特許第5700179号(P5700179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5700179セルロースナノファイバー含有組成物の製造方法及び成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5700179
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】セルロースナノファイバー含有組成物の製造方法及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20150326BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20150326BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20150326BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20150326BHJP
   C08L 67/06 20060101ALI20150326BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20150326BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20150326BHJP
   C08F 251/02 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   C08J3/12 ACEP
   D21H11/18
   C08J5/04
   C08L1/02
   C08L67/06
   C08F2/44 C
   C08F299/06
   C08F251/02
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-550559(P2014-550559)
(86)(22)【出願日】2014年5月20日
(86)【国際出願番号】JP2014063303
【審査請求日】2014年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-207475(P2013-207475)
(32)【優先日】2013年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】生熊 崇人
(72)【発明者】
【氏名】原田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】神崎 満幸
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5273313(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/125801(WO,A1)
【文献】 特開2013−116928(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/122209(WO,A1)
【文献】 特開2013−129767(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031391(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/147062(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
C08J99/00
B29B11/16
B29B15/08−15/14
C08J 5/04− 5/10
C08J 5/24
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C08B 1/00−37/18
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法であって、
反応性二重結合を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物の存在下でセルロースの微細化を行うに際し、
該セルロースの水分率を0%に換算したときの該セルロース100質量部に対する水分量を4〜25質量部とすることを特徴とするセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記セルロースの水分率を0%に換算した該セルロース100質量部に対して、
前記反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物が40質量部以上250質量部以下である請求項1に記載のセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
更に反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物の存在下でセルロースの微細化を行ってセルロースナノファイバー含有組成物を製造する、請求項1に記載のセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記セルロースの水分率を0%に換算した該セルロース100質量部に対して、
前記反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物が10質量部以上であり、かつ、
該反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と前記反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物との合計が40質量部以上250質量部以下である請求項3に記載のセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
更に反応性二重結合基を有する化合物にて希釈する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
更に重合開始剤を含有させる工程を含む請求項5に記載のセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により得られたセルロースナノファイバー含有樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性二重結合基を有する化合物へ複合化することができる高機能フィラーとしてのセルロースナノファイバー含有組成物の製造方法及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発されたセルロースナノファイバーは、植物由来の天然原料ナノフィラーであり、低比重かつ高強度な樹脂用複合材料として注目されている(特許文献1参照)。
しかしながら、水酸基を多く持つセルロースをナノレベルまで微細化するには、現在の技術では水中で解繊を行う必要がある。この水中解繊セルロースナノファイバーを各種樹脂へと複合化するには、製造されたセルロースナノファイバーの脱水工程及び溶剤置換工程が必須となっている。また、セルロースは分子間水素結合を形成しやすいため、セルロースナノファイバー脱水工程中に再凝集してしまい、樹脂中での分散が不良となっていた。
【0003】
