(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5698055
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】定電流回路
(51)【国際特許分類】
G05F 3/22 20060101AFI20150319BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20150319BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
G05F3/22 A
H01L27/04 V
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-77536(P2011-77536)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-212311(P2012-212311A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2014年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】彌永 大児
(72)【発明者】
【氏名】徳永 光紀
(72)【発明者】
【氏名】末吉 勢二
(72)【発明者】
【氏名】小川 正訓
【審査官】
尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−054711(JP,A)
【文献】
特開2005−285062(JP,A)
【文献】
特開2005−174176(JP,A)
【文献】
特開2004−013230(JP,A)
【文献】
特開平05−324109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/12− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリミング抵抗と抵抗性素子の直列抵抗の一端を第1のトランジスタのベースとコレクタの共通接続に接続し、前記第1のトランジスタのベースとコレクタの共通接続にベースが接続された第2のトランジスタのコレクタから電流を出力する定電流回路において、
前記第1のトランジスタのベースとコレクタの共通接続にベースが接続された第3のトランジスタと、
該第3のトランジスタのコレクタに一端が接続された抵抗と、
前記トリミング抵抗と前記抵抗性素子の接続点にベースが接続された第4のトランジスタと、
前記抵抗と前記第3のトランジスタの接続点にベースが接続され前記第4のトランジスタと同一極性であり且つエミッタを共通接続する第5のトランジスタと、
前記第4のトランジスタと前記第5のトランジスタの共通エミッタに接続する電流源と、
前記第5のトランジスタのコレクタに接続し、ベースとコレクタを共通接続する第6のトランジスタと、
該第6のトランジスタのベースとコレクタの共通接続にベースが接続され、コレクタが前記抵抗性素子と前記第1のトランジスタの接続点に接続された第7のトランジスタとを備えるとともに、
前記トリミング抵抗の抵抗値は、トリミングにより前記第4のトランジスタのベース電圧と前記第5のトランジスタのベース電圧の高低関係が切り替わる範囲にわたって設定されることを特徴とする定電流回路。
【請求項2】
請求項1において、前記各トランジスタを電界効果トランジスタに置換え、前記ベースをゲートに置き換え、エミッタをソースに置き換え、コレクタをドレインに置き換えたことを特徴とする定電流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定電流回路に係り、特に出力電流値の調整を行なうためのトリミング抵抗を備えた定電流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来のトリミング抵抗を備えた定電流回路の回路図である。この定電流回路は、トリミング抵抗TR1、トランジスタQ1、Q2、Q3、抵抗R1、R2により構成され、トランジスタQ3のコレクタから出力電流Ioutが出力される。ここでトランジスタQ1、Q2、Q3はNPN型トランジスタである。出力電流Ioutは、トランジスタQ3のベース電圧により制御されており、このトランジスタQ3のベースには、高電位電源電圧VDDからトリミング抵抗TR1の電圧降下とトランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧を差し引いた電圧が与えられている。このため、トリミングによりトリミング抵抗TR1の抵抗値を減少させると、トリミング抵抗TR1の電圧降下が小さくなり、トランジスタQ3のベース電圧が上昇するため、トランジスタQ3のコレクタ電流(=出力電流Iout)が増加する。逆にトリミングによりトリミング抵抗TR1の抵抗値を増加させると、トリミング抵抗TR1の電圧降下が大きくなり、トランジスタQ3のベース電圧が低下するため、トランジスタQ3のコレクタ電流(=出力電流Iout)は減少する。
【0003】
このとき、集積回路において使用されるトリミング抵抗は、トリミングにより抵抗値を増加方向に調整する、または、減少方向に調整する、のいずれかの選択しかできない。このため、定電流回路の出力電流もトリミングにより出力電流Ioutを増加させる、または減少させる、のいずれか一方の選択しかできなかった。
【0004】
そこで、
