(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の、又は複数対の前記チップ封止体の切欠き面が対向するように積層され、それぞれの前記切欠き面が形成する空間の形状が、前記一対の、又は複数対の前記チップ封止体の各重ね合わせ面を対称面とする、面対称な形状である請求項2記載の半導体チップ積層体。
それぞれの前記チップ封止体の前記第1ボンディングワイヤの前記外部装置側の端部と前記第2ボンディングワイヤとは直接接続されている請求項1乃至5の何れか一項記載の半導体チップ積層体。
半導体集積回路及びパッドを備えた半導体チップとなる複数の領域を有する半導体ウエハにダイシングテープを貼り付け、前記半導体ウエハをダイシングし、前記ダイシングテープ上に所定間隔で配置された複数の半導体チップを作製するダイシング工程と、
前記ダイシング工程により得られた個々の前記半導体チップのうち、隣接する前記半導体チップの前記パッド間を第1ボンディングワイヤにより導電接続するパッド接続工程と、
前記ダイシングテープ上に、前記半導体チップ及び前記第1ボンディングワイヤを封止する第1樹脂を形成する第1樹脂形成工程と、
前記ダイシングテープを剥離する剥離工程と、
前記半導体チップ及び前記第1樹脂の前記剥離工程で露出した部分を封止する第2樹脂を形成する第2樹脂形成工程と、
隣接する前記半導体チップ間に位置する前記第1樹脂、前記第1ボンディングワイヤ、及び前記第2樹脂を切断して、前記第1ボンディングワイヤの端部が前記第1樹脂から露出する複数のチップ封止体を形成するチップ封止体形成工程と、
前記複数のチップ封止体を積層し、各々の前記チップ封止体の前記第1樹脂から露出する前記第1ボンディングワイヤの端部同士を第2ボンディングワイヤにより相互に接続してチップ積層体を形成するチップ積層体形成工程と、
前記チップ積層体を配線基板上に搭載し、前記チップ積層体と前記配線基板とを封止する第3樹脂を形成する第3樹脂形成工程と、を有する半導体チップ積層体の製造方法。
前記チップ封止体の角部を切欠いて形成される切欠き面内に、前記第1ボンディングワイヤの端部を露出させる角部切欠き工程を有する請求項7又は8記載の半導体チップ積層体の製造方法。
前記パッド接続工程では、隣接する前記半導体チップの前記パッド間の前記第1ボンディングワイヤを含む面内における前記第1ボンディングワイヤの形状が、少なくとも1個の凹部を有する曲線となるように形成される請求項7乃至9の何れか一項記載の半導体チップ積層体の製造方法。
前記第2樹脂形成工程と前記チップ封止体形成工程との間に、前記第2樹脂の前記半導体チップを封止する面とは反対側の面に前記チップ封止体の個片化用のダイシングテープを貼り付ける工程を有し、
前記個片化用のダイシングテープが、前記チップ封止体との接着面の反対側の面に接着層を有する請求項7乃至10の何れか一項記載の半導体チップ積層体の製造方法。
前記チップ封止体の角部を切欠いて形成される切欠き面内に、前記第1ボンディングワイヤの端部を露出させる角部切欠き工程を有する請求項13又は14記載の半導体チップ積層体の製造方法。
前記パッド接続工程では、隣接する前記半導体チップの前記パッド間の前記第1ボンディングワイヤを含む面内における前記第1ボンディングワイヤの形状が、少なくとも1個の凹部を有する曲線となるように形成される請求項13乃至15の何れか一項記載の半導体チップ積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の実施の形態を説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態は、個片化されたチップ封止体の角部が切欠き面を有する、いわゆるベベル形状を有することを特徴とするチップ積層体の例である。
【0014】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る個片化されたチップ封止体25を例示する図である。半導体チップ21のパッド22に導電性連結材23が連結され、導電性連結材23の外部装置側の端部の先端の面24を除いて、半導体チップ21の全面及び導電性連結材23が樹脂封止されてチップ封止体25が形成されている。半導体チップ21の集積回路面21a及び側面21bは絶縁樹脂26により封止され、半導体チップ21の裏面21cは絶縁樹脂27により封止されている。絶縁樹脂26及び27には、例えば、エポキシ系樹脂等の素材を使用することができる。さらに、絶縁樹脂27には、絶縁と接着の2つの機能を併せ持つダイアタッチフィルムを使用する。ダイアタッチフィルムを使用すると、半導体チップ裏面を樹脂封止することができ、かつ、ダイシング後にチップ封止体を積層する工程において、積層のための接着フィルム貼付又は接着剤塗布等の工程を省略できるので、工程の簡素化を図ることができる。
【0015】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るチップ封止体の角部に切欠き面31及び32を有するチップ封止体を例示する図である。前出の
図2のチップ封止体25の角部28に、切欠き面31及び32が形成され、集積回路面21aに対してなす各度がそれぞれθ1及びφ1の平面である。θ1及びφ1は、チップ封止体の積層の状態における導電性連結材33の形状及びボンディングワイヤ形状の設計条件に応じて、例えば、30度、45度又は60度等の値である。ボンディングワイヤの長手方向に対する切欠き面の傾斜角度を変えて、絶縁樹脂から露出するボンディングワイヤの端部の先端の面の面積が広くなるように設定するためである。特別な条件がなければ、θ1とφ1とを同一の値としてよい。
【0016】
(第1の実施の形態の効果)
