特許第5697902号(P5697902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5697902
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム処理されたAu含有層
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20150319BHJP
   C23C 16/04 20060101ALI20150319BHJP
   C23C 16/16 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   C23C16/44 A
   C23C16/04
   C23C16/16
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-133103(P2010-133103)
(22)【出願日】2010年6月10日
(65)【公開番号】特開2010-285692(P2010-285692A)
(43)【公開日】2010年12月24日
【審査請求日】2013年6月5日
(31)【優先権主張番号】09162532.7
(32)【優先日】2009年6月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ヤーコブス ランベルタス ムルデルス
【審査官】 伊藤 光貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−259095(JP,A)
【文献】 特開2006−009055(JP,A)
【文献】 特開平08−170163(JP,A)
【文献】 特開2008−177154(JP,A)
【文献】 特開2000−054116(JP,A)
【文献】 特開2005−200507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料表面上にAu含有層を供する方法であって:
Au(CO)Clを有する堆積流体を供する手順;
前記試料表面の少なくとも一部の上に前記流体を堆積する手順;
前記流体の少なくとも一部が吸着する前記試料表面に向かって荷電粒子ビームを案内し、該案内後Au(CO)Clのビーム誘起分解を起こすことで、前記試料表面上に前記Au含有層を形成する手順;
を有する方法。
【請求項2】
前記流体の堆積は減圧下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記堆積は真空下で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記荷電粒子ビームはイオンビーム又は電子ビームである、請求項1-3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記Au含有層の表面にパターンを転写するように前記荷電粒子ビームが構成される、請求項1-4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記荷電粒子ビームはペンシルビームで、かつ、
前記パターンは所定のシーケンスで前記表面全体にわたって前記ペンシルビームを走査させることによって生成される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
マスクは前記荷電粒子ビームと交差するように供され、
該交差により、荷電粒子ビーム強度は前記マスクのパターンに対応して変調される、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記表面に転写されるパターンが、100nm未満の大きさの部位有する、請求項5-7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記表面に転写されるパターンが、50nm未満のサイズの部位を有する、請求項8に記載の方法
【請求項10】
前記表面に転写されるパターンが、10nm未満のサイズの部位を有する、請求項9に記載の方法
【請求項11】
荷電粒子ビーム誘起堆積用の前駆体としてのAu(CO)Clの使用。
【請求項12】
試料表面上にAu含有層を供する荷電粒子システムであって、
当該システムは:
試料表面を照射地点に設置するように備えられている試料ホルダ;
