【文献】
正岡淑邦ら,家畜排せつ物による新規エネルギー・脱臭・環境処理のシステム開発,農林水産バイオリサイクル研究,日本,農林水産省農林水産技術会議事務局,2008年 3月,463号,p.27-31,URL,http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2039014646.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態である空気浄化装置1の概略的構成を示すプロセスフロー図である。空気浄化装置1は、光エネルギーを吸収して励起し一重項酸素を発生させる光増感反応を利用して、空気中に含まれるウイルス等の被処理物を無害化させることで空気を浄化する装置であり、直列に配置された2塔の光増感反応塔3、5、各光増感反応塔3、5塔の内部に光を照射する照明装置7、9、光増感反応塔3に被処理物を含む空気を送込むファン10及び後段の光増感反応塔5の空気出口部に設けられた冷却器11を有する。
【0025】
光増感反応塔3は、気泡塔タイプの反応装置であり、円筒状の塔本体15を有する。塔本体15内に、水に光増感色素を溶解させた光増感色素溶液13を保有し、塔本体15の下部にはファン10を介して送込まれるウイルスなどの被処理物を含む空気を吹込む空気吹込ノズル17を有する。空気吹込ノズル17は、多孔質材料からなり、光増感色素溶液13中に吹込まれた被処理物を含む空気は、微細な気泡となり、光増感色素溶液13と気液接触する。光増感反応塔3では、光増感色素溶液13全体が吹込まれた空気と接触するため、塔本体15の底部から光増感色素溶液13の液位までが気液接触部19となる。塔本体15の気液接触部19に該当する部分は、外部の照明装置7から照射される光を取り込むため透明な材料で形成されている。もちろん塔本体15全体をガラスなど透明な材料で形成してもよい。また、塔本体15の上部には、吹込まれた空気を後段の光増感反応塔5に送る送気管21が接続する。
【0026】
光増感反応塔5は、光増感反応塔3の後段に位置するスプレー塔タイプの反応装置であり、円筒状の塔本体23を有する。塔本体23の下部には、水に光増感色素を溶解させた光増感色素溶液13を貯留する液貯留部25を有し、塔本体23の上部近傍には光増感色素溶液13を噴霧するためのスプレーノズル26が取付けられている。液貯留部25とスプレーノズル26とは循環ライン27で接続され、循環ライン27に介装された循環ポンプ29を介してスプレーノズル26から光増感色素溶液13が噴霧される。前段の光増感反応塔3で処理された空気は、送気管21を通じて塔本体25の下部に送気され、送り込まれた空気は、塔本体23を上昇し、スプレーノズル26から噴霧される光増感色素溶液13と向流接触する。光増感反応塔5では、スプレーノズル26から液貯留部25の液位の範囲24が基本的な気液接触部となる。但し、液貯留部25に貯留する光増感色素溶液13も落下する液滴が衝突する際に空気を巻込むため、気液接触部として機能する。スプレーノズル26から塔本体底部までは、外部の照明装置7から照射される光を取り込むため透明な材料で形成されている。また塔本体23上部には、デミスタ30が装着され、ミストを除去する。光増感反応塔5に送り込まれ浄化された空気は、塔本体23の上部の排気管31を介して冷却器11に送られる。
【0027】
冷却器11は、隔壁式の冷却器であり、冷却管内を冷却水が流れ、冷却管外を排気管31から送られる空気が流通する。冷却器11は、排気管31から送られる空気が冷却され、空気中の水蒸気が凝縮した凝縮水を光増感反応塔3に送る凝縮水送水管33を備える。
【0028】
照明装置7、9は、光増感色素溶液13に可視光を照射し、光増感色素を励起させるための装置であり、白色灯からなる。照明装置7、9は、光増感反応塔3、5内の光増感色素溶液13全体に可視光を照射できるように配置されている。光増感色素溶液13に可視光を照射すると、光増感色素が励起状態となり、励起状態の光増感色素が空気(酸素)が接触することで空気中の酸素が励起され、一重項酸素となる。この一重項酸素は、空気に同伴する被処理物を酸化し無害化する。
【0029】
上記構成からなる空気浄化装置1において、ウイルス等の被処理物を含む空気を前段の光増感反応塔3の空気吹込ノズル17を介して光増感色素溶液13に送り込むと、被処理物を含む空気は光増感色素溶液13中で微細な気泡となる。吹込まれた空気中の被処理物の一部は、光増感色素溶液13に取込まれる。光増感色素溶液13に取込まれた被処理物は、光増感色素溶液13中の溶存酸素、又は光増感色素溶液13中に分散する気泡中の酸素が励起され発生する一重項酸素で酸化される。一方、光増感色素溶液13に取込まれなかった被処理物は気泡中に存在し、気泡中の被処理物は、気泡中の酸素が光増感色素と接触し発生する一重項酸素で酸化される。
【0030】
