特許第5700178号(P5700178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5700178
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】粘着テープ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20150326BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20150326BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20150326BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20150326BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J133/04
   C09J133/02
   C09J11/08
   C09J201/00
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-538554(P2014-538554)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(86)【国際出願番号】JP2014056467
(87)【国際公開番号】WO2014156642
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2014年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-62038(P2013-62038)
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 優紀
(72)【発明者】
【氏名】武井 秀晃
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−260880(JP,A)
【文献】 特開2013−121990(JP,A)
【文献】 特開2009−108314(JP,A)
【文献】 特開2010−155969(JP,A)
【文献】 特開2014−055235(JP,A)
【文献】 特開2012−221468(JP,A)
【文献】 特開2013−040329(JP,A)
【文献】 特開2010−215906(JP,A)
【文献】 特開2012−214626(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/176031(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/141167(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/154137(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/191106(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/02
C09J 11/08
C09J 133/02
C09J 133/04
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが300μm以上、見かけ密度が0.25g/cm以下、25%圧縮強度が10kPa〜300kPa、流れ方向及び幅方向の引張強さがそれぞれ50N/cm〜700N/cmであるポリオレフィン系発泡体基材層と、アクリル系重合体及び重合ロジンエステル系粘着付与樹脂を含有する粘着剤を用いて形成された粘着剤層とを有する粘着テープであって、
物体の接触を感知して、触覚フィードバックを与えるタッチフィードバック機能を有するタッチパネル装置の固定に用いられ、厚さ方向に圧縮荷重5N/cmで圧縮した際の変位量が130μm以上であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
厚さが350μm〜2000μmである請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記アクリル系重合体の重量平均分子量が80万〜250万である請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚さが10μm〜150μmである請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項5】
周波数1Hzにて測定される損失正接の極大値が0.53以下である請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層が、炭素原子数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート及びカルボキシル基を有するビニル単量体を含有する単量体成分を重合して得られるアクリル系重合体と、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂とを含有するアクリル系粘着剤を用いて形成される粘着剤層である請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記タッチパネル装置が請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着テープを介してきょう体に固定された電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチフィードバック機能を有するタッチパネル装置の固定に用いられる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子手帳、携帯電話、PHS、スマートフォン、デジタルカメラ、音楽プレーヤー、テレビ、ノート型パソコン、タブレット型パソコン、ゲーム機、カーナビゲーションシステム等の小型電子機器としては、タッチパネル機能を備えたものが広く普及している。
【0003】
しかし、上記電子機器を使用したことがない初心者や高齢者は、タッチパネルの操作に不慣れな場合が多く、上記電子機器の操作を誤る場合があった。
【0004】
上記操作の誤りを防止する機能としては、タッチパネルに対してした入力操作が、電子機器に受け入れられたか否かを簡単かつ明確に確認することができる、いわゆるタッチフィードバック機能が知られている。
【0005】
前記タッチフィードバック機能としては、例えばタッチパネルへの操作を電子機器が受け入れた際に、前記電子機器またはタッチパネル部が振動し、その振動によって操作者に入力操作が受け入れられたことを認識させる機能(触覚フィードバック機能)が検討されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0006】
前記触覚フィードバック機能としては、具体的にはタッチパネルまたはタッチパネル機能つきのディスプレイモジュールなどに圧電素子(ピエゾ素子ともいう)や振動モーター、リニア振動アクチュエーターなどの振動発生源を取り付けて、タッチパネル装置全体または一部を振動させる方法が知られている(例えば特許文献3参照。)。この機能は、タッチパネル等を操作すべくその表面に接触した指先等に、直接振動を伝えることができ、また、従来のボタンを押したときの様なクリック感に近い感触を、操作者に与えることができるという利点がある。
【0007】
一方、上記振動やクリック感に近い感触は、操作者が単にタッチパネル部に触れた際に与えるのではなく、操作者が微小な圧力でタッチパネル部を押し込んだ(入力した)際に与えることが、操作者の誤認や誤操作等を防止するうえで好ましい。
【0008】
しかし、タッチパネル部ときょう体との固定に、通常、使用される粘着テープは、上記タッチパネル部の表面がごくわずかに押し込まれた際に、そのタッチパネル部の押込み変位に対応して、ごくわずかに変位する(圧縮される)特性を備えていないため、前記押込みに対応した振動等を、操作者に与えることができない場合があった。
【0009】
また、前記押込みを感知し発生した振動等は、前記粘着テープを介して、タッチパネル部はもとより指先等に伝えられるところ、従来の粘着テープでは、前記振動の伝達を阻害したり、前記振動をタッチパネル部とは逆側(きょう体側)に伝えたりしてしまう場合がある等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−134909号公報
【特許文献2】特開2011−44126号公報
【特許文献3】特表2010−506499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、タッチパネル部の押込みに対応して、変位可能(圧縮可能)で、かつ、タッチパネル部及び指先等への振動の伝達を阻害しない、いわゆるタッチフィードバック特性を備えた粘着テープを提供することである。
【0012】