これらの問題を解決する為、水中ではなく有機溶剤中でセルロースを微細化し、セルロースナノファイバーを製造する技術が報告されている(特許文献2参照)。この技術により、水を必要としないため乾燥のコストが削減されるとしているが、樹脂に複合化する際にはまず有機溶媒中で分散し、ナノ化した後に改めて有機溶剤を除去する工程が必要であり、ナノファイバーの煩雑な製造工程が改良されたとはいまだ言えない。
つまり、セルロースナノファイバーを、より安価でかつ簡単な工程で各種樹脂に複合化できるような技術の確立が求められている。
【0004】
また、溶剤を使用せず樹脂中でセルロースを微細化し、セルロースナノファイバーを製造する技術が報告されている(特許文献3参照)。この技術により、樹脂中にセルロースナノファイバーを複合することは大変容易となる。しかしながら、特許文献3で使用されているポリエステル樹脂や特許文献4で使用されているアクリル樹脂は、反応性二重結合基を有する樹脂を硬化させる際は反応することがなく、未硬化物として成形体中に残留することにより可塑剤として働き成形体の物性低下を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−42283号公報
【特許文献2】特開2009−261993号公報
【特許文献3】国際公開第2012/043558号
【特許文献4】特開2013−116928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、溶剤置換工程や脱溶剤といった工程をまったく必要としない簡易な製造方法で、反応性二重結合基を有する化合物への複合化が容易かつ成形物中に可塑剤として働く未硬化物が少ないセルロースナノファイバー及び、該セルロースナノファイバーを用いた高強度な樹脂組成物及び成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、水中や有機溶媒中でセルロースを微細化するのではなく、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物の存在下でセルロースを微細化できることを見出した。また、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物の存在下でセルロースを微細化できることを見出した。さらに、この方法により得られたセびルロースナノファイバー含有樹脂組成物は、セルロースの修飾等を必要とせずに、他の希釈用樹脂にそのまま複合化することが容易であり、成形後に可塑剤として働く未硬化物が非常に少ないことを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法であって、反応性二重結合を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物の存在下でセルロースの微細化を行うに際し、該セルロースの水分率を0%に換算したときの質量100質量部に対する水分量を4〜25質量部とすることを特徴とするセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0009】
さらに、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対して、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物が40質量部以上250質量部以下である上記セルロースナノファイバーの製造方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法であって、反応性二重結合を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物の存在下でセルロースの微細化を行うに際し、該セルロースの水分率を0%に換算したときの質量100質量部に対する水分量を4〜25質量部とすることを特徴とするセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0011】
さらに、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対して、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物が10質量部以上であり、かつ反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と、応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物との合計が40質量部以上250質量部以下である請求項3に記載のセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0012】
さらに、反応性二重結合基を有する化合物にて希釈する工程を含むセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0013】
さらに、重合開始剤を含有する工程を含むセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0014】
さらに、前記製造方法により製造されたセルロースナノファイバー含有樹脂組成物の成形体を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水中や有機溶媒中でセルロースを微細化するのではなく、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物の存在下でセルロースを微細化することが可能である。さらに、この方法により得られたセルロースナノファイバー含有樹脂組成物は、溶剤置換や有機溶剤の除去操作を必要とせずに、他の希釈用樹脂にそのまま複合化することが可能であり、簡便かつ良好なセルロースナノファイバー複合化樹脂組成物を得ることができる。また、得られた樹脂組成物はそのまま成形体を製造することが可能であり、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物は硬化時に可塑剤として働く未硬化物とならないため物性低下を起こすことなく、セルロースナノファイバーの効果により、高強度な成形体を得ることが可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、反応性二重結合を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と、反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物の存在下でセルロースを微細化することが可能である。反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物を併用することにより、親水性化合物である反応性二重結合を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物を減らすことができ、吸湿性を避けたい用途にも使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の記載は本発明の実施形態の一例であり、本記載に限定されるものではない。
【0018】
〔セルロースの種類〕
