特許第5697061号(P5697061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧

特許5697061半導体ウェハ加工用粘着テープおよび半導体ウェハの加工方法
<>
  • 特許5697061-半導体ウェハ加工用粘着テープおよび半導体ウェハの加工方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5697061
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】半導体ウェハ加工用粘着テープおよび半導体ウェハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20150319BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150319BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20150319BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   H01L21/304 622J
   C09J7/02 Z
   C09J201/00
   H01L21/304 631
   B32B27/00 M
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-61011(P2014-61011)
(22)【出願日】2014年3月24日
【審査請求日】2014年6月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐
(72)【発明者】
【氏名】岡 祥文
(72)【発明者】
【氏名】内山 具朗
【審査官】 間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−011273(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/141251(WO,A1)
【文献】 特開2011−054940(JP,A)
【文献】 特開2000−017239(JP,A)
【文献】 特開2013−087131(JP,A)
【文献】 特開2013−201263(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0001283(US,A1)
【文献】 特許第5480415(JP,B1)
【文献】 特開2014−055206(JP,A)
【文献】 特開2012−214545(JP,A)
【文献】 特開2013−091731(JP,A)
【文献】 特開2013−181088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
80μm以上の高さの凹凸を表面に有する半導体ウェハに対して貼合し、該半導体ウェハの裏面を研削する工程で用いられる半導体ウェハ加工用粘着テープであって、
紫外線硬化型樹脂からなる基材フィルム上に粘着剤層を有し、該粘着剤層の厚みが、前記半導体ウェハ表面の凹凸高さの30%〜90%であり、かつ、
前記粘着剤層の厚みが前記半導体ウェハ加工用粘着テープ全体の厚みの25%以下であり、
前記半導体ウェハ加工用粘着テープの厚み方向への圧縮応力付与時の応力減少率が、50Nの圧縮応力付加時の変位量を測定し、圧縮応力50N到達時の応力値に対する、圧縮応力50N到達から180秒後の応力値の比から算出して、40%以上であることを特徴とする半導体ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記基材フィルムが、(メタ)アクリル系樹脂とウレタンアクリレート系オリゴマーを紫外線硬化させてなることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項3】
前記基材フィルムの厚みが、200〜350μmであって、該粘着剤層の粘着剤が、紫外線硬化型であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項4】
前記半導体ウェハ表面の凹凸が電極であり、半導体ウェハ貼合前の半導体ウェハ加工用粘着テープと表面電極を除く半導体ウェハ厚みとの合計値をA、半導体ウェハ貼合後の半導体ウェハ加工用粘着テープおよび半導体ウェハの積層体の合計の厚みをBとした場合にA/Bが0.95以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項5】
80μm以上の高さの凹凸を表面に有する半導体ウェハに対して貼合する半導体ウェハ加工用粘着テープを使用する半導体ウェハの加工方法であって、
前記半導体ウェハ加工用粘着テープが、紫外線硬化型樹脂からなる基材フィルム上に粘着剤層を有し、該粘着剤層の厚みが、半導体ウェハ加工用粘着テープ全体の厚みの25%以下であり、
前記粘着剤層の厚みが、前記半導体ウェハ表面の凹凸高さの30%〜90%であって、
前記半導体ウェハ加工用粘着テープの厚み方向への圧縮応力付与時の応力減少率が、50Nの圧縮応力付加時の変位量を測定し、圧縮応力50N到達時の応力値に対する、圧縮応力50N到達から180秒後の応力値の比から算出して、40%以上であり、
前記半導体ウェハに前記半導体ウェハ加工用粘着テープを貼合する工程を含むことを特徴とする半導体ウェハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ等の半導体装置を製造する際、半導体ウェハの加工のために使用される半導体ウェハ加工用粘着テープであって、半導体ウェハ等を表面保護したり、半導体ウェハ等を固定しバックグラインドするために使用される半導体ウェハ加工用粘着テープおよび半導体ウェハの加工方法に関するものである。