また、本発明が解決しようとする第二の課題は、上記タッチフィードバック特性とともに、前記モバイル機器の製造に使用可能なレベルの耐衝撃性と、被着体の凹凸表面への追従性とに優れた粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、発泡体基材層と粘着剤層とを有する粘着テープであって、物体の接触を感知して、触覚フィードバックを与えるタッチフィードバック機能を有するタッチパネル装置の固定に用いられ、厚さ方向に圧縮荷重5N/cmで圧縮した際の変位量が130μm以上であることを特徴とする粘着テープであれば、前記課題を解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘着テープは、タッチパネル部の押込みに対応して変位可能(圧縮可能)で、かつ、タッチパネル部及び指先等への振動の伝達を阻害しない、いわゆるタッチフィードバック特性を備えることから、もっぱらタッチフィードバック機能を備えたタッチパネル装置ときょう体との固定等に使用することができる。
【0015】
また、本発明の粘着テープは、上記タッチフィードバック特性とともに、耐衝撃性や被着体表面の凹凸への追従性、耐剥がれ性にも優れることから、落下の生じやすい携帯電子機器、特に、大画面化が進み耐衝撃性の要請の高いスマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコンあるいはゲーム機等の携帯型の電子機器の製造に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】耐衝撃試験用の試験に用いた試験片を上面から見た概念図である。
図2】耐衝撃試験用の試験に用いた試験片を上面から見た概念図である。
図3】耐衝撃試験の試験方法の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の粘着テープは、発泡体基材層と粘着剤層とを有し、厚さ方向に圧縮荷重5N/cmで圧縮した際の変位量が130μm以上であることを特徴とするものである。前記粘着テープは、もっぱらタッチフィードバック機能を備えたタッチパネル装置の固定に使用することができる。
【0018】
前記粘着テープとしては、厚さ方向に5N/cmの荷重で圧縮した際の変位量が130μm以上であるものを使用する。
【0019】
前記変位量は、より一層優れたタッチフィードバック特性を付与するうえで、140μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。前記変位量の上限は、特に制限はないが、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることが、前記粘着テープによって固定された部品等の、粘着テープの過度な変形に起因した浮きや剥がれを防止できるため好ましい。
【0020】
なお、上記圧縮荷重5N/cmで圧縮した際の変位量とは、以下の(1)及び(2)の方法で測定した値を指す。
(1)23℃で、厚さ9mmで10cm角の平滑なアルミニウム板に、2cm角の粘着テープを貼付して、23℃24時間放置して試験片とする。
(2)次に、直径7mmのステンレス製プローブを取り付けた引張試験機で、粘着テープの表面の中心を0.5mm/分の速度で、5N/cmの力で圧縮した際の変位量を求める。前記変位量は、前記圧縮前の粘着テープの平滑な表面を基準面とし、その基準面と、その厚さ方向に押込まれた際の最深さとの距離をさす。
【0021】
前記粘着テープとしては、その単位厚さあたりの前記変位量[厚さ方向に圧縮荷重5N/cmで圧縮した際の変位量/粘着テープの厚さ]が、0.13以上であるものを使用することが好ましく、0.15以上であるものを使用することがさらに好ましい。
【0022】
また、前記粘着テープとしては、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値が、0.53以下であるものを使用することが好ましく、0.1〜0.53であるものを使用することが、より一層優れたタッチフィードバック特性を付与するうえで好ましい。
【0023】
なお、前記周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)は、温度分散による動的粘弾性測定で得られた貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)から、tanδ=G”/G’の式より求められる。動的粘弾性の測定においては、粘弾性試験機(ティ・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:ARES G2)を用いて、直径8mmの円形に加工した粘着テープ1枚を同試験機の測定部である直径8mmの平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hz、昇温速度2℃/分で−50℃から150℃までの損失正接(tanδ)を測定して極大値を求める。なお、極大値が2つ以上存在する場合は、値が大きい方を採用する。
【0024】
本発明の粘着テープは、下記測定条件により測定される面接着強度が、90N/4cm以上であることが好ましく、130N/4cm以上であることがより好ましい。
【0025】
上記面接着強度の測定条件は以下の(3)〜(5)とおりである。
(3)23℃で、厚さ2mmで5cm角のアクリル板に、幅5mm及び長さ4cmの2枚の両面粘着テープを平行に貼付する。
(4)次に、中心部に直径1cmの穴を設けた厚さ2mm、幅10cm及び長さ15cmの長方形の平滑なABS板に、(3)で作成した両面粘着テープつきアクリル板を、アクリル板の中心とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン板(ABS板)の中心とが一致するように貼付して、2kgローラーで1往復加圧したのち、23℃で1時間静置して試験片とする。
(5)前記試験片を構成するABS板側から、ABS板の穴を通して、直径7mmのステンレス製プローブを取り付けた引張試験機でアクリル板を10mm/分で押し、前記ABS板と前記アクリル板とが剥がれる強度を測定する。
【0026】
前記粘着テープの厚さは、使用する態様によって適宜調整すれば良いが、350μm〜2000μmであることが好ましい。電子機器の部品固定用、特に小型、薄型の携帯電子機器の部品固定用に前記粘着テープを使用する場合、比較的薄い粘着テープが求められるため、前記粘着テープとしては、400μm〜1900μmの厚さのものを使用することが好ましく、400μm〜1600μmの厚さのものを使用することが、薄型で小型の携帯電子機器に対して好適に適用でき、良好な防水機能を付与することが可能となる。
【0027】
本発明の粘着テープは、発泡体基材と粘着剤層とを積層することによって製造することができる。
【0028】
[発泡体基材]
前記発泡体基材は、本発明の粘着テープの発泡体基材層を構成する。
【0029】
前記発泡体基材としては、300μm以上の厚さであるものを使用することが好ましく、350μm〜1800μmの厚さであるものを使用することがより好ましく、450μm〜1500μmの厚さであるものを使用することが、各種部品を良好に固定でき、かつ、より一層好適なタッチフィードバック特性を備えた粘着テープを得るうえでさらに好ましい。さらに好ましい。前記粘着テープとして、2以上の発泡体基材層を有する粘着テープを製造する場合には、前記発泡体基材層の厚さの合計が前記範囲の厚さであることが好ましい。
【0030】
前記発泡体基材としては、粘着テープの圧縮変位量を好適な範囲に調整しやすく、より一層好適なタッチフィードバック特性と、優れた耐衝撃性と、被着体との優れた密着性とを両立するうえで、0.03g/cm〜0.25g/cmの見かけ密度を有するものを使用することが好ましく、0.06g/cm〜0.25g/cmの見かけ密度を有するものを使用することがより好ましく、0.1g/cm〜0.21g/cmの見かけ密度を有するものを使用することがさらに好ましい。なお、前記見かけ密度は、JISK6767に準じ、4cm×5cmの長方形に切断した発泡体基材を約15cm分用意し、その質量を測定することによって算出した値である。
【0031】
前記発泡体基材の25%圧縮強度は、10kPa〜300kPaであることが好ましく、20kPa〜200kPaであることがより好ましく、20kPa〜150kPaであることがさらに好ましく、20kPa〜100kPaであることが、より一層好適なタッチフィードバック特性と、被着体表面の凹凸への追従性とを両立した粘着テープを得ることができるためさらに好ましい。
【0032】
なお、25%圧縮強度は、JISK6767に準じ、25mm角に切断した発泡体基材を厚さ約10mmになるまで重ね合わせた試験片を用意し、前記試験片より大きな面積のステンレス板でそれをはさみ、23℃下で10mm/分の速度で、前記試験片を約2.5mm(もとの厚さの25%分)圧縮した時の強度を測定することによって得られた値である。
【0033】
前記発泡体基材としては、その流れ方向および幅方向の平均気泡径が10μm〜700μmの範囲に調整されたものを使用することが好ましく、30μm〜500μmの範囲に調整されたものを使用することがより好ましく、50μm〜400μmの範囲に調整されたものを使用することが、発泡体基材の単位幅あたりに存在する独立気泡の数を一定量確保しやすく、前記粘着テープの圧縮時の変位量を好適な範囲としやすく、より一層優れた密着性及び耐衝撃性を備えた粘着テープを得やすいためさらに好ましい。
【0034】
前記流れ方向と幅方向の平均気泡径の比(流れ方向における平均気泡径/厚さ方向における平均気泡径)は特に限定されないが、0.25〜4倍であることが好ましく、0.33〜3倍であることがより好ましく、0.5〜2.3倍であることがさらに好ましく、0.7〜1.3倍であることが特に好ましい。上記比率範囲であると発泡体基材の流れ方向と幅方向の柔軟性や引張強度のばらつきが生じにくい。
