(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送風手段は、前記加熱手段の上部に前記脱硝触媒を配置して前記加熱手段による加熱により自然ドラフト力を発生させ送風をおこなうことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の脱硝触媒の劣化再生システム。
前記送風手段は、前記ディーゼル機関の始動に用いられる手段又は前記ディーゼル機関に装備された手段であることを特徴とする請求項9に記載の脱硝触媒の劣化再生システム。
前記触媒の劣化予測手段をさらに備え、前記劣化予測手段の予測値に基づいて再生処理を実施することを特徴とする請求項6から請求項11のうちの1項に記載の脱硝触媒の劣化再生システム。
前記燃焼機器の運転停止後、1時間以内に前記脱硝触媒の再生処理を開始することを特徴とする請求項6から請求項13のうちの1項に記載の脱硝触媒の劣化再生システム。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を、図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施の形態における排ガスの脱硝システム100の主要構成を示す。脱硝システム100は、
図1に示すように、燃焼機器102、ガス通路103、脱硝触媒104、還元剤供給部106、制御部108及びパージガス供給部110を含んで構成される。
【0037】
燃焼機器102は、内燃機関やガスタービン、例えば船舶用ディーゼル機関等である。脱硝システム100は、燃焼機器102から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物を除去するために用いられる。
【0038】
脱硝触媒104は、排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)をアンモニアと反応させて分解するための触媒である。脱硝触媒104は、チタン・バナジウム系の金属が用いられる。例えば、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)を活性成分にした酸化チタンTiO
2系触媒が使用される。特に、本実施の形態では、脱硝触媒104は、ニオブ(Nb)を添加物として含むことが好適である。ニオブ(Nb)の含有量は、脱硝触媒104に対して0.001wt%以上10wt%以下とすることが好適である。この範囲の含有量とすることによって、脱硝触媒104の耐熱性を向上させることができ、より高温での再生処理及びより速い昇温速度を適用することができる。すなわち、ニオブ(Nb)の添加によって脱硝触媒104に含まれるチタニア粒子同士や他の成分の焼結(シンタリング)が抑制され、脱硝触媒104の細孔の微小構造が維持され、耐蝕性、耐熱性、耐衝撃性を高めることができると推考される。特に、ニオブ(Nb)を0.01wt%以上含有させることによって、より高い耐熱性を発揮させることができる。一方、ニオブ(Nb)の含有量が5wt%を超えると耐熱性の向上効果が飽和し、経済的な不利を招くおそれがある。
【0039】
脱硝触媒104は、ガス通路103内に配置される。脱硝触媒104は、その反応面積を広くするために平板や触媒の細管を束ねた構造とすることが好ましい。例えば、ハニカム構造とすることが好適である。
【0040】
還元剤供給部106は、尿素タンク、ポンプ、尿素バルブ、コンプレッサ、空気バルブ、噴射ノズル及び配管を含んで構成することができる。還元剤供給部106は、噴射ノズルを介して尿素(尿素水)と空気とをガス通路103へ供給するために設けられる。例えば、尿素(尿素水)を還元剤としてガス通路103内へ噴射し、化学式(2)で表される分解反応により生ずるアンモニアを脱硝触媒104の表面に供給する構成としている。尿素タンクは、尿素水((NH
2)
2CO+H
2O)を蓄えるタンクである。ポンプは、尿素タンクと噴射ノズルとを接続する配管の途中に設けられる。ポンプは、尿素タンクに蓄えられている尿素水に圧力を与え、配管及び噴射ノズルを介してガス通路103へ尿素水を供給する。尿素バルブは、配管のポンプの下流に設けられ、ポンプによって加圧された尿素水の噴射ノズルへの供給・遮断を行う。コンプレッサは、噴射ノズルに繋がる配管の途中に設けられる。コンプレッサは、空気を加圧して配管を介して噴射ノズルへ供給する。なお、脱硝システム100を船舶に搭載する場合には、コンプレッサの代わりに船舶に設けられている空気配管の空気を利用してもよい。空気バルブは、配管のコンプレッサの下流に設けられ、コンプレッサによって加圧された空気の噴射ノズルへの供給・遮断を行う。噴射ノズルは、還元剤供給部106からガス通路103へ尿素水を噴射するためのノズルである。噴射ノズルは、配管の先端部を加工して形成され、又は配管の先端部に他部材を接続して構成される。噴射ノズルは、ガス通路103内の脱硝触媒104よりも上流側に配設される。噴射ノズルは、尿素水と空気とを混合させて、適切な供給圧力によってガス通路103へ予め空気と混合された尿素水を噴射する。ただし、還元剤は尿素(尿素水)に限定されるものではない。
【0041】
制御部108は、脱硝システム100を統合的に制御する。制御部108は、CPU、メモリ、入力装置、出力装置、外部インターフェース等を含む一般的なコンピュータで構成することができる。制御部108は、CPUにてメモリに予め記憶させた制御プログラムを読み出して実行することによって脱硝システム100の脱硝触媒104の劣化の予測処理及び劣化に対する再生処理を実行する。また、制御部108は、後述する脱硝触媒104の再生処理時間を計測するための時計(タイマ)を内蔵する。制御部108での処理は後述する。
【0042】
脱硝触媒104は、
図2に示す化学反応系で表されるアンモニア等の還元剤と排ガス中の窒化化合物(NOx)との反応を促進する。排ガスには、一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO
2)等の窒素酸化物(NOx)が含まれ、還元剤供給部106から供給される尿素及び水との反応によって生成されたアンモニアと反応して、化学式(1)で示される反応によって水と窒素に分解される。
【0043】
また、排ガスにSO
2等の硫黄酸化物が含まれる場合、脱硝触媒104は、
図3に示す化学反応系で表される反応を促進する。排ガスに含まれる二酸化硫黄(SO
