(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
端子軸方向の先端側から基端側に向けて、接続相手側部材に接続する接続部と、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における少なくとも先端側の前記絶縁被覆を剥離した導体先端部を圧着する筒状の圧着部と、前記接続部と前記圧着部とを連結するトランジション部とを備えた圧着端子の曲げ加工前の状態である板状の端子金具であって、
筒状に曲げ加工し、周方向において対向する端部同士を端子軸方向に沿って隙間なく突き合わせて形成する前記圧着部に、筒状の前記圧着部を先端側で封止する封止部、前記導体先端部を圧着する導体圧着部、前記被覆先端部を圧着する被覆圧着部、及び、これら前記導体圧着部と前記被覆圧着部との間に介在する段差部を備え、
曲げ加工前の前記圧着部に相当する圧着箇所相当部を、
端子軸方向の基端側から先端側へ沿って、前記導体圧着部、前記段差部、及び前記被覆圧着部のそれぞれの外周形状に対応する幅で形成するとともに、幅方向の外側端部が徐々に幅小となるように前記端子軸方向に対して傾斜形状とするとともに、
圧着箇所相当部の前記軸方向の基端側端部が、端子幅方向における外側が接続部側へ向かうように端子幅方向に対して傾斜する
端子金具。
端子軸方向の先端側から基端側に向けて、接続相手側部材に接続する接続部と、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における少なくとも先端側の前記絶縁被覆を剥離した導体先端部を圧着する筒状の圧着部と、前記接続部と前記圧着部とを連結するトランジション部とを備え、
請求項1乃至5のうちいずれかひとつに記載の端子金具を曲げ加工して構成した
圧着端子。
導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における少なくとも、先端側の前記絶縁被覆を剥がして前記導体を露出させた導体先端部に対して、請求項6に記載の圧着端子における前記圧着部をかしめて圧着接続した圧着接続構造体を複数備えるとともに、前記接続構造体における前記圧着端子を収容可能なコネクタハウジングを備え、
前記圧着端子をコネクタハウジング内に配置した
ワイヤハーネス。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1(a)は圧着端子10、及び電線先端部500Tの外観図であり、
図1(b)は圧着端子10の幅方向の中間部分における縦断面図である。
図2は圧着端子10の製造装置1の主要な構成のレイアウトを模式的に示した概念図である。
図3(a)は端子連結帯300のキャリア長手方向Lcにおける上流側部分の平面図であり、
図3(b1)、(b2)、(b3)は、
図3(a)のA−A線断面における、それぞれ端子プレ加工部100、第1端子加工部110、第2端子加工部120に相当する部分の断面図を示す。
図3(c1)、(c2)、(c3)は、
図3(a)のB−B線断面における、それぞれ端子プレ加工部100、第1端子加工部110、第2端子加工部120に相当する部分の断面図を示す。
図4(a)は端子連結帯300のキャリア長手方向Lcにおける中央部分の平面図であり、
図4(b1)、(b2)、(b3)は、
図4(a)のD−D線断面における、それぞれ第3端子加工部130、第4端子加工部140、第5端子加工部150に相当する部分の断面図を示す。
図4(c1)、(c2)、(c3)は、
図4(a)のE−E線断面における、それぞれ第3端子加工部130、第4端子加工部140、第5端子加工部150に相当する部分の断面図を示す。
図5(a)は端子連結帯300のキャリア長手方向Lcにおける中央部分の平面図であり、
図5(b1)、(b2)、(b3)は、
図5(a)のG−G線断面における、それぞれ第6端子加工部160、第7端子加工部170、第8端子加工部180に相当する部分の断面図を示す。
図5(c1)、(c2)、(c3)は、
図5(a)のH−H線断面における、それぞれ第6端子加工部160、第7端子加工部170、第8端子加工部180に相当する部分の断面図を示す。
【0021】
本実施形態の圧着端子10の製造装置1は、平板状の端子基材300A(板条)を、図示しない送り機構により、上流側Lcuから間欠的に送りながら、
図2、及び
図3(a)に示すように、キャリア320と、該キャリア300の幅方向の少なくとも一端側から突出する端子金具10Aとで成る平板状の端子連結帯300として打ち抜くとともに、キャリア320の長手方向に沿って鎖状に備えた複数の端子金具10Aに対して曲げ加工など適宜の工程を間欠的に行い、端子形状に加工した端子金具10Aをキャリア320に対して切断することで上述した圧着端子10を製造する。
【0022】
ここで、以下の説明において、キャリア320の長手方向をキャリア長手方向Lcに設定するとともに、キャリア320の幅方向をキャリア幅方向Wcに設定する。キャリア長手方向Lcにおける、キャリア320を送る方向(下流側)をキャリア長手方向下流側Lcdに設定するとともに、キャリア320を送る方向と反対方向(上流側)をキャリア長手方向上流側Lcuに設定する。
【0023】
さらに、圧着端子10(端子金具10A)の長手方向を端子軸方向Ltに設定するとともに、圧着端子10の幅方向を端子幅方向Wtに設定する。端子幅方向Wtは、キャリア長手方向Lcと一致する方向である。また、端子軸方向Ltにおける圧着部60に対するボックス部20の側を前方Ltf(先端側)とし、逆に、ボックス部20に対する圧着部60の側を後方Ltb(基端側)としている。
【0024】
さらにまた、圧着端子10(端子金具10A)の厚み方向Dにおいて、端子軸回りに曲げ加工する厚み方向の一方側を上方向Duに設定する。
【0025】
まず、圧着端子10の製造方法により製造する圧着端子10の構成について
図1(a),(b)、乃至
図5を用いて説明する。
圧着端子10は、クローズドバレル型であるとともに、雌型の圧着端子形状に形成され、端子連結帯300におけるキャリア幅方向Wcの一端側から
図2乃至
図5に示す繋ぎ部310を介してキャリア幅方向Wcの外側へ向けて突出した端子金具10Aをキャリア320から分断して形成している。
【0026】
圧着端子10は、端子軸方向Ltの先端側である前方Ltfから後方Ltbに向かって、図示省略する雄型圧着端子10における挿入タブの挿入を許容するボックス部20と、ボックス部20の後方で、所定の長さのトランジション部40に形成された封止部50と、トランジション部40を介して端子軸方向において封止部50と連続して配置された圧着部60とで一体に構成している。
【0027】
ボックス部20は、倒位の中空四角柱体で構成され、内部に、端子軸方向Ltの後方に向かって折り返され、挿入される雄型コネクタの挿入タブ(図示省略)に接触する弾性接触片21を備えている。
【0028】
また、中空四角柱体であるボックス部20は、右側面部22と左側面部23、及び上面部24と底面部25とをそれぞれ対向させて、端子軸方向Ltへ細長い直方体形状に構成している。
【0029】
ボックス部20は、展開形状において、
図3(a)に示すように、底面部25に対して端子幅方向Wtの一方側の外側に向けて、右側面部22と一方側上面部240とが連設されるとともに、端子幅方向Wtの他方側の外側に向けて、左側面部23と他方側上面部241とが連設されている。
一方側上面部240と他方側上面部241とは、ボックス部20を構成する各面部を周方向に折り曲げて直方体形状に構成した際に、互いに重合し、上面部24を構成する。
【0030】
封止部50は、トランジション部40における圧着部60側の部分を略平板状に押し潰すように変形させて、上下方向に対向する所定部分が互いに重合する偏平形状で構成している。
【0031】
圧着部60は、被覆電線500における少なくとも先端側の電線先端部500Tを挿入可能な円筒状に形成するとともに、周方向全体において連続する連続形状で一体に形成しているが、被覆電線500における少なくとも後述する導体先端部510Tを挿入可能な長さを備えていれば特にその長さは限定しない。
