字型、且つ固定部材装着凹部222と略合致する大きさ及び形状に形成している。また、下面側中央部には、光ファイバ素線201を把持するための把持溝241を形成している(
図5参照)。
【0061】
固定部材係止溝224は、フェルール本体部223と台座部225との間、すなわち、フェルール本体部223の直後に配置され、フェルール220をフェルール挿通孔111に対して挿脱する挿脱方向Aに交差して、フェルール本体部223の後端側壁部223bに沿って周方向に連続して形成している。
また、固定部材係止溝224は、フェルール固定部材120のリブ121bの係合が許容される溝深さ及び溝幅に形成している(
図2、
図4のb部拡大図参照)。
【0062】
さらに、フェルール本体部223の後端側壁部223bを、固定部材係止溝224の前端側壁部全体(あるいは、前端側壁部の少なくとも一部)で構成しているため、フェルール本体部223と固定部材係止溝224との対向部分に配置される壁部の枚数が少なくなり、その壁部の厚み分だけ、フェルール220の全長を短くすることができる。
【0063】
台座部225は、固定部材係止溝224の直後に配置している。また、台座部225の外周面には、該外周面に沿って形成した環状の凸部225aを長手方向に複数配置して、その外周面を凹凸状に形成している。また、各凸部225a間の幅は、凸部225aの幅よりも幅広に設定している。
【0064】
詳述すると、台座部225に載置された抗張力体202を、カシメリング230にて台座部225に圧着した際、抗張力体202が台座部225の凸部225a,225aの間に押し込まれるため、台座部225と抗張力体202との接触面積が大きくなり、抗張力体202を台座部225に対して強固に固定することができる(
図14参照)。
【0065】
なお、台座部225は、光ファイバケーブル20(後述するケーブル外被覆部203)の先端より露出した抗張力体202を、台座部225の外周面に対して長手方向に配置が許容される長さに形成している。
【0066】
カシメリング230は、例えばアルミニウム等の金属材料で構成し、先端側から後端側に向かって径が同一となる円筒形状であり、台座部225の外径と略同じ内径に形成した第1カシメ部231と、第1カシメ部231と略同径に形成した第2カシメ部232とを備えている。
【0067】
また、カシメリング230は、光ファイバケーブル20の先端にフェルール220を接続した状態において、台座部225の外周面と、ケーブル外被覆部203の被覆先端203aより後側外周面とに跨って圧着される大きさ及び形状に形成している。
【0068】
詳しくは、第1カシメ部231はフェルール220の台座部225をかしめる部分であり、第2カシメ部232は光ファイバケーブル20のケーブル外被覆部203をかしめる部分である。
第1カシメ部231は、フェルール220における台座部225の外周面全体を覆う長さに形成している。また、第2カシメ部232は、ケーブル外被覆部203の被覆先端203aから該被覆先端203aより後側外周面を覆う長さに形成している。
【0069】
保護ブーツ250は、
図3、
図5に示すように、例えばゴムや弾性を有するプラスチックで構成しており、先端側から後端側に向かって径が小さくなる円錐台形状であり、内部には、光ファイバケーブル20及びカシメリング230の挿通が許容される挿通空間251を形成している。また、挿通空間251の内径は、カシメリング230の外径と略同じ内径に形成している。
【0070】
保護ブーツ250の後端側外周面には、環状をなす凹溝252を長手方向に所定間隔を隔てて複数配置している。また、保護ブーツ250の先端側内周縁部には、カシメリング230の先端側端面部に対して係止される鍔部253を該先端側内周縁部に沿って周方向に連続して形成している。
なお、鍔部253は、保護ブーツ250の先端側内周縁部に沿って部分的に配置してもよい。
【0071】
上述のように構成した光ファイバケーブル20、及び光ファイバ端子210を用いて端子付光ファイバケーブル12を構成するための組付けについて説明する。
先ず、
図5に示すように、光ファイバケーブル20に保護ブーツ250、カシメリング230をこの順で、先端側から挿通するとともに、光ファイバケーブル20の先端側のケーブル外被覆部203及び素線ケーブル被覆部205を一部除去し、光ファイバ素線201と抗張力体202を所定の長さ露出させ、さらに光ファイバ素線201から光ファイバ204を所定の長さ露出させる。
【0072】
続いて、光ファイバケーブル20におけるケーブル外被覆部203の被覆先端203aより露出した光ファイバ素線201を、フェルール220の台座部225側から光ファイバ挿通孔226に挿通するとともに、光ファイバ204をファイバ挿通孔226aに挿通する。
【0073】
このとき、光ファイバ204のファイバ先端面204cを、フェルール220のフェルール先端面221cから露出して、ファイバ先端面204cとフェルール先端面221cとがほぼ同一平面となるように組付ける。
なお、光ファイバ挿通孔226における固定部材装着凹部222と対応する位置には、光ファイバケーブル20の光ファイバ素線201が位置することとなる。
【0074】