前記照射地点に荷電粒子ビームを供するように備えられている荷電粒子源;及び、
前記照射地点にAu(CO)Clを有する堆積流体を供するように備えられている流体導入装置;
を有し、
前記荷電粒子ビーム及び流体導入装置は、前記堆積流体を分解することで、前記試料表面上にAu含有層を形成するように備えられている、
荷電粒子システム。
【請求項13】
前記流体導入装置が前記堆積流体を保持するように備えられている容器を有する、請求項12に記載の荷電粒子システム。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の荷電粒子システム内で前記堆積流体を供給する容器であって、Au(CO)Clを有する容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料表面上にAu含有層を供する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビームが非常に小さなスポットを生成することができるため、荷電粒子ビーム-たとえばイオンビーム及び電子ビーム-は、ナノテクノロジーにおいて試料を処理するのに用いられる。たとえば集束イオンビームシステムは、サブミクロンスケールの精度で可視化、ミリング、堆積、及び解析を行うことができる。集束イオンビームシステムは、本願出願人であるFEIカンパニーから市販されている。イオンは、試料から材料をスパッタ-つまり物理的に除去-することで、試料中の部位-たとえば溝-を形成するのに用いられて良い。集束イオンビームは半導体業界で一般的に用いられている。一の用途では、たとえば集束イオンビームは、集積回路を削って小さな溝を形成することで、イオンビーム又は電子ビームを用いた観察又は測定のための垂直構造の断面を露出させる。
【0003】
イオンビームはまた、イオンビームの衝突によって放出される2次粒子を収集することによって、試料の像を生成するのにも用いられて良い。表面上の各地点から放出される2次粒子の個数は、その像の対応する地点での像の輝度を決定するのに用いられる。
【0004】
それに加えて、荷電粒子装置は、迅速で明確なパターニングを行う能力を有する。たとえばマスクが荷電粒子と交差するように供されることで、そのマスク上のパターンは荷電ビームに反映される。試料を適切に前処理することによって、荷電粒子ビームが交差する試料表面にパターンを転写することができる。あるいはその代わりに荷電粒子ビームは、ペンシルビームとして構成され、かつコンピュータ制御により試料全体にわたって走査されてよい。ビームのオン/オフと、そのビームが1つの位置に維持される期間(滞留時間)とを組み合わせることによって、様々な位置で様々な寸法を有するパターンを試料上に生成することができる。
【0005】
電子ビームもまた試料の処理に用いられて良い。たとえば特許文献1には電子ビーム処理が記載されている。電子ビームは、電子顕微鏡と呼ばれる処理での像の生成に、より広く用いられている。電子顕微鏡は、光学顕微鏡よりも、顕著に高い分解能と大きな焦点深度を供する。走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)、及び走査型透過電子顕微鏡(STEM)は、当技術分野において周知のバリエーションの一部である。
【0006】
荷電粒子ビームはまた、スパッタリングを改善するエッチャントガスの活性化、又はビームが衝突する地点付近に材料を堆積させる前駆体流体の分解にも用いられて良い。これは、イオンビームについてはイオンビーム誘起堆積(IBID)、又は電子ビームについては電子ビーム誘起堆積(EBID)と呼ばれる。EBIDは、集束電子ビームによって液体又は気体分子を分解することによって、すぐ近くの基板上に不揮発性の断片を堆積させる方法である。前記堆積は、電子顕微鏡の高真空チャンバ内で行われるので、相対的に汚染物は少ない。IBIDは、電子ビームではなく集束イオンビームが用いられる点でEBIDとは異なる。いずれの堆積方法でも、1次ビームではなく2次ビームが堆積を起こしている。従って堆積は、基板、試料、又は堆積地点付近に既に堆積された材料が1次電子を吸収し、かつ気体分子を分解する2次電子を再放出するという2段階の処理を経て行われる。
【0007】