本発明におけるセルロースナノファイバーは、各種セルロースを微細化する事で得られる。本発明におけるセルロースは、微細化材料として利用可能なものであればよく、パルプ、綿、紙、レーヨン・キュプラ・ポリノジック・アセテートなどの再生セルロース繊維、バクテリア産生セルロース、ホヤなどの動物由来セルロースなどが利用可能である。
また、これらのセルロースは必要に応じて表面を化学修飾処理したものであってもよい。
【0019】
パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ双方を好適に使用できる。木材パルプとしては、機械パルプと化学パルプとあり、リグニン含有量の少ない化学パルプのほうが好ましい。化学パルプにはサルファイドパルプ、クラフトパルプ、アルカリパルプなどがあるが、いずれも好適に使用できる。非木材パルプとしては、藁、バガス、ケナフ、竹、葦、楮、亜麻などいずれも利用可能である。
【0020】
綿は主に衣料用繊維に用いられる植物であり、綿花、綿繊維、綿布のいずれも利用可能である。
【0021】
紙はパルプから繊維を取り出し漉いたもので、新聞紙や廃牛乳パック、コピー済み用紙などの古紙も好適に利用できる。
【0022】
また、微細化材料のセルロースとして、セルロースを破砕し一定の粒径分布を有したセルロース粉末を用いても良く、日本製紙ケミカル社製のKCフロック(登録商標)、旭化成ケミカルズ社性のセオラス(登録商標)、FMC社製のアビセル(登録商標)などが挙げられる。
【0023】
〔反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物の存在下でのセルロースの微細化〕
セルロースの微細化は、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物とセルロースを混合し、機械的に箭断力を与えることにより行うことができる。箭断力を与える手段としては、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、グラインダー、加圧ニーダーなどが挙げられる。2本ロール等の公知の混練機等を用い剪断力を与えることができる。これらの中でも高粘度の樹脂中でも安定した剪断力を得られる観点から加圧ニーダーを用いることが好ましい。
【0024】
本発明において、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物とセルロースの比率は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対して反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物が40質量部以上250質量部以下が望ましい。反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物が多いと、試料がスラリー状となり、解繊できない。反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物が少ないと、セルロースが濡れないため、解繊が進まない。
【0025】
本発明において、水分量は水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対して4〜25質量部が望ましい。ここで言う水分量には、セルロースが元々含有していた水分量を含む。水分量が4質量部未満であるとセルロースが硬く凝集してしまい解繊できない。25質量部より多いときは、セルロースがすべての水分を吸収できないため、試料がスラリー状となり、解繊できない。
【0026】
〔水分率を0%に換算したセルロース質量の測定方法〕
株式会社ケット科学研究所製赤外線水分計FD−720を使用し、約5gのセルロースを110℃、自動停止モードの条件で加熱し、水分量の測定を行う。このときの水分量が5%であった場合、セルロース100質量部に対する、水分率を0%に換算したセルロースの質量は95質量部となる。以下、水分率を0%に換算したセルロースの質量はこの方法で測定を行う。
【0027】
〔反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物〕
本発明における反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物とは、反応性二重結合基を1個以上有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物のことをいう。反応性二重結合基とは、アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合などによって重合が可能な二重結合基のことをいい、反応性二重結合基として、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、などがあげられる。
【0028】
反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸―2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸―3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸―4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレートなどがあげられる。
【0029】
反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物は単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いてもかまわない。
【0030】
本発明において、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物が解繊中に重合しないように重合禁止剤を添加することが望ましい。
【0031】
重合禁止剤としては特に限定はないが、メトキノン、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、4−t−ブチルカテコール等が挙げられる
【0032】
本発明の微細化方法により、セルロースはセルロースナノファイバー化する。本発明の微細化方法では、例えば、長軸方向に100nm〜1000000nm、短軸方向に5nm〜1000nmに微細化することが可能である。
【0033】
〔反応性二重結合を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物の存在下でのセルロースの微細化〕
セルロースの微細化は、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物とセルロースを混合し、機械的に箭断力を与えることにより行うことができる。箭断力を与える手段としては、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、グラインダー、加圧ニーダーなどが挙げられる。2本ロール等の公知の混練機等を用い剪断力を与えることができる。これらの中でも高粘度の樹脂中でも安定した剪断力を得られる観点から加圧ニーダーを用いることが好ましい。
【0034】