【0035】
前記発泡体基材の厚さ方向の平均気泡径は、10μm〜150μmであることが好ましく、15μm〜100μmであることがより好ましい。厚さ方向の平均気泡径を当該範囲とすることで、好適な追従性とクッション性を実現でき、剛体同士の接合においても優れた密着性を実現しやすくなる。また、当該厚さ方向の平均気泡径は、発泡体基材の厚さに対して1/2以下、好ましくは1/3以下であることが、前記した好ましい範囲の見かけ密度や強度を備えた発泡体基材を得やすいため好ましい。また、得られる粘着テープの厚さ方向に5N/cmの荷重で圧縮した際の変位量が130μm以上である場合であっても、好適な強度を確保しやすい。
【0036】
発泡体基材の厚さ方向における平均気泡径に対する発泡体基材の流れ方向における平均気泡径の比(流れ方向における平均気泡径/厚さ方向における平均気泡径)、および、発泡体基材の厚さ方向における平均気泡径に対する、発泡体基材の幅方向における平均気泡径の比(幅方向における平均気泡径/厚さ方向における平均気泡径)は、ともに1〜15であることが好ましく、1.5〜10であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましい。前記範囲の比率とすることで、落下衝撃時の発泡体層間破壊に対する耐久性を向上させやすく、また、厚さ方向に好適な追従性とクッション性を確保しやすくなり、剛体同士の接合においても、水や粉じんが入り込む隙間を生じさせない良好な密着性を実現しやすくなる。また、得られる粘着テープを圧縮した際の変位量を前記した範囲に調整しやすい。
【0037】
なお、発泡体基材の幅方向と流れ方向、厚さ方向の平均気泡径は、下記の要領で測定する。まず、発泡体基材を幅方法、流れ方向とも約1cmに切断する。次に、切断した発泡体基材の切断面中央部分をデジタルマイクロスコープ(商品名「KH−7700」、HiROX社製)により、発泡体気泡部分を200倍に拡大したのち、発泡体基材の幅方向または流れ方向の断面を発泡体基材の切断面がその基材厚さ方向の全長に亘って写真に収まるように発泡体基材の幅方向または流れ方向の断面を撮影する。得られた拡大画像において、流れ方向または幅方向の拡大前の実際の長さが2mm分の切断面に存在する気泡の気泡径を全て測定し、その平均値から観察した部分の平均気泡径を算出する。任意の10カ所で測定した結果から発泡体基材の平均気泡径を求める。
【0038】
本発明に使用する発泡体基材の気泡構造は独立気泡構造とすることにより、発泡体基材の切断面からの浸水または粉じんを効果的に防ぐことができるため好ましい。独立気泡構造を形成する気泡の形状は、発泡体の厚さ方向の平均気泡径より、流れ方向や幅方向、もしくはその両方の平均気泡径が長い形状の独立気泡とすることにより、適度な追従性とクッション性を有するので好ましい。
【0039】
本発明に使用する発泡体基材は、流れ方向と幅方向の引張強さは特に限定されないが、それぞれ50N/cm以上であることが好ましく、50N/cm〜700N/cmであることがより好ましい。また、引張試験における切断時の引張伸度は特に限定されないが、流れ方向の引張伸度が100%〜1200%であることが好ましく、200%〜1000%であることがより好ましく、200%〜600%であることがさらに好ましい。前記した範囲の引張強さ及び引張伸度を備えた発泡体基材を使用することによって、
粘着テープの良好な加工性や貼付作業性を維持することができる。
【0040】
なお、前記発泡体基材の流れ方向と幅方向の引張強さは、JISK6767に準じ、標線長さ2cm、幅1cmのサンプルを、テンシロン引張試験機を用い、23℃及び50%RHの環境下において、引張速度300mm/minの測定条件で測定した最大強度である。
【0041】
発泡体基材の圧縮強度、密度、層間強度および引張強さなどは、使用する発泡体基材の素材や発泡構造により適宜調整することができる。
【0042】
前記発泡体基材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなるポリオレフィンを用いて得られるポリオレフィン系発泡体、ポリウレタン系発泡体、アクリル系発泡体、その他のゴム系発泡体等を使用することができる。
【0043】
前記発泡体基材としては、前記したなかでも、前記変位量を所定の範囲に調整しやすく、被着体表面の凹凸への追従性や緩衝吸収性等に優れた独立気泡構造の発泡体基材を作製しやすいため、ポリオレフィン系発泡体を使用することが好ましい。
【0044】
前記ポリオレフィン系樹脂を使用したポリオレフィン系発泡体基材としては、ポリエチレン系樹脂を用いて得られた発泡体基材を使用することが、比較的均一な厚さで、かつ、より一層好適な柔軟性を備えるため好ましい。
【0045】
前記ポリオレフィン系樹脂に含まれる前記ポリエチレン系樹脂の含有量は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0046】
また、前記ポリオレフィン系発泡体の製造に使用可能なポリエチレン系樹脂としては、例えば直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンを50重量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレンを50重量%以上含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体等を、単独で使用または二種以上併用することができる。
【0047】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0048】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、特には限定されず、例えば、ポリプロピレン、プロピレンを50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられ、これらは単独で使用されても二種以上が併用されてもよい。プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0049】
前記ポリエチレン系樹脂としては、前記したなかでも重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られる分子量分布の狭いポリエチレン系樹脂を使用することが好ましい。また、前記方法で得られるポリエチレン系樹脂は、いずれの分子量を有するポリエチレン系樹脂であっても、その共重合成分の共重合割合をほぼ等しく調整することができ、その結果、ほぼ均一に架橋されたポリオレフィン系発泡体を得ることができる。前記ほぼ均一に架橋されたポリオレフィン系発泡体は、延伸させやすく、また、その厚さを全体的に均一なものとしやすい。
【0050】
前記ポリオレフィン系発泡体基材は、架橋構造を有していてもよい。ポリオレフィン系樹脂シートを熱分解型発泡剤などで発泡させることによってポリオレフィン系発泡体を製造する場合は、前記架橋構造を形成すべく設計することが好ましい。架橋度は5質量%〜60質量%の範囲であることが好ましく、10質量%〜55質量%の範囲であることが、粘着剤層との良好な密着性と、タッチフィードバック特性と、耐衝撃性とをより一層向上するうえでより好ましい。
【0051】
前記架橋度の測定は以下の方法で行うことができる。40mm×50mm角の発泡体基材5枚一組を試料とし、その合計質量(G1)を測定する。次に、試料をキシレン中に120℃で24時間浸漬した後、キシレン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の質量(G2)を測定する。以下の式に従って求めるキシレン不溶分を架橋度とする。
【0052】
架橋度(質量%)=(G2/G1)×100
【0053】
前記ポリオレフィン系発泡体の製造方法としては、特に限定されず、例えば、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤と発泡助剤、発泡体を黒色や白色などに着色するための着色剤等を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによってポリオレフィン系樹脂シートを製造する工程と、前記ポリオレフィン系樹脂シートを架橋させる工程と、前記ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させる工程と、得られた発泡シートを溶融又は軟化させ、流れ方向或いは幅方向の何れか一方又は双方の方向に向かって延伸させて発泡シートを延伸する工程を含有する方法が挙げられる。なお、発泡シートを延伸する工程は必要に応じて行われればよく、複数回行われてもよい。
【0054】
前記熱分解型発泡剤としては、従来から発泡体の製造に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド、N,N‘−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルセミカルバジドなどが挙げられ、中でもアゾジカルボンアミドが好ましい。なお、熱分解型発泡剤は単独でも二種類以上が併用されていてもよい。
【0055】
前記熱分解型発泡剤の添加量は、ポリオレフィン系発泡体の発泡倍率に応じて適宜決定してよいが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して1質量部〜40質量部であることが好ましく、1質量部〜30質量部であることが、所望の発泡倍率に調整することが容易で、粘着テープの前記変位量を所定範囲に調整しやすいため好ましい。
