【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 (1)刊行物での発表 発行者:日本繁殖生物学会、刊行物:第102回日本繁殖生物学会大会講演要旨掲載号、第j115ページ、演題番号P−21、発行年月日:平成21年8月25日 (2)文書をもっての学術研究集会での発表 研究集会名:第102回日本繁殖生物学会大会、主催者名:日本繁殖生物学会、開催日:平成21年9月10日
【文献】
受胎牛および不受胎牛の受精後初期における末梢血白血球中ISG-15の相対的発現量,第148回日本獣医学会学術集会講演要旨集,2009年10月 5日,p.245
【文献】
分子免疫学I −免疫細胞・サイトカイン−,株式会社東京化学同人,1993年10月 1日,第1版第2刷,p.3-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、動物の超早期妊娠診断技術を提供する。本発明において、超早期での妊娠の有無の診断とは、妊娠4週目以前の時期、例えば、授精3週目とか、さらには授精2週目といった極めて超早期に妊娠の有無を診断できることを意味してよい。
本発明の動物の超早期妊娠診断技術は、動物より血液を採取し、採血された血液より血球、例えば、白血球、あるいは、各血球分画、例えば、全白血球、顆粒球、単球、リンパ球の各分画に分離した後、次にその得られた各血球分画、例えば、全白血球、顆粒球、単球、リンパ球の各分画における妊娠特異分子の発現を測定し、前記血球画分に発現する特異分子を妊娠指標とすることを特徴とする。上記各血球分画への分離は、採取血液から直接行っても、あるいは、採血された血液より血球、例えば、白血球を分離し、次にその得られた血球を各血球分画にわけてもよい。
【0011】
本発明にかかる方法の対象となる被検体である動物は、妊娠を起こす被検体であれば特に限定されるものではなく、偶蹄目動物、鯨偶蹄目動物、ネコ目動物などが含まれてよく、例えば、牛、馬、羊、山羊、豚、水牛、鹿、ジャコウウシ、トナカイ、ヘラジカ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギを始めとするヒトを除く哺乳動物全般が挙げられる。当該動物には、家畜動物、愛玩動物などが包含されてよい。当該動物、特にヒトを除く哺乳動物としては、絶滅危惧動物を含めた希少動物、保護動物や、野生動物なども包含される。
【0012】
本発明の方法で測定対象となる試料としては、血液、例えば、末梢血が挙げられ、特には、それから分離された血球が測定対象とされてよい。該血球としては、好ましくは、白血球であり、さらに白血球をそれぞれの血球に分離されたもの、例えば、顆粒球、単球、リンパ球の各分画とされたものをそれぞれ対象とすることができる。本発明において特に好適な測定対象の血球としては、顆粒球が挙げられる。
【0013】
本発明では、各血球画分は起源となる生物種を問わず、また、いかなる手段によって得られたものでもよいが、密度勾配遠心分離法を利用して動物の血液、例えば、動物の末梢血から採取する方法が好適に用いられる。例えば、まず、各血球を得ようとする動物に対して抗凝血剤を含有する容器例えば、ヘパリンコートしたシリンジ、ヘパリン加真空採血管等を用いて採血を行い、末梢血を得る。次に、密度勾配遠心分離法により、各血球細胞を得る。密度勾配遠心分離法には、例えば、市販のフィコール(登録商標)、パーコール(登録商標)などの密度勾配遠心用媒体を用いることが好適である。さらに血球分離用に調製が施されたもの、例えば、Ficoll(ファルマシア)とConray 400(第一製薬)との混合液、Lymphoprep(登録商標)、Mono-poly Resolving Solution(登録商標)、OptiPrep(登録商標)などを利用してもよい。密度勾配遠心分離法における媒体の量、温度設定等は用いる媒体により、適宜、設定されるが、例えば、Ficoll-Conray液を用いる場合は、まず、得られた末梢血をHBSS(-)で希釈し、遠心用チューブに予め入れておいたFicoll-Conray液層に重層する。次に、1,000×gで30分程度遠心処理し、上層、中間層を吸引除去し、冷HBSS(-)を添加し、ピペッティング後塩化アンモニウム液を添加するなどして溶血処理後、さらに1,800×gで5分程度遠心処理し、上清を除くという処理をする。必要に応じて、本溶血処理並びに上清除去処理を繰り返す。得られた細胞をHBSS(-)に懸濁して、細胞浮遊液を得る。本発明においてより好適な各血球画分への分離法としては、フィコールコンレイ法が挙げられる。かくして、全白血球、顆粒球、単球、リンパ球の各分画が細胞浮遊液として得られる。特に、顆粒球浮遊液について、特異分子の発現を測定し、そこで発現する特異分子を妊娠指標とすることで、超早期の妊娠診断を行うことが可能であり、有益である。
【0014】
妊娠が成立した場合において特異的に発現が上昇する遺伝子を、本発明では妊娠特異遺伝子としている。本発明で特異分子とは、当該特異遺伝子及びその発現産物を指していてよい。該発現産物は、当該遺伝子の発現により産生される直接的なポリペプチド、タンパク質のみでなく、ポストトランスレーション工程で適宜修飾を受けたものも包含されてよく、対象とする特異遺伝子が、妊娠成立に伴い特異的に発現していることを解析できるものであれば限定されることはない。本発明で扱う特異遺伝子としては、当該分野で妊娠成立に際してその発現が変化するものであれば特には限定されないが、好ましくは血球における発現に変化の見られるものが挙げられる。代表的な特異遺伝子としては、例えば、表1に挙げられたものであり、より好ましくは遺伝子ISG15、Mx1、Mx2及びOAS-1からなる群から選択されたものである。