より詳しくは、特に表面に10μm以上の電極などの突起を有する半導体ウェハ表面にテープ貼合するプロセスからバックグラインド工程を経て、半導体ウェハ表面から電極への糊残り、電極の脱落等がなく半導体ウェハ等を剥離可能にし得る半導体ウェハ加工用粘着テープおよび半導体ウェハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハなどを半導体チップに加工し、電子機器に実装するに至る工程は、例えば、半導体ウェハのパターン表面に半導体ウェハ表面保護テープを貼り付ける工程、半導体ウェハの裏面を研削し、厚みを薄くする工程、ダイシングテープへ前記工程で研削し、厚みを薄くした半導体ウェハをマウントする工程、半導体ウェハから前記の半導体ウェハ加工用粘着テープを剥離する工程、ダイシングにより半導体ウェハを分割する工程、分割された半導体チップをリードフレームへ接合するダイボンディング工程を経た後、半導体チップを外部保護のために樹脂で封止するモールド工程等により構成されている。
【0003】
半導体ウェハ加工用粘着テープには大きく分けて2種が存在する。放射線照射後に粘着力が著しく低下し、剥離を容易にする放射線硬化型と、ウェハ裏面研削加工中および剥離時で粘着力に変化のない、すなわち放射線によって粘着力が変化しない、感圧型である。
これらの半導体ウェハ加工用粘着テープとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン基材フィルム上に、(メタ)アクリルポリマーを主成分とした粘着剤層が設けられたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、半導体ウェハ表面に50μm以上の高さの電極が存在する場合、導体ウェハに加工用粘着テープを貼合する工程を40℃〜70℃程度に加熱しながら行う場合がある。また、剥離時も同様に剥離を軽くするために加熱しながら剥離する場合がある。
【0004】
半導体ウェハ表面のパターンには、各種の電子回路や電極、それらを保護するポリイミドなどの保護膜、さらに半導体ウェハをチップに個片化するダイシング工程時にブレードが切り込む溝であるスクライブラインが存在するため、半導体ウェハ表面は平滑ではなく数μm〜数十μmの段差・凹凸が存在している。ここで、半導体ウェハ裏面を研削加工し、厚みを薄くしたウェハをダイシングした後、ピックアップしてチップ表面電極を介して接合する方式をフリップチップ接合と呼ぶ。この接合方式においては電極部の凹凸が非常に大きく10μm〜300μm程度の高さを有している。
【0005】
このような段差は半導体ウェハやデバイスの種類によって様々であるが、半導体ウェハ加工用粘着テープを貼合することで半導体ウェハ表面の段差に密着して隙間を埋めることが期待される。しかし、半導体ウェハの段差が大きい場合、特に電極高さが非常に高い場合や、粘着剤弾性率が高い場合は半導体ウェハ表面への追従性が不足する。これに起因してバックグラインド工程時に研削水が半導体ウェハと半導体ウェハ加工用粘着テープの隙間に浸入するシーページと呼ばれる現象が発生する。また、電極を有したフリップチップ接合を目的とする半導体ウェハにおいては特に、電極を完全にテープで埋めることができない場合、裏面研削加工時に気泡が残存した箇所を起点にして割れが発生したり、加工中に気泡が半導体ウェハ中心部に集まり、該当箇所のシリコンの厚みが薄くなり、ヘソと呼ばれる現象が発生する。また、各電極部で局所的に半導体ウェハ厚みが異なることにより、ディンプルと呼ばれる凹凸を生じる恐れがある。
【0006】
このように、シーページが発生することで、半導体ウェハ加工用粘着テープが半導体ウェハから剥離し、その箇所を起点として半導体ウェハにクラックが発生し、破損に繋がったり、浸入水による半導体ウェハ表面の汚染や糊の付着が発生し、歩留りを大きく悪化させる原因となる。
【0007】
シーページの発生に対しては、粘着剤層を厚くしたり、粘着剤層の弾性率を下げるといった方法で半導体ウェハ表面への密着性を向上させる方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。また、粘着力を高めることでも同様の効果が期待される。
【0008】
しかし、上記のような方法では、半導体ウェハパターン表面の電極の高さが10μm以上と大きい場合は完全に密着せず、上記のシーページの問題が解決できない。また、粘着剤と半導体ウェハパターン表面電極との間に空隙が存在してしまう場合、空隙に酸素が介在することで紫外線照射時に酸素による硬化阻害を生じ、半導体ウェハ表面に粘着剤の一部が残ってしまう糊残りといわれる現象が発生しやすいことなどの問題がある。糊残りが発生する場合、後工程でのワイヤーボンディングや電気的接続において不具合を引き起こす原因となり得る。
【0009】
ところで、半導体ウェハの薄膜化が進む近年、特に半導体メモリー用途では、半導体ウェハの厚さを100μm以下まで薄くする、薄膜研削が一般的である。デバイスウェハは、裏面研削により所定の厚みまで薄膜化された後、ダイシング工程にてチップ化され、複数のチップを積層、基板・チップ間でのワイヤー接続された後に樹脂で封止され製品となる。
一方、接着剤として、従来はペースト状の樹脂が半導体ウェハ裏面に塗工されていたが、チップの薄膜化・小チップ化や工程簡略化のため、あらかじめ基材上に粘着剤と接着剤(ダイボンド用の接着シート)が積層されたダイシングダイボンドシートが半導体ウェハ裏面(研削面)に貼合されてダイシング工程で半導体ウェハと一括して切断するプロセスが一般的となっている(例えば、特許文献3参照)。この方法では、均一な厚さの接着剤がチップと同サイズに切断されるため、接着剤塗布などの工程が不要であり、また従来のダイシングテープと同様の装置が使用できるため、作業性が良好である。