2)は、還元剤供給部106から供給される尿素及び水との反応によって生成されたアンモニアと反応して、化学式(3)及び(4)で示される反応によって三酸化硫黄(SO
3)や硫安((NH
4)HSO
4)が生成される。なお、化学式(4)の反応は、温度が低くなるにつれて左から右への反応が進行し易く、温度が高くなるにつれて右から左への反応が進行し易くなる平衡反応である。
【0045】
図4は、脱硝システム100のシステムブロック図を示す。脱硝システム100は、
図4に示すように、ガス流量計10、ガス温度計12、窒素酸化物濃度計14,16、硫黄酸化物濃度計18、尿素量注入制御器20、尿素注入器22、発電機24、クラッチ26、排ガス加熱手段28、加熱ヒータ30、ガバナー等負荷調節器32、ディスプレイ34、警報器36、パージガス供給手段38、パージガス加熱手段40、流量制御弁42、ガス温度計44及びエコノマイザ46を含んで構成される。
【0046】
ガス流量計10は、燃焼機器102から排出される排ガス及びパージガス供給部110から供給されるパージガスの流量(空塔速度)を計測して、制御部108へ出力する。なお、脱硝触媒104の空塔速度(SV)は、ガス流量と脱硝触媒104の量との比で表すことができる。ガス温度計12は、燃焼機器102から排出される排ガスの温度及びパージガス供給部110から供給されるパージガスの温度を計測して、制御部108へ出力する。ガス流量計10及びガス温度計12は、既存の流量センサや温度センサを使用することができる。また、ガス流量計10及びガス温度計12は、燃焼機器102と脱硝触媒104との間のガス通路103に設けることが好適である。ガス温度計44は、脱硝触媒104から排出されるガスの温度を計測して、制御部108へ出力する。ガス温度計44は、既存の温度センサを使用することができる。ガス温度計44は、脱硝触媒104の出口側のガス通路103に設けることが好適である。
【0047】
窒素酸化物濃度計14,16は、燃焼機器102から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)の濃度を測定して、制御部108へ出力する。窒素酸化物濃度計14,16としては、化学発光式NOx計や定電圧電解式NOx計、ジルコニア固体電解質を利用した一般的なセンサ等を利用することができる。窒素酸化物濃度計14は、燃焼機器102と脱硝触媒104との間のガス通路103に配置され、脱硝触媒104の入口側の脱硝処理前の排ガス中の窒素酸化物の濃度を測定して出力する。窒素酸化物濃度計16は、脱硝触媒104の出口側に配置され、脱硝触媒104の出口側の脱硝処理後の排ガス中の窒素酸化物の濃度を測定して出力する。
【0048】
硫黄酸化物濃度計18は、燃焼機器102から排出される排ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)の濃度を測定して、制御部108へ出力する。硫黄酸化物(SOx)としては、少なくともSO
2の濃度を測定して出力する。硫黄酸化物濃度計18としては、固体電解質を用いるセンサや紫外線蛍光法(UVF法)を用いるセンサを利用することができる。硫黄酸化物濃度計18は、燃焼機器102と脱硝触媒104との間のガス通路103に配置され、脱硝触媒104の入口側の脱硝処理前の排ガス中の硫黄酸化物の濃度を測定して出力する。
【0049】
尿素量注入制御器20及び尿素注入器22は、還元剤供給部106を構成する要素である。尿素量注入制御器20は、制御部108からの制御信号を受けて、尿素注入器22からガス通路103を介して脱硝触媒104へ排ガス中の窒素酸化物(NOx)を処理するのに適した尿素及び水の量を調整する。尿素注入器22は、先に説明したように尿素タンク、ポンプ、尿素バルブ、コンプレッサ、空気バルブ、噴射ノズル及び配管等を含んで構成され、尿素量注入制御器20によって制御された量の尿素水をガス通路103内へ噴射する。尿素注入器22の注入量の情報は、尿素量注入制御器20を介して制御部108に伝えられる。
【0050】
発電機24は、燃焼機器102から出力されるエネルギーを受けてステータによって形成される磁界中でロータを回転させて発電を行う。発電機24で得られた電気エネルギーは排ガス加熱手段28、加熱ヒータ30、パージガス供給手段38及びパージガス加熱手段40で利用するようにしてもよい。また、クラッチ26は、制御部108からの制御信号を受けてクラッチの開閉を行い、燃焼機器102を発電機24へ接続した状態と接続しない状態とを切り換えるために用いられる。
【0051】
排ガス加熱手段28は、再加熱バーナや電気式再加熱器を含んで構成される。排ガス加熱手段28は、制御部108からの制御信号を受けて、ガス通路103を流れる排ガスを加熱するために設けられる。再加熱バーナは、燃料を気体中に拡散させることにより混合して高温で燃焼させ排ガスの温度を上昇させる。また、電気式再加熱器は、抵抗加熱ヒータ等に電気を通電することによって排ガスの温度を上昇させる。電気式再加熱器を用いる場合、発電機24から出力された電気を用いて加熱を行うことが好適である。
【0052】
加熱ヒータ30は、脱硝触媒104を加熱する手段を含んで構成される。加熱ヒータ30は、制御部108からの制御信号を受けて、脱硝触媒104を直接的に加熱、又は、ガス通路103を流れる排ガスを加熱するために設けられる。加熱ヒータ30としては、例えば、電気誘導加熱ヒータ等とすることが好適である。加熱ヒータ30は、発電機24から出力された電気を用いて加熱を行うことが好適である。
【0053】
ガバナー等負荷調節器32は、燃焼機器102の負荷を調整する手段である。ガバナー32は、制御部108における脱硝触媒104の劣化状況の予測結果に応じて燃焼機器102の出力負荷を調整し、排ガスの温度を上昇又は下降させる。
【0054】
なお、排ガス加熱手段28、加熱ヒータ30及びガバナー32は少なくともいずれか1つを備えればよい。また、排ガス加熱手段28及び加熱ヒータ30は、再加熱バーナ、電気式再加熱器、電気誘導加熱ヒータ等の加熱手段を少なくとも1つ含んでいればよい。
【0055】
ディスプレイ34は、制御部108に含まれ、脱硝触媒104の劣化再生システムの制御状態をユーザに呈示するために用いられる。警報器36は、制御部108に含まれ、脱硝触媒104の劣化に応じてユーザに警告を発する。また、ディスプレイ34に劣化情報を表示し警告してもよい。
【0056】
パージガス供給手段38、パージガス加熱手段40及び流量制御弁42はパージガス供給部110を構成する。パージガス供給手段38、パージガス加熱手段40及び流量制御弁42は、脱硝触媒104の劣化再生処理に使用される。