【0015】
本発明の方法における測定工程は、被検体由来試料中の特異分子である妊娠に特異的な遺伝子のmRNA量を測定する工程であってもよい。本発明の方法では、上記測定工程が特異分子の特異遺伝子のmRNA量を測定することによって、特異分子であるタンパク質の発現レベルを測定するという態様であってもよい。かかる態様においては、被検体由来試料における特異遺伝子のmRNAから当該遺伝子の発現レベルを測定し、このレベルを非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料の発現レベルと比較することにより、被検体の妊娠の有無を検出するという態様である。
【0016】
上記のようにして測定された被検体由来試料中の特異遺伝子の発現レベルが、非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料中のこれらの発現レベルに比して高いかどうかを指標として被検体試料における妊娠成立を検出する。被検体由来試料中の特異遺伝子の発現レベルと、非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料中のこれらとの比較は、被検体由来試料と同時に非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料についてmRNA量の測定を実施し、これによって得られたmRNA量を比較することによって実施されてもよい。被検体由来試料中の特異遺伝子の発現レベルが非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料中のこれらの濃度に比して高いかどうかは、mRNAの量を両者間で比較して相対的に判断してよい。また、被検体由来試料中の特異遺伝子の発現量と、非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料中のこれらとの比較は、あらかじめ測定された非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料中の特異遺伝子のmRNA量と、被検体由来試料について測定されたこれらのmRNA量とを比較することによって実施されてもよい。さらに、被検体の妊娠の有無を判断し得る境界値(カットオフ値)をあらかじめ設定しておいて、被検体由来試料中のmRNA量が当該境界値より高いかどうかで被検体由来試料中の妊娠成立の有無を判断してもよい。
【0017】
mRNA量を測定する方法としては、所望のmRNA量を測定できる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、上記、ISG15遺伝子のmRNA及び/又はMx1遺伝子のmRNA及び/又はMx2遺伝子のmRNA及び/又はOAS-1遺伝子のmRNA、もしくはそれらのcDNAまたはそれらの相補鎖の一部からなるポリヌクレオチドであって、当該特異遺伝子のRNAまたはcDNAに部位特異的に結合(ハイブリダイズ)するポリヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いた方法が挙げられる。
【0018】
具体的には、上記プライマーやプローブを標識し、当該標識を検出することにより、上記mRNAまたはcDNAを検出することができる。そして、当該標識のシグナル強度を調べることによりmRNA量を測定することができる。上記標識としては特に限定されないが、例えば、
32Pに代表される放射性物質のほか、フルオレセインに代表される蛍光物質を用いることができる。上記プライマー及び/又はプローブとして使用するポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1〜90に示されるもの、表1に示される遺伝子の塩基配列、およびそれらの塩基配列を元に、従来公知の方法により設計され得る。例えば目的のmRNA(cDNA)を特異的に増幅させるプライマーとして利用可能なポリヌクレオチドは、当該mRNA(cDNA)を特異的に検出するためのプローブとして使用可能であることは当業者にとって周知であるため、この知見を元にプローブとして利用可能なポリヌクレオチドを設計すればよい。
【0019】
mRNAまたはcDNAに部位特異的に結合するポリヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いてmRNAを検出する公知の方法としては、例えば、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法、コンペティティブPCR法、in situ ハイブリダイゼーション法、in situ PCR法、DNAアレイ法、ノーザンブロット法などを挙げることができる。
【0020】