【0010】
特に電気的な接続を目的とした10μm以上の高さの電極を有する半導体ウェハの場合、絶縁層として塗布されるポリイミドコーティング層が非常に厚く、ポリイミド樹脂層加熱硬化後の残留応力も大きいことから、半導体ウェハの薄化後、反りが大きく、反る応力も強い。
【0011】
ここで、ダイシングダイボンドシート貼合の際は、半導体ウェハ表面に半導体ウェハ加工用粘着テープが貼合されたままチャックテーブルに吸着された状態であり、ダイシングダイボンドシートを貼合後に半導体ウェハ加工用粘着テープが剥離される。このダイシングダイボンドシートを半導体ウェハに密着させるため、貼合時に加熱が必要であるが、近年ではより高温(〜80℃)での加熱が要求される場合がある。このため、半導体ウェハ加工用粘着テープ背面の基材フィルム層の軟化点、融点が低い場合はチャックテーブルで溶融固着してしまうリスクが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−8010号公報
【特許文献2】特開2002−53819号公報
【特許文献3】特開2007−53325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題点を解決し、半導体ウェハの加工、さらに詳しくはシリコンウェハなどの裏面研削工程、テープ剥離工程を経た後に、半導体ウェハ裏面に発生するディンプルや表面汚染(主としてシーページによる)を低減し、半導体ウェハ表面の凹凸の高さの高い半導体ウェハに対しても密着性に優れ、ウェハ薄膜研削が可能な半導体ウェハ加工用粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、基材フィルム上に粘着層を設けた粘着テープにおいて、半導体ウェハ表面の凹凸高さと粘着剤層の厚みの関係、テープの外部応力に対する緩和性が重要であることを見出し、さらに検討することで、半導体ウェハ裏面研削時のシーページの発生、とりわけ薄膜研削の場合、裏面研削時のディンプル発生および半導体ウェハ割れを著しく低減できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
【0015】
すなわち、上記課題は以下の手段により達成された。
(1)80μm以上の高さの凹凸を表面に有する半導体ウェハに対して貼合し、該半導体ウェハの裏面を研削する工程で用いられる半導体ウェハ加工用粘着テープであって、
紫外線硬化型樹脂からなる基材フィルム上に粘着剤層を有し、該粘着剤層の厚みが、前記半導体ウェハ表面の凹凸高さの30%〜90%であり、かつ、
前記粘着剤層の厚みが前記半導体ウェハ加工用粘着テープ全体の厚みの25%以下であり、
前記半導体ウェハ加工用粘着テープの厚み方向への圧縮応力付与時の応力減少率が、50Nの圧縮応力付加時の変位量を測定し、圧縮応力50N到達時の応力値に対する、圧縮応力50N到達から180秒後の応力値の比から算出して、40%以上であることを特徴とする半導体ウェハ加工用粘着テープ。
(2)前記基材フィルムが、(メタ)アクリル系樹脂とウレタンアクリレート系オリゴマーを紫外線硬化させてなることを特徴とする(1)に記載の半導体ウェハ加工用粘着テープ。
(3)前記基材フィルムの厚みが、200〜350μmであって、該粘着剤層の粘着剤が、紫外線硬化型であることを特徴とする(1)または(2)に記載の半導体ウェハ加工用粘着テープ。
)前記半導体ウェハ表面の凹凸が電極であり、半導体ウェハ貼合前の半導体ウェハ加工用粘着テープと表面電極を除く半導体ウェハ厚みとの合計値をA、半導体ウェハ貼合後の半導体ウェハ加工用粘着テープおよび半導体ウェハの積層体の合計の厚みをBとした場合にA/Bが0.95以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の半導体ウェハ加工用粘着テープ。
(5)80μm以上の高さの凹凸を表面に有する半導体ウェハに対して貼合する半導体ウェハ加工用粘着テープを使用する半導体ウェハの加工方法であって、
前記半導体ウェハ加工用粘着テープが、紫外線硬化型樹脂からなる基材フィルム上に粘着剤層を有し、該粘着剤層の厚みが、半導体ウェハ加工用粘着テープ全体の厚みの25%以下であり、
前記粘着剤層の厚みが、前記半導体ウェハ表面の凹凸高さの30%〜90%であって、
前記半導体ウェハ加工用粘着テープの厚み方向への圧縮応力付与時の応力減少率が、50Nの圧縮応力付加時の変位量を測定し、圧縮応力50N到達時の応力値に対する、圧縮応力50N到達から180秒後の応力値の比から算出して、40%以上であり、
前記半導体ウェハに前記半導体ウェハ加工用粘着テープを貼合する工程を含むことを特徴とする半導体ウェハの加工方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の半導体ウェハ加工用粘着テープは、厚みの薄い半導体ウェハの加工、さらに詳しくは表面に電気的接続を目的とした10μm以上、特に80μmを超えるような高さの電極を有したシリコンウェハ等の裏面研削工程において、バックグラインド(BG)テープラミネート、半導体ウェハ裏面研削加工において半導体ウェハ表面への密着性を確保しつつ、しかも外部応力に対する緩和性に優れ、薄膜研削処理をディンプル・割れなく実施することが可能であり、その後の半導体ウェハ加工用粘着テープ剥離工程において問題なく剥離できる半導体ウェハ加工用粘着テープおよび半導体ウェハの加工方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の好ましい一実施の形態について、半導体ウェハパターン表面に本発明の半導体ウェハ加工用粘着テープが貼合された状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の半導体ウェハ加工用粘着テープ10は、基材フィルム1上に、粘着剤層3を有し、好ましくは、基材フィルム1と粘着剤層3の間にアンカー層2を有する。
