【実施例】
【0010】
以下本発明の一実施例による直播機について説明する。
図1は本実施例による直播機を備えた走行機体の構成図、
図2は同直播機に有するフロートの要部上面図、
図3は同直播機に有するフロートの要部側面図、
図4は同直播機における要部概念図である。
図1に示すように、本実施例による直播機10は運転席21を有する走行機体20の後部に連結されている。直播機10は、油圧シリンダ及びリンク機構によって走行機体20に対して昇降可能に取り付けられている。走行機体20は、一対の前輪22と後輪23を備えて運転席21での操縦によって自走する。
直播機10は、種子を貯留するホッパ11と、このホッパ11内の種子を土壌表面に導くダクト12と、ダクト12の種子吐出部12aの近傍に配置された整地フロート13を備えている。
図2及び
図3に示すように、整地フロート13には、土壌に溝を形成する作溝器14と、作溝器14の後方に配置されて吐出される種子を覆土する覆土板15とを備えている。種子吐出部12aは、作溝器14の後方で覆土板15の前方に配置され、作溝器14で形成する溝に種子を吐出する。
図4に示すように、整地フロート13には、種子吐出部12aから吐出された播種直後の種子を検出する光センサ16を設けている。種子吐出部12aから吐出される種子は、作溝器14によって形成された土壌表面の溝に播種される。
図4では、直播様式として点播での播種状態を示している。播種された種子は、光センサ16の下方を通過した後に覆土板15によって覆土される。
ここで光センサ16としては、発光素子からの光を検知物に当てた時に反射する光を受光素子で受けて検知する反射型フォトセンサを用いる。
【0011】
本実施例による播種状態検出方法は、種子が播種される土壌表面の反射光を光センサ16で受光する。光センサ16は、検出した受光量の変化に比例した起電力を発生する。受光量の変化は、反射物表面の濃淡によって生じ、土壌だけの場合と、種子を有する土壌の場合との明度の相違を検出することができる。例えば、カルパー(保土谷化学工業株式会社登録商標)コーティングされた白色に着色された種子は、土壌色よりも可視光の波長領域において光を強く反射する。そのために、光センサ16が受光する受光量に差が生じ、発生する電圧の差により、土壌だけの場合と、種子を有する土壌の場合とを区別することができる。
図示はしないが、検出対象となる土壌表面を照射する照明手段を備えてもよい。照明手段を設けることで野外における天候の変化や時刻変化による影響を少なくすることができる。
光センサ16での受光量の出力値の変化を大きくする上では、土壌と明度が異なる色、例えば白色でコーティングした着色種子を用いることが好ましい。例えば、過酸化カルシウムや炭酸カルシウムを成分として含む粉衣剤を種子表面にコーティングする技術が知られており、この種の酸素発生剤をコーティングした種子を用いることができる。また鉄粉で種子をコーティングした鉄コーティングを用いることもできる。
【0012】
次に
図5及び
図6を用いて条播の播種状態検出方法について説明する。
図5は本実施例による条播の播種状態検出状態を示す概念特性図、
図6は本実施例による条播の播種状態検出流れを示すフローチャートである。
図5において、縦軸は光センサからの出力電圧値、横軸は経過時間を表している。
区間(a)は条播が正常に播種されている時間帯、区間(b)は例えば供給される種子が無くなった欠粒状態の時間帯、区間(c)は光センサと播種されるべき土壌表面との間に種子の滞留によって生じる欠粒状態の時間帯、区間(d)は例えば光センサ受光部に泥土が付着して反射光を受光できないセンサ異常状態の時間帯をそれぞれ示している。
本実施例では、第1閾値を出力電圧が0.5vの値に設定し、第2閾値を出力電圧が0.2vの値に設定している。ここで第1閾値は、正常な条播状態での土壌表面からの受光量に応じた電圧値に設定し、第2閾値は、種子が存在しない状態での土壌表面からの受光量に応じた電圧値(0.3v)を下回る電圧値に設定している。
【0013】
区間(a)に示すように、条播が正常に播種されている時間帯では光センサの出力値は第1閾値と一致する。なお、出力値が第1閾値と一致する場合だけでなく、出力値が第1閾値から所定範囲内である場合を正常播種と判断してもよい。