【0057】
パージガス供給手段38は、燃焼機器102が停止中に行われる脱硝触媒104の再生処理において脱硝触媒104へパージガスを供給する。パージガス供給手段38は、例えば、ブロワやコンプレッサ等のパージガスを圧縮送気できる装置を含んで構成される。パージガス供給手段38は、
図1に示すように、ブロワやコンプレッサ等の装置を駆動させるための補助エンジンや発電機を含んで構成してもよい。
【0058】
パージガス供給手段38は、燃焼機器102の始動に用いられる手段又は燃焼機器102に装備された手段を流用することが好適である。例えば、燃焼機器102の始動用コンプレッサ又は補助ブロアを流用してパージガスを供給することができる。
【0059】
パージガスは、脱硝触媒104を再生処理する際に生ずるガスを脱硝触媒104からパージできる気体であればよく、例えば、空気、窒素、希ガス等を適用することができる。また、再生用ガスとして、一部又は全部を燃焼機器102の排ガスを用いても構わない。パージガスとしては、特に空気を用いることが好適である。
【0060】
パージガス加熱手段40は、加熱バーナや電気式加熱器を含んで構成される。パージガス加熱手段40は、制御部108からの温度制御信号を受けて、パージガス供給手段38から供給されるパージガスを加熱するために設けられる。加熱バーナは、燃料を気体中に拡散させることにより混合して高温で燃焼させパージガスの温度を上昇させる。また、電気式再加熱器は、抵抗加熱ヒータ等に電気を通電することによってパージガスの温度を上昇させる。電気式再加熱器を用いる場合、パージガス供給手段38に含まれる発電機や発電機24から出力された電気を用いて加熱を行うことが好適である。
【0061】
流量制御弁42は、パージガス供給手段38から脱硝触媒104へのパージガスの供給・遮断及び流量(空塔速度)の調整を行う。流量制御弁42は、脱硝触媒104の再生処理が開始されると、制御部108からの流量制御信号に応じてパージガスの流量を制御しつつ脱硝触媒104へのパージガスを供給する。また、流量制御弁42は、脱硝触媒104の再生処理が終了すると閉状態とされてパージガス供給手段38から脱硝触媒104へのパージガスの供給路を遮断する。
【0062】
エコノマイザ46は、排気ガスからの排熱を利用するための熱交換器を備える。エコノマイザ46の筐体内には脱硝触媒104からの排気配管の一部が通され、エコノマイザ46を流れる排気ガスの排熱との熱交換が行われる。エコノマイザ46における熱交換は、制御部108によって制御される。制御部108は、運転操作盤によるユーザからの運転の開始、停止等の運転パラメータの設定や状態の測定値が入力され、これらの入力値に応じてエコノマイザ46に流れる排ガスの量等を調整して排気ガスの排熱との熱交換の制御が行われる。
【0063】
また、エコノマイザ46を設けることによって、脱硝触媒104の劣化再生処理によって生ずる分解生成物(NH
3,SO
3,H
2O)や酸性硫安(NH
4HSO
4)を回収することもできる。したがって、外気への悪影響を抑制することができる。なお、エコノマイザ46に付着した硫安は、水洗洗浄によって取り除くことができ、洗浄後の廃液を回収することによって外部への影響を避けることができる。なお、脱硝触媒104を濡らすと特性劣化する可能性があるので、エコノマイザ46を洗浄する際に脱硝触媒104に水分が届かないように配慮する必要がある。
【0064】
以下、
図5のフローチャートを参照して、脱硝触媒104の再生処理について説明する。以下の処理は、制御部108において制御プログラムを実行することによって実現される。脱硝触媒104の再生処理は、燃焼機器102が停止されている間に行われる。例えば、船舶の停泊中に燃焼機器102を停止させている間に行うことが好適である。
【0065】
ステップS10では、脱硝触媒104の再生処理を開始するか否かが判断される。再生処理を開始する場合にはステップS12に処理を移行し、そうでない場合にはステップS10に戻り、定期的に判断を行う。
【0066】
例えば、制御部108は、燃焼機器102が停止されると所定の期間内に脱硝触媒104の再生処理を開始させるものとすればよい。所定の期間は、燃焼機器102を停止させてから脱硝触媒104の温度が100℃以下となる期間より短いものとすることが好適である。すなわち、脱硝触媒104の温度が100℃以下となった後に再生処理を開始すると、再生処理を実行する際に脱硝触媒104の温度を再度上昇させるための時間が長くなり、再生処理に必要とされる時間が長くなったり、再生処理で消費される電力が大きくなったりする。より具体的には、所定の期間は1時間以内とすることが好適である。
【0067】
また、後述する劣化評価処理において脱硝触媒104に劣化が生じていると判定された場合に脱硝触媒104の再生処理を開始するものとしてもよい。これによって、脱硝触媒104の実際の劣化状態を考慮して再生処理を施すことが可能となる。
【0068】
ステップS12では、パージガスの供給を開始する。制御部108は、パージガス供給部110に対してパージガス供給開始信号を出力し、パージガス供給手段38を動作させる。また、制御部108は、流量制御弁42へ流量制御信号を出力し、流量制御弁42流量制御信号に応じた流量のパージガスを脱硝触媒104へ送出させる。さらに、制御部108は、パージガス加熱手段40へ温度制御信号を出力し、温度制御信号に応じてパージガスを所望の温度に加熱する。パージガスの温度制御は、ガス温度計44からの温度信号が所望の温度となるように、パージガス加熱手段40に対するフィードバック制御によって行ってもよい。
【0069】
これにより脱硝触媒104の再生処理が開始される。すなわち、高温のパージガスを脱硝触媒104へ供給することにより、脱硝触媒104の温度を上昇させ、平衡式(4)を右辺から左辺へ進行するようにさせ、脱硝触媒104に析出した硫安((NH
4)HSO
4)を三酸化硫黄(SO
3)のガスとして排出させる。三酸化硫黄(SO
3)のガスは、パージガスによって脱硝触媒104から効果的に排出される。
【0070】
再生処理の際のパージガスの温度は300℃以上600℃以下とすることが好適である。300℃未満では、脱硝触媒104が十分に加熱されず、平衡式(4)の反応が右辺から左辺へ進み難く、再生処理が必要程度に十分に行われなかったり、再生処理時間が長くなり過ぎたりする。また、600℃以上では、脱硝触媒104に含まれるチタニアが熱溶融し、脱硝触媒104の表面積が低減する等の熱劣化が激しくなり、脱硝触媒104の交換頻度が多くなる等の問題を生ずる。なお、これらの観点から、再生処理の際のパージガスの温度は、より好ましくは350℃以上500℃以下の範囲である。