チップ封止体が積層された場合に、電気的特性向上の効果が顕著である。切欠き面の形成によって、ボンディングワイヤの端部の先端の面の面積を広くすることにより、チップ封止体を良好な条件で導電接続することができ、電気的特性を向上させることができる。また、導電性連結材33の先端の面を接続するための導電性のボンディングワイヤが、導電性連結材33の先端の面の接続箇所において接続する際に、つぶれ変形等による拡がり等を生じても、切欠き面31及び32が形成する窪みの空間内に留まる。従って、チップ封止体の側面37から導電性のボンディングワイヤの変形した部分がはみ出すことはなく、パッケージの外形寸法を所定の値に保持できる寸法的効果を有する。
【0017】
(第1の実施の形態の変形例)
図4は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係るチップ封止体の角部に凹形の曲面41を有するチップ封止体を例示する図である。
【0018】
(第1の実施の形態の変形例の効果)
導電性連結材とボンディングワイヤの接続箇所において、ボンディングワイヤが変形して拡がりを生じても、凹形の曲面が、平面の切欠き面の場合より大きな空間部分を形成するので、チップ封止体の側面42からボンディングワイヤの変形した部分がはみ出すことがない。従って、パッケージの外形寸法を所定の寸法に、精度よく保つことができる。
【0019】
(第1の実施の形態の他の変形例)
本発明の第1の実施の形態の他の変形例は、チップ封止体の上下の角部に切欠き面を設けたチップ封止体である。
【0020】
図5は、本発明の第1の実施の形態の他の変形例に係る上下の角部に切欠き面を設けたチップ封止体50を例示する図である。前述の
図3で示したチップ封止体における切欠き面31及び32に加えて、集積回路面の反対側に位置する絶縁樹脂27の側の角部に切欠き面51,52を設ける。切欠き面51及び52の、集積回路面21aに対してなす各度は、それぞれθ2及びφ2である。
【0021】
(第1の実施の形態の他の変形例の効果)
係る上下の角部に切欠きを有するチップ封止体50を積層すれば、導電性連結材の露出端面を導電性のボンディングワイヤを接続するに際し、接続部分の周辺の空間を広くとることができるので、接続のためのボンディングツールの動作を円滑に行うことができる。従って、ボンディングの工程が簡素化され、また、製品品質を向上させることができる。また、切欠き面を凹形の曲面とした場合にも、同様の効果を上げることができる。
【0022】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、複数のチップ封止体と、導電性のボンディングワイヤと配線基板とを有するチップ積層体が樹脂封止された半導体チップ積層体である。
【0023】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体チップ積層体60を例示する図である。チップ封止体61が積層されて、角部の各々の切欠き面62に露出した導電性連結材の端部63が、ボンディングワイヤ64によって接続され、チップ積層体が形成され、チップ積層体は、配線基板65上の接着層66に載置され、ボンディングワイヤ64の端部が配線基板65の接続端子67に接続されている。チップ積層体、配線基板の接続端子及び配線基板は、絶縁樹脂68により封止され、半導体チップ積層体60が形成される。
【0024】
配線基板65としては、エポキシ樹脂等の有機材料多層配線基板、またはシリコンを主体とする半導体基板等広い範囲の配線基板を使用することができる。
【0025】
(第2の実施の形態の効果)
図6に示すような半導体チップ積層体60の形成によって、半導体チップを多段積層したときの積層方向の投影面積を、半導体チップのサイズに近づけることができる。また、チップ封止体の側面に沿って配線するボンディングワイヤを最短の長さにすることができるので、半導体チップ積層体の電気的特性を向上させることができる。
【0026】
(第2の実施の形態の応用例1)
本発明の第2の実施の形態の応用例1は、2対のチップ封止体の切欠き面が対向するように積層された半導体チップ積層体である。
【0027】
図7は、本発明の第2の実施の形態の応用例1に係る、2対の、切欠き面が対向したチップ封止体と、他の1個のチップ封止体とが積層された半導体チップ積層体70を例示する図である。半導体チップ積層体は、切欠き面71が対向している一対のチップ封止体71a及び71bと、切欠き面72が対向している他の一対のチップ封止体72a及び72bと、他の1個のチップ封止体73を有している。各チップ封止体が積層され、導電接続されてチップ積層体を形成し、チップ積層体が配線基板75の上に積層搭載されて、半導体チップ積層体70を形成する。なお、説明の便宜のため、
図7において半導体チップ積層体の全体を封止する樹脂は省いている。
【0028】
図8は、
図7のA部及びB部の拡大図である。チップ封止体71aの切欠き面71が形成する空間74a及び76aの形状が、チップ封止体71bの切欠き面71が形成する空間74b及び76bの形状と、チップ封止体71a及び71bの重ね合わせ面77を対称面とする面対称な形状であることを示している。ただし、切欠き面の集積回路面に対しなす角度に関して、導電接続におけるボンディングツールの動作等に支障がない場合には、面対称でなくともよい。
【0029】
なお、
図7及び
図8において、ボンディングワイヤはチップ封止体71a及び71bの側面に接している状態を示しているが、必ずしも接触させずに設けることができる。
【0030】
(第2の実施の形態の応用例1の効果)
角部に切欠きを設けたチップ封止体を積層することにより、導電性のボンディングワイヤの接続時に、チップ封止体の接続部分の周辺の空間を広くとることができるので、ボンディングツールの動作を円滑に行うことができ、工程簡素化及び製品品質の向上を図ることができる。また、
