(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流入側接続通路が、前記雰囲気制御部の外周部より内側において、減圧脱泡槽の溶融ガラス収容部の上部空間と前記雰囲気制御部との間で接続されてなる請求項1に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置。
前記整流部材が、前記流入側接続通路の出口側の開口部の少なくとも半周を覆って該開口部と前記雰囲気制御部の外周部との間を仕切る整流壁部を備えてなる請求項1または2に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置。
前記整流部材の前記整流壁部内面に、前記減圧脱泡槽から前記流入側接続通路の出口側の開口部を介して前記雰囲気制御部へと流れるガスの流れを前記雰囲気制御部から減圧脱泡槽に通じる流出側接続通路側に誘導する案内面が形成されてなる請求項3に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置。
前記整流部材が、前記流入側接続通路の出口側の開口部からのガスを該整流部材内部に導入する導入部と、該開口部から該整流部材内部に導入されたガスを前記雰囲気制御部へと導出する導出部とを備えてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置。
前記流入側接続通路の出口側の開口部が形成された位置における前記雰囲気制御部の室内の高さをHとし、前記整流部材高さの最大値をhとしたとき、1/4≦h/H≦3/4の関係を満たす請求項1〜7のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置。
前記減圧脱泡槽の溶融ガラス収容部より上の空間内、前記少なくとも2つの接続通路の内部、または前記雰囲気制御部の内部のいずれかにガス供給手段が設けられてなる請求項1〜8のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置。
前記減圧脱泡槽と前記雰囲気制御部を囲い真空吸引されて内部が減圧される減圧ハウジングと、この減圧ハウジング内に設けられ、溶融ガラスの減圧脱泡を行うための減圧脱泡槽と、該減圧脱泡槽に溶融ガラスを供給するための供給機構と、脱泡後の溶融ガラスを次工程に送るための送出機構とを具備してなる請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶融ガラスの減圧脱泡装置。
請求項1〜10のいずれか一項に記載の減圧脱泡装置を用いて、前記減圧脱泡槽から前記雰囲気制御部へと溶融ガラスから発生したガスが流れる流入側接続通路の出口側の開口部周囲に設けた前記整流部材によって前記ガスの流れを整えて溶融ガラスを脱泡処理する溶融ガラスの減圧脱泡方法。
請求項1〜10のいずれか一項に記載の減圧脱泡装置と、該減圧脱泡装置よりも上流側に設けられたガラス原料を溶融して溶融ガラスを製造する溶融手段と、前記減圧脱泡装置よりも下流側に設けられた溶融ガラスを成形する成形手段と、成形後のガラスを徐冷する徐冷手段とを備えたガラス製品の製造装置。
請求項1〜10のいずれか一項に記載の減圧脱泡装置により溶融ガラスを脱泡処理する工程と、前記減圧脱泡装置よりも上流側でガラス原料を溶融して溶融ガラスを製造する溶融工程と、前記減圧脱泡装置よりも下流側で溶融ガラスを成形する成形工程と、成形後のガラスを徐冷する徐冷工程とを含むガラス製品の製造方法。
請求項1〜10のいずれか一項に記載の減圧脱泡装置により前記減圧脱泡槽から前記雰囲気制御部へと溶融ガラスから発生したガスが流れる流入側接続通路の出口側の開口部周囲に設けた前記整流部材によって前記ガスの流れを整えて溶融ガラスを脱泡処理する工程と、前記減圧脱泡装置よりも上流側でガラス原料を溶融して溶融ガラスを製造する溶融工程と、前記減圧脱泡装置よりも下流側で溶融ガラスを成形する成形工程と、成形後のガラスを徐冷する徐冷工程とを含むガラス製品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る溶融ガラスの減圧脱泡装置の一実施形態について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
図1は本発明に係る溶融ガラスの減圧脱泡装置の一例構造を模式的に示す縦断面図である。
図1に示す減圧脱泡装置100は、溶融槽1から供給される溶融ガラスGを減圧脱泡して、後工程の成形装置200に連続的に供給するプロセスに用いられる装置である。
【0017】
本実施形態の減圧脱泡装置100は、使用時にその内部を減圧状態に保持できる金属製、たとえば、ステンレス鋼製の減圧ハウジング2を有している。減圧ハウジング2の内部には減圧脱泡槽3がその長軸を水平方向に向けるように収容配置されている。減圧脱泡槽3は、内部の気圧が大気圧未満に設定されており、供給された溶融ガラスG中の泡を浮上および破泡させる。減圧脱泡槽3の一端側の下面には垂直方向に配向する上昇管5が導入口3aを介し接続され、他端側の下面には垂直方向に配向する下降管6が導出口3bを介し接続されている。上昇管5と下降管6は減圧ハウジング2の底部側に形成された導入口2aまたは導出口2bを介しそれぞれ外部に連通できるように配置されている。
【0018】
本実施形態の減圧脱泡装置100は、少なくとも2つの接続管14A、15Aにより減圧脱泡槽3と接続される雰囲気制御部16を有している。雰囲気制御部16は、内部が中空構造であり、減圧脱泡槽3と同程度の幅を有し、減圧ハウジング2内で減圧脱泡槽3の上方に収容配置されており、その中央部に雰囲気制御部16内を排気して減圧するための排気口17が設けられている。接続管14Aの内部に接続通路14が形成され、接続管15Aの内部に接続通路15が形成されている。また、減圧ハウジング2の内部側において減圧脱泡槽3の周囲、上昇管5の周囲、下降管6の周囲、雰囲気制御部16の底部16B周辺部と側壁部16D周辺部、接続管14Aの周囲、および接続管15Aの周囲にはそれぞれ断熱材7が配設されていて、減圧脱泡槽3と上昇管5と下降管6と接続管14A、15Aの外部側および雰囲気制御部16の底部16Bと側壁部16Dの外部側が断熱材7により取り囲まれた構造とされている。
【0019】
前記構造の減圧脱泡装置100において、減圧脱泡槽3、上昇管5および下降管6は電鋳レンガのような耐火レンガ製、または白金若しくは白金合金製の中空管状の形状からなる構造とされる。減圧脱泡槽3が耐火レンガ製の中空管である場合、減圧脱泡槽3は外形が矩形断面を有する耐火レンガ製の中空管であり、溶融ガラスの流路をなす内部形状は矩形断面を有することが好ましい。減圧脱泡槽3が白金製あるいは白金合金製の中空管である場合、減圧脱泡槽3における溶融ガラスの流路をなす内部断面形状が円形または楕円形を有することが好ましい。
【0020】
上昇管5および下降管6が耐火レンガ製の中空管である場合、上昇管5および下降管6は円形断面や矩形を含む多角形断面を有する耐火レンガ製の中空管であり、溶融ガラスの流路をなす内部断面形状が円形状断面を有することが好ましい。
上昇管5および下降管6が白金製または白金合金製の中空管である場合、上昇管5または下降管6における溶融ガラスの流路をなす内部断面形状が円形または楕円形を有することが好ましい。
なお、減圧脱泡装置100において、200トン/日以上の処理能力、あるいは500トン/日以上の処理能力に達成するような大型の装置の場合、電鋳レンガのような耐火レンガにより減圧脱泡槽3が構成されていることが好ましい。
【0021】
上昇管5の下端には延長用の外管8が取り付けられ、下降管6の下端には延長用の外管9が取り付けられ、外管8、9が白金製または白金合金製とされている。