図4に示すように、トリミング抵抗TR2をトランジスタQ2のベースと低電位電源GND間に接続した回路構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これによりトランジスタQ2のベース電圧はトリミング抵抗TR1とトリミング抵抗TR2の抵抗比により決まることとなる。よって、トリミング抵抗TR1とトリミング抵抗TR2のいずれか一方の抵抗値を増加(または減少)させることにより、出力電流Ioutの増減が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−219117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなトリミング抵抗TR1とトリミング抵抗TR2の2つのトリミング抵抗により出力電流Ioutを調整する方法では、トリミング工程が複雑化し、調整時間が増加するという問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、1つのトリミング抵抗によりトリミングが可能であり、出力電流の増減が調整可能な定電流回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、トリミング抵抗と抵抗性素子の直列抵抗の一端を第1のトランジスタのベースとコレクタの共通接続に接続し、前記第1のトランジスタのベースとコレクタの共通接続にベースが接続された第2のトランジスタのコレクタから電流を出力する定電流回路において、前記第1のトランジスタのベースとコレクタの共通接続にベースが接続された第3のトランジスタと、該第3のトランジスタのコレクタに一端が接続された抵抗と、前記トリミング抵抗と前記抵抗性素子の接続点にベースが接続された第4のトランジスタと、前記抵抗と前記第3のトランジスタの接続点にベースが接続され前記第4のトランジスタと同一極性であり且つエミッタを共通接続する第5のトランジスタと、前記第4のトランジスタと前記第5のトランジスタの共通エミッタに接続する電流源と、前記第5のトランジスタのコレクタに接続し、ベースとコレクタを共通接続する第6のトランジスタと、該第6のトランジスタのベースとコレクタの共通接続にベースが接続され、コレクタが前記抵抗性素子と前記第1のトランジスタの接続点に接続された第7のトランジスタとを備えるとともに、 前記トリミング抵抗の抵抗値は、トリミングにより前記第4のトランジスタのベース電圧と前記第5の
トランジスタのベース電圧の高低関係が切り替わる範囲にわたって設定されることを特徴とする。また、請求項2に係る発明は、請求項1において、前記各トランジスタを電界効果トランジスタに置換え、前記ベースをゲートに置き換え、エミッタをソースに置き換え、コレクタをドレインに置き換えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1つのトリミング抵抗により定電流回路の出力電流の増減を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施例の定電流回路の回路図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係るトリミング抵抗TR11の抵抗値と出力電流Ioutの電流値の関係を示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施例の定電流回路の回路図である。
【
図4】従来の出力電流が増加方向と減少方向の両方向に調整することが可能な定電流回路を示す回路図である。
【
図5】従来の出力電流が増加方向または減少方向のいずれかの方向に調整することが可能な定電流回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施例>
図1は本発明のトリミング抵抗を備えた定電流回路の回路図である。トリミング抵抗TR11は高電位電源VDDに一端を接続し、他端をゲートが高電位電源VDDに接続された接合形電界効果トランジスタJ11(抵抗性素子に相当)のソースに接続されている。この接合形電界効果トランジスタJ11のドレインはトランジスタQ11のベースとコレクタの共通接続点に接続される。トランジスタQ11はトランジスタQ12、トランジスタQ13、トランジスタQ18とベースが共通接続され各トランジスタのサイズ比に比例する電流がトランジスタQ12、トランジスタQ13、トランジスタQ18から供給される。抵抗R11は一端が高電位電源VDDに接続され、他端がトランジスタQ12のコレクタと接続され電流が供給される。トランジスタQ14とトランジスタQ15はエミッタが共通接続され、電流源のトランジスタQ13のコレクタに接続される。差動対の一方のトランジスタQ14のベースは、トリミング抵抗TR11と接合形電界効果トランジスタJ11のソースとの接続点に接続され、他方のトランジスタQ15のベースは抵抗R11とトランジスタQ12のコレクタの接続点に接続される。トランジスタQ15のコレクタは、ベースとコレクタを共通接続するトランジスタQ16と接続され、トランジスタQ16とベースを共通接続するトランジスタQ17によりトランジスタQ16に流れる電流のトランジスタサイズ比に比例した電流が折り返される。トランジスタQ17のコレクタは、接合形電界効果トランジスタJ11のドレインとトランジスタQ11のベースとコレクタとの共通接続点に接続される。トランジスタQ18はトランジスタQ11とベースを共通接続し、トランジスタQ18のコレクタからトランジスタのサイズ比に比例した電流Ioutを出力する。トランジスタQ11〜Q15、トランジスタQ18はNPN型、トランジスタQ16、Q17はPNP型、接合形電界効果トランジスタJ11はPチャネルである。