本発明において、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対して10質量部以上が好ましい。反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物が10質量部以上存在すると、反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物とセルロースとの濡れ性がよくなり、セルロースの微細化が進行しやすい。
【0035】
本発明において、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物及び反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物の合計とセルロースの比率は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対して、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物との合計が、40質量部以上250質量部以下となることが望ましい。反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物が多いと、試料がスラリー状となり、解繊できない。反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物が少ないと、セルロースが濡れないため、解繊が進まない。
【0036】
本発明において、水分量は水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対して4〜25質量部が望ましい。ここで言う水分量には、セルロースが元々含有していた水分量を含む。水分量が4質量部未満であるとセルロースが硬く凝集してしまい解繊できない。25質量部より多いときは、セルロースがすべての水分を吸収できないため、反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物が乳化してしまい、解繊できない。
【0037】
〔反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物〕
本発明における反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物とは、反応性二重結合基を1個以上有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物のことをいう。反応性二重結合基とは、アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合などによって重合が可能な二重結合基のことをいい、反応性二重結合基として、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、などがあげられる。
【0038】
反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸―2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸―3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸―4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレートなどがあげられる。
【0039】
反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物は単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いてもかまわない。
【0040】
〔反応性二重結合基を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物〕
本発明における反応性二重結合基を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物とは、反応性二重結合基を1個以上有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物のことをいう。反応性二重結合基とは、アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合などによって重合が可能な二重結合基のことをいい、反応性二重結合基として、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、などがあげられる。
【0041】
反応性二重結合基を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物は、低分子量の化合物から高分子量の樹脂まで挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸−1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸−2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パ−フロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸−γ−ブチロラクトン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、フェノールEO変性アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、ビスフェノールF EO変性(n ≒ 2)ジアクリレート、ビスフェノールF PO変性(n ≒ 2)ジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミド、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトンなどがあげられる。
【0042】
反応性二重結合基を有する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などに反応性二重結合基を導入することにより得られる。反応性二重結合基の導入は公知・慣用の方法で行えばよく、特に限定されるものではない。
【0043】
例えば、ポリエステル樹脂に反応性二重結合基を導入する場合は、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂と(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させる方法などが挙げられる。
【0044】
アクリル樹脂の場合は、カルボキシル基を有するアクリル樹脂と(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させる方法や、グリシジル基を有するアクリル樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させる方法などが挙げられる。
【0045】
ウレタン樹脂の場合は、イソシアネート基を有するウレタン樹脂と(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの水酸基を有しかつ反応性二重結合基を有する化合物を反応させる方法などが挙げられる。
【0046】