【0056】
前記発泡体基材としては、意匠性、遮光性、隠蔽性、光反射性、耐光性等を備えた粘着テープを得るうえで、着色された発泡体基材を使用してもよい。前記着色の際には、従来知られる着色剤を、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0057】
粘着テープに遮光性や隠蔽性や耐光性を付与する場合、前記発泡体基材としては、黒色に着色されたものを使用することが好ましい。
【0058】
前記黒色の着色剤としては、例えばカーボンブラック、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素などを用いることができる。なかでも、前記着色剤としては、コスト、入手性、絶縁性、ポリオレフィン系樹脂組成物を押し出す工程や加熱発泡工程の温度に耐えうるレベルの耐熱性の観点から、カーボンブラックを使用することが好ましい。
【0059】
また、前記粘着テープに意匠性や光反射性などを付与する場合、前記発泡体基材としては、白色に着色されたものを使用することが好ましい。
【0060】
前記白色着色剤としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化イットリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、亜鉛華、タルク、シリカ、アルミナ、クレー、カオリン、リン酸チタン、マイカ、石膏、ホワイトカーボン、珪藻土、ベントナイト、リトポン、ゼオライト、セリサイト、などの無機系白色着色剤やシリコーン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子などの有機系白色着色剤などを用いることができる。なかでも、前記着色剤としては、コスト、入手性、色調、発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物を押し出す工程や加熱発泡工程の温度に耐える耐熱性の観点から、酸化チタンや酸化アルミニウムや酸化亜鉛を使用することが好ましい。
【0061】
前記発泡体基材は、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、酸化亜鉛などの発泡助剤、気泡核調整材、熱安定剤、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの難燃剤、帯電防止剤、ガラス製やプラスチック製の中空バルーン・ビーズ、金属粉末、金属化合物等の充填材、導電性フィラー、熱伝導性フィラーなどの公知のものを含有するものであってもよい。
【0062】
なお、前記着色剤や熱分解性発泡剤や発泡助剤等は、色の濃淡ムラなどの外観不良や、過剰な発泡や無発泡などの発泡不良を防止するうえで、ポリオレフィン系樹脂、または、前記ポリオレフィン系樹脂と相溶しやすい他の熱可塑性樹脂によってマスターバッチ化されていることが好ましい。
【0063】
ポリオレフィン系発泡体基材を架橋させる方法としては、例えば、ポリオレフィン系発泡体基材に電離性放射線を照射する方法、発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、得られたポリオレフィン系発泡体基材を加熱して有機過酸化物を分解させる方法などが挙げられ、これらの方法は併用されてもよい。
【0064】
電離性放射線としては、電子線、α線、β線、γ線などが挙げられる。電離性放射線の線量は、ポリオレフィン系発泡体基材の架橋度が前記の好ましい範囲になるように適宜調整できるが、5kGy〜200kGyの範囲であることが好ましい。また、電離性放射線の照射は、均一な発泡状態を得やすいことから、ポリオレフィン系発泡体基材の両面に照射するのが好ましく、両面に照射する線量を同じにするのがより好ましい。
【0065】
有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネートなどが挙げられ、これらは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0066】
前記有機過酸化物は、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、0.01質量部〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.1質量部〜3質量部の範囲であることが、前記有機過酸化物の分解残渣の残留を抑制でき、粘着テープの厚さ方向に圧縮した際の前記変位量を所定の範囲に設定しやすいため好ましい。
【0067】
また、ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させる方法としては、特には限定されず、例えば、熱風により加熱する方法、赤外線により加熱する方法、塩浴による方法、オイルバスによる方法などが挙げられ、これらは併用してもよい。なかでも熱風により加熱する方法や赤外線により加熱する方法が、ポリオレフィン系発泡体基材の表裏面の外観の差異が少なくなるため好ましい。
【0068】
前記発泡体基材は、延伸されていてもよい。前記延伸は、ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて発泡体基材を得た後に行ってもよいし、ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させる際に行ってもよい。
【0069】
ポリオレフィン系樹脂シートを発泡させて発泡体基材を得た後、発泡体基材を延伸する場合、発泡体基材を冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡体基材を延伸しても、発泡体基材を冷却した後、再度、発泡シートを加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡体基材を延伸してもよい。
【0070】
前記発泡体基材の溶融状態とは、発泡体基材を、発泡体基材を構成しているポリオレフィン系樹脂の融点以上に加熱した状態をいう。また、発泡体基材の軟化とは、発泡体基材を構成しているポリオレフィン系樹脂の軟化点以上融点未満までの温度に加熱した状態をいう。上記発泡体基材を延伸することによって、発泡体基材の気泡を所定方向に延伸し変形させて、気泡のアスペクト比が所定範囲内となったポリオレフィン系発泡体を製造することができる。
【0071】
前記発泡体基材の延伸方向は、長尺状のポリオレフィン系樹脂シートの流れ方向若しくは幅方向に向かって、又は、流れ方向および幅方向であることが好ましい。なお、発泡体基材を流れ方向および幅方向に向かって延伸させる場合、発泡体基材を流れ方向および幅方向に向かって同時に延伸してもよいし、一方向ずつ別々に延伸してもよい。
【0072】
上記発泡体基材を流れ方向に延伸する方法としては、例えば、長尺状のポリオレフィン系樹脂シートを発泡工程に供給する速度(供給速度)よりも、発泡後に長尺状のポリオレフィン系樹脂シートを冷却しながら巻き取る速度(巻取速度)を速くすることによって発泡体基材を流れ方向に延伸する方法、得られた発泡体基材を延伸工程に供給する速度(供給速度)よりも、発泡体基材を巻き取る速度(巻取速度)を速くすることによって発泡体基材を流れ方向に延伸する方法などが挙げられる。
【0073】
前記ポリオレフィン系樹脂シートは、それ自身の発泡によって流れ方向に膨張しやすいため、前記ポリオレフィン系樹脂シートを用いて得られた発泡体基材を流れ方向に延伸する場合には、ポリオレフィン系樹脂シートの発泡による流れ方向への膨張分を考慮し、その膨張分以上に、ポリオレフィン系樹脂シートが流れ方向に延伸されるように、発泡体基材の供給速度と巻取り速度とを調整することが好ましい。
【0074】
前記発泡体基材を幅方向に延伸する方法としては、発泡体基材の幅方向の両端部を一対の把持部材によって把持し、この一対の把持部材を互いに離間する方向に徐々に移動させることによって発泡体基材を幅方向に延伸させる方法が好ましい。なお、ポリオレフィン系樹脂シートは、それ自身の発泡によって幅方向に膨張するので、発泡体基材を幅方向に延伸する場合には、ポリオレフィン系樹脂シートの発泡による幅方向への膨張分を考慮した上で、その膨張分以上に発泡体基材が幅方向に延伸されるように調整することが好ましい。
【0075】
前記発泡体基材の流れ方向における延伸倍率は1.1〜5倍が好ましく、1.3〜3.5倍がより好ましい。また、その幅方向における延伸倍率は1.2〜4.5倍が好ましく、1.5〜3.5倍がより好ましい。
【0076】
前記発泡体基材としては、粘着剤層や他の層との密着性を向上させるため、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理、易接着処理等の表面処理の施されたものを使用することができる。
【0077】
前記表面処理された発泡体基材の表面は、ぬれ試薬によるぬれ指数が36mN/m以上であることが好ましく、40mN/m以上であることが好ましく、48mN/m以上であることが、粘着剤層等との良好な密着性を維持するうえでさらに好ましい。
【0078】
密着性を向上させた発泡体基材は、連続工程で粘着剤層と貼り合わされてもよい。また、密着性を向上させた発泡体基材は一旦巻き取り加工をして保管したのち、後日粘着剤層と貼り合わされてもよい。
【0079】