次に、光ファイバ固定部材240を、固定部材装着凹部222に対して上方から挿入するとともに、光ファイバ固定部材240の把持溝
241により、固定部材装着凹部222に露出された光ファイバケーブル20の光ファイバ素線201を上下から挟み込むようにして把持する。
【0075】
この後、フェルール220の台座部225上に、光ファイバケーブル20の先端より露出させた抗張力体202の露出側端部を載置する。このとき、抗張力体202を、台座部225の外周にわたって均一に載置するとともに、抗張力体202をフェルール220の軸方向、つまりフェルール220の長手方向に平行となるように載置する。
【0076】
そして、あらかじめ挿通しておいたカシメリング230を、第1カシメ部231がフェルール220の台座部225をかしめる位置、第2カシメ部232が台座部225の後端より露出されたケーブル外被覆部203をかしめる位置に移動させる。
【0077】
さらに、カシメリング230の第1カシメ部231を加圧して、台座部225に載置された抗張力体202を、台座部225と第1カシメ部231で挟み込むように、第1カシメ部231で台座部225をかしめる。また、第2カシメ部232を加圧してケーブル外被覆部203をかしめる。
これにより、カシメリング230を、光ファイバケーブル20側のケーブル外被覆部203とフェルール220側の台座部225とに跨って圧着する(
図4参照)。
【0078】
なお、台座部225上に配置された抗張力体202の露出側端部が固定部材係止溝224側に突出している場合、その抗張力体202の不要な部分は、後述する切除方法にて切除する(
図14参照)。
【0079】
その後、保護ブーツ250を、光ファイバケーブル20側のケーブル外被覆部203とフェルール220側の台座部225とに跨って圧着したカシメリング230全体を覆うようにして装着するとともに、保護ブーツ250の鍔部253を、カシメリング230の先端側端面部に係止することで、端子付光ファイバケーブル12の組付けが完了する。
【0080】
このように、光ファイバケーブル20、及び光ファイバ端子210を組付けて構成した端子付光ファイバケーブル12は、振動や衝撃に加え、側圧や曲げが作用しても確実な通信を実現することができるとともに、耐久性を向上することができる。
【0081】
詳しくは、抗張力体202は、カシメリング230によってフェルール220の台座部225に直接固定されている(
図4参照)。このため、光ファイバケーブル20とフェルール220との接続部において両者が一体化し、光ファイバケーブル20に側圧や曲げが作用しても、周方向に配置した抗張力体202に側圧や曲げが作用するため、側圧や曲げに対する耐力も向上する。
【0082】
さらには、保護ブーツ250を、光ファイバケーブル20側のケーブル外被覆部203とフェルール220側の台座部225とに跨って圧着したカシメリング230全体を覆うようにして装着しているため、光ファイバケーブル20とフェルール220との接続部が許容半径よりも小さい曲げ径で折れ曲がることを保護ブーツ250の弾性により防止することができる。これによって光ファイバ素線201が折損することを防止できる。
【0083】
また、端子付光ファイバケーブル12の光ファイバ端子210を、ハウジング110の内部に挿入した際(
図1参照)、ハウジング110のブーツ保持部117によりカシメリング230を覆う保護ブーツ250が外側から押さえ込まれるので、保護ブーツ250の鍔部253がカシメリング230の先端側端面部から外れることを防止でき、保護ブーツ250の変形を防止する効果が得られる(
図4参照)。
【0084】
この結果、1つのカシメリング230が光ファイバケーブル20とフェルール220とを固定する役目と、保護ブーツ250の鍔部253を係止する役目とを果たすため、少ない部品点数にて光ファイバケーブル20を保持及び保護することができ、保護ブーツ250の装着状態を保ちながら脱落しないようにすることができる。
【0085】
次に、上述のように組付けた端子付光ファイバケーブル12を用いて構成するコネクタ付光ファイバケーブル11について以下で説明する。
上述のコネクタ付光ファイバケーブル11は、雄雌一対構成の光コネクタ10のうち雄型コネクタ10Aと、雄型コネクタ10Aが組付けられた端子付光ファイバケーブル12とで構成している。
【0086】
上述の光コネクタ10のうち雄型コネクタ10Aについて以下で説明する。
図8は雄型コネクタ10Aの分解斜視図、
図9は雌型コネクタハウジング130に挿入する先端側から見た雄型コネクタハウジング110の正面図、
図10は雄型コネクタ10Aと雌型コネクタ10Bを嵌合した嵌合構造の縦断端面図である。
【0087】
雌型コネクタ10Bは、
図8〜
図10に示すように、端子付光ファイバケーブル12を保持する雄型のハウジング110と、端子付光ファイバケーブル12をハウジング110に固定するためのフェルール固定部材120とで構成している。
【0088】
ハウジング110は、耐熱性で熱膨張率の低い樹脂、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等で形成され、フェルール220が挿脱方向Aに対して挿通される2つのフェルール挿通孔111と、フェルール固定部材120の挿入が許容されるスリット112と、後述するメタルケース140の係止孔141に係止される係止爪113を有するアーム部114と、アーム部114のアーム先端部114aが係止される係止部115とを備えている。
