(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光変調器や直接変調された半導体レーザに代表される電気光(ElectricaltoOptical,E/O)変換デバイス,およびフォトダイオード(PD)に代表される光電気(OpticaltoElectrical,O/E)変換デバイスは,デジタル光通信システムやファイバ無線(RadioOnFiber,ROF)システムのキーコンポーネントである。これらのデバイスの主要な性能指標として,“レスポンシビティ(responsivity)”とよばれる直流(DC)におけるO/EおよびE/O変換効率がある。
【0003】
近年,デジタル光通信システムが一波あたり100Gbpsを超えるほど著しく高速化されるとともに,ROFでは次々に高い周波数のキャリアを用いたシステムの研究が報告されている。このため,DCのレスポンシビティのみならず,ミリ波帯からテラヘルツ帯までを含めた周波数領域についての周波数特性を正確に測定することが非常に重要になっている。
【0004】
現在,O/EやE/Oデバイス(光電変換デバイス)の周波数特性を測定するには,アジレント社の光コンポーネントアナライザ(LCA)を用いることが一般的である(O.Funke,“The value of traceable S−parameter characterization of electro−optical components, ”EN−Genius Network, test & measurement ZONE, November 2008.)。LCAは,高周波(Radio Frequency, RF)用のネットワークアナライザと,周波数特性が校正されたE/OおよびO/Eデバイスを内蔵した光テストセットを組み合わせている。このため,LCAは,入出力がE/Eだけでなく,E/O,O/E,O/Oの全ての組み合わせについて校正された周波数特性が測定できる。ここで,「校正された周波数特性」は,そのデータが,米国標準技術研究所が管理している計量標準にトレーサブルであることを意味している。無変調連続波の光やRF信号のパワーは,カロリメータのような熱型検出器を用いてヒータの発熱と比較することで,電流・電圧の一次標準と結びつけられている。
【0005】
米国標準技術研究所(NIST)では,ヘテロダイン法に基づく光電変換の計量標準を定め,それを用いた校正サービスを提供している(P. D. Hale and C. M. Wang, “Calibration service of optoelectronic frequency response at 1319 nm for combined photodiode/RF power sensor transfer standards,” NIST Special Publication, 250−51, December 1999,下記非特許文献1)。ヘテロダイン法は,周波数差が確定した同一パワー/同一偏波の2光波を受光した場合,時間軸から見ると2光波の周波数差に等しい周波数で100%の強度変調がかかっていることを利用して,入力光パワーと出力RF信号パワーから変換効率を正確に計算できることに基礎を置いている。このような2光波を実現するために,NISTでは2台のLD励起Nd:YAGレーザに位相同期をかけて周波数差を確定させ,強度,偏光もそれぞれ自動制御された複雑なシステムを提案している。そして,NISTは,このシステムを用いた校正サービスを提供している。アジレント社はこのサービスを利用して自社内標準用PDを校正し,それを用いて市販測定器を校正している。
【0006】
ところで,LCAの測定精度を調べてみると,様々な条件下での値が列記されている(Agilent Technologies Inc., “N4373C 67 GHz Single−Mode Lightwave Component Analyzer for 40/100G electro−optical test,” Data Sheet, pp.8−11, Feb. 2008.)。このレポートによれば,意外なことにO/EおよびE/O変換効率の周波数応答特性測定における絶対的な不確実さは±2dB前後もある。一方で,測定の再現性(repeatability)は,0.7GHz以下の低周波域では±0.02dB程度,20GHz以上の高周波域でも±0.3dB程度と,10倍も優れている。また,E/Eの場合はRFネットワークアナライザの精度となり,やはり±0.2dB程度と高精度である。この理由として,RFネットワークアナライザは測定直前にユーザが校正キットを用いて校正することが前提となっているが,O/EやE/Oは測定器の校正サービスを依頼した時にのみ校正され,日常の測定前には校正できないため,と推測される。この場合,最後の校正から典型的には1年くらい時間が経ってしまうために,測定再現性に優れていても,絶対精度の維持は難しいと思われる。
【0007】
まず,光電変換標準が根拠とするヘテロダイン法の原理と,その光源に要求される特性について説明する。
【0008】
2光波の解析モデルを考える。2光波はそれぞれ,”+1”と“−1”と名付けられ,そのパワーや周波数差は,次のように定義されている。
【0009】
【数1】
【0010】
ここで,P
+1とP
−1は各光波のパワー,P
optは全光パワー,δは2光波のパワー差,ω
+1とω
−1は各光波の周波数,ω
RFはその周波数差である。このとき,瞬時光パワーは次式のように計算される。
【0011】