図8において、導電接続のためのボンディングワイヤ78が、導電性連結材81との接続箇所82において変形による拡がりを生じても、切欠き面71が形成する空間74a,74b,76a及び76bが、係る拡がりの部分を内包することができる。従って、導電性のボンディングワイヤの変形した部分が、チップ封止体の側面79からはみ出すことがなく、パッケージの外形寸法を所定の値に保持できる寸法的効果を有する。
【0031】
(第2の実施の形態の応用例2)
本発明の第2の実施の形態の応用例2は、2対のチップ封止体の切欠き面が対向するように積層された、他の半導体チップ積層体である。
【0032】
図9は、切欠き面が凹形の曲面である半導体チップ積層体の部分を例示する図であり、前述の
図7におけるA部及びB部に相当している。
図9は、ボンディングワイヤの導電接続の前の状態を示している。チップ封止体91aの切欠き面91が形成する空間94a及び96aの形状が、チップ封止体91bの切欠き面91が形成する空間94b及び96bの形状と、チップ封止体91a及び91bの重ね合わせ面97を対称面とする面対称な形状であることを示している。なお、ボンディングツールの動作に支障がない場合には、面対称でなくともよい。
【0033】
(第2の実施の形態の応用例2の効果)
切欠き面が凹面を形成する応用例2の場合には、上記応用例1の効果を得ると共に、応用例1の平面の切欠き面の場合よりも更に広い空間を確保できるので、応用例1の効果を更に高めることができる。
【0034】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る発明は、半導体チップ積層体の製造方法である。
【0035】
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体チップ積層体の製造方法のステップを例示する図である。各製造ステップにおける製品の形態を例示した
図11(a)〜
図13Bを参照して、
図10の製造方法のステップを説明する。
【0036】
(ステップ1.ダイシング)
図11(a)は、準備すべき半導体ウエハ110を例示する図である。外径が6インチ、8インチ又は12インチの半導体ウエハに110にダイシングテープを貼り付け、ダイサ装置に装着後、個々の半導体チップに分離する。ウエハの厚さは、例えば50μmである。パッケージ製品の設計条件に応じて、予め所定の寸法に加工されている。
【0037】
図11(b)は、半導体ウエハ110がダイサ装置(図示せず)により個々の半導体チップ111に分離された状態を例示する図である。このとき、ダイシングテープ112は、切断されることなく、かつテープの接着力によって、個々の半導体チップ111を、ダイサ装置のブレードによる切り代d1の間隔で配置された状態に保持することができる。ブレードによる切り代d1は、例えば50μmである。
【0038】
本発明のチップ積層体に使用されるチップ封止体の樹脂封止については、半導体チップの相互の絶縁性確保のため、十分な樹脂封止が必要であり、特に半導体チップの側面は十分な絶縁材の厚さを要する。そこで、本発明は、切り代d1に加えて、半導体チップ同士の十分な分離間隔を設定するための手段を提供している。
【0039】
(ステップ2.チップ封止体形成)
ステップ2.a)半導体チップ間隔設定において、ダイシングテープの縁辺部分をダイシングリングにより保持し半径方向の外側へ引張り拡大させ、即ちダイシングテープのエキスパンドによって、半導体チップの分離間隔を拡げる。このエキスパンドは、ダイシングリングに保持されたダイシングテープをエキスパンダ装置に装着して実施することができる。半導体チップの分離間隔は、通常100μm〜200μmとし、また、封止の条件によっては更に広く、100μmとすることができる。
【0040】
ステップ2.b.パッド連結において、チップ封止体同士の導電接続の接続部を形成するため、半導体チップの上のパッド同士を、導電性連結材を用いて連結する。
【0041】
図11(c1)は、導電性連結材としてボンディングワイヤを用いた、パッド連結を例示する図である。(ステップ2.チップ封止体形成)のa)半導体チップ間隔設定において間隔が分離された半導体チップ111の上のパッド113同士を、ボンディング装置(図示せず)を用いて、ボンディングワイヤ114によって連結する。ボンディングワイヤの直径は、通常、20μm〜30μmであるが、接続を容易にする等の目的で、より大きい直径を使用することができる。連結されたボンディングワイヤの頂点の高さは、半導体チップの集積回路面から40μmの高さである。導電性連結材の材質は、金、アルミニウム、銅、タングステンまたはそれらの合金である。また、ボンディングワイヤの他にボンディングリボンを使用することができる。パッド連結されたボンディングワイヤの形状は、
図11(c1)に示すような、上に凸のなだらかな曲線であるが、
図11(c2)に示すように、ボンディングワイヤを横から見た形状が、英文字のM字形となるよう、ワイヤボンディングの動作を制御することができる。すなわち、「ボンディングの接続点の間のボンディングワイヤを含む面内におけるボンディングワイヤの形状が、少なくとも1個の凹部を有する曲線となるように形成」することができる。
【0042】
なお、ステップ2.において、a)半導体チップ間隔設定(ダイシングテープ引張り拡大)と、b)パッド連結の順序を入れ替えて、パッド連結を先に行ってから、ダイシングテープ引張り拡大を行うことができる。この場合には、パッド連結後にダイシングテープ引張り拡大を行うことにより、パッド間を繋ぐワイヤも同時に引張られるので、ワイヤの高さが下がり、封止体の高さを低くすることが可能である。
【0043】
ステップ2.c)集積回路面、側面及び導電性連結材の樹脂封止において、絶縁樹脂を用いて、チップ封止体を形成する。ボンディングワイヤ等の導電性連結材が封止されて、次のステップ3で導電接続されるべき接続点の位置に固定される。
【0044】