光増感反応塔3で無害化されなかった被処理物は、送込まれた空気と一緒に後段の光増感反応塔5に送られ、前段の光増感反応塔3と同様、光増感反応で発生する一重項酸素で酸化、無害化される。浄化された空気は、光増感反応塔5の上部に設けられたデミスタ30でミストが除去された後、冷却器11を経由して系外に排出される。冷却器11に送られる浄化された空気は、光増感反応塔5で気液接触をしていることから飽和水蒸気又は飽和水蒸気に近い水蒸気を含む。この水蒸気を含む空気は冷却器11で冷却され、水蒸気の一部は凝縮水として回収され、この凝縮水は、光増感反応塔3に送られる。光増感反応塔3の光増感色素溶液13の一部は、水蒸気となって空気と一緒に光増感反応塔5に送られるため、水分補給を行なわないと光増感色素溶液13の量が減少する。一方、光増感反応塔5には、水蒸気を多く含む空気が送り込まれるため、光増感反応塔5の光増感色素溶液13の量はほぼ一定である。このため冷却器11で回収する凝縮水を光増感反応塔3に返送することで、液量をほぼ一定に保持することができる。
【0031】
上記の通り空気浄化装置1は、水を分散媒として使用する湿式方式の光増感反応を用いた空気浄化装置である。湿式方式の光増感反応を用いた空気浄化装置は、水を使用しない固体表面に光増感色素を担持した乾式方式の光増感反応を用いた空気浄化装置に比較し、空気浄化速度を高めることができる。光増感色素を含有する液体と被処理物を含む空気とを接触させることで、被処理物を液体中に取込むことができる。この場合、被処理物を液体中に直接取込むことができることはもちろん、空気中の埃などに付着したウイルスなどの被処理物を、埃といっしょに液体中に取込むことができる。こられにより被処理物は、空気中のほか、液体中でも一重項酸素と接触するので、被処理物を迅速に無害化することができる。また被処理物は直ちに液体中で無害化されなくても、被処理物が液体に取込まれれば空気は浄化されるので、無害化されにくい被処理物を含む空気であっても、迅速に空気を浄化することができる。
【0032】
乾式法では、固体表面に担持した光増感色素は酸素と接触し有効に機能するものの、内部の光増感色素は、表層の光増感色素がじゃまとなり酸素と接触することができないため、必ずしも有効に機能しない。これに対して湿式法では、水に光増感色素を溶解、分散、懸濁又は乳化させた光増感色素溶液と空気とを気液接触させるので、全ての光増感色素を有効に利用することができる。また容易に気液接触を大きくすることが可能であり、乾式法に比較して光増感色素と酸素、発生する一重項酸素と被処理物の接触機会を大幅に増加させることができる。さらに光増感色素の濃度を高めることも容易であり、光増感色素の補充も簡単に行なうことができる。
【0033】
第1実施形態での、光増感色素としては、ローズベンガルが挙げられるがこれに限定されるものではない。光増感色素としては、ローズベンガルのほか、フラーレン、メチレンブルーなど公知の光増感色素を使用することが可能であり、一種類の光増感色素を単独で使用可能なことはもちろんのこと、2種類以上の光増感色素を同時に使用してもよい。ローズベンガルは、食紅に使用されることから分かるように安全性が高い物質ゆえ、好適に使用することができる。
【0034】
光増感色素を分散させる液体は水に限定されるもではなく、他の液体又は2種類以上の液体を混合した液体であってもよい。また光増感色素は必ずしも液体に溶解した状態で使用する必要はなく、分散、懸濁、乳化した状態であってもよい。さらに光増感色素を分散させる液体に、光増感反応の性能を低下させない範囲において、薬剤を添加してもよい。例えば、液体中に空気との界面張力を低下させる界面活性剤を添加することで、液体中に空気を吹き込んだ際、気泡が非常に小さくなり気液接触面積が増大する。さらに、被処理物の液体への吸収、捕集を高める薬剤を添加してもよい。例えば、被処理物の液体への吸収速度がpHに依存する場合には、pHを調整するための薬剤を添加してもよい。これらにより被処理物を迅速に無害化させることができる。光増感色素の濃度は、高い方が好ましいが、実用的な範囲を示せば1〜100μM程度である。
【0035】
光増感色素を励起させ一重項酸素を発生させるために照射する光は、光増感色素の最大吸収波長の光又はこれを中心した一定範囲の波長を有する光が好ましく、さらに光増感色素をできるだけ劣化させない光であることが好ましい。例えば、ローズベンガルの最大吸収波長は580nm、メチレンブルーは665nmであるから、これらに適した光は、波長が550〜700nmの光が好ましく、紫外線波長領域の光を含まないことが好ましい。照明手段は、蛍光灯、太陽光を使用することができるが、紫外線の発生量が比較的少ないLEDが好ましい。
【0036】
光増感色素を励起させ一重項酸素を発生させるために照射する光の照度は、高い方が好ましいが、実用的な範囲を示せば3500〜10万ルクス程度である。
【0037】
また上記実施形態では、型式の異なる光増感反応塔を2段直列に設ける例を示したけれども、光増感反応塔は1塔又は3塔以上であってもよく、同じ型式の光増感反応塔を使用してもよい。
【0038】
図2は、本発明の第2実施形態である空気浄化装置35の概略的構成を示すプロセスフロー図である。本実施形態に示す空気浄化装置35も第1実施形態に示す空気浄化装置1と同様、水に溶解させた光増感色素と被処理物を含む空気とを気液接触させ、かつ気液接触部に光増感色素を励起させる光を照射し、光増感反応を利用して一重項酸素を発生させ、空気中の被処理物を無害化させる装置である。
