(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機金属化合物が、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物及び有機シリル化合物からなる群から選ばれるものである、請求項5記載の方法。
前記有機金属化合物が、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物及び有機シリル化合物からなる群から選ばれるものである、請求項13記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ペンタセン骨格の6位と13位に置換基を持つペンタセン誘導体をより簡便な方法で、高選択的に製造する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したように、本願発明者らは、ジヨード化合物をカップリング反応させることにより、従来技術の問題点を解決してアルキル基をペンタセンの6位及び13位に導入できることを既に報告している。しかし、この方法では、ペンタセン骨格を形成する前の原料に置換基を導入している。ペンタセン骨格を形成した後に任意の置換基を導入することができれば、製造方法としてはより簡便になり、応用範囲が広くなる。
そこで、本願発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、まず、6位と13位がハロゲン原子で置換された6,13−ジハロゲンジヒドロペンタセン誘導体を合成し、これを種々の有機金属化合物とクロスカップリング反応させることで、5,14−ジヒドロペンタセン化合物の6位及び13位に様々な置換基を高選択的に導入できることを見出した。さらに、得られた6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体を芳香族化することで、6位及び13位に任意の置換基を持つペンタセン誘導体を高選択的に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に示した6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体及びそれを用いた6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の製造方法ならびに6,13−置換―ペンタセン誘導体の製造方法等に関するものである。
【0009】
[1]下記式(I):
【化3】
[式中、X
1及びX
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものである。]
で示される6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体。
[2]X
1及びX
2が、ヨウ素原子である、[1]記載の誘導体。
[3]R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルキル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリール基又は置換基を有していてもよいシリル基である、[1]又は[2]記載の誘導体。
[4]R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が、水素原子である、[1]〜[3]のいずれか1項記載の誘導体。
【0010】
[5]下記式(II):
【化4】
[式中、A
1及びA
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいヘテロアリール基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものであり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものである。]
で示される6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の製造方法であって、
下記式(I):
【化5】
[式中、X
1及びX
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、前記式(II)におけるものと同一である。]
で示される6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体と、前記式(II)で定義したA
1又はA
2を含む有機金属化合物とを遷移金属触媒の存在下で反応させる工程を含む、方法。
[6]前記有機金属化合物が、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物及び有機シリル化合物からなる群から選ばれるものである、[5]記載の方法。
[7]前記有機金属化合物が、式(1)〜(6)で示される化合物のいずれかである、[5]又は[6]記載の方法。
RLi (1)
RMgY (2)
R
3Al (3)
RZnY (4)
RBY
2 (5)
RSiR’
3 (6)
[式中、Rは、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、前記式(II)で定義したA
1又はA
2であり、Yは、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子又はヒドロキシ基であり、R’はC
1〜C
10アルキル基である。]
[8]前記遷移金属触媒は、ニッケル錯体又はパラジウム錯体を含むものである、[5]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9]A
1及びA
2が、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルキル基、置換基を有していてもよいC
2〜C
20アルケニル基、置換基を有していてもよいC
2〜C
20アルキニル基、置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基である、[5]〜[8]のいずれか1項記載の方法。
[10]X
1及びX
2が、ヨウ素原子である、[5]〜[9]のいずれか1項記載の方法。
[11]R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルキル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリール基又は置換基を有していてもよいシリル基である、[5]〜[10]のいずれか1項記載の方法。
[12]R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が、水素原子である、[5]〜[11]のいずれか1項記載の方法。
【0011】
[13]下記式(III):
【化6】
[式中、A
1及びA
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいヘテロアリール基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、ヘテロアリール基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものであり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものである。]
で示される6,13−置換−ペンタセン誘導体の製造方法であって、
下記式(I):
【化7】
[式中、X
1及びX
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、前記式(III)におけるものと同一である。]
で示される6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体と、前記式(III)で定義したA
1又はA
2を含む有機金属化合物とを遷移金属触媒の存在下で反応させる工程と、
前記工程で得られた化合物を、脱水素試薬の存在下、芳香族化する工程とを含む、方法。
[14]前記有機金属化合物が、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物及び有機シリル化合物からなる群から選ばれるものである、[13]記載の方法。
[15]前記有機金属化合物が、式(1)〜(6)で示される化合物のいずれかである、請求項13又は14記載の方法。
RLi (1)
RMgY (2)
R
3Al (3)
RZnY (4)