図11(d)は、チップ封止体形成における、集積回路面、側面及び導電性連結材の樹脂封止の状態を例示する図である。ダイシングテープ112に載置された状態の半導体チップが樹脂封止され、半導体チップの集積回路面115、側面116及び導電性連結材のボンディングワイヤ114が絶縁樹脂116bで封止された状態を示す。絶縁樹脂の材料は、フィルム状樹脂又は液状樹脂等を使用する。フィルム状樹脂は、シリカまたはアルミナをフィラーとして含んだエポキシ樹脂を使用することができる。集積回路面、側面及び導電性連結材の全体を、加熱等により軟化した樹脂で封止し、導電性連結材の撓み状態を保ちつつ硬化させる。その他、液状樹脂としてポリイミド樹脂を用いて、チップ樹脂封止を行うことができる。封止する樹脂の厚さd2は50μmのレベルである。
【0045】
ステップ2.d)半導体チップ裏面樹脂封止において、一群のチップ封止体が形成される。半導体チップ裏面の樹脂封止を行うために、裏面に密着しているダイシングテープを剥離する。ダイシングテープ112は、ステップ2.のa)半導体チップ間隔設定の工程から、c)集積回路面、側面及び導電性連結材の樹脂封止の工程に至るまでの間、半導体ウエハから分離した各半導体チップ111を保持していた。ダイシングテープ112を剥離し、半導体チップの裏面を
図11(e)に示す絶縁樹脂117bにより封止し、半導体チップの全面が封止される。絶縁樹脂として、ダイアタッチフィルムを使用する。
【0046】
ダイアタッチフィルムは、絶縁性を有しかつ接着の機能を有するので、絶縁樹脂層として半導体チップ裏面樹脂封止に使用することができる。予め半導体チップ裏面の封止樹脂の表面に接着の機能をもたせることができるので、チップ封止体個片化後に行うチップ封止体積層の工程において、ダイアタッチフィルム貼付又は接着剤塗布等の工程を省くことができる。
【0047】
また、他の製造方法としては、絶縁樹脂として上記の集積回路面115及び側面116等を封止した場合と同様に、フィルム状樹脂、液状樹脂又はタブレット状のエポキシ樹脂等を使用することができる。樹脂の厚さd3は、例えば50μmである。
【0048】
ステップ2.e)チップ封止体個片化において、半導体チップ積層体に用いられるチップ封止体を形成する。このため、チップ封止体の個片化用のダイシングテープを準備する。
【0049】
図11(e)は、半導体チップ裏面樹脂封止を終えた一群のチップ封止体にチップ封止体の個片化用のダイシングテープが貼付された状態を例示する図である。チップ封止体の個片化用のダイシングテープ119を、樹脂封止された一群のチップ封止体118の裏面に貼付し、ダイサ装置用のフレーム(図示せず)に固定する。
【0050】
なお、ダイシングテープの使用に際して、絶縁樹脂の性質を有するダイアタッチフィルムが積層された構造を有するダイシングテープを使用することができる。即ち、
図11(e)において、ダイアタッチフィルム117bがダイシングテープ119に積層されている状態のテープを改めて準備し、裏面が樹脂封止されていない一群のチップ封止体の裏面に貼付し、樹脂封止する。係るダイアタッチフィルムが積層されたダイシングテープを使用することにより、従来のダイシングテープ(
図11(d)に示す112)剥離後の半導体チップ裏面樹脂封止及び積層のための接着剤塗布の工程を、上述の積層したダイシングテープの119の部分のみを剥離することにより、簡素化できる。従って、次に示すステップ2.e)チップ封止体個片化及びステップ3.a)チップ封止体積層の工程を一層簡素化することができる。
【0051】
ステップ2.e)チップ封止体個片化において、一群のチップ封止体118をダイサ装置により個片化し、半導体チップ積層体に用いられるチップ封止体を得る。
【0052】
図11(f)は、一群のチップ封止体から個片化されたチップ封止体120を例示する図である。ただし、ダイシングテープを省いて示している。個片化されたチップ封止体同士の間隔は、例えば20μm〜30μmである。次に、ベベルカット用ブレード等を装着したダイサ装置(図示せず)を用いて、チップ封止体の角部の切欠き面121を形成する。この切欠き面121における導電性連結材の端部の露出面が、導電性連結材の長手方向122に対し傾斜角度θ3を有するので、導電性のボンディングワイヤとの接続面を広くとることができ、良好な電気的特性を有することができる。切欠き面の角度は、導電性連結材の設計形状、樹脂厚さ等の設計条件に応じて選択する。また、複数のブレードを使用するデュアルダイシング等の方法により、効率的なチップ封止体のダイシングを実施することができる。
【0053】
(ステップ3.導電接続)
チップ封止体を積層し、各チップ封止体同士の導電接続を行う。
【0054】
ステップ3.a)チップ封止体積層において、複数の封止チップを積層し相互に固定する。ステップ2.d)半導体チップ裏面樹脂封止において、ダイアタッチフィルムを絶縁樹脂として使用しているので、接着層等を新たに設けることなく複数の封止チップを積層することができる。また、絶縁樹脂層がダイアタッチフィルムの機能を有していない場合には、別の接着層としてのダイアタッチフィルム等を貼付し、チップ封止体を積層する。
【0055】
図11(g)は、別の接着層を設けた場合の、チップ封止体の積層が終了した状態を例示する図である。チップ積層用架台123を利用して、上記のステップ2.e)チップ封止体個片化において個片化されたチップ封止体120を積層して、チップ積層体を形成する。各チップ封止体は、厚さ10μm〜100μmのダイアタッチフィルム124によって、厚さ方向に相互に接着固定される。チップ積層体の一辺の寸法は、8mm〜10mmである。
【0056】
ステップ3.b.導電接続において、各々のチップ封止体の表面から露出した各々の導電性連結材の端部を、導電性のボンディングワイヤにより接続する。
【0057】