【0071】
また、パージガスの流量(空塔速度)は、後述するようにパージガスの温度及び再生処理時間によって決定されるが、燃焼機器102を運転している時に排出される排ガスの流量(空塔速度)よりも小さくても十分である。通常、船舶用ディーゼル機関では燃焼機器102の運転時の排ガスの空塔速度は10000〜25000h
-1であるが、パージガスとして必要な空塔速度は、パージガスの温度及び再生処理時間にも依るが、上記好適なパージガスの温度の範囲及び実効的な再生処理時間の範囲に対して1000〜5000h
-1程度である。
【0072】
ここでは、パージガスの温度及びパージガスの流量(空塔速度)を予め設定した値とする。
【0073】
ステップS14では、脱硝触媒104を通過して排気配管に到達したパージガスの温度が取得される。制御部108は、ガス温度計44から出力される温度データを取得する。
【0074】
ステップS16では、脱硝触媒104に供給されるパージガスの流量が出力される。制御部108は、ガス流量計10から出力されるパージガスの流量(空塔速度)データを取得する。
【0075】
ステップS18では、ステップS14で取得されたパージガスの温度及びステップS16で取得されたガス流量(空塔速度)に応じた脱硝触媒104の再生処理時間を算出する。
【0076】
図6は、活性度K/K0を0.2まで劣化させた脱硝触媒104に対して再生処理を行った場合におけるパージガスの流量(空塔速度)と活性度K/K0の回復との関係を示す。ここで、Kは実際の脱硝触媒104の活性度であり、K0は新品の脱硝触媒104の活性度であり、活性度K/K0は実際の脱硝触媒104の活性度を新品の脱硝触媒104で規格化した値である。
図6は、再生処理時間を2時間に限定した場合の活性度K/K0の回復度を示している。
【0077】
図6に示すように、脱硝触媒104の再生処理時間は、パージガスの温度とパージガスの流量(空塔速度)とに応じて変動する。例えば、パージガスの温度を500℃とした場合、パージガスの流量(空塔速度)が1000h
-1であっても2時間の再生処理時間で十分であるが、パージガスの温度を400℃とした場合、2時間の再生処理時間で活性度K/K0を1程度に戻すためにはパージガスの流量(空塔速度)が5000h
-1以上必要である。
【0078】
制御部108は、設定されたパージガスの温度(脱硝触媒104の温度に対応)及びパージガスの流量(空塔速度)に応じて、脱硝触媒104を活性度K/K0の目標値まで再生させるまでの時間を求める。例えば、パージガスの温度及びパージガスの流量(空塔速度)の組み合わせ毎に脱硝触媒104を再生前の活性度K/K0から再生後の活性度K/K0の目標値まで再生させるまでの時間をデータベースとして制御部108の内部メモリに予め登録しておき、ステップS14及びS16において取得されたパージガスの温度及びパージガスの流量(空塔速度)に対応付けられた再生前の活性度K/K0から再生後の活性度K/K0の目標値まで再生させるまでの時間を抽出して再生処理時間として設定する。このとき、再生処理時間は、ステップS14において取得されたパージガスの温度(脱硝触媒104の温度に対応)が高くなるほど短く設定される。
【0079】
ステップS20では、再生処理を継続するか否かが判定される。制御部108は、ステップS12において再生処理が開始された時刻からステップS16で設定された再生処理時間が経過したか否かを判定し、経過していれば再生処理を終了し、そうでなければステップS20の処理を繰り返す。
【0080】
なお、本実施の形態では、パージガスの温度及びパージガスの流量(空塔速度)に基づいて再生処理時間を設定するものとしたが、制御部108に再生処理時間を設定し、再生処理時間に基づいてパージガスの温度及びパージガスの流量(空塔速度)を決定するものとしてもよい。例えば、目標とする再生処理時間を制御部108に入力し、その再生処理時間内において再生前の活性度K/K0から再生後の活性度K/K0の目標値まで再生させることが可能なパージガスの温度の最低値とパージガスの流量(空塔速度)をデータベースから抽出する処理を行えばよい。このとき、目標とする再生処理時間を達成できるパージガスの温度の最低値を選択することにより、脱硝触媒104を最も熱劣化させないように再生処理を行うことができる。
【0081】
また、再生処理時間を複数の選択肢から選択できる構成としてもよい。例えば、船舶の運航スケジュールに応じて、1晩(例えば、8時間)を掛けての再生処理と、2時間の急速再生処理と、を選択できるようにしてもよい。この場合、それぞれの再生処理時間を満足するパージガスの温度及びパージガスの流量(空塔速度)の組み合わせを再生処理時間の選択肢毎に対応付けて予め登録しておき、選択された再生処理時間に対応付けられているパージガスの温度及びパージガスの流量(空塔速度)の組み合わせを用いて再生処理を行えばよい。
【0082】
もちろん、再生処理時間及びパージガスの温度の組み合わせに基づいてパージガスの流量(空塔速度)を決定する構成としてもよいし、再生処理時間及びパージガスの流量(空塔速度)の組み合わせに基づいてパージガスの温度を決定する構成としてもよい。
【0083】
さらに、本実施の形態では、パージガス加熱手段40のみを用いて間接的に脱硝触媒104を加熱する構成としたが、排ガス加熱手段28や加熱ヒータ30を流用してもよい。加熱ヒータ30を用いた場合、直接的に脱硝触媒104を加熱することができる。
【0084】
なお、本実施の形態では、パージガスの温度又は脱硝触媒104の温度を60℃/時間を超えて昇温することが好適である。特に、上記のように脱硝触媒104にニオブ(Nb)を添加した場合に好適である。このように、60℃/時間を超える昇温速度で加熱を行うことによって再生処理時間を短縮することが可能となる。
【0085】
また、本実施の形態では、パージガスの温度に基づいて再生処理時間を設定するものとしたが、脱硝触媒104に温度センサを設置して脱硝触媒104の温度を取得し、脱硝触媒104の温度に基づいて再生処理時間を設定してもよい。この場合、上記再生処理において、パージガスの温度を脱硝触媒104の温度と読み替えて処理を行えばよい。
【0086】