なお、上昇管5および下降管6が白金製または白金合金製の中空管である場合、延長用の外管8、9を別途設けることなく、
図1において外管8、9と記載されている部分まで上昇管5と下降管6が一体的に延長された構造とされていても良い。このような構造とする場合、以下本願明細書における外管8、9に関する説明は、白金製または白金合金製の上昇管および下降管に関する記載として読み替えて適用できる。
【0022】
上昇管5は減圧脱泡槽3の一側底部と連通され、溶融槽1からの溶融ガラスGを減圧脱泡槽3に導入する。このため、上昇管5に取り付けられた外管8の下端(上流端)8aは溶融槽1と導管11を介し接続された上流ピット12の開口端から嵌入され、上流ピット12内の溶融ガラスGに浸漬されている。
また、下降管6は減圧脱泡槽3の他側底部に連通され、減圧脱泡後の溶融ガラスGを次の処理槽(図示略)に導出する。このため、下降管6に取り付けられた外管9の下端(下流端)9aは、下流ピット13の開口端に嵌入され、下流ピット13内の溶融ガラスGに浸漬されている。また、下流ピット13の下流側に成型装置200が接続されている。以上説明の減圧脱泡装置100においては、上昇管5が溶融ガラスの供給機構を構成し、下降管6が溶融ガラスの送出機構を構成する。
なお、本明細書において、「上流」および「下流」といった場合、減圧脱泡装置100を流通する溶融ガラスGの流動方向における上流および下流を意味する。
【0023】
本実施形態の減圧脱泡装置100において外管8、9が白金製または白金合金製の筒状管からなる場合、白金合金の具体例としては、白金−金合金、白金−ロジウム合金などが挙げられる。白金または白金合金と記載した場合、白金または白金合金に金属酸化物を分散させてなる強化白金であっても良い。分散される金属酸化物として、Al
2O
3、またはZrO
2若しくはY
2O
3に代表される、長周期表における3族、4族若しくは13族の金属酸化物が挙げられる。
【0024】
本実施形態の減圧脱泡装置100では、減圧ハウジング2を減圧吸引するとともに、排気口17から雰囲気制御部16内および減圧脱泡槽3内を排気して減圧し、減圧脱泡槽3内部の気圧を大気圧未満の減圧状態に保持する。本実施形態の減圧脱泡装置100において、雰囲気制御部16は、雰囲気制御部16の内部空間と減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間(溶融ガラス収容部より上の空間)と接続通路14、15とを流れるガス流Fの経路をなす。なお、
図1において、ガス流Fが溶融ガラスGの上部空間と雰囲気制御部16の内部空間とを循環する場合を示しているが、ガス流は必ずしも循環する必要はない。たとえば、ガス流が、接続管14Aを通って排気口17から排出される流れと、接続管15Aを通って排気口17から排出される流れとからなってもよい。ガス流は、減圧脱泡槽の減圧操作によって排気口17から排出される流れがあり、前述の供給するガスの有無によらず発生している。さらに、減圧脱泡槽3および雰囲気制御部16での温度勾配も、溶融ガラスGからのガス成分に流れを付与する。また、ガス流Fは、溶融ガラスGから発生するガス成分を含み、減圧脱泡装置100が後述するガス供給手段を備える場合には、溶融ガラスGからのガス成分に加えて、ガス供給手段によって供給したガス成分を含む。
ここで、雰囲気制御部16は、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間と該雰囲気制御部16の内部空間とを流れるガス流Fの経路をなすため、接続通路14、15は、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの液面よりも上方で減圧脱泡槽3と接続する必要がある。このため、
図1に示すように、雰囲気制御部16を減圧脱泡槽3の上方に配置することは好ましい態様である。ただし、接続通路14、15が減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの液面よりも上方で減圧脱泡槽3と接続されるのであれば、雰囲気制御部16を減圧脱泡槽3の側方に配置してもよい。
【0025】
また、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間と雰囲気制御部16の内部空間とを滞留なく流れるガス流Fの経路を形成するため、接続管14A、15Aは、少なくとも2本必要である。なお、
図1に示す減圧脱泡装置100では、2本の接続管14A、15Aで減圧脱泡槽3と雰囲気制御部16とを接続しているが、3本以上の接続管で減圧脱泡槽3と雰囲気制御部16とを接続してもよい。
【0026】
雰囲気制御部16、接続管14A、15Aは、溶融ガラスGの導管ではないので、その材質は特に限定されず、たとえば、ステンレス鋼、白金、白金合金等の金属材料、セラミックス、アルミナ等の耐火性・耐腐食性材料を用いることができる。
また、減圧脱泡槽3に流入するガス流Fの温度が低いと、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGに悪影響を及ぼすおそれがあるため、雰囲気制御部16、および接続通路14、15は、加熱機構を有することが好ましい。但し、雰囲気制御部16、および、接続通路14、15の全てに加熱機構を設けることは必ずしも必要ではなく、少なくとも、減圧脱泡槽3にガス流Fが流入する側の接続管(
図1の場合、接続通路14の周囲)に加熱機構を設ければ、減圧脱泡槽3に温度が低いガス流Fが流入して、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGに悪影響を及ぼすおそれを解消することができる。
【0027】
本実施形態の減圧脱泡装置100は、ガス流Fを形成するために減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間(溶融ガラス収容部より上の空間)内、接続通路14の内部、接続通路15の内部、または雰囲気制御部16の内部の少なくともいずれかにガスを供給するガス供給手段(図示略)を設けてもよい。該ガス供給手段は、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間と接続通路14、15と雰囲気制御部16とを流れるガス流Fを形成することができれば、その設置位置やガス供給方法は特に限定されない。たとえば、減圧脱泡槽3の上流側天井部に形成された接続通路14の開口部より、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間へと、上流側から下流側へと流れるガス流Fdが生じるようにガスを供給することにより
図1に示すようなガス流Fを形成できる。また、雰囲気制御部16の内部空間に下流側から上流側へと流れるガス流Fbを生じるようにガスを供給することにより、あるいは、雰囲気制御部16の内部空間から接続通路14側へと流れるガス流Fcを生じるようにガスを供給することにより、
図1に示すようなガス流Fを形成できる。また、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間へと、上流側から下流側へと流れるガス流Feが生じるようにガスを供給することにより、あるいは、減圧脱泡槽3の溶融ガラスGの上部空間から接続通路15側へと流れるガス流Ffが生じるようにガスを供給することにより、
図1に示すようなガス流Fを形成できる。なお、本実施形態の減圧脱泡装置100においては、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間と接続通路14、15と、雰囲気制御部16とを流れるガス流Fを形成することができれば、ガス供給手段は、1つだけ設けられていてもよく、2つ以上設けられていてもよい。