図12は、ワイヤボンディングによる導電接続が終了した状態のチップ積層体120aを例示する図である。ボンディングワイヤの材質は、金、アルミニウム、銅、タングステンまたはそれらの合金である。アルミニウムを使用する場合には、その外径は通常100μm以下であり、常温でのボンディングが可能である。積層されたチップ封止体の表面に露出した導電性のボンディングワイヤの端部を、連続一括してボンディングすることができる。
【0058】
チップ封止体の切欠き面に露出する導電性連結材の端部を接続するためのボンディングワイヤは、切欠き面に沿って設けられるので、側面からみた形状が、少なくとも1個の凹部125を有する曲線となる。ボンディングワイヤの凹部125の形状と切欠き面の形成する窪んだ空間に、ボンディングワイヤの接続箇所における変形による拡がり部分が内包されて、チップ封止体の側面からボンディングワイヤがはみ出すことがない。従って、チップ積層体の外形寸法を所定の値に保持することができ、パッケージ製品としての寸法精度を上げることができる。
【0059】
(ステップ4.チップ積層体樹脂封止)
a)チップ積層体の配線基板搭載を行い、チップ積層体と配線基板について、b)樹脂封止を行う。
【0060】
図13Aは、チップ積層体の配線基板搭載を完了した状態を例示する図である。樹脂封止の形状も合わせて示した。ここに、チップ積層体120aの配線基板搭載とは、複数のチップ封止体120が、積層され一体となったチップ積層体120aが、配線基板131の上に固定され、配線基板との間に導電接続を行う実装方法を指している。導電接続は、ボンディングワイヤ133の端部134の長さを調整して、配線基板131の接続端子135との距離を予め見込んだ長さに切断することにより、容易に行うことができる。ダイアタッチフィルムを絶縁樹脂として使用しているので、接着層等を設けることなく複数の封止チップを積層することができる。
【0061】
また、チップ封止体の積層順序等の設計条件に応じて、チップ封止を順次に配線基板の上に積み重ねた後に、チップ封止体同士の導電接続を行ってもよい。
【0062】
図13Bは、チップ積層体の配線基板搭載を完了した他の状態を例示する図である。複数のチップ封止体120が積層され一体となったチップ積層体120aが、配線基板131の上に置かれ、接着層132によって固定されている。
【0063】
なお、それぞれのチップ封止体の有する集積回路の面の向きについて、一方向に向きを揃えてチップ封止体を積層するか、集積回路の面を対向させて、複数の対のチップ封止体を積層するかの選択は、チップ積層体全体の設計条件に合わせて行うことができる。ただし、向きを変えたチップ封止体の積層については、積層する毎に個々の接着樹脂形成が必要である。
【0064】
次に、配線基板搭載の終了したチップ積層体と配線基板について、b.樹脂封止を行い、半導体チップ積層体を得る。
【0065】
前出の
図6は、得られた半導体チップ積層体について、トランスファーモールド法による樹脂封止の形態を例示している。他にポッティング樹脂等を使用したサイドフィルによる樹脂封止も可能である。
【0066】
(第3の実施の形態の効果)
ダイシングテープの引張り拡大と切欠き面の形成によって、工程の簡略化と電気的特性等の製品品質の向上を図ることができる。
【0067】
(第3の実施の形態の変形例)
本発明の第3の実施の形態の変形例は、半導体チップ積層体の他の製造方法である。半導体チップ積層体を構成するチップ封止体に関して、切欠き面を形成しない他の方法を用いることによっても、電気的特性を劣化させることなく、半導体チップ積層体を形成することができる。
【0068】
図14Aは、本発明の第3の実施の形態の変形例に係る他の製造方法により形成された半導体チップ積層体140を例示する図である。前述の(第3の実施の形態)の(ステップ2.チップ封止体形成)における
図11(c2)に示したように、ボンディングワイヤの、連結パッド間の中央部に凹部を有する、いわゆる英文字のM字形の形状を顕著に形成する場合は、チップ封止体の角部の切欠き面の形成をすることなく、導電接続できる。その理由は、
図14Aにおいて、絶縁樹脂面におけるボンディングワイヤ141の端部の先端の面142が、ボンディングワイヤの長手方向X−Xと傾斜角度θ4を有することにより、楕円のような広い面となり、広い接続面を形成するので、次の(ステップ3.導電接続)におけるボンディングが、容易にかつ十分に行えるからである。なお、上記「英文字のM字形」は、
図11(c2)に示されているように、連結パッドの間のボンディングワイヤを含む面内におけるボンディングワイヤの形状に着目したとき、少なくとも1個の凹部を有する曲線となるように形成されることを指す表現である。
【0069】
(第3の実施の形態の変形例の効果)
導電性連結材としてのボンディングワイヤの連結された形状が、少なくとも1個の凹部を有する曲線であるときには、チップ封止体の切欠き面を設けずに、導電性連結材の露出端部の面の広い面積を確保でき、連結部の電気的特性の向上を図ることができる。また、工程の簡素化を図ることができる。
【0070】
(第3の実施の形態の応用例)
本発明の第3の実施の形態の応用例は、外部接続端子を有する複数の半導体チップ積層体の製造方法である。
【0071】
図14Bは、本発明の第3の実施の形態の応用例に係る半導体チップ積層体の製造方法のステップを例示する図である。第3の実施の形態の製造方法を示した前出の
図10のステップと異なるのは、(ステップ4A.チップ積層体樹脂封止)以降の工程である。
【0072】
図14Cは、本発明の第3の実施の形態の応用例に係る外部接続端子を有する複数の半導体チップ積層体を例示する図である。
図14Cを参照して製造方法のステップを説明する。ただし、(ステップ1.ダイシング)から(ステップ3.導電接続)までの各ステップは、第3の実施の形態について
図10に示したステップと同様であるので、説明を省く。