なお、図1では、半導体ウェハのシリコン(Si)層5上の半導体ウェハのパターン層(配線・電極など)4側に半導体ウェハ加工用粘着テープを貼合した状態を示している。
【0019】
<基材フィルム>
材フィルムはポリオレフィン系樹脂からなるフィルムまたは紫外線硬化型樹脂を硬化させたフィルムが好ましく、本発明では、紫外線硬化型樹脂からなる
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)や、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)や(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、なかでも、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型樹脂としては、紫外線照射で硬化する官能基として、例えば、エチレン性不飽和基〔(メタ)アクリロイル基、ビニル基等〕が挙げられ、具体的には、例えば、ウレタンアクリレート系オリゴマーが分子内にもつ光重合性の二重結合が挙げられる。
本発明では、(メタ)アクリル系樹脂に、紫外線硬化型樹脂(硬化剤)のウレタンアクリレートを加えて、紫外線硬化させた樹脂が好ましい。
【0020】
なお、紫外線硬化型樹脂の硬化剤の基本骨格としては、ポリオール化合物とイソシアネート化合物とアクリレートあるいはメタクリレートからなるウレタンアクリレート系オリゴマーに加え、例えば、エポキシアクリレートなどが挙げられ、このうち、ウレタンアクリレートが好ましい。
なお、ウレタンアクリレート系オリゴマーは、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0021】
【化1】
【0022】
一般式(I)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは多価イソシアネートの部分構造を表し、Pはポリオールから得られる2価の基を表す。
【0023】
ここで、多価イソシアネートの部分構造は、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応で得られる構造である。
【0024】
本発明では、分子中に、(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ基を2〜10個有するものが好ましく、2〜6個がより好ましく、3〜5個がさらに好ましい。
【0025】
これらの紫外線硬化型樹脂に用いるウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、日本合成化学から紫光シリーズとして、市販されている。
【0026】
(メタ)アクリル系樹脂は、後述の粘着剤で使用される樹脂が好ましい。
紫外線硬化型樹脂(硬化剤)のウレタンアクリレートの配合量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、10〜150質量部が好ましく、30〜120質量部がより好ましく、50〜100質量部がさらに好ましい。
【0027】
基材フィルムは、半導体ウェハの裏面研削加工や裏面研削加工を行うときの衝撃から保護するとともに、半導体ウェハの反りを抑制することができる。特に基材フィルムは、半導体ウェハの裏面研削加工や裏面研磨加工時の水洗浄などに対する耐水性を有するとともに、半導体ウェハ上のポリイミド等の絶縁膜中の残留応力に起因する半導体ウェハの反り応力に対して、矯正力を有することである。
【0028】
基材フィルムの厚さは、特に制限するものではないが、好ましくは100〜350μmであり、より好ましくは250〜300μmである。
基材フィルムの製造方法は特に限定されない。ポリオレフィン系樹脂の場合、射出・押出・インフレーション・2軸延伸など従来の方法を用いることができる。紫外線硬化型樹脂をフィルムとして用いる場合、原料をTダイなどにより塗膜形成後、インライン紫外線(UV)照射設備により架橋・フィルム化する方法などを用いることができる。
【0029】
<粘着剤層>
本発明においては、基材フィルム上に粘着剤層を少なくとも1層有するが、粘着剤層と基材フィルムとの密着性が十分確保できない場合においては、アンカー層として感圧型粘着剤を基材フィルム上に塗布することもでき、基材フィルムと粘着剤層との間にアンカー層を設けることもできる。
【0030】
粘着剤層の厚みは適宜に設定してよいが、半導体ウェハ表面の凹凸高さに対して30%〜90%であって、50μm〜400μmであることが好ましく、250μm〜400μmであることがより好ましい。
【0031】
これに加えて、粘着剤層の厚みは、本発明では、半導体ウェハ加工用粘着テープ全体の厚みの25%以下であり、20%以下が好ましい。なお、粘着剤層の厚みの下限は特に制限されるものではないが、5%以上が好ましい。
【0032】
また、本発明における半導体ウェハ加工用粘着テープの厚み方向へ圧縮応力を加えた場合の応力減少率は40%以上である。なお、応力減少率に関しては、以後に詳細に説明する。
【0033】
本発明の粘着剤や基材フィルムは紫外線硬化型が好ましく、ともに紫外線硬化型であることがより好ましい。