RBY
2 (5)
RSiR’
3 (6)
[式中、Rは、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、前記式(III)で定義したA
1又はA
2であり、Yは、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子又はヒドロキシ基であり、R’はC
1〜C
10アルキル基である。]
[16]前記遷移金属触媒は、ニッケル錯体又はパラジウム錯体を含むものである、[13]〜[15]のいずれか1項に記載の方法。
[17]A
1及びA
2が、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルキル基、置換基を有していてもよいC
2〜C
20アルケニル基、置換基を有していてもよいC
2〜C
20アルキニル基、置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基である、[13]〜[16]のいずれか1項記載の方法。
[18]X
1及びX
2が、ヨウ素原子である、[13]〜[17]のいずれか1項記載の方法。
[19]R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルキル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリール基又は置換基を有していてもよいシリル基である、[13]〜[18]のいずれか1項記載の方法。
[20]R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が、水素原子である、[13]〜[19]のいずれか1項記載の方法。
【0012】
[21]下記式(IV):
【化8】
[式中、X
1及びX
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものであり、R
a及びR
bは、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、C
1〜C
20アルキル基又はC
6〜C
20アリール基である。]
で示される錯体化合物。
[22]下記式(II):
【化9】
[式中、A
1及びA
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいヘテロアリール基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、ヘテロアリール基;アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものであり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものである。]
で示される6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の製造方法であって、
下記式(IV):
【化10】
[式中、X
1及びX
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、前記式(II)におけるものと同一であり、R
a及びR
bは、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、C
1〜C
20アルキル基又はC
6〜C
20アリール基である。]
で示される錯体化合物と、前記式(II)で定義したA
1又はA
2を含む有機金属化合物とを反応させる工程を含む、方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、新規な化合物である6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体を提供する。本発明の6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体を用いることにより、6位及び13位に様々な置換基を持つ6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体をより簡便な方法で製造することができる。更には、6位及び13位に様々な置換基を持つ6,13−置換−ペンタセン誘導体をより簡便な方法で製造することができる。本発明の製造方法によれば、目的の化合物を高選択的に製造することができる。本発明はまた、上記製造方法における中間体及び該中間体を用いた6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のジハロゲン化ジヒドロペンタセン誘導体及びそれを用いた6,13位置換ジヒドロペンタセン誘導体の製造方法ならびに6,13位置換ペンタセン誘導体等について詳しく説明する。
【0016】
〔1〕6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体
本発明の6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体は、下記式(I)で示される化合物である。
【化11】
[式中、X
1及びX
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものである。]
【0017】
本発明の6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体は、6位及び13位にハロゲン原子を持ち、5位及び14位以外の側鎖に任意の置換基R
1〜R
10を有している。本発明の6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体は、5位及び14位がジヒドロ化しているために有機溶媒への溶解性がよく、本発明の6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の6位及び13位に任意の置換基を高選択的に導入することができる。
【0018】
本明細書において、「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。中でも、臭素またはヨウ素が好ましい。
【0019】
本明細書において、「C
1〜C
20炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C
1〜C
20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C
1〜C
20炭化水素基」には、C
1〜C
20アルキル基、C
2〜C
20アルケニル基、C
2〜C
20アルキニル基、C
4〜C
20アルキルジエニル基、C
6〜C
18アリール基、C
7〜C
20アルキルアリール基、C
7〜C
20アリールアルキル基、C
4〜C
20シクロアルキル基、C
4〜C
20シクロアルケニル基、(C
3〜C
10シクロアルキル)C
1〜C
10アルキル基などが含まれる。
【0020】
本明細書において、「C
1〜C
20アルキル基」は、C
1〜C
12アルキル基であることが好ましく、C
1〜C
10アルキル基であることがより好ましく、C
1〜C
6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「C
2〜C
20アルケニル基」は、C
2〜C
10アルケニル基であることが好ましく、C
2〜C
6アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「C
2〜C
20アルキニル基」は、C
2〜C
10アルキニル基であることが好ましく、C
2〜C
6アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。また特に制限するわけではないが、トリイソプロピルシリル基などのシリル基を置換基に有するアルキニル基などを挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「C
4〜C
20アルキルジエニル基」は、C
4〜C
10アルキルジエニル基であることが好ましく、C
4〜C
6アルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「C
6〜C
18アリール基」は、C
6〜C
12アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0025】
本明細書において、「C
7〜C
20アルキルアリール基」は、C
7〜C