なお、密着性を向上させた発泡体基材を一旦巻き取る場合、前記発泡体基材のブロッキングを防止するうえで、紙やポリエチレンやポリプロピレンやポリエステル等からなるフィルムを介して巻き取ることが好ましい。前記フィルムは、厚さ25μm以下のポリプロピレンフィルムやポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0080】
[粘着剤層]
本発明の粘着テープを構成する粘着剤層は、粘着剤を用いて形成することができる。
【0081】
前記粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられるが、(メタ)アクリレートを含む単量体を重合して得られるアクリル系重合体と、必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤等の添加剤とを含有する(メタ)アクリル系粘着剤を好ましく使用できる。
【0082】
前記(メタ)アクリル系重合体を構成する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の、炭素原子数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを1種または2種以上が用いられる。なかでも、炭素原子数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数が4〜8の直鎖または分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが更に好ましい。特にn−ブチルアクリレートは、被着体との密着性を確保しやすく、凝集力や皮脂類への耐性に優れる粘着剤を得るうえで好ましい。
【0083】
前記(メタ)アクリレートは、前記アクリル系重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、80質量%〜98.5質量%の範囲で使用することが好ましく、90質量%〜98.5質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0084】
また、本発明に使用するアクリル系重合体を製造する際には、前記単量体として極性ビニル単量体を使用することができる。前記極性ビニル単量体としては、水酸基を有するビニル単量体、カルボキシル基を有するビニル単量体、アミド基を有するビニル単量体等を1種または2種以上使用することができる。
【0085】
水酸基を有するビニル単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートを使用できる。
【0086】
カルボキシル基を有するビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等を使用でき、なかでもアクリル酸を使用することが好ましい。
【0087】
また、アミド基を有するビニル単量体としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、等が挙げられる。
【0088】
その他の極性ビニル単量体として、酢酸ビニル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有単量体等があげられる。
【0089】
極性ビニル単量体は、前記アクリル系重合体の製造に使用する単量体の全量に対し1.5質量%〜20質量%の範囲で使用することが好ましく、1.5質量%〜10質量%の範囲で使用することがより好ましく、2質量%〜8質量%であることが更に好ましい。当該範囲で含有することにより、粘着剤の凝集力や保持力、接着性を好適な範囲に調整しやすい。
【0090】
なお、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いる場合は、これと反応する官能基を有するビニル単量体としては水酸基を有するビニル単量体が好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。イソシアネート系架橋剤と反応する水酸基を有するビニル単量体は、前記アクリル系重合体の製造に使用する単量体の全量に対し0.01質量%〜1.0質量%の範囲で使用することが好ましく、0.03質量%〜0.3質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0091】
アクリル系重合体は、前記単量体を、溶液重合法、隗状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法で重合することによって製造することができる。粘着剤の耐水性をより一層向上するうえで、溶液重合法や塊状重合法で製造することが好ましい。
【0092】
前記重合の開始方法としては、重合開始剤を使用する方法が挙げられる。前記重合開始剤としては、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物系の重合開始剤、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ系の熱重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系の光重合開始剤を使用することができる。
【0093】
上記アクリル系重合体の分子量は、ゲルパーミエッションクロマトグラフ(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算での重量平均分子量が、40万〜300万、好ましくは80万〜250万である。
【0094】
ここで、GPC法による分子量の測定は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8329GPC)を用いて測定される、スタンダードポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
【0095】
サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:100μl
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流速:1.0ml/分
測定温度:40℃
本カラム:TSKgel GMHHR−H(20)2本
ガードカラム:TSKgel HXL−H
検出器:示差屈折計
スタンダードポリスチレン分子量:1万〜2000万(東ソー株式会社製)
【0096】
前記粘着剤層の形成に使用する粘着剤としては、被着体との密着性や面接着強度をより一層向上することを目的として、粘着付与樹脂を使用することが好ましい。
【0097】
前記粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂、(メタ)アクリレート系粘着付与樹脂等を使用することができる。前記粘着剤としてエマルジョン型の粘着剤を使用する場合には、エマルジョン型の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。
【0098】
前記粘着付与樹脂としては、前記したなかでも不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、(メタ)アクリレート系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂を、1種または2種類以上使用することが好ましい。
【0099】
粘着付与樹脂の軟化点は、特に規定されないが30℃〜180℃、好ましくは70℃〜140℃である。軟化点の高い粘着付与樹脂を配合することで、高い接着性能が期待できる。(メタ)アクリレート系の粘着付与樹脂の場合は、ガラス転移温度が30℃〜200℃、好ましくは50℃〜160℃である。
【0100】
前記アクリル系重合体100質量部に対する粘着付与樹脂の使用量は、5質量部〜65質量部であることが好ましく、8質量部〜55質量部であることが好ましい。前記範囲の粘着付与樹脂を含有する粘着剤を使用することによって、被着体との密着性をより一層向上することができる。
【0101】
前記粘着剤は、粘着剤層の凝集力をより一層向上することを目的として、架橋剤と組み合わせ使用することが好ましい。
【0102】
前記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤等が挙げられる。なかでも、前記アクリル系重合体の重合終了後に添加でき、架橋反応を進行させるタイプの架橋剤を使用することが好ましく、(メタ)アクリル系重合体との反応性に富むイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を使用することが好ましく、発泡体基材との密着性をより一層向上するうえでイソシアネート系架橋剤を使用することがより好ましい。
【0103】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート等が挙げられる。特に好ましいのは、3官能のポリイソシアネート系化合物である。3官能のイソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパン付加体、トリフェニルメタンイソシアネート等が挙げられる。
【0104】
粘着剤層の架橋度合いの指標として、粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値が用いられる。ゲル分率は、好ましくは25質量%〜70質量%である。より好ましくは30質量%〜60質量%、更に好ましくは30質量%〜55質量%の範囲であれば、凝集性と接着性がともに良好である。
