(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリイミド層の片面又は両面に金属箔を有する金属張積層板において、前記金属箔と接するポリイミド層(i)のガラス転移温度が300℃以上であり、前記金属箔のポリイミド層と接する粗化処理面が下記(a)〜(c)の要件を満たしていることを特徴とする金属張積層板。
(a)粗化処理面の表面粗さ(Rz)が0.5〜4μmの範囲にあること
(b)粗化処理面の表層部は多数の粗化粒子により形成された微細突起形状になっており、前記微細突起形状の1の突起物における根本部分の幅Lに対する突起高さHの比で表されるアスペクト比(H/L)が1.5〜5の範囲であり、突起高さが1〜3μmの範囲である突起形状の割合が全突起形状の数に対して50%以下であること
(c)互いに隣接する突起物間に形成されている隙間の深さが0.5μm以上であり、かつ、当該隙間の深さ方向にわたって、隣接する突起物間の距離が0.001〜1μmの範囲にある隙間の数が、全突起形状数の50%以下であること
請求項1(b)で規定する突起形状において、頂点方向に向けて根本部分の幅Lより大きな幅が存在する突起形状の割合が全突起形状の数に対して20%以下である請求項1記載の金属張積層板。
ポリイミド層が複数層からなり、金属箔と接しないポリイミド層(ii)のガラス転移温度がポリイミド層(i)のガラス転移温度よりも50℃以上高い請求項1〜4いずれか記載の金属張積層板。
ポリイミド樹脂層と金属箔との1mm幅での初期接着力が1.0kN/m以上であり、塩酸に1時間浸漬後のピール強度保持率が80%以上である請求項1〜5いずれか記載の金属張積層板。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の金属張積層板は、ポリイミド層の片面又は両面に金属箔を有する。ポリイミド層は、金属箔と接するポリイミド層のガラス転移温度が300℃以上であれば、単層であっても複数層から形成されるものであってもよいが、好ましくは、ガラス転移温度が300℃以上であるポリイミド層(i)と他のポリイミド層からなり、他のポリイミド層はポリイミド層(i)のガラス転移温度より50℃以上高いガラス転移温度を有するポリイミド樹脂層(ii)からなるものである。金属箔としては、後記表面粗化形状を示すものであれば特にその種類は限定されるものではないが、銅箔又は合金銅箔が好ましい。
【0013】
金属箔として銅箔、合金銅箔を用いる場合、これらの厚さは5〜50μmの範囲が好ましく、フレキシブル配線基板への適用性を考慮すると9〜30μmの範囲がより好ましい。
【0014】
本発明で用いられる金属箔のポリイミド層と接する粗化処理面は、下記(a)〜(c)の要件を満たしている必要がある。
(a)粗化処理面の表面粗さ(Rz)が0.5〜4μmの範囲にあること
(b)粗化処理面の表層部は多数の粗化粒子により形成された微細突起形状になっており、前記微細突起形状の1の突起物における根本部分の幅Lに対する突起高さHの比で表されるアスペクト比(H/L)が1.5〜5の範囲であり、突起高さが1〜3μmの範囲である突起形状の割合が全突起形状の数に対して50%以下であること
(c)隣接する突起物間に深さ0.5μm以上、隣接突起物間距離が0.001〜1μmの範囲にある隙間の存在割合が、全突起形状数の50%以下であること
【0015】
まず、粗化処理面の表面粗さ(Rz)は0.5〜4μmの範囲である必要がある。Rzの値が0.5μmに満たないと、金属箔とポリイミド層との接着力が低下し、4μmを超えると回路をファインパターンに加工する場合にエッチング残渣が増え、その結果、電気信頼性が低下する。ここで、粗化処理面の表面粗さ(Rz)はJISB 0601−1994「表面粗さの定義と表示」の「5.1 十点平均粗さ」の定義に規定されたRzを言う。
【0016】
次に、粗化処理面の表層部は多数の粗化粒子により形成された微細突起形状になっており、前記微細突起形状の1の突起物における根本部分の幅Lに対する突起高さHの比で表されるアスペクト比(H/L)が1.5〜5の範囲であり、突起高さが1〜3μmの範囲である突起形状の割合が全突起形状の数に対して50%以下であることが必要である。上記アスペクト比と突起高さの要件が50%を超えると、表面粗化形状が粗くなるため耐熱性(ガラス転移温度)の高いポリイミド層を加熱圧着した場合、フロー性が不足し、マイクロボイドが生じやすくなる。
【0017】