12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「C
7〜C
20アリールアルキル基」は、C
7〜C
12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0027】
本明細書において、「C
4〜C
20シクロアルキル基」は、C
4〜C
10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0028】
本明細書において、「C
4〜C
20シクロアルケニル基」は、C
4〜C
10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0029】
本明細書において、「C
1〜C
20アルコキシ基」は、C
1〜C
10アルコキシ基であることが好ましく、C
1〜C
6アルコキシ基であることがより好ましい。「C
1〜C
20アルコキシ基」の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
【0030】
本明細書において、「C
6〜C
18アリールオキシ基」は、C
6〜C
12アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
【0031】
本明細書において、「C
1〜C
20アルコキシカルボニル基」は、C
1〜C
10アルコキシカルボニル基であることが好ましく、C
1〜C
6アルコキシカルボニル基であることがより好ましい。アルコキシカルボニル基の例としては、制限するわけではないが、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−メトキシエトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等を挙げることができる。
【0032】
本明細書において、「C
6〜C
20アリールオキシカルボニル基」は、C
6〜C
12アリールオキシカルボニル基であることが好ましく、C
6〜C
10アリールオキシカルボニル基であることがより好ましい。アリールオキシカルボニル基の例としては、制限するわけではないが、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル、フェニルフェノキシカルボニル等を挙げることができる。
【0033】
また、本明細書において、「ヘテロアリール基」は、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子から選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子を含有する単環式、多環式又は縮合環式ヘテロアリール基である。中でも、5員又は6員の単環式へテロアリール基及びそれらが単結合で結合した多環式へテロアリール基が好ましい。ヘテロアリール基の例としては、イミダゾリル、ピリジル、フリル、ピロリル、チオフェニル、ビチオフェニルなどが挙げられる。
【0034】
本明細書において、炭化水素基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれる。これらの置換基の数は、1または2以上であってもよい。
【0035】
本明細書において、「置換基を有していてもよいカルバモイル基(−C(=O)NH
2)」の例としては、制限するわけではないが、モノ−C
1〜C
6アルキル−カルバモイル(メチルカルバモイル、エチルカルバモイルなど)、ジ−C
1〜C
6アルキル−カルバモイル(ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイルなど)等を挙げることができる。
【0036】
本明細書において、「置換基を有していてもよいアミノ基」の例としては、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等が好ましく挙げられる。
【0037】
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル基」の例としては、ジメチルシリル、ジエチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル、トリイソプロピル等が好ましく挙げられる。
【0038】
本発明の一実施態様として、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が、それぞれ互いに独立して、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルキル基又は置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリール基が好ましく、中でも、水素原子が好ましい。
【0039】
本発明の6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体は、公知の反応を組み合わせることにより合成することができる。例えば、本発明の6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体は、下記の合成スキームに従って合成することができる。
【化12】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、X
1及びX
2は、上記の意味を有する。Xは、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子を示し;Mは、周期表の第3族〜第5族又はランタニド系列の金属を示し;L
1及びL
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、アニオン性配位子を示し、ただし、L
1及びL
2は、架橋されていてもよく;Y
1及びY
2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、脱離基を示す。]
【0040】
まず、化合物(a)と、L
1L
2MY
1Y
2で示される有機金属化合物とを、金属化合物及びハロゲン単体X
2の存在下で反応させて、化合物(b)を得る。ジイン化合物及びL
1L
2MY
1Y
2で示される有機金属化合物からのジハロゲン化合物の生成については、例えば、Takahashi et al., Tetrahedron Letters, Vol. 38, No. 23, pp. 4099-4102 (1997) に記載されており、これと同一又は近似した条件で反応が進行する。
【0041】
L
1L
2MY
1Y
2で示される有機金属化合物において、Mは、周期表の第3族〜第5族又はランタニド系列の金属を示す。Mとしては、周期表第4族又はランタニド系列の金属が好ましく、周期表第4族の金属、即ちチタン、ジルコニウム及びハフニウムが更に好ましい。
【0042】
L
1及びL
2は、互いに独立し、同一又は異なって、アニオン性配位子を示す。アニオン性配位子としては、非局在化環状η
5−配位系配位子、C
1〜C
20アルコキシ基、C
6〜C
20アリールオキシ基又はジアルキルアミド基が好ましい。中でも、非局在化環状η
5−配位系配位子が好ましい。非局在化環状η
5−配位系配位子としては、好ましくは無置換のシクロペンタジエニル基及び置換シクロペンタジエニル基が挙げられる。
【0043】
置換シクロペンタジエニル基としては、例えば、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、n−ブチルシクロペンタジエニル、t−ブチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、ジエチルシクロペンタジエニル、ジイソプロピルシクロペンタジエニル、ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、インデニル、2−メチルインデニル、2−メチル−4−フェニルインデニル、テトラヒドロインデニル、ベンゾインデニル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、テトラヒドロフルオレニル及びオクタヒドロフルオレニルが挙げられる。
【0044】
非局在化環状η
5−配位系配位子は、非局在化環状π系の1個以上の原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。水素の他に、周期表第14族の元素及び/又は周期表第15、16及び17族の元素などの1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0045】