図1に示す空気浄化装置1と同一の構成には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図2に示す空気浄化装置35は、一塔式の空気浄化装置であり、光増感反応塔36は、塔本体37の下部が気泡塔形式の気液接触部、塔本体37の中央から上部にかけてスプレー塔形式の気液接触部を有し、
図1に示す空気浄化装置1の光増感反応塔3の上部に光増感反応塔5を結合したような型式の光増感反応塔36である。照明装置38を光増感反応塔36の気液接触部全体に可視光が照射されるように配置する点も
図1に示す空気浄化装置1と同一である。なお、液貯留部25に直接、被処理物を含む空気を吹込むため、光増感色素溶液13中に含まれる気泡により循環ポンプ29がキャビテーションを起こさないように、液貯留部25の一部に気液分離部39が設けられている。
【0039】
光増感反応塔は、
図1及び
図2に示す光増感反応塔3、5、36に限定されるものではなく、気液接触性能に優れる装置であれば、特定の反応塔、反応装置に限定されるものではない。気泡塔、スプレー塔以外に、公知の濡れ壁塔、充填塔、スクラバー、回転噴霧塔、液柱塔、ベンチュリー装置、ポンプの吸引側で液体と同時に空気を吸引し、機械的にせん断力を加え微細な気泡を発生させるマイクロバブル発生装置を使用することができる。但し、気液接触部又は気液共存部に光増感色素を励起させるための光を照射させる必要があることから、気液接触部又は気液共存部に容易に光を照射可能な型式の反応塔、反応装置が好ましい。
【0040】
また上記実施形態では、光増感色素を励起させる光を塔の外部から照射する例を示したけれども、塔の内部に光源を設置してもよく、また光ファイバを利用して光を照射してもよい。また空気浄化装置1、35において、必要に応じて空気及び/又は光増感色素溶液の温度を調整可能な温度調節装置を設けてもよい。
【0041】
図3は本発明の第3実施形態である空気浄化装置70を空調システム40に組み込んだ系統図である。
図4は
図3中の空気浄化装置70の構成を示す断面図である。本実施形態に示す空気浄化装置70も第1及び第2実施形態に示す空気浄化装置1、35と同様、水に溶解させた光増感色素と被処理物を含む空気とを気液接触させ、かつ気液接触部に光増感色素を励起させる光を照射し、光増感反応を利用して一重項酸素を発生させ、空気中の被処理物を無害化させる装置である。
図1及び
図2に示す空気浄化装置1、35と同一の構成には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
空調システム40は、建屋42内の空気の温度、湿度、清浄度を適正に維持するシステムであって、空気調和機44、空気調和機44に接続し、建屋42内の各部屋46(46a、46b、46c)に調和空気を送る給気ライン48、建屋42内の各部屋46の空気を空気調和機44に導く還気ライン50、外気を取込む外気ダクト52を有する。空気調和機44は、外気ダクト52に近い方から順番にエアフィルタ54、冷却器56、加熱器58、加湿器60及び送風機62を備え、還気ライン50を介して戻る建屋42内の各部屋46の空気に一部外気を混合し、清浄、温度調節、湿度調節した空気を、給気ライン48を介して建屋42内の各部屋46に送る。さらに還気ライン50の途中であって、空気調和機44に近接する位置に空気浄化装置70が組み込まれている。空気浄化装置70を除く空調システム40は、従来から病院等の空調に使用されている空調システムと同じであり、基本的に建屋42内の空気を循環使用する。
【0043】
空気浄化装置70は、還気ライン50を構成する還気ダクト72内に設置された複数の光ファイバ74、光ファイバ74に光増感色素溶液13を供給する光増感色素溶液供給タンク76、光ファイバ74に沿って流下する光増感色素溶液13を回収する光増感色素溶液回収タンク78のほか、回収した光増感色素溶液13を光増感色素溶液供給タンク76に返送する液返送ライン80、光ファイバ74に光を供給する光源82、還気ダクト72内の両側壁に設置された光を反射する反射板84を有する。
【0044】
光ファイバ74は、複数の光ファイバからなり、光ファイバ74の先端部85は還気ダクト72内に位置する。他端部86は、複数の光ファイバ74が集合した状態で還気ダクト72の天井を貫通した状態で、還気ダクト72の外に位置する。光ファイバ74の先端部85は、還気ダクト72の中央から上部に先端位置が異なるようにランダムに取付けられている。還気ダクト72の長手方向(空気流れ方向)についても同じである。ここで使用する光ファイバ74は、従来から光の伝送に使用されている一般的な光ファイバである。
【0045】
光増感色素溶液供給タンク76は還気ダクト72内の天井部に設けられ、光増感色素溶液供給タンク76の底部には光ファイバ74が貫通する多数の貫通孔88が設けられている。この貫通孔88とここを挿通する光ファイバ74との間にはわずかな隙間が設けられている。一の貫通孔88を貫通する光フィアバ74は、一本であっても複数本が束なった状態であってもよい。
【0046】
