特許第5697055号(P5697055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧

特許5697055熱可塑性樹脂発泡体、熱可塑性樹脂発泡体の製造方法および光反射材
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697055
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂発泡体、熱可塑性樹脂発泡体の製造方法および光反射材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/12 20060101AFI20150319BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20150319BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   C08J9/12CFD
   C08L67/00
   G02B5/08 A
   G02B5/08 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-502789(P2012-502789)
(86)(22)【出願日】2011年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2011069190
(87)【国際公開番号】WO2012026530
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2012年12月21日
(31)【優先権主張番号】特願2010-191038(P2010-191038)
(32)【優先日】2010年8月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐
(72)【発明者】
【氏名】池田 英行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】稲森 康次郎
【審査官】 宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/142260(WO,A1)
【文献】 特開平04−268345(JP,A)
【文献】 国際公開第02/066233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/12
C08L 67/00
G02B 1/04
G02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性熱可塑性樹脂(A)に、溶融型結晶化核剤(B)を含む樹脂組成物を用いてなり、該結晶性熱可塑性樹脂(A)が結晶性ポリエステル樹脂であって、該溶融型結晶化核剤(B)が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジベンジルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミドおよび1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラアニリドから選択され、内部に平均気泡径1μm未満の気泡を有することを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項2】
前記溶融型結晶化核剤(B)が結晶性熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し0.1〜2.0質量部含まれることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項3】
光波長550nmの全反射率が酸化アルミニウム比で100%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡体を用いて成形されていることを特徴とする光反射材。
【請求項5】
結晶性熱可塑性樹脂(A)と溶融型結晶化核剤(B)とを含有する樹脂組成物のシートを加圧不活性ガス雰囲気中に保持して不活性ガスを含有させる工程と、不活性ガスを含有させた該シートを常圧下で加熱発泡させる工程とからなり、
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が結晶性ポリエステル樹脂であり、前記溶融型結晶化核剤(B)が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジベンジルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミドおよび1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラアニリドから選択され、
内部に平均気泡径1μm未満の気泡を有することを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記溶融型結晶化核剤(B)が結晶性熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し0.1〜2.0質量部含まれることを特徴とする請求項に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に微細な気泡を有する熱可塑性樹脂発泡体、熱可塑性樹脂発泡体の製造方法および光反射材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を反射する合成樹脂製のフィルムまたはシートは、電飾看板、照明器具またはディスプレイなどのバックライトに用いられる。例えば、輝度ムラを抑えるために、合成樹脂製フィルムまたはシートを立体的な形状に加工した光反射板が提案されている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、当該熱可塑性樹脂発泡体のフィルムまたはシートを立体的な形状に加工すると、成形時のひずみや成形後の収縮により変形してしまう。そこで、形状加工を施した光反射板と金属製ケーシングとを固定することにより光反射板の変形を防止する手段が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