【0028】
本実施形態の減圧脱泡装置100においては、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間(溶融ガラス収容部より上の空間)と接続通路14、15と雰囲気制御部16とを流れるガス流Fを整流することにより、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を解消する。すなわち、溶融ガラスGからのガス成分は滞留することなく、ガス流Fによって雰囲気制御部16へと運ばれる。雰囲気制御部16に運ばれた溶融ガラスGからのガス成分は、排気口17から外部に放出される。ガス流Fが循環する場合に、雰囲気制御部16の内部空間に運ばれた溶融ガラスGからのガス成分の一部が、ガス流Fによって運ばれて減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間に戻る場合もあるが、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの雰囲気制御部16と減圧脱泡槽3とを循環するガス流Fが存在することから、溶融ガラスGからのガス成分の滞留のリスクは最小限に抑えられる。なお、ガス供給手段を利用する場合には、溶融ガラスGからのガス成分がガス供給手段からの供給ガスによって希釈されることにより、溶融ガラスGからのガス成分が冷却される過程で減圧脱泡装置100内に付着したり、排気口17から放出された後、系内に付着することが防止される。
【0029】
溶融ガラスGからのガス成分が滞留すると、溶融ガラスGの上方の雰囲気(減圧脱泡槽3の上部空間)において、溶融ガラスGからのガス成分の分圧が高くなるので、溶融ガラスG表面に浮上した気泡が破泡しにくくなり減圧脱泡の効果が低下すると考えられる。
本実施形態の減圧脱泡装置100は、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間と雰囲気制御部16とを流れるガス流Fを整流することにより、溶融ガラスGからのガス成分の滞留が解消されるため、減圧脱泡の効果に優れている。
また、溶融ガラスGからのガス成分が滞留すると、過減圧による泡層の肥大化が起こり、減圧脱泡の効果が大幅に低下してしまうが、本実施形態の減圧脱泡装置100では、溶融ガラスGからのガス成分が滞留することなく、ガス流Fによって運ばれ、排気口17から外部に放出されるため、減圧脱泡槽3の減圧度を従来よりも高くしても過減圧による泡層の肥大化がより抑制できるようになる。したがって、減圧脱泡槽3の減圧度を従来よりも高くすることができ(すなわち、減圧脱泡槽3の絶対圧を従来よりも低くすることができ)、減圧脱泡の効果をより高めることができる。
【0030】
本発明において、溶融ガラスGの上方にガス流Fを形成するのは、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を解消するためである。そのため、ガス供給手段を利用する場合には、供給されるガスは、溶融ガラスや製造されるガラス製品、およびガラス製造設備、特に減圧脱泡装置に悪影響を及ぼすものでないことが好ましい。したがって、ガス供給手段から供給されるガスの成分には、腐食性、爆発性のガスを含まないことが好ましい。
上記を満足するガスとしては、大気、乾燥空気、N
2やArのような不活性ガス、CO
2等の低分子ガスが挙げられる。これらのガスは単独で使用してもよく、2種以上の混合ガスとして使用してもよい。
【0031】
ガス供給手段から供給するガスとして、水蒸気濃度60mol%以下の低分子ガスを用いた場合、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を解消する効果に加えて、減圧脱泡槽11内の溶融ガラスG上方の雰囲気の水蒸気濃度を低減する効果が期待されることから好ましい。
減圧脱泡槽3内の溶融ガラスG上方の雰囲気の水蒸気濃度は、60mol%以下に低減されることが好ましい。該雰囲気の水蒸気濃度を60mol%以下とすることにより、減圧脱泡槽3内の溶融ガラス表面の泡層が肥大化して突沸が生じることを防止でき、減圧脱泡の効果をさらに向上させることができる。
【0032】
減圧脱泡槽3が白金製または白金合金製である場合、ガス供給手段から供給するガスとして用いる低分子ガスは、酸素濃度が空気中の酸素濃度よりも低いガスであることが好ましい。ガス供給手段から供給するガスとして用いる低分子ガスは、空気中の酸素濃度よりも酸素濃度が低いガスを用いることにより、減圧脱泡槽3の材質として白金および白金合金を用いている場合に、その白金の酸化を抑制し、減圧脱泡槽3の寿命を延ばし、更に、ガラス製品において、この白金由来の欠陥の生成を抑制することができるので好ましい。
【0033】
ガス流Fの幅方向平均流速は、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を解消することができれば特に限定されないが、0.0005〜1.50m/sとすることが好ましく、0.001〜0.2m/sとすることがより好ましい。ガス流Fの流速を前記範囲に設定することにより、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を解消して泡層の肥大化を防ぎ、減圧脱泡の効果を向上させることができる。
【0034】
本実施形態の減圧脱泡装置100には、雰囲気制御部16内の、溶融ガラスGから発生したガス成分を含むガス流Fが減圧脱泡槽3から雰囲気制御部16へと流入する側の接続通路15の出口側の開口部18の周囲に、整流部材20が設けられている。整流部材20は、減圧脱泡槽3から接続通路15を介して雰囲気制御部16へと流れるガス流Fの中でも、開口部18から雰囲気制御部16の内部側へ流入する領域におけるガス流Faの流れを整えるために設けられている。
以下、整流部材20について詳細に説明する。なお、以下の説明において、ガス流Fが雰囲気制御部16へと流入する側の接続通路15を「流入側接続通路15」と称し、ガス流Fが雰囲気制御部16より流出する接続通路14を「流出側接続通路14」と称することがある。また、流入側接続通路15を形成する接続管15Aを「流入側接続管15A」と称し、流出側接続通路14を形成する接続管14Aを「流出側接続管14A」と称することがある。
【0035】
整流部材20は、接続管15Aが雰囲気制御部16に連通する部分である開口部18の周囲に設けられている。ここで、本実施形態の減圧脱泡装置100において、
図1に示すように、流入側接続管15Aは、雰囲気制御部16の外周部側壁16aよりも内側となるように雰囲気制御部16に接続されている。流入側接続管15Aは外周部側壁16aにより近い位置に設けることも可能であるが、雰囲気制御部16の外周部側壁16aと流入側接続管15Aとを接近させると、流入側接続管15Aと雰囲気制御部16の周囲に設けられた断熱材7の熱膨張率と、流入側接続管15Aを形成する材料の熱膨張率と、雰囲気制御部16を形成する材料との熱膨張率とが異なるため、減圧脱泡時の高温において減圧脱泡装置100の構造を保つ事が難しくなる場合がある。そのため、
図1に示すように、流入側接続管15Aが雰囲気制御部16の外周部側壁16aよりも内側に設けられ、雰囲気制御部16の外周部の空間(外周部側壁16aと外周部天井部16bと外周部床部16cとで囲まれた空間)19(以下、「外周部の空間19」を「空間19」と略称することがある。)が形成されていることが好ましい。また、溶融ガラスGからのガス成分が凝集物として雰囲気制御部16の外周部側壁16aに付着し、それが落下した場合に、流入側接続管15Aが雰囲気制御部16の外周部側壁16aよりも内側に設けられていれば、すなわち空間19を形成していれば、凝集物が外周部床部16cに落ち、減圧脱泡槽3内への落下を防げる点でも好ましい。