【0073】
(ステップ4A.チップ積層体樹脂封止)
a)において、複数のチップ積層体120aを共通の配線基板144の上に搭載して、b)において、配線基板144と共に絶縁樹脂145により封止し、樹脂封止した半導体チップ積層体146を形成する。
【0074】
(ステップB.樹脂封止チップ積層体外部端子接続)
a)金属バンプ載置、b)リフローによって、金属バンプ等の外部接続端子147を接続する。金属バンプには、スズ,銀等のはんだ又は銅コアボールのはんだ等の材料を選択することができる。
【0075】
(ステップC.チップ積層体パッケージ個片化)
配線基板の個片化すべき位置148をシャー装置等により分離切断して、パッケージ製品が得られる。
【0076】
(第3の実施の形態の応用例の効果)
外部接続端子を有する複数のチップ積層体のパッケージを同時に製造することにより、生産性の向上を図ることができる。
【0077】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態は、前述の第3の実施の形態の製造方法に示した
図10のステップ2.e)チップ封止体個片化から、ステップ3.a)チップ封止体積層にかけての製造工程の、他の製造方法に関するものである。一群のチップ封止体の個片化に際して使用すべきダイシングテープを置き換えて、ダイシングテープの機能を有するダイアタッチフィルムを使用することを特徴とする、半導体チップ積層体の製造方法である。
【0078】
図15Aは、本発明の第4の実施の形態に係る半導体チップ積層体の製造方法を例示する図である。一群のチップ封止体150の個片化に際し、ダイシングテープに替えて、チップ封止体の保持等を行うダイシングテープの機能及びチップ積層時のダイアタッチの接着機能の、2つの機能を併せ持つダイアタッチフィルム151を使用する。ダイアタッチフィルム151は、チップ封止体150に接着し、また、ダイアタッチフィルム151の裏面には接着層152が設けられ、接着層152は、テープ基材157により保護されている。ダイアタッチフィルム151が貼り付けられたチップ封止体150を、ダイシングした後、テープ基材157から剥がして、個片化したチップ封止体が得られる。チップ封止体はダイアタッチ層を有しているので、個片化後直ちに、チップ封止体の積層を行うことができる。なお、テープ基材157の材料としては、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタート、ポリプロピレン等を使用することができる。
【0079】
(第4の実施の形態の効果)
チップ封止体の個片化・積層において、従来行っていたダイアタッチフィルムの貼り付け加工とチップ封止体の個片化用のダイシングテープの貼り付け加工とを、同時に行うことができるので、工程の簡略化を図ることができる。
【0080】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態は、前述の第3の実施の形態の製造方法に示した
図10のステップ2.e)チップ封止体個片化から、ステップ3.a)チップ封止体積層にかけての製造工程に関する、さらに他の製造方法である。一群のチップ封止体の個片化用ダイシングテープの裏面に接着層を設けることを特徴とする。
【0081】
図15Bは、本発明の第5の実施の形態に係る半導体チップ積層体の製造方法を例示する図である。一群のチップ封止体150の面153に貼付されるチップ封止体の個片化用のダイシングテープ154は、チップ封止体150との接着面の反対側の面155に、接着層156を有する。チップ封止体の個片化用のダイシングテープ154にダイアタッチの機能を併せ持たせて、チップ封止体の積層を行う。すなわち、ダイシングテープ154は、チップ封止体150をダイシングする際に、チップ封止体150の全体を固定し、個々のチップ封止体のピックアップ時まで、チップ封止体を保持するとともに、次の積層の工程において、接着層156によって、チップ封止体の積層におけるダイアタッチの機能を有する。ダイシングテープ154の接着層156の側は、テープ基材158によって保護されている。ダイシングテープ154が貼り付けられたチップ封止体150を、ダイシングした後、テープ基材158から剥がして、個片化したチップ封止体が得られる。チップ封止体は接着層を有しているので、直ちにチップ封止体の積層を行うことができる。なお、テープ基材158の材料としては、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタート、ポリプロピレン、塩化ビニル等を使用することができる。
【0082】
(第5の実施の形態の効果)
ダイアタッチフィルムに関する第4の実施の形態の効果と同様に、個片化・チップ積層において、従来行っていたダイアタッチフィルムの貼り付け加工とチップ封止体の個片化用のダイシングテープ貼り付け加工とを、同時に行うことができるので、工程の簡略化を図ることができる。
【0083】
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態は、チップ積層体の最下層の半導体チップが、配線基板にフリップチップ実装されていることを特徴とする半導体チップ積層体である。
【0084】