区間(b)に示すように、欠粒状態の時間帯では光センサの出力値は第1閾値を下回るが、第2閾値を下回ることはない。従って、第1閾値を下回り第2閾値を上回る時間が、あらかじめ設定した第1設定時間を越えることで、欠粒を判別することができる。
区間(c)に示すように、種子の滞留によって生じる欠粒状態の時間帯では光センサの出力値は第1閾値を上回る。区間(c)において出力値が上昇しているのは種子が徐々に蓄積されていることを示している。従って、第1閾値を上回る時間が、あらかじめ設定した第2設定時間を越えることで、種子の滞留によって生じる欠粒を判別することができる。
区間(d)に示すように、センサ異常状態の時間帯では光センサの出力値は第2閾値を下回る。従って、第2閾値を下回る時間が、あらかじめ設定した第3設定時間を越えることで、センサ異常を判別することができる。
なお、第1設定時間、第2設定時間、及び第3設定時間は、それぞれ異なる時間を設定しても、又はすべて同じ時間を設定してもよい。
【0014】
図6を用いて条播の播種状態検出流れを説明する。
以下のデータ処理の流れにおいて、光センサの出力値は、一定のタイミングで順次入力され、一つの出力値が処理されると次の出力値が処理される。
まず、光センサの出力値と第1閾値とが比較され出力値が第1閾値と異なるか否かが判断される(ステップ1)。ステップ1において、出力値と第1閾値とが同じである場合には、再度ステップ1において、次の出力値について第1閾値との比較を行う。出力値が継続して第1閾値と同じであると判断される場合には、
図5における区間(a)に示すように条播が正常に播種されている。
ステップ1において、出力値が第1閾値と異なると判断された場合には、出力値が第1閾値を下回るか否かが判断される(ステップ2)。ステップ2において、出力値が第1閾値を下回ると判断された場合には、出力値と第2閾値とが比較される(ステップ3)。
出力値が第2閾値を上回ると判断されるとタイマーがカウントされ(ステップ4)、第1設定時間を超えるか否かが判断される(ステップ5)。ステップ5において、あらかじめ定めた所定時間に満たない場合には、ステップ1に戻って次の出力値が第1閾値と比較される。次の出力値についても前回同様に第1閾値を下回り第2閾値を上回る場合には、ステップ4においてタイマーがカウントされる。第1閾値を下回り第2閾値を上回る出力値が継続することでステップ4におけるタイマーがカウントされ続け、第1設定時間を超えることになる。このように第1閾値を下回り第2閾値を上回る出力値が継続して
図5における区間(b)の状態となり、ステップ5において第1設定時間を超えると、ステップ6において欠粒と判断され、警告を発するか直播機の運転停止を行う(ステップ7)。
【0015】
ステップ2において出力値が第1閾値を上回ると判断された場合には、タイマーがカウントされ(ステップ8)、第2設定時間を超えるか否かが判断される(ステップ9)。ステップ9において、あらかじめ定めた所定時間に満たない場合には、ステップ1に戻って次の出力値が第1閾値と比較される。次の出力値についても前回同様に第1閾値を上回る場合には、ステップ8においてタイマーがカウントされる。第1閾値を上回る出力値が継続することでステップ8におけるタイマーがカウントされ続け、第2設定時間を超えることになる。このように第1閾値を上回る出力値が継続して
図5における区間(c)の状態となり、ステップ9において第2設定時間を超えると、ステップ10において滞留(欠粒)と判断され、警告を発するか直播機の運転停止を行う(ステップ11)。
【0016】
ステップ3において出力値が第2閾値を下回ると判断された場合には、タイマーがカウントされ(ステップ12)、第3設定時間を超えるか否かが判断される(ステップ13)。ステップ13において、あらかじめ定めた所定時間に満たない場合には、ステップ1に戻って次の出力値が第1閾値と比較される。次の出力値についても前回同様に第1閾値及び第2閾値を下回る場合には、ステップ12においてタイマーがカウントされる。第1閾値及び第2閾値を下回る出力値が継続することでステップ12におけるタイマーがカウントされ続け、第3設定時間を超えることになる。このように第1閾値及び第2閾値を下回る出力値が継続して