光増感色素溶液回収タンク78は、還気ダクト72内の底部に設けられ、光ファイバ74に沿って流下する光増感色素溶液13を回収する。液返送ライン80の途中には、液返送ポンプ90が介装され、回収された光増感色素溶液13は、光増感色素溶液回収タンク78と光増感色素溶液供給タンク76とを結ぶ液返送ライン80を介して、光増感色素溶液供給タンク76に返送される。
【0047】
上記構成からなる空気浄化装置70において、光増感色素溶液13は、光増感色素溶液供給タンク76に底部に設けられた貫通孔88から還気ダクト72に向けて流下する。このとき貫通孔88内をわずかな隙間を有した状態で光ファイバ74が挿通するので、貫通孔88から流下する光増感色素溶液13は、光ファイバ74の外壁に沿って流下する。光ファイバ74に沿って流下する光増感色素溶液13は、還気ダクト72を通過する被処理物を含む空気と接触し、空気中の被処理物の一部を取込む。これら被処理物を含む光増感色素溶液13は、光ファイバ74の先端部85で発光する光を吸収し光増感色素溶液13中の酸素、還気ダクト72を通過する酸素を励起させ一重項酸素を発生させ、光増感色素13溶液に取込まれた被処理物、空気中の被処理物を無害化する。光ファイバ74から離れた光増感色素溶液13は、落下途中で光ファイバ74の先端部85から照射される光、反射板84で反射した光を吸収し、上記同様、被処理物を無害化する。また、光ファイバ74は、先端部85の高さが異なるように取付けられているので、光ファイバ74に沿って流下中の光増感色素溶液13は、他の光フィイバ74から照射される光を吸収して上記同様、被処理物を無害化する。また光増感色素溶液回収タンク78内の光増感色素溶液13にも上部から光ファイバ74からの光が照射されるので、この部分においても被処理物を無害化させることができる。必要に応じて、光増感色素溶液回収タンク78内に別途、照明装置を設置してもよい。
【0048】
光ファイバ74の直径は、非常に細いため、光ファイバ74を流下する光増感色素溶液13の気液接触面積は非常に大きく、迅速に被処理物を無害化することができる。さらに光ファイバ74の先端部85で、光増感色素、酸素、被処理物及び光を確実に接触させることが可能であり、効率的に空気中の被処理物を無害化させることができる。
【0049】
また本実施形態に示す空気浄化装置70は、還気ダクト72内に気液接触部が位置し、かつ気液接触方法が単純であり、気液接触に伴う圧力損失は非常に小さく、被処理物を含む空気を搬送する装置、例えばファンを別途用意する必要がなく効率的である。
【0050】
また空気浄化装置70を還気ライン50に取付けることで、浄化後の空気中の湿度が増加してもこの空気は空気調和機44に送られ、ここで温度、湿度等が調節されるため建屋42内に送られる空気の湿度が極端に上昇することはない。これからも分かるように空気浄化装置70を空調システム40に組込む場合は、空気浄化装置70を還気ライン50に組み込むことが好ましい。さらに空気浄化装置70は還気ライン50の途中であって、空気調和機44に近接する位置に組込むことがより好ましい。空気浄化装置70から排出される浄化後の空気中の湿度が高く、空気調和機44までの距離が長い場合、還気ライン50内でドレンが発生する恐れがあるけれども、空気調和機44までの距離を短くすることでドレン発生を抑制することができる。
【0051】
また本実施形態では、空気調和機44にエアフィルタ54、冷却器56、加熱器58、加湿器60を備える例を示したけれども、空気調和装置は温度調節が可能な温度調節装置のみであってもよいことはもちろんである。
【0052】
図5は本発明の第4実施形態である空気浄化装置95の構成を示す断面図である。
図5に示す空気浄化装置95も
図4に示す空気浄化装置70と同様、空調システム40に組み込み使用する例である。空調システム40の構成、空気浄化装置95の空調システム40への組込み要領は、第3実施形態に示す空気浄化装置70と同一であるので、この部分の説明は省略する。また
図1から
図4に示す空気浄化装置1、35、70と同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図5に示す空気浄化装置95は
図4に示す空気浄化装置70と類似の構成からなるので、相違点を中心に説明する。
【0053】
空気浄化装置95は、
図4に示す空気浄化装置70と同様、還気ライン50の途中であって、空気調和機44に近接する位置に組み込まれている。
図4に示す空気浄化装置70では、光ファイバ74の先端部85が還気ダクト内72に位置するように設置され、光ファイバ74の先端部85のみが発光するけれども、空気浄化装置95では、各光ファイバ74を覆うように光を透過可能な棒状発光体96が多数取付けられている。
【0054】
一の棒状発光体96の内部には、複数本の光ファイバ74が先端位置を異ならせた状態で位置し、棒状発光体96は、光ファイバ74から照射される光により自身全体を発光させる。棒状発光体96の一端97は、光増感色素溶液供給タンク76に設けられた貫通孔88とわずかな隙間を有した状態で、光増感色素溶液供給タンク76側にわずかに貫通し、棒状発光体96の他端98は、光増感色素溶液回収タンク78に貯留された光増感色素溶液13に接する。
【0055】