【0089】
また、ハウジング110のフェルール挿通孔111よりも後側内部には、フェルール本体部223を保持する本体保持部116と、保護カバー230を保持するブーツ保持部117とを、先端側から順に配置している。
【0090】
フェルール挿通孔111は、フェルール220の先端筒部221が挿脱方向Aに対して挿通許容される内径に形成され、
図1、
図2に示す2本の端子付光ファイバケーブル12と対応して、フェルール220が挿通される2個のフェルール挿通孔111を挿脱方向Aと平行して並列に配置している。
【0091】
また、フェルール挿通孔111の後端側には、フェルール220のフェルール本体部223の前端側壁部223aが当接され、該フェルール220の先端筒部221をフェルール挿通孔111内に設定した所定位置に規制するための規制面111cを形成している。
【0092】
スリット112は、ハウジング110の上面から底面に貫通し、かつフェルール挿通孔111に連通するように形成している。
係止爪113は、
図10(a)に示すように、後述するメタルケース140の係止孔141と対応してアーム部114の幅方向中央部に配置され、ハウジング110の先端から後端に向けて徐々に高くなる爪形状に形成している。
アーム部114は、弾性を有するように、ハウジング110の幅方向中央部において長手方向の先端から後端に向かって斜め上方向に傾斜するように形成している。
【0093】
また、係止爪113は、メタルケース140の係止孔141に対して、ハウジング110がハウジング130から抜き取られる抜き取り方向Bに係合し、かつ当接される角張った形状に形成している。
係止爪113の係止孔141に対して当接される当接側端面部は、ハウジング110とハウジング130とを挿脱する挿脱方向Aに対して直交する垂直な面に形成している。また、該当接側端面部の係止孔141に対して当接される出隅部分は、直角をなす角張った形状に形成している。
【0094】
係止爪113の形状は、平面から見た横幅Wを1.82mmに設定し、長さLを2mmに設定している(
図8参照)。これにより、下記に示すような強度に設定している。
【0095】
引張力:110N
材料強度:1.224×10
8Pa
応力集中係数:3
すなわち、係止爪113の形状及び強度を、上述のように設定することで、120Nの外力が作用すると破壊されるように制御することができる。
【0096】
さらに、ハウジング110の対向する両側壁部110b,110bの外面側には、ハウジング110とハウジング130とを挿脱する挿脱方向Aに延びる被ガイド凹凸部110L,110Rを設けている。なお、被ガイド凹凸部110L,110Rの形状は非対称に形成している。
【0097】
両側壁部110b,110bの上端部に形成した対向する一対の上側壁部110c,110cと、両側壁部110b,110bの下端部間に形成した下側壁部110dには、2つの嵌合爪111L,111Rを対称に配設している。
【0098】
すなわち、端子付光ファイバケーブル12をハウジング110に組付ける場合、光ファイバ端子210のフェルール220の先端筒部221を、ハウジング110のフェルール挿通孔111内の所定位置まで挿通した後、フェルール固定部材120を、ハウジング110の下方からスリット112に挿入し、フェルール220の固定部材係止溝224に係合して抜止めする。
【0099】
これにより、光ファイバ端子210のフェルール220が、フェルール挿通孔111内に挿通された状態に抜止め固定されるため、端子付光ファイバケーブル12をハウジング110に組付けることができるようになっている。
【0100】
フェルール220の固定部材係止溝224に係合されるフェルール固定部材120は、
図8(a)に示す角張った形状のリブ122aを備えたフェルール固定部材120aと、
図8(b)に示す半円弧状のリブ122bを備えたフェルール固定部材120bとで構成している。
なお、フェルール固定部材120a,120bの構造はほぼ同一であるので、先ず、一方のリブ122aを備えたフェルール固定部材120aの構造について説明する。
【0101】
上述のフェルール固定部材120aは、
図8(a)、
図10に示すように、フェルール220の固定部材係止溝224と対応する正面視半円弧状の受け部121を2つ並設した形状に形成され、フェルール220の固定部材係止溝224の溝幅と略一致するか、該溝幅よりわずかに薄い厚さに形成している。
【0102】
また、フェルール固定部材120aの中央部には、スリット112の中央部内壁に形成した段部112aに対して係止される主フック123を備え、該フェルール固定部材120aの両端部には、スリット112の両部側内壁に形成した段部112bに対して仮係止される一対のフック124を備えている。
【0103】
受け部121は、固定部材係止溝224の溝形状と対応する大きさ及び形状に形成している。また、受け部121の受け側には、半円弧状の受け面121aを形成している。
【0104】