以上のように、本実施の形態における脱硝システム100では、パージガスの温度(脱硝触媒104の温度)、パージガスの流量(空塔速度)及び再生処理時間に基づいて脱硝触媒104の再生処理の条件を制御する。これによって、脱硝触媒104の再生処理を適切に行うことができる。
【0087】
次に、本実施の形態の脱硝システム100の構成の変形例について説明する。上記脱硝システム100は、
図7に示すように、燃焼機器102の後段に脱硝触媒104の再生処理専用のパージガス供給手段38、パージガス加熱手段40及び流量制御弁42を設けた構成である。なお、
図7〜
図12において、実線矢印はガスの流れを示し、破線矢印は制御信号の流れを示す。
【0088】
脱硝システム100の第1の変形例は、
図8に示すように、パージガス加熱手段40を燃焼機器102の排ガスが通るガス通路103に設けた構成を有する。パージガス加熱手段40は、排ガス加熱手段28を流用してもよいし、パージガス専用に排ガス加熱手段28とは別途設けてもよい。
【0089】
脱硝システム100の第2の変形例は、
図9に示すように、パージガス供給手段38を燃焼機器102の始動用コンプレッサ50又は補助ブロア52を流用した構成を有する。始動用コンプレッサ50は、燃焼機器102の吸気配管に接続されており、燃焼機器102を始動させる際に開閉弁50aを開いて燃焼機器102のシリンダ内に圧縮空気を送ることによりピストンの運動を開始するために設けられる。また、補助ブロア52は、燃焼機器102の過給器に接続されており、燃焼機器102を始動させる際にバイパス弁52a,52bを開いて燃焼機器102のシリンダ内に圧縮空気を送ることにより始動を補助するために設けられる。
【0090】
第2の変形例では、始動用コンプレッサ50又は補助ブロア52を用いてパージガスを供給して再生処理を行う。始動用コンプレッサ50を用いる場合、停止中の燃焼機器102のシリンダを介して、パージガスを脱硝触媒104へ供給する。補助ブロア52を用いる場合、停止中の燃焼機器102のシリンダ及び過給器を介して、パージガスを脱硝触媒104へ供給する。パージガスの加熱は、ガス通路103に設けられたパージガス加熱手段40によって行う。
【0091】
なお、第3の変形例では、
図10に示すように、始動用コンプレッサ50又は補助ブロア52からのパージガスの供給のために燃焼機器102を介さないバイパス経路54,56を設けてもよい。この場合、燃焼機器102の始動時にはバイパス弁54a,56aを閉じると共に開閉弁50a及び52cを開いて上記のように燃焼機器102の運転開始を行い、脱硝触媒104の再生処理時にはバイパス弁54a,56aを開くと共に開閉弁50a及び52cを閉じてパージガスを脱硝触媒104へ供給する。
【0092】
また、脱硝システム100の第4の変形例は、
図11に示すように、重力方向に対して下から順にパージガス加熱手段40、脱硝触媒104をアップフローに配置する。このような配置とすることによって、パージガス加熱手段40での加熱によって熱膨張したパージガスの密度が低下し、自然ドラフト力によってパージガスが流量制御弁42を介して脱硝触媒104へ供給される。
【0093】
さらに、脱硝システム100の第5の変形例は、
図12に示すように、第4の変形例に加えて脱硝触媒104を直接加熱する加熱ヒータ30を備えるものとしてもよい。このような構成では、パージガス加熱手段40によるパージガスの加熱に加えて、加熱ヒータ30によって脱硝触媒104を直接的に加熱することができる。
【0094】
なお、上記
図7〜
図12に示した構成要素を適宜組み合わせた構成としてもよいし、適宜省いた構成としてもよい。
【0095】
また、脱硝触媒104の再生処理の開始は、以下の
図13のフローチャートに示す脱硝触媒104の劣化の予測に基づいて行ってもよい。以下の処理は、制御部108において制御プログラムを実行することによって実現される。
【0096】
ステップS30では、排ガスの流量、温度、窒素酸化物濃度及び硫黄酸化物濃度の測定が行われる。制御部108のCPUは、外部インターフェースを介して接続されたガス流量計10、ガス温度計12、窒素酸化物濃度計14,16、硫黄酸化物濃度計18からそれぞれ排ガス流量、排ガス温度、入口側の窒素酸化物濃度、出口側の窒素酸化物濃度及び入口側の硫黄酸化物濃度の測定値を取得する。
【0097】
ステップS32では、燃焼機器102の回転数、トルク、給気圧力、等を処理した還元剤供給部106からの還元剤(尿素)及び水分の注入量、ガバナー等負荷調節器32の燃焼機器負荷値の取得が行われる。制御部108のCPUは、外部インターフェースを介して接続された燃焼機器102、還元剤供給部106及びガバナー32からそれぞれの特性値を取得する。
【0098】
ステップS34では、化学反応モデルを用いて三酸化硫黄(SO
3)の濃度及びアンモニア(NH
3)の濃度を算出する。
図14に示すように、脱硝触媒104内のガス通路103を排ガスの流れる方向に沿って複数の領域A0〜An(nは1以上の整数)に分割し、脱硝触媒104の入口から各領域A1〜Anの境界に排ガスが到達するまでの時間をt1〜tn(各時間の間隔tn−t(n−1)=Δtとする)として、各領域A0〜Anにおける三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度を求める。なお、各領域A0〜Anにおける三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度は近似的に各領域A0〜Anの入口の濃度に等しいとする。
【0099】
三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の反応速度は反応速度式(5)及び(6)に示すように1次反応式で表すことができる。
【0101】
ここで、−ΔC
SO2は二酸化硫黄(SO
2)の濃度減少量、ΔC
SO3は三酸化硫黄(SO
3)の濃度増加量(=−ΔC
SO2:化学式(3)より)、C
SO2は二酸化硫黄(SO
2)の濃度、−ΔC
NH3はアンモニア(NH
3)の濃度減少量、C
NH3はアンモニアの濃度、K
SO2,K
NH3は反応速度係数、F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)は時刻tにおける領域Anの脱硝触媒104の活性度(0≦F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)≦1)である。F
NH3(t,An)はF
SO2(t,An)に等しいものとし、それらの初期値は1とする。