RT-PCR(Reverse transcribed-Polymerase chain reaction)法とは、特異遺伝子のmRNAを鋳型とし、逆転写酵素反応によりcDNAを合成後、PCRによるDNAの増幅を行う方法〔Kawasaki, E. S., et al., Amplification of RNA. In PCR Protocol, A Guide to methods and applications, Academic Press, Inc., SanDiego, 21-27 (1991)]である。DNAの増幅反応は特に限定されるものではなく、当業者は適宜最適な条件を検討の上、採用することができる。また、当該特異遺伝子の増幅領域は、必ずしも全長である必要はなく、増幅産物の確認に支障が無ければ、当該遺伝子の一部領域であってもよい。増幅されたDNA量(mRNA量に相当する)は、例えば、上記DNA増幅反応液をアガロースゲル電気泳動に供した後、目的増幅断片に特異的にハイブリダイズするプローブを用いることで検出することができる。一方、十分量の増幅産物が得られる場合には、アガロースゲル電気泳動を行った後、ゲルをEtBr染色し、増幅ポリヌクレオチドの位置とその蛍光強度により確認することも可能である。
【0021】
さらに、RT-PCTの際に、リアルタイムモニタリング試薬を用いることによりリアルタイムRT-PCR法を行うことができる。リアルタイムRT-PCR法は、増幅産物の生成過程をリアルタイムでモニタリングし、解析する方法である。そのため、増幅産物の増幅量が飽和する前に増幅反応をストップすることができる。したがって、当該特異遺伝子のmRNA量をより正確に測定することができる。上記リアルタイムモニタリング試薬としては、例えば、SYBR(登録商標:Molecular Probes社) Green、TaqMan(登録商標:Applied Biosystems社)プローブ等が挙げられる。
【0022】
またノーザンハイブリダイゼーション法によっても当該特異遺伝子のmRNA量の測定を行うことができる。この場合、試料より抽出された一定量の粗RNA試料を分子量等による分画後ナイロンフィルター等に固定し、検出対象となる特異遺伝子のmRNAとプローブとを接触させ、当該mRNAにハイブリダイズした上記プローブを検出することによりmRNA量の測定を実施することができる。
【0023】
またin situ ハイブリダイゼーション法による特異遺伝子のmRNAレベルの検出は、例えば、以下の方法で行うことができる。被検体由来試料(細胞、組織切片等の試料)をホルマリン等で固定する。Triton-X等を用いてプローブが試料を透過できるように処理した後、プローブを加えて特異遺伝子のmRNAとハイブリダイズさせる。そして、上記mRNAにハイブリダイズしたプローブを検出することにより実施することができる。
【0024】
DNAアレイ法による特異遺伝子のmRNA量の検出は、例えば、以下の方法で行うことができる。支持体上に特異遺伝子のcDNAまたはその部分配列を固定化し、被検体由来試料から調製したmRNAまたはcDNAとハイブリダイズさせる。この際、上記mRNAまたはcDNAを蛍光標識等することにより、支持体上に固定化したcDNAまたはその部分配列と試料から調製したRNAまたはcDNAとのハイブリダイゼーションを検出することができる。
mRNA量の測定は、例えば、上述の方法で検出したmRNAまたはcDNAに対してデンシトメーター等を用いて得られるシグナル強度を確認することにより実施することができる。すなわち、シグナル強度が強いほどmRNAまたはcDNAの量が高いと判断できる。本発明において妊娠診断における判定は、複数の特異分子の発現についてのデータを指標とすることができる。例えば、本発明では、ISG15とMx1との組合せ、Mx2とOAS-1との組合せ、ISG15とMx2との組合せ、ISG15とOAS-1との組合せ、Mx1とMx2との組合せ、Mx1とOAS-1の組合せ、Mx2とOAS-1の組合せ、ISG15とMx1とMx2との組合せ、ISG15とMx1とOAS-1との組合せ、ISG15とMx2とOAS-1との組合せ、Mx1とMx2とOAS-1の組合せ、及び/又は、ISG15とMx1とMx2とOAS-1との組合せ、についてデータを全て利用して妊娠診断をしてよい。また、そうすることが、ある場合には好ましい。
【0025】
特異遺伝子の発現産物の測定は、当該ポリペプチド又はタンパク質と特異的に相互作用する物質、例えば、対象ポリペプチド又はタンパク質に特異的な抗体を用い、ウェスタンブロット法、ELISA法(固相酵素免疫検定法)、免疫沈降法、免疫組織化学法、抗体アレイ法などの公知の方法を適宜採用の上、適用すればよい。上記の測定法の内、より感度が高く、簡便であるという点から、ELISA法が好ましい。なお、これらの測定法の具体的な条件は、当業者が適宜設定し得る事項である。
【0026】
該ELISA法は、上記被検体試料に含まれるタンパク質(ポリペプチド)をマルチウェルプレート(「マイクロタイタープレート」ともいう)に固定し、その後、当該抗原に対する抗体などによって、対象タンパク質(ポリペプチド)濃度を検出する方法である。例えば、ISG15タンパク質に結合した抗体を、アルカリフォスファターゼまたはペルオキシダーゼ結合抗IgG抗体などを二次抗体として用いて検出すればよい。またELISA法は、サンドイッチ法であってもよい。さらに、アビジン・ビオチン系を利用してもよい。
【0027】
ウェスタンブロット法は、被検体由来試料をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動で分離させた後、ニトロセルロース膜などに転写し、当該抗原に対する抗体によって、対象タンパク質(ポリペプチド)濃度を検出する方法である。例えば、ISG15タンパク質に結合した抗体を、例えば、