非局在化環状η
5−配位系配位子、例えば、シクロペンタジエニル基は、中心金属と、環状であってもよい、一つの又は複数の架橋配位子により架橋されていてもよい。架橋配位子としては、例えば、CH
2、CH
2CH
2、CH(CH
3)CH
2、CH(C
4H
9)C(CH
3)
2、C(CH
3)
2、(CH
3)
2Si、(CH
3)
2Ge、(CH
3)
2Sn、(C
6H
5)
2Si、(C
6H
5)(CH
3)Si、(C
6H
5)
2Ge、(C
6H
5)
2Sn、(CH
2)
4Si、CH
2Si(CH
3)
2、o−C
6H
4又は2、2’−(C
6H
4)
2が挙げられる。
【0046】
Y
1及びY
2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、脱離基を示す。脱離基としては、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子;n−ブチル基等のC
1−C
20アルキル基;フェニル基等のC
6−C
20アリール基等が含まれる。中でも、ハロゲン原子が好ましい。
【0047】
なお、L
1L
2MY
1Y
2で示される有機金属化合物として、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;ビス(インデニル)ジクロロジルコニウム;ビス(フルオレニル)ジクロロジルコニウム;(インデニル)(フルオレニル)ジクロロジルコニウム;ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン;(ジメチルシランジイル)ビス(インデニル)ジクロロジルコニウム;(ジメチルシランジイル)ビス(テトラヒドロインデニル)ジクロロジルコニウム;(ジメチルシランジイル)(インデニル)ジクロロジルコニウム;(ジメチルシランジイル)ビス(2−メチルインデニル)ジクロロジルコニウム;(ジメチルシランジイル)ビス(2−エチルインデニル)ジクロロジルコニウム;(ジメチルシランジイル)ビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジクロロジルコニウム;(ジメチルシランジイル)ビス(2−エチル−4,5−ベンゾインデニル)ジクロロジルコニウム;(ジメチルシランジイル)ビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジクロロジルコニウム;(ジメチルシランジイル)ビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジクロロジルコニウム;(ジメチルシランジイル)ビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジクロロジルコニウムなどのジハロゲノ体を用いる場合は、ナトリウム等のアルカリ金属、マグネシウム等のアルカリ土類金属などの強塩基で還元してから、あるいは、ジハロゲノ体をジアルキル体に変換してから用いることが好ましい。
【0048】
L
1L
2MY
1Y
2で示される有機金属化合物の使用量は、化合物(a)1モルに対して、0.1〜10モルが好ましく、0.5〜3モルがより好ましく、0.5〜2モルが更に好ましい。
【0049】
反応に用いられる金属化合物としては、周期表第4〜15族の金属化合物であることが好ましい。金属化合物は、CuClのような塩であってもいし、有機金属錯体であってもよい。
【0050】
塩としては、例えば、CuX、NiX
2、PdX
2、ZnX
2 、CrX
2 、CrX
3、CoX
2 、若しくは、BiX
3(式中、Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示す。)などの金属塩が用いられる。
【0051】
有機金属錯体としては、周期表3〜11族の中心金属、好ましくは周期表6〜11族の中心金属に、ホスフィン;ピリジン、ビピリジン等の芳香族アミン、ハロゲン原子等の配位子が配位しているものが好ましく用いられる。中心金属は、いわゆる4〜6配位であることが好ましく、周期表10族の金属が更に好ましい。ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等、制限がない。有機金属錯体としては、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロニッケル、ジクロロ(2,2'−ビピリジン)ニッケル、PdCl
2(2,2'−ビピリジン)が挙げられる。特にクロスカップリング反応の触媒として使用されているニッケル錯体、パラジウム錯体が望ましい。
【0052】
金属化合物の使用量は、化合物(a)1モルに対して、0.0001〜10モルが好ましく、0.001〜3モルがより好ましく、0.01〜1モルが更に好ましい。
【0053】
ハロゲン単体X
2としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、中でも、ヨウ素が好ましい。ハロゲン単体X
2は、化合物(a)1モルに対し1モル乃至若干過剰モル量で用いることが好ましい。
【0054】
反応は好ましくは、−80℃〜200℃の温度範囲で行われ、より好ましくは−50℃〜100℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−20℃〜80℃の温度範囲で行われる。反応は常圧下で行うことが望ましいが、場合によっては加圧下又は減圧下で操作することもできる。また、反応は継続的に又はバッチ式で、一段階又はそれより多段階で行うことができる。
【0055】
反応溶媒は、脂肪族又は芳香族の溶媒が用いられる。例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシドが用いられる。あるいは、芳香族の溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いてもよい。
【0056】
次に、化合物(b)にリチウム化剤を作用させ、金属化合物の存在下、化合物(c)とカップリング反応させて、化合物(d)を得る。
【0057】
上記反応にあたっては、化合物(b)1モルに対し1モル乃至若干の過剰モル量の化合物(c)を反応させることにより、化合物(d)を得ることができる。化合物(c)は、公知であり、例えば、Takahashi et al., J. Am. Chem. Soc., 2002, 124 (4), pp 576を参照することにより容易に合成することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0058】
リチウム化剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム等のC
1〜C
20炭化水素リチウムが好ましい。例えば、ブチルリチウム等のC
1〜C
6アルキルリチウム、フェニルリチウム等のC
6〜C
20アリールリチウムが好適に用いられる。
【0059】
金属化合物としては、前述したものと同じものを用いることができる。中でも、CuX、NiX
2、PdX
2、ZnX
2 、CrX
2 、CrX
3、CoX
2 、若しくは、BiX
3(式中、Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示す。)などの金属塩が好ましい。金属化合物の使用量は、ジリチオ体1モルに対して、0.01〜100モルが好ましく、0.1〜10モルがより好ましく、0.1〜3モルが更に好ましい。
【0060】
このカップリング反応には、N,N'−ジメチルプロピレンウレア、ヘキサメチルホスホアミド等の安定化剤を共存させることが好ましい。安定化剤の使用量は、ジリチオ体1モルに対して、0.01〜100モルが好ましく、0.1〜10モルがより好ましく、0.1〜3モルが更に好ましい。
【0061】
反応温度は、−80℃〜200℃が好ましく、−50℃〜100℃が更に好ましく、−20℃〜80℃が更になお好ましい。また、反応は常圧下で行うことが望ましいが、場合によっては加圧下又は減圧下で操作することもできる。反応は継続的に又はバッチ式で、一段階又はそれより多段階で行うことができる。反応溶媒は、脂肪族又は芳香族の溶媒が用いられる。反応溶媒の具体例としては、前記工程で例示したものを参照できる。
【0062】
次いで、化合物(d)にハロゲン化剤を作用させて本発明の化合物(e)を得ることができる。
【0063】