【数2】
【0012】
この光波を変換効率κのPDで2乗検波し直流をカットすると,RF電流となり,次のように計算される。
【0013】
【数3】
【0014】
このRF電流が50Ωの負荷で消費する平均電力は次式のように計算される。
【0015】
【数4】
【0016】
この(3)式と(4)式から変換効率κは,以下のようになる。
【0017】
【数5】
【0018】
もし,2光波のパワー差δが0の場合,変調度は100%となって変換効率κは以下のようになる。
【0019】
【数6】
【0020】
測定するのは光パワーとRFパワーのみであり,両者ともトレーサブルな測定が可能である。
【0021】
これまで説明したヘテロダイン法に用いられる光源には,次の4つの特性が要求される。すなわち,ヘテロダイン法は,以下の特性を満たす光源を被測定PDに入射して入射光強度Poptと出力RF信号強度P
RFから光電機変換効率を求める。
(1)2光波のみ。
(2)周波数差を任意のRF周波数に設定可能。
(3)2光波が同一偏波。
(4)2光波が同一強度。
【0022】
これらの条件のうち,(3)はヘテロダイン効率を100%とするために必要となる。
【0023】
先に列挙した特性を持つ光電変換標準用の光源を実現するために,LD励起Nd:YAGレーザを2台用いることが提案されている(非特許文献1)。
【0024】
この装置は,各レーザを個別に制御できるため,(1)2光波のみ,(3)同一偏波,(4)同一強度という条件を,比較的容易に実現できる。しかし,この装置は(2)任意の周波数差の設定が難しい。この装置では,光位相同期ループを組むことで(2)の条件を実現しているが,公称線幅がkHz程度と非常に狭いLD励起Nd:YAGレーザを使う必要があるため,校正波長が1319nmに限られる。
【0025】
光検出器が非線形性を持つ場合には,2つの周波数成分の他に,2
の周波数の和や差の成分が発生する。これを測定することで,非線形性の強さを測定することが可能となる。2つの周波数をf
1,f
2とし,周波数差が大きくない(2|f
1−f
2|/|f
1 +f
2] が1よりずっと小さい)場合,2f
1−f
2,2f
2−f
1,がf
1,f
2と近い周波数となり,実用上,混信などの問題となることが多い。
【0026】
検波出力に2つの周波数成分を得るには光入力が2つの周波数成分を持つ必要がある。しかし,一般に1つの変調器に2つの周波数成分を入力すると,変調器内部で周波数の差や和の成分が発生し,検出器での非線形を正確に測定することが困難となる。ここで議論する手法の目的は,非線形性のない理想的な光検出器で検波した際に純粋な2トーン信号が電気出力として得られる,光変調信号を発生させることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
そこで,本発明は,2トーン信号を得るための方法を提供することを目的とする。また,本発明は2トーン信号を用いた検出器の特性評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は,基本的にはネスト型のMZM(DPMZM)を用いた2トーン信号の生成方法に関する。
【0030】
そして,本発明の第1の側面は,2つのサブMZMに高周波信号(f
1及びf
2)を印加し,メインMZMのバイアス電圧を調整して,2つのサブMZMから出力されるDSB−SC変調信号の位相差をπ/2とする。そして,高速光検出器で二乗検波する。すると,クロスターム成分(f
1−f
2及びf
1+f
2)が抑圧された高周波信号の2倍周波数成分(2f
1及び2f
2)からなる2トーン信号を得ることができるという知見に基づく。
【0031】
先に説明したとおり,たとえば2トーン信号を検出器の特性を評価するために有効に用いることができる。光の2トーン信号は検波すると一つの周波数成分をもつ純粋な正弦波信号が得られるのに対して,ここで説明するRF2トーン信号は光検出器での2乗検波(光強度を電流へ変換する検波)で得られる電気出力が2トーン信号となるというものである
【0032】
本発明の第1の側面は,2つのサブMZMに異なる周波数の変調信号を印加し,メインMZMにおいて光位相を調整することで2トーン信号を得る方法に関する。
【0033】
この方法は,光源11と光源11からの光が入射する光変調器12と光検出器13を用いた光信号の生成方法である。そして,光変調器12は,第1のアーム及び第2のアームを含むメインマッハツェンダー導波路14を有し,第1のアーム及び第2のアームにはそれぞれ第1のサブマッハツェンダー導波路15及び第2のサブマッハツェンダー導波路16が設けられる。また,第1のサブマッハツェンダー導波路15及び第2のサブマッハツェンダー導波路16は,それぞれ変調電圧及びバイアス電圧のいずれか又は両方を印加するための第1の電極21及び第2の電極22を有する。メインマッハツェンダー導波路14は,第1のサブマッハツェンダー導波路15及び第2のサブマッハツェンダー導波路16からの出力信号の位相差を制御するための第3の電極23を有する。
【0034】
この方法は,第1の電極21及び第2の電極22にそれぞれ周波数がf
1及びf
2である第1の変調信号及び第2の変調信号を印加する工程と,光変調器12からの出力信号を光検出器13が二乗検波して得られるnf
1+mf
2成分及びnf
1−mf
2成分(n及びmは整数)のいずれか又は両方が抑圧されるように第3の電極23に印加されるバイアス電圧を調整するバイアス電圧調整工程と,を含む。