【0102】
各領域の境界におけるアンモニア(NH
3)の反応速度式における反応速度係数K
NH3は、窒素酸化物(NOx)の脱硝率から求めることができる。例えば、窒素酸化物(NOx)の脱硝率をη
NOX%とすると、触媒入口側のアンモニア(NH
3)濃度と窒素酸化物(NOx)の濃度の体積比α(=NH
3/NOx[ppm/ppm])で0≦α≦1のとき、窒素酸化物(NOx)の反応速度式も化学式(6)と同じように1次反応式で表されるとすると、次の関係式(7)が成り立ち、時間tnを代入することによって反応速度係数K
NH3を求めることができる。
【0104】
脱硝反応の化学式(1)より、窒素酸化物(NOx)とアンモニア(NH
3)との反応の当量の割合が決まれば、アンモニア(NH
3)の反応速度係数K
NH3は反応速度係数K
NOxから求めることができる。なお、排ガスの脱硝処理おいては化学式(1)の一酸化窒素(NO)とアンモニア(NH
3)との反応が主であるので、二酸化窒素(NO
2)とアンモニア(NH
3)との反応は近似的に無視してもよい。このように、脱硝触媒104の入口と出口とにおける窒素酸化物(NOx)の濃度の測定値からアンモニア(NH
3)の反応速度係数K
NH3を求めることができる。
【0105】
一方、二酸化硫黄(SO
2)から三酸化硫黄(SO
3)が生成される反応の反応速度係数K
SO2は模擬排ガスによる実験によって求められる。
図15は、試験装置として固定床の小型流通式触媒試験装置(触媒充填量40〜50cc)に模擬排ガスを流した際の二酸化硫黄(SO
2)の酸化率と温度との関係を示す。また、
図16は、触媒に付着した四酸化硫黄(SO
4)の量と脱硝触媒の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20との関係を示す。ここで、K
SO20は実験初期の劣化していない脱硝触媒の反応速度係数K
SO2である。バナジウム系脱硝触媒の場合は、SO
2酸化活性度と脱硝触媒の活性金属が共通のバナジウムであることからF
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
NH3/K
NH30又はK
NOX/K
NOX0から活性度を計算してもよい。
【0106】
触媒としては、バナジウム(V)−タングステン(W)/二酸化チタン(TiO
2)系ハニカム型低温脱硝触媒を用いた。模擬試験では、二酸化硫黄(SO
2)を800ppm、酸素(O
2)を13%、一酸化窒素(NO)を1500ppm、水を10重量%の混合ガスを窒素バランスで流し、還元剤として3%尿素水を400℃の蒸発器でアンモニア(NH
3)に加水分解させて脱硝触媒の上流にてアンモニア(NH
3)換算で1500ppmほど供給した。また、実験系の脱硝触媒の空塔速度(SV)は25000h
-1とした。反応温度は200℃から400℃の範囲で変化させた。
【0107】
このような模擬排ガスによる実験において、文献(Carlo Orsenigo, Ind.Eng.Chem.Res,1998,vol.37,pp.2350-2359)に準じてNDIR式の二酸化硫黄(SO
2)濃度計により除湿処理後の二酸化硫黄(SO
2)濃度を測定し、二酸化硫黄(SO
2)の酸化率は触媒の入口と出口とにおける二酸化硫黄(SO
2)濃度の減少率とした。また、触媒に付着した四酸化硫黄(SO
4)の量は、劣化した触媒を抜き取り、水抽出法・イオンクロマト分析により定量した。
【0108】
このようにして得られた関係から、各温度における二酸化硫黄(SO
2)から三酸化硫黄(SO
3)が生成される反応の反応速度係数K
SO2、及び、触媒に付着した四酸化硫黄(SO
4)の量と脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20を求めることが可能となる。
【0109】
ここで、本実施の形態の脱硝触媒の劣化予測方法及び劣化対策方法における特徴の1つとして、
図15に示すように、400℃までの範囲では反応温度が上昇すると共に二酸化硫黄(SO
2)の酸化率が低下する関係を用いる点が挙げられる。二酸化硫黄(SO
2)の酸化率は従来反応温度の上昇と共に増加すると考えられていたが、実際の脱硝反応における排ガスでは、反応温度が上昇すると共に二酸化硫黄(SO
2)の酸化率が低下する関係となっている。
【0110】
なお、このような傾向はバナジウム(V)−タングステン(W)/二酸化チタン(TiO
2)系ハニカム型低温脱硝触媒に限定されるものではなく、バナジウム系等の他の脱硝触媒においても同様の傾向を示すと考えられる。ただし、400℃を超える温度範囲では、反応温度の上昇と共に二酸化硫黄(SO
2)の酸化率が上昇することも考えられる。
【0111】
このようにして得られた反応速度係数K
SO2、反応速度係数K
NH3及び脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20を反応速度式(6)及び(7)に当てはめ、時刻Tにおける各領域A0〜Anにおける三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度を求める。
【0112】
ステップS36では、ステップS34にて算出した各領域A0〜Anにおける三酸化硫黄(SO
3)のうち硫安((NH
4)HSO
4)として析出する量を算出する。ここでは、上記平衡式(8)を用いて硫安((NH
4)HSO
4)として析出する量を算出する。ここで、P
SO3は三酸化硫黄(SO
3)の分圧、P
NH3はアンモニア(NH
3)の分圧、Rは気体常数及びTは温度である。
【0114】
ここで、P
SO3は三酸化硫黄(SO
3)の分圧、P
NH3はアンモニア(NH
3)の分圧、Rは気体常数及びTは温度である。なお、平衡式(8)は、文献(S Matsuda et.al,Ind.Eng.Prod.Res.,Dev.1982,vol.21,pp.48-52)に開示されている。
【0115】
平衡式(8)では、三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の分圧(濃度)の積は温度の関数で表される。そこで、ステップS34で求めたアンモニア(NH
3)の濃度を分圧換算して、排ガスの温度Tmpと共に平衡式(8)に代入することによって、その状態においてガスとして存在し得る三酸化硫黄(SO
3)の分圧を求めることができる。そして、ガスとして存在し得る三酸化硫黄(SO