受け面121aは、固定部材係止溝224の1/2周面と対応して滑らかな曲率半径に形成している。また、受け面121aの幅方向中央部には、固定部材係止溝224に対して係合される角張った形状のリブ122aを、該受け面121aに沿って周方向に連続して形成している。
【0105】
リブ122aは、受け面121aの周方向と直交する直交断面形状を、フェルール220がフェルール挿通孔111から抜き取られる抜き取り方向Bに対して当接される角張った形状に形成している。また、リブ122aは、受け部121の受け面121aに沿って一端から他端に至る全長において一定の幅及び高さに形成している。
【0106】
上述のリブ122aは、所定の外力の作用によって破壊が生じるような断面積、配置長さに設定している。つまり、リブ122aの断面積は、半円弧状を有するリブ122aの周方向と直交する直交断面形状の半径に基づいて算出される面積である。また、リブ122aの長さは、受け部121の受け面121aに沿って周方向に複数配置する際に算出される長さである。
【0107】
詳述すると、リブ122aを、例えば120N程度の外力の作用によって破壊が生じるような断面積、配置長さに設定すれば、端子付光ファイバケーブル12がハウジング110から抜き取られる抜き取り方向Bに向けて所定の外力が作用した場合、フェルール固定部材120aのリブ122aのみが破壊されるように制御することができる。
【0108】
この結果、上述のような所定の外力が作用する場合、フェルール220とフェルール固定部材120aとの固定を解除するように制御することができる。また、リブ122aの耐力以上の過剰な外力が他の部品に作用することを防止できる。
【0109】
すなわち、上述の端子付光ファイバケーブル12をハウジング110に組付けた状態、あるいは、該ハウジング110をハウジング130に嵌合した状態において、上述のような抜き取り方向Bの所定の外力が作用しても、フェルール固定部材120は、ハウジング110のスリット112に係合しているため、フェルール220の固定部材係止溝224の前側内壁面(フェルール本体部223の後端側壁部223b)がフェルール固定部材120aのリブ122aに対して抜き取り方向Bに対して当接される。
【0110】
しかし、リブ122aは角張った形状を有しているため、上述のような外力がリブ122aに対して集中して作用することになる。
上述の所定の外力が作用した場合、リブ122aの根元部分に亀裂が発生するとともに、リブ122aが亀裂に沿って剪断破壊あるいは曲げ破壊されるため、リブ122aのみが確実に破壊され、固定部材係止溝224に対するフェルール固定部材120aの係合を解除することができる。
【0111】
この結果、リブ122a以外の部分や部品に対して破壊が生じる程の外力が作用することを確実に防止できる。また、リブ122aが破壊されたフェルール固定部材120aのみを交換するだけで済むため、部品交換時の作業性が向上するとともに、部品の交換に要する費用を低減することができる。
【0112】
上述のフェルール固定部材120aに代わるフェルール固定部材120bは、
図8(b)に示すように、半円弧状のリブ122bを、受け部121の受け面121aに沿って形成している。
また、リブ122bは、受け面121aの周方向と直交する直交断面形状を、フェルール固定部材120bがフェルール220の固定部材係止溝224から抜き取られる方向に対して外力が作用するような滑らかな半円弧状に形成している。
なお、上述のフェルール固定部材120aと同一の構成部分は同一の符号を記してその詳細な説明を省略する。
【0113】
すなわち、リブ122bの固定部材係止溝224の前側内壁面(フェルール本体部223の後端側壁部223b)に対して当接される当接面を、フェルール固定部材120bがフェルール220の固定部材係止溝224から離脱され、かつ、ハウジング110のスリット112から抜き取られる方向に向けて所定の外力が作用するような曲率半径を有する滑らかな曲面に形成している。
【0114】
詳述すると、上述の端子付光ファイバケーブル12をハウジング110に組付けた状態、あるいは、該ハウジング110をハウジング130に嵌合した状態において、上述の所定の外力が作用するまでは、フェルール固定部材120bのリブ122bが、フェルール220の固定部材係止溝224に対して係合した状態に確実に保持されている。
【0115】
上述のような所定の外力が作用した場合、フェルール固定部材120bの受け部121に突出したリブ122bの曲面に対して、固定部材係止溝224の前側内壁部と対応するフェルール本体部223の後端側壁部223bが抜き取り方向Bに当接される。
【0116】
その抜き取り方向Bの外力が、リブ122bの外力変換面を構成する曲面によって、フェルール固定部材120bが固定部材係止溝224から抜き取られる下向きの方向の力に変換される。
すなわち、フェルール固定部材120bが、固定部材係止溝224から抜き取られる方向に向けて強制的に押し下げられるため、リブ122bを破壊することなく、フェルール固定部材120bの固定部材係止溝224に対する係合を解除することができる。
【0117】
この結果、上述のような外力が作用しても、フェルール固定部材120bや固定部材係止溝224が破壊されることがなく、また、端子付光ファイバケーブル12やハウジング110,130を構成する高品質な伝送特性や組付け精度が要求される部品も壊れることがないため、その部品の品質や機能が安定して得られる。