このようにして,この方法は,第1の変調信号及び第2の変調信号の2N倍(Nは1以上の整数)の周波数成分を含む2トーン信号を発生する。
本発明では,2トーン信号として,第1の変調信号の2倍の周波数成分及び第2の変調信号の2倍の周波数成分のいずれかに比べて,第1の変調信号と第2の変調信号の和の周波数成分が25dB以上40dB以下に抑圧されるものを得ることができる。
【0035】
ここでNが1の場合,第1の変調信号及び第2の変調信号を印加する工程において第1のサブマッハツェンダー導波路15及び第2のサブマッハツェンダー導波路16がバイアスヌルとなるようにする。また,Nが2の場合,第1の変調信号及び第2の変調信号を印加する工程において,第1のサブマッハツェンダー導波路15及び第2のサブマッハツェンダー導波路16がバイアスフルとなるようにする。そして,Nが3以上の場合,バイアス電圧調整工程の後に,光源11からの光成分をフィルタで除去する。
【0036】
第1の側面の好ましい態様は,Nが1又は2であり,Nが1の場合,バイアス電圧調整工程において第3の電極23に印加されるバイアス電圧がヌルとなるように調整する。一方,Nが2の場合,バイアス電圧調整工程において第3の電極23に印加されるバイアス電圧がフルとなるように調整する。
【0037】
第1の側面の好ましい態様は,Nは1であり,第1の変調信号及び第2の変調信号を印加する工程において第1のサブマッハツェンダー導波路15及び第2のサブマッハツェンダー導波路16に印加されるバイアス電圧がヌルとなるように調整する。
【0038】
第1の側面の好ましい態様は,第1の変調信号の振幅(A
1)及び第2の変調信号の振幅(A
2)が等しい。すると,得られる2トーン信号の2つの信号の強度が等しくなる。
【0039】
第1の側面の好ましい態様は,第1の変調信号の振幅(A
1)及び第2の変調信号の振幅(A
2)が等しく,第1の変調信号及び第2の変調信号の位相変調範囲が0度以上360度/Nであり,J
n(x)(xは変数)を,n次の第1種ベッセル関数としたときに,第1の変調信号の振幅(A
1)が,2トーン信号の目的とする振幅に対して[J
n(A
1)]
2の逆関数掛けた値となるように調整する工程をさらに含む。このようにすることで,2トーン信号の振幅を制御できることとなる。
【0040】
第1の側面の好ましい利用態様は,上記のいずれかに記載の光信号の生成方法により,2トーン信号を発生させ,発生させた2トーン信号を特性評価の対象となる光検出器へ入射させ,特性評価の対象となる光検出器の特性を評価する方法に関する。2つの強度のそろったピークを有する光を光検出器に入力した場合,光検出器が正しく動作していれば,2つの光が同程度の強度を持って測定される。一方光検出器の検出感度が周波数によってことなっていれば,2つの光が異なる強度を持って観測されることとなる。このように強度のそろった周波数の異なる光パルスを有する2トーン信号を光検出器に入力することで,光検出器の周波数特性などを評価できる。
【0041】
本発明の第2の側面は,2つのサブMZMに周波数が同じ変調信号を印加し,メインMZMにも変調信号を印加して光2トーン光を得る方法に関する。
【0042】
この方法は,光源11と光源11からの光が入射する光変調器12と光検出器13を用いた光信号の生成方法に関する。そして,光変調器12は,第1のアーム及び第2のアームを含むメインマッハツェンダー導波路14を有する。第1のアーム及び第2のアームにはそれぞれ第1のサブマッハツェンダー導波路15及び第2のサブマッハツェンダー導波路16が設けられる。第1のサブマッハツェンダー導波路15及び第2のサブマッハツェンダー導波路16は,それぞれ変調電圧及びバイアス電圧のいずれか又は両方を印加するための第1の電極21及び第2の電極22を有する。メインマッハツェンダー導波路14は,第1のサブマッハツェンダー導波路15及び第2のサブマッハツェンダー導波路16に電圧を印加する第3の電極23を有する。
【0043】
そして,この方法は,第1の電極21及び第2の電極22に印加されるバイアス電圧を調整することで第1のサブマッハツェンダー導波路15及び第2のサブマッハツェンダー導波路16のバイアスをヌルにしつつ,第1の電極21及び第2の電極22に,それぞれ振幅が同じであり,周波数が第1の周波数f
mである第1の変調信号及び第2の変調信号を印加する工程と,第3の電極23に,第1の周波数と異なる周波数f
3の第3の変調信号を印加する工程と,を含む。これにより,この方法は,2f
m±f
3の周波数成分含む2トーン信号を発生する。
【0044】
第2の側面の好ましい態様は,第3の電極23に印加されるバイアス電圧がπ/2である。
【0045】
第2の側面の好ましい態様は,第1の変調信号及び第2の変調信号は,位相差が90度である。
【0046】
第2の側面の好ましい態様は,第1の変調信号及び第2の変調信号は,位相を同相とする。そして,第3の電極23に印加されるバイアス電圧を調整して,メインマッハツェンダー導波路をヌルバイアスで動作し,メインマッハツェンダー導波路14から出力される光信号に前記第3の変調信号の周波数f
3の2倍の光信号である2倍波成分を含む光を生成させる。すると,光検出器からの出力には,2f
3+f
m及び2f
3−f
mを所望2トーン信号として含む信号を発生させることができる。また,第1の変調信号及び第2の変調信号を同相とする。第3の電極23に印加されるバイアス電圧を調整して,メインマッハツェンダー導波路をフルバイアスで動作し,メインマッハツェンダー導波路(14)から出力される光信号に第3の変調信号の周波数f