更に、金属箔表面の粗化処理面においては、隣接する突起物間に深さ0.5μm以上、隣接突起物間距離が0.001〜1μmの範囲にある隙間の存在割合が、全突起形状数の50%以下であることが必要である。この割合が50%を超えると、隙間への樹脂の充填が十分に行なわれず、マイクロボイドが生じやすくなる。
【0018】
ここで、本発明に用いる金属箔の粗化処理面について、
図1を用いて説明する。
図1は金属箔断面の表面部分を拡大し模式的に表したものである。本発明において、粗化処理面の微細突起形状のアスペクト比は、例えば
図1に示した通り、微細突起形状の1の突起物の高さHを突起物の根本部分の幅Lで除した値である。突起高さは、隣接する谷の底部を結んだ中心から最長の長さを示す値をいう。
また、本発明の上記(c)の要件について言えば、隣接する突起物間に深さ0.5μm以上の間隙があり、その間隙における隣接突起物間距離が0.001〜1μmの隙間が存在するものの存在割合で判断される。
図1において、突起物pと突起物qは隣接した突起物で、突起物pとq間には、0.5μm以上の深さの間隙を有している。そして、その隣接間距離は0.001〜1μmの範囲である。本発明ではこのような間隙は少ない方がよく、(c)の要件を換言すれば、突起物間の深さは0.5μm以上の深さの間隙を有し、その深さまでの隣接間距離が0.001〜1μmの範囲にあるものが全突起形状数に対して50%以下の数であることである。
【0019】
本発明で用いる金属箔表面に形成されている粗化形状は、頂点方向に向けて根本部分の幅Lより大きな幅が存在する突起形状の割合が全突起形状の数に対して20%以下であることが好ましく、10%以下であることが更に好ましい。この割合が20%を超えると、突起形状の根本部分にマイクロボイドが発生しやすく傾向にある。
【0020】
本発明の金属箔の粗化面においては、粗化処理による突起物の形状が細長いものであるとマイクロボイドが発生しやすい傾向にあることから、全突起形状に占める高さ1μm以上の突起形状の平均幅が1μm以上であるものの割合が10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。ここで、突起形状の平均幅は、突起形状の1/2高さでの幅を平均幅とみなしてもよい。なお、このように粗化処理された銅箔は市販されており、本発明で言う粗化処理面の要件を満たすものは市販品から入手可能である。
【0021】
金属箔の粗化処理面は、粗化処理面がNi、Zn及びCrでめっき処理されており、Ni含有量が0.1mg/dm
2以上であり、かつ明度計により測定したY値(明度)が25以上であることが好ましい。この明度はサンプル表面に光をあて光の反射量を明度としたもので、表面の粗さを見る指標となる。明度が低いということは反射率が低い、つまり隣接する突起物間に狭く深い隙間が多いことを示し、熱圧着時のマイクロボイドが生じやすくなる。Ni含有量が0.1mg/dm
2未満の場合、耐蝕性が不足するためポリイミドの充填性にかかわらず酸により腐食されてしまう。
【0022】
次に、本発明の金属張積層板で絶縁層となるポリイミド層について説明する。
上記で説明したように、本発明においては、ポリイミド層は、ポリイミド層(i)を金属箔と接する層として必須とし、好ましくは複数のポリイミドから構成される。好ましい具体的なポリイミド層の構成例を示すと下記構成例が例示できる。なお、下記構成例において、Mは金属箔の略で、PIはポリイミドの略であり、更に、PI層(i)は、ガラス転移温度が300℃以上のポリイミド層、PI層(ii)は、ポリイミド層(i)よりガラス転移温度が50℃以上高いポリイミド層である。
1)M/PI層(i)/PI層(ii)/PI層(i)
2)M/PI層(i)/PI層(ii)/PI層(i)/M
3)M/PI層(ii)/PI層(i)/M
【0023】
ポリイミド層を構成するポリイミドは、一般的に下記式(1)で表され、ジアミン成分と酸二無水物成分とを実質的に等モル使用し、有機極性溶媒中で重合する公知の方法によって製造することができる。
【0025】
ここで、Ar
1は芳香族環を1個以上有する4価の有機基であり、Ar
2は芳香族環を1個以上有する2価の有機基であり、nは繰り返し数を表す。即ち、Ar
1は酸二無水物の残基であり、Ar
2はジアミンの残基である。
【0026】
ポリイミドの重合に用いる溶媒は、例えばジメチルアセトアミド、n-メチルピロリジノン、2−ブタノン、ジグライム、キシレン等を挙げることができ、これらを1種若しくは2種以上併用して使用することもできる。また、重合して得られたポリアミド酸(ポリイミド前駆体)の樹脂粘度については、500cps〜35000cpsの範囲とするのが好ましい。