このような粘着剤は、放射線硬化型であれば特に制限されるものではなく、従来のものを用いることができるが、好ましくは、(メタ)アクリル樹脂(以降、アクリル樹脂とも称す。)である。
【0034】
(粘着剤もしくは粘着剤層)
粘着剤もしくは粘着剤からなる粘着剤層の樹脂としては、上記のように(メタ)アクリル樹脂が好ましく、このようなアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを構成成分とする単独重合体や、(メタ)アクリル酸エステルを構成成分として有する共重合体を挙げることができる。アクリル酸エステルを構成成分として含む重合体を構成する単量体成分としては、例えば、メチル、エチル、n−プルピル、イソプルピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、テトラデシル、ステアリル、オクタデシルおよびドデシルなどの炭素数30以下、好ましくは炭素数4〜18の直鎖または分岐のアルキル基を有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステルとの共重合成分としては、以下のモノマー成分を含むことができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸およびクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸などの酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルおよび(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフオリン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。これらモノマー成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、(メタ)アクリル樹脂としては、構成成分として、以下の多官能性モノマーを含むことができる。例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら多官能性単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルのうち、好ましくは、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど、およびこれらを組み合わせた共重合体を挙げることができる。また上記のアクリル酸エステルを例えばメタクリル酸エステルに代えたものなどのアクリル系ポリマーと硬化剤を用いてなるものを使用することができる。
【0038】
(光重合開始剤)
粘着剤層中に光重合性化合物および光重合開始剤を含ませることによって、紫外線等の放射線を照射することにより硬化し、粘着剤の粘着力を低下させることができる。
【0039】
光重合開始剤としては、特開2007−146104号公報または特開2004−186429号公報に記載の光重合開始剤を使用することができる。イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を併用することができる。
【0040】
光重合性化合物の含有量は上記樹脂成分100質量部に対し、50〜150質量部が好ましく、光重合開始剤の含有量は上記樹脂成分100質量部に対し、1〜5質量部が好ましい。
【0041】
(硬化剤)
硬化剤(架橋剤とも称す)としては、特開2007−146104号公報に記載の硬化剤を使用することができる。例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。硬化剤の含有量は、所望の粘着力に応じて調整すればよく、上記のような樹脂成分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5質量部である。
【0042】
(光重合性化合物)
光重合性化合物としては、例えば特開昭60−196956号公報および特開昭60−223139号公報に開示されているような光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合(エチレン性二重結合)を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられる。
具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートなどが用いられる。
【0043】
(重合性基を有する重合体)
本発明では、粘着剤層の粘着剤として、重合体中に光重合性炭素−炭素二重結合(エチレン性二重結合)を有する重合体、光重合開始剤および硬化剤を含む樹脂組成物を用いてなる光重合性粘着剤を用いることができる。重合体中に炭素−炭素二重結合を有する重合体としては、例えば、側鎖に、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基を有するものが挙げられ、好ましくは側鎖に炭素原子数が4〜12、さらに好ましくは炭素原子数8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの単量体や共重合性改質単量体を、1種または2種以上、任意の方法で単独重合または共重合した(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
このようにして形成される放射線硬化型粘着剤層は、放射線、好ましくは紫外線を照射することにより、粘着力を初期の値から大きく低下させて、容易に被着体から粘着テープを剥離することができる。
【0044】