【0036】
同様の理由より、流出側接続管14Aも、雰囲気制御部16の外周部側壁16aとは他側の外周部側壁よりも内側となるように雰囲気制御部16に接続されていることが好ましい。
【0037】
このように流入側接続管15Aが雰囲気制御部16に接続され、雰囲気制御部16の外周部の空間(外周部側壁16aと外周部天井部16bと外周部床部16cとで囲まれた空間)19が形成されることは前記理由により好ましいが、後述する実施例に示すように、本発明者らが空間19と流入側接続通路15と開口部18付近におけるガス流の挙動をシミュレーション解析したところ、空間19が形成されていることにより、空間19で生じた渦気流により開口部18を上昇するガス流F(上昇気流)が阻害され、ガス流Fの流れが不安定になってしまうことが判明した。前述のように、ガス流Fの流れが不安定になってしまうと、ガス流Fの制御が難しくなり、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間において溶融ガラスGからのガス成分が滞留している箇所と滞留が解消されている箇所とが生じ、減圧脱泡の効果にムラが出てしまい、製造されるガラスの品質にムラを生じるおそれがある。
【0038】
図10は、従来の減圧脱泡装置において、流入側接続管15Aが雰囲気制御部16に接続され、雰囲気制御部16の外周部の空間(外周部側壁16aと外周部天井部16bと外周部床部16cとで囲まれた空間)19が形成されている場合の、空間19と流入側接続管15Aと開口部18付近におけるガス流の挙動を模式的に示す図である。減圧脱泡装置において、雰囲気制御部16の温度は、溶融ガラスGが流通する減圧脱泡槽3の温度よりも低く、また、雰囲気制御部16の天井部16Aと、雰囲気制御部16の床部16Bとでは、天井部16Aの方が床部16Bよりも温度が低く、その温度差は、たとえば100℃程度である。このため、雰囲気制御部16の外周部天井部16bと、雰囲気制御部16の外周部床部16cとでは、該外周部天井部16bの方が該外周部床部16cよりも温度が低くなっている。このような温度環境の雰囲気制御部16において、減圧脱泡槽3から流入側接続通路15を上昇するガス流Fである上昇気流S1は、開口部18を介して雰囲気制御部16に流入した後、その一部が雰囲気制御部16の外周部の空間19へと流れ込み、雰囲気制御部16内で相対的に温度の低い外周部天井部16bで冷却されて、外周部床部16c側へと下降する。その結果、
図10に示すような渦気流S2が雰囲気制御部16の外周部の空間19において生じる。
【0039】
雰囲気制御部16の外周部の空間19で渦気流S2が生じると、空間19の内側に形成された流入側接続通路15を上昇する上昇気流S1は、開口部18付近において渦気流S2とぶつかり合い、上昇気流S1の流れが渦気流S2により阻害されてしまう。このように、上昇気流S1の流れが渦気流S2により阻害されることにより、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間と雰囲気制御部16とを流れるガス流Fが不安定になってしまう。
【0040】
図7(b)は、後述の実施例において、流入側接続通路15が雰囲気制御部16に接続され、雰囲気制御部16の外周部の空間19が形成されている場合の、空間19と流入側接続通路15と開口部18付近におけるガス流の挙動をシミュレーション解析した結果を示す図である。
図7(b)に示すように、外周部の空間19からの渦気流S2が、流入側接続通路15から開口部18を介して雰囲気制御部16へと流入するガス流(上昇気流)S1の流れを阻害している。渦気流S2の強さは上昇気流S1の強さや周囲の温度環境等によって変化するため、このような状況では上昇気流S1の流れが不安定になり、それが原因となってガス流Fも不安定になってしまう。また、このように開口部18付近で雰囲気制御部16への流入を阻害された上昇気流S1の一部は、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの下流側の上部空間へと逆流してしまうと考えられる。上昇気流S1の逆流が起こると、ガス流Fの循環状態は不安定になってしまう。
【0041】
渦気流S2による上昇気流S1の阻害を抑制し、開口部18からのガス流Faを安定化するため、本実施形態の減圧脱泡装置100は、雰囲気制御部16内の、溶融ガラスGから発生したガス成分を含むガス流Fが減圧脱泡槽3から雰囲気制御部16へと流入する側の流入側接続通路15の出口側の開口部18の周囲に、整流部材20を設ける構成とした。
整流部材20は、
図10に示すような渦気流S2が上昇気流S1の流れを阻害することを抑制するために設けられるものであり、開口部18と雰囲気制御部16の外周部の空間19とを区切る整流壁部21を備える。
【0042】
図2(a)は、本実施形態の減圧脱泡装置100に設けられる整流部材の一実施形態と、減圧脱泡装置100の整流部材付近とを部分的に拡大して示す部分断面斜視図である。
図2(a)に示す整流部材20は、雰囲気制御部16の外周部の空間19と開口部18とを仕切る整流壁部21が、開口部18の全周を覆って設けられており、管状(すなわち、筒状)の形状をしている。管状の整流部材20の底部には、流入側整流部材15の開口部18からのガスを該整流部材20内部に導入する導入部23が形成され、整流部材20の上面には、開口部18から整流部材20内部に導入されたガスを雰囲気制御部16へと導出する導出部24が形成されている。
図2(a)に示す整流部材20において、雰囲気制御部16の外周部の空間19と開口部18とを仕切る整流壁部21は、空間19で生じた渦気流S2が開口部18へと流入することを抑制する。そのため、流入側接続通路15を流れる上昇気流S1が、開口部18付近で該渦気流S2とぶつかり合い、上昇気流S1の流れが阻害されることを防ぐことができる。
【0043】
図7(a)は、後述の実施例において、流入側接続通路15の出口側の開口部18の周囲に
図2(a)に示す形状の整流部材20を設けた場合の、雰囲気制御部16の外周部の空間19と流入側接続通路15と開口部18付近におけるガス流の挙動をシミュレーション解析した結果を示す図である。
図7(a)に示すように、流入側接続通路15の出口側の開口部18の周囲に整流部材20を設けることにより、流入側接続通路15から開口部18を介して雰囲気制御部16へと流入するガス流F(上昇気流S1)は、空間19からの渦気流S2に阻害されず、ガス流Fの流速が安定化されている。
この結果より明らかなように、本実施形態の減圧脱泡装置100は、雰囲気制御部16の流入側接続通路15の出口側の開口部18周囲に整流部材20を設ける構成とすることにより、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間と雰囲気制御部16とを流れるガス流Fの流速が安定化され、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を安定して解消でき、減圧脱泡性能のバラつきを抑制して、減圧脱泡の効果を向上させることができる。
【0044】
整流部材20の導入部23の開口寸法、導出部24の開口寸法および整流部材20の内部空間(整流部材20の内径)は、ガス流Fの流れを阻害せず、ガス流Fの流れを安定させることができるため、開口部18の寸法よりも大きく設定されることが好ましい。
整流部材20の整流壁部21の内面22は、ガス流Fの流れを誘導する(すなわち、ガス流Fの流路をなす)案内面として機能する。案内面は、