図16は、本発明の第6の実施の形態に係る半導体チップ積層体160を例示する図である。構造と製造方法は以下の通りである。図は、配線基板との接続面と対向する最下層の半導体チップ161が、配線基板162とフリップチップ接続している場合のチップ積層体を示している。最下層の半導体チップ161は、配線基板162と接続バンプ163によりフリップチップ接続され、その他のチップ封止体164は、ボンディングワイヤ165によってチップ封止体同士が導通されている。半導体チップ161のフリップチップ接続後、配線基板162との間隙をアンダーフィル166により封止する。半導体チップ161の背面にダイアタッチフィルム167を設けて、その上に他のチップ封止体のチップ積層体を積層する。チップ積層体と配線基板との導通のため、チップ積層体の側面に設けられたボンディングワイヤ165と配線基板162の接続端子169とを接続する。配線基板との接続の際、ボンディングワイヤ165の端部170の長さを調整して、配線基板165の接続端子169との距離を予め見込んだ長さに切断しておけば、ボンディングを容易に行うことができる。更に配線基板への外部接続端子の接続も可能である。その場合の製造方法は、(第3の実施の形態の応用例)の半導体チップ積層体の製造方法において示した
図14Bの(ステップ4A.チップ積層体樹脂封止)以降と同様の方法を使用する。
【0085】
(第6の実施の形態による効果)
最下層の半導体チップが多端子を有している場合にも、配線基板と接続させて、半導体チップ積層体を形成することができる。上層に載置されるチップ積層体と組合わせることによって、本発明の半導体チップ積層体の形態を利用できる半導体チップの種類を拡大することができ、複合半導体としての機能拡張に貢献することができる。例えば、多端子のロジック回路のCPUとメモリの半導体チップの積層等を実現することができる。
【0086】
(第7の実施の形態)
本発明の第7の実施の形態は、ダイシングした半導体チップをダイアタッチフィルム(DAF)上の一定の位置に移載して行う半導体チップ積層体の製造方法である。前述の第3の実施の形態においては、半導体チップ同士の分離間隔を設定するため、ダイシングテープの引張り拡大(エキスパンド)の方法を使用したが、第7の実施の形態は、ダイシングした半導体チップを、ダイアタッチフィルム(DAF)上の一定の位置に搭載する手段を用いる。
【0087】
図17は、本発明の第7の実施の形態に係る半導体チップ積層体の製造方法を例示する図である。
【0088】
製造方法は、(ステップ1.ダイシング)、(ステップ2A.チップ封止体形成)、(ステップ3A.導電接続)及び(ステップ4A.チップ積層体の配線接続)の各ステップを有して、半導体チップ積層体が製造される。以下、
図17の製造方法を、ステップの順を追って、
図18A〜
図18Dの各ステップにおける半導体チップの状態を例示する図を参照しながら、説明する。
【0089】
(ステップ1.ダイシング)
半導体ウエハのダイシングにより個々の半導体チップを得るダイシング工程については、前出の第3の実施の形態における状態と同様であるので、説明を省く。
【0090】
(ステップ2A.チップ封止体形成)
当ステップは、ピックアップした半導体チップが、DAF上の一定の位置に搭載され、パッド連結され、半導体チップ全体等が樹脂封止され、更に樹脂封止されたチップ封止体が個別化される工程である。
図18Aの(a)から
図18Cの(g)が、上記のチップ封止体の個別化までの工程を示している。
【0091】
(ステップ2A. a.半導体チップピックアップ、DAF上の一定位置に搭載、DAF仮貼り付け)
図18Aの(a)は、ダイシングテープ上の半導体ウエハが、ダイシングを終えた状態を示している。ダイシングを終えた個々の半導体チップ181は、ダイソーの切り代の間隔d1のままダイシングテープ182に置かれている。係る状態の半導体チップ181をピックアップして、新たに準備したダイアタッチフィルム上の、所定の位置に搭載する。
【0092】
図18Aの(b)は、所定の位置に搭載された半導体チップ181の状態を示している。ダイアタッチフィルム183への搭載の所定の位置は、半導体チップの側面の樹脂封止による封止代と、封止後のチップ封止体個片化におけるダイサ装置のブレードによる切り代(例えば25μm〜30μm)から算定した、各半導体チップの位置である。搭載に際しては、光学的装置を用いた位置設定機構を用いて、十分な搭載位置の精度を確保することができる。
【0093】
ダイアタッチフィルム183の機能は、チップ封止体の積層における接着層の機能、封止樹脂として半導体チップの絶縁性確保及び機械的保護の機能である。半導体チップの半導体集積回路側の面の反対側の面である裏面側は、封止樹脂の機能を有するダイアタッチフィルムによって封止された状態となる。ダイアタッチフィルム183の材料は、例えば日立化成工業(株)製DF402の系統、リンテック(株)製LE5000の系統又は東レ(株)製WL−NCFの系統等を使用する。半導体チップ181との仮貼り付けの条件は、例えば80〜100℃の温度で10秒の時間を要する。半導体チップの封止において、特に半導体チップのコーナー部における封止材の密着性が重要で、製品品質に影響を与える。ダイアタッチフィルム183の、半導体チップが仮貼り付けされる面と反対側の面には、表面の保護等のためのテープ基材183Aが設けられている。なお、テープ基材183Aの材料としては、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタート、ポリプロピレン等を使用することができる。
【0094】
図18Aの(c)は、仮貼り付けされた半導体チップの状態を示している。仮貼り付け時に、樹脂が流動し、半導体チップ181の下方側面184に密着して、半導体チップと確実に密着した封止状態を形成する。
【0095】
(ステップ2A. b.パッド連結(ワイヤボンディング))
図18Bの(d)は、パッドが連結された状態を示している。パッド連結の形態は、各半導体チップを隔てている溝181aを跨ぐ形態である。係る跨ぐ形態を必要とするのは、2段階先のチップ封止体個片化(ステップ2A.のd.(
図17))において、ボンディングワイヤを、ダイシングされた後の樹脂表面に露出させ、さらに導電接続するためである。樹脂表面における露出部分を広い面積として、(ステップ3A.のb.(
図17))において精度よく導電接続することができる。また、パッド連結の形状は、