反応性二重結合基を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物は単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いてもかまわない。
【0047】
本発明において、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物及び反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物が解繊中に重合しないように重合禁止剤を添加することが望ましい。
【0048】
重合禁止剤としては特に限定はないが、メトキノン、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、4−t−ブチルカテコール等が挙げられる
【0049】
本発明の微細化方法により、セルロースはセルロースナノファイバー化する。本発明の微細化方法では、例えば、長軸方向に100nm〜1000000nm、短軸方向に5nm〜1000nmに微細化することが可能である。
【0050】
上記製造方法で得られたセルロースナノファイバー含有樹脂組成物を、反応性二重結合基を有する化合物にて希釈すると、成形に適した樹脂組成物が得られる。
【0051】
セルロースナノファイバー含有樹脂組成物を、反応性二重結合基を有する化合物にて希釈する際は、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物をそのまま用いても良いが、乾燥して用いても良い。
【0052】
〔反応性二重結合基を有する化合物〕
本発明における反応性二重結合基を有する化合物とは反応性二重結合基を1個以上有する化合物のことをいう。反応性二重結合基とは、アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合などによって重合が可能な二重結合基のことをいい、反応性二重結合基として、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、などがあげられる。
【0053】
反応性二重結合基を有する化合物は、低分子量の化合物から高分子量の樹脂まで挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸―2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸―3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸―4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸―2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸―1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸―2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸−γ−ブチロラクトン、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、フェノールEO 変性アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、ビスフェノールF EO変性(n ≒ 2)ジアクリレート、ビスフェノールF PO変性(n ≒ 2)ジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミド、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトンなどがあげられる。
【0054】
反応性二重結合基を有する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などに反応性二重結合基を導入することにより得られる。反応性二重結合基の導入は公知・慣用の方法で行えばよく、特に限定されるものではない。
【0055】
例えば、ポリエステル樹脂に反応性二重結合基を導入する場合は、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂と(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させる方法などが挙げられる。
【0056】
アクリル樹脂の場合は、カルボキシル基を有するアクリル樹脂と(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させる方法や、グリシジル基を有するアクリル樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させる方法などが挙げられる。
【0057】
ウレタン樹脂の場合は、イソシアネート基を有するウレタン樹脂と(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの水酸基を有しかつ反応性二重結合基を有する化合物を反応させる方法などが挙げられる。
【0058】
反応性二重結合基を有する化合物は一種類を用いてもよく、複数種を組み合わせて用いても良い。
【0059】
前記セルロースナノファイバー含有樹脂組成物と反応性二重結合基を有する化合物の比率は、本発明の効果を損なわない範囲であれば任意である。
【0060】
前記樹脂組成物を成形するには、重合開始剤を混合する必要がある。重合開始剤を混合するタイミングはいつでもよく、反応性二重結合基を有する化合物で希釈する時や、反応性二重結合基を有する化合物で希釈した後、成形直前などが挙げられる。
【0061】
重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤等が挙げられる。
【0062】
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフインオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノン等が挙げられる。
【0063】
熱重合開始剤としては、イソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカネート、3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシ2エチルヘキサネート、t−へキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物や、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ化合物などが挙げられる。熱重合開始剤は単独で或いは2種類以上を併用しても良く、ナフテン酸コバルト,ジメチルアニリン等の分解促進剤を併用してもよい。
【0064】
〔その他の添加剤〕
前記樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、その用途に応じて従来公知の各種添加剤を含有しても良く、例えば、加水分解防止剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン等)、酸化防止剤、無機フィラー、有機フィラー等をあげることができる。
【0065】