図2(a)に示す整流部材20のように、導出部24が開口部18の上方に形成され、ガス流Fを開口部18から鉛直方向上方に誘導するように形成されていてもよいし、後述の
図4に示す実施形態のように、導出部24が雰囲気制御部16の流出側接続通路14側を向くように形成され、ガス流Fが雰囲気制御部16内を流入側接続通路15側から流出側接続通路14側へと流れるように誘導してもよい。整流部材20の整流壁部21の内面22である案内面が、ガス流Fを空間19側へと誘導しないように設定されていれば、
図1に示すような減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間と雰囲気制御部16とを循環するガス流Fが形成される。
【0045】
整流部材20は、耐熱性に優れた材料で形成されており、たとえば、セラミックス系の非金属無機材料、緻密質耐火物が挙げられる。緻密質耐火物の具体例としては、例えば、アルミナ系電鋳耐火物、ジルコニア系電鋳耐火物、アルミナ−ジルコニア−シリカ系電鋳耐火物等の電鋳耐火物、ならびに、緻密質アルミナ系耐火物、緻密質ジルコニア−シリカ系耐火物および緻密質アルミナ−ジルコニア−シリカ系耐火物等の緻密質焼成耐火物が挙げられる。
【0046】
整流部材20の高さの最大値hは、流入側接続通路15の開口部18が形成された位置における雰囲気制御部16の室内高さをHとしたとき、1/4≦h/H≦3/4の関係を満たすように設定することが上昇気流の流れを阻害しないために好ましく、1/3≦h/H≦2/3の関係を満たすように設定することが上昇気流の流れをより阻害しないためにより好ましい。
整流部材20の寸法は、使用する減圧脱泡装置に応じて適宜選択することができる。本発明の減圧脱泡装置の各構成要素の寸法は、必要に応じて適宜選択することができる。以下に各構成要素の寸法の一例を示す。なお、以下に示す整流部材20の寸法は、後述する第2〜第11の実施形態の整流部材20B〜20Lにも適用できる。
【0047】
[減圧脱泡槽3]
本発明の減圧脱泡装置の減圧脱泡槽の寸法は、減圧脱泡槽が白金製もしくは白金合金製、または緻密質耐火物製であるかによらず、使用する減圧脱泡装置や、減圧脱泡槽の形状に応じて適宜選択することができる。
図1に示すような減圧脱泡槽3が円筒形状である場合、その寸法の一例は以下の通りである。
・水平方向における長さ:1〜20m
・内径:0.2〜3m(断面円形)
減圧脱泡槽3が白金製もしくは白金合金製である場合、肉厚は4mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2mmである。
減圧脱泡槽3は、断面円形の円筒形状のものに限定されず、断面形状が楕円形や半円形状の略円形状のものや、断面が矩形の筒形状のものであってもよい。
【0048】
[上昇管5および下降管6]
上昇管5および下降管6は、白金製もしくは白金合金製、または緻密質耐火性であるかによらず、使用する減圧脱泡装置に応じて適宜選択することができる。たとえば、
図1に示す減圧脱泡装置100の場合、上昇管5および下降管6の寸法の一例は以下の通り。
・内径:0.05〜0.8m、より好ましくは0.1〜0.6m
・長さ:0.2〜6m、より好ましくは0.4〜4m
上昇管5および下降管6が白金製もしくは白金合金製である場合、肉厚は0.4〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.8〜4mmである。
【0049】
[雰囲気制御部16]
雰囲気制御部16の寸法は、使用する減圧脱泡装置、特に減圧脱泡槽3に応じて適宜選択することができるが、その一例は以下の通りである。
・内径:0.1〜3m、より好ましくは0.1〜2m
・長さ:0.8〜22m、より好ましくは1〜20m
・開口部18の形成位置における室内高さH:0.1〜3m、より好ましくは0.1〜2m
雰囲気制御部16の肉厚は、構成材料によっても異なるが、ステンレス鋼製である場合、0.5〜2mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5mmである。
【0050】
[流出側接続管14Aおよび流入側接続管15A]
流出側接続管14A、流入側接続管15Aの寸法は、使用する減圧脱泡装置、特に減圧脱泡槽3に応じて適宜選択することができるが、その一例は以下の通りである。
・内径:0.05〜0.5m、より好ましくは0.05〜0.3m
・長さ:0.1〜1m、より好ましくは0.1〜0.8m
流出側接続管14Aおよび流入側接続管15Aの肉厚は、構成材料によっても異なるが、ステンレス鋼製である場合、0.5〜2mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5mmである。
開口部18(流入側接続通路15Aの内周面)と雰囲気制御部16の外周部側壁16a内面との距離D
1は、流入側接続管15Aの肉厚によっても異なるが、0.05〜2mであることが好ましく、より好ましくは0.05〜1mである。
【0051】
[整流部材20]
整流部材20の寸法は、雰囲気制御部16の寸法、流入側接続管15Aの内径や設置位置(すなわち、開口部18の寸法や形成位置)などにより異なるが、整流部材20の高さhは、前述のように、雰囲気制御部16の開口部18の形成位置における室内高さHとの関係が、1/4≦h/H≦3/4を満たすことが好ましく、1/3≦h/H≦2/3を満たすことがより好ましい。具体的には、たとえば、整流部材20の高さhは0.03〜2mであることが好ましく、より好ましくは0.05〜1mである。
整流部材20の肉厚は、構成材料によっても異なるが、1〜50mmが好ましく、より好ましくは2〜30mmである。
整流部材20の導入部23、導出部24およびその内部空間の寸法は、流入側接続管15Aおよび開口部18の寸法などにより異なるが、開口部18からのガス流Fの流れを妨げないように、整流部材20の導入部23、導出部24および内部空間の寸法を、開口部18の寸法よりも大きくなるように設定することが好ましい。一例として、
図2(a)に示す筒状(管状)の整流部材20の場合、整流部材20の内径を開口部18の寸法よりも0〜50%大きく設定することが好ましく、具体的には、整流部材20の内径を開口部18の寸法よりも0〜0.5m大きく設定することが好ましく、0〜0.2m大きく設定することがより好ましい。
【0052】
本発明の減圧脱泡装置に設けられる整流部材は、上述した
図2(a)に示す円筒形状の整流部材20に限定されない。以下、本発明の減圧脱泡装置における整流部材の他の形態を
図2〜
図4に基づき説明する。なお、
図2〜
図4に示す整流部材において、その材質や好ましい形状、設置位置などは、
図2(a)に示す整流部材20で述べたものと同様である。
【0053】
図2の(b)から(d)は本発明の減圧脱泡装置に適用される整流部材の他の実施形態を示すもので、
図2(b)は第2の実施形態の整流部材を示す部分断面斜視図、
図2(c)は第3の実施形態の整流部材を示す部分断面斜視図、
図2(d)は第4の実施形態の整流部材を示す部分断面斜視図である。
【0054】
図2(b)に示す整流部材20Bは、横断面形状が四角形の管状であり、四角形の導入部23Bおよび導出部24Bを有する。
図2(b)に示すように、前記構造の整流部材20Bを開口部18の周囲を囲んで設置することにより、開口部18は整流壁部21Bにより空間19と仕切られ、空間19からの渦気流が、流入側接続通路15より開口部18を介して流動する上昇気流を阻害することを抑制できる。したがって、前記した整流部材20を設けた場合と同様に、本発明の減圧脱泡装置に
図2(b)に示す整流部材20Bを適用することにより、ガス流の流れを安定化させて、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を安定して解消でき、減圧脱泡性能のバラつきを抑制して、減圧脱泡の効果を向上させることができる。