【0032】
被覆電線500は、
図1(a)に示すように、アルミニウムやアルミニウム合金などで形成するアルミニウム素線221を複数束ねた導体510を、絶縁樹脂で構成する絶縁被覆520で被覆して構成している。
前記電線先端部500Tは、
図1(a)中に示すように、被覆電線500の先端側における、先端側の絶縁被覆520を剥離して導体510を露出させた導体先端部510Tと、被覆電線500の先端側における導体先端部510Tよりも後方であって絶縁被覆部分の先端側の被覆先端部520Tとで構成している
【0033】
圧着部60には、周方向において対向端部60t同士が互いに対向する対向部分に、該対向端部60t同士を溶接する溶接部61を端子軸方向Ltに沿って形成している。
なお、圧着部60は、電線先端部500Tを挿入した状態でかしめて圧着することで、該電線先端部500Tと電気的に接続することができる。
【0034】
次に、上述した圧着端子10を製造する製造装置1、及び製造方法について
図2乃至
図15を用いて説明する。
なお、
図6は第2端子加工工程の説明図であり、
図7は高加工率加工工程を行った際の端子軸方向Ltの圧着箇所相当部60Aの形状の変化の様子を示す圧着箇所相当部60Aの直交断面図である。
図8は第5端子加工工程の説明図であり、
図9は第6端子加工工程において、整形工程を行った際の圧着箇所相当部60Aの形状の変化の様子を示す圧着箇所相当部60Aの直交断面図であり、
図10は第6端子加工工程の説明図である。
図11は第7端子加工工程170の説明図であり、
図11(a1)は第7端子加工工程を行う前の端子金具10Aの外観図であり、
図11(a2)は第7端子加工工程を行った後の端子金具10Aの外観図である。
図11(b1)は端子金具10Aに第7端子加工工程を行う前の様子を示すトランジション相当部40Aの断面図であり、
図11(b2)は端子金具10Aに第7端子加工工程を行っている最中の様子を示すトランジション相当部40Aの断面図である。
【0035】
図12は、略円筒状の封止箇所相当部50Aを偏平形状に圧縮する様子を断面で示した第8端子加工部180の説明図であり、
図12(a1)は封止箇所相当部50Aを後述する一対の封止部プレス型181,182でプレスする直前の様子を示し、
図12(a2)は
図12(a1)におけるX1部分の拡大図を示し、
図12(b1)は封止箇所相当部50Aを一対の封止部プレス型181,182でプレスしている最中の様子を示し、
図12(b2)は
図12(b1)におけるX2部分の拡大図を示す。
図13は、ボックス部押さえ治具183でボックス部20を押さえた様子を断面で示した第8端子加工部180の説明図であり、
図14は第8端子加工工程においてファイバーレーザー溶接の様子を示す外観図である。
図15(a)は、ファイバーレーザー溶接の様子を断面で示した説明図であり、
図15(b)は、
図15(a)中のX部拡大図である。
【0036】
製造装置1は、
図2乃至
図5に示すように、平板状の端子基材300Aを、複数の段階に亘って、打ち抜きや、曲げ等の適宜の加工を段階的に行うユニットとして、キャリア長手方向Lcの上流側Lcuから下流側Lcdに沿って、1つの端子プレ加工部100と8つの端子加工部110〜180を直列に並列配置している。
【0037】
端子プレ加工部100と端子加工部110〜180とは、
図2に示すように、それぞれ、キャリア320の長手方向に沿って所定ピッチごとに等間隔に配設された複数の端子金具10Aのうち、2ピッチ分に相当する、隣り合う2つの端子金具10Aを1セットとして同時に加工可能に配置している。
【0038】
端子プレ加工部100において行う端子加工プレ加工工程では、
図3(a),(b1),(c1)に示すように、端子基材300Aに対して打ち抜き、及び曲げ加工を行う。
詳しくは、端子プレ加工部100は、図示しないが、平板状の端子基材300Aを上流側から供給させながら、該端子基材300Aの通過部分をプレスにより帯状の端子連結帯300の形状に打ち抜く打ち抜き刃型を有した打ち抜きユニットと、ボックス部20における底面部25から端子軸方向の先端側へ舌片状に延設した弾性接触片21を曲げ加工する弾性接触片曲げ加工ユニットとで構成している。
【0039】
ここで、平板状の端子金具10Aのうちボックス部20に相当する部分を、ボックス箇所相当部20Aに設定し、トランジション部40に相当する部分をトランジション相当部40Aに設定し、圧着部60に相当する部分を圧着箇所相当部60Aに設定する。さらに、ボックス部20における、底面部25、右側面部22、左側面部23、及び上面部24(一方側上面部240、及び他方側上面部241)のそれぞれを、底面相当部25A、右側面相当部22A、左側面相当部23A、上面相当部24A(一方側上面相当部240A、及び他方側上面相当部241A)に設定する。また、トランジション相当部40Aにおける封止部50に相当する部分を封止箇所相当部50に設定する。
【0040】
なお、端子プレ加工部100において、上述した打ち抜きユニットと弾性接触片曲げ加工ユニットとは別々に配置しても、キャリア長手方向Lcにおいて同じ箇所に配置してもいずれであってもよく、また、打ち抜きユニットと弾性接触片曲げ加工ユニットとをキャリア長手方向Lcにおいて別々に配置する場合は、その配列順位についても特に限定しない。
【0041】
8つの端子加工部110〜180は、主に、端子軸方向回りの曲げ加工を行う箇所であり、
図2に示すように、端子プレ加工部100を通過した端子連結帯300の端子金具10Aに対して行う加工内容に応じて、第1端子加工部110、第2端子加工部120、第3端子加工部130、第4端子加工部140、第5端子加工部150、第6端子加工部160、第7端子加工部170、及び、第8端子加工部180で構成し、それぞれキャリア長手方向Lcの上流側から下流側に沿ってこの順に配置している。
また、これら第1端子加工部110から第8端子加工部180において行う加工を、それぞれ第1端子加工工程から第8端子加工工程に設定する。
【0042】
端子製造方法は、主に、第1端子加工工程から第4端子加工工程によって、端子金具10Aの端子軸方向Ltにおける主に、ボックス箇所相当部20Aに対して端子軸方向Lt回りの曲げ加工を行うとともに、主に、第5端子加工工程と第6端子加工工程によって、端子金具10Aの端子軸方向Ltにおける主に、圧着箇所相当部60Aに対して加工を行い、第7端子加工工程と第8端子加工工程によって、封止箇所相当部50に対して加工を行う。
【0043】
第1端子加工工程では、第1端子加工部110において、
図3(c2)に示すように、平板状のボックス箇所相当部20Aの幅方向の両側を立ち上げる。具体的には、ボックス箇所相当部20Aにおける、右側面相当部22Aに対して幅方向の外側で連接している一方側上面相当部240Aと、左側面相当部23Aに対して幅方向の外側で連接している他方側上面相当部241Aを底面相当部25Aに対して絶対値が略60度程度の角度だけ端子軸回りに立ち上げる曲げ加工を行う。
【0044】
第2端子加工工程では、
図3(c3)に示すように、第2端子加工部120において、ボックス箇所相当部20Aにおける、右側面相当部22Aと右側面相当部23Aとを底面相当部25Aに対して端子軸回りに立ち上げる曲げ加工を行う。それと同時に、
図3(b3)に示すように、トランジション相当部40Aの幅方向の両端部、及び、圧着箇所相当部60Aの幅方向の両端部を、弧状になるように滑らかに立ち上げる立ち上げ加工を行う。
詳しくは、第2端子加工部120では、
図6に示すように、押上げ型122と押上受け型123とで構成したトランジション押上げ治具121を備えている。
トランジション相当部40Aに対して上下各側に、
図6(a)に示すように、押上受け型123と押上げ型122とを対向配置する。押上受け型123をトランジション相当部40Aの上面に配置した状態で、押上げ型122をトランジション相当部40Aに向けて押圧することで、