本発明において放射線硬化型粘着剤層の厚さは、80μm以上の電極高さをもつ半導体ウェハに対して、30%〜90%であることが好ましく、40%〜80%であることがより好ましい。
【0045】
(アンカー層)
基材フィルム上に粘着剤層を形成するためには、基材フィルムの少なくとも片面に、少なくとも1種類の粘着剤を任意の方法で塗布もしくは転写すればよいが、本発明では、基材フィルムと粘着剤層の間に、アンカー層(プライマー層とも称す)などの中間層を設けてもよい。本発明では、アンカー層を設けるのが好ましい。
アンカー層を形成する樹脂としては、イソシアネート硬化系粘着剤やエポキシ硬化系粘着剤などが挙げられ、このうち、イソシアネート硬化系粘着剤が好ましい。
【0046】
アンカー層の厚みは、0.5〜10μmが好ましく、3〜5μmがより好ましい。
【0047】
また、必要に応じて、実用に供するまでの間、放射線硬化型粘着剤層を保護するため通常セパレータとして用いられる合成樹脂フィルムを粘着剤層側に貼付しておいてもよい。
セパレータは、シリコーン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられる。また必要に応じて、シリコーン離型処理をしないポリプロピレンフィルムなども用いられる。
【0048】
<半導体ウェハ加工用粘着テープの圧縮時変形>
本発明の半導体ウェハ加工用粘着テープは、25℃50Nの応力付加後で3分後の応力減少率は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、本発明では、40%以上である。応力減少率の上限は、特に限定されるものではないが、80%以下が現実的である。
【0049】
応力減少を上記のような好ましい範囲に調整するには、具体的には、粘着剤層の弾性率G’の調整や粘着剤層の厚さ、基材フィルムの厚さを調整することで調整できる。
【0050】
半導体ウェハ加工用粘着テープの厚さ方向の圧縮時応力減少率は、以下のようにして測定できる。
半導体ウェハ加工用粘着テープを200mm×200mm程度の大きさに5枚切断し、基材フィルムと粘着剤層との間で積層し、その積層されたものを25mm×55mmに切断し、これを試験片とする。この試験片の粘着剤層を上にして、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、25℃、速度1.0mm/分で圧縮応力を印加する。圧縮応力付与時の応力減少率は、圧縮応力50N到達時の応力値に対する、圧縮応力50N到達から180秒後の応力値の比で求めることができる。
【0051】
<半導体ウェハ加工用粘着テープと半導体ウェハ厚みの関係>
本発明では、半導体ウェハ貼合前の半導体ウェハ加工用粘着テープと表面電極を除く半導体ウェハ厚みとの合計値をAとし、半導体ウェハ貼合後の半導体ウェハ加工用粘着テープおよび半導体ウェハの積層体の合計の厚みをBとした場合、A/Bの値が、0.95以上であることが好ましく、0.99であることが特に好ましい。この値は、貼合後のテープの浮きが評価可能であり、浮きの発生が多いとA/Bの値が小さくなる。
せたでも評価し、この値が1に近づくにつれて浮きの発生もなくなる。
【0052】
<半導体ウェハ加工用粘着テープの用途>
本発明の半導体ウェハ加工用粘着テープは、半導体ウェハ表面が80μm以上の突起を有する半導体ウェハに使用することで、本発明の効果を効果的に奏することができる。半導体ウェハ表面の凹凸の高さは、100μm以上でも好ましく、120μmでも好ましく適用できる。なお、半導体ウェハ表面の凹凸の高さの適用できる上限は、現実的には、300μm以下である。
【0053】
本発明の半導体ウェハ加工用粘着テープは、半導体ウェハをバックグラインドする際にパターン表面を保護する用途で用いることができ、電気的接合を目的とした電極がついたウェハ表面においても密着性に優れ、研削加工時のダスト侵入や割れ、ディンプルの発生が抑止できることから研削加工に用いるのに好適である。
【0054】
<半導体ウェハの加工方法>
本発明の半導体ウェハの加工方法は、80μm以上の高さの凹凸を表面に有する半導体ウェハに対して、本発明の半導体ウェハ加工用粘着テープを貼合せる工程を有する。
半導体ウェハ加工用粘着テープが有する粘着剤層の厚みは、半導体ウェハ表面の凹凸高さの30%〜90%である。
半導体ウェハの加工方法で使用する本発明の半導体ウェハ加工用粘着テープは、先に説明した半導体ウェハ加工用粘着テープの好ましい範囲のものが適用される。
好ましい
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
2−エチルヘキシルアクリレート(78mol%)、2−ヒドロキシルエチルアクリレート(21mol%)、メタクリル酸(1mol%)からなるアクリル系共重合体を調整し、その後、ポリマー側鎖である2−ヒドロキシエチルアクリレートから得られた繰返し単位中のヒドロキシ基と2−(メタクリロイルオキシ)エチルイソシアネートとを反応させ、該ポリマー側鎖に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用するメタクリロイル基を導入したアクリル系共重合体を得た。得られたアクリル系共重合体に、該共重合体の固形分100質量部に対して、3官能の紫外線硬化型のウレタンアクリレート系オリゴマー(日本合成化学社製、(商品名)紫光シリーズのUV−7550B 75質量部、光重合開始剤((商品名)、BASFジャパン社製、イルガキュア184)5.0質量部を配合し、粘着組成物を得た。