【0055】
図2(c)に示す整流部材20Cは、横断面形状が三角形の管状であり、三角形の導入部23Cおよび導出部24Cを有する。
図2(c)に示すように、前記構造の整流部材20Cを開口部18の周囲を囲んで設置することにより、開口部18は整流壁部21Cにより空間19と仕切られ、空間19からの渦気流が、流入側接続通路15より開口部18を介して流動する上昇気流を阻害することを抑制できる。
【0056】
図2(d)に示す整流部材20Dは、断面形状が涙滴形の管状であり、涙滴形の導入部23Dおよび導出部24Dを有する。
図2(d)に示すように、前記構造の整流部材20Dを開口部18の周囲を囲んで設置することにより、開口部18は整流部材20Dの湾曲形状の整流壁部21Dにより空間19と仕切られ、空間19からの渦気流が、流入側接続通路15より開口部18を介して流動する上昇気流を阻害することを抑制できる。
【0057】
図3は本発明の減圧脱泡装置に適用される整流部材の他の実施形態を示すもので、
図3(a)は第5の実施形態の整流部材を示す部分断面斜視図、
図3(b)は第6の実施形態の整流部材を示す部分断面斜視図、
図3(c)は第7の実施形態の整流部材を示す部分断面斜視図、
図3(d)は第8の実施形態の整流部材を示す部分断面斜視図である。
【0058】
本発明の減圧脱泡装置における整流部材は、雰囲気制御部16の外周部の空間19と開口部18とを仕切り、該空間19からの渦気流が開口部18へと流入してくることを抑制することができれば開口部18の全周を覆っていなくても本願発明の効果を奏することができる。
たとえば、
図3(a)に示す整流部材20Eのように、開口部18のうち空間19とは反対側に位置する部分の一部を除くように開口部18を囲んで整流壁部21Eが設けられていてもよい。
図3(a)に示す整流部材20Eは、横断面形状がC形状であるが、このC形状をなす整流壁部21Eが空間19と開口部18とを仕切っているため、空間19からの渦気流が、流入側接続通路15より開口部18を介して流動する上昇気流を阻害することを抑制できる。したがって、前記した整流部材20を設けた場合と同様に、本発明の減圧脱泡装置に
図3(a)に示す整流部材20Eを適用することにより、ガス流の流れを安定化させて、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を安定して解消でき、減圧脱泡性能のバラつきを抑制して、減圧脱泡の効果を向上させることができる。
【0059】
また、本発明の減圧脱泡装置における整流部材は、
図3(b)に示す整流部材20Fのように、開口部18のうち空間19と対向する側の少なくとも半周を覆うようにして空間19と開口部18とを仕切る整流壁部21Fが設けられていれば、空間19からの渦気流が開口部18へと流入してくることを抑制することができ、本願発明の効果を奏することができる。
【0060】
図3(c)に示す整流部材20Gは、導入部23Gおよび導出部24Gを有する管状であり、その上面が空間19側から空間19とは反対側へと下降して形成されており、導出部24Gの開口が雰囲気制御部16内の流出側接続通路14側を向いている。
図3(c)に示すように、前記構造の整流部材20Gを開口部18の周囲を囲んで設置することにより、開口部18は整流部材20Gの整流壁部21Gにより空間19と仕切られ、空間19からの渦気流が、流入側接続通路15より開口部18を介して流動する上昇気流を阻害することを抑制できる。なお、
図3(c)に示すように、本発明の減圧脱泡装置における整流部材は、整流部材の導出部が空間19側に向かないように設置されていることが好ましい。
【0061】
図3(d)に示す整流部材20Hは、導入部23Hおよび導出部24Hを有する管状であり、開口部18の周囲を囲む壁部のうち、空間19とは反対側に位置する壁面の上部が一部切除された形状をしている。
図3(d)に示す整流部材20Hにおいても、開口部18は整流部材20Hの整流壁部21Hにより空間19と仕切られ、空間19からの渦気流が、流入側接続通路15より開口部18を介して流動する上昇気流を阻害することを抑制できる。
【0062】
図4は本発明の減圧脱泡装置に適用される整流部材の他の実施形態を示すもので、
図4(a)は第9の実施形態の整流部材を示す部分断面斜視図、
図4(b)は第10の実施形態の整流部材を示す部分断面斜視図、
図4(c)は第11の実施形態の整流部材を示す部分断面斜視図である。
【0063】
図4(a)に示す整流部材20Jは、
図2(a)に示す整流部材20が導出部を空間19とは反対方向に向くように折り曲げられた構造をした管状をしている。
図4(a)に示す整流部材20Jは、空間19と開口部18とを仕切る整流壁部21Jの内面22Jが、整流部材20J内に開口部18と導入部23Jを介して流入したガス流を導出部24Jへ誘導する案内面として機能している。
図4(b)に示す整流部材20Kも前記形態同様、空間19からの渦気流が、流入側接続通路15より開口部18を介して流動する上昇気流を阻害することを抑制できる。
【0064】
図4(b)に示す整流部材20Kは、
図4(a)に示す整流部材20Jにおける整流壁部21Jの内面22Jで形成される案内面が、曲線的に屈曲して形成された構造となっている。
図4(b)に示す整流部材20Kは、整流壁部21Kの内面22Kが、整流部材20K内に開口部18と導入部23Kを介して流入したガス流を導出部24Kへ誘導する案内面として機能している。
図4(b)に示す整流部材20Kも前記形態同様、空間19からの渦気流が、流入側接続通路15より開口部18を介して流動する上昇気流を阻害することを抑制できる。
【0065】
また、本発明の減圧脱泡装置において、
図4(c)に示す整流部材20Lのように、円筒形状(管形状)の管軸方向が鉛直方向に対して傾いた状態で、導出部24Lが空間19とは反対方向に開口されてなることもできる。
図4(c)に示す整流部材20Lは、整流壁部21Lの内面22Lが、整流部材20L内に開口部18と導入部23Lを介して流入したガス流を導出部24Lへ誘導する案内面として機能している。このような構造の整流部材20Lを
図4(c)に示すように開口部18の周囲に設置することにより、空間19からの渦気流が、流入側接続通路15より開口部18を介して流動する上昇気流を阻害することを抑制できる。
【0066】
本発明の減圧脱泡装置において、溶融ガラスからのガス成分の滞留を解消することができる限り、溶融ガラスGの上方に形成するガス流の流通方向は特に限定されない。
図1に示すガス流Fの流通方向とは反対方向、すなわち、減圧脱泡槽3の下流側から上流側に向かうガス流であってもよい。この場合、減圧脱泡槽3天井部の下流側に設けられた接続通路15が雰囲気制御部16から減圧脱泡槽3へと流れるガス流の通路をなす流出側接続通路となり、減圧脱泡槽3天井部の上流側に設けられた接続通路14が減圧脱泡槽3から雰囲気制御部16へと流れるガス流の通路をなす流入側接続通路となる。そのため、ガス流の流通方向(循環方向)が
図1に示すガス流Fと逆方向の場合は、接続通路14と雰囲気制御部16により形成された開口部周囲に前記した整流部材を設ける構成とすればよい。この場合、流入側接続通路を雰囲気制御部16の外周部側壁16Dよりも内側に設け、当該流入側接続通路の出口側の開口部周囲に整流部材が設けられているので、雰囲気制御部16の外周部側壁16D側の外周部に形成された空間側に生じた渦気流により、流入側接続通路を上昇する上昇気流の流れが阻害されるのを防止することができる。
【0067】
また、