図6(b)に示すように、トランジション相当部40Aの底面全体を、圧着箇所相当部60Aに対して底上げする底上げ加工を行う。
なお、
図6(b)中の端子金具Aの縦断面図は、
図3(a)中のC−C線断面図を示している。
【0045】
これにより、トランジション相当部40Aを上げ底とすることで、ボックス箇所相当部20Aにおける右側面相当部22Aと右側面相当部23Aとの立ち上げ形状変形に追従させることができ、トランジション相当部40Aが破断することを回避することができる。
【0046】
第3端子加工工程では、第3端子加工部130において、
図4(c1)に示すように、ボックス箇所相当部20Aにおける、右側面相当部22Aと右側面相当部23Aとを底面相当部25Aに対してそれぞれ絶対値が60度程度の立ち上がり角度となるまで曲げ加工する。
【0047】
これにより、一方側上面相当部240A、及び右側面相当部22Aと、他方側上面相当部241A、及び右側面相当部23Aとは底面相当部25Aの幅方向の両側で互いに左右対称形状で対向した姿勢で曲げ加工される。
なお、第3端子加工工程においては、
図4(b1)に示すように、圧着箇所相当部60Aに対しては、何も加工を施さない。
【0048】
第4端子加工工程では、第4端子加工部140において、
図4(c2)に示すように、ボックス箇所相当部20Aにおける底面相当部25Aの各側で立ち上がる一対の上面相当部240A,241Aのうち、一方側上面相当部240Aに対して他方側上面相当部241Aが倒伏した状態となるように、図示しない押圧治具により他方側上面相当部241Aを上方から押圧する。
なお、第4端子加工部140においては、
図4(b2)に示すように、圧着箇所相当部60Aに対しては何も加工を施さない。
【0049】
第5端子加工工程では、第5端子加工部150において、
図4(c3)に示すように、他方側上面部241に対して一方側上面部240が重合するように、曲げ加工する。これにより、ボックス箇所相当部20Aを端子軸方向Ltへ長い直方体形状のボックス部20として形成することができる。
【0050】
さらに、第5端子加工工程においては、上述したボックス箇所相当部20Aの曲げ加工工程とともに、
図4(a),(b3)に示すように、圧着箇所相当部60Aに対して高曲げ率加工工程を行う。
高曲げ率加工工程は、圧着箇所相当部60Aを未加工形状から筒状に曲げ加工するに伴って、圧着箇所相当部60Aにおける、所定の曲げ加工形状に塑性変形させる変形箇所の少なくとも一部を、当該塑性変形させる曲げ率よりも高い曲げ率で曲げ加工する工程である。
【0051】
詳しくは、圧着箇所相当部60Aを、
図7中の一点鎖線で示したように、平板形状に形成するとともに、幅方向の両端部分を端子軸回りに孤状に変形させた形状である未加工形状から第5端子加工部工程以降の工程によって、最終的に、
図7の二点鎖線で示したような円筒状に曲げ加工する。
【0052】
圧着箇所相当部60Aを、圧着箇所相当部60Aにおける幅方向の全体を円弧状に塑性変形させて最終的に円筒状へ曲げ加工する前に、第5端子加工部工程における高曲げ率加工工程において、圧着箇所相当部60Aの幅方向(周方向)の中間部分を、圧着箇所相当部60Aを未加工形状から円筒状に塑性変形させる曲率よりも高い曲率で曲げ加工した高曲げ率曲げ部60zを有するように、
図7中の実線で示したような略Vの字形状に形成する。
【0053】
具体的には、高曲げ率加工工程は、
図8に示すような高曲げ率加工治具151を用いて行う。
高曲げ率加工治具151は、凸状押圧治具152と凹型153とで構成する。
凸状押圧治具152は、圧着箇所相当部60Aを上述した未加工形状から円筒状に塑性変形させる曲率よりも高い曲率で径外方向に突出した凸部152aを周方向の一部に有する棒状に形成するとともに、凹型153は、凸状押圧治具152の凸部152aの凸形状に対応する凹形状に形成している。
【0054】
凸状押圧治具152と凹型153とは、
図8(a)に示すように、圧着箇所相当部60Aを隔てて上下各側に配置し、凸状押圧治具152の周方向における凸部152aを圧着箇所相当部60Aの幅方向の中間部分に対して上方から対向した状態で圧着箇所相当部60Aを下側に押圧することで、
図8(b)に示すように、凸状押圧治具152と凹型153とで圧着箇所相当部60Aを直交断面視略Vの字状に塑性変形させることができる。
これにより、圧着箇所相当部60Aの幅方向の中間部分には、圧着箇所相当部60Aを円筒状に塑性変形させたときの曲率よりも高い曲率で曲げ加工した高曲げ率曲げ部60zを形成することができる。
【0055】
続く第6端子加工工程では、第6端子加工部160において、高曲げ率加工工程によって直交断面を略Vの字形状に曲げ加工した圧着箇所相当部60Aを、
図5(b1)、及び
図9に示すように円筒状の圧着部60へ整形させる整形工程を行う。
【0056】
整形工程では、
図10に示すような整形治具161を用いて行う。整形治具161は、一対の外周整形用押圧型162,163で構成している。
一対の外周整形用押圧型162,163は、それぞれ圧着箇所相当部60Aに対して上下各側に配置され、それぞれ円筒状の圧着部60の外周面と同じ曲率を有する断面半円形に形成した凹部162a,163aを備えるとともに、それぞれの凹部162a,163aが互いに対向した状態で近接、又は離間可能に移動する。
【0057】
整形工程では、
図10(a)に示すように、一対の外周整形用押圧型162,163を、圧着箇所相当部60Aに対して上下各側に凹部162a,163aが互いに対向した状態で配置し、この状態で
図10(b)に示すように、一方の外周整形用押圧型162と外周他方の外周整形用押圧型163とで、直交断面が略Vの字形状の圧着箇所相当部60Aをプレス加工する。
【0058】
このとき、圧着箇所相当部60Aの周方向における特に、
図9中のドットを付した部分が径外方向へ曲げられることで、最終的に、圧着箇所相当部60Aを圧着部60として、所定の曲率を有する円筒状に整形することができ、幅方向の両端部が周方向において互いに突き合わさった状態の円筒状の圧着部60を形成することができる(
図9参照)。
なお、一対の外周整形用押圧型162,163の間には、これら一対の外周整形用押圧型162,163により圧着箇所相当部60Aをプレス加工する際に、圧着箇所相当部60Aを円筒状にガイド可能な図示しない円柱状の芯棒を備えてもよい。
【0059】
また、封止箇所相当部50Aは、
図5(b2)、及び
図11(a1)に示すように、上述した第6端子加工工程において、圧着部60を円筒状に形成するに伴って、直交断面視略Uの字形状となるまで曲げ加工される。
【0060】
続く第7端子加工工程は、第8端子加工部180において封止部形成工程を行う際のプレ工程として、封止箇所相当部50Aを、
図11(a1)に示す状態から対向端部60t同士が近接するように絞って
図11(a2)に示すような略円筒状に整形する。
【0061】
具体的には、第7端子加工部170には、
図11(b1)、(b2)に示すように、封止箇所相当部50Aを略円筒状に絞る封止部絞り治具171を備え、該封止部整形治具171は、上下各側の一対から成る外周整形型172,173と、内周整形芯棒174とで構成している。
【0062】
図11(b1)に示すように、内周整形芯棒174を周方向の上端に隙間を有する円弧状の封止箇所相当部50Aに挿入した状態で、
図11(b2)に示すように、上下各側に配置した一対の外周整形型172,173で押圧することで、封止箇所相当部50Aを略円筒状に絞ることができる。
【0063】
第8端子加工工程では、第8端子加工部180において、略円筒状の封止箇所相当部50Aを偏平形状に圧縮して封止部50を形成する。
詳しくは、
図12(a1)、及び
図13に示すように、第8端子加工部180には、封止箇所相当部50Aを圧縮する一対の封止部プレス型181,182と、ボックス部20を押さえるボックス部押さえ治具183とを備えている。
【0064】
一対の封止部プレス型181,182には、それぞれ封止箇所相当部50Aに対して対向させる対向面に、封止部50に相当する幅を有する圧着面181A,182Aを形成している。