3)の分圧を濃度換算し、ステップS34で求めた三酸化硫黄(SO
3)の生成濃度から減算することによって、硫安((NH
4)HSO
4)として脱硝触媒104の表面に析出する量を算出することができる。なお、硫安の平衡計算は、化学式(4)の文献平衡データや化学平衡計算ソフトで計算代理してもよい。
【0116】
さらに、脱硝触媒104の表面に析出する硫安((NH
4)HSO
4)の量を時刻Tまでに既に析出した硫安((NH
4)HSO
4)の量に累積加算することによって、各領域A0〜Anにおける硫安((NH
4)HSO
4)の析出累積値を算出することができる。
【0117】
ステップS38では、ステップS36で求めた各領域A0〜Anにおける硫安((NH
4)HSO
4)の析出累積値に基づいて、各領域A0〜Anにおける脱硝触媒104の活性度を求める。
【0118】
図16に示すように、模擬ガスによる実験によって触媒に付着した四酸化硫黄(SO
4)の量と脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20を予め求めておき、各領域A0〜Anにおける硫安((NH
4)HSO
4)の析出総量から脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20を得る。
【0119】
ステップS40では、ステップS38で得られた脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20に基づいて脱硝触媒104の再生処理を行うか否かを判定する。
【0120】
再生処理は、例えば、各領域A0〜Anにおける脱硝触媒104の活性度の値が所定の基準閾値を下回った場合に行うものとすることができる。また、例えば、各領域A0〜Anにおける脱硝触媒104の活性度の平均値が所定の基準閾値を下回った場合に行うものとしてもよい。ただし、これらに限定されるものではなく、脱硝触媒104の活性度に基づいた処理であればよい。
【0121】
劣化対策処理を行う場合には、
図5に示した再生処理のフローチャートのステップS12以降の処理に移行する。そうでない場合にはステップS30に処理を移して次の時刻Tにおける劣化予測処理を行う。
【0122】
また、劣化対策処理では、例えば、ディスプレイ34に脱硝触媒104の活性度が基準閾値を超えたことを示す情報を表示させてユーザ(燃焼機器102の管理者)に対して警告を呈示するものとしてもよい。また、警報器36から音や光を発することによってユーザ(燃焼機器102の管理者)に対して警告を呈示するものとしてもよい。
【0123】
この場合、ユーザは、手動で排ガスの温度Tmpを上昇させる処理を実行させたり、燃焼機器102を停止させて脱硝触媒104の再生処理を開始させたりすることができる。
【0124】
以下に、上記処理についてより具体的に説明する。脱硝処理開始時には、ステップS30からS32では各種データが取得され、ステップS34にて、各領域A0〜Anの脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20は1(劣化なし)として、脱硝触媒104の入口から流入した排ガスによる各領域A0〜Anの出口側境界の三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度が求められる。すなわち、時刻T=0において領域A0を通過する時間Δtでの三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度は、領域A0での活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20を1として反応速度式(5)及び(6)に反応速度係数K
SO2,K
NH3及び触媒入口部の排ガスにおける二硫化硫黄(SO
2)及びアンモニア(NH
3)の濃度を代入して求めることができる。時刻T=0に脱硝触媒104の入口から流入した排ガスは時刻t1、t2、・・・tnに各領域A1〜Anの境界に到達することになるので、時刻t1において領域A1を通過する時間Δtでの三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度は、時刻t1における領域A1での活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20を1として反応速度式(5)及び(6)に反応速度係数K
SO2,K
NH3及び領域A1に到達する二硫化硫黄(SO
2)及びアンモニア(NH
3)の濃度を代入して求めることができる。同様に、時刻t2において領域A2を通過する時間Δtでの三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度、時刻t3において領域A3を通過する時間Δtでの三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度・・・時刻tnにおいて領域Anを通過する時間Δtでの三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度を算出することができる。
【0125】
次に、ステップS36にて、時刻T=0における領域A0での三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度、時刻t1における領域A1での三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度・・・及び反応(排ガス)の温度Tmpから、時刻T=0における領域A0での硫安((NH
4)HSO
4)の析出量、時刻t1における領域A1での硫安((NH
4)HSO
4)の析出量・・・を求める。この算出された析出量を時刻T=0までの領域A0での硫安((NH
4)HSO
4)の析出量の累積値、時刻t1における領域A1での硫安((NH
4)HSO
4)の析出量の累積値・・・の初期値とする。
【0126】
ステップS38では、時刻T=0における各領域A0〜Anの硫安((NH
4)HSO
4)の析出量の累積値から領域A0の脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20を求める。他の領域A1〜Anには未だ排ガスは到達していないので、脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20は1のままとなる。
【0127】