上記構成からなる空気浄化装置95において、光増感色素溶液13は、光増感色素溶液供給タンク76に底部に設けられた貫通孔88から還気ダクト72に向けて流下する。このとき貫通孔88内をわずかな隙間を有した状態で棒状発光体96が挿通するので、貫通孔88から流下する光増感色素溶液13は、棒状発光体96の外壁に沿って流下する。棒状発光体96に沿って流下する光増感色素溶液13は、還気ダクト72を通過する被処理物を含む空気と接触し、空気中の被処理物の一部を取込む。これら被処理物を含む光増感色素溶液13は、棒状発光体96から光を吸収し光増感色素溶液13中の酸素、還気ダクト72を通過する酸素を励起させ一重項酸素を発生させ、光増感色素溶液13に取込まれた被処理物、空気中の被処理物を無害化する。なお、棒状発光体96の長さをランダムとし、
図4に示す空気浄化装置70の光ファイバ74と同様に、還気ダクト72の中央から上部にかけて棒状発光体96の先端位置が異なるように取付けてもよい。
【0056】
図6は、本発明の第5実施形態である空気浄化装置100の概略的構成を示す断面図である。本実施形態に示す空気浄化装置100も第1から第4実施形態に示す空気浄化装置1、35、70、95と同様、水に溶解させた光増感色素と被処理物を含む空気とを接触させ、かつ気液接触部に光増感色素を励起させる光を照射し、光増感反応を利用いて一重項酸素を発生させ、空気中の被処理物を無害化させる装置である。以下、空気浄化装置100を第3、第4実施形態に示す空気浄化装置70、95と同様に空調システム40に組込み使用する場合を例に採り説明する。空調システム40の構成、空気浄化装置100の空調システム40への組込み要領は、第3、第4実施形態に示す空気浄化装置70、95と同一であるので、この部分の説明は省略する。
【0057】
空気浄化装置100は、第3実施形態に示す空気浄化装置70と同様、還気ライン50を構成する還気ダクト72内に設置された複数の布102、布102の下端103と接続し、布102に光増感色素溶液13を補給する光増感色素溶液補給体104、還気ダクト72の天井部に取付けられ、布102に光を照射する照明装置106を備える。
【0058】
布102は、還気ダクト72の長手方向に所定の長さを有し、下端103を光増感色素溶液補給体104と接触するように還気ダクト72内に吊り下げられている。布102は、光増感色素溶液補給体104と下端103を接続させることで、光増感色素溶液補給体104が保有する光増感色素溶液13を毛管作用により吸引、保有し、保有する光増感色素溶液13と還気ダクト72内を流通する被処理物を含む空気とを接触させる。このように布102は吸水性、毛管作用を示す部材であれば特定の布に限定されるのではなく、不織布であってもよい。布102は、光増感色素溶液103を始め、光増感色素溶液と接触するので、これら溶液に耐性を示すものでなければならないことは言うまでもない。布102は、複数の布102が還気ダクト72内の空気の流れに平行に取付けられている。これにより還気ダンク72内を流通する空気の抵抗が少なく、被処理物を含む空気を搬送する装置を別途用意する必要がない。
【0059】
光増感色素溶液補給体104は、布102に光増感色素溶液13を補給する部材であって、保水性を有する固体材料からなる。光増感色素溶液補給体104は、内部に光増感色素溶液13を保有することが可能であり、保有する光増感色素溶液13を容易に排出でき固体材料であればよく、例えばスポンジ、布などを使用することができる。内部により多くの光増感色素溶液13を保有できることが好ましい。
【0060】
第5実施形態に示す空気浄化装置100において、布102が保持する光増感色素溶液13は、還気ダクト72を通過する被処理物を含む空気と接触し、空気中の被処理物の一部を取込む。これら被処理物を含む光増感色素溶液13は、照明装置106が照射する光を吸収し光増感色素溶液13中の酸素、還気ダクト72を通過する酸素を励起させ一重項酸素を発生させ、光増感色素溶液13に取込まれた被処理物、空気中の被処理物を無害化する。布102は還気ダクト72内を流通する循環空気と接触することで、水が蒸発するけれども、接触する光増感色素溶液補給体104から、光増感色素溶液13を吸引するので、布102は常時光増感色素溶液13を保持することができる。なお、必要に応じて光ファイバ、LED等を併用して照度をアップさせてもよいことは言うまでもない。
【0061】
第5実施形態に示す空気浄化装置100の基本的構成、浄化メカニズムは、上記の通り第1から第4実施形態に示す空気浄化装置1、35、70、95と同じである。しかしながら、第5実施形態に示す空気浄化装置100においては、光増感色素溶液13が布102、光増感色素溶液補給体104により保持された状態となっている。このため外部から振動、衝撃を受けても、光増感色素溶液13が還気ダクト72内にこぼれたり、外部に漏洩する危険性が少ない。このため振動を受ける新幹線等の電車、飛行機、船舶など交通具の空調システムに好適に組み込む、空気浄化を行なうことができる。
【0062】