【0065】
一対の封止部プレス型181,182のうち、封止箇所相当部50Aに対して上側に配置する上側封止部プレス型181には、
図12(a2)に示すように、圧着面181Aの幅方向の中間部分、すなわち、封止箇所相当部50Aの周方向の対向端部50t同士が突き合わせた状態で対向する対向部分に相当する部分に、凸部181aが形成されている。凸部181aは、先端部分を緩やかな円弧状に形成しているとともに、封止箇所相当部50Aの板厚の略半分程度の突出し長さで下方に突き出して形成している。
【0066】
また、前記ボックス部押さえ治具183は、
図13中の仮想線で示したように、ボックス部20の上面部24に対して上方に退避した退避位置P1と、
図13中の実線で示したように、ボックス部20の上面部24を押さえる押さえ位置P2との間で昇降自在に構成している。
【0067】
第8端子加工工程における封止部形成工程では、まず、ボックス部押さえ治具183を退避位置P1から押さえ位置P2まで降下させ、該ボックス部押さえ治具183によりボックス部20の上面に軽く当接した状態で該ボックス部20を押さえる。
【0068】
このように、ボックス部押さえ治具183によりボックス部20を押さえるとともに、上述した構成の一対の封止部プレス型181,182のそれぞれを、封止箇所相当部50Aに対して上下各側に配置した状態で、
図12(b1)、及び
図13に示すように、下側の封止部プレス型182に対して上側の封止部プレス型181を降下させて略円筒状の封止箇所相当部50Aをプレスすることで該封止箇所相当部50Aは、周方向における上側部分と下側部分とが対向する所定部分が互いに重合する偏平形状に圧縮し、封止部50として形成することができる。
【0069】
なお、封止部50における、上下各側で互いに重合する重合部分のうち、上側に位置する部分を上側重合部分50uに設定するとともに、下側に位置する部分を下側重合部分50dに設定する(
図12(b1)参照)。
【0070】
このとき、特に、封止部50における対向端部50t同士が突き合わさる対向部分に着目すると、一対の封止部プレス型181,182による封止箇所相当部50Aのプレスに伴って、上側に配置する封止部プレス型181の凸部181aにより、上側重合部分50uの幅方向における対向部分を、
図12(b2)に示すように、他の部分と比較して下側重合部分50dへしっかりと押し付けることができる。
【0071】
これにより、一対の封止部プレス型181,182によるプレスから封止部50を開放した状態において、封止部50の上側重合部分50uの幅方向における一方側と他方側とが下側重合部分50dに対して観音開きするように上方に復元変形することなく、上側重合部分50uと下側重合部分50dとをしっかりと重合した状態に保つことができる。
【0072】
また、上述した第8端子加工工程では、トランジション相当部40Aに上述した封止部50を形成することに加えてさらに溶接工程を行う。
溶接工程では、
図14、及び
図15(a),(b)に示すように、圧着部60の対向端部60t同士を突き合わせた状態で、第8端子加工部180に備えたファイバーレーザー溶接装置Fwを例えば、圧着部60の先端部60P1(ボックス部20側)から基端部60P2(キャリア320側)へ端子長手方向Ltに沿ってスライドさせながら一対の対向端部60t同士を溶接することで溶接部61を形成する。
【0073】
上述した工程を経て端子形状に形成した端子金具10Aは、図示しないが端子連結帯300における繋ぎ部310においてキャリア320に対して切断することができ、圧着端子10として製造することができる。
【0074】
上述した製造装置1、及び製造方法が奏する作用効果について説明する。
上述した構成によれば、上述したように、圧着箇所相当部60Aを略平板状の未加工形状から直接、円筒状に曲げ加工するのではなく、第5端子加工工程において、
図7に示すように、圧着箇所相当部60Aにおける円筒状に変形する変形箇所の一部である幅方向の中間部分に、高曲げ率曲げ部60zを形成する。すなわち、当該中間部分に対して、未加工形状から、円筒状に対応する曲率を有する円弧形状に塑性変形させる曲げ率よりも高い曲げ率で曲げ加工する高曲げ率加工工程を行う。
【0075】
さらに、この状態で、圧着箇所相当部60Aに対して最終形状である円筒状になるように、
図9に示すように、第6端子加工工程において整形工程を行うことで、圧着箇所相当部60Aを、周方向において対向する対向端部60t同士が互いに離間する方向の内部応力が残留していない状態で塑性変形させることができる。
【0076】
詳しくは、一般に、圧着部60の対向端部60t同士の隙間が目安として0.5mm以下である必要がある。圧着部60の対向端部60t同士の隙間が0.5mmより大きくなる場合には、ファイバーレーザーにより圧着部60の対向端部60t同士が対向する対向部分を溶接することが困難となるためである。
特に、圧着部60の対向端部60t同士の隙間は0.03mm以下であることが好ましい。圧着部60の対向端部60t同士の隙間が0.03mm以下である場合には、圧着部60の対向部分に、電線先端部500Tの圧着に確実に耐え得る溶接部61を形成することができ、筒状の圧着部60の優れた信頼性を得ることができるためである。
【0077】
一方、圧着箇所相当部60Aの従来の曲げ加工の様子をあらわす
図23(a)に示すように、圧着箇所相当部60Aを略平板状の未加工形状から直接、円筒状に曲げ加工した場合には、
図23中の矢印Fに示すように、圧着箇所相当部60Aに元の未加工形状に復元しようとする内部応力Fが残留するなどの要因により、円筒状に曲げ加工しても、周方向において対向する対向端部60t同士が、互いに離間しようとする外向きの力が発生することになる。
【0078】
そうすると、
図23(b)に示すように、圧着部60の対向部分において、対向端部60t同士の間に、例えば、0.5mmより大きな隙間が生じ、該対向部分に対して焦点を合わせた状態でファイバーレーザーを照射することが困難となるため、対向部分に溶接部61を確実に形成できないという課題が生じていた。
【0079】
これに対して、本実施形態では、高曲げ率加工工程において、圧着箇所相当部60Aを、略平板状の未加工形状から最終の曲げ加工形状である円筒状に曲げ加工した場合の曲率よりも大きな曲率の高曲げ率曲げ部60zを有する略Vの字形状に曲げ加工する。
【0080】
さらに、整形工程において、高曲げ率加工工程後の圧着箇所相当部60Aに対して、圧着部60の幅方向の両側の対向端部60t同士を周方向において互いに突き合わせるとともに、幅方向の中間部分に対して両側に有する
図9中のドットを付した直線部分が円弧状になるように、該直線部分を径外方向に曲げることで圧着箇所相当部60Aを、略Vの字形状から円筒形状に整形することができる。
【0081】
ここで、圧着箇所相当部60Aにおける、
図9中のドットを付した前記直線部分を、円筒状に整形する際には、特に、径外方向に円弧状になるように曲げられるため、圧着部60の周方向における円弧状に曲げた部分には、円筒状に整形後においては、該円弧状に曲げた部分には、径内方向へ戻ろうとする内部応力Fが作用する。
【0082】
これにより、整形工程後の圧着部60には、内向きの力が発生し、対向端部60t同士が押し合うように突き合わせることができる。
【0083】
従って、上述したように、高曲げ率加工工程を行った後で整形工程を行った圧着部60は、対向端部60t同士の隙間を例えば、0.03mm以下という少なくとも0.5mm以下にすることができるため、
図14、及び
図15に示すように、対向部分にファイバーレーザーを照射する際に、その焦点を対向端部60t間に合わせた状態で確実に溶接することができる。
【0084】