【0012】
以下に本実施例の動作について
図1を参照して説明する。ゲートが高電位電源に接続された接合形電界効果トランジスタJ11は抵抗性素子として動作し、トリミング抵抗TR11に流れる最大電流を制限する役割をしている。トランジスタQ11とトランジスタQ12はベースが共通接続され、トランジスタQ11に流れる電流を各トランジスタのサイズ比に比例した電流が抵抗11に流れている。差動対のトランジスタQ14とトランジスタQ15は、トリミング抵抗TR11と抵抗R11の電圧降下を比較する。まず、トリミング抵抗TR11の電圧降下が、抵抗R11の電圧降下より小さい場合は、トランジスタQ14がオンし、トランジスタ15がオフするため、トランジスタQ16とトランジスタQ17には電流は流れない。よって、電流I2は略0となり、トランジスタQ11には、電流I1だけが供給される。次に、トリミング抵抗TR11の電圧降下が抵抗R11の電圧降下より大きい場合は、トランジスタQ15がオンとなる。これにより、トランジスタQ16に流れる電流が、トランジスタQ16とトランジスタQ17のトランジスタのサイズ比に比例する電流I2が流れる。よって、トランジスタQ11には、電流I1+電流I2が流れる。
【0013】
図2は、
図1の定電流回路において、抵抗R11を4kΩ、トランジスタQ11とトランジスタQ12のトランジスタのサイズ比を1:1とした場合の、トリミング抵抗TR11の抵抗値と出力電流Ioutとの関係を示したものである。トリミング抵抗TR11の抵抗値が1kΩでは、出力電流Ioutは135μAとなる(A点)。トリミング抵抗の抵抗値が増えるに従い出力電流Ioutは減少し、トリミング抵抗TR11の抵抗値が4kΩでは出力電流Ioutは90μAとなる(B点)。さらにトリミング抵抗の抵抗値が増えると、逆に出力電流Ioutは増加し、トリミング抵抗TR11が20kΩでは出力電流Ioutの値は160μAとなる(C点)。
【0014】
図2を参照しながら
図1の回路の動作を以下に説明する。トリミング抵抗TR11の値がA点の場合は、トリミング抵抗TR11の電圧降下が抵抗R11の電圧降下より小さい場合である。このとき、差動対を構成するトランジスタQ14のベース電圧はトランジスタQ15のベース電圧より高いため、トランジスタQ13のテール電流のほとんどはトランジスタQ14に流れる。よってトランジスタQ15には電流は流れず、コレクタとベースを共通接続するトランジスタQ16にも電流は流れない。このためトランジスタQ16とベースを共通接続するトランジスタQ17にも電流は流れない。よって、電流I2は略0となり、トランジスタQ11には電流I1のみが流れる。これより出力電流Ioutは、電流I1のトランジスタQ11とトランジスタQ18の各トランジスタのサイズ比に比例した電流となる。
【0015】
A点からトリミング抵抗TR11の抵抗値を増やしていくと、電流I1が減少し、電流I2は略0であるため、出力電流Ioutは減少する(A〜B点)。
【0016】
トリミング抵抗TR11の抵抗値がさらに増えて、トランジスタQ14のベース電圧とトランジスタQ15のベース電圧の差が、差動対の切替に必要な電圧である3×Vt(Vtは熱電圧)以内となると、テール電流の一部はトランジスタQ15に流れ始める。さらにトリミング抵抗TR11の抵抗値が増えて、トランジスタQ15のベース電圧がトランジスタQ14のベース電圧より高くなると、さらに多くのテール電流がトランジスタQ15へ流れることとなる。そしてトランジスタQ15に流れる電流は、ベースとコレクタを共通接続されたトランジスタQ16に流れ、トランジスタQ17のコレクタにはトランジスタQ16とトランジスタQ17のトランジスタのサイズ比に比例する電流I2が流れる。こうしてトリミング抵抗TR11の抵抗値の増加による電流I1の減少分と電流I2の増加分が等しくなると、B点の変曲点が形成される。さらにトリミング抵抗TR11の抵抗値が増えると、電流I2の増加分が支配的となるため、トランジスタQ11に流れる電流は増加し、出力電流Ioutも増加する(B〜C点)。
【0017】
このように、本発明では、1つのトリミング抵抗により、出力電流Ioutを増加方向、減少方向の両方向に調整することが可能となる。
【0018】
以上、第1の実施例について説明したが、本発明は
図1の回路図に限定されるものではなく、その旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、トランジスタQ11、Q12、Q13、Q18からなる電流源をウィルソン型カレントミラーにより構成し電流精度を高くすることも可能である。また、トランジスタQ16、Q17のエミッタと高位電源電圧VDD間に抵抗を挿入することにより出力電流Ioutの増減を調整することも可能である。また、接合形電界効果トランジスタJ11を適当な値の高抵抗に置き換えることも可能である。
【0019】
<第2の実施例>
図3は本発明のトリミング抵抗を備えた定電流回路の回路図である。これは、第1の実施例のNPN型トランジスタをNチャネルMOS型トランジスタに、PNP型トランジスタをPチャネルMOS型トランジスタに変更したものである。
【符号の説明】
【0020】
J11:Pチャネル接合形電界効果トランジスタ
TR11:トリミング抵抗
R11:抵抗
Q11,Q12,Q13,Q14,Q15,Q18:NPN型トランジスタ
Q16,Q17:PNP型トランジスタ
M11、M12,M13,M14,M15,M18:NチャネルMOS型トランジスタ
M16,M17:PチャネルMOS型トランジスタ