3の4倍の光信号である4倍波成分を含む光を生成させる。するとこの光を検出した光検出器からの出力には,4f
3+f
m及び4f
3−f
mを所望2トーン信号として含む信号を発生させることができる。
【0047】
本発明の第1の側面及び第2の側面の好ましい利用態様は,上記いずれかに記載の方法により得られた2トーン信号を,特性評価の対象となる検出器に印加して,ヘテロダイン検波を行う,検出器の特性評価方法に関する。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば,入力周波数の2倍の周波数成分を有する2トーン信号を得ることができる。また,本発明は,2トーン信号を用いた検出器の特性評価方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は,本発明の基本系を示すブロック図である。
図1に示されるように,本発明の第1の側面は,光源11と光源11からの光が入射する光変調器12と光検出器13を用いた光信号の生成方法に関する。
【0051】
第1の側面に係るRF2トーン信号の発生方法について説明する。この方法は,基本的には,2つのサブMZ変調器にそれぞれ異なる周波数の変調周波数信号を入力しつつ,メインMZMで光位相を制御することによりRF2トーン信号を得るものである。
【0052】
図2は,本発明において用いる光変調器の例を示すブロック図である。
図1に示されるように,この光変調器12は,第1のアーム及び第2のアームを含むメインマッハツェンダー(MZ)導波路14を有するDPMZMである。そして,DPMZMの第1のアーム及び第2のアームにはそれぞれ第1のサブMZ導波路15及び第2のサブMZ導波路16が設けられる。第1のサブMZ導波路15及び第2のサブMZ導波路16は,それぞれ変調電圧及びバイアス電圧のいずれか又は両方を印加するための第1の電極21及び第2の電極22を有する。メインMZ導波路14は,第1のサブMZ導波路15及び第2のサブMZ導波路16からの出力信号の位相差を制御するための第3の電極23を有する。
【0053】
これら第1の電極21,第2の電極22及び第3の電極23の電極の例は,2つの導波路に対称な電界を発生させバランスのとれたプッシュプル動作を実現するものである。この例では,2つの導波路(アーム)に生じる光位相変化の大きさが同じで,光位相変化が逆符号である。
【0054】
第1のサブMZ導波路15及び第2のサブMZ導波路16は,それぞれ例えば,略六角形状の導波路を具備し,並列する2つの位相変調器を具備するようにして構成される。位相変調器は,たとえば,導波路に沿った電極により達成できる。また強度変調器は,たとえばマッハツェンダー導波路と,マッハツェンダー導波路の両アームに電界を印加するための電極とにより達成できる。第1のサブMZ導波路15及び第2のサブMZ導波路16のそれぞれのアームには,電極が設けられていてもよい。すなわち,第1の電極21及び第2の電極22は,それぞれ1本の電極により構成されてもよいし,それぞれ各導波路に沿った2本の電極により構成されてもよい。
【0055】
通常,マッハツェンダー導波路や電極は基板上に設けられる。基板及び各導波路は,光を伝播することができるものであれば,特に限定されない。例えば,LN基板上に,Ti拡散のニオブ酸リチウム導波路を形成しても良いし,シリコン(Si)基板上に二酸化シリコン(SiO
2)導波路を形成しても良い。
【0056】
第3の電極23には,低電圧信号又は低周波信号が印加される。この信号が,バイアス電圧である。第1の電極21及び第2の電極22には,後述する高周波数信号に加えて,低電圧信号又は低周波信号が印加されてもよい。「低周波」とは,例えば,0Hz〜500MHzの周波数を意味する。なお,この低周波信号の信号源の出力には電気信号の位相を調整する位相変調器が設けられ,出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0057】
第1の電極21及び第2の電極22にそれぞれ周波数がf
1及びf
2である第1の変調信号及び第2の変調信号が印加される。この変調信号は,ラジオ周波数(RF)信号である。すなわち,第1の電極21及び第2の電極22は,たとえば,高周波電気信号源と接続される。高周波電気信号源は,第1の電極21及び第2の電極22へ伝達される信号を制御するためのデバイスである。高周波信号の周波数(f
m)の例は,1GHz〜100GHzである。高周波電気信号源の出力の例は,一定の周波数を有する正弦波である。この高周波電気信号源の出力には位相変調器が設けられ,出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0058】
この方法は,第1の電極21及び第2の電極22にそれぞれ周波数がf
1[Hz]及びf
2[Hz]である第1の変調信号及び第2の変調信号が印加される。ここで,f
1及びf
2は,異なる周波数である。
【0059】
光源11からの入力光の周波数をf
0[Hz]とすると,第1のサブMZ導波路15及び第2のサブMZ導波路16からは,DSB−SC信号が出力される。第1のサブMZ導波路15からは,f
0−f
1及びf
0+f
1の周波数成分を有するDSB−SC信号が出力される。第2のサブMZ導波路16からは,f
0−f
2及びf
0+f
2の周波数成分を有するDSB−SC信号が出力される。そして,メインMZ導波路の合波路で2つのDSB−SC信号が合波される。合波される2つのDSB−SC信号の位相差を第3の電極に印加されるバイアス信号により調整できる。