125I-標識プロテインA、ペルオキシダーゼ結合抗IgG抗体などを二次抗体として用いて検出すればよい。対象タンパク質濃度は、例えば、デンシトメーター等を用いて得られるシグナル強度を確認することにより測定され得る。すなわち、シグナル強度が強いほど問題とする対象タンパク質濃度が高いと判断され、検量線を用いて濃度が測定され得る。
【0028】
本発明の方法の一実施形態では、上記のようにして測定された被検体由来試料中の特異分子の濃度が、非妊娠動物由来試料中のこれらの濃度に比して高いかどうかを指標として被検体試料中の妊娠の有無を検出したり、診断する。ここで、被検体由来試料中の特異分子の濃度と、非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料中のこれらとの比較は、被検体由来試料と同時に非妊娠動物由来試料について上記測定工程を実施し、これによって得られた濃度とを比較することによって実施され得る。この時、被検体由来試料中の特異分子の濃度が非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料中のこれらの濃度に比して高いかどうかは、両者を比較して相対的に判断してもよい。
【0029】
また、被検体由来試料中の特異分子の濃度と、非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料中のこれらとの比較は、あらかじめ測定された非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料中の特異分子の濃度と、被検体由来試料について測定されたこれらの濃度とを比較することによって実施されてもよい。さらに、被検体中の妊娠成立の有無を判断し得る境界値(カットオフ値)をあらかじめ設定しておいて、被検体由来試料中の濃度が当該境界値より高いかどうかで被検体由来試料中の妊娠成立の有無について判断してもよい。
上記境界値は、用いられる試料によって変動し得るために限定されるものではないが、例えば、後述する実施例における特異分子濃度測定値を参考にその境界値を設定することをしてもよい。
【0030】
上記の抗原に対する抗体、測定用抗体は、種々の公知の方法を用いて作製することができ、その作製方法は特に限定されるものではない。例えば、Harlow, E. and Lane, D, "Antibodies: A laboratory manual", Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988)、岩崎ら、「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA」、講談社(1991)等の方法を用いて作製することができる。また、上記抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、また対象抗原に特異的に結合し得る完全な抗体分子のみならず、例えば、FabおよびF(ab')
2フラグメントのような抗体フラグメントであってもよい。
【0031】
本発明では、上記技術に基づいて、妊娠診断薬や妊娠診断キットを構築し、それを提供できる。本発明にかかる妊娠診断薬及び/又は妊娠診断キットは、当該特異分子の発現を検出するための検出手段を含むことを特徴としている。上述のとおり、各血球画分における特異分子の発現は、超早期妊娠成立を示すマーカーとなる。よって、上記マーカーを構成する特異分子の発現レベルを被検体由来の試料において検討し得る手段を含むキットによれば、被検体における妊娠の成立を選択的且つ簡便に検出することができる。すなわち、本発明の診断薬や診断キットを用いて、被検体由来試料中の特異分子の発現レベルが、非妊娠動物(例えば、発情周期にある動物)由来試料中のそれらより、高ければ被検体では妊娠が成立していると判断することができる。
【0032】
特異分子の発現を検出又は測定するための手段としては、特異分子と特異的に相互作用する物質、例えば、特異分子に特異的な抗体が挙げられる。かかる手段を用い、ウェスタンブロット法、ELISA法(固相酵素免疫検定法)、免疫沈降法、免疫組織化学法、抗体アレイ法などの公知の方法を実施することによって、特異分子の発現を検出することができる。
【0033】
当該検出・測定手段は、特異遺伝子のRNAまたはcDNAに部位特異的に結合(ハイブリダイズ)するポリヌクレオチドを含むプライマーやプローブであってもよい。かかる手段を構成し得るポリヌクレオチドは、特異遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドということもできる。ここで、上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも90%以上の同一性、好ましくは少なくとも95%以上の同一性、最も好ましくは97%の同一性が配列間に存在する時にのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。上記ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory (1989)に記載されている方法のような周知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる(すなわちハイブリダイズし難くなる)。ハイブリダイゼーションの条件としては、従来公知の条件を好適に用いることができ、特に限定されないが、例えば、42℃、6×SSPE、50%ホルムアミド、1%SDS、100μg/ml サケ精子DNA、5×デンハルト液(ただし、1×SSPE; 0.18M 塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、pH7.7、1mM EDTA、5×デンハルト液; 0.1% 牛血清アルブミン、0.1% フィコール、0.1% ポリビニルピロリドン)が挙げられる。
