【実施例】
【0014】
本発明の推定方法のための試験(以下、推定試験と呼ぶ。)の大枠の手順は、
図1に示したフローチャートの通りである。本発明の推定試験では、普通ポルトランドセメント(以下、記号としてはCと略記する。)の一部をフライアッシュ(以下、記号としてはFAと略記する。)で置換したフライアッシュコンクリートのフレッシュコンクリート内に混入されたフライアッシュ量を求める。
【0015】
まず、推定試験の対象となる、所定量のフレッシュコンクリート(30リットル程度)から、ウェットスクリーニングにより(S100)モルタルを30〜50g程度採取する。そのウェットスクリーニング工程によってふるいを通過した懸濁水を吸引ろ過で固液分離し、残留固形分を加熱乾燥させ、所定粒径以下の固形微粒分(セメント、フライアッシュ、微粒砂)を回収する(S200,S300)。固形微粒分からなる試料に対して所定割合で塩酸を添加して加熱し、セメント成分を溶解させ、不溶残分を回収するために吸引ろ過で固液分離した後に、加熱乾燥させる選択溶解を行う(S400)。次いで、重液としてポリタングステン酸ナトリウム溶液(以下、SPT溶液と記す。)を用いてフライアッシュのみを分離する重液分離を行う(S500)。その後、試料を加熱乾燥し、秤量する(S700)。その後、フライアッシュの回収率を考慮した補正を行いFA量を計算する(S800)。この推定試験によれば、設定したフライアッシュ混入量に対して+5〜−5%内の誤差でフライアッシュ置換率の推定が可能であることが確認された。また、試験に要した時間は1.5時間/回程度であり、現場において簡易的にフライアッシュ量を推定できる。
【0016】
以下、推定試験の詳細な作業手順について、フローチャート(
図1〜
図4)を参照して説明する。
[コンクリート採取〜ウェットスクリーニング]
コンクリートの採取は、試験可能な採取地において、JIS A 1115(フレッシュコンクリートの採取方法)に従って行う。コンクリートプラントの場合は、練り上がりコンクリート排出口で、レディミクストコンクリートの場合にはコンクリート荷卸し地点等で試験に必要な分量を採取する(
図1,S100)。その後、ウェットスクリーニングを行い、試験対象となる試料を採取する(
図2,S200)。ウェットスクリーニングでは、0.5mm目合いのふるいを用い、試料を水道水で洗いながらふるい分ける。0.5mmふるいを通過した微粒分と洗浄に用いた水の懸濁水をステンレスボウル等の容器に受けて回収する(S210,220)。この懸濁水を、定量ろ紙をろ過材として用いた吸引ろ過装置によって吸引ろ過し、定量ろ紙上に試料を回収する。このとき、懸濁水を撹拌させながら吸引ロートへ導き、吸引ロートの壁面に付着した試料も回収するようにする(S230)。次いで、このろ紙上の試料を乾燥するために、ろ紙ごと電子レンジで5〜10分程度加熱乾燥する(
図1,S300)。
[選択溶解]
【0017】
このときの試料にはフライアッシュに加え、セメント分が含有しているため、フライアッシュの回収率を高めるために、セメント分を溶解除去する。そのための選択溶解の手順について、
図3を参照して説明する。
(S300)で回収した乾燥試料を、約1gずつに分けて複数本の遠沈管(50ml容量)に小分けする(S410)。このとき、回収した試料全体を電子天秤上に置き、そこから1gずつ採取し、遠沈管に入れるようにすると効率が良い。この方法ですべての試料を複数本数の遠沈管へ移す。次いで、試料の入った遠沈管1本につき塩酸(2N)を約30ml加えて撹拌した後、遠沈管をウォーターバスにセットする(S420,430)。ウォーターバスは、120回/分で振とうさせながら60℃で15分加熱する(S440)。加熱終了後、遠沈管を遠心分離機にセットし、4000rpmで1分間遠心分離し、壁面に付着した微粒子を管内に残すように上澄み水を捨てる。その後、試料に洗浄用蒸留水を加え、上記と同条件で遠心分離を行い、上澄みを捨てる作業を3回繰り返す(S450,460)。その後、試料の水分を完全除去した乾燥試料とするため、遠沈管ごと電子レンジで加熱する(S470)。なお、乾燥した試料は次の手順である重液分離が正しく行えるように、粉砕しておくことが好ましい(S480)。