図1に示す減圧脱泡装置100では、減圧脱泡槽3の長手方向全体にわたって、溶融ガラスGの流通方向と同一方向のガス流Fが形成されているが、溶融ガラスからのガス成分の滞留を解消することができる限り、溶融ガラスGの上部空間に複数のガス流を形成してもよい。複数のガス流は溶融ガラスGの流通方向と同一であってもよく、または反対方向であってもよい。
【0068】
また、図示した態様では、2本の接続通路14、15の位置関係が上流側および下流側であるが、接続通路の位置関係はこれに限定されない。たとえば、2本の接続通路の位置関係を図面手前側および奥側にしてもよい。この場合、減圧脱泡槽3と雰囲気制御部16とを流れるガス流の方向は、図示した態様でのガス流Fの方向と直交する方向(雰囲気制御部16におけるガス流の方向が、それぞれ、図面手前側および奥側、または、図面奥側および手前側)となる。この場合、減圧脱泡槽3内におけるガス流Fの方向が、溶融ガラスGの移動方向と直交する方向になる。図示した態様のように、減圧脱泡槽3が溶融ガラスGの流動方向に長い形状である場合、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上方におけるガス流Fの方向は、溶融ガラスGの移動方向と同一方向または反対方向であることが、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を解消させるうえで好ましいが、減圧脱泡槽が縦横方向における長さに有意な差が無い形状(たとえば、減圧脱泡槽の平面形状が正方形、六角形、八角形等の形状)の場合、減圧脱泡槽3内におけるガス流Fの方向が、溶融ガラスGの移動方向と直交する方向であって、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を解消することができる。
【0069】
なお、本発明の減圧脱泡装置100において、ガス供給手段によって供給するガスを利用する場合は、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間と雰囲気制御部16とを流れるガス流Fにより、溶融ガラスGからのガス成分の滞留を解消できればよいので、減圧脱泡の実施中、常時ガス流Fを生じさせておく必要は必ずしもない。溶融ガラスGからのガス成分の滞留を解消できる限り、減圧脱泡の実施中、定期的にガス流Fを生じさせるのでもよく、例えば、1時間毎に1〜30秒程度の割合でガス流Fを生じさせるのでもよい。なお、定期的にガス流Fを生じさせるためには、ガス供給手段(図示略)から定期的にガス流Fを供給すればよい。
また、本発明の減圧脱泡装置は、上記以外の構造を有していてもよい。たとえば、溶融ガラスGの表面(液面)近くにガス流Fを形成するため、減圧脱泡槽3の天井部の内側にガス流Fを下方に誘導するための邪魔板を設けてもよい。
【0070】
次に、
図1に示す減圧脱泡装置100の動作について説明する。
減圧脱泡装置100にあっては、減圧脱泡槽3の内部を大気圧未満の所定の減圧状態に保持した状態で、減圧脱泡槽3に溶融ガラスGを供給する。たとえば、減圧脱泡槽3は、その内部を51〜613hPa(38〜460mmHg)に減圧されている。減圧脱泡槽3の内部は、80〜338hPa(60〜253mmHg)に減圧されていることがより好ましい。
本実施形態の減圧脱泡装置100を用いて減圧脱泡するガラスGは、加熱溶融法により製造されるガラスである限り、組成的には制約されない。従って、ソーダライムガラスに代表されるソーダライムシリカ系ガラスやアルカリホウケイ酸ガラスのようなアルカリガラスであっても良い。
【0071】
建築用または車両用の板ガラスに使用されるソーダライムガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:65〜75%、Al
2O
3:0〜3%、CaO:5〜15%、MgO:0〜15%、Na
2O:10〜20%、K
2O:0〜3%、Li
2O:0〜5%、Fe
2O
3:0〜3%、TiO
2:0〜5%、CeO
2:0〜3%、BaO:0〜5%、SrO:0〜5%、B
2O
3:0〜5%、ZnO:0〜5%、ZrO
2:0〜5%、SnO
2:0〜3%、SO
3:0〜0.3%という組成を有することが好ましい。
【0072】
液晶ディスプレイ用の基板に使用される無アルカリガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:39〜70%、Al
2O
3:3〜25%、B
2O
3:1〜20%、MgO:0〜10%、CaO:0〜17%、SrO:0〜20%、BaO:0〜30%という組成を有することが好ましい。
プラズマディスプレイ用の基板に使用される混合アルカリ系ガラスの場合には、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:50〜75%、Al
2O
3:0〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO:6〜24%、Na
2O+K
2O:6〜24%、という組成を有することが好ましい。
【0073】
本発明に係るガラス製品の製造装置は、前述した減圧脱泡装置100と、減圧脱泡装置100よりも上流側に設けられたガラス原料を溶融して溶融ガラスを製造する溶融手段(溶融装置)と、減圧脱泡装置100よりも下流側に設けられた溶融ガラスを成形する成形手段(成形装置)200と、成形後のガラスを徐冷する徐冷手段(徐冷装置)と、を備える装置である。なお、溶融手段、成形手段、徐冷手段については、公知技術の範囲である。たとえば、溶融手段においては、所望の組成になるように調整したガラス原料を溶融槽に投入し、ガラスの種類に応じた所定の温度、たとえば、建築用や車両用等のソーダライムガラスの場合、約1400〜1600℃に加熱してガラス原料を溶融して溶融ガラスを得る。たとえば、成形手段としては、フロート法、フュージョン法またはダウンロード法などによる成形装置が挙げられる。
【0074】
前記の中でもフロート法のためのフロートバスを用いた成形手段が薄板状ガラスから厚板状ガラスまでの広範囲の厚さの高品質なガラス板を大量に製造できる理由から好ましい。たとえば、徐冷手段としては、成形後のガラスの温度を徐々に下げるための機構を備えた徐冷炉が一般的に用いられる。徐々に温度を下げる機構は、燃焼ガスまたは電気ヒータにより、その出力が制御された熱量を、炉内の必要位置に供給して成形後のガラスを徐冷する。これによって、成形後のガラスに内在する残留応力を無くすることができる。
【0075】
次に、本発明のガラス製品の製造方法について説明する。
図5は、本発明のガラス製品の製造方法の一実施形態のフロー図である。
本発明のガラス製品の製造方法は、前述の減圧脱泡装置100を用いることを特徴とする。本発明のガラス製品の製造方法は、一例として、前述の減圧脱泡装置100の前段の溶融手段により溶融ガラスを溶融して溶融ガラスを製造する溶融工程K1と、前述の減圧脱泡装置100により溶融ガラスの減圧脱泡を行う脱泡工程K2と、前述の減圧脱泡装置100よりも下流側で溶融ガラスを成形する成形工程K3と、その後工程において溶融ガラスを徐冷する徐冷工程K4と、徐冷後のガラスを切断する切断工程K5と、ガラス製品K6を得るガラス製品の製造方法である。
【0076】
本発明のガラス製品の製造方法は、前述した減圧脱泡装置100を利用することの他は、公知技術の範囲である。また、本発明のガラス製品の製造方法で利用する装置については、前述の通りである。
図5では、本発明のガラス製品の製造方法の構成要素である溶融工程、および成形工程ならびに徐冷工程に加えて、さらに必要に応じて用いる切断工程、その他の後工程も示している。
【実施例】
【0077】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0078】