【0034】
本発明の妊娠診断薬及び/又は妊娠診断キットには、上記検出・測定手段が支持体上に固定化された器具が含まれていてもよい。より具体的には、特異遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが支持体上に固定化されたDNAアレイ(DNAチップ)が挙げられる。上記支持体上に固定化されるポリヌクレオチドは特異遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドであれば特に限定されるものではない。また、上記支持体上には、特異遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド以外の、ポリヌクレオチド、例えば従来公知のマーカーを検出し得るポリヌクレオチドが固定されていてもよい。
【0035】
上記支持体としては、ポリヌクレオチドを固定化できるものであれば特に限定されるものではなく、どのような形状や材質であってもよい。支持体の材料としては、一般的には、例えば、ガラス、シリコンウエハ等の無機系材料、紙等の天然高分子、ニトロセルロース、ナイロン等の合成高分子、合成高分子や天然高分子を用いたゲル体等を挙げることができる。
【0036】
ポリヌクレオチドの支持体への固定方法は、公知のDNAアレイ作製方法を採用することができる。例えば、cDNA(全長配列または部分配列)からなるポリヌクレオチド溶液を調製し、スポッター等により支持体上にスポットして固定化すればcDNAアレイを作製することができる。固定化するポリヌクレオチドはcDNAの塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドでもよい。また、基板上でDNAを合成する、いわゆるアフィメトリクス型のDNAチップ技術を用いることも可能である。
【0037】
DNAチップに関する公知の手法は、本発明においても適用可能であり、例えば、被検体由来のトータルRNAやmRNAから調製したcDNAやcRNAを蛍光標識しておき、支持体上に固定化されたポリヌクレオチドとハイブリダイズさせる。そのハイブリダイズしたcDNAやcRNAの量を、蛍光を指標に測定することにより遺伝子の発現レベルを評価することができる。また、2種類の試料から調製したcDNAやcRNAをそれぞれ異なる色を発する蛍光物質で標識し、同一の支持体上のポリヌクレオチドにハイブリダイズさせれば、その色調と蛍光強度を測定することにより、遺伝子発現の差異を評価することができる。
【0038】
本発明の妊娠診断薬及び/又は妊娠診断キットには、特異分子に対する抗体が支持体上に固定化された器具が含まれていてもよい。より具体的には、抗特異分子抗体が支持体上に固定化された抗体アレイまたはELISA用プレートが挙げられる。なお、上記器具には抗特異分子抗体以外の抗体(例えば、従来公知のマーカータンパク質と特異的に結合し得る抗体)が同じ支持体上に固定化されているものであってもよい。
【0039】
支持体としては、抗体、すなわちポリペプチドを固定化できるものであれば特に限定されるものではなく、どのような形状や材質であってもよい。支持体の材料としては、一般的には、例えば、ガラス、シリコンウエハ等の無機系材料、紙等の天然高分子、ニトロセルロース、ナイロン、ポリスチレン等の合成高分子、合成高分子、天然高分子を用いたゲル体等を挙げることができる。
【0040】
抗体を用いてポリペプチドを検出するための公知の手法は、本発明においても適用可能であり、例えば、サイファージェン・バイオシステムズ社より、プロテインチップの1種類としてバイオロジカルチップが販売されている。これは基板(支持体)の表面にカルボニルジイミダゾールまたはエポキシの活性基を持つもので、ユーザーが自由に目的のポリペプチドや抗体を固定化して使用するものである。上記抗特異分子抗体が支持体上に固定化された器具の作製にこれを応用することが可能である。
【0041】
本発明の妊娠診断薬及び/又は妊娠診断キットには、上記以外の構成が含まれていてもよい。例えば、被検体由来の試料からRNAを調製するための試薬、逆転写酵素、逆転写反応に用いる緩衝液、耐熱性DNAポリメラーゼ、PCR用試薬、リアルタイムPCR用試薬、PCR用チューブ、PCR用プレート、cDNAを蛍光標識するための試薬、ハイブリダイゼーション用試薬、データ解析用プログラムなどが含まれていてもよい。
本発明の妊娠診断薬及び/又は妊娠診断キットには、ELISA法やウェスタンブロット法を行うための構成、例えば、標識された二次抗体、発色用試薬、洗浄用緩衝液などが含まれていてもよい。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【実施例1】