図7は本発明の第6実施形態である空気浄化装置120の概略的構成を示すプロセスフロー図である。第1から第5実施形態に示す空気浄化装置1、35、70、95、100と同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。第1から第5実施形態に示す空気浄化装置1、35、70、95、100では、一つの装置、例えば光増感反応塔を用いて、空気中の被処理物の一部を光増感色素溶液13で取込む共に、捕集した被処理物、空気中の被処理物を光増感反応を利用して無害化するが、空気浄化装置120は、空気中の被処理物を洗浄液を用いて取込む装置と、取込んだ洗浄液中の被処理物を光増感反応を使用して無害化する装置が完全に分離している点が異なる。
【0063】
空気浄化装置120は、被処理物を含む空気と洗浄液とを接触させ、洗浄液中に被処理物を取込み空気を洗浄する空気洗浄装置122、空気洗浄装置122が取込んだ被処理物を含む洗浄液を受入れ、光増感反応により一重項酸素を発生させ被処理物を無害化する光増感反応塔124、光増感反応塔124内に所定の波長の光を照射する照射装置126、光増感反応塔124に被処理物を含まない空気を供給する空気供給装置(図示省略)を有する。
【0064】
空気洗浄装置122は、充填塔タイプの反応装置であり、円筒状の塔本体130を有する。塔本体130内には気液接触効率を高める充填材132が充填され、充填材132の上部には洗浄液をスプレーするスプレーノズル134が取付けられている。スプレーノズル134は、塔本体130の下部と循環ライン136を介して接続し、循環ライン136に介装された循環ポンプ138がスプレーノズル134に洗浄液140を送液する。洗浄液140は、塔本体130内を落下する間に、塔本体130下部から送込まれ塔本体130内を上昇する被処理物を含む空気と気液接触する。これにより空気中の被処理物は洗浄液140に吸収又は捕集される。浄化された空気は、塔本体130の上部に設けられたデミスタ142でミストが捕集された後、排気ライン143を介して系外に放出される。なお排気ライン143に循環ライン144を設け、空気を循環させてもよい。
【0065】
ここで使用する洗浄液は、空気中の被処理物を吸収又は捕集又は他の方法で取込むことが可能であり、光増感色素に悪影響を与えないものであれば、特に種類は問われない。例えば、水、有機溶剤と水との混合溶液などを使用することが可能であり、被処理物をより迅速に取込めればより好ましい。必要に応じて洗浄液に、被処理物の吸収、捕集を促進する薬剤を添加してもよい。
【0066】
光増感反応塔124は、気泡塔タイプの反応装置であり、基本的構成は第1実施形態に示す光増感反応塔5と同じである。塔本体146内に、水に光増感色素を溶解させた光増感色素溶液13を保有し、空気洗浄装置122から被処理物を含む洗浄液が、供給管148を通じて送られる。また光増感反応塔124内には、図示を省略した空気供給装置から供給される被処理物を含まない空気が、空気吹込ノズル150を介して供給され、光増感反応塔124内では被処理物を含まない空気、照射装置126から照射される光により光増感反応が起こり、洗浄液中の被処理物は無害化される。空気洗浄装置122から送り込まれた洗浄水は、ここで無害化されオーバーフロー管152から排出される。
【0067】
第6実施形態に示す空気浄化装置120において、光増感反応塔124では被処理物は液中に存在するため、光増感反応塔124内での被処理物の平均滞留時間が長く確実に被処理物を無害化することができる。さらに空気浄化装置120は、空気中の被処理物を除去する空気洗浄装置122と被処理物を一重項酸素により無害化する装置が完全に分離されているので、空気中の被処理物を除去する工程と被処理物を一重項酸素により無害化する工程とを分離することが可能である。これにより一重項酸素による酸化速度の遅い被処理物であっても、光増感反応塔124において、被処理物を時間をかけて無害化することができる。さらに、光増感反応塔124をコンパクト化することが可能であり、装置コストを抑えることができる。
【0068】
第2から第6実施形態に示す空気浄化装置35、70、95、100、120において、光増感色素がローズベンガルに限定されないこと、光増感色素を分散させる液体は水に限定されないこと、光の照射装置の設置要領等を変更可能なことは、第1実施形態に示す空気浄化装置1と同じである。
【0069】
本発明に係る空気浄化装置は、一重項酸素を利用して空気中の被処理物を無害化するため、一重項酸素で無害化可能であれば被処理物は特に限定されない。被処理物としては、高病原性鳥インフルエンザやSARS、豚由来新型インフルエンザウイルス等の新興ウイルス、空気を介して感染が拡大するウイルスやバクテリア、メチルメルカプタンなどの臭気物質が例示される。後述の実験に使用したポリオウイルスは、ピコルナウイルス科に属するエンベロープを持たない一本鎖RNAウイルスであり、各種の消毒液に対して比較的強いウイルスである。この実験において、光増感反応を用いてポリオウイルスを不活化させることが可能なことが確認できた。さらにインフルエンザウイルス等のエンベロープを有するウイルスに対しても、高い不活化効果を確認した。この結果から本発明を空気浄化装置、空気浄化方法、ウイルスの不活化方法、臭気物質の脱臭方法として好適に使用することができる。
【実施例】
【0070】