実施例では、熱流体解析ソフトFLUENT(Fluent社)を用いて減圧脱泡槽内の溶融ガラスGの上部空間での気流解析を行い、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの上部空間と雰囲気制御部とを流れるガス流(本解析においては循環するガス流)による溶融ガラスからのガス成分の滞留の解消を評価した。なお、減圧脱泡装置としては、
図6に示す減圧脱泡装置100Bのように、減圧脱泡槽3の上流側天井部の接続通路14の開口部のガス導入点A(溶融ガラスG表面からの高さd
2を38mm、減圧脱泡槽3の上流側端部から0.1m)より上流から下流向き45度の角度で、1060℃のN
2ガスを体積流量25NL/minにて供給するものとしてモデル化した。なお、
図6に示す減圧脱泡装置100Bは、シミュレーションに使用した計算モデルの減圧脱泡槽と雰囲気制御部近傍の要部のみを示しており、
図1に示す構成要素と同じ要素には同じ符号を付した。
【0079】
モデルとして使用した減圧脱泡装置100Bの各部の寸法は以下の通りである。
・減圧脱泡槽3:全長L
1=10m、高さd
1=1m(断面半円形状)、溶融ガラスGの上部空間の高さd
3=0.5m
・雰囲気制御部16:全長L
2=11m、高さH=2m(円筒形状)
・接続管14A、15A:全長0.8m、内径0.3m(円筒形状)
接続管14Aは、減圧脱泡槽3の上流側端部から0.1m、および雰囲気制御部16の上流側端部から0.6mの位置とした。接続管15Aは、減圧脱泡槽3の下流側端部から0.1mの位置とし、開口部18は雰囲気制御部16の下流側端部の内壁からの距離D
1を0.6mとした。
・排気口17:内径0.05m。雰囲気制御部16の長手方向中央の天井部に設けた。
【0080】
減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間内の圧力および雰囲気制御部16内の圧力350mmHg、減圧脱泡槽3の温度1400℃、雰囲気制御部16の天井部16Aの温度100℃、雰囲気制御部16の床部16Bの温度200℃の場合について解析を行った。
気流解析には、非反応化学種の輸送モデル、標準k−εモデル、標準壁関数を採用した。入口拡散、拡散エネルギー、および減圧脱泡槽3内での溶融ガラスGの動きについては考慮せず、その他の設定パラメータはデフォルト値を使用した。気流解析の流体物性は、FLUENTデータベース内のN
2および揮散H
2Oからなる混合物の値(下記)を用いた。
【0081】
・粘度:1.72×10
−5[kg/m・s]
・熱伝導率:0.0454[W/m・K]
・質量拡散係数:2.88×10
−5[m
2/s]
・密度:ρ=pM
w/RT(非圧縮性理想気体方程式)
・比熱:c
p=Σ
iY
jc
p,i(化学種による比熱の質量分率平均式)[J/kg・K]
減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGからは、SO
3、O
2、B
2O
3、H
2O等、複数のガスが揮散すると考えられるが、本解析では便宜上H
2Oのみが溶融ガラスGの表面から垂直上向きに体積流量14.55NL/minで揮散すると仮定した。
【0082】
(実施例)
図6および
図2(a)に示すように、接続通路(流入側接続通路)15の開口部18の周囲に、肉厚1.0mm、内径0.3m、高さhを1m(円筒形状)とした整流部材20を、自重により設置した。
(比較例)
整流部材を設置しないこと以外は、実施例と同じ条件でシミュレーション解析をした。
【0083】
図7に、実施例および比較例の接続通路15近傍の雰囲気制御部16の気流解析結果を示す。
図7(a)は実施例の気流解析結果を示す図であり、
図7(b)は比較例の気流解析結果を示す図である。
図7(a)に示すように、流入側接続通路15の出口側の開口部18の周囲に整流部材20を設けた本発明に係る実施例では、流入側接続通路15から開口部18を介して雰囲気制御部16へと流入するガス流S1が渦気流S2に阻害されることなく、安定な流れを形成している。これに対し、
図7(b)に示す比較例では、外周部の空間からの渦気流S2が、流入側接続通路15から開口部18を介して雰囲気制御部16へと流入するガス流S1の上昇を阻害している。渦気流S2の強さは上昇気流S1の強さや周囲の温度環境等によって変化するため、このような状況では上昇気流S1の流れが不安定になり、それが原因となってガス流Fも不安定になってしまう。この結果より、整流部材が設けられている本発明に係る減圧脱泡装置は、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの上部空間と雰囲気制御部とを循環するガス流の流速が安定化され、溶融ガラスからのガス成分の滞留を安定して解消でき、減圧脱泡性能のバラつきを抑制して、減圧脱泡の効果を向上させることができる。
【0084】
図8は、実施例および比較例について、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間の圧力を、上流側から下流側までプロットしたグラフである。
図8において、横軸は減圧脱泡槽の上流側端部(上流端)からの位置を減圧脱泡槽3の全長に対して規格化した座標(規格化座標)であり、縦軸は比較例における減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間の上流端の圧力を1として規格化した圧力(規格化圧力)である。
図8の結果より、整流部材20を設けた本発明に係る実施例では、比較例よりも減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間の上流端と下流端との圧力差が大きくなっており、溶融ガラスGの上部空間のガス流の流れ(循環)状態が良好であることがわかる。これに対し、比較例では、減圧脱泡槽3内の溶融ガラスGの上部空間の上流端と下流端との圧力差が小さいため、溶融ガラスGの上部空間のガス流の流れ(循環)が弱いことがわかる。これは、
図7に示すように、整流部材20を有さない比較例では、流入側接続通路15の開口部18付近を通過するガス流である上昇気流が、外周部の空間からの渦気流により妨害され、開口部18付近でガス流の流速が低下するとともに、妨害されたガス流の一部が減圧脱泡槽3の下流端側へと逆流するため、減圧脱泡槽3の下流側の溶融ガラスGの上部空間の圧力が上昇したためと考えられる。
【0085】
図9は、実施例および比較例について、減圧脱泡槽3から接続通路14を介して雰囲気制御部16へと排出されるガス(上流排出ガス)の流量、および、減圧脱泡槽3から流入側接続通路15を介して雰囲気制御部16へと排出されるガス(下流排出ガス)の流量を示したグラフである。
図9において、各ガスの排出流量は、実施例の下流排出ガスの流量を1として規格化して示した。
図9の結果より、整流部材20を設けた本発明に係る実施例では、上流排出ガスの流量がマイナス、すなわち、雰囲気制御部16から接続通路14を介して減圧脱泡槽3へとガス流が流れており、ガス流の流れ(循環)状況が良好であることがわかる。これに対し、比較例では、上流排出ガスの流量がプラス、すなわち、減圧脱泡槽3から接続通路14を介して雰囲気制御部16へとガス流が流れており、溶融ガラスGの上部空間において、上流側から下流側へと流れるガスの流量が減少し、ガス流の流れ(循環)が弱いことがわかる。
【0086】
以上の結果より、整流部材が設けられている本発明に係る減圧脱泡装置は、減圧脱泡槽内の溶融ガラスの上部空間と雰囲気制御部とを流れるガス流の流速が安定化され、溶融ガラスからのガス成分の滞留を安定して解消でき、減圧脱泡性能のバラつきを抑制して、減圧脱泡の効果を向上させることができる。