25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ上に(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする下記粘着剤aを塗布し、120℃で2分間乾燥させて厚み40μmの粘着剤層を設けた。この接着剤層面上に、上記粘着剤組成物を紫外線によって硬化した厚み270μmの基材フィルムを貼り合わせることで、半導体ウェハ加工用粘着テープを作製した。
【0057】
なお、粘着剤aは、ブチルアクリレート(70mol%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(29mol%)、メタクリル酸(1mol%)からなる重量平均分子量80万の(メタ)アクリル系共重合体を調整した後、ポリマー側鎖である2−ヒドロキシエチルアクリレートから得られた繰返し単位中のヒドロキシ基と、2−(メタクリロイルオキシ)エチルイソシアネートとを反応させ、該ポリマー側鎖に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用するメタクリロイル基を導入したアクリル系共重合体を得た。得られたアクリル系共重合体100質量部に対して、コロネートL(日本ポリウレタン工業株式会社製)を2.0質量部、日本チバガイギー社製:イルガキュア184(BASFジャパン株式会社製)を5.0質量部配合することで得た。
【0058】
<実施例2>
25μmのポリエチレンテレフタレートセパレータ上に前記粘着剤aを塗布し、120℃で2分間乾燥させて厚み60μmの粘着剤層を設け、厚み270μmの前記ウレタンアクリレートからなる基材フィルム上に粘着剤層面で貼り合わせることで、半導体ウェハ加工用粘着テープを作製した。
【0059】
<実施例
25μmのポリエチレンテレフタレートセパレータ上に前記粘着剤aを塗布し、120℃で2分間乾燥させて厚み60μmの粘着剤層を設け、厚み200μmのウレタンアクリレートからなる基材フィルム上に粘着剤層面で貼り合わせることで、半導体ウェハ加工用粘着テープを作製した。
<実施例
25μmのポリエチレンテレフタレートセパレータ上に前記粘着剤aを塗布し、120℃で2分間乾燥させて厚み60μmの粘着剤層を設け、厚み350μmの前記ウレタンアクリレートからなる基材フィルム上に粘着剤層面で貼り合わせることで、半導体ウェハ加工用粘着テープを作製した。
【0060】
<比較例1>
2−エチルヘキシルアクリレート69質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート29質量部およびメタクリル酸2質量部からなるアクリル系共重合体を調製した後、ポリマー側鎖である2−ヒドロキシエチルアクリレートから得られた繰返し単位中のヒドロキシ基と、2−(メタクリロイルオキシ)エチルイソシアネートとを反応させて、該ポリマー側鎖に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用するメタクリロイル基を導入したアクリル系共重合体を得た。得られたアクリル系共重合体に、該共重合体の固形分100質量部に対して、アダクト系イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製)を2.5質量部配合し、塗工し易い粘度に調整するため、酢酸エチルで粘度調整を行い、粘着剤組成物を得た。
25μmのポリエチレンテレフタレートセパレータ上に上記粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、厚みが165μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで積層し、この積層基材フィルム上に、厚み40μmの粘着剤層を設けて半導体ウェハ加工用粘着テープを作製した。
【0061】
<比較例2>
25μmのポリエチレンテレフタレートセパレータ上に前記粘着剤aを塗布し、120℃で2分間乾燥させて厚み60μmの粘着剤層を設け、厚み165μm、酢酸ビニル含有量10質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム上に貼り合わせることで半導体ウェハ加工用粘着テープを作製した。
【0062】
<比較例3>
2−エチルヘキシルアクリレート69質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート29質量部およびメタクリル酸2質量部からなるアクリル系共重合体を調整した後、ポリマー側鎖である2−ヒドロキシエチルアクリレートから得られた繰返し単位中のヒドロキシ基と、2−(メタクリロイルオキシ)エチルイソシアネートと反応させて、該ポリマー側鎖に、放射線硬化性の炭素−炭素二重結合として作用するメタクリロイル基を導入したアクリル系共重合体を得た。得られたアクリル系共重合体に、該共重合体の固形分100質量部に対して、アダクト系イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製)を2.5質量部配合し、塗工し易い粘度に調整するため、酢酸エチルで粘度調整を行い、粘着剤組成物を得た。
25μmのポリエチレンテレフタレートセパレータ上に上記粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、ヤング率8.0×10Pa(25℃)で厚みが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製、(商品名)コスモシャインA4100)上に貼り合わせることで積層し、この積層基材フィルム上に、厚み40μmの粘着剤層を設けて半導体ウェハ加工用粘着テープを作製した。
【0063】
[特性評価試験]
実施例1〜、比較例1〜3の半導体ウェハ加工用粘着テープに対して、特性評価試験を下記のように行った。
【0064】
(i)圧縮変時応力の測定