【0027】
原料として用いるジアミン成分及び酸二無水物成分は、絶縁層を構成するポリイミド層(i)、ポリイミド層(ii)に求められる諸特性を考慮の上、下記に例示された各原料成分の中から適宜最適なものが選択される。
【0028】
酸二無水物としては、例えば、O(CO)
2−Ar
1−(CO)
2Oによって表される芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、下記式(2)で表される芳香族酸無水物残基をAr
1として与えるものが例示される。
【0030】
また、ジアミンとしては、例えば、H
2N−Ar
2−NH
2によって表される芳香族ジアミンが好ましく、下記式(3)で表される芳香族ジアミン残基をAr
2として与える芳香族ジアミンが例示される。
【0032】
本発明におけるポリイミド層(i)は、金属箔と接するガラス転移温度が300℃以上のポリイミド層である。ポリイミド層(i)は、金属箔との接着性の観点から、金属箔との加熱圧着時に熱可塑性を示すことが必要であるが、ガラス転移温度が低くなると耐熱性の低下に繋がる。そのような観点から、ポリイミド層(i)の好ましいガラス転移温度は、350℃未満であることが好ましい。
【0033】
このようなポリイミド層(i)を構成する酸二無水物成分としては、上記、式(2)で例示したものを挙げることができるが、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を必須成分とし、これを主成分として、特に好ましくは80モル%以上用いることが好ましい。また、ポリイミド層(i)を構成するジアミン成分としては、上記、式(3)で例示したものを挙げることができるが、特に、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を必須成分とし、これを主成分として、特に好ましくは80モル%以上用いることが好ましい。ここで他の酸二無水物及びジアミン成分は2種以上併用することも可能である。
【0034】
本発明におけるポリイミド層(ii)は、ポリイミド層(i)よりもガラス転移温度が50℃以上高いポリイミド層である。ポリイミド層(ii)は、金属箔との接着性の観点から直接は金属箔と接さず、ポリイミド層(i)を介して金属箔と一体化されることが好ましい。
【0035】
このようなポリイミド層(ii)を構成する酸二無水物成分には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、及び4,4'−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)から選ばれるものを使用することが好ましく、これらを単独又は2種以上混合して用いることもできる。
【0036】
また、ポリイミド層(ii)を構成するジアミン成分には、ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)、2’−メトキシ−4,4’−ジアミノベンズアニリド(MABA)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、パラフェニレンジアミン(P−PDA)、1、3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)が好適なものとして例示され、これらを単独又は2種以上混合して用いることもできる。
【0037】
本発明におけるポリイミド層の厚みは、8〜40μmの範囲が好ましく、9〜30μmの範囲がさらに好ましい。また、ポリイミド層(i)は、金属層との接着性保持、絶縁層全体の線膨張係数制御によるバランス維持に役立ち、その厚さは1〜3μmの範囲にあることが好ましい。ポリイミド層(i)はポリイミド層(ii)の一方側又は両側に設けてもよい。
【0038】
上記の通り、本発明で絶縁層は単層又は複数のポリイミド層から構成されるわけであるが、本発明では、絶縁層全体(ポリイミド層全体)で線膨張係数(CTE)を10×10
-6〜25×10
-6[1/K]の範囲とすることが好ましい。ポリイミド層を複数層とする場合、上記ポリイミド層(ii)の線膨張係数(CTE)は30×10
-6[1/K]以下であることが好ましく、1×10
-6〜20×10
-6[1/K]の範囲が特に好ましくい。またこの場合、ポリイミド層(i)は、20×10
-6〜60×10
-6[1/K]の範囲が好ましく、30×10
-6〜50×10
-6[1/K]の範囲が特に好ましい。