また、上述したように、前記圧着箇所相当部60Aの幅方向における、一方側部分と他方側部分とが同じ長さとなる中間部分に、高曲げ率曲げ部60zを形成することで、整形工程において、圧着箇所相当部60Aを、円筒状に整形させる際に、例えば、高曲げ率曲げ部60zに対して一方側と他方側とがそれぞれ異なる長さである場合と比較して、これら一方側部分と他方側部分とのそれぞれを同じ長さ、及び曲率の円弧状に整形できるため、円筒状に整形した際に、圧着部60の対向部分において、一対の対向端部60tがバランスよく互いに押し合うように、略同じ大きさの力が作用する内向きの力を発生させることができる。
【0085】
また、上述したように、第2端子加工工程では、トランジション相当部40Aの底面全体を、
図6に示すように、圧着箇所相当部60Aに対して底上げする加工も行うことで、ボックス箇所相当部20Aを上述したように、端子軸方向Lt回りに曲げ加工するに伴って、ボックス箇所相当部20Aと圧着箇所相当部60Aとの境界部分に相当するトランジション相当部40Aに、応力が集中して破断することを防ぐことができる。
【0086】
詳しくは、第2端子加工工程において
図3(c2)から
図3(c3)の形状になるように、ボックス箇所相当部20Aにおける右側面相当部22Aと右側面相当部23Aとの立ち上げの際に、ボックス箇所相当部20Aに大きな曲げ加工を伴う一方で、圧着箇所相当部60Aには、
図3(b2)から
図3(b3)に示すように、殆ど変形を強いられることがない。
【0087】
このため、このような端子軸方向Ltの各側における曲げ加工による変形量の違いを伴う加工によって、これらボックス箇所相当部20Aと圧着箇所相当部60Aとの間に相当するトランジション相当部40Aにおいては、過大な応力が加わることになり、亀裂が生じるなどのおそれがあった。
【0088】
これに対して、第2端子加工工程において、ボックス箇所相当部20Aに対して端子軸方向Lt回りの曲げ加工を行うに伴って、トランジション相当部40Aも同時に上げ底を行うことで、トランジション相当部40Aを、ボックス箇所相当部20Aにおける右側面相当部22Aと右側面相当部23Aとの立ち上げ形状変形に追従させるように変形させることができ、ボックス箇所相当部20Aと圧着箇所相当部60Aとの間の変形量の違いを緩和することができる。
【0089】
従って、トランジション相当部40Aに過大な負荷が加わることで亀裂が生じることを防ぎつつ、ボックス箇所相当部20Aにおける右側面相当部22Aと右側面相当部23Aとを底面相当部25Aに対して略垂直に立ち上げることができるという所望の曲げ加工を行うことができる。
【0090】
さらに、第2端子加工工程では、トランジション相当部40Aの底面全体を、圧着箇所相当部60Aに対して底上げする加工も行うことで、トランジション相当部40Aと圧着箇所相当部60Aとの境界部分を段状とすることができる(
図6の下側の図参照)。
【0091】
このため、第2端子加工工程以降の工程において、ボックス箇所相当部20Aを変形させる際に、該ボックス箇所相当部20Aに加わった応力が圧着箇所相当部60Aにまで不測に伝わることを防ぐことができ、第2端子加工工程以後の工程においてボックス箇所相当部20Aと圧着箇所相当部60Aとのそれぞれを、所望の形状にスムーズに曲げ加工することができる。
【0092】
さらに、第8端子加工工程において、一対の封止部プレス型181,182により封止箇所相当部50Aのプレスする際には、
図13を用いて説明したように、ボックス部押さえ治具183によってボックス部20を押さえることにより、いわゆるボックス部20の首折れを防ぐことができる。
【0093】
詳述すると、一対の封止部プレス型181,182により、封止箇所相当部50Aをプレスする際に圧着端子10は衝撃を受けて浮き上がろうとする慣性力が作用する。その際、封止部50は一対の封止部プレス型181,182により位置が規制されている。
【0094】
このため、ボックス部押さえ治具183を備えていない従来の第8端子加工部の構成の場合、封止箇所相当部50Aをプレスする際の衝撃により、封止部50に対してボックス部20が浮き上がろうとして、ボックス部20が封止部50に対して不測に分断するといういわゆるボックス部20の首折れが生じるおそれがあった。
【0095】
これに対して、本実施形態の第8端子加工工程では、
図13に示すように、ボックス部押さえ治具183によりボックス部20を押さえ付けることができるため、一対の封止部プレス型181,182により封止箇所相当部50Aをプレスすることに伴って、該封止箇所相当部50Aが衝撃を受けても、ボックス部20に作用する慣性力をボックス部押さえ治具183によって、受け止めることができる。従って、いわゆるボックス部20の首折れを防ぐことができる。
【0096】
さらに、ボックス部押さえ治具183によりボックス部20を押さえ付けることにより、封止部50に対してボックス部20が不測に撓み変形することがないため、端子軸方向Ltについて直進精度に優れた圧着端子10を形成することができる。
【0097】
よって、被覆電線500における電線先端部500Tを圧着部60の内部に端子軸方向Ltに沿って適切に挿入することができる。
【0098】
なお、圧着端子10におけるボックス部押さえ治具183によりボックス部20を押さえ付ける箇所は、上面部24に限らず、他の箇所であってもよく、また、ボックス部20以外の箇所を押さえ付けてもよい。
【0099】
この発明の構成と、実施形態との対応において、
この発明の圧着端子は、実施形態の端子金具10A、又は圧着端子10に対応し、
以下同様に、
高エネルギー密度熱源発生溶接手段は、ファイバーレーザー溶接装置Fwに対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
また他の実施形態として、圧着箇所相当部60Aを円筒状の圧着部60として曲げ加工する際に、第5端子加工工程において上述した高曲げ率加工工程を行うとともに、第6端子加工工程において上述した整形工程を行うに限らない。
【0100】
例えば、
図3(b3)に示すような略平坦状の圧着箇所相当部60Aを、
図16(a)に示すように、幅方向の両端部60tが互いに突き合わさるまで曲げ加工する高曲げ率加工工程と、幅方向の両端部60t同士が突き合わさった圧着箇所相当部60Aの突合せ部分60Tを上方から押し込む整形工程を行うことで、圧着箇所相当部60Aを円筒状の圧着部60に曲げ加工してもよい。
【0101】
具体的には、高曲げ率加工工程において、幅方向の両端部60tが弧状に立ち上がった略平坦状の圧着箇所相当部60A(
図3(b3)参照)を、幅方向の中間部分を中心に全周に亘って曲げ加工していき、最終的に圧着箇所相当部60Aの幅方向の両端部60tが互いに突き合わさるまで
図16(a)に示すように、幅方向の中間部分に対して両側部分を徐々に円弧状に整形していく。
【0102】
高曲げ率加工工程において、このように圧着箇所相当部60Aに対して高曲げ率加工工程を行うことにより、圧着箇所相当部60Aは、端子軸方向Ltに対する直交断面が略立位の楕円形状となり、圧着箇所相当部60Aの幅方向の中間部分には、幅方向の両端部60tが互いに突き合わさる程度の高い曲率を有する高曲げ率曲げ部60zが形成される。
【0103】
その後に行う整形工程において、圧着箇所相当部60Aにおける幅方向の両端部60t同士が突き合わさる突合せ部分60Tを、
図16(b)に示すように、下方(径内方向)へ押し込むことにより(
図16(b)中の矢印D参照)、圧着箇所相当部60Aを、円筒状に整形することができ、円筒状の圧着部60として曲げ加工することができる。
【0104】
上述した他の実施形態における加工方法によれば、高曲げ率加工工程において、圧着箇所相当部60Aの幅方向の中間部分に形成した高曲げ率曲げ部60zは、略平坦状から幅方向の両端部60tが互いに突き合わさる程度まで十分に高い曲げ率とする。
【0105】
これにより、円筒状の圧着部60の対向端部60t同士が離間しようとする内部応力が作用するスプリングバックの影響を確実に解消することができる。
すなわち、突合せ部分60Tを下方(径内方向)へ押し込むことにより、圧着部60の対向端部60tに、対向端部60t同士が押し合うような内部応力を作用させることができるため(