【0118】
また、フェルール固定部材120bを、フェルール220の先端筒部221をフェルール挿通孔111内の所定位置に規制するための部品として何回も繰り返し用いることができるとともに、フェルール固定部材120b以外の部品が壊れることを確実に防止できる。さらにまた、部品の交換が不要となるため、交換時の費用を削減することができる。
【0119】
次に、上述の雄型コネクタ10Aを嵌合する雌型コネクタ10Bについて以下で説明する。
図11は雌型コネクタ10Bの分解斜視図、
図12は雄型コネクタハウジング110が挿入される挿入側から見た雌型コネクタハウジング130の正面図である。
雌型コネクタ10Bは、
図11、
図12に示すように、雄型コネクタ10Aの挿入を許容する樹脂性の雌型のハウジング130と、該ハウジング130を被覆する金属製のメタルケース140とで構成している。
【0120】
ハウジング130は、上述のハウジング110と同一の樹脂で形成され、雄型コネクタ10Aのハウジング110の挿入を許容する挿入空間130aを有し、該挿入空間130aを構成する両側壁部130b,130bの外面側には、それぞれ外側に向かって突出する嵌合凸部131を2つずつ設けている。
【0121】
両側壁部130b,130bの内面側には、ハウジング110とハウジング130とを挿脱する挿脱方向Aに延びるハウジング110の被ガイド凹凸部110L,110Rと嵌合可能なガイド凹凸部131L,131Rを設けている。なお、ガイド凹凸部131L,131Rの形状は非対称に形成している。
【0122】
両側壁部130b,130bの上端部に形成した対向する一対の上側壁部130c,130cと、両側壁部130b,130bの下端部間に形成した下側壁部130dには、それぞれ、ハウジング110の嵌合爪111L,111R(
図8、
図9参照)に対応して嵌合孔132L,132Rを穿設している。
なお、一対の上側壁部130c,130cの対向端部は、ハウジング110のアーム部114の挿入が許容される間隔、すなわち、アーム部114の横幅よりも幅広となる間隔に隔てられている。
【0123】
メタルケース140は、ハウジング130の上側壁部130c,130cに対応する天板部140aと、両側壁部130b,130bに対応する両側板部140b,140bとにより断面門型をなした金属製のシールドケースである。
【0124】
また、メタルケース140の天板部140aには、ハウジング110におけるアーム部114の係止爪113に対応して係止孔141を穿設している。
両側板部140b,140bの自由端側には、基板16に形成した係止孔(図示せず)に挿入してメタルケース140を係止、固着する係止凸部141と、ハウジング130の嵌合凸部131に対応して天板部140aに向かって凹む嵌合凹部142とを配設している。
【0125】
本実施形態では、ハウジング130の嵌合凸部131を、メタルケース140の嵌合凹部142に差し込んで、両者を嵌合させることにより、メタルケース140をハウジング130に固着することができる。
【0126】
つまり、ハウジング130をメタルケース140により被覆することによって、FOT14を電気的ノイズの影響から保護(シール)することができる。さらに、ハウジング130に固着してこれと一体化させることにより、ハウジング130を補強して、雌型コネクタ10B全体の強度を向上させることができる。
【0127】
また、雄型コネクタ10Aのハウジング110を、雌型コネクタ10Bのハウジング130に挿入する場合、被ガイド凹凸部110L,110Rをガイド凹凸部131L,131Rに嵌合させ、この嵌合状態のまま、ハウジング110をガイド凹凸部131L,131Rに沿って挿脱方向Aに押し込む。
【0128】
このように、被ガイド凹凸部110L,110Rをガイド凹凸部131L,131Rに嵌合させることにより、ハウジング110を挿脱方向Aにガイドすることができる。この挿脱方向Aへのガイドによって、挿入空間130a内の所定位置にハウジング110を挿入することができる。
【0129】
上述のように構成した光コネクタ10と端子付光ファイバケーブル12との組付けについて以下で説明する。
先ず、端子付光ファイバケーブル12の光ファイバ端子210を、雄型コネクタ10Aのハウジング110に挿着する場合、
図1〜
図4に示すように、光ファイバ端子210のフェルール220をハウジング110に挿入し、フェルール220の先端筒部221をハウジング110のフェルール挿通孔111に挿通する。
【0130】
先端筒部221をフェルール挿通孔111に挿通する際、フェルール220の凸部221aを、フェルール挿通孔111の凸部111aに当接しながら挿脱方向Aに乗り越えさせて、フェルール220のフェルール本体部223の前端側壁部223aが、フェルール挿通孔111の規制面111cに対して当接される所定位置まで挿通する。
【0131】
凸部221aが凸部111aを乗り越えてフェルール挿通孔111の先端側に移動すると、フェルール本体部223の前端側壁部223aとフェルール挿通孔111の規制面111cとの当接により、フェルール220の先端筒部221がフェルール挿通孔111内に設定した所定位置に規制される(