【0039】
以下、本発明の金属張積層板の製造方法について、積層体の上記構成例2)のもの[ M/PI層(i)/PI層(ii)/PI層(i)/M ]に基づいて説明する。なお、下記例において、Mは銅箔を適用したものである。
本例においては、まず、粗化処理された銅箔の表面にポリイミド層(i)とするためのポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を、直接塗布し、樹脂溶液に含まれる溶剤を150℃以下の温度である程度除去する。
次に、ポリイミド層(ii)とするためのポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を、直接塗布し、樹脂溶液に含まれる溶剤を150℃以下の温度である程度除去する。
そして更に、ポリイミド層(i)とするためのポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を、直接塗布し、樹脂溶液に含まれる溶剤を150℃以下の温度である程度除去する。このようにし銅箔上に、溶剤をある程度除去した複数層のポリイミド前駆体層形成した後、更に、100〜450℃、好ましくは300〜450℃の温度範囲で5〜40分間程度の熱処理を行って、更なる溶媒の除去及びイミド化を行う。
【0040】
この状態で、銅箔上に3層のポリイミド層からなる片面銅張積層板が形成されたこととなるが、この片面銅張積層板のポリイミド層(i)面側に、粗化処理された銅箔を加熱圧着する。加熱圧着は、ポリイミド層(i)のガラス転移温度よりやや高い温度で加熱圧着され、本発明では、上記特定の粗化処理面の銅箔を用いることでマイクロボイドの発生を抑えることが可能となる。本例では、ポリイミド層の両側に粗化処理された銅箔を適用したが、本発明では、その一方、好適には加熱圧着側の銅箔にのみ上記で規定した特定の銅箔を適用してもよい。
【0041】
このように、本発明では耐熱性が求められる金属箔と接する層が高いガラス転移温度のポリイミド層を用いた場合においても、特定の表面性状を有する粗化処理された銅箔を用いることで寸法安定性、接着性など他の金属張積層板の諸特性を維持したまま、マイクロボイドの発生を抑制することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り各種評価については下記によるものである。
【0043】
[ガラス転移温度の測定]
基材銅箔をエッチングしフィルム状態となったポリイミドをSIIナノテクノロジー社製動的粘弾性測定装置(RSA-III)を用い、引張りモードにて1.0Hzの温度分散測定したtan
δのピークトップをガラス転移点温度とした。
【0044】
[粗化処理面の評価]
粗化処理面の形状評価は、クロスセクションポリッシャ(日本電子社製SM-09010)にて作製した銅箔断面をFE-SEM(日立ハイテク社製S-4700型)により観察し、幅25μmの範囲内における粗化部の形状を評価した。
また、粗化処理面のNi量は、ポリイミドに接する面のみを1N−硝酸に定溶させICP−AES(パーキンエルマー社製Optima 4300)にて測定した。更に、明度Yはスガ試験機社製SM-4を用い測定した。
【0045】
[耐酸性の測定]
耐酸性の測定は、フレキシブル片面銅張積層板について、線幅1mmに回路加工を行い、塩酸18wt%の水溶液中に50℃、60分間浸漬したのちに絶縁層(ポリイミド層)側から回路端部を200倍の光学顕微鏡を用いて塩酸の染込みによる変色幅を測定した。ここで、塩酸染込み幅が200μm以下のものは良と評価できる。
【0046】
[接着力(ピール強度)の測定]
銅箔とポリイミド樹脂層との間の接着力は、銅箔上にポリイミド樹脂からなる絶縁層を形成して得られたフレキシブル片面銅張積層板について、線幅1mmに回路加工を行い、東洋精機株式会社製引張試験機(ストログラフ−M1)を用いて、銅箔を180°方向に引き剥がし、初期ピール強度を測定した。また前記耐酸性測定後のピール強度を測定し、耐酸後ピール強度/初期ピール強度×100を保持率とした。
【0047】
合成例1
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れた。この反応容器に2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を加え、モノマーの投入総量が12wt%となるようにした。その後、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸の樹脂溶液bを得た。ポリアミド酸の樹脂溶液bの溶液粘度は3,000cpsであった。このポリアミド酸から得られるポリイミドは30×10