【0060】
本発明の方法は,光変調器12からの出力信号を光検出器13が二乗検波して得られるf
1+f
2成分及びf
1−f
2成分のいずれか又は両方が抑圧されるように第3の電極23に印加されるバイアス電圧を調整する。このバイアス電圧調整は,制御装置を用いて自動的に行われるようにしてもよい。この制御装置には,光検出器13の二乗検波値が入力される。そして,この制御装置は,バイアス電源と接続されており,第3の電極23に印加する電圧値を変化させて,f
1+f
2成分及びf
1−f
2成分のいずれか又は両方が抑圧されるようにバイアス電源に対して指令を出す。このようにすれば,クロスターム成分を抑圧できる。
【0061】
バイアス電圧を調整する際に,第1のサブMZ導波路15及び第2のサブMZ導波路16からの出力信号の位相差がπ/2となるように,第3の電極23に印加されるバイアス電圧を調整することが好ましい。
【0062】
このようにすることで,第1の変調信号及び第2の変調信号の2倍の周波数成分を含む2トーン信号を発生することができる。具体的に説明すると,2トーン信号として,第1の変調信号の2倍の周波数成分及び第2の変調信号の2倍の周波数成分のいずれかに比べて,第1の変調信号と第2の変調信号の和の周波数成分が25dB以上40dB以下に抑圧されるものを得ることができる。
【0063】
本発明の第2の側面は,上記いずれかに記載の方法により得られた2トーン信号を,特性評価の対象となる検出器に印加して,ヘテロダイン検波を行う,検出器の特性評価方法に関する。
【0064】
図3は,本発明の原理を説明するための図である。
図4に示される2つの並列したMZMを有するマッハツェンダー変調器(DPMZM)を用いて,2つの搬送波抑圧両側波帯(DSB−SC)信号を発生し,合波する。この際,変調周波数を,f
1及びf
2とする。このDPMZMは,メインMZMの両アームのそれぞれに,サブMZMを有する。2つのサブMZMの光位相差は,電極Cに印加されるバイアス電圧Cを調整することで制御できる。DPMZMからの出力信号は,4つのスペクトル要素を有している。インプット信号(f
0)に対するオフセット周波数は,+f
1,−f
1,+f
2及び−f
2であり,二乗検波のために高速光検出器に光信号を入力することで,2f
1,2f
2,f
1+f
2及びf
1−f
2成分を得ることができる。
【0065】
ここで,クロスターム成分であるf
1+f
2及びf
1−f
2成分は,2つのDSB−SC信号の光位相差による。f
1+f
2成分は,f
1成分の上側波帯(USB)信号及びf
2成分の下側波帯(LSB)信号から生成する。一方,f
2成分の上側波帯(USB)信号及びf
1成分の下側波帯(LSB)信号もf
1+f
2成分を生成する。これらは互いに干渉しあう。バイアス電圧Cを制御することで,f
1+f
2成分の強度を抑圧できる。同様に,f
1−f
2成分は,f
1及びf
2成分のUSBの光ビートにより発生するとともにそれらのLSBからも発生する。
【0066】
次に,本発明の動作原理を解析する。メインマッハツェンダー変調器の上側のアームに存在するサブMZMにより発生するDSB−SC信号は,以下のように表現できる。
【0068】
一方,メインマッハツェンダー変調器の下側のアームに存在するサブMZMにより発生するDSB−SC信号は,以下のように表現できる。
【0070】
上記の式において,A
1及びA
2は,高速信号であるf
1及びf
2による振幅を示す。J
nは,n次の第1種ベッセル関数である。ここで,光位相シフト量が高次成分を無視できるほど小さいものとする。すると,DPMZMからの出力は以下のように表すことができる。
【0072】
ここで,Φ(ファイ)は,バイアス電圧Cにより制御される光位相である。ここでは,A
1及びA
2が等しく,Aであるとする。すると,高速光検出器における二乗検波信号を,以下のように表現できる。
【0074】
すると,クロスターム成分であるf
1+f
2及びf
1−f
2成分をバイアス電圧(又はΦ)により制御できることがわかる。一方,2倍周波数成分2f
1及び2f
2成分はΦに依存しない。Φがπ/2であるとき,検出信号を以下のように表現できる。
【0076】
すなわち,クロスターム成分を抑圧することで,2倍周波数成分が得られることがわかる。たとえば,f
1変調信号の第1の4相位相変調信号と第2の4相位相変調信号におけるn番目の点を用いることで,2f
1のn−PSK(位相シフトキーイング)を達成できる。すなわち,本発明の方法は,高速PSK信号の周波数領域における混合に有効であるといえる。
【0077】
つまり,上記のようにして得られるRF信号は,2つの周波数成分の強度が等しくなり,バランスのとれた2トーン信号となることがわかる。周波数だけでなく位相も2倍になっているので,変調信号の位相変化を0度から180度に制限された位相変調信号であると,出力としては位相変化0度から360度までの位相変調信号が得られる。[J
1(A)]
2の逆関数であらかじめ変換しておくことで,振幅も自由に制御することができる。これらの性質を利用すると,2つの変調信号を歪み成分(周波数の和や差の成分など)なしに周波数を二倍しつつ合成することが可能となる。広帯域の信号を合成する場合に有用であると考えられる。
【0078】
次に,サブMZMのDCバイアスがFull(φ
B1=φ
B2=0:入力光成分最大)の場合を考える。