図4参照)。
【0132】
また、フェルール220がフェルール挿通孔111から抜き取られる抜き取り方向Bに対して、凸部221aと凸部111aとが当接されるとともに、凸部221aが凸部111aを乗り越える際に付与される乗り越え抵抗によって、フェルール220の先端筒部221が、フェルール挿通孔111内に設定した所定位置に保持される。
これにより、ハウジング110のスリット112と、フェルール220の固定部材係止溝224との挿脱方向Aにおける相対位置が一致する。
【0133】
上述のように、フェルール220の先端筒部221をフェルール挿通孔111内の所定位置に保持したまま、フェルール固定部材120(120a)を、ハウジング110の下方からスリット112に挿入して、フェルール固定部材120の一対のフック124を、スリット112内の両側部に配置した段部112bに仮係止する(
図10(b)参照)。
【0134】
さらに、フェルール固定部材120をスリット112に対して深く押し込み、フェルール固定部材120のリブ122aを、フェルール220の固定部材係止溝224に係合するとともに、フェルール固定部材120の主フック123を、スリット112の中央段部112aに係止して、フェルール固定部材120のリブ1
22aが、フェルール220の固定部材係止溝224に対して係合された状態に抜止めする(
図10(a)参照)。
つまり、フェルール固定部材120を、ハウジング110のスリット112とフェルール220の固定部材係止溝224とに係合することで、挿脱方向Aへの移動を規制する。
【0135】
このようにして、光コネクタ10と端子付光ファイバケーブル12とで構成するコネクタ付光ファイバケーブル11の組付けは完了する。
この状態において、フェルール固定部材120をフェルール220の固定部材係止溝224に係合しているため、端子付光ファイバケーブル12のフェルール220は雄型コネクタ10Aのハウジング110に対して、挿脱方向Aに移動することなく強固に固定することができる。
したがって、光コネクタ10は振動や衝撃にさらに強くなるので、例えば100Nもの外力にも耐え得ることができ、高い接続信頼性を実現することができる。
【0136】
また、フェルール220の先端筒部221を、フェルール挿通孔111内に設定した所定位置に挿通された状態に保持するため、フェルール固定部材120による抜止めが完了するまでに、光ファイバケーブル20の自重などによってフェルール220の位置が抜き取り方向Bへ変位することを確実に防止できる。
【0137】
つまり、フェルール220の先端筒部221をフェルール挿通孔111内に設定した所定位置に保持して、ハウジング110のスリット112と、フェルール220の固定部材係止溝224との挿脱方向Aにおける相対位置を一致させるので、フェルール固定部材120を、フェルール220の固定部材係止溝224に対して正確に係合することができる。これにより、雄型コネクタ10Aと端子付光ファイバケーブル12との組付け性が向上し、組付ける際の作業効率が改善される。
【0138】
この結果、端子付光ファイバケーブル12とFOT14との位置精度が向上するとともに、高品質な伝送特性を維持することができる。また、フェルール挿通孔111に対するフェルール220の組付け精度が向上し、予め設定された所定位置に正確に組付けることができる。
【0139】
また、フェルール固定部材120をスリット112から抜き取れば、フェルール固定部材120によるフェルール220の抜止め固定が解除されるので、端子付光ファイバケーブル12を雄型コネクタ10Aから抜き取ることができる。
【0140】
また、フェルール固定部材120のリブ122aをフェルール220の固定部材係止溝224に係合し、フェルール本体部223の前端側壁部223aをフェルール挿通孔111の規制面111cに当接して、フェルール220が先端方向へ移動しないように確実に規制するため、光コネクタ10に対する光ファイバ204の位置のずれが起こらない。
【0141】
したがって、雄型コネクタ10Aと雌型コネクタ10Bを嵌合した状態で振動、衝撃あるいは曲げや側圧が作用しても、端子付光ファイバケーブル12とFOT14との間の隙間が変動せず、所定の間隔を維持することができる。
これにより、両者の嵌合位置精度の向上を図り、ひいては、端子付光ファイバケーブル12とFOT14との位置精度の向上を図ることができる。
【0142】
また、端子付光ファイバケーブル12がハウジング110から抜き取られる抜き取り方向Bの外力を受けた場合、フェルール本体部223の後端側壁部223bがフェルール固定部材120のリブ121aに当接されるので、フェルール220が先端方向及び後端方向に移動することを確実に規制できる。
【0143】
つまり、上述のような抜き取り方向Bの外力を、フェルール本体部223の全体で受けるため、フェルール本体部223の全長を短くしても、フェルール固定部材120を鍔部(図示せず)に当接する構造と略同等または同等以上の強度が得られる。また、鍔部をフェルール220に設ける必要がないため、その鍔部と対応する長さだけ、フェルール220の全長を短くして、小型化を図ることができる。
【0144】