図16(b)中の矢印F参照、その後に行う整形工程において、圧着箇所相当部60Aを円筒状に確実に整形することができる。
【0106】
従って、圧着部60は、正確に円筒状に形成することができるとともに、周方向において対向する端部60t同士が積極的に互いに突き合わさった状態に保つことができる。
【0107】
また他の実施形態として、高曲げ率加工工程において、上述した実施形態では、圧着箇所相当部60Aの幅方向の中間部分に高曲げ率曲げ部60zを形成したが、このように、圧着箇所相当部60Aの幅方向の一部に高曲げ率曲げ部60zを形成するに限らず、
図17(a1)に示すように、圧着箇所相当部60PAの幅方向の全体を、絞るなどして最終的に円形状に曲げ加工する曲率、すなわち、
図17(a2)に示した円筒状の圧着部60の曲率よりも高い曲率に曲げ加工してもよい。
【0108】
これにより、その後の整形加工において、圧着箇所相当部60PAを、
図17(a2)に示すように、円形状に整形した際に、圧着部60における対向部分に内向きの力を発生させることができ、対向端部60t同士が押し合うように突き合わせることができる。
【0109】
また、圧着部60は、円筒状に曲げ加工するに限らず、圧着箇所相当部60Aの幅方向において複数箇所に亘って曲げ加工し、圧着箇所相当部60Aの直交断面が最終的に多角形状になるように曲げ加工してもよい。
例えば、圧着箇所相当部60PBの直交断面が最終的に四角形状になるように曲げ加工する場合には、
図17(b1)に示すように、圧着箇所相当部60PBの幅方向における4か所の曲げ加工部のうち、例えば、所定の2箇所を、最終的に四角形状の圧着部60とする際の曲げ角度である直角よりも大きな角度となるように曲げ加工して、該所定の2箇所のそれぞれに高曲げ率曲げ部60zを形成する。
【0110】
そして、
図17(b2)に示すように、高曲げ率加工工程の後の整形工程において、高曲げ率曲げ部60zを形成した所定の2箇所のそれぞれが直角になるように圧着箇所相当部60PBを整形してもよい。
【0111】
これにより、圧着箇所相当部60PBを、
図17(b2)に示すように、四角形状に整形した際に、圧着部60Bにおける対向部分に内向きの力が発生し、対向端部60t同士が互いに押し合うように突き合わせることができる。
【0112】
従って、
図17(a2)、及び
図17(b2)のいずれの圧着部60,60Bにおいても、対向端部60t同士が対向する対向部分に隙間が生じることがないため、該対向部分を確実に溶接することができる。
【0113】
また、他の実施形態として、上述した実施形態における製造装置1では、端子プレ加工部100と端子加工部110〜180とのそれぞれをキャリア長手方向Lcに沿って2つ一組で配置したが(
図2参照)、この構成に限定せず、端子プレ加工部100と端子加工部110〜180とのそれぞれを、キャリア長手方向Lcに沿って上流側Lcuから下流側Lcdへ間欠的に送られる端子金具10Aに対して1ピッチずつ加工を行うことが可能に、キャリア長手方向Lcに沿って1つずつ配置してもよい。
または、製造装置1では、端子プレ加工部100と端子加工部110〜180とのそれぞれを、キャリア長手方向Lcに沿って、2つ一組、或いは一つずつ配置するに限らず、その他の配置数で配置してもよく、また、端子加工部ごとに異なる配置数で配置してもよい。
【0114】
他の実施形態として、整形工程において、圧着箇所相当部60Aの円筒形状への整形に用いた整形治具161は、上述したように、一対の外周整形用押圧型162,163のみで構成するに限らず、外周整形用押圧型162,163の他に、圧着箇所相当部60Aを円筒状に整形する際に、該圧着箇所相当部60Aの内周面を整形する内周整形用芯棒を備えて構成してもよい。
【0115】
内周整形用芯棒は、図示しないが、円筒状の圧着部60の内周面の曲率と略同じ曲率の外周面を有する円柱状に構成することができる。
【0116】
内周整形用芯棒を備えた整形治具161を用いて整形工程を行う場合には、図示しないが、内周整形用芯棒を、断面略Vの字形状の圧着箇所相当部60Aの内側空間に挿入した状態で配置し、この状態で一方の外周整形用押圧型162,163と他方の外周整形用押圧型162,163とで、直交断面が略Vの字形状の圧着箇所相当部60Aをプレス加工することで、内周整形用芯棒の外周面に沿った滑らかな円周形状の内周面を有した円筒状の圧着部60を形成することができる。
【0117】
また、他の実施形態として、第7端子加工部170には、上述したように、封止部絞り治具171として、一対の外周整形型172,173と、内周整形芯棒174とを備えて構成したが(
図11(b1)、(b2)参照)、封止部絞り治具171は、この構成に限定せず、他の構成であってもよい。
【0118】
例えば、内部に内周整形芯棒174を挿入しない状態の封止箇所相当部50Aに対して上下各側に配置した一対の外周整形型172,173によって、該封止箇所相当部50Aを押圧しても、略円筒状に絞ることができるのであれば、封止部絞り治具171には、内周整形芯棒174を備えずに、一対の外周整形型172,173のみで構成してもよい。
【0119】
また、他の実施形態として、圧着部60の一対の対向端部60t,60tに溶接部61を形成する溶接工程は、複数の端子加工工程の中でも最終の工程である第8端子加工工程で行ったが、これに限らず、第6端子加工工程において圧着箇所相当部60Aを円筒状に整形する工程以降の工程であれば、いずれの工程において溶接工程を行ってもよい。
【0120】
また、圧着端子10は、本実施形態では、上述したように、ボックス部20と圧着部60とを備えた雌型圧着端子で構成したが、この構成に限定せず、少なくとも圧着部60を有する構成であれば、他の雌型圧着端子のボックス部20に挿入接続する挿入タブをボックス部20の代わりに備えた雄型圧着端子として構成しても、或いは、圧着部60のみで構成し、複数本の被覆電線500の例えば、アルミニウム芯線などの導体510を束ねて接続するための圧着端子として構成してもよい。
【0121】
また、他の実施形態として、圧着端子10Pは、
図18(a)、(b)に示すように、ボックス部20におけるトランジション部40(封止部50)との連設部分における、端子幅方向Wtの両側の側壁に、基端側から切欠いた切欠き部70を形成してもよい。
【0122】
このような切欠き部70は、後述する展開形状の圧着端子に基づいて説明すると、
図19に示すように、ボックス箇所相当部20Aの右側面部22Aと左側面部23Aとにおけるトランジション相当部40Aとの連接部分に、端子幅方向Wtの外側端部を切欠いて形成している。
【0123】
このように、ボックス箇所相当部20Aにおけるトランジション相当部40Aとの連設部分に切欠き部70を形成することにより、圧着端子10Pの全長を所定の端子サイズの規格を満たす端子長に保ちつつ、所望の端子形状に確実に曲げ加工することができる。
【0124】
詳しくは、圧着端子10Pを
図19に示すような展開形状から
図18(b)に示すような立体形状に曲げ加工する際には、
図3(c2)、(c3)、及び
図4(c1)、(c2)に示すように、ボックス箇所相当部20Aの曲げ加工を先行して行い、ボックス箇所相当部20Aの曲げ加工が略完成した段階で、
図4(b3)、及び
図5(b1)、(b2)、(b3)に示すように圧着箇所相当部60Aの曲げ加工を主体的に行う。
【0125】
このため、各工程ごとにおけるボックス箇所相当部20Aと圧着箇所相当部60Aとのそれぞれの曲げ加工に伴う変形量の違いにより、ボックス箇所相当部20Aと圧着箇所相当部60Aとの間に相当するトランジション相当部40Aにおいては、過大な応力が加わることになる。中でも特に、ボックス箇所相当部20Aとトランジション相当部40Aとの境界部分において急激な曲げ変形が強いられるため、該境界部分に応力が集中し、亀裂が生じるなどのおそれがあった。
【0126】
一方、ボックス箇所相当部20Aとトランジション相当部40Aとの境界部分において急激な曲げ変形に伴い集中的に加わる応力を分散するための対策として、トランジション相当部40Aを長く形成することが考えられる。