図5における区間(d)の状態となり、ステップ13において第3設定時間を超えると、ステップ14において光センサの異常と判断され、警告を発するか直播機の運転停止を行う(ステップ15)。
ステップ4、ステップ8、及びステップ12におけるタイマーのカウントは、所定の条件でリセットされる。一つの条件は、ステップ5、ステップ9、及びステップ13において、所定の設定時間を超えると判断された場合であり、他の条件は、継続してタイマーがカウントされていないと判断された場合である。
【0017】
次に
図7及び
図8を用いて点播の播種状態検出方法について説明する。
図7は本実施例による点播の播種状態検出状態を示す概念特性図、
図8は本実施例による点播の播種状態検出流れを示すフローチャートである。
図7において、縦軸は光センサからの出力電圧値、横軸は経過時間を表している。
区間(a)は条播が正常に播種されている時間帯、区間(b)は例えば供給される種子が無くなった欠粒状態の時間帯、区間(c)は光センサと播種されるべき土壌表面との間に種子の滞留によって生じる欠粒状態の時間帯、区間(d)は例えば光センサ受光部に泥土が付着して反射光を受光できないセンサ異常状態の時間帯をそれぞれ示している。
本実施例では、第1閾値を出力電圧が0.5vの値に設定し、第2閾値を出力電圧が0.2vの値に設定している。ここで第1閾値は、正常な条播状態での土壌表面からの受光量に応じた電圧値に設定し、第2閾値は、種子が存在しない状態での土壌表面からの受光量に応じた電圧値(0.3v)を下回る電圧値に設定している。
【0018】
区間(a)に示すように、条播が正常に播種されている時間帯では光センサは第1閾値を上回る出力値と第1閾値を下回る出力値とが交互に発生している場合を正常播種と判断するものである。なお、本実施例では、光センサでの検出対象を、種子が存在する箇所と種子が存在しない箇所とを完全に区分した場合を示している。従って、種子が存在しない箇所における出力値を区間(b)の出力値と同じ値としている。
区間(b)に示すように、欠粒状態の時間帯では光センサの出力値は第1閾値を下回るが、第2閾値を下回ることはない。従って、第1閾値を下回り第2閾値を上回る時間が、あらかじめ設定した第1設定時間を越えることで、欠粒を判別することができる。
区間(c)に示すように、種子の滞留によって生じる欠粒状態の時間帯では光センサの出力値は第1閾値を上回る。区間(c)において出力値が上昇しているのは種子が徐々に蓄積されていることを示している。従って、第1閾値を上回る時間が、あらかじめ設定した第2設定時間を越えることで、種子の滞留によって生じる欠粒を判別することができる。
区間(d)に示すように、センサ異常状態の時間帯では光センサの出力値は第2閾値を下回る。従って、第2閾値を下回る時間が、あらかじめ設定した第3設定時間を越えることで、センサ異常を判別することができる。
なお、第1設定時間、第2設定時間、及び第3設定時間は、それぞれ異なる時間を設定しても、又はすべて同じ時間を設定してもよい。
【0019】
図8を用いて点播の播種状態検出流れを説明する。なお、
図6と同一処理及び判断には同一のステップ番号を付している。
以下のデータ処理の流れにおいても、光センサの出力値は、一定のタイミングで順次入力され、一つの出力値が処理されると次の出力値が処理される。
まず、出力値が第1閾値を下回るか否かが判断される(ステップ2)。ステップ2において、出力値が第1閾値を下回ると判断された場合には、出力値と第2閾値とが比較される(ステップ3)。
出力値が第2閾値を上回ると判断されるとタイマーがカウントされ(ステップ4)、第1設定時間を超えるか否かが判断される(ステップ5)。ステップ5において、あらかじめ定めた所定時間に満たない場合には、ステップ2に戻って次の出力値が第1閾値と比較される。
【0020】
図7における区間(a)の状態では、次の出力値は第1閾値を上回るため、ステップ2において出力値は第1閾値を上回ると判断され、タイマーがカウントされ(ステップ8)、第2設定時間を超えるか否かが判断される(ステップ9)。ステップ9において、あらかじめ定めた所定時間に満たない場合には、ステップ2に戻って次の出力値が第1閾値と比較される。次の出力値は、第1の閾値を下回るため、ステップ2において、出力値が第1閾値を下回ると判断され、ステップ3,ステップ4、ステップ5を経てステップ2に戻る。