これらの堆積方法では、様々な目的のため、広範な種類の材料が基板又は試料上に堆積されて良い。そのような材料には、Al、Au、アモルファスカーボン、ダイアモンドライクカーボン、Co、Cr、Cu、Fe、GaAs、GaN、Ge、Mo、Nb、Ni、Os、Pd、Pt、Rh、Ru、Re、Si、Si3N4、SiOx、TiOx、及びWが含まれる。堆積に選ばれる材料は用途に依存する。そのような用途には、下地の標的表面の組成物及び堆積のために意図した目的が含まれる。
【0008】
広く用いられる堆積気体には、W、Pt、及びAuを堆積するために分解する前駆体化合物が含まれる。たとえば、W-ヘキサカルボニルはタングステン(W)の堆積に用いられて良く、メチルシクロペンタジエニルPtトリメチルはプラチナ(Pt)の堆積に用いられて良く、かつジメチルAuアセチルアセトネートは金(Au)の堆積に用いられて良い。これらの前駆体化合物は、堆積物中に炭素汚染不純物を生成してしまうという課題を抱えている。
【0009】
たとえばジメチルAuアセチルアセトネートでは、得られた堆積層が、炭素汚染不純物に対して相対的に少量のAuしか含んでいないことが一般的に観測されている。図4は、ジメチルAuアセチルアセトネートを前駆体として用いて堆積したAuの層の典型的な特性を示すグラフ200である。元素の組成はエネルギー分散X線分光(EDX)を用いて評価される。グラフ200は、横軸に沿って0-2.8keVの範囲を表し、かつ縦軸に沿ってカウント数を表す。グラフ200では、0.2〜0.4keVで炭素(C)210、0.4〜0.6keVで酸素(O)220、1.6〜1.8keVでシリコン(Si)、及び2.0〜2.2keVで金(Au)230の4つのピークが観測されている。従って堆積物中の炭素に対する金の比は約11.5:73すなわち1:6.35である。換言すると、少量の金(9原子%)と多量の炭素汚染不純物(約80%)ということである。
【0010】
前記化合物が高コストであること、及び得られた層の伝導率が低いことを考えると、炭素汚染不純物に対して高い量の金を含有する層を生成する堆積方法を供することが必要であることが分かる。
【0011】
前駆体材料は最初気体、液体、又は固体のいずれで供給されても良い。液体又は固体は一般的には蒸発又は昇華によって堆積前に気化され、かつ正確に制御された速度でシステムのチャンバへ流体として導入される。あるいはその代わりに固体前駆体は、荷電ビームを用いた照射によって昇華されても良い。
【0012】
試料表面上に流体を堆積する装置-所謂流体又は気体導入システム-は周知であり、係る装置の広範なバリエーションが本発明で使用可能である。本発明での使用が可能である適切な流体導入システムは、特許文献2の図3及び図4並びにこれらの図に対応する明細書に記載されている。
【0013】
粒子ビーム及び流体が通過するシリンダを用いる他の流体導入システムもまた本発明での使用に適している。一例が特許文献3に開示されている。
【0014】
上述したように、堆積した材料はEDXを用いて評価することができる。EDXでは、試料はX線又は高エネルギーの電子若しくは陽子ビームに衝突する(粒子励起X線分光又はプロトン励起X線分光-PIXE)。衝突による原子相互作用が生じることで、元素に固有な電磁スペクトルのX線部分に属する波長のEM放射線が放出される。
【0015】
あるいはその代わりに電子顕微鏡手法が堆積中又は堆積直後に用いられても良い。その場電気及び光学評価もまた可能である。イオンビーム堆積システムでは、評価用に電子顕微鏡が一体化されていて良い。これは一般的にデュアルビームシステムと呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6753538号明細書
【特許文献2】国際公開第00/22670パンフレット
【特許文献3】米国特許第5149974号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、試料表面上にAu含有層を供するシステム及び方法を供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って本発明は、試料表面上にAu含有層を供する方法に関する。当該方法は、
- Au(CO)Clを有する堆積流体(蒸気すなわち気体)を供する手順510、
- 前記試料表面の少なくとも一部の上に前記流体を堆積する手順520、
- 前記流体の少なくとも一部が吸着する前記試料表面に向かって荷電粒子ビームを案内し、その後Au(CO)Clのビーム誘起分解を起こすことで、前記試料表面上に前記Au含有層を形成する手順、
を有する。