近年、照明器具、液晶ディスプレイといった分野では省電力化、高効率化が要求される。したがって、より高い反射率を有する樹脂製フィルム、またはシートが求められている。特に、電飾看板やディスプレイの分野では省スペース化のニーズも高まっており、光を反射する樹脂フィルム、またはシートの薄型化が要求されている。上述の光反射板では薄型化の要求に応えることは難しい。
【0004】
そこで、光を反射する合成樹脂製のフィルムまたはシートとして、内部に微細な気泡または気孔を多数有する熱可塑性樹脂発泡体のフィルムまたはシートが提案されている(例えば特許文献3参照)。当該熱可塑性樹脂発泡体のフィルムまたはシートは、平均気泡径が10μm程度と微細であるため、高い反射率を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−122863号公報
【特許文献2】特開2004−138715号公報
【特許文献3】WO97/01117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、平均気泡径が10μm程度の発泡シートでは、シートを薄肉化すると透過光の増大という問題が発生する。そのため、所望の反射率を維持することができない。
本発明は、上記の問題点を解決し、薄肉化しても高い反射率を有する熱可塑性樹脂発泡体および光反射材ならびに該熱可塑性樹脂発泡体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂に対して特定の溶融型結晶化核剤を添加することにより、薄肉化しても高い反射率を有する熱可塑性樹脂発泡体を製造でき、上記の問題点を解決できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
<1>結晶性熱可塑性樹脂(A)に、溶融型結晶化核剤(B)を含む樹脂組成物を用いてなり、該結晶性熱可塑性樹脂(A)が結晶性ポリエステル樹脂であって、該溶融型結晶化核剤(B)が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジベンジルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミドおよび1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラアニリドから選択され、内部に平均気泡径1μm未満の気泡を有することを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体
<2>前記溶融型結晶化核剤(B)が結晶性熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し0.1〜2.0質量部含まれることを特徴とする<1>に記載の熱可塑性樹脂発泡体、
>光波長550nmの全反射率が酸化アルミニウム比で100%以上であることを特徴とする<1>または2>に記載の熱可塑性樹脂発泡体、
前記<1>〜<>のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡体を用いて成形されていることを特徴とする光反射材、
>結晶性熱可塑性樹脂(A)と溶融型結晶化核剤(B)とを含有する樹脂組成物のシートを加圧不活性ガス雰囲気中に保持して不活性ガスを含有させる工程と、不活性ガスを含有させた該シートを常圧下で加熱発泡させる工程とからなり、
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が結晶性ポリエステル樹脂であり、前記溶融型結晶化核剤(B)が、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジベンジルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミドおよび1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラアニリドから選択され、
内部に平均気泡径1μm未満の気泡を有することを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の製造方法、および
<6>前記溶融型結晶化核剤(B)が結晶性熱可塑性樹脂(A)100質量部に対し0.1〜2.0質量部含まれることを特徴とする<5>に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、薄肉化しても高い反射率を有する熱可塑性樹脂発泡体および熱可塑性樹脂発泡体の製造方法と、それを用いた光反射率に優れた電飾看板、照明器具、ディスプレイのバックライト、照明ボックスなどの反射材を提供することができる。
【0010】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、下記の記載からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、結晶性熱可塑性樹脂(A)に溶融型結晶化核剤(B)を含有する樹脂組成物を発泡させてなる。まず、本発明の熱可塑性樹脂発泡体のうち、結晶性熱可塑性樹脂(A)について説明する。
【0012】
(A)結晶性熱可塑性樹脂
結晶性とは、Tg以上のある温度領域において、樹脂分子が規則的な立体配置構造(結晶構造)を形成することを意味する。こうした結晶性は示差走査熱量計による結晶化熱量に基づき定義される。本発明における結晶性とは、熱可塑性樹脂を融解温度以上に加熱した後、10℃/minで降温測定をした際に、発熱ピーク(結晶化ピーク)から算出される熱量が5.0J/g以上のものをいう。より好ましくは、10.0J/g以上である。好ましくは、50J/g以下である。
本発明において用いることのできる結晶性熱可塑性樹脂(A)として、例えば、ポリエステル、ポリアミド、白発色のリニア型ポリフェニレンサルファイド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエーテルケトン等が挙げられる。その中でも、特にポリエステルが好ましく、本発明では、結晶性ポリエステル樹脂を使用する。本発明において、結晶性熱可塑性樹脂は一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