その他の添加剤を混合するタイミングは、セルロースの解繊前、解繊後、反応性二重結合基を有する化合物で希釈する時や、反応性二重結合基を有する化合物で希釈した後等、発明の効果を損ねなければいつでもよい。
【0066】
〔成形方法〕
本発明の樹脂組成物に係る成形体を成形する方法については、特に限定されないがFRP製、樹脂製、ガラス製等の成形型に流し込んで作成する方法や、刷毛、ローラー、こて、スプレーなで塗布する方法が好ましい。
【0067】
〔用途〕
本発明における樹脂組成物は各種用途に好適に利用できる。例えば、床材、防水材、道路舗装材などに適用され、各々一般事務所、工場、クリーンルームなどの床や屋根、屋上、壁、高架橋床版などの防水やアスファルトおよびコンクリート道路面のカラーリング、遮熱塗装、滑り止め舗装などに用いられる。但しこれらに限定される物ではない。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
[合成例1] PPG系ウレタンメタクリレート樹脂の合成
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び環流冷却器を備えた1リットルの四つ口フラスコに数平均分子量1000のポリプロピレングリコール(以下PPGと略す)496gとトリレンジイソシアネート145gおよびイソホロンジイソシアネート33gを仕込み、窒素気流下80℃で4時間反応させた。NCO当量が600とほぼ理論当量値となったので、50℃まで冷却した。空気気流下、ハイドロキノン0.07gを加え、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと略す)134gを加え、90度で5時間反応させた。NCO%が0.1%以下となった時点で、ターシャリーブチルカテコール0.07g添加し、数平均分子量1666のウレタンメタクリレート樹脂組成物1を得た。この樹脂組成物の水酸基価を測定したところ、1KOHmg/g未満であった。
【0070】
〔水酸基価の測定〕
末端水酸基価、酸価は、13C−NMRスペクトルにおける、末端構造およびエステル結合に由来する各ピークの面積比から求めた。測定装置は、日本電子製JNM−LA300を用い、試料の10質量%の重クロロホルム溶液に緩和試薬としてCr(acac)3 10mgを加え、ゲートデカップリング法による13C−NMRの定量測定を行なった。積算は4000回行なった。
【0071】
(実施例1) セルロース微細化方法
HEMAを400gとターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」625gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物1を得た。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し4.2質量部であった。また、HEMAを合成例1に記載の水酸基価の測定法にて水酸基価を測定したところ、431KOHmg/gであった。
【0072】
〔微細化状態の判定〕
得られたセルロースナノファイバー含有組成物1を、セルロースが0.5量%の濃度となるようにアセトンに懸濁し、特殊機械工業(株)製TKホモミキサーA型を用いて15000rpm20分間分散処理を行い、一滴をガラス上に広げてアセトンを乾燥し、走査型電子顕微鏡にて10000倍の写真を10枚撮影した。写真の対角線上に直線を引き、直線に交差したセルロース繊維の繊維径を測定した。10枚すべての写真について同様の測定を行い、数平均繊維径を測定した。数平均繊維径が500nm未満である場合は、セルロースの微細化状態を○と判定し、500nm以上1000nm未満である場合は△、1000nm以上のときは×とした。以下、実施例2〜10、比較例1〜8についても同様に判定した。
【0073】
〔セルロースの水分率測定〕
株式会社ケット科学研究所製赤外線水分計FD−720を使用し、約5gのセルロースを110℃、自動停止モードの条件で測定を行った。
以下、実施例2〜10、比較例1〜8についても同様に測定を行った。
【0074】
(実施例2) セルロース微細化方法
HEMAを700gとターシャリーブチルカテコールを0.4gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」317gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物1を得た。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し5.5質量部であった
【0075】
(実施例3) セルロース微細化方法
HEMAを400gとターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。その後、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」627gを投入した。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し4.5質量部であった。さらに、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し、水分量が25.0質量部となるように水を123g投入し、60rpmで60分間加圧混練を行った。そのときのサンプルの状態は湿り気がある粉状であった。さらに、60rpmで240分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物3を得た。
【0076】
(実施例4) セルロース微細化方法
グリセリンジメタクリレートを300gとターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」734gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物4を得た。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し4.8質量部であった。また、グリセリンジメタクリレートを合成例1に記載の水酸基価の測定法にて水酸基価を測定したところ、246KOHmg/gであった。
【0077】
(比較例1) セルロース微細化方法
HEMAを250gとターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」632gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行った。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し5.4質量部であった。
【0078】
(比較例2) セルロース微細化方法
HEMAを750gとターシャリーブチルカテコールを0.4gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」263gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行った。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し5.0質量部であった。
【0079】
(比較例3) セルロース微細化方法