参考例1
超純水にローズベンガルを溶解させた10μM濃度のローズベンガル水溶液25mlを、円筒状のガラス製容器に充填した。ガラス製容器の上部からガラス細管からなる空気供給管を液中に挿入し、さらにガラス製容器の外壁から約5cm離れた場所に光源を設置した。ローズベンガル水溶液にポリオウイルス1型(Sabinl型ワクチン株)を約5×10
6PFU/mlの濃度になるように添加すると同時に、空気供給管から100ml/minの空気を供給し、さらにローズベンガル水溶液に光を照射させた。この時を0分として、以降、空気の供給及び光の照射を継続し、この間、ローズベンガル水溶液の一部を採取しウイルスの感染価をVero細胞を用いたPlaque法で測定した。比較例1として遮光をした実験を行なった。他の条件は
参考例1と同じである。また比較例2として、ローズベンガルを添加せず、水を用いた場合での実験を行なった。他の条件は
参考例1と同じである。
【0071】
実験の結果を
図8に示した。
参考例1では、時間経過と共にウイルス感染価は徐々に低低下し、添加直後(0分)には1.0×10
6PFU/0.2mlであったものが、実験終了の180分には7.0×10
3PFU/0.2mlであった。比較例1では、実験終了の180分のウイルス感染価は3.5×10
5PFU/0.2mlであった。比較例2では、ウイルス感染価の低下は認められなかった。
【0072】
参考例2
ローズベンガルの濃度を
参考例1の濃度の10倍である100μM濃度として実験を行なった。他の条件は
参考例1と同一である。比較例3として遮光をした実験を行なった。他の条件は
参考例2と同じである。
【0073】
実験の結果を
図9に示した。
参考例2では、時間経過と共にウイルス感染価は低下し、実験終了の180分後には検出限界未満(<1.0PFU/0.2ml)であった。比較例3では、ウイルス感染価の低下は認められなかった。
【0074】
参考例3
ウイルスにAソ連型インフルエンザウイルスを使用し、初期濃度6.0×10
3PFU/0.2mlとした以外、他の条件は
参考例1と同じである。比較例4は、比較例2に対応する。
【0075】
実験の結果を
図10に示した。
参考例3では、実験開始後5分で検出限界未満(<5.0PFU/0.2ml)となった。
【0076】
参考例4
ウイルスにB型インフルエンザウイルスを使用し、初期濃度1.5×10
5PFU/0.2mlとした以外、他の条件は
参考例1と同じである。比較例5は、比較例2に対応する。
【0077】
実験の結果を
図11に示した。
参考例4では、実験開始後5分で1.0×10PFU/0.2ml、実験開始後10分で検出限界未満(<5.0PFU/0.2ml)となった。
【0078】
参考例5
ウイルスに単純ヘルペスウイルスを使用し、初期濃度1.0×10
5TClD
50/0.2mlとした以外、他の条件は
参考例1と同じである。比較例6は、比較例2に対応する。
【0079】
実験の結果を
図12に示した。
参考例5では、実験開始後5分で検出限界未満(<5.0PFU/0.2ml)となった。
【0080】
実施例
1
ウイルスにカリシウイルスを使用し、初期濃度1.2×10
5PFU/0.2mlとした以外、他の条件は
参考例1と同じである。比較例7、比較例8は、比較例1、比較例2に対応する。
【0081】
実験の結果を
図13に示した。実施例
1では、実験開始後5分で3.0×10
3PFU/0.2ml、実験開始後15分で検出限界未満(<5.0PFU/0.2ml)となった。
【0082】
参考例6
ウイルスに豚由来新型インフルエンザウイルス(H1pdm)を使用し、初期濃度2.0×10
4PFU/0.2mlとした以外、他の条件は
参考例1と同じである。比較例9は、比較例2に対応する。
【0083】
実験の結果を
図14に示した。
参考例
6では、実験開始後5分で3.0×10PFU/0.2mlに、15分後には検出限界未満(<5.0PFU/0.2ml)となった。
【0084】
参考例
7
実験装置の概略的構成を
図15に示した。光増感反応塔は、スプレー塔タイプの光増感反応塔160と気泡塔タイプの光増感反応塔162からなり、各々外部に照明装置164、166を有する。光増感反応塔160、162の塔本体は、無色透明アクリル樹脂製で内径200mm、高さ1400mmの円筒容器である。照明装置164、166には、それぞれ可視光源として長さ1200mm、32Wの白色蛍光灯4本を使用し、光増感反応塔160、162の周囲に均等に配置した。白色蛍光灯と光増感反応塔160、162の塔本体との距離は約100mmとした。また、2塔の光増感反応塔160、162は、液循環ライン168、液循環ポンプ170を介して接続し、2塔の光増感反応塔160、162の間で光増感色素溶液を循環させた。被処理物を含む空気は、内容積約40Lのタンク172に充填し、被処理物を含む空気をブロワー174で光増感反応塔160に送り、光増感反応塔160から排出される空気は、ガス循環ライン176を介してガスタンク172に戻した。光増感反応塔162には、ガラス細管178を用いて被処理物を含まない空気を吹込んだ。
【0085】