上記ポリエステルとして、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のほか、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート・テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・ナフタレート、ポリブチレンイソテレフタレート、ポリブチレンイソナフタレート等のような共重合ポリエステルなどが挙げられる。その中でも、結晶性および発泡性の点で、特にポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
本発明において、リサイクルの観点から熱可塑性樹脂は非架橋であることが好ましい。本発明における熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂のうち架橋している部分の質量分率(以下、本発明において、架橋度ともいう。)が10%未満であることが好ましい。熱可塑性樹脂の架橋度が好ましくは10%未満になるように架橋剤や架橋助剤を添加してもよい。
【0014】
(B)溶融型結晶化核剤
溶融型結晶化核剤とは、熱可塑性樹脂に添加すると溶融混練時に樹脂中に溶融分散し、降温凝固過程において凝集固化することを特徴とする造核剤のことを示す。
本発明において、成形時に溶融型結晶化核剤(B)は結晶性熱可塑性樹脂(A)に対して溶融分散する。成形後の降温固化時もしくはガス含浸時において、溶融型結晶化核剤(B)は結晶性熱可塑性樹脂(A)中に析出する。その結果、溶融型結晶化核剤(B)は結晶化する。発泡過程において、析出した溶融型結晶化核剤(B)が気泡核形成の起点となる。その結果、内部に平均気泡径1μm未満の微細な孔を均一に有した発泡体を得ることができる。こうした発泡体は成形されることにより、高い反射率を有する反射材を得ることができる。
本発明において用いられる溶融型結晶化核剤、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,4−シクロヘキサン酸ジカルボン酸ジベンジルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミドおよび1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラアニリドから選択される。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、特にN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドが透明性、生成される結晶粒径の点で好適である。
本発明において、熱可塑性樹脂発泡体の比重は0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.65以下、更に好ましくは0.5以下である。本発明において、比重が大きくなる、すなわち発泡倍率が小さくなると、気泡率の低下による反射率の低下、成形性の低下または軽量化効果の減少に繋がる。
本発明において、(B)の配合量は結晶性の熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して0.1〜2質量部である。好ましくは0.25〜1.5質量部である。溶融型結晶化核剤の配合量が少なすぎると、ガス含浸による溶融型結晶化核剤の結晶化工程を経ることで生成される結晶核が生成されにくく、発泡体の気泡径分布が大きくなる。また、溶融型結晶化核剤の配合量が多すぎると、結晶化が進行しすぎてしまい、結晶核が大きくなりすぎて粒子状となり、気泡核剤としての働きが十分でないため高い発泡倍率を得ることができない。
【0015】
本発明において、発泡前の熱可塑性樹脂(A)に対して、結晶化促進剤、気泡核剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、顔料、染料、相溶化剤、滑剤、強化剤、難燃剤、可塑剤、増粘剤、減粘剤などの各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。また、得られた熱可塑性樹脂発泡体に上記添加剤を含有する樹脂を積層しても良いし、上記添加剤を含有する塗料をコーティングしても良い。
【0016】
以下、本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法を説明する。
結晶性熱可塑性樹脂(A)と、溶融型結晶化核剤(B)とを例えば混練機や押出機などを用いて溶融混練することにより樹脂組成物が得られる。混練温度や混練時間等の混練条件は、結晶性熱可塑性樹脂(A)および溶融型結晶化核剤(B)の溶融する温度で適宜設定することができる。得られた樹脂組成物を押出機などでシート状に成形し樹脂シートを作製した後、当該樹脂シートとセパレータとを重ねて巻くことによりロール状にする。このロールを加圧不活性ガス雰囲気中に保持することにより当該樹脂シートに不活性ガスを含有させる。さらに、不活性ガスを含有させた当該樹脂シートを常圧下で結晶性熱可塑性樹脂(A)の軟化温度以上に加熱して発泡させる。こうして熱可塑性樹脂発泡体は得られる。
【0017】
不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどが挙げられる。樹脂シートが飽和状態になるまでの不活性ガス浸透時間および不活性ガス浸透量は、発泡させる樹脂の種類、不活性ガスの種類、浸透圧力およびシートの厚さによって異なる。その中でも、樹脂へのガス浸透性(速度、溶解度)の観点から、二酸化炭素がより好ましい。
【0018】
なお、この方法では、樹脂シートとセパレータとからなるロールに加圧不活性ガス雰囲気中で不活性ガスを含有させる前に、樹脂シートに有機溶剤を含有させてもよい。
有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、ギ酸エチル、アセトン、酢酸、ジオキサン、m−クレゾール、アニリン、アクリロニトリル、フタル酸ジメチル、ニトロエタン、ニトロメタン、ベンジルアルコールなどが挙げられる。その中でも、取り扱い性および経済性の観点からアセトンがより好ましい。
【0019】
本発明において、本発明の熱可塑性樹脂発泡体に存在する気泡の平均径は1μm未満である。その中でも、0.75μm以下が好ましく、特に0.5μm以下が好ましい。平均気泡径が大きすぎると、目的の高反射率を得ることができない。
【0020】