日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」を130℃の乾燥機で一晩乾燥した。この際のセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し3.1質量部であった。HEMAを400gとターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、乾燥した「KCフロック(登録商標)W−50GK」619gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行ってセルロースの微細化処理を行った。
【0080】
(比較例4) セルロース微細化方法
HEMAを400gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。その後、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」631gを投入した。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し5.1質量部であった。さらに、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し、水分量が30.0質量部となるように水を149g投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。
【0081】
表1に実施例1から4及び比較例1から4におけるセルロースの微細化状態の判定結果を示す。
【0082】
【表1】
【0083】
(実施例5) セルロース微細化方法
合成例1で合成したウレタンメタクリレート樹脂組成物1を300gと、HEMAを100gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」630gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物5を得た。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し5.0質量部であった。
【0084】
(実施例6) セルロース微細化方法
東亞合成株式会社製アロニックス(登録商標)M−350(トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート:EO−TMPTAと略す)を300gと、HEMAを100gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」626gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物6を得た。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し4.3質量部であった。また、EO−TMPTAを合成例1に記載の水酸基価の測定法にて水酸基価を測定したところ、1KOHmg/g未満であった。
【0085】
(実施例7) セルロース微細化方法
合成例1で合成したウレタンメタクリレート樹脂組成物1を300gと、グリセリンジメタクリレートを100gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」629gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物7を得た。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し4.9質量部であった。
【0086】
(実施例8) セルロース微細化方法
合成例1で合成したウレタンメタクリレート樹脂組成物1を220gと、HEMAを80gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」739gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物8を得た。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し5.5質量部であった。
【0087】
(実施例9) セルロース微細化方法
合成例1で合成したウレタンメタクリレート樹脂組成物1を600gと、HEMAを100gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」316gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物9を得た。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し5.4質量部であった。
【0088】
(実施例10) セルロース微細化方法
合成例1で合成したウレタンメタクリレート樹脂組成物1を300gと、HEMAを100gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。その後、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」630gを投入した。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し5.0質量部であった。さらに、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し、水分量が25.0質量部となるように水を120g投入し、60rpmで60分間加圧混練を行った。そのときのサンプルの状態は湿り気がある粉状であった。さらに、60rpmで240分間加圧混練を行った。このようにしてセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物10を得た。
【0089】
(比較例5) セルロース微細化方法
合成例1で合成したウレタンメタクリレート樹脂組成物1を400gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」629gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行ってセルロースの微細化処理を行った。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し4.8質量部であった。
【0090】
(比較例6) セルロース微細化方法
EO−TMPTAを400gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」631gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行ってセルロースの微細化処理を行った。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し5.1質量部であった。
【0091】
(比較例7) セルロース微細化方法
日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」を130℃の乾燥機で一晩乾燥した。この際のセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し3.1質量部であった。合成例1で合成したウレタンメタクリレート樹脂組成物1を300gと、HEMAを100gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。さらに、乾燥した「KCフロック(登録商標)W−50GK」619gを投入し、60rpmで300分間加圧混練を行ってセルロースの微細化処理を行った。