ハロゲン化剤としてはN−クロロスクシンイミド(NCS)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、Nーヨードスクシンイミド(NIS)、一塩化ヨウ素等を例示することができる。
【0064】
反応温度は、−78℃〜150℃が好ましく、−78℃〜50℃が更に好ましく、−78℃〜30℃が更になお好ましい。また、反応は常圧下で行うことが望ましいが、場合によっては加圧下又は減圧下で操作することもできる。反応溶媒は、脂肪族又は芳香族の溶媒が用いられる。反応溶媒の具体例としては、前記工程で例示したものを参照できる。
【0065】
例えば、ジクロロメタン等の溶媒中で、化合物(d)1モルに対し1モル乃至若干の過剰モル量のハロゲン化剤を反応させることによって化合物(e)を得ることができる。
【0066】
各工程において反応終了後は、必要に応じて通常の有機合成反応で用いられる単離・精製法により反応混合物から目的の化合物を得ることができる。
【0067】
〔2〕6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の製造方法
次に、本発明の6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の製造方法について説明する。本発明の6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の製造方法は、下記式(II):
【化13】
[式中、A
1及びA
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいヘテロアリール基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものであり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものである。]
で示される6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の製造方法であって、
下記式(I):
【化14】
[式中、X
1及びX
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、前記式(II)におけるものと同一である。]
で示される6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体と、前記式(II)で定義したA
1又はA
2を含む有機金属化合物とを遷移金属触媒の存在下で反応させる工程を含む。
【0068】
上記のとおり、本発明においては、式(I)で示される6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体を、A
1又はA
2を含む有機金属化合物と遷移金属触媒の存在下、カップリング反応させることにより、目的の化合物(式(II)で示される化合物)を製造する。式(I)で示される6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体は、前記「A.6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体」で述べたものを用いることができる。
【0069】
A
1又はA
2を含む有機金属化合物としては、クロスカップリング反応により式(I)で示される化合物の6位及び13位にそれぞれA
1及びA
2を付与することができるものであれば特に制限されなく、ケイ素及びホウ素などの半金属の化合物も包含される。例えば、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物及び有機シリル化合物等が挙げられる。
【0070】
例えば、本反応に用いられるA
1又はA
2を含む有機金属化合物としては、下記式(1)〜(6)で示される化合物を用いることが好ましい。
RLi (1)
RMgY (2)
R
3Al (3)
RZnY (4)
RBY
2 (5)
RSiR’
3 (6)
[式中、Rは、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、式(II)で定義したA
1又はA
2であり、Yは、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子又はヒドロキシ基であり、R’はC
1〜C
10アルキル基である。]
【0071】
これらの中でも、有機金属化合物としては、R
3Al、RZnCl、RMgBr、RB(OH)
2、RSi(CH
3)
3、RSi(CH(CH
3)
2)
3が特に好ましい。A
1又はA
2を含む有機金属化合物は、本発明の目的を阻害しない限り、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。導入しようとする置換基A
1及びA
2が異なる場合は、A
1を含む有機金属化合物とA
2を含む有機金属化合物とを用いることが好ましい。
【0072】
上記反応にあたっては、式(I)で示される化合物1モルに対し等量乃至若干の過剰量(1〜10当量が好ましく、1〜5当量がより好ましい。)の有機金属化合物を反応させることにより、目的の化合物(式(II)で示される化合物)を得ることができる。
【0073】
上記反応は、触媒量の遷移金属(例えば、Pd、Cu、NiまたはW)を含有する触媒(遷移金属触媒)の存在下で行う。遷移金属触媒としては、Pd(0)有機錯体、Pd(II)塩またはその有機錯体が好ましい。具体的には、パラジウム/カーボン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(2,2’−ビピリジン)ニッケル等が挙げられる。
遷移金属触媒の使用量は、式(I)で示される化合物1モルに対し、0.5モル以下であることが好ましく、0.0001モル〜0.5モルであることがより好ましく、0.001モル〜0.2モルであることが更に好ましい。
【0074】
反応温度は、−80℃〜200℃が好ましく、−50℃〜100℃がより好ましく、−20℃〜80℃が更に好ましい。また、反応は常圧下で行うことが望ましいが、場合によっては加圧下又は減圧下で操作することもできる。反応は継続的に又はバッチ式で、一段階又はそれより多段階で行うことができる。
【0075】
反応溶媒は、脂肪族又は芳香族の溶媒が用いられる。例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシドが用いられる。あるいは、芳香族の溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いてもよい。
【0076】
反応終了後は、必要に応じて通常の有機合成反応で用いられる単離・精製法により反応混合物から目的の化合物である6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体を得ることができる。この6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体を、後述するとおり、常法に従って、芳香族化することで、6,13−置換ペンタセン誘導体を容易に得ることができる。
【0077】
本発明によれば、クロスカップリング反応の特徴を利用して、高選択的に目的の化合物を得ることができる。
【0078】
本発明の一実施態様では、A
1及びA
2が、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルキル基、置換基を有していてもよいC
2〜C
20アルケニル基、置換基を有していてもよいC
2〜C
20アルキニル基、置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であることが好ましい。
【0079】
また、本発明の一実施態様では、X
1及びX
2が、ヨウ素原子であることが好ましい。
【0080】
さらに、本発明の一実施態様では、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルキル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリール基又は置換基を有していてもよいシリル基であることが好ましい。
【0081】
また、本発明の一実施態様では、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が、水素原子であることが好ましい。
【0082】
本発明の一実施態様では、前記式(I)で示される6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体と有機金属錯体とを反応させて下記式(IV)で示される錯体化合物を生成した後、A