図7における区間(a)の状態が継続する限り、上記の流れを繰り返す。
図7における区間(b)の状態では、前の出力値と同様に次の出力値についても第1閾値を下回り第2閾値を上回るため、ステップ4においてタイマーがカウントされ、第1閾値を下回り第2閾値を上回る出力値が継続することでステップ4におけるタイマーがカウントされ続け、第1設定時間を超えることになる。このように第1閾値を下回り第2閾値を上回る出力値が継続してステップ5において第1設定時間を超えると、ステップ6において欠粒と判断され、警告を発するか直播機の運転停止を行う(ステップ7)。
【0021】
ステップ2において出力値が第1閾値を上回ると判断された場合には、タイマーがカウントされ(ステップ8)、第2設定時間を超えるか否かが判断される(ステップ9)。ステップ9において、あらかじめ定めた所定時間に満たない場合には、ステップ2に戻って次の出力値が第1閾値と比較される。次の出力値についても前回同様に第1閾値を上回る場合には、ステップ8においてタイマーがカウントされる。第1閾値を上回る出力値が継続することでステップ8におけるタイマーがカウントされ続け、第2設定時間を超えることになる。このように第1閾値を上回る出力値が継続して
図7における区間(c)の状態となり、ステップ9において第2設定時間を超えると、ステップ10において滞留(欠粒)と判断され、警告を発するか直播機の運転停止を行う(ステップ11)。
【0022】
ステップ3において出力値が第2閾値を下回ると判断された場合には、タイマーがカウントされ(ステップ12)、第3設定時間を超えるか否かが判断される(ステップ13)。ステップ13において、あらかじめ定めた所定時間に満たない場合には、ステップ1に戻って次の出力値が第1閾値と比較される。次の出力値についても前回同様に第1閾値及び第2閾値を下回る場合には、ステップ12においてタイマーがカウントされる。第1閾値及び第2閾値を下回る出力値が継続することでステップ12におけるタイマーがカウントされ続け、第3設定時間を超えることになる。このように第1閾値及び第2閾値を下回る出力値が継続して
図7における区間(d)の状態となり、ステップ13において第3設定時間を超えると、ステップ14において光センサの異常と判断され、警告を発するか直播機の運転停止を行う(ステップ15)。
ステップ4、ステップ8、及びステップ12におけるタイマーのカウントは、所定の条件でリセットされる。一つの条件は、ステップ5、ステップ9、及びステップ13において、所定の設定時間を超えると判断された場合であり、他の条件は、継続してタイマーがカウントされていないと判断された場合である。
【0023】
次に本発明の実験結果を示す。
図9は本実験に用いた回転土槽の上面概念図である。
図9に示すように、回転土槽に、8から10粒/株と、5から6粒/株と、3から4粒/株の3つのパターンで種子を株状に配置し、回転土槽を0.5から1.0m/sで回転させ、土壌と種子からの反射光をフォトダイオードで検出した。種子には、カルパー(保土谷化学工業株式会社登録商標)コーティングした種籾を用いた。
【0024】
図10、
図11は同実験結果を示している。
図10(a)は、同実験によるフォトダイオードの出力値を示している。
図10(b)は、第1閾値を設定したものであり、本実験結果では第1閾値を0.4vとすることで、
図10(c)に示すように、3つのパターンの株が所定間隔で配置されていることを判別できることが分かる。
図10(d)は、第2閾値を設定したものであり、本実験結果では第2閾値を0vとすることで、3つのパターンの株にかかわらずセンサ異常を判別できることが分かる。
本実験結果より、第1閾値を上回る出力値と第1閾値を下回る出力値とが交互に発生している場合を正常播種と判断できることが分かる。
また、
図11に示すように、8から10粒/株と、5から6粒/株と、3から4粒/株の3つのパターンでは、出力レベルが異なっていることが分かる。従って、第1閾値を上回る出力値の出力レベルの違いによって、一株における種子数の違いを判断することができ、点播における播種粒量の調整と確認を行うことができる。