【0042】
本実施例では、血液細胞に発現する遺伝子動態を用いた妊娠診断法を開発すべく、以下のことを実施した。
1)ウシ血液細胞の総mRNA中に発現する遺伝子を網羅的に解析(microarray)し、妊娠に関連して変動する遺伝子群を検索する。
2)妊娠に伴い特異的に変動する遺伝子群の発現細胞を特定する(セルソータでの細胞分離、遺伝子発現解析)。
3)妊娠に関連して変動する遺伝子群を発現する細胞を効率的に収集し、妊娠診断へ適用する(フィコールコンレイによる収集と診断)。
その材料と方法について個々にそれぞれ以下に対応して記載した。
【0043】
1)血液細胞に発現する遺伝子の網羅的解析
〔材料および方法(全白血球)〕
〔供試動物〕
黒毛和種牛を用い、プロスタグランジン(ダルマジン、川崎三鷹製薬、0.15 mg)を投与し発情同期化した。発情が確認された個体に人工授精し、授精日をday 0とし、day 0、7、14、17、21、28にヘパリン真空採血管を用いて採血した。day 30頃に超音波画像診断を行い、妊娠を確認した。また同様に発情同期化した個体から、発情の翌日をday 0とし、day 0、7、14、17、21に採血を行い、発情周期のサンプルとして用いた。血液は解析まで氷上で保存した。
【0044】
〔白血球の分離〕
Histopaque 1119(SIGMA)6 mlに9 mlの血液を重層し、遠心分離器(05PR-2,HITACHI,半径17.5cm)を用い、室温で45分間780 xgで遠心した。血漿を1mlプロジェステロン測定用に分取し、−30℃で保存した。残りの血漿は丁寧に取り除き、バフィーコート部分を500 μl分取し、37 ℃に温めたLysing buffer(155 mM NH
4Cl、10 mM KHCO
3、1 mM EDTA)を3 ml加え、3分間溶血させた。その後1 x PBSを約50 ml加え、転倒混和し、4℃で10分間1300 xgで遠心した。上清を取り除き、得られた沈殿に10 mM HEPES、2 % FBSを含むHBSS(-)(SIGMA)を1.5 ml加え、攪拌後セルストレーナー付チューブに移し、氷上に保存した。
または、上記と同様に分離したバフィーコート部分500 μlをTRIzol LS(Invitrogen)に溶解し、−80 ℃に保存した。
【0045】
〔総RNA抽出〕
HBSS(-)に懸濁した血球は、4℃、3800 xgで3分間遠心し、上清を取り除き、60 μlのメルカプトエタノールを加えたBuffer RLT(QIAGEN)600 μl、またはTRIzol(Invitrogen)1 mlに溶解した。抽出はそれぞれ付属の説明書に従って行った。TRIzol LSに溶解したサンプルも付属の説明書に従って抽出した。
抽出したRNAは吸光度計(ND-1000,NanoDrop)を用い、260 nmの吸光度を測定し濃度を算出し、バイオアナライザー(Agilent)にてクオリティを確認した。
TRIzolまたはTRIzol LSを用いて抽出したサンプルはTURBO DNA-free Kit(Applied Biosystems)にてDNase処理した。
【0046】
〔オリゴDNAマイクロアレイ〕
Low RNA Fluorescent Linear Amplification kit(Agilent)を用いてcDNAを合成後、in vitro transcription法によりCyanine-3標識cRNAを調製した。マイクロアレイは、60 merから成る約15,000のウシ遺伝子を搭載した自家開発のウシ・オリゴDNAマイクロアレイを使用した。標識cRNAをオリゴDNAマイクロアレイに添加し17時間ハイブリダイゼーション後に洗浄して、DNAマイクロアレイスキャナー(Agilent)を用いてマイクロアレイスライドをスキャニングした。スキャニングした画像をもとにAgilent Feature Extraction Ver.9.5にて各スポットのシグナル強度を数値化した。
【0047】
〔定量的リアルタイムRT-PCR〕
cDNAはHigh-Capacity cDNA Reverse Transcription Kits(Applied Biosystems)を用い、付属の説明書に従った逆転写反応により合成した。
リアルタイムRT-PCRのスタンダードにはプラスミドを使用した。AmpliTaq Gold(Applied Biosystems)を用いてPCRを行い、pGEM-T Easy Vector Systems(Promega)を用いて増幅産物をTAクローニングし、Competent high DH5α(TOYOBO)にトランスフォーメーションし、培養後QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いて付属の説明書に従ってプラスミドを抽出した。オートシークエンサー(ABI PRISM
TM 3100-Avant genetic Analyzer; Applied Biosystems)にて配列を確認後、プラスミドを段階希釈してスタンダードとした。Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を用いて、ABI7300(Applied Biosystems)にてリアルタイムRT-PCRを行い、発現量を測定した。内在性コントロールとしてGAPDHを用いた。次にクローニング(Cloning)及びリアルタイムPCR(Real-time PCR)に用いたプライマーのリストをしめす〔表1:リアルタイムPCRで検証した遺伝子、表2:クローニングプライマー、表3:リアルタイムPCRプライマー(Real-time PCR primers)〕。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