さらに、小型化したフェルール220であっても、例えば100Nの外力(アセンブリ工程、車両組付け工程)に対してフェルール220の位置を維持することが出来るため、光ファイバケーブル20同士や、光ファイバケーブル20とFOT14との相対位置を維持するのに必要な強度が得られ、光コネクタ10として信頼性が向上する。
【0145】
次に、コネクタ付光ファイバケーブル11の端子付光ファイバケーブル12を、光コネクタ10の雄型コネクタ10Aを介して、基板16に組み付けられた雌型コネクタ10Bに接続する方法について説明する。
【0146】
端子付光ファイバケーブル12が接続された雄型コネクタ10Aのハウジング110を、基板16に組み付けられた雌型コネクタ10Bのハウジング130に挿入した際、ハウジング110のアーム部114の係止爪113が、ハウジング130に装着したメタルケース140の係止孔141に係止され、雄型コネクタ10Aと雌型コネクタ10Bとが嵌合固定される。
【0147】
上述のようにして、雄型コネクタ10Aのハウジング110を、雌型コネクタ10Bのハウジング130に挿入することで、端子付光ファイバケーブル12をFOT14に接続することができる。
これにより、通信を行う装置に備えられた基板16が端子付光ファイバケーブル12によって接続され、相互に制御信号の通信を行う車載通信システム(図示せず)を構成することができる。
【0148】
また、端子付光ファイバケーブル12が組付けられた雄型コネクタ10Aと雌型コネクタ10Bとを嵌合した状態において、端子付光ファイバケーブル12が雄型コネクタ10Aのハウジング110から抜き取られる抜き取り方向Bに向けて所定の外力が作用するまでは、係止爪113と係止孔141との係合により、ハウジング110,130の嵌合状態が確実に保持される。
【0149】
上述の所定の外力が作用した場合、ハウジング110の係止爪113がハウジング130の係止孔141に対して抜き取り方向Bに当接される。
しかし、係止爪113の当接側端部は角張った形状を有しているので、上述のような外力が係止爪113に対して集中して作用することになる。その外力によって、係止爪113の根元部分に亀裂が発生するとともに、その係止爪113が亀裂に沿って剪断破壊あるいは曲げ破壊される。
【0150】
つまり、上述の外力により係止爪113のみを確実に破壊して、係止孔141に対する係合を解除するので、ハウジング110をハウジング130から抜き取ることが可能となる。これにより、係止爪113以外の部分や部品に対して破壊が生じる程の外力が作用することを確実に防止できる。
また、係止爪113が破壊されたハウジング110のみを交換するだけで済むため、部品交換時の作業性が向上するとともに、部品の交換に要する費用を低減することができる。
【0151】
さらに、上述のような外力が作用した場合、ハウジング110の係止爪113を破壊するか、係止孔141に対する係合が解除される。あるいは、フェルール固定部材120aのリブ122aを破壊するか、フェルール固定部材120bのリブ122bの固定部材係止溝224に対する係合が解除される。
【0152】
これにより、ハウジング110の係止爪113、フェルール固定部材120aのリブ122a以外の部分や部品に対して破壊が生じる程の外力が作用することを確実に防止でき、雄型コネクタ10A、雌型コネクタ10B、端子付光ファイバケーブル12のうち高品質な伝送特性や組付け精度が要求される部品が壊れることがなく、その部品の品質や機能が低下することを防止できる。
【0153】
次に、
図13を用いて、係止爪113と係止孔141との係合を解除する他の構造について説明する。
図13(a)は係止爪113の係合を解除する脆弱構造の拡大断面図、
図13(b)(c)は係止爪113の係合を解除する係合解除構造の拡大断面図である。
【0154】
図13(a)に示す係止爪113は、係止爪113の係止孔141に当接される当接側端部の根元部分に、ハウジング110がハウジング130から抜き取られる抜き取り方向Bに対して逆方向に向けて切込み部113aを形成した脆弱構造である。
【0155】
詳述すると、端子付光ファイバケーブル12をハウジング110に組付けた状態において、端子付光ファイバケーブル12がハウジング110から抜き取られる抜き取り方向Bの所定の外力が作用した場合、ハウジング110の係止爪113がハウジング130の係止孔141に対して抜き取り方向Bに当接され、その当接力が係止爪113の切込み部113aに対して集中して作用する。
【0156】
上述の外力によって、係止爪113の切込み部113aに沿って亀裂が発生するため、係止爪113が切込み部113aから破壊されやすい。これにより、係止爪113のみを確実に破壊して、係止孔141に対する係合を解除することができる。
この結果、係止爪113以外の部分や部品に対して破壊が生じる程の外力が作用することがなく、外力による影響を他の部分や部品が受けることがない。
【0157】
また、
図13(b)に示す係止爪113は、係止爪113の係止孔141が当接される当接面を、係止爪113が係止孔141から抜き取られる方向に向けて所定の外力が作用する滑らかな曲面113bに形成した係合解除構造である。
【0158】