【0092】
(比較例8) セルロース微細化方法
合成例1で合成したウレタンメタクリレート樹脂組成物1を300gと、HEMAを100gと、ターシャリーブチルカテコールを0.2gとを混合した後、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)に投入した。その後、日本製紙株式会社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W−50GK」633gを投入した。このとき使用したセルロースの水分量は、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し5.5質量部であった。さらに、水分率を0%に換算したセルロース100質量部に対し、水分量が30.0質量部となるように水を147g投入し、60rpmで300分間加圧混練を行った。
【0093】
表2に実施例5から10及び比較例5から8におけるセルロースの微細化状態の判定結果を示す。
【0094】
【表2】
【0095】
(実施例11) 成形体の製造方法1
実施例5で得られたセルロースナノファイバー含有樹脂組成物5の水分量を測定したところ、水分率を0%としたセルロース100質量部に対して4.5質量部であった。セルロースナノファイバー含有樹脂組成物1を8.56gと、ディオバー(登録商標)HTP−460(DIC株式会社製メタクリル樹脂)100.00gとを混合し、特殊機械工業(株)製TKオートホモディスパーにて1000rpmで5分間分散処理を行った。次に、6%ナフテン酸コバルト 0.5部、促進剤RP−191(DHM株式会社製)1部、50%BPO2部を加えて混合し、真空デシケーターで脱泡した。型に注いで80℃で6時間加熱した後、厚み3mmの成形板を得た。この成形板から、JISK6251に規定する引張試験用ダンベル状試験体を作成した。
【0096】
〔セルロースナノファイバー含有樹脂組成物の水分率測定〕
株式会社ケット科学研究所製赤外線水分計FD−720を使用し、約5gのセルロースナノファイバー含有樹脂組成物を110℃、自動停止モードの条件で測定を行った。
以下、実施例12及び13についても同様に測定を行った。
【0097】
(実施例12) 成形体の製造方法2
実施例10で得られたセルロースナノファイバー含有樹脂組成物10の水分量を測定したところ、水分率を0%としたセルロースナノファイバー100質量部に対して22.4質量部であった。このセルロースナノファイバー含有樹脂組成物10を50℃の乾燥機で一晩乾燥を行った。乾燥後、セルロースナノファイバー含有樹脂組成物10の水分量を測定したところ、水分率を0%としたセルロースナノファイバー100質量部に対して6.7質量部であった。この乾燥したセルロースナノファイバー含有樹脂組成物10を8.67gと、ディオバーHTP−460を100.00gとを混合し、特殊機械工業(株)製TKオートホモディスパーにて1000rpmで5分間分散処理を行った。次に、6%ナフテン酸コバルト 0.5部、促進剤RP−191(DHM株式会社製)1部、50%BPO2部を加えて混合し、真空デシケーターで脱泡した。型に注いで80℃で6時間加熱した後、厚み3mmの成形板を得た。この成形板から、JISK6251に規定する引張試験用ダンベル状試験体を作成した。
【0098】
(実施例13) 成形体の製造方法3
実施例6で得られたセルロースナノファイバー含有樹脂組成物6の水分量を測定したところ、水分率を0%としたセルロース100質量部に対して4.8質量部であった。このセルロースナノファイバー含有樹脂組成物6を8.57gと、ディオバーHTP−460を100.00gとを混合し、特殊機械工業(株)製TKオートホモディスパーにて1000rpmで5分間分散処理を行った。次に、6%ナフテン酸コバルト 0.5部、促進剤RP−191 1部、50%BPO 2部を加えて混合し、真空デシケーターで脱泡した。型に注いで80℃で6時間加熱した後、厚み3mmの成形板を得た。この成形板から、JISK6251に規定する引張試験用ダンベル状試験体を作成した。
【0099】
(比較例9)
ディオバーHTP−460を100.00gに、6%ナフテン酸コバルト 0.5部、促進剤RP−191 1部、50%BPO 2部を加えて混合し、真空デシケーターで脱泡した。型に注いで80℃で6時間加熱した後、厚み3mmの成形板を得た。この成形板から、JISK6251に規定する引張試験用ダンベル状試験体を作成した。
【0100】
(比較例10)
ディオバーHTP−460を100.00g、合成例1で作製したPPG系ウレタンメタクリレートを2.5g及びHEMAを0.83g混合し、特殊機械工業(株)製TKオートホモディスパーにて1000rpmで5分間分散処理を行った。次に、6%ナフテン酸コバルト 0.5部、促進剤RP−191 1部、50%BPO 2部を加えて混合し、真空デシケーターで脱泡した。型に注いで80℃で6時間加熱した後、厚み3mmの成形板を得た。この成形板から、JISK6251に規定する引張試験用ダンベル状試験体を作成した。
【0101】
(比較例11)
ディオバーHTP−460を100.00g、EO−TMPTAを2.5g及びHEMAを0.83g混合し、特殊機械工業(株)製TKオートホモディスパーにて1000rpmで5分間分散処理を行った。次に、6%ナフテン酸コバルト 0.5部、促進剤RP−191 1部、50%BPO 2部を加えて混合し、真空デシケーターで脱泡した。型に注いで80℃で6時間加熱した後、厚み3mmの成形板を得た。この成形板から、JISK6251に規定する引張試験用ダンベル状試験体を作成した。
【0102】
[引っ張り試験方法]
JISK6251に従い、試験速度50mm/minにて試験を行った。
実施例11から13及び比較例9から11の引張試験用ダンベル状試験体の試験結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、水中や有機溶媒中でセルロースを微細化するのではなく、反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物の存在下でセルロースを微細化することが可能である。反応性二重結合を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物と、反応性二重結合を有し水酸基価が10KOHmg/g以下の化合物の存在下でセルロースを微細化することが可能である。この方法により得られたセルロースナノファイバー含有樹脂組成物を用いることで機械的強度に優れた成形物を得ることが可能である。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【要約】
溶剤置換工程や脱溶剤といった工程をまったく必要としない簡易な製造方法で、反応性二重結合基を有する化合物への複合化が容易かつ成形物中に可塑剤として働く未硬化物が少ないセルロースナノファイバー及び、該セルロースナノファイバーを用いた高強度な樹脂組成物及び成形体を提供する。反応性二重結合基を有し水酸基価が200KOHmg/g以上の化合物の存在下で、セルロースを微細化するに際し、該セルロースの水分率を0%に換算したときの該セルロース100質量部に対する水分量を4〜25質量部とする。