表2及び3において、ヌクレオチド配列に付されている括弧内の数字は、配列表中の配列番号を示している。すなわち、例えば、(1)は、配列番号1(SEQ ID NO: 1)を示す。
【0052】
〔血漿プロジェステロン測定〕
ARVO MX(Perkin Elmer)を用い、時間分解蛍光法により血漿プロジェステロン値を測定した。チャコール処理ウシ血清を用いて検量線を作成し、血漿中のプロジェステロン濃度を算出した。
【0053】
2)セルソータにより分離した細胞で変動する特異遺伝子の解析
〔材料および方法(ソーティングしたもの)〕
〔供試動物〕
黒毛和種牛を用い、プロスタグランジン(ダルマジン、川崎三鷹製薬、0.15 mg)を投与し発情同期化した。発情が確認された個体に人工授精し、授精日をday 0とし、day 0、7、14、21、28にヘパリン真空採血管を用いて採血した。day 30頃に超音波画像診断を行い、妊娠を確認した。また同様に発情同期化した個体から、発情の翌日をday 0とし、day 0、7、14、21に採血を行い、発情周期のサンプルとして用いた。血液は解析まで氷上で保存した。
【0054】
〔白血球の分離〕
Histopaque 1119(SIGMA)6 mlに9 mlの血液を重層し、45分間、室温、780 xgで遠心した。血漿を1 mlプロジェステロン測定用に分取し、−30 ℃で保存した。残りの血清は丁寧に取り除き、バフィーコートおよびその下層の赤血球から1500 μl分取し、37 ℃に温めたLysing buffer(155 mM NH
4Cl、10 mM KHCO
3、1 mM EDTA)を3 ml加え、3分間溶血させた。その後1 xPBSを約50 ml加え、転倒混和し、1300 xg、10分、4℃で遠心した。上清を取り除き、得られた沈殿に10 mM HEPES、2 % FBSを含むHBSS(-)を1.5 ml加え、攪拌後セルストレーナー付チューブに移し、氷上に保存した。
【0055】
〔セルソーティング〕
HBSS(-)に懸濁した試料にヨウ化プロピジウムを1 μl/ml加え、セルソーター(BeckmanCoulter、EPICS ALTRA)にてスキャッター解析を行った。死細胞を除くすべての血球、顆粒球、単球、リンパ球を約2 x 10
5個ずつ分取し、3分間、4 ℃、3800 xgで遠心後、上清を除き、得られた沈殿に10 % メルカプトエタノールと50 ng yeast tRNAを含むBuffer RLT(QIAGEN)100 μlに溶解し、−80 ℃で保存した。
【0056】
〔総RNA抽出〕
抽出はRNeasy Micro kit(QIAGEN)の付属の説明書に従って行った。つまり、ライセートに70 %エタノール100 μlを加え、ボルテックス後スピンカラムに入れ、1分間、室温、10000 xgで遠心した。カラムにBuffer RW1を350 μl加え、同様に遠心した。メンブレンにDNase I 10 μl とBuffer RDD 70 μlを加え、15分室温でインキュベートした。カラムにBuffer RW1 350 μlを加え、同様に遠心した。カラムにBuffer RPE 500 μlを加え、同様に遠心した。カラムに80 %エタノール500 μlを加え10000 xgで2分間遠心した。空チューブで、最高スピード、5分間遠心した。以上の操作はすべての遠心後にスピンカラムを新しいチューブに移して行った。1.5 mlチューブにスピンカラムを移し、RNase-free water 17 μlをメンブレンに加え、最高スピード、1分間遠心し、RNA溶液を得た。
抽出したRNAはバイオアナライザー(Agilent)にて測定し、濃度およびクオリティを確認した。
【0057】
〔定量的リアルタイムRT-PCR〕
cDNAはHigh-Capacity cDNA Reverse Transcription Kits(Applied Biosystems)を用い、付属の説明書に従った逆転写反応により合成した。
リアルタイムRT-PCRのスタンダードにはプラスミドを使用した。AmpliTaq Gold(Applied Biosystems)を用いてPCRを行い、pGEM-T Easy Vector Systems(Promega)を用いて増幅産物をTAクローニングし、Competent high DH5α(TOYOBO)にトランスフォーメーションし、培養後QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いて付属の説明書に従ってプラスミドを抽出した。オートシークエンサー(ABI PRISM
TM 3100-Avant genetic Analyzer; Applied Biosystems)にて配列を確認後、プラスミドを段階希釈してスタンダードとした。Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を用いて、ABI7300(Applied Biosystems)にてリアルタイムRT-PCRを行い、発現量を測定した。内在性コントロールとしてGAPDHを用いた。