【0105】
なお、ゲル分率の測定は下記の方法によって行う。
【0106】
まず、剥離シート上に、乾燥後の厚さが50μmになるように、必要に応じて架橋剤を含有する粘着剤を塗工し、100℃で3分間乾燥し、40℃で2日エージングしたものを50mm角に切り取り、これを試料とする。
【0107】
次に、上記試料の質量(G1)を測定した後、前記試料をトルエン溶液中に23℃で24時間浸漬する。前記浸漬後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の質量(G2)を測定し、以下の式に従ってゲル分率が求められる。
【0108】
ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100
【0109】
前記粘着剤としては、必要に応じて、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、難燃剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ、金属粉末、金属酸化物、金属窒化物等の充填剤、顔料・染料等の着色剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の添加剤を使用することができる。
【0110】
本発明の粘着テープを構成する粘着剤層は、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が好ましくは温度が−40℃〜15℃であることが好ましい。粘着剤層の損失正接のピーク値を当該範囲とすることで、常温下での被着体との良好な密着性を付与しやすくなる。特に低温環境下での耐落下衝撃性の向上に際しては、−35℃〜10℃であることがより好ましく、−30℃〜6℃であることがさらに好ましい。
【0111】
周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)は、温度分散による動的粘弾性測定で得られた貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)から、tanδ=G”/G’の式より求められる。動的粘弾性の測定においては、粘弾性試験機(ティ・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:ARES G2)を用いて、厚さ約2mmに形成した粘着剤層を同試験機の測定部である直径8mmの平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hzで−50℃から150℃までの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)を測定する。
【0112】
前記粘着剤層の厚さは、被着体との密着性をより一層向上でき、かつ、より一層優れたタッチフィードバック特性を確保するうえで、10μm〜100μmの範囲であることが好ましく、20μm〜80μmの範囲であることがより好ましい。
【0113】
本発明の粘着テープは、例えば、発泡体基材に直接、または、発泡体基材上に積層された他の層の表面に、粘着剤を塗布して乾燥させる直写法、剥離シートに粘着剤を塗布して乾燥させた後、発泡体基材や他の層表面に貼り合せる転写法が挙げられる。
【0114】
前記粘着剤層を形成する際に、後述するアクリル系粘着剤を使用する場合には、好ましくは20℃〜50℃、より好ましくは23℃〜45℃の環境下で2〜7日間の熟成工程を行うと、発泡体基材と粘着剤層との密着性や粘着物性を安定させることができる。
【0115】
前記剥離シートとしては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルフィルムなどの合成樹脂フィルム、紙、不織布、布、発泡シートや金属箔、およびこれらのラミネート体などの基材の少なくとも片面に、粘着剤からの剥離性を高めるためのシリコーン系処理、長鎖アルキル系処理、フッ素系処理などの剥離処理が施されたものを使用することができる。
【0116】
なかでも、前記剥離シートとしては、厚さ10〜40μmのポリエチレンを両側にラミネートした上質紙、ポリエステルフィルムの基材の片面または両面に、シリコーン系剥離処理を施されたもの等を使用することが好ましい。
【0117】
前記方法等で得られた本発明の粘着テープは、前記発泡体基材の少なくとも一面、好ましくは両面に前記粘着剤層を有することにより、触覚フィードバックを与える振動発生装置を備えたタッチパネル装置ときょう体との固定に使用した場合であっても、好適にタッチフィードバック特性を付与することができる。したがって、本発明の粘着テープは、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等を備えた電子機器のうち、操作性向上や大型画面化がすすむスマートフォンやタブレット型パソコン、ノート型パソコン、電子手帳、携帯電話、PHS、デジタルカメラ、音楽プレーヤー、テレビ、ゲーム機、電子ペーパー等の電子機器の製造場面で好適に使用することができる。
【0118】
また、本発明の粘着テープによってタッチパネル装置ときょう体とが固定された物品は、落下等によって衝撃が加わった場合であっても、前記粘着テープを構成する発泡体基材が前記衝撃を吸収するため、良好な耐衝撃性を備える。したがって、前記粘着テープは、対角3.5インチ以上のタッチパネル装置の固定、特に単位接着面積あたりの質量が重いタッチパネル装置の固定に、好適に使用することができる。
【0119】
また、本発明の粘着テープは、被着体との好適な密着性と追従性とを有することから、密着隙間からの浸水や粉塵の浸入を効果的に防止でき、優れた防水および防滴、防塵機能を有する。
【0120】
本発明の粘着テープの実施形態としては、発泡体基材を中芯とし、発泡体基材の少なくとも一面、好ましくは両面に粘着剤層が設けられた構成を基本構成とする。発泡体基材と粘着剤層とは、直接積層されていても、他の層を介して積層されていてもよい。
【0121】
前記粘着テープは、前記発泡体基材及び粘着剤層以外に、必要に応じて他の層を有していてもよい。前記他の層としては、寸法安定性や引張強さやリワーク適性を備えた粘着テープを得る場合には、ポリエステルフィルムなどのラミネート層が挙げられる。また、前記他の層としては、遮光性または光反射性を備えた粘着テープを得る場合には印刷層、電磁波シールド特性や面方向の熱伝導性を備えた粘着テープを得る場合には、金属箔や金属メッシュ導電性の金属をメッキした不織布からなる層を有していてもよい。
【0122】
ラミネート層としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のフィルムを使用することができる。
【0123】
前記ラミネート層の厚さは、特に規定されないが、発泡体基材に対する良好な追従性を確保するうえで、1μm〜25μmの範囲であることが好ましく、2μm〜12μmの範囲だえることがより好ましい。発泡体基材とラミネート層とを接着する場合、従来公知の粘着剤やドライラミネート用の接着剤を使用することができる。
【0124】
遮光層としては、顔料等の着色剤を含有するインキによって印刷された層が挙げられ、黒インキを用いて印刷された層を好ましく使用することができる。
【0125】
前記反射層としては、顔料等の着色剤を含有するインキによって印刷された層が挙げられ、白色インキを用いて印刷された層を好ましく使用することができる。
【0126】
前記遮光層や反射層の厚さは、2μm〜20μmであることが好ましく、4μm〜6μmであることが、前記インキの硬化収縮に起因した粘着テープのカール発生を抑制することができるため好ましい。
【実施例】
【0127】
(粘着剤組成物(A)の調製)
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート93.8質量部、アクリル酸3.1質量部、酢酸ビニル3質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部とを、酢酸エチル100質量部からなる溶剤に溶解し、70℃で12時間重合して、重量平均分子量が160万(ポリスチレン換算)のアクリル系共重合体(1)の溶剤溶液を得た。
【0128】
次に、アクリル系共重合体(1)100質量部に対し、「スーパーエステルA100」(荒川化学工業株式会社製、不均化ロジンのグリセリンエステル)9質量部と、「ハリタックPCJ」(ハリマ化成株式会社製、重合ロジンのペンタエリスリトールエステル)10質量部を添加し、酢酸エチルを加えて均一に混合し、不揮発分38質量%の粘着剤組成物(A)を得た。
【0129】
(粘着剤組成物(B)の調製)
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート97.95質量部、アクリル酸2.0質量部、4−ヒドロキブチルアクリレート0.05質量部、重合開始剤として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部とを、酢酸エチル100質量部からなる溶剤に溶解し、70℃で12時間重合して、重量平均分子量が200万(ポリスチレン換算)のアクリル系共重合体(2)の溶剤溶液を得た。
【0130】