入れ子型のMZを有するLN変調器(2つのサブMZの電極を電極A,電極Bとし,メインMZの電極を電極Cとする。)を想定した場合に,電極A及び電極Bに印加される変調信号は,以下のように表わすことができる。
【0080】
メインMZM からの出力は以下のようになる。
【0082】
ここで,入力光成分をフィルタで除去すると,メインMZM からの出力は以下のようになる。
【0084】
これを2乗検波すると,以下のように検出される。
【0086】
Φがπ/2であるとき,検出信号を以下のように表現できる。
【0088】
変調信号の周波数の和と差の成分は抑圧され4倍波の成分
4ωm1と
4ωm2の2つの周波数成分だけとなる。さらに,A
1=A
2=Aの場合(両サブマッハツェンダー干渉計に印加される変調信号の振幅が等しい場合)には検出信号を以下のように表現できる。
【0090】
すなわち,上記の場合は,2つの周波数成分の強度が等しくなり,バランスのとれた2トーン信号となることがわかる。検出信号は,周波数だけでなく位相も4
になっているので,変調信号の位相変化を0度から90度に制限された位相変調信号であると,出力としては位相変化0から360度までの位相変調信号が得られる。[J
2(A)]
2の逆関数であらかじめ変換しておくことで,振幅も自由に制御することができる。これらの性質を利用すると,2つの変調信号を歪み成分(周波数の和や差の成分など)なしに周波数を四倍しつつ合成することが可能となる。広帯域の信号を合成する場合に有用であると考えられる。
【0091】
強度を校正した2トーン光をPDへ入力して,PDから出力されるRF信号を用いてPDの周波数特性を測定するものである。すなわち,2トーンの周波数間隔を掃引することで,PDの周波数特性を測定・評価できる。2トーン光の中心波長を変化させることで,光検出器の波長特性を測定できる。2トーン光の偏光を変化させることで,偏光特性を測定できる。
【0092】
第2の態様は,2トーン光を2つ以上PDに同時に入力して,PDの非線形性を測定するものである。
第3の態様は,FSK変調器を用いてPDの非線形性を測定するものである。
いずれの態様も,2トーン光発生源として,MZ干渉計を有する系を用いる。
この際,バイアス電圧を調整することで2トーン信号の強度差が大きくならないように制御する。周波数掃引速度と不要スペクトル成分の強度を同時に監視する。
MZ干渉計を有する系は,周波数が安定しており,2トーン信号の偏光差を制御でき,高消光比を達成できる。このため,MZ干渉計を有する系を2トーン光発生源として用いることで,きわめて精度よくPDの特性を評価できる。
【0093】
本発明の第2の側面は,サブMZMに等しい周波数の変調信号を所定の位相差で入力し,メインMZMにも変調信号を入力するものに関する。この方法によれば,2トーン信号を発生する光信号や2トーン信号を含む信号を発生する光信号を発生することができる。
【0094】
この側面の方法も,サブMZでDSB-SC変調する。
電極A及び電極Bに印加される変調信号は,以下のように表わすことができる。
【0096】
となる。A
1=A
2=Aとして,メインMZMに各振動数ω
3,位相φ
3の変調信号Bsin(ω
3t+φ
3)+φ
Bを印加する。メインMZMの出力での変調信号は以下のように表わすことができる。
【0098】
よって,2乗検波波形は,KをJ
1(B)/J
2(B)として,以下のように表わすことができる。
【0100】
φ
1=0,φ
2=π/2,ω
m1=ω
m2=ω
mの場合は,2乗検波による検出波形は以下のようになる。
【0102】
さらに,φ
B=π/2の場合,2乗検波による検出波形は以下のようになる。ただし,Kが1よりずっと小さいとし,Kの2乗の項を無視した。
【0104】
上記のとおりであるから,サブMZMに90
度位相差(φ
2−φ
1=π/2)
をもつ等しい振幅,等しい周波数(角周波数ω
m)の変調信号を入力し(バイアスはNull),メインMZMにBsin(ω
m3t+φ
3)+φ
Bを印加すると,RF
2トーン信号が得られる。メインMZM のバイアスφ
B=π/2
とする必要がある。2トーン信号の周波数成分はサブMZM の変調周波数の2 倍からメインMZMの変調周波数を引いたものと足したものの2 通りである。2トーン信号の成分間の周波数差はメインMZMの変調周波数に,平均周波数はサブMZM
変調周波数の2倍に一致するので,非線形性のテスト時の周波数変化(平均か間隔か)が容易であるというメリットがある。
【0105】
この側面は,以下の態様にも利用できる。先に説明した入れ子型のMZを有するLN変調器(2つのサブMZの電極を電極A,電極Bとし,メインMZの電極を電極Cとする。)。そして,マイクロ波f
RFを電極Cに印加し,マイクロ波f
IFを同相で電極A及び電極Bに印加する。電極A及びBをヌルバイアスモード動作となるように(すなわち外部レーザ出力が最小となるように)DCバイアスを調整する。電極Cは,発生する光信号が2倍波(ヌルバイアスモード)又は4倍波(フルバイアスモード)かでDCバイアス値を調整する。このように調整すると,4つの光信号を得ることができる。これらの光信号は全て偏波が揃ったものである。すなわち,電極に印加する2種のマイクロ波を移送同期させることによりコヒーレントな信号を発生できることとなる。そして,光の周波数差としてマイクロ波を得ることができるので,光検出器からマイクロ波信号を出力できる。4つの光信号の周波数は,マイクロ波f
RFの2倍(Null-biasモード動作),マイクロ波f