本発明において、熱可塑性樹脂発泡体の光の全反射率は550nmにおいて酸化アルミニウム比で98%以上であることが好ましい。その中でも、100%以上であることが好ましく、特に101%以上であることが好ましい。なお、ここで述べる全反射率とは、分光光度計(U−4100:(株)日立ハイテクフィールディング製)の550nmの波長において酸化アルミニウム白板(210−0740:(株)日立ハイテクフィールディング製)の反射率を100%とし、相対値で示したものである。
【0021】
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例について、下記の評価を行った。各試験とその評価は以下の方法で行った。
(1)シート厚
サンプルの4角、4辺及びシートの中心における厚みをマイクロメータにより測定し、合計9点の平均値をシート厚とした。
(2)平均気泡径
ASTMD3576−77に準じて求めた。シートの断面のSEM写真を撮影し、SEM写真上に水平方向と垂直方向に直線を引き、直線が横切る気泡の弦の長さtを平均した。写真の倍率をMとして、下記式に代入して平均気泡径dを求めた。
d=t/(0.616×M)
(3)比重
水中置換法により、発泡体シートの比重を測定した。
(4)発泡倍率
水中置換法により測定された発泡体シートの比重(ρf)と発泡前の樹脂の比重(ρs)との比ρs/ρfとして算出した。
(5)反射率
0.8mm厚のサンプル及び0.8mm厚のサンプルから0.3mm厚に削り出して得られたサンプルの光線透過率を測定した。各サンプルを分光光度計(日立ハイテク社製U−4100)にて分光スリット4nmの条件にて光線波長550nmでの分光全反射率の測定を行った。リファレンスは酸化アルミニウム白色板(210−0740:(株)日立ハイテクフィールディング製)を使用し、測定値はリファレンスに対する相対値とした。
(6)結晶性
各実施例及び比較例に記載の樹脂について、示差走査熱量計(DSC)を用いて、融解温度以上に加熱した後、10℃/minで降温し、その際測定された発熱ピーク(結晶化ピーク)の熱量を測定した。DSCとしては島津製作所製DSC60A(商品名)を用いた。
【0022】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(商品名:NEH2070、ユニチカ製、IV値=0.85、降温結晶化ピーク=35J/g)100質量部に対して溶融型結晶化核剤(商品名:NU−100、新日本理化製)を0.25質量部配合して、二軸押出機で加熱溶融混練した後、得られた樹脂組成物を0.5mm厚×100mm幅×100mm長にシート成形した。この樹脂シートを圧力容器に入れ、17℃で5.5MPaの条件で72時間、炭酸ガスを浸透させた。その後220℃に設定した熱風循環式発泡炉で1分間の加熱発泡を行った。得られたシートの平均気泡径は0.5μmと微細であった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は101%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は101%であった。
【0023】
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレート(商品名:NEH2070、ユニチカ製、IV値=0.85、降温結晶化ピーク=35J/g)100質量部に対して溶融型結晶化核剤(商品名:NU−100、新日本理化製)を0.5質量部配合して、二軸押出機で加熱溶融混練した後、得られた樹脂組成物を0.5mm厚×100mm幅×100mm長にシート成形した。この樹脂シートを圧力容器に入れ、17℃で5.5MPaの条件で72時間、炭酸ガスを浸透させた。その後220℃に設定した熱風循環式発泡炉で1分間の加熱発泡を行った。得られたシートの平均気泡径は0.5μmと微細であった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は101%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は101%であった。
【0024】
(実施例3)
ポリエチレンテレフタレート(商品名:NEH2070、ユニチカ製、IV値=0.85、降温結晶化ピーク=35J/g)100質量部に対して溶融型結晶化核剤(商品名:NU−100、新日本理化製)を1.0質量部配合して、二軸押出機で加熱溶融混練した後、得られた樹脂組成物を0.5mm厚×100mm幅×100mm長にシート成形した。この樹脂シートを圧力容器に入れ、17℃で5.5MPaの条件で72時間、炭酸ガスを浸透させた。その後220℃に設定した熱風循環式発泡炉で1分間の加熱発泡を行った。得られたシートの平均気泡径は0.5μmと微細であった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は101%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は101%であった。
【0025】
(実施例4)
ポリエチレンテレフタレート(商品名:NEH2070、ユニチカ製、IV値=0.85、降温結晶化ピーク=35J/g)100質量部に対して溶融型結晶化核剤(商品名:NU−100、新日本理化製)を1.5質量部配合して、二軸押出機で加熱溶融混練した後、得られた樹脂組成物を0.5mm厚×100mm幅×100mm長にシート成形した。この樹脂シートを圧力容器に入れ、17℃で5.5MPaの条件で72時間、炭酸ガスを浸透させた。その後220℃に設定した熱風循環式発泡炉で1分間の加熱発泡を行った。得られたシートの平均気泡径は0.5μmと微細であった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は101%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は101%であった。
【0026】
(実施例5)
ポリエチレンテレフタレート(商品名:NEH2070、ユニチカ製、IV値=0.85、降温結晶化ピーク=35J/g)100質量部に対して溶融型結晶化核剤(商品名:TF1、新日本理化製)を1.0質量部配合して、二軸押出機で加熱溶融混練した後、得られた樹脂組成物を0.5mm厚×100mm幅×100mm長にシート成形した。この樹脂シートを圧力容器に入れ、17℃で5.5MPaの条件で72時間、炭酸ガスを浸透させた。その後220℃に設定した熱風循環式発泡炉で1分間の加熱発泡を行った。得られたシートの平均気泡径は0.5μmと微細であった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は100%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は100%であった。