1又はA
2を含む有機金属化合物を反応させて目的の化合物を生成してもよい。
【化15】
[式中、X
1及びX
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものであり、R
a及びR
bは、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、C
1〜C
20アルキル基又はC
6〜C
20アリール基である。]
【0083】
有機金属錯体としては、Pd(0)有機錯体、Pd(II)塩またはその有機錯体が好ましい。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)などが好ましく挙げられる。
有機金属錯体を、式(I)で示される化合物1モルに対し等量乃至若干の過剰量の有機金属化合物を反応させることにより、目的の化合物(式(IV)で示される化合物)を得ることができる。また、得られた化合物に更にトリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィンなどを反応させることにより目的の化合物(式(IV)で示される化合物)を得ることもできる。
【0084】
反応溶媒は、脂肪族又は芳香族の溶媒が用いられる。例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシドが用いられる。あるいは、芳香族の溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いてもよい。
【0085】
反応終了後は、必要に応じて通常の有機合成反応で用いられる単離・精製法により反応混合物から目的の化合物(式(IV)で示される化合物)を得ることができる。
【0086】
得られた式(IV)で示される化合物に、前述したA
1又はA
2を含む有機金属化合物をクロスカップリング反応させることにより、式(II)で示される6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体を得ることができる。
A
1又はA
2を含む有機金属化合物の使用量は、式(IV)で示される化合物1モルに対し等量乃至若干の過剰量が好ましく、1〜10当量がより好ましく、1〜5当量が更に好ましい。
反応溶媒は、前記反応において用いたものと同じものを使用することができる。
【0087】
〔3〕6,13−置換−ペンタセン誘導体の製造方法
次に、本発明の6,13−置換−ペンタセン誘導体の製造方法について説明する。本発明の6,13−置換−ペンタセン誘導体の製造方法は、下記式(III):
【化16】
[式中、A
1及びA
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものであり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC
1〜C
20炭化水素基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいC
1〜C
20アルコキシカルボニル基;置換基を有していてもよいC
6〜C
20アリールオキシカルボニル基;置換基を有していてもよいカルバモイル基;置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよいシリル基であり、前記炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基、アミノ基又はシリル基が置換基を有している場合、該置換基は、C
1〜C
10炭化水素基、C
1〜C
10アルコキシ基、C
6〜C
12アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子及びシリル基からなる群から選ばれるものである。]
で示される6,13−置換−ペンタセン誘導体の製造方法であって、
下記式(I):
【化17】
[式中、X
1及びX
2は、それぞれ、互いに独立し、同一又は異なって、ハロゲン原子であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、前記式(III)におけるものと同一である。]
で示される6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体と、式(III)で定義したA
1又はA
2を含む有機金属化合物とを遷移金属触媒の存在下で反応させる工程と、
前記工程で得られた化合物を、脱水素試薬の存在下、芳香族化する工程とを含む。
【0088】
上記式(I)で示される6,13−ジハロゲン−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体と、A
1又はA
2を含む有機金属化合物とを反応させる工程については、前記「B.6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の製造方法」で述べたとおりである。
【0089】
本発明では、上記工程で得られた式(II)で示される6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体を脱水素試薬の存在下、芳香族化することで、目的の6位及び13位が置換されたペンタセン誘導体を得ることができる。
【0090】
本発明の一実施態様では、脱水素試薬としてリチウム化剤を用いる。
【0091】
リチウム化剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウムのようなC
1〜C
20炭化水素リチウムが好ましい。たとえば、ブチルリチウム等のC
1〜C
6アルキルリチウム、フェニルリチウムのようなC
6〜C
20アリールリチウムが好適に用いられる。リチウム化剤は、上記式(II)で示される化合物の0.1当量〜10当量用いることが好ましく、0.5当量〜5当量用いることがより好ましく、1当量〜3当量用いることが更に好ましい。
【0092】
リチウム化剤とともに、リチウム化剤の活性化剤を共存させることが好ましい。活性化剤としては、3級アミンが好ましく、たとえば、N,N,N'、N'−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)のようなN,N,N'、N'−テトラアルキルアルキレンジアミンが用いられる。アルキルリチウムは、溶液中では、四量体のようなオリゴマーとして存在していると思われる。そして、3級アミンが共存するときには、アミンの窒素原子がアルキルリチウムのリチウム原子に配意し、オリゴマー構造を壊すと思われる。これにより、アルキルリチウムのリチウム原子が溶液中に晒され、反応性が向上するものと考えられる。活性化剤の使用量は、種類等に応じて適宜決定することができる。
【0093】
反応溶媒としては、無極性有機溶媒が好ましく用いられる。例えば、ヘキサン等のアルカン、ベンゼン等の芳香族化合物が好ましい。
反応温度としては、0℃〜200℃が好ましく、20℃〜100℃がさらに好ましく、30℃〜80℃が更になお好ましい。
【0094】
本発明の他の実施態様では、前記脱水素試薬として、下記式で示されるキノン化合物を用いる。
【化18】
[式中、X
1、X
2、X
3、及び、X
4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子又はシアノ基である。]
【0095】
例えば、X
1、X
2、X
3、及び、X
4が全て塩素原子であってもよい。即ち、クロラニルであってもよい。あるいは、X
1及びX
2がシアノ基であり、X
3及びX
4が塩素原子であってもよい。即ち、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノキノンであってもよい。X
1、X
2、X
3、及び、X
4が全てシアノ基であってもよい。即ち、2,3,5,6−テトラシアノキノンであってもよい。
【0096】
上記キノン化合物は、このような副生成物の生成を防止するために、上記式(II)で示される化合物の0.9当量〜1.2当量用いることが好ましく、0.9当量〜1.15当量用いることが更に好ましく、0.95当量〜1.05当量用いることが更になお好ましい。
【0097】
反応溶媒は、ベンゼン等の芳香族化合物が好ましい。
反応温度は、−80℃〜200℃が好ましく、0℃〜100℃がさらに好ましく、10℃〜80℃が更になお好ましい。所望により、光を遮断して反応を進行させてもよい。
【0098】