ステップS40では、ステップS38で求められた各領域A0〜Anの脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20に基づいて劣化に対する再生処理を行うか否かを判定し、再生処理を行わない場合にはステップS30に処理を戻す。
【0128】
ステップS30からS32では各種データが再び取得され、ステップS34にて、時刻T=Δtに脱硝触媒104の入口から流入した排ガスによって三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度が求められる。ここでは、領域A0についてはステップS38において新たに得られた活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20を用いて濃度を算出し、他の領域A1〜Anについては1(劣化なし)として三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度が求められる。すなわち、時刻T=Δtにおいて領域A0を通過する時間Δtでの三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度は、ステップS38において時刻T=0における処理で得られた領域A0での活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20の値を用いて、反応速度式(5)及び(6)に反応速度係数K
SO2,K
NH3及び触媒入口部の排ガスにおける二硫化硫黄(SO
2)及びアンモニア(NH
3)の濃度を代入して求めることができる。時刻T=Δtに脱硝触媒104の入口から流入した排ガスは時刻t1、t2、・・・tn後に各領域A1〜Anの境界に到達することになるので、時刻Δt+t1において領域A1を通過する時間Δtでの三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度は、時刻Δt+t1における領域A1での活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20を1として反応速度式(5)及び(6)に反応速度係数K
SO2,K
NH3及び領域A1に到達する二硫化硫黄(SO
2)及びアンモニア(NH
3)の濃度を代入して求めることができる。同様に、時刻Δt+t2において領域A2を通過する時間Δtでの三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度、時刻Δt+t3において領域A3を通過する時間Δtでの三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度・・・時刻Δt+tnにおいて領域Anを通過する時間Δtでの三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度を算出することができる。
【0129】
次に、ステップS36にて、時刻T=Δtにおける領域A0での三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度、時刻Δt+t1における領域A1での三酸化硫黄(SO
3)及びアンモニア(NH
3)の濃度・・・及び反応(排ガス)の温度Tmpから、時刻T=Δtにおける領域A0での硫安((NH
4)HSO
4)の析出量、時刻Δt+t1における領域A1での硫安((NH
4)HSO
4)の析出量・・・を求める。この算出された析出量から時刻T=Δtまでの領域A0での硫安((NH
4)HSO
4)の析出量の累積値を求める。すなわち、領域A0については時刻T=0及びT=Δtにおける硫安((NH
4)HSO
4)の析出量の総和が累積値となり、領域A1については時刻T=0に対する処理で得られた時刻T=t1(=Δt)における硫安((NH
4)HSO
4)の析出量が累積値となる。領域A2〜Anについてはガスとして存在し得る三酸化硫黄(SO
3)の分圧より、各領域A2〜Anにおいて触媒で酸化し生成される三酸化硫黄(SO
3)の生成濃度が下回り、硫安((NH
4)HSO
4)の析出量は0となる。
【0130】
ステップS38では、時刻T=Δtにおける各領域A0及びA1の硫安((NH
4)HSO
4)の析出量の累積値から領域A0及びA1の脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20を求める。他の領域A2〜Anには硫安析出量が未だ0なので、脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20は1のままとなる。
【0131】
ステップS40では、ステップS38で求められた各領域A0〜Anの脱硝触媒104の活性度F
SO2(t,An),F
NH3(t,An)=K
SO2/K
SO20に基づいて脱硝触媒104の再生処理を行うか否かを判定し、再生処理を行わない場合にはステップS30に処理を戻す。
【0132】
このような処理を繰り返すことによって、脱硝触媒104の劣化予測処理を実行し、予測結果に基づいて脱硝触媒104の再生処理を開始することができる。ただし、劣化予測処理は上記に限定されるものではなく、燃焼機器102からの排ガスにアンモニア系物質を添加して脱硝触媒104で窒素酸化物の分解を行う排ガス処理において、硫黄酸化物による脱硝触媒104の劣化を少なくとも温度Tmpと硫黄酸化物の酸化率との関係に基づいて予測するものであればよい。特に、温度Tmpと硫黄酸化物の酸化率との関係は、温度が上がるほど酸化率が下がる関係とすることが好適であるが、温度が上がるにつれて二酸化硫黄(SO
2)の酸化率が上がる温度域又は当該特性の触媒に用いることも可能である。
【0133】
また、燃焼機器102から排出される排ガスの時間的な変化が予想できる場合には、その排ガスの性状(排ガスの流量、温度、窒素酸化物濃度及び硫黄酸化物濃度等)の変化の予想値に基づいて、脱硝触媒104の劣化の将来的な予測を行うことも可能である。
【0134】
例えば、燃焼機器102から排出される排ガスの性状が時間的に変化しない場合には、劣化予測処理においてステップS30で最初に取得した排ガスの性状(排ガスの流量、温度、窒素酸化物濃度及び硫黄酸化物濃度等)に基づいて将来に亘って脱硝触媒104に析出される硫安((NH
4)HSO
4)の量を算出し、その量から脱硝触媒104の活性度が所定の基準閾値を超える時刻を求め、その予想時刻をユーザに呈示するものとしてもよい。