【0127】
しかし、トランジション相当部40Aを長く形成した場合、それに伴って圧着端子10Pの全長も長くなる。そうすると圧着端子10Pが所定の規格を満たさない端子長となり、例えば、図示しないがコネクタの端子挿通孔に適切に挿入不能となるという別の課題が生じることになる。
【0128】
これに対して、本実施形態の圧着端子10Pにおいては、ボックス箇所相当部20Aにおけるトランジション相当部40Aとの連設部分に切欠き部70を形成することで、ボックス箇所相当部20Aを曲げ加工する過程において境界部分に変形量の違いに伴い作用する過大な応力を切欠き部70を有した連設部分にも分散させることができる。
【0129】
よって、ボックス箇所相当部20Aを曲げ加工する過程において境界部分に応力が集中することを防ぎ、所望の端子形状に確実に曲げ加工することができる。
【0130】
しかも、本実施形態の圧着端子10Pにおいては、ボックス箇所相当部20Aにおけるトランジション相当部40Aとの連設部分に切欠き部70を形成したため、トランジション相当部40A自体を長尺に形成せずともボックス箇所相当部20Aの曲げ加工を行う際に、トランジション相当部40Aに加わる応力集中を緩和することができる。
【0131】
従って、圧着端子10Pの全長を所定の規格を満たす端子長に保つことができるため、コネクタの端子挿通孔に適切に挿入することができるなど、圧着端子10Pの全長を所定の規格を満たす端子長に保つことができる。
【0132】
また、他の実施形態として、圧着端子10Pは、圧着部60Pを端子軸方向Ltに沿って同径となる寸胴に形成するに限らず、
図20に示すように、端子軸方向Ltにおいて径が異なるように段状に形成してもよい。
【0133】
なお、
図20は、他の実施形態における圧着端子10Pの斜視図を示している。
【0134】
詳しくは、圧着部60Pは、先端側開口閉塞部60Paと、導体圧着部60Pbと、段差部60Pcと、被覆圧着部60Pdとで一体に構成している。
導体圧着部60Pbは、電線先端部500Tを挿入した状態において、端子軸方向Ltにおいて、挿入した導体先端部510Tに相当する箇所であり、導体先端部510Tの外径に対して略同等、或いは僅かに大きな内径を有して被覆圧着部60Pdの外径よりも小径に形成している。
【0135】
被覆圧着部60Pdは、電線先端部500Tを挿入した状態において、端子軸方向Ltにおいて、挿入した被覆先端部520Tに相当する箇所であり、被覆先端部520Tの外径に対して略同等、或いは僅かに大きな内径を有して形成している。
【0136】
圧着部60Pにおける導体圧着部60Pbと被覆圧着部60Pdとの間の段差部60Pcは、端子軸方向Ltに直交するような段差形状ではなく、被覆圧着部60Pdから導体圧着部60Pbにかけて滑らに縮径するような段差形状に形成している。
【0137】
先端側開口閉塞部60Paは筒状の圧着部60Pの端子軸方向Ltにおける先端側が開口しないように閉塞している箇所である。
【0138】
上述した圧着端子10Pは、
図19に示すような端子金具10PAに対して段付き芯棒80を用いて
図21(a)、(b)、(c)に示すように製造する。
なお、
図21(a)は、端子金具10PAの平面図であり、端子金具10PAにおける圧着箇所相当部60PAに芯棒600を配置した状態の平面図を示し、
図21(b)は、
図21(a)中のI−I矢視断面図を示し、
図21(c)は、圧着箇所相当部60PAを円筒状に形成した状態の縦断面図を示している。
【0139】
具体的には、端子金具10PAは、
図19、及び21(a)に示すように、端子軸方向Ltの先端側Ltfから基端側Ltbに沿ってボックス箇所相当部20A、トランジション相当部40A、圧着箇所相当部60PAをこの順に配設している。
【0140】
トランジション相当部40Aの端子軸方向Ltにおける後側部分には、封止部相当箇所50Aを配設している。また、圧着箇所相当部60PAは、端子軸方向Ltの先端側Ltfから基端側Ltbに沿って加工前の先端側開口閉塞部60Paに相当する先端側開口閉塞相当部60PaA、加工前の導体圧着部60Pbに相当する導体圧着箇所相当部60PbA、加工前の段差部60Pcに相当する段差部分相当箇所60PcA、加工前の被覆圧着部60Pdに相当する被覆圧着箇所相当部60PdAをこの順に配設している。
【0141】
図19に示すように、先端側開口閉塞相当部60PaAは、圧着箇所相当部60PAと封止部相当箇所50Aとを連設可能に端子軸方向Ltの基端側Ltbから先端側Ltfに沿って徐々に幅小に形成している。
段差部分相当箇所60PcAは、段差部60Pcに相当し、導体圧着箇所相当部60PbAと被覆圧着箇所相当部60PdAとのそれぞれの幅に応じて端子軸方向Ltの基端側Ltbから先端側Ltfに沿って徐々に幅小になるように、幅方向の外側縁部を端子軸方向Ltに対して傾斜させて形成している。
【0142】
さらに、被覆圧着箇所相当部60PdA、及び導体圧着箇所相当部60PbAについても、端子軸方向Ltの基端側Ltbから先端側Ltfに沿って徐々に幅小になるように、それぞれの幅方向の外側縁部を端子軸方向Ltに対して傾斜させて形成している。
【0143】
加えて、圧着箇所相当部60PAの基端側端部については、端子幅方向Wtにおける中間部分に有する繋ぎ部310に対して端子幅方向Wtの外側部分が、キャリア320との端子軸方向Ltの間隔が徐々に広がるように端子幅方向Wtに対して傾斜させて形成している。
【0144】
一方、封止部相当箇所50Aの端子幅方向Wtの両側の外側端部は、端子軸方向Ltに対して傾斜せずに平行に形成している。
【0145】
また、導体圧着箇所相当部60PbAには、セレーション68(係合溝)を形成している。セレーション68は、導体圧着箇所相当部60PbAの端子幅方向Wt全長に亘って形成するとともに、端子幅方向Wtの外側に対して中央部分が徐々に端子幅方向Wtの基端側へ湾曲した平面視弓状に形成している。
【0146】
上述した圧着端子10Pは、第5端子加工工程から第6端子加工工程にかけて、上述した端子金具10PAに対して段付き芯棒80を用いて曲げ加工して製造することができる。
【0147】
具体的には、
図21に示すように、段付き芯棒80を端子金具10PAにおける封止箇所相当部50A、及び圧着箇所相当部60PAの端子幅方向Wtの中間部分において端子軸方向Ltに沿って封止部相当箇所50Aから圧着箇所相当部60PAにかけて配置する。
【0148】
このとき、段付き芯棒80の段差部分81と圧着箇所相当部60PAにおける段差部分相当箇所60PcAとを端子軸方向Ltにおいて位置決めした状態に配置する。
【0149】
この状態で適宜、図示しない押圧型により外側から押圧するなどして、封止部相当箇所50A、及び圧着箇所相当部60PAによって段付き芯棒80を囲繞するように封止箇所相当部50A、及び圧着箇所相当部60PAにかけての部分を段付き芯棒80の外周面に沿って円筒状に曲げ加工する。
【0150】
このとき、特に
図21(a)、(b)、(c)に示すように、封止箇所相当部50A、及び圧着箇所相当部60PAは、段付き芯棒80の段差部分81の外周面に弓状の段差部分相当箇所60PcAを当接させながら段付き芯棒80に囲繞する。
【0151】
以上により、段差形状に形成した圧着部60Pを有する圧着端子10Pを形成することができる。
以下では、上述する段差形状に形成した圧着部60Pを有する圧着端子10Pの作用効果について、
図22、及び
図24を用いて説明する。
【0152】
なお、
図22は、圧着部60Pを段差形状にした場合における圧着接続工程後の導体圧着部60Pbの断面図を示し、
図24は、圧着部600を段差形状に形成していない場合における圧着接続工程後の従来の導体圧着部600Pdの断面図を示している。
【0153】
上述する段差形状に形成した圧着部60Pの場合、導体圧着部60Pbを、段差形状に形成していない従来の圧着部600Pにおける導体圧着部600Pdと比較して導体先端部510Tとの隙間が僅かになるため、導体先端部510Tと圧着接続する際の径方向内側への圧縮量を抑えることができ、余肉の発生を防止することができる。