本発明の他の実施態様では、前記脱水素試薬が、パラジウムを含むことが好ましい。例えば、活性炭のような炭素に担持されたパラジウム、いわゆるパラジウムカーボンとして市販されているものを好適に用いることができる。Pd/Cは、脱水素化に広く用いられている触媒であり、本発明でも従来と同様に用いることができる。反応温度は、例えば、200℃〜500℃である。もっとも、反応温度は、出発物質等の様々な条件に依存して、適宜、設定すればよい。
【0099】
反応終了後は、必要に応じて通常の有機合成反応で用いられる単離・精製法により反応混合物から目的の化合物である6,13−置換−ペンタセン誘導体を得ることができる。なお、芳香族化工程の詳細については、国際公開第01/064611号パンフレット及び特開2004−331534号公報を参照することができる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0101】
全ての反応は特に記載の無い限り窒素雰囲気下行った。テトラヒドロフラン(THF)はナトリウム/ベンゾフェノン系を用いて脱水したものを使用した。試薬は特に記載のない限り、市販品を精製せずにそのまま用いた。NMR収率はメシチレンを内部標準として決定した。
【0102】
[実施例1]
6,13−ジヨード−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の調製(1)
【0103】
工程1:2,3−ビス−(ヨードトリメチルシリルメチレン)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンの調製
【化19】
【0104】
ビス(η
5−シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム(365mg、1.25mmol)をTHF(15ml)に溶解し、この溶液に、−78℃にて、n−ブチルリチウム(1.56Mヘキサン溶液、1.60mL、2.5mmol)を添加し、この混合物を15分攪拌した。得られた溶液を−40℃で30分間保持した後、再び−78℃に冷却した。15分経過後、この溶液に化合物1(298mg、1.0mmol)を添加し、室温に戻した。3時間攪拌後、0℃で反応混合物にCuCl(99mg、1.0mmol)及びI
2(508mg、2.0mmol)を添加し、再び室温に戻して3時間放置した。0℃に冷却した後、得られた反応混合物を3NHClで急冷し、反応生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた褐色の粘性油状物を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:トリエチルアミン=100:1)により精製し、淡黄色固体状の標題化合物(化合物2)を得た(397mg、収率72%)。
2:
1H NMR (CDCl
3, Me
4Si) δ: 0.33 (s, 18 H), 3.60 (d, J = 16.5 Hz, 2 H), 3.91 (d, J = 16.5 Hz, 2 H), 7.04-7.07 (m, 2 H), 7.15-7.18 (m, 2 H);
13C NMR (CDCl
3, Me
4Si)δ: 1.7, 38.5, 104.9, 126.5, 128.3, 135.8, 160.3
【0105】
工程2:6,13−ビス(トリメチルシリル)−5,14−ジヒドロペンタセンの調製
【化20】
【0106】
工程1で得られた化合物2(552mg、1.0mmol)をTHF(15ml)に溶解し、この溶液に、−78℃にて、t−ブチルリチウム(1.76M n−ペンタン溶液、2.27mL、4.0mmol)を徐々に添加し、この混合物を15分攪拌した。得られた溶液を−40℃で30分間保持した後、再び−78℃に冷却した。15分経過後、この溶液にCuCl(198mg、2.0mmol)及びDMPU(0.36mL、3.0mmol)を添加し、0℃で0.5時間攪拌した。次いで、この反応混合物に2,3−ジヨードナフタレン(760mg、2.0mmol)を添加し、50℃で12時間加熱した。反応混合物を0℃まで冷却した後、3NHClで急冷し、反応生成物をヘキサンで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=50:1:1)により精製し、黄色固体状の標題化合物(化合物3)を得た(169mg、収率40%)。
3: 1H NMR (CDCl3, Me4Si) δ: 0.70 (s, 18 H), 4.21 (s, 4 H), 7.20-7.23 (m, 2 H), 7.32-7.35 (m, 2 H), 7.41-7.44 (m, 2 H), 7.92-7.96 (m, 2 H), 8.69 (s, 2 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si) δ: 4.3, 39.2, 125.0, 126.5, 126.6, 126.9, 128.0, 130.1, 134.7, 135.5, 138.1, 143.9;
HRMS (EI) C28H32Si2: 計算値:424.2043. 実測値: 424.2037.
【0107】
工程3:6,13−ジヨード−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の調製
【化21】
【0108】
工程2で得られた化合物3(424mg、1.0mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、この溶液に、−78℃にて、ICl(1.0Mジクロロメタン溶液、2.0mL、2.0mmol)を徐々に添加した。−78℃で3時間攪拌後、得られた反応混合物を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液により急冷し、反応生成物をクロロホルムで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、溶媒を除去した後、残渣をメタノールで洗浄した。生成した沈殿物を回収し、シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム)により精製し、褐色液体状の標題化合物(化合物4)を得た(119mg、収率23%)。
4: 1H NMR (CDCl3, Me4Si) δ: 4.47 (s, 4 H), 7.25-7.29 (m, 2 H), 7.43-7.44 (m, 2 H), 7.52-7.55 (m, 2 H), 8.09-8.12 (m, 2 H), 8.85 (s, 2 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 45.5, 106.7, 126.5, 126.9, 127.2, 128.1, 132.1, 132.8, 133.0, 136.3, 139.8;
HRMS (EI) C22H14I2: 計算値:531.9185. 実測値: 531.9199.
【0109】
[実施例2]
6,13−ジヨード−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の調製(2)
【化22】
【0110】
実施例1と同様にして置換したジヨードジエンとジヨードナフタレンを用いたところ、置換基を8つ持つ6,13−ジヨード−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体が得られた。収率は20%であった。
6:
1H NMR (C
6D
6) δ: 1.03 (t, J = 7 Hz, 6H), 1.06 (t, J = 7 Hz, 6H), 1.22 (t, J = 7 Hz, 6H), 1.29 (t, J = 7 Hz, 6H), 1.63-1.76 (m, 12H), 1.97-2.01 (m, 4H), 2.67-2.71 (m, 4H), 2.84-2.94 (m, 8H), 3.33-3.37 (m, 4H), 4.31 (s, 4H), 9.28 (s, 2H);
13C NMR (C
6D
6) δ: 15.21, 15.24, 15.4, 15.5, 24.9, 25.3, 25.6, 25.7, 32.3, 32.71, 32.74, 33.3, 42.6, 106.6, 130.6, 131.5, 131.9, 133.9, 134.4, 135.4, 137.1, 137.8, 141.5;
HRMS (EI) 計算値:C
46H
62I
2: 868.2941. 実測値: 868.2947.