【0058】
〔血漿プロジェステロン測定〕
ARVO MX(Perkin Elmer)を用い、時間分解蛍光法により血漿プロジェステロン値を測定した。チャコール処理ウシ血清を用いて検量線を作成し、血漿中のプロジェステロン濃度を算出した。
【0059】
3)フィコールコンレイによる細胞の簡便な収集法の検索
〔フィコールコンレイ法〕
Ficoll-Conray 液(9 %Ficoll、Conray 400(第一製薬))10 mlに、等量のHBSS(-)で希釈したヘパリン加血液を重層し、30分間、室温1,000 xgで遠心した。上層、中間層を吸引除去し、冷HBSS(-)を約2ml加え、ピペッティング後冷0.7 %NH
4Clを約50 ml 加え、静かに転倒混和し、氷中で5分間静置して溶血させた。5分間1,800 xgで遠心し、上清を除き、沈殿に冷0.7 %NH
4Clを1ml 加え、攪拌し氷中で5分間静置した。5分間1,800 xgで遠心し、上清を除き、1 mlの冷HBSS(-)に攪拌し、同様に再度遠心して上清を除き、1 mlの冷HBSS(-)に攪拌し、氷中に保存した。0.5 %トリパンブルーにて染色して生存率を確認後、細胞浮遊液を5分間1,000 xgで遠心し、上清を除き、TRIzol1 mlに溶解し、−80 ℃で保存した。
収集した細胞からmRNAを抽出し、遺伝子発現動態を検証した。
【0060】
〔結果と考察〕
黒毛和種牛を用い、人工授精日を妊娠0日(D0)としてD0、7、14、21に頚静脈より採血した。比重遠心により分離したバフィーコート部分より白血球を採取、溶血処理したものを解析試料とした。セルソーターを用い、死細胞を除くすべての細胞(all)、顆粒球(G)、単球(M)、リンパ球(L)を分取し、RNAを抽出した。ISG15、Mx1、Mx2、OAS-1についてリアルタイムRT-PCRを行い、各画分における遺伝子発現量の変化を調べた。また血漿プロジェステロン濃度を時間分解蛍光法により確認した。対象として、発情周期を通じて同様に採血したものを解析した。
【0061】
血漿プロジェステロン測定を行って得られた結果、すなわち、ウシの妊娠に伴う血中プロジェステロン濃度の動態を
図1に示す。
図1Aは、発情周期サンプルについての結果であり、
図1Bは、妊娠牛についての結果である。
次に、分離血球中の各種特異遺伝子の発現について調べた結果を、
図2に示す。
図2では、特異遺伝子、すなわち、ISG15 (A)、Mx1 (B)、Mx2 (C)、OAS-1 (D)についての結果が示されている。
【0062】
以上より、ウシの白血球は、フローサイトメトリーにおけるスキャッター解析により、G、M、L画分の分取が可能であった。画分中の4遺伝子すべてについて、発情周期を通して発現量の有意な変化が見られなかったが、妊娠初期にはD0と比較して有意な増加が認められた。また、all、M、LにおいてはD21以降に初めて有意差が認められ、GではD14から有意な変化を認めた。Gでの遺伝子発現はD7以降において他の3画分と比較して高かった。これらのことから、妊娠初期のウシ末梢血白血球(PBL)において発現が増加すると報告されている遺伝子の発現の主体を担っているのは顆粒球であると考えられる。それ故、妊娠初期のPBL顆粒球における遺伝子発現の変動は妊娠に関連して発現する特異分子の状態を反映すると推察された。
【0063】
図3(a)は、フィコールコンレイによる血球分離の様子を示す写真である。
図3(b)〜(d)は、セルソータで血球細胞を分離して分析した結果を示す。分離血球を抗体で確認した結果を、
図4に示す。
図4では、NS, IgG, G, M7、そしてCD3に対する抗体をそれぞれ使用して分析した。フィコールコンレイで採取した血球の特異性を顕微鏡で観察した結果を、
図5(a)に示す。
図5(b)には、収集した細胞からmRNAを抽出し、mRNAの品質を調べた結果(発現GAPDHの電気泳動の結果を示す写真)を示す。
妊娠牛(pregnant)と発情周期にある牛(cyclic)について分離血球中の各種特異遺伝子の発現について調べた結果を、
図6〜9に示す。
図6は、各白血球分画におけるISG15 mRNA発現の変化を示し、
図7は、各白血球分画におけるMx1 mRNA発現の変化を示し、
図8は、各白血球分画におけるMx2 mRNA発現の変化を示し、
図9は、各白血球分画におけるOAS-1 mRNA発現の変化を示す。図中、all:全白血球、G:顆粒球、M:単球、L:リンパ球を示す。
【0064】
本発明の技術では、牛について授精後2週目の末梢血中血球に発現する特異分子を分子生物学的手法で検出し、妊娠診断することができる。より具体的には、ウシの末梢血球中の白血球に発現する遺伝子群をウシオリゴマイクロアレイおよび定量的RT-PCRにより検出すことにより、ウシの妊娠診断の途を拓くことができ、さらに、フィコールコンレイにより分画した白血球群を用い、検出対象とする主な遺伝子(例えば、ISG15, Mx1, Mx2, OAS-1など)発現量を測定して、超早期妊娠診断することが可能である。特定の白血球細胞画分に発現する遺伝子量を指標とすることにより、家畜などの産業用動物の超早期妊娠診断が可能である。
【配列表フリーテキスト】
【0066】
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