RFの4倍(Full-biasモード動作),“マイクロ波f
RFの2倍(4倍)+マイクロ波f
IF”及び“マイクロ波f
RFの2倍(4倍)−マイクロ波f
IF”である。“マイクロ波f
RFの2倍(4倍)+マイクロ波f
IF”及び“マイクロ波f
RFの2倍(4倍)−マイクロ波f
IF”の周波数を有する信号は,コヒーレントな高位相安定信号であり,かつ振幅も揃っている。これらを所望の2トーン信号とする。このため,この片方を装置測定用基準信号とし,他方をテスト信号として用いることができる。応用可能な周波数帯は1GHz以下から100GHz以上であり,2トーン信号の周波数差は,DCから40GHz程度(電極A及び電極Bの入力に依存)と考えられる。この態様では,1つのLN−MZMにより検出器から2つのマイクロ波信号を含む信号を出力させることができる光信号を得ることができる。1つのLN−MZMで2つのマイクロ波信号を光信号として発生させるため,偏波面は1度以内で揃っており,かつ高位相安定な信号が得られる。
【0106】
以下,実施例を用いて本発明を具体的に説明する。本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0107】
図5は,実験系を示す図である。DPMZM(ネスト型マッハツェンダー変調器)のDCバイアス電極A及びBに2つの正弦波をそれぞれ印加した。電極B又はCに印加されるバイアス電圧を調整することで,サブMZMを最小伝送バイアスポイントに調整して,DSB−SC変調を達成した。2つのDSB−SC信号の光位相差を,電極Cに印加されるバイアス電圧を制御することで調整した。f
1とf
2の変調周波数を5.00GHzと5.01GHzとした。光スペクトルアナライザを用いて光検出器から出力されるラジオ波を観測した。
図6に示されるとおり,本実験により2つの2倍周波数成分(10.00GHz及び10.02GHz)であって,クロスターム要素(10.01GHz)が抑圧されたものを得ることができた。目的とする要素からみた,クロスターム要素の抑圧比は30dB以上であった。
【0108】
このように,対象成分以外の成分を十分に抑圧した,2倍周波数成分の2トーン信号をマイクロ波の領域で得ることができた。この技術は,光検出器の非線形性を測定することや,ワイドバンドのRoFシグナルの周波数領域における混合を達成するために有効であると考えられる。
【実施例2】
【0109】
DPMZMによるRF
Two−tone信号発生
概要
RoFシステム受信系の非線形特性評価のために,理想的なPDで検波した際に2トーン(Two−tone)RF信号の発生を検討した。通常の強度変調器にTwo−tone信号を電気入力として加えると変調器自体の非線形性を含むRoF信号が発生する。本実験では,DPMZMのサブMZにそれぞれ,別の周波数f1,f2のシングルトーン信号を加えて,PD出力では理想的なTwo−tone信号を得た。各サブMZ(マッハツェンダー干渉計)DSB−SC変調し,光のTwo−tone信号を発生させた。
各サブMZにおいて発生した信号をメインMZで合波させた。この際,光回路は線形であるために,新たな周波数成分は発生しない。光出力としては変調周波数f1とf2のUSB,LSBをそれぞれ,計4つのスペクトル成分が得られる。PDでの2乗検波では2f1,2f2,f1+f2の3つのスペクトル成分が発生するが,メインMZでの光位相(バイアス)を制御することで,f1+f2成分を抑圧し,2f1と2f2成分からなるTwo−to
ne信号が得られる。メインMZのバイアス調整でf1のUSBとf2のLSBのビートとf2のUSBとf1のLSBのビートが逆相とすることができるというのが基本原理である。サブMZに印加された信号はそれぞれ二逓倍されるので,一般にQAMなどで変調された信号を入力した場合,PD出力では適切な変調信号とならないが,0−180度の間に限定して位相変調をした場合には,位相変化が2倍となり,PD出力で0−360度の範囲での位相変調信号となる。この原理を使うと,電気回路で発生困難な広帯域なFDMやOFDM信号の合成が期待できる。
【0110】
実験系
光源として,NEL NLK1554BTZ−A
80128 0deg 149.7mA用いた偏波コントローラの出力端での出力は11.67dBmであった。偏波コントローラを経た光がFSK変調器(T FSK1.5−10−P
SN 182376)に入力した。この光は,増幅器(EDFA(OPREL製))及び BPF(バンドパスフィルタ)5nm(応用光電)を経て,PD(NEL
KEPD 2525VPG)へ入力した。光変調器のRF入力はローデアンドシュワルツSMF−100Aを2台用いた。光変調器のバイアス制御は応用光電E12069を用いて制御した。光スペクトル(PD入力点で)をANDO製光スペクトルアナライザを用いて測定した。
図7は,PD入力点での光スペクトルを示す。PDからの出力をアジレントE4448Aでスペクトル測定した。
【0111】
実験手順
実験手順は以下の通りであった。
まず,FSK変調器のバイアスを調整した。
【0112】
光スペクトルアナライザを用いてバイアス電圧を調整した。
(I)MZa(第1のサブマッハツェンダー干渉計)のバイアスをヌル(Null)に設定した。この際,
1.MZaのRF入力をONとし,MZbのRF入力をOFFとした。
2.2次および0次サイドバンドが最小となるようにMZaのバイアスを調整(0次はMZbからの成分を含むのでゼロにならない)した。
(II)MZbのバイアスを(I)と同様に調整しヌルに設定した。