【0019】
驚くべき事にAu(CO)Clが本発明による前駆体として用いられるとき、得られた前記Au含有層は炭素に対して相対的に高い比率で金を含む。このことは炭素汚染不純物のレベルが低いことを示唆している。この比率は、前駆体化合物の化学式におけるAu:Cの比に基づいて予想されるよりもはるかに高い。
【0020】
適切となるように、本発明では、流体の堆積は減圧下で行われる。堆積は真空下で行われることが好ましい。気体の堆積は、荷電粒子装置-たとえば電子顕微鏡-の高真空チャンバ内で行われることがより好ましい。
【0021】
制御された環境を利用することによって、汚染不純物を減らすことができる。
【0022】
本発明で使用される荷電粒子ビームはイオンビーム又は電子ビームであることが好ましい。前記使用される荷電粒子ビームは電子ビームであることがより好ましい。
【0023】
荷電粒子ビームシステム自体は既知であり、広範なバリエーションが本発明で使用可能である。そのような既存のシステムは、本発明によるシステムを供するように当業者によって修正されて良い。
【0024】
前記Au含有層の表面にパターンを転写するように前記荷電粒子ビームを構成することはさらに有利となりうる。
【0025】
有利となるように、前記荷電粒子ビームはペンシルビームで、かつ、前記パターンは所定のシーケンスで前記表面全体にわたって前記ペンシルビームを走査させることによって生成される。これにより高い自在性が供され、かつ、各試料について同一パラメータ及び設定で堆積システムを動作させることが一般的ではない研究分野において特に有用である。
【0026】
本発明はまた、電子ビーム誘起堆積(EBID)又はイオンビーム誘起堆積(IBID)用の前駆体としてAu(CO)Clを使用することにも関する。
【0027】
さらに本発明は、粒子光学装置内で堆積流体を供給する容器を供する。前記容器はAu(CO)Clを有する。
【0028】
本発明によるシステムが供される。当該システムは、試料表面を照射地点に設置するように備えられている試料ホルダ、前記照射地点に荷電粒子ビームを供するように備えられている荷電粒子源、及び、前記照射地点にAu(CO)Clを有する堆積流体を供するように備えられている流体導入装置、を有する。
【0029】
前記荷電粒子ビーム及び流体導入装置は、前記堆積流体を分解することで、前記試料表面上にAu含有層を形成するように備えられている。
【0030】
本発明の上記の態様及び他の態様は以降で説明する実施例を参照することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による荷電粒子ビームシステムを図示している。
図2】本発明による方法を図示している。
図3】本発明を用いて堆積したAuのラインを図示している。
図4】従来技術によるAu堆積物から得られたEDXスペクトルを図示している。
図5】本発明の方法及びシステムによって供されたAu堆積物から得られたEDXスペクトルを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図は純粋に概略的なものであり、正しい縮尺で描かれているわけではない。簡明を期すため、一部の寸法が強調されている。図中の同様な部品には可能な限り同一の参照番号が付されている。
【0033】
図1では、本発明の方法に用いられる荷電粒子ビームシステム300が概略的に図示されている。当該システム300は、試料110を照射するようにビーム360を発生させる荷電粒子源310;前記ビームによって前記試料110の照射を検出する検出器350-たとえば電子ビーム又はイオンビームの衝突によって前記試料から放出される2次電子の検出器;前記試料110の表面付近に流体-典型的には気体-を供給する流体導入装置390;前記試料110を受け取り、かつ位置設定する試料ホルダ380;内部システム環境、前記試料ホルダ380の移動、前記荷電粒子ビーム源310、流体導入装置390を制御し、かつ前記検出器350からの信号を処理する制御装置320;ユーザーに入力を供するユーザーインターフェース330;並びに、前記ユーザーに視覚的情報を供するディスプレイ340、を有する。
【0034】
前記検出器350は、堆積の評価を該堆積中又は後に行うのに用いられて良い。あるいはその代わりに又はそれに加えて、前記検出器350はX線検出器を有して良い。それにより粒子ビームの設定を適切にした状態でEDX手法を評価に用いることができる。