次に、アクリル系共重合体(2)100質量部に対し、「スーパーエステルA100」(荒川化学工業株式会社製、不均化ロジンのグリセリンエステル)25質量部と、「ペンセルD135」(荒川化学工業株式会社製、重合ロジンのペンタエリスリトールエステル)5質量部、FTR6100(三井化学株式会社製、スチレン系石油樹脂)20質量部を添加し、酢酸エチルを加えて均一に混合し、不揮発分40質量%の粘着剤組成物(B)を得た。
【0131】
(粘着剤組成物(C)の調製)
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート44.9質量部、2−エチルヘキシルアクリレート50質量部、酢酸ビニル3質量部、アクリル酸2質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部とを、酢酸エチル100質量部からなる溶剤に溶解し、70℃で12時間重合して、重量平均分子量が120万(ポリスチレン換算)のアクリル系共重合体(3)の溶剤溶液を得た。
【0132】
次に、アクリル系共重合体(3)100質量部に対し、「ペンセルD135」(荒川化学工業株式会社製、重合ロジンのペンタエリスリトールエステル)10質量部を添加し、酢酸エチルを加えて均一に混合し、不揮発分45質量%の粘着剤組成物(C)を得た。
【0133】
(粘着剤組成物(D)の調製)
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート71.9質量部、2−エチルヘキシルアクリレート20質量部、アクリル酸5質量部、メチルアクリレート3質量部、2−ヒドロキエチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部とを、酢酸エチル100質量部からなる溶剤に溶解し、70℃で12時間重合して、重量平均分子量が120万(ポリスチレン換算)のアクリル系共重合体(4)の溶剤溶液を得た。
【0134】
次に、アクリル系共重合体(4)100質量部に対し、「ペンセルD135」(荒川化学工業株式会社製、重合ロジンのペンタエリスリトールエステル)20質量部、T160(ヤスハラケミカル株式会社製、テルペンフェノール)10質量部を添加、酢酸エチルを加えて均一に混合し、不揮発分45質量%の粘着剤組成物(D)を得た。
【0135】
[実施例1]
(両面粘着テープの調製)
上記粘着剤組成物(A)100質量部と、「コロネートL−45」(日本ポリウレタン工業株式会社製、イソシアネート系架橋剤、固形分45質量%)1.1質量部とを混合し、15分攪拌したものを、剥離処理した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の剥離処理面に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、80℃で3分間乾燥することによって粘着剤層を形成した。なお、前記粘着剤層を、40℃で48時間熟成した場合のその粘着剤層のゲル分率は48質量%、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は−17℃であった。
【0136】
次に、黒色ポリオレフィン系発泡体(1)(厚さ500μm、見かけ密度0.10g/cm、25%圧縮強度:39kPa、流れ方向の引張強さ:219N/cm、幅方向の引張強さ:178N/cmである積水化学工業株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数60mN/mとしたもの)からなる基材の両面に、前記熟成前の粘着剤層を1枚ずつ貼り合わせたのち、23℃下線圧5kg/cmのロールでラミネートした。その後、40℃で48時間熟成し、厚さ600μmの両面粘着テープを得た。
【0137】
なお、前記発泡体の厚さは、尾崎製作所製ダイヤルシクネスゲージG型を用いて測定した。前記両面粘着テープの厚さは、離型フィルムを除去した状態で尾崎製作所製ダイヤルシクネスゲージG型を用いて測定した。また、前記発泡体の引張強さは、前記発泡体を標線間隔2cm(発泡体基材の流れ方向、幅方向)、幅1cmの大きさに裁断して得た試験片を、引張速度300mm/分で引っ張り、切断した際の強度を測定した。実施例2以降で使用した発泡体の厚さ及び引張強さ、ならびに、両面粘着テープの厚さも上記と同様の方法で測定した。
【0138】
[実施例2]
粘着剤組成物(A)の代わりに粘着剤組成物(B)を使用し、「コロネートL−45」(日本ポリウレタン工業株式会社製、イソシアネート系架橋剤、固形分45質量%)の使用量を1.1質量部から1.33質量部に変更すること以外は、実施例1と同一の方法で、厚さ600μmの両面粘着テープを得た。なお、40℃で48時間熟成した後の粘着剤層のゲル分率は37質量%、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は2℃であった。
【0139】
[実施例3]
粘着剤組成物(A)の代わりに粘着剤組成物(C)を使用し、「コロネートL−45」(日本ポリウレタン工業株式会社製、イソシアネート系架橋剤、固形分45質量%)の使用量を1.1質量部から1.0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で、厚さ600μmの両面粘着テープを得た。なお、40℃で48時間熟成した後の粘着剤層のゲル分率は42質量%、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は−28℃であった。
【0140】
[実施例4]
粘着剤組成物(A)の代わりに粘着剤組成物(D)を使用し、「コロネートL−45」(日本ポリウレタン工業株式会社製、イソシアネート系架橋剤、固形分45質量%)の使用量を1.1質量部から1.6質量部に変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で、厚さ600μmの両面粘着テープを得た。なお、40℃で48時間熟成した後の粘着剤層のゲル分率は40質量%、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は−5℃であった。
【0141】
[実施例5]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(2)(厚さ:500μm、見かけ密度0.07g/cm、25%圧縮強度:32kPa、流れ方向の引張強さ:160N/cm、幅方向の引張強さ:132N/cm、である積水化学工業株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数54mN/mとしたもの)を用いたこと以外は、実施例4と同一の方法で厚さ600μmの両面粘着テープを得た。
【0142】
[実施例6]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに白色ポリオレフィン系発泡体(1)(厚さ:600μm、見かけ密度0.10g/cm、25%圧縮強度:52kPa、流れ方向の引張強さ:215N/cm、幅方向の引張強さ:115N/cm、である積水化学工業株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数54mN/mとしたもの)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ700μmの両面粘着テープを得た。
【0143】
[実施例7]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(3)(厚さ:800μm、見かけ密度0.13g/cm、25%圧縮強度:74kPa、流れ方向の引張強さ:262N/cm、幅方向の引張強さ:167N/cm、である積水化学工業株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数54mN/mとしたもの)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ900μmの両面粘着テープを得た。
【0144】
[実施例8]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色エチレン−酢酸ビニル共重合体系発泡体(1)(厚さ:1100μm、見かけ密度0.13g/cm、25%圧縮強度:59kPa、流れ方向の引張強さ:202N/cm、幅方向の引張強さ:145N/cm、である東レ株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数54mN/mとしたもの)を用い、乾燥後の粘着剤層の厚さを50μmから75μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ1250μmの両面粘着テープを得た。
【0145】
[実施例9]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色エチレン−酢酸ビニル共重合体系発泡体(2)(厚さ:800μm、見かけ密度0.13g/cm、25%圧縮強度:52kPa、流れ方向の引張強さ:223N/cm、幅方向の引張強さ:164N/cm、である東レ株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数54mN/mとしたもの)を用いたこと以外は、実施例8と同一の方法で厚さ950μmの両面粘着テープを得た。
【0146】