詳述すると、上述のような所定の外力が作用した場合、係止爪113の曲面113bが係止孔141に当接され、その当接部分に生じる反力によって、係止孔141側が係止爪113の曲面113bに沿って上方に押し上げられ、係止爪113側が係止孔141から抜き取られる方向に向けて下方に変位する。
【0159】
すなわち、抜き取り方向Bの外力が、係止爪113の曲面113bによって、係止爪113が係止孔141から抜き取られる方向の力に変換されるため、係止爪113や係止孔141を破壊することなく、係止爪113の係止孔141に対する係合を解除することができる。
【0160】
この結果、上述のような外力が作用しても、係止孔141と係止爪113との係合機能が損なわれず、係止孔141と係止爪113との係合機能が安定して得られる。また、ハウジング110,130の着脱が何回も行えるので、光コネクタ10全体の耐久性が向上する。
【0161】
また、係止爪113の係止孔141が当接される当接面を、
図13(c)に示すように、係止爪113が係止孔141から抜き取られる方向に向けて外力が作用するテーパ面113cに形成してもよく、上述の曲面113bと略同等の係止解除効果が得られる。
【0162】
図13(d)に示す係止孔141は、係止孔141の係止爪113に対して当接される鋭角な鋭角端部141aを、係止爪113に対して当接される方向に向けて徐々に低くなる先細形状にしている。
【0163】
詳述すると、上述の所定の外力が作用した場合、係止爪113の根元部分に対して係止孔141の鋭角端部141aが当接され、その当接によって、係止爪113が根元部分から破壊されるので、係止爪113以外の部分や部品に対して破壊が生じる程の外力を作用させることなく、係止孔141に対する係合を解除することができる。
【0164】
また、係止孔141の係止爪113が当接される当接側端部を、上述のような曲面やテーパ面等の外力変換面で構成してもよく、上述と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0165】
次に、
図14を用いて、端子付光ファイバケーブル12の組付け時において、フェルール220の台座部225上に配置された抗張力体202を所定長さに切り揃える切除方法について説明する。
図14は台座部225上に配置された抗張力体202の不要な部分を切除する説明図である。
【0166】
台座部225上に配置された抗張力体202の端部が固定部材係止溝224側に突出していると、フェルール固定部材120を固定部材係止溝224に係合する際に妨げとなるため、抗張力体202の不要な部分を切除する必要がある。
【0167】
この場合、カシメリング230によって抗張力体202を台座部225上に圧着固定した後、固定部材係止溝224側に突出する抗張力体202の余剰端部を、固定部材係止溝224と台座部225との間に生じる段差部分に沿って切断刃300にて切除する。
【0168】
つまり、切断刃300を、上述の段差部分と対向する位置に配置して切除するので、フェルール220の外周面に傷つけることなく、抗張力体202の余剰端部のみを正確且つ確実に切除することができ、カッティング作業が容易に行える。
【0169】
この結果、フェルール固定部材120を固定部材係止溝224に対して確実に係合することができ、端子付光ファイバケーブル12とハウジング110とを一体化する際の組付け性が向上する。
【0170】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の固定部材保持部は、実施形態のスリット112に対応し、
以下同様に、
抗張力体固定部材は、カシメリング230に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0171】
本発明の光コネクタ10と端子付光ファイバケーブル12とを接続する接続構造は、2本の端子付光ファイバケーブル12同士を接続するWire to Wireの接続構造にも適用することができる。
【0172】
また、実施形態では、係止爪113をハウジング110に設け、係止孔141をハウジング130に装着されるメタルケース140に設けた例を説明したが、例えば係止孔(係止手段における被係合部)をハウジング110側に設け、係止爪(係止手段における係合部)をハウジング130に装着されるメタルケース140側に設けてよい。
【0173】
また、係止孔141の係止爪113が当接される当接側端部の両側縁部に、例えば抜き取り方向Bに対して逆方向に向けて切込み部を形成してもよく、上述の所定の外力により、係止爪113が切込み部に沿って破壊されるため、係止爪113に対する係合を解除することができる。
【0174】
また、リブ122a,122bをフェルール固定部材120に設けているが、例えばリブをフェルール220の周面に設け、そのリブが係合される溝部をフェルール固定部材120に設けてもよい。
【0175】
また、ハウジング110の嵌合爪111L,111R、あるいは、ハウジング130の嵌合凸部131及び嵌合孔132L,132Rを、端子付光ファイバケーブル12がハウジング110から抜き取られる抜き取り方向Bに向けて所定の外力が作用した場合、少なくとも一方を破壊する脆弱構造、または、係合を解除する係合解除構造に構成してもよい。