【0035】
Au含有層を受ける試料110は堆積の用途及び目的に依存して選ばれる。たとえばシリコン、Si3N4、又はGeの半導体ウエハが用いられて良い。他の可能性としては、生物試料、ポリマー、ガラス(SiO2)、及びセラミックスが含まれる。
【0036】
内部システム環境は一般的には、汚染不純物による汚染の危険性を減少させ、かつ荷電粒子ビームと大気中の気体との相互作用を減少させるように制御される。たとえば減圧状態が用いられて良いし、さらには典型的には10-5mbar以下のレベルである真空が用いられても良い。
【0037】
流体導入装置390は典型的には、堆積気体流を制御する制御システム、及び、照射地点での堆積気体の分圧が所望の値になることを保証するためにシステム300内部に設けられた1つ以上のガイドを有する。たとえば小さな穴を有する毛細管が、気体を試料へ案内するのに用いられる。供給地点はマニピュレータを内蔵することによって調節可能である。
【0038】
流体導入装置390の別な構成は導入される流体すなわち気体に依存する。流体導入装置390はある特定の温度を実現するために冷却及び/又は加熱装置を有して良いし、堆積流体を収容する容器を有しても良いし、システム外部の供給体とやり取り可能であっても良いし、又はある特定の堆積気体圧力又は流速を実現する加圧手段を有しても良い。
【0039】
導入する前駆体化合物の選択は、主として堆積する材料に依存する。しかし他の重要な基準には、妥当な温度で流体状態を生成する能力、堆積した材料を試料へ適切に接合すること、流体温度での安定性、及び生成される副生成物が少ないことが含まれる。
【0040】
本発明による前駆体はAu(CO)Clであり、クロロカルボニル金又は塩化カルボニル金として知られている。Au(CO)ClはCAS番号50960-82-2で識別されて良い。Au(CO)Clは、Meryer Chemicals(中国)、Lancare株式会社(英国)、Service Chemical株式会社(独国)、及びStream Chemicals(米国)のような多数の化学メーカーから入手可能である。
【0041】
Au(CO)Clは一般的には、使用前に加熱された純度99%の粉末として供給される。加熱は流体導入装置390内の導入地点付近で行われることが好ましい。
【0042】
典型的な実施例では、荷電粒子ビームはパターンをAu含有層表面へ転写するように構成される。たとえば、前記荷電粒子ビームはペンシルビームで、かつ、前記パターンは所定のシーケンスで前記表面全体にわたって前記ペンシルビームを走査させることによって生成される。あるいはその代わりに又はそれに加えて、マスクは荷電粒子ビームと交差するように供されて良い。それにより荷電粒子ビーム強度はそのマスクのパターンに対応して変調される。
【0043】
システム300は、表面に転写されるパターンが正方形の外形を形成する4本のラインを有するように備えられる。各ラインは約15nmの線幅を有する。堆積されたラインの線幅は主として、パターン内での画定された線幅、及びシステム300の設定-たとえばビーム径及び堆積中の滞留時間-に依存する。それに加えて線幅は堆積条件-たとえば試料での前駆体の分圧及びビームエネルギー-の影響を受ける。試料110上の堆積物の厚さは、試料での前駆体の分圧、ビームエネルギー、及び堆積中の滞留時間に依存する。試料での前駆体の分圧は、前駆体の温度、流体導入装置390を流れる前駆体流体の流速、及び試料に対する導入装置390の近さに依存する。
【0044】
この典型的な実施例では、ビーム電流は1pA-20nAの範囲内となるように選ばれる。たとえば5kVの電子ビームであれば約1.6nAである。流体導入装置390は、たとえば試料110からの距離が1mm-好適には約200μm-の位置に設置される。数mm2の試料全体にわたって前駆体流体を供するように、1014-1018分子/秒の導入速度が選ばれる。覆われている面積の大きさは重要ではない。しかし試料110上のパターンを有するビーム360が供される領域内に流体が存在しなくてはならないことは当業者には明らかである。
【0045】
Au(CO)Cl前駆体は、粉末として流体導入装置390に加えられ、かつ26℃に加熱される。温度の選択は、前駆体が前駆体導入装置390によって導入されるときに、その前駆体が流れるように行われる。よって広範囲の温度が可能である。Au(CO)Clが流体として導入され、かつ導入装置390を用いることによって試料110の表面へ向かう。電子ビーム360は、Au(CO)Cl流体が存在する試料110の表面へ向かうように案内される。流体上に4本のラインパターンを生成することによって、金の4本のラインパターンは試料110上に堆積される。