[実施例10]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(4)(厚さ:400μm、見かけ密度0.12g/cm、25%圧縮強度:43kPa、流れ方向の引張強さ:223N/cm、幅方向の引張強さ:164N/cm、である積水化学工業株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数54mN/mとしたもの)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ500μmの両面粘着テープを得た。
【0147】
[比較例1]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(5)(厚さ:500μm、見かけ密度0.14g/cm、25%圧縮強度:98kPa、流れ方向の引張強さ:414N/cm、幅方向の引張強さ:246N/cm、である積水化学工業株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数54mN/mとしたもの)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ600μmの両面粘着テープを得た。
【0148】
[比較例2]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(6)(厚さ:600μm、見かけ密度0.13g/cm、25%圧縮強度:86kPa、流れ方向の引張強さ:380N/cm、幅方向の引張強さ:220N/cm、である積水化学工業株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数54mN/mとしたもの)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ700μmの両面粘着テープを得た。
【0149】
[比較例3]
粘着剤層の乾燥後の厚さを50μmから75μmに変更したこと以外は、比較例2と同一の方法で厚さ750μmの両面粘着テープを得た。
【0150】
上記実施例及び比較例にて使用した発泡体基材、上記実施例及び比較例で得られた両面粘着テープについて、以下の評価を行った。得られた結果を下表に示す。
【0151】
[発泡体基材と粘着テープ厚さ]
発泡体基材の厚さは、尾崎製作所製のダイヤルシクネスゲージG型を用いて測定した。粘着テープの厚さは、剥離フィルムを剥がしたものの厚さを、ダイヤルシクネスゲージG型を用いて測定した。
【0152】
[引張強さ]
標線間隔2cm(発泡体基材の流れ方向、幅方向)、幅1cmの試験片に加工した発泡体基材を、引張速度300mm/分で引っ張り、切断した際の強度を測定した。
【0153】
[切断伸度]
標線間隔2cm(発泡体基材の流れ方向、幅方向)、幅1cmの試験片に加工した発泡体基材を、引張速度300mm/分で引っ張り、切断した際の伸度を測定した。
【0154】
[発泡体基材の流れ方向及び幅方向の平均気泡径]
発泡体基材を流れ方向、幅方向とも約1cmに切断し、切断した発泡体基材の切断面中央部分をマイクロスコープ(商品名「KH−7700」、HIROX社製)で200倍に拡大したのち、発泡体基材の切断面がその基材厚さ方向の全長に亘って写真に納まるように、発泡体基材の幅方向または流れ方向の断面を写真撮影した。得られた写真において、流れ方向または幅方向の拡大前の実際の長さが2mm分の切断面に存在する気泡径を全て測定し、その平均値から平均気泡径を算出した。これを、任意の10カ所で測定し、その平均値を流れ方向(MD)及び幅方向(CD)の平均気泡径とした。
【0155】
[圧縮変位量]
1)23℃で、厚さ9mmで10cm角の平滑なアルミ板に、2cm角の粘着テープを貼付して、剥離シートを除去した状態で23℃24時間放置して試験片とした。
【0156】
2)次に、直径7mmのステンレス製プローブを取り付けた引張試験機で、粘着テープを「0.5mm/分」の速度で押し、5N/cmで圧縮した際の変位量を測定した。
【0157】
[粘着テープのtanδのピーク値]
粘弾性試験機(ティ・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:ARES G2)を用いて、直径8mmの円に加工した粘着テープ1枚を同試験機の測定部である直径8mmの平行円盤の間に挟み込み、周波数1Hz、昇温速度2℃/分で−50℃から150℃までの損失正接(tanδ=損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’))を測定して極大値を求める。なお、ピークが2つ以上存在する場合は、値が大きい方を採用した。
【0158】
[タッチフィードバック特性]
1)上記で得た両面粘着テープを用いて、外形64mm×43mm、幅2mmの額縁状サンプルを作成し、厚さ2mm、外形65mm×45mmのアクリル板1に貼付した。
【0159】
2)次に、厚さ2mm、外形100mm×50mmのアクリル板2の中央に、両面粘着テープつきアクリル板の両面粘着テープ側をのせた後、端部から2kgローラーで1往復加圧し、23℃で24時間静置して試験片とした。
【0160】
3)一方、ポリエステルフィルム中芯の両面粘着テープ(フィルム:厚さ25μm、透明、粘着剤層:乾燥後の厚さが88μmとした以外は実施例1と同じにして作成)を用いた事以外は、操作1)、2)と同様にして比較用の試験片を作成した。
【0161】
4)アクリル板1の上面の短辺側の端部に圧電素子を接着したのち、アクリル板1を上にした状態で、試験片のアクリル板2の長辺部分を被験者の片手で把持する。把持した状態で圧電素子に通電して試験片を振動させた際の、アクリル板2の振動状態を評価した。
【0162】
5)3)で作成した比較用の試験片を振動させた際の状態と比較して、減衰効果を下記基準にて評価した。
【0163】
◎大幅に減衰した
○:減衰した。
【0164】
×:ほとんど減衰なし。
【0165】
6)被験者5人により当該評価を実施し、最も多い評価結果を各試験片の評価結果とした。
【0166】
[面接着強度]
1)23℃で、厚さ2mmで、50mm角のアクリル板(三菱レイヨン(株)アクリライトMR200「商標名」、色相:透明)に、上記で得た両面粘着テープを幅5mm、長さ40mmとした両面粘着テープ2枚を40mm間隔で平行に貼付した(図1)。
【0167】
2)次に、中心部に直径10mmの穴がある、厚さ2mm、100×150mmの長方形のABS板(住友ベークライト(株)製タフエースR EAR003、色相:ナチュラル、シボなし)に、1)で作成した両面粘着テープつきアクリル板を、アクリル板の中心とABS板の中心が一致する様に貼付して、2kgローラーで1往復加圧したのち、23℃で1時間静置して試験片とした(図2)。
【0168】
3)試験片のABS側からABS板の穴を通して、直径8mmのステンレス製プローブを取り付けた引張試験機でアクリル板を10mm/分で押し、アクリル板が剥がれる強度を測定した(図3)。
【0169】
[耐衝撃性試験]
1)厚さ2mm、外形50mm×50mmのアクリル板(三菱レイヨン(株)アクリライトL「商標名」、色相:透明)に、長さ40mm、幅5mmの2枚の両面粘着テープの弱粘着面を40mmの間隔をあけて平行に貼付(図1)したのち、厚さ2mm、外形150mm×100mmのABS板(住友ベークライト社製、タフエースR「商標名」色相:ナチュラル、シボなし、以下同じ)の中央部に貼付した(図2)。2kgローラーで1往復加圧したのち、23℃で1時間静置して試験片とした。
【0170】
2)デュポン式衝撃試験機(テスター産業株式会社製)の台座の上に、長さ150mm、幅100mm、高さ45mmのコの字型測定台(厚さ5mmのアルミ製)を設置し、その上に試験片を、アクリル板を下向きにして載せた(図3)。ABS板側から直径15mm、質量300g、打撃を与える側の先端端部が曲率3/16インチのステンレス製の撃芯を、高さを10cmからABS板側の中心部分に10秒間隔で5回落下させ、試験片にテープの剥がれや破壊の有無を評価した。テープに剥がれや破壊がない場合は、落下する高さを10cm間隔で上げて5回連続落下を繰り返し、テープの剥がれや破壊が認められた時の高さを測定した。
【0171】
◎:高さ80cm試験後もテープの剥がれおよび破壊なし
○:高さ50〜70cm試験後にテープの剥がれまたは破壊が生じた
×:高さ40cm以下の試験後にテープの剥がれ又は破壊が生じた
【0172】
[防水性試験]
1)上記で得た両面粘着テープを用いて、外形64mm×43mm、幅2mmの額縁状サンプルを作成し、厚さ2mm、外形65mm×45mmのアクリル板1に貼付した。
【0173】
2)次に、もう一枚の厚さ2mm、外形65mm×45mmのアクリル板2の中央に、両面粘着テープつきアクリル板の両面粘着テープ側をのせた後、端部から2kgローラーで1往復加圧、23℃で24時間静置して試験片とした。
【0174】
3)試験片を水深1mに30分静置(JISC0920のIPX7準拠)した後に、額縁状両面粘着テープの額縁内への浸水の有無を評価した。
【0175】
○:浸水なし
×:浸水あり
【0176】
【表1】
【0177】
【表2】
【0178】
上記実施例1〜10のとおり、本発明の粘着テープは、触覚フィードバック機能を有するタッチパネル装置の固定に使用した場合に、好適な触覚フィードバック機能を実現できる。また、優れた落下衝撃耐性や追従性を有するものであった。一方、比較例1〜3の粘着テープは、振動特性や充分な耐性が無いものであった。
【符号の説明】
【0179】
1 粘着テープ
2 アクリル板
3 ABS板
4 コの字型測定台
5 撃芯
図1
図2
図3