【0018】
なお、この作業は、遠沈管、ウォーターバス、遠心分離器を用いずに、全試料をビーカーに入れ、試料1gに対して2N塩酸を30gの割合で加えて、ホットスターラーを用いて加熱してもよい。加熱後は懸濁水を定量ろ紙を用いて吸引ろ過して微粒分を回収し、ろ紙ごと電子レンジで加熱する。乾燥した試料を別のビーカーに移すようにしてもよい。
[重液分離]
【0019】
次に、重液としてポリタングステン酸ナトリウム溶液(SPT溶液)を用いてフライアッシュのみを分離する重液分離の手順について、
図4を参照して説明する。重液分離用のSPT溶液として、あらかじめ蒸留水を用いて比重2.50の溶液して調製しておく。乾燥した試料が入った遠沈管に、約20ml/本のSPT溶液を添加して撹拌した後、静置する(S510,520)。その後、遠沈管内の浮遊物及び上澄みを吸引ろ過によって回収する(S530)。このとき、遠沈管を少し傾けた状態で回転させて液面上部の壁面に付着している試料も回収する。吸引ろ過後、SPT溶液が吸引ビン内に溜まるため、一旦ポンプを停止し、別容器に回収することが好ましい。ろ紙上の試料を洗浄するために、吸引ろ過を行いながら蒸留水で3回程度洗浄する(S540)。洗浄された回収試料を電子レンジで加熱する(
図1,S600)。さらに、加熱終了後試料質量を秤量する(S700)。この秤量結果とフライアッシュの回収率の補正値を用いて最終的に、FA置換率、FA量を算出する(S800)。FA量の算出に当たっては、使用されているフライアッシュの銘柄や塩酸による溶解分、重液分離における沈殿分を考慮してフライアッシュの回収率の補正係数を設定しておくことが好ましい。
【0020】
補正係数としては、既存データを参考にして設定することができるが、具体的は、あらかじめ選択溶解で塩酸で溶解してしまうフライアッシュ分、比重2.5以上のフライアッシュ分の割合をキャリブレーションにより求めておくことにより、より正確な補正係数を設定してフライアッシュの回収率を求めることができ、これにより正確なFA置換率、すなわちFA量の正確な推定を行うことができる。
[試験例]
【0021】
以下に、本発明のコンクリート中のフライアッシュ量の推定方法を用いてフライアッシュの置換率を求めた試験例(フライアッシュ量推定試験)について、表1〜表3を参照して説明する。
【0022】
あらかじめ2種類のFA置換率(ケースNo.1:30%,ケースNo.2:15%)に設定されたコンクリートの調合内容を表1に示す。さらにこのコンクリート調合に基づいて製造したコンクリートの性状試験結果を表2に示す。
【0023】
[表1]
[表2]
【0024】
さらに、回収された微粒分から回収されたFA量に対する補正計算を以下のように行い、置換率(FA置換率)を算出した。
[結合材率(Bp)、結合材量(Ba)の算出]
表1のコンクリート調合条件から、結合材率(Bp)を算出する。
Bp=Bwt×100/(Wwt+Bwt+Swt)=29.26(%) …(式1)
ここで、Wwt:単位水量(kg/cm
3),Bwt:単位結合材量(kg/cm
3),
Swt:単位細骨材量(kg/cm
3)
さらに、式1で求めた結合材率(Bp)と回収モルタル量との関係から結合材量(Ba)
を算出する。すなわち、
Ba=a×Bp/100 …(式2)
a:回収したモルタル量(g),Bp:結合材率(%)
[補正FA量(b')の算出]
推定試験を行っては、使用したフライアッシュが塩酸で溶解した量および重液分離で沈殿した量をキャリブレーションにより求めておくことが好ましいが、発明者の既往試験結果をもとに、今回の推定試験ではフライアッシュ回収率を80%として補正FA量の算出を行った。
b’=b/0.8 …(式3)
ここで、b:推定試験で得られた回収FA量(g)
以上の計算より、FA置換率(Af)は、式2,式3から
Af=b’×100/Ba
【0025】
この推定試験結果および補正計算結果を表3及び
図5に示す。
図5に示したように、この推定試験結果では、推定誤差が+5〜−5%の範囲内での推定が可能であることが確認できた。
【0026】
[表3]
【0027】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。