-6(1/K)を超える線膨張係数を示し、315℃のガラス転移点温度を有していた。
【0048】
合成例2
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れた。この反応容器に2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m-TB)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、3,3', 4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)を加えた。モノマーの投入総量が15wt%で、各酸無水物のモル比率(BPDA:PMDA)が20:80となるように投入した。その後、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸の樹脂溶液aを得た。ポリアミド酸の樹脂溶液aの溶液粘度は20,000cpsであった。このポリアミド酸から得られたポリイミドは20×10
-6(1/K)以下の低線膨張係数を示し、非熱可塑性の性質を有していた。
【0049】
実施例1
銅箔として、表面処理層としてアミノ基を有するシランカップリング剤でシランカップリング処理され表1に示す粗化処理面を有する電解銅箔を準備した。この銅箔は、厚さ12μmで、表面粗さ(Rz)は1.2μmであった。この銅箔上に、合成例2で調製したポリアミド酸の樹脂溶液b、合成例1で調整したポリアミド酸の樹脂溶液a、及び合成例2で調製したポリアミド酸の樹脂溶液bを順次塗布し、乾燥後、最終的に300℃以上約10分で熱処理を行い、ポリイミド層の厚みが25μmのフレキシブル片面銅張積層板を得た。なお、ポリイミド層は、ポリアミド酸の樹脂溶液aから得られた21μmの層と、その両側にポリアミド酸の樹脂溶液bから得られた各2μmの層を有するものである。
【0050】
このようにして得られたフレキシブル片面銅張積層板に対し、そのポリイミド層面に更に、上記と同様の銅箔を加熱・加圧下、金属ロール間を通過させることで加熱圧着した。ピール強度及び耐酸性の特性評価は、フレキシブル両面銅張積層板の加熱圧着面側について行ったところ、銅箔とポリイミド層間の1mmピールは初期接着力が1.95kN/mであった。また、この回路の耐酸性試験による染込み幅は69μmであり、ピール強度保持率は89%であった。結果を表2に示す。
【0051】
実施例2、3、比較例1、2
表面金属量が異なる表1に示す電解銅箔を用いた以外は実施例1と同様に行い、ピール強度、塩酸染込み性、ピール保持率を評価した。結果を表2に示す。
【0052】
表1には、示していないが、実施例、比較例で用いたすべての銅箔の粗化処理面はNi,Zr及びCrでめっき処理されていた。
表1において、
(b)高アスペクト比数/全突起数は、測定した全突起数に対し、アスペクト比(H/L)が1.5〜5の範囲にあり、突起高さが1〜3μmの範囲にあるものの数の割合を表し、
(c)突起間の狭隙間数/全突起数は、測定した全突起数に対し、隣接する突起物間に深さ0.5μm以上、隣接突起物間距離が0.001〜1μmの範囲にある隙間を有するものの数の割合を表す。
また、(d)膨らみ突起数/全突起数は、測定した全突起数に対し、根元の幅Lよりも広い幅を有する突起形状の数の割合である。
更に、(e)突起平均幅1μm以上/全突起数は、測定した全突起数に対し、突起の平均幅が1μm以上あるものの数の割合である。
なお、実施例1で用いた銅箔断面の写真を
図2に、比較例2で用いた銅箔断面の写真を
図3に参考に示した。ここで、実施例2及び3で用いた銅箔は、Rzは異なるものの表面の微細粗化形状は
図2と類似し、比較例1で用いた銅箔は、Rzは異なるものの表面の微細粗化形状は
図3と類似している。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
実施例1、2、3で得られた銅張積層板では塩酸処理後における回路端部の変色は200μm以下、ピール強度保持率は70%以上であることが確認された。一方、比較例1、2では回路端部全体に回路剥がれによる変色が確認され、ピール強度保持率は70%未満となった。
【0056】
このように本発明で得られたフレキシブル銅張積層板は塩酸処理後の染込みが抑制され、回路剥がれが生じないことから信頼性が高い材料であることが確認された。