(III)MZa及びMZbの両方にRF信号を入力し,2次サイドバンドが最小となるようにMZa及びMZbのバイアスを調整(RF同時入力による温度変化に対応)した。
(IV) キャリアが最小となるようにMZcへのバイアス電圧を調整した。
そして,上記の手順を適宜繰り返した。
【0113】
RFスペクトルアナライザでPD出力をモニタし,f1+f2成分が最小となるように主にMZcへのバイアス電圧を微調整した。MZaおよび,MZbへ印加するバイアス電圧も微調整してもよいが,これらを大きく変化させたときには,光スペクトルアナライザで再度確認した。
【0114】
光スペクトルアナライザ調整の(I)及び(II)の工程で,1次サイドバンドの強度が等しくなるようにRFパワーを調整した。つぎに,RFスペクトルアナライザでも1次サイドバンドの強度が等しくなるように調整した。続いて2f1と2f2成分が等しくなるように調整した。ただ,RFパワーを変えると,f1+f2成分の抑圧比も変動するので,バイアス電圧(主にMZc)も合わせた微調整を行った。
【0115】
実験結果
上記の実験結果を
図7〜
図10に示す。この実験では,f1として5.00GHz (27.47dBm
変調器入力点), f2として5.01GHz(27.24dBm)の変調信号を用いた。
図7は,実施例2における光検出器の入力前の光スペクトルを示す。
図8は,実施例2における10GHz付近のRFスペクトル(所望成分10.00GHz,及び 10.02GHz)を示す。
図9は,実施例2における20GHz付近のRFスペクトルを示す。
図10は,実施例2における5GHz付近のRFスペクトルを示す。
【0116】
図8に示されるように10GHz近辺で所望成分の2トーンが得られることが確認できた。不要成分f1+f2の抑圧比は30dB以上であった。
図9に示される通り,4倍波の20.00GHz及び20.04GHz成分も発生していた。基本波5GHz近辺は原理的には抑圧されるはずであるが,
図10に示されるように−60dBm程度発生していた。しかし,基本波成分は所望成分である2倍波に比べると10dB程度抑圧されていた。
【実施例3】
【0117】
光パワーを変調器出力−2.97dBmとしPD入力6.45dBmとし,f1を5.00GHz(27.40dBm),f2を6.00GHz(27.49dBm)とした。その結果を
図11及び図12に示す。
図11は,実施例3における光検出器の入力前の光スペクトルを示す。図
12は,実施例3における5GHz付近のRFスペクトルを示す。
【実施例4】
【0118】
DPMZM(SSB−like)によるRFTwo−tone信号発生
本実施例では,DPMZMのサブMZにそれぞれ,周波数f1のシングルトーン信号を90度位相差で加えて,さらに,メインMZには周波数f2のシングルトーン信号を
印加し,PD出力では理想的なTwo−tone信号を得た。各サブMZでDSB−SC変調し,周波数2f1成分を発生させた。メインMZではさらに2f1+f2及び2f1−f2成分が発生するが,バイアスを光位相差90度に設定すると,PD検波出力で2f1成分及び2f2成分が抑圧され,2f1+f2,2f1−f2成分からなるTwo−tone信号が得られた。
【0119】
実験系
この実施例における実験系は以下の通りであった。
光源として,NEL NLK1554BTZ−A
80128 0deg 149.7mAを用いた偏波コントローラの出力端での出力強度は11.67dBmであった。光源からの光は偏波コントローラを経て,FSK変調器(T FSK1.5−10−P SN 182376)に入力した。FSK変調器の出力は,EDFA(OPREL社製)
及び BPF 5nm(応用光電社製)を経て,PD(NEL KEPD
2525VPG)へ入力した。
【0120】
RF入力はローデアンドシュワルツSMF−100A (サブMZM用) Hybrid経由で変調器へ入力した。メインMZM用には,ローデアンドシュワルツSMR−20を用いた。バイアス電圧は応用光電E12069を用いて制御した。PD入力点での光スペクトルを,ANDO社製光スペクトルアナライザを用いて検出した。PDの出力をアジレントE4448Aでスペクトル測定した。
【0121】
実験手順
FSK変調器のバイアスを調整する
サブMZMにRF入力して,SSB動作条件に設定。
【0122】
実験結果
この実験では,2つのサブMZMに印加される変調信号の周波数f1が5.00GHz(21.51dBm MZa, 21.61dBmMZb)であり,メインMZMに印加される編昇進後の周波数f2が,1GHz(15.26dBm MZc)であった。図
13は,実施例4における光検出器の入力前の光スペクトルを示す。図
14は,実施例4における10GHz付近のRFスペクトル(所望成分10.00GHz,及び10.02GHz)を示す。図
14から,10GHz近辺で所望成分2トーン信号が得られることが確認できた。不要成分2f1の抑圧比は10数dBであった。
【実施例5】
【0123】
この実験では,2つのサブMZMに印加される変調信号の周波数f1が1.00GHz(22.79dBmMZa, 22.35dBm MZb)であり,メインMZMに印加される
変調信号の周波数f2が,f2:10.00GHz(14.13dBmMZc)であった。図
15は,実施例5における光検出器の入力前の光スペクトルを示す。図
16は,実施例5における10GHz付近のRFスペクトル,RBWフィルタ
5.1kHzを示す。
図17は,実施例5における7.5GHz付近のRFスペクトル,RBWフィルタ10kHzを示す。