【0027】
(実施例6)
ポリエチレンテレフタレート(商品名:NEH2070、ユニチカ製、IV値=0.85、降温結晶化ピーク=35J/g)100質量部に対して溶融型結晶化核剤(商品名:NU−100、新日本理化製)を0.1質量部配合して、二軸押出機で加熱溶融混練した後、得られた樹脂組成物を0.5mm厚×100mm幅×100mm長にシート成形した。この樹脂シートを圧力容器に入れ、17℃で5.5MPaの条件で72時間、炭酸ガスを浸透させた。その後220℃に設定した熱風循環式発泡炉で1分間の加熱発泡を行った。得られたシートの平均気泡径は0.5μmと微細であった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は101%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は101%であった。
【0028】
(実施例7)
ポリエチレンテレフタレート(商品名:NEH2070、ユニチカ製、IV値=0.85、降温結晶化ピーク=35J/g)100質量部に対して溶融型結晶化核剤(商品名:NU−100、新日本理化製)を2.0質量部配合して、二軸押出機で加熱溶融混練した後、得られた樹脂組成物を0.5mm厚×100mm幅×100mm長にシート成形した。この樹脂シートを圧力容器に入れ、17℃で5.5MPaの条件で72時間、炭酸ガスを浸透させた。その後220℃に設定した熱風循環式発泡炉で1分間の加熱発泡を行った。得られたシートの平均気泡径は0.5μmと微細であった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は100%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は100%であった。
【0029】
(比較例)
以下の比較例において、従来の発泡核剤であるポリエステルエラストマー(比較例1)、変性SEBS(変性スチレン−ブチレン−スチレン共重合体)(比較例2)、変性PE(比較例3)を用いた。これらはいずれも結晶性熱可塑性樹脂(A)を溶融させると同時に溶融するが、樹脂組成物と降温固化時もしくはガス含浸時に結晶化しないものである。
【0030】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレート(商品名:SA1206、ユニチカ製、IV値=1.05、発熱ピークの熱量:35J/g)100質量部に対してポリエステル系エラストマー(商品名:ハイトレル2551、東レ製)を2.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。得られたシートの平均気泡径は1.0μmを超えていた。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は101%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は100%であった。
【0031】
(比較例2)
比較例1のポリエチレンテレフタレートに変性SEBS(商品名:ダイナロン8630P、JSR製)を1.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。得られたシートの平均気泡径は1.6μmであった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は100%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は98%であった。
【0032】
(比較例3)
比較例1のポリエチレンテレフタレートに変性PE(商品名:ボンドファーストE、東洋紡製)を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。得られたシートの平均気泡径は3.0μmであった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は99%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は97%であった。
【0033】
(比較例4)
ポリエチレンテレフタレート(商品名:NEH2070、ユニチカ製、IV値=0.85、降温結晶化ピーク=35J/g)100質量部に対して溶融型結晶化核剤(商品名:NU−100、新日本理化製)を0.05質量部配合して、二軸押出機で加熱溶融混練した後、得られた樹脂組成物を0.5mm厚×100mm幅×100mm長にシート成形した。この樹脂シートを圧力容器に入れ、17℃で5.5MPaの条件で72時間、炭酸ガスを浸透させた。その後220℃に設定した熱風循環式発泡炉で1分間の加熱発泡を行った。得られたシートの平均気泡径は10μmと微細であった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は96%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は89%であった。
【0034】
(比較例5)
ポリエチレンテレフタレート(商品名:J125S、三井化学製、IV値=0.77、降温結晶化ピーク=35J/g)100質量部に対して溶融型結晶化核剤(商品名:NU−100、新日本理化製)を3.0質量部配合して、二軸押出機で加熱溶融混練した後、得られた樹脂組成物を0.5mm厚×100mm幅×100mm長にシート成形した。この樹脂シートを圧力容器に入れ、17℃で5.5MPaの条件で72時間、炭酸ガスを浸透させた。その後220℃に設定した熱風循環式発泡炉で1分間の加熱発泡を行った。得られたシートの平均気泡径は20μmと微細であった。発泡体の厚さは0.8mmであった。発泡体シートの全反射率は94%であった。厚さ0.3mmに削り出したシートの全反射率は89%であった。
【0035】
【表1】
【0036】
本発明をその実施例とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0037】
本願は、2010年8月27日に日本国で特許出願された特願2010−191038に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。