【0111】
[実施例3]
6,13−ジメチル−5,14−ジヒドロペンタセンの調製
【化23】
【0112】
実施例1で得られた化合物4(161mg、0.30mmol)及びPdCl
2(PPh
3)
2(10mg、0.0015mmol)をTHF(10mL)に溶解し、この溶液にMe
3Al(1.0Mヘキサン溶液、1.2mL、1.2mmol)を添加して得られた混合物を1時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、3NHClで急冷し、反応生成物をクロロホルムで抽出した。溶媒を除去した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製し、淡黄色固体状の標題化合物(化合物7)を得た(76mg、単離収率82%)。
7: 1H NMR (CDCl3, Me4Si, 600 MHz) δ: 2.78 (s, 6 H), 4.10 (s, 4 H), 7.14-7.16 (m, 2 H), 7.28-7.30 (m, 2 H), 7.34-7.36 (m, 2 H), 7.92-7.93 (m, 2 H), 8.50 (s, 2 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si) δ: 15.1, 34.4, 123.0, 125.1, 126.4, 127.1, 127.3, 128.3, 130.8, 131.0, 132.6, 137.3.
HRMS (EI) C24H20: 計算値:308.1565. 実測値: 308.1565.
【0113】
[実施例4]
6,13−ジエチル−5,14−ジヒドロペンタセンの調製
【化24】
【0114】
Me
3Alに代えてEt
3Alを用いたことを除いて、実施例3と同様にして反応を行った結果、黄色固体状の標題化合物(化合物8)を得た(NMR収率74%、単離収率65%)。
8: 1H NMR (CDCl3, Me4Si, 600 MHz)δ: 1.40 (t, J = 7 Hz, 6 H), 3.38 (q, J1,2 = 7.8 Hz, J1,3 = 15.6 Hz, 4 H), 4.15 (s, 4 H), 7.22-7.23 (m, 2 H), 7.37-7.38 (m, 2 H), 7.41-7.43 (m, 2 H), 8.00-8.01 (m, 2 H), 8.62 (s, 2 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si)δ: 15.0, 22.0, 34.0, 122.9, 125.0, 126.5, 127.0, 128.4, 129.9, 131.0, 132.4, 133.4, 137.9.
HRMS (EI) C26H24: 計算値:336.1878. 実測値: 336.1868.
【0115】
[実施例5]
6,13−ジフェニル−5,14−ジヒドロペンタセンの調製
【化25】
【0116】
アリールリチウム(0.2mL、0.4mmol)及び乾燥させた塩化亜鉛(52mg、0.4mmol)をTHF(2mL)中で反応させてアリール亜鉛試薬を調製した。次に、調製したアリール亜鉛試薬に、実施例1で得られた化合物4(50mg、0.09mmol)及びパラジウム(0)触媒(Pd(PPh
3)
4、5mg、0.0045mmol)を添加し、この混合物を50℃で15時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、3NHClで急冷し、反応生成物をクロロホルムで抽出した。有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去して、得られた残渣をGPCにより精製し、黄色固体状の標題化合物(化合物9)を得た(13mg、収率34%)。
9: 1H NMR (CDCl3, Me4Si, 400 MHz) ) δ: 3.87 (s, 4 H), 7.14 (s, 4 H), 7.30-7.33 (m, 2 H), 7.44-7.46 (m, 4 H), 7.56-7.66 (m, 6 H), 7.75-7.77 (m, 2 H), 7.97 (s, 2 H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si) δ: 35.5, 125.2, 125.3, 126.4, 127.1, 127.5, 128.3, 128.8 (two peaks were overlapped), 130.7, 130.8 (two peaks were overlapped), 131.0, 133.1, 136.0, 137.7, 139.8.
HRMS (EI) C34H24: 計算値:432.1878. 実測値: 432.1881.
【0117】
[実施例6]
6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の調製
【化26】
表1に記載の条件を用いた以外は、実施例3〜5と同様にして6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体(化合物10)を調製した。
【表1】
【0118】
[実施例7]
6,13−ジヨード−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体のパラジウム錯体との反応
【化27】
【0119】
実施例1で得られた化合物4(1mmol)及びPd(PPh
3)
4(1.2mmol)をTHF(10ml)に添加し、この混合物を室温で12時間反応させた。反応生成物にヘキサンを加えて、錯体を沈殿させ、これをろ過して単離した。乾燥して、錯体化合物11を得た(NMR収率79%、単離収率41%)。
【0120】
次に、得られた錯体化合物11(1mmol)にトリメチルホスフィン(4mmol)を添加し、室温で12時間反応させた。反応生成物にヘキサンを加えて放置すると、結晶が析出した。これをろ過し、乾燥して、錯体化合物12を得た。錯体化合物12のX線構造解析結果を
図1に示す。
【0121】
[実施例8]
6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の調製
【化28】
【0122】
表2に記載の条件に従って、6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体(化合物13)を調製した。
【表2】
【0123】
上記のとおり、6,13−ジヨード−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体にパラジウム錯体を反応させた後、得られた錯体化合物に有機金属化合物を反応させることによって目的の6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体が得られた。上記錯体化合物は安定に存在することから、反応中間体として、6,13−置換−5,14−ジヒドロペンタセン誘導体の製造に有用である。