【0154】
従って、導体圧着部60Pbを導体先端部510Tに対して密着させることができ、圧着部60P内部の止水性を向上させることができる。
【0155】
詳述すると、段差形状に形成していない従来の圧着部600は、段差形状に形成した本実施形態の圧着部60Pに比べて、導体圧着部60Pbと導体先端部510Tとの隙間が大きいため、導体圧着部60Pbを導体先端部510Tに対して圧着接続する際に、径方向内側への変形量が大きくなる。
【0156】
そうすると、従来の導体圧着部600Pbは、導体先端部510Tに対して圧着接続した際に余肉が発生し、
図24に示すように、該余肉が径方向内側に張り出すように倒れるいわゆる内倒れ部分600zが生じる。
【0157】
この圧着部60に内倒れ部分600zが生じた場合、電線先端部500Tと圧着接続する際に、内倒れ部分600zが障害となって、導体圧着部60Pbの内部空間の隅部まで導体先端部510Tが行き渡らず、
図24中の一部拡大図のように、導体圧着部60Pbと導体先端部510Tとの間に隙間が発生するおそれがあった。
【0158】
すなわち、段差形状に形成していない従来の圧着部600Pの場合、電線先端部500Tと圧着接続した際に、導体圧着部600Pbと導体先端部510Tとの密着性が低下し、毛細管現象により内部に水分が侵入するなどして所望の電気的特性を得られないという課題があった。
【0159】
これに対して、段付き形状に形成した本実施形態の圧着部60Pは、上述したように段付き形状に形成していない圧着部600Pに比べて、電線先端部500Tを挿入した状態において、導体圧着部60Pbと導体先端部510Tとの隙間を小さくすることができる。
【0160】
このため、圧着部600Pと電線先端部500Tとを圧着接続しても、導体圧着部60Pbに内倒れ部分600zが発生することなく、導体圧着部60Pbと導体先端部510Tとを密着した状態で圧着することができ、優れた電気的特性を得ることができる。
【0161】
さらに、圧着部60Pにおける段差部60Pcを、被覆圧着部60Pdから導体圧着部60Pbにかけて滑らに縮径させた段差形状に形成したため、電線先端部500Tを圧着部60Pの内部へ挿入する際に、導体先端部510Tが段差部60Pcに引っ掛かかって導体先端部510Tを構成する素線がばらけるこがなく、電線先端部500Tを圧着部60Pの内部へ奥までスムーズに挿入することができる。
【0162】
封止箇所相当部50A、及び圧着箇所相当部60PAは、平面視弓状に形成した段差部分相当箇所60PcAを、段付き芯棒80の段差部分81の外周面に押し当てるようにして、端子軸方向Ltにおいて位置決めした状態で段付き芯棒80に囲繞するように曲げ加工する。
【0163】
これにより、圧着箇所相当部60PAを圧着部60Pとして曲げ加工した状態において、端子軸方向Ltにおいて段差部60Pcの位置が位置ズレすることなく、段差部分相当箇所60PcAに段差部60Pcを確実に形成することができる。
【0164】
従って、圧着端子10Pを大量に生産した場合であっても、圧着端子10Pごとに圧着部の端子軸方向Ltにおける段差部60Pcがばらつくことがなく、所望の位置に該段差部60Pcを形成することができる。
【0165】
詳述すると、仮に、圧着部60Pの端子軸方向Ltにおいて段差部60Pcの形成位置がズレすることにより、導体圧着部60Pbが端子軸方向Ltにおいて、所望の長さより長く形成された場合、導体圧着部60Pbは、被覆圧着部60Pdよりも小径に形成しているため、電線先端部500Tを圧着部60Pの内部に挿入している途中で、圧着部60Pの段差部60Pcに絶縁被覆先端部211の先端が引っ掛かり、電線先端部500Tを圧着部60Pの内部においてしっかりと奥まで挿入することができず、導体圧着部60Pbの内部において導体先端部510Tが挿入されていない空間が形成されてしまうおそれがあった。そうすると、圧着部60Pと電線先端部500Tとを圧着接続した際に、導体圧着部60Pbの内部に隙間が形成されてしまうおそれがあった。
【0166】
逆に、圧着部の端子軸方向Ltにおいて段差部60Pcの形成位置がズレすることにより、被覆圧着部60Pdが端子軸方向Ltにおいて、所望の長さより長く形成された場合、電線先端部500Tを圧着部60Pの内部に挿入する際に、圧着部60Pの内部において、導体先端部510Tが圧着部60Pの先端側の壁面に突き当たるまで、或いは突き当たってもさらに電線先端部500Tを挿入し続けてしまうおそれがあり、導体先端部510Tの先端が曲がるおそれがあった。
【0167】
さらに、被覆圧着部60Pdが端子軸方向Ltにおいて、所望の長さより長く形成された場合には、電線先端部500Tを圧着部の内部において適切な挿入量で挿入したとしても、導体先端部510Tの基端側Xbの周囲には被覆圧着部60Pdが位置することになる。
【0168】
ここで、導体先端部510Tと被覆圧着部60Pdとの隙間は、導体先端部510Tと導体圧着部60Pbとの隙間と比較して大きくなるため、電線先端部500Tと圧着部60Pとを圧着接続した際に、導体先端部510Tの基端側Xbにおいて、圧着部60Pには、いわゆる内倒れ部分600zが形成されるおそれもあった。
【0169】
これに対して、本実施形態の圧着端子10Pは、段付き芯棒80を用いて、圧着部60Pの端子軸方向Ltにおける所望の位置に段差部60Pcを形成したため、圧着部60Pの内部に電線先端部500Tを適切な挿入量でスムーズに挿入することができる。
【0170】
従って、圧着部60Pと電線先端部500Tとが密着した状態で圧着接続した良好な電気的接続性を有する端子付き電線を効率よく製造することができる。
【0171】
また、
図19に示すように、本実施形態の圧着端子10Pは、該圧着端子10Pを曲げ加工する前の端子金具10PAの状態において、圧着箇所相当部60PA、詳しくは、先端側開口閉塞相当部60PaA、導体圧着箇所相当部60PbA、段差部分相当箇所60PcA、及び被覆圧着箇所相当部60PdAにおける端子幅方向Lwの両側の外側端部を、上述したように、端子軸方向Ltの基端側Ltbから先端側Ltfに沿って徐々に幅小になるように、端子軸方向Ltに対して傾斜させて形成している。
【0172】
さらに、圧着箇所相当部60PAの基端側端部についても、端子幅方向Wtにおける中間部分を有する繋ぎ部310に対して端子幅方向Wtの外側部分を、キャリア320との間隔が端子幅方向Wtの外側に沿って徐々に広がるように端子幅方向Wtに対して傾斜させて形成している。
【0173】
圧着箇所相当部60PAは、の外周縁を上述した形状で形成することにより、筒状に曲げ加工する際に用いる図示しない押圧型の押圧による圧縮により、該圧着箇所相当部60PAに生じる材料の伸びを考慮して形成することができる。
【0174】
これにより、筒状に曲げ加工する際に用いる押圧型の押圧による圧縮により、封止箇所相当部50A、及び圧着箇所相当部60PAのそれぞれを封止部50、及び圧着部60Pとして曲げ加工した状態において、周方向において対向する端部6ot同士を端子軸方向Ltに沿って隙間なく突き合わせることができ、導体圧着部60Pb、被覆圧着部60Pdとを備えた段付の圧着部60Pを確実に形成することができる。
【0175】
なお、上述した段差部60Pcを有した圧着部60Pを備えた圧着端子10PAの製造においても圧着部60Pのスプリングバックを考慮して一旦、高曲げ率加工工程を行った後、整形工程を行い、円筒状に曲げ加工してもよい。
【0176】
また、上述した圧着端子10,10Pに接続する被覆電線500は、アルミニウムやアルミ二ウム合金からなるアルミ系の導体510を絶縁被覆520で被覆するだけに限らず、例えば、銅や銅合金からなる銅系の導体510を絶縁被覆520で被覆してもよく、また、導体510は、銅系素線の周りにアルミニウム素線を配置して束ねた異種混合導体や、逆にアルミニウム素線の周りに銅系素線を配置して束ねた異種混合導体などであってもよい。