【0046】
図3は、典型的実施例によって供されるシリコン試料110上の金のライン110のSEM像を図示している。像100が、その像に示されている設定130を用いて撮られた。設定130とは具体的には、18kVのビームでかつ300000の倍率である。像100はまた400nmに相当するスケールをも有する。このスケールでは、ライン110は約15nmの幅となる。
【0047】
当業者は、上述したパラメータのうちの1つ以上を調節することによって、典型的実施例を採用して10nm未満の線幅を生成する方法を理解する。
【0048】
堆積物の評価は、検出器350を用いることによって、堆積中又は堆積後にその場で行われて良い。あるいはその代わりに堆積物は、検出器350を有する別個の装置内で行われても良い。
【0049】
図5は、典型的実施例の前駆体としてAu(CO)Clを用いて堆積されたAu層の特性を示すグラフを表す。元素組成が、エネルギー分散X線分光(EDX)装置-たとえばEDAXから市販されている-を有する検出器350を用いて評価される。電子ビーム360は5kVに設定され、ビーム電流は0.3nAである。これは、堆積した金のライン110を走査するSEMとして用いられた。
【0050】
グラフ600は横軸に沿って0-5keVの範囲及び縦軸に沿ってカウント数を表す。グラフ600では、0〜1keVで炭素(C)610、0〜1keVで酸素(O)620、2〜3keVで金(Au)630、及び2〜3keVで塩素(Cl)640の4つのピークが観測されている。ピークの高さはカウント数を表す。図4は、炭素(C)のピーク610が20.5mm、酸素(O)のピーク620が20.5mm、金(Au)のピーク630が109.5mm、及び塩素(Cl)のピーク640が14mmであることを示している。従って堆積物中の炭素に対する金の比は約20.5:109.5で、すなわち約1:0.2である。換言すると、多量の金(80原子%)と少量の炭素汚染不純物(15原子%)ということである。
【0051】
本発明による方法が従来の荷電粒子ビーム堆積法よりも顕著に改善されることは当業者には明らかである。特にその層内に存在する80原子%をも超える大量の金は全く予想できないことである。なぜなら当業者は、前駆体の化学式内に存在する元素の相対量に基づいて、その層に含まれるAuが33原子%を超えることはないと予想していたからである。さらなる驚きは、化学式に再び基づくと、堆積したAu内に存在するClのレベルが相対的に低いことであった。理論に固執するつもりはないが、本願発明者は、ラジカルが堆積中に生成されることで、炭素汚染不純物の量が減少したと考えている。
【0052】
ジメチルAuアセチルアセトネートを前駆体として用いる当業者は、この前駆体の化学式中に存在する元素の相対量から、Au層は約11原子%のAuを有するはずと予測していた。図4に示して前述した結果はその予測に対応している。
【0053】
堆積物中の不純物のレベルが高いということは、伝導率が良好であることを意味する。このことは半導体用途では重要である。また高レベルの不純物をただちに堆積することによって、炭素汚染不純物を取り除く後処理手法-たとえばアニーリング-を回避することができるので、全体の製造プロセスが単純化する。
【0054】
当業者は、開示された方法の詳細が与えられることによって、本願明細書にて開示されたシステムに加えて、当該方法を実行するための多数のシステムを実装することができる。典型的には、係るシステムはコンピュータを有し、かつ当業者はそのコンピュータの機能をハードウエア及びソフトウエアに割り当てて、その結果コンピュータプログラムを実装して、そのコンピュータにロードされて実行されるときに、当該方法を実行することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 像
110 試料
120 スケール
130 設定
300 荷電粒子ビームシステム
310 荷電粒子ビーム源
320 制御装置
330 ユーザーインターフェース
340 ディスプレイ
350 検出器
360 ビーム
380 試料ホルダ
390 流体導入装置
図1
図2
図3
図4
図5