実施例および比較例の半導体ウェハ加工用粘着テープを200mm×200mm程度の大きさに5枚切断し、基材フィルムと粘着剤層との間で積層した。その積層されたものを25mm×55mmに切断し、これを試験片とした。この試験片の粘着剤層を上にして、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、25℃、速度1.0mm/分で圧縮応力を印加した。応力付与前に圧子がサンプルへ接触した部分をゼロ点として、50Nの圧縮応力付加時の変位量を測定値とした。
圧縮応力付与時の応力減少率(表中では、応力減少率と称す)は、圧縮応力50N到達時の応力値に対する、圧縮応力50N到達から180秒後の応力値の比から算出した。
【0065】
(半導体ウェハ加工用粘着テープ貼合)
作製した半導体ウェハ加工用粘着テープの貼合性は、自動ラミネータ(日東電工株式会社製DR−8500III)を用い、貼合ローラー両端の圧力を0.25MPaとして、8インチ(inch)ベアシリコンウェハおよび、120μmボールバンプ付(バンプピッチ250μm)シリコンウェハへ貼合・カットを行った。
【0066】
(ii)電極付き半導体ウェハ密着性試験
高さ120μmの電極付きシリコンウェハへ貼合したものについては、貼合直後から24時間、25℃で放置した後に、半導体ウェハ加工用粘着テープのテープ浮きが発生するかどうかを観察し、以下の基準で評価した。
ここで、テープ浮きが発生を、半導体ウェハ貼合後の半導体ウェハ加工用粘着テープおよび半導体ウェハの積層体の合計の厚みをBとし、半導体ウェハ貼合前の半導体ウェハ加工用粘着テープと表面電極を除く半導体ウェハ厚みとの合計値をAとした場合のA/Bの値でも評価し、この値が1に近づくにつれて浮きの発生もなくなった。
【0067】
評価基準
◎:半導体ウェハ表面に浮きが全く発生しなかった(A/B=0.99以上)
:半導体ウェハ表面の30%未満が浮いた(A/B=0.95以上0.99未満)
△:半導体ウェハ表面の30%以上50%未満が浮いた(A/B=0.80以上0.95未満)
×:半導体ウェハ表面の50%以上が浮いた(A/B=0.80未満)
【0068】
なお、貼合前に半導体ウェハ加工用粘着テープの厚みおよび半導体ウェハ厚み(バンプ部除く)を各々測定しておき、貼合後の全体の厚みを測定し、粘着剤層の厚みの比率を算出した。
【0069】
(iii)装置内搬送テスト
半導体ウェハ裏面研削後の装置内搬送は、株式会社ディスコ製フルオートグラインダDGP8760+ウェハマウンタDFM2700を用いて、吸着エラーが発生しないか、マウンタへの自動搬送が可能かを確認した。吸着エラーが発生しなかったものを○、搬送時に吸着エラーが発生したものを×として評価した。
【0070】
(iv)薄膜研削性
120μm高さ電極付きシリコンウェハを厚み150μmまで裏面研削を行い、以下の評価基準で割れを評価した。
【0071】
評価基準
◎:研削後の半導体ウェハに割れがなかった
○:ウェハエッジ部に1ヶ所のクラックを確認した
△:ウェハエッジ部に2〜3ヶ所のクラックを確認した
×:ウェハエッジ部に4ヶ所以上のクラックを確認した
【0072】
また、ディンプル(微小な凹部)を以下の基準で評価した。
【0073】
評価基準
○:研削後のウェハ裏面にディンプルなし
×:研削後のウェハ裏面にディンプルを確認
【0074】
(v)ダスト侵入(シーページ)の評価
表面の全面に亘って幅50μm、深さ30μmの溝が5mm間隔で形成された直径8インチのシリコンウェハの、溝を形成した面にラミネータ(商品名:DR−8500II、日東精機株式会社製)を用いて半導体ウェハ加工用粘着テープを貼合した。該粘着テープが貼合された半導体ウェハを、グラインダー(商品名:DGP8760、株式会社ディスコ製)で厚み50μmまで裏面研削を行い、研削後の半導体ウェハ加工用粘着ウェハ外周部から溝への切削水の浸入を調査した。
この結果を、以下の基準で評価した。
【0075】
評価基準
○:5回上記調査を繰り返して行い、切削水の侵入が5回とも全く観測されなかった
△:5回上記調査を繰り返して行い、切削水の侵入が少なくとも1回観測された
×:5回上記調査を繰り返して行い、切削水の侵入が5回とも観測された
【0076】
これらの結果を下記の表1、2にまとめて示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1、2に示すように、比較例1〜3では粘着剤層の厚みがテープ全体の25%を超えており、80μm以上の電極を有する半導体ウェハ研削加工において、割れが目立つ結果となった。
これに対して実施例1〜では、粘着剤層の厚みがテープ全体の25%以下であることから、良好な密着性・研削性を示した。
【符号の説明】
【0080】
10 半導体ウェハ加工用粘着テープ
1 基材フィルム
2 アンカー層
3 粘着剤層
4 半導体ウェハのパターン層(配線・電極など)
5 半導体ウェハのシリコン層
【要約】
【課題】
ウェハ表面の凹凸の高さの高い半導体ウェハに対しても密着性に優れ、ウェハ裏面研削時のシーページの発生、とりわけ薄膜研削の場合、裏面研削時のディンプル発生及びウェハ割れを著しく低減できる半導体ウェハ加工用粘着テープ及び半導体ウェハの加工方法を提供する。
【解決手段】
80μm以上の高さの凹凸を表面に有する半導体ウェハに対して貼合し、該半導体ウェハの裏面を研削する工程で用いられる半導体ウェハ加工用粘着テープであって、基材フィルム上に粘着剤層を有し、該粘着剤層の厚みが、前記半導体ウェハ表面の凹凸高さの30〜90%であり、かつ、前記粘着剤層の厚みが前記半導体ウェハ加工用粘着テープ全体の厚みの25%以下である半導体ウェハ加工用粘着テープ及び半導体ウェハの加工方法。
【選択図】図1
図1