光増感色素溶液には、10μM濃度のローズベンガル水溶液を使用し、ローズベンガル水溶液の全液量は50L、液循環ポンプ170の吐出量は12L/minとした。被処理物はメチルメルカプタン、濃度は40ppmとし、メチルメルカプタンの濃度は、ポケッタブルマルチガスモニターGX−2001(理研計器製社製)で計測した。光増感反応塔162に吹込む空気量は0.5L/minとした。ブロワー174の送風量は3m
3/minである。
【0086】
ブロワー174、液循環ポンプ170及び照明装置164、166を起動させ、メチルメルカプタンをローズベンガル水溶液に吸収させつつ、一重項酸素を発生させメチルメルカプタンを分解させた。実験開始から5分以内にタンク172内のメチルメルカプタン濃度は7.5ppmに減少した。ローズベンガル水溶液中のメチルメルカプタンの濃度は1.5時間で1/3に低下した。
【0087】
参考例
8
光増感反応塔162に吹込む空気量を8L/minとした。他の条件は、
参考例
7と同一である。実験の結果、ローズベンガル水溶液中のメチルメルカプタンの濃度は1分間で完全に分解された。
【0088】
参考例
9
実験装置の概略的構成を
図16に示した。光増感反応塔は、スプレー塔タイプの光増感反応塔180と気泡塔タイプの光増感反応塔182からなり、各々外部に照明装置184、186を有する。光増感反応塔180、182の塔本体は、無色透明アクリル樹脂製で光増感反応塔180は、内径80mm、高さ210mmの円筒容器、光増感反応塔182は、内径80mm、高さ260mmの円筒容器である。照明装置184、186には、それぞれ可視光源として白色蛍光灯を使用し、光増感反応塔180、182の周囲に均等に配置した。また、2塔の光増感反応塔180、182は、液循環ライン188、液循環ポンプ190を介して接続し、2塔の光増感反応塔180、182の間で光増感色素溶液を循環させた。光増感反応塔内の空気は、光増感反応塔180の外部に設置したブロワー192で、光増感反応塔180内を空気が上昇流となるように光増感反応塔180内で循環させた。光増感反応塔182には、ガラス細管198を用いて被処理物を含まない空気を吹込み、頂部に設けたサンプル採取口196から外部に排出した。
【0089】
光増感色素溶液には、10μM濃度のローズベンガル水溶液を使用し、ローズベンガル水溶液の全液量は2.4Lとした。照度は、光増感反応塔180で3500ルクス、光増感反応塔182で6000ルクスである。
【0090】
装置を作動させながら、サンプル採取口からAソ連型インフルエンザウイルスを、水溶液中の最終濃度が2.5×10
2PFU/0.2mlになるように添加した。添加5分、15分、30分後に水溶液1mlを採取し、それらにおけるウイルスの感染価を測定した。比較例10では、ローズベンガル水溶液の代わりに純水を使用した。
【0091】
結果を表1に示した。ローズベンガル水溶液中では、ウイルス添加5分後でも感染性ウイルスは検出されなかった。一方、比較例10では、ウイルス添加30分後においても、感染価の低下はわずかであった。
【0092】
【表1】
【0093】
参考例
10
実験装置の概略的構成を
図17に示した。
図17に示す実験装置は、
図16の実験装置が閉鎖系であるのに対して開放系である。
図16と同一の部材には同一の符号を付して、説明を省略する。Aソ連型インフルエンザウイルスは、光増感反応塔180の気相部に、霧化器200を用いてAソ連型インフルエンザウイルスを含む空気を流入することで行い、また光増感反応塔180の頂部から流出した空気を、ウイルス維持培地40mlを充填したイーピンジャー202を通過させ、そこに流出した空気中のウイルスを捕捉、回収した。
【0094】
装置を作動させながら、3.0×10
2PFU/0.2ml濃度のAソ連型インフルエンザウイルスを、霧化器を用いて120分間、合計40mlのウイルス液を連続的に噴霧した。噴霧15分、30分、45分、60分、75分、90分、105分及び120分後に、循環しているローズベンガル水溶液1mlをサンプル採取口196から採取すると共に、イーピンジャー202内の維持培地も一部採取し、それらのウイルス感染価を測定した。
【0095】
結果を表2に示した。霧化状態で添加したウイルスは、その大部分が光増感反応塔180内でシャワー状に噴霧したローズベンカル水溶液に捕捉されることで、装置内を循環している水溶液に分散したと考えられた。一方、光増感反応塔180内でローズベンガル水溶液と接触しなかった空気中のウイルスは、最終的にイーピンジャー200内にトラップされるが、その量は極めて少量で、噴霧開始後120分後のイーピンジャー内維持培地内12ml中に、感染性ウイルスは2個(2.0PFU)しか確認されず、本実験では、光増感反応塔180に導入された空気中のウイルスのほとんどが装置内で捕捉され、水溶液中で不活化されたと考えられた。
【0096】
【表2】
【0097】
可視光条件下で、10μM濃度のローズベンガル水溶液300mlを用いて、空気の通気量を50mL/minとし、当該水溶液中の臭気化合物の分解速度を測定した。測定結果を表3に示した。メチルメルカプタンは、10分以内に、スカトールは60分以内に完全に分解し、硫化メチルは60分以内に分解率96%となった。
【0098】
【表3】