図18Bの(d)に示すような上に凸の形状に限ることなく、ボンディングワイヤを横から見た形状が、例えば英文字のM字形をなすように制御して形成することができる。
【0096】
図18Bの(e)は、ボンディングワイヤ185を横から見た形状が英文字のM字形であることを例示する図である。
図11(c2)と同様に、「ボンディングの接続点の間のボンディングワイヤを含む面内におけるボンディングワイヤの形状が、少なくとも1個の凹部を有する曲線となるように形成」することができる。係るボンディングワイヤの形状を維持することによって、チップ封止体を積層して導電接続を行う際に、チップ封止体の角部の切欠き面を設けることなく、ボンディングワイヤの、導電部材との接続面を広い面積にして、導電接続を容易にかつ高い精度で行うことができる。前出の(第3の実施の形態の変形例)においても、同様の効果を示した。
【0097】
(ステップ2A. c.集積回路面、側面及び導電性連結材の樹脂封止)
図18Bの(f)は、集積回路面、側面及び導電性連結材の樹脂封止によって、一群のチップ封止体186が形成された状態を例示する図である。半導体チップ181の裏面付近187は、既に、樹脂封止の機能を有するダイアタッチフィルム183によって封止されているので、半導体チップの未封止部分及びボンディングワイヤ(一般的には導電性連結材)を樹脂封止することによって半導体チップ及びボンディングワイヤの封止が終了する。
【0098】
このステップ2Aのc.において封止に使用される樹脂180は、仮貼り付け時には、低粘度の物性であることを要する。導電接続を容易にかつ高い精度で行うために、ボンディングワイヤの軸の封止端面とのなす角度を、一定の角度に保つ必要から、樹脂封止する際、ボンディングワイヤの、上に凸の形状又はM字形等(
図18Bの(d),(e))を維持する必要があるからである。例えば東レ(株)のWL―NCF等は、仮貼り付け時に低粘度の物性を有し、使用することができる。ボンディングワイヤの軸の封止端面とのなす角度を、一定の角度に保つ必要についての説明は、(第3の実施の形態の変形例)において、
図14Aを用いて説明した。
【0099】
(ステップ2A. d.チップ封止体個片化)
一群のチップ封止体186(
図18Bの(f))をダイサ装置(図示せず)により個片化し、半導体チップ積層体に用いられるチップ封止体を得る。
【0100】
図18Cの(g)は、一群のチップ封止体186から個片化されたチップ封止体188を例示する図である。個片化されたチップ封止体同士の間隔は、例えば20μm〜30μmである。チップ封止体188は、次の積層の工程において、保護用のテープ基材183Aから剥がされ、ダイアタッチフィルム183を介して積層される。ダイサ装置のブレードに平歯を使用した場合には、
図18Cの(g)に示すような角部が直角をなす断面のチップ封止体が形成される。
【0101】
(チップ封止体の角部に切欠き面を形成する他の方法)
チップ封止体の封止樹脂の表面のボンディングワイヤの露出部分に関して、その面積を広くする他の方法として、前出の(第3の実施の形態)において示したように、ダイサ装置にベベルカット用ブレードを用いて、チップ封止体の角部に切欠き面を形成することができる。すなわち、ステップ2Aのd.において、切欠き面を更に形成する方法である。その場合には、
図11(f)の各部の符号を説明のために使用すると、切欠き面121における導電性連結材(ボンディングワイヤ)の端部の露出面が、導電性連結材の長手方向122に対し傾斜角度θ3を有するので、導電接続のための導電性のボンディングワイヤとの接続面を広くとることができ、良好な電気的特性を有することができる。また、(第3の実施の形態)と同様に、複数のブレードを使用するデュアルダイシング等の方法により、効率的なチップ封止体のダイシングを実施することができる。
【0102】
(ステップ3A.導電接続)
(ステップ3A.a.チップ封止体積層)
チップ封止体を積層し、各チップ封止体同士の導電接続を行う。複数の封止チップを積層し相互に固定する。
【0103】
図18Cの(h)はチップ封止体積層が終了した状態を例示する図である。架台190上において、チップ封止体188が接着樹脂層のダイアタッチフィルム183を介して積層され、チップ積層体189が形成される。
【0104】
(ステップ3A.b.導電接続(ワイヤボンディング))
各々のチップ封止体の表面に露出した各々の導電性連結材の端部を、導電性のボンディングワイヤにより接続する。
【0105】
図18Dの(i)は、ワイヤボンディングの接続法による導電接続が終了した状態のチップ積層体191を例示する図である。ボンディングワイヤ192の材質は、金、アルミニウム、銅、タングステンまたはそれらの合金である。アルミニウムを使用する場合には、その外径は通常100μm以下であり、常温でのボンディングが可能である。積層されたチップ封止体188の表面に露出したボンディングワイヤ(導電性連結材)193の端面194を、ワイヤボンダ装置(図示せず)を用いて連続一括してボンディングすることができる。導電接続されたボンディングワイヤの形状は、図のようにチップ封止体の封止樹脂側面から離れていても、また接触していてもよい。ボンディングワイヤ192の端部195は、配線基板との配線接続のための端子となる部分である。
【0106】
(ステップ4A.チップ積層体の配線接続)
チップ積層体と配線基板との配線接続がパッケージ組み立ての最終工程となり、パッケージ製品が完成する。半導体チップが積層されたパッケージの製品は、配線基板を介して電子機器に搭載される。
【0107】
図18Dの(j)は、チップ積層体の配線接続が終了した状態を例示する図である。
【0108】
(ステップ4A.a.チップ積層体の基板への載置)
導電接続を終了したチップ積層体191が配線基板197に載置され、ダイアタッチフィルム196により接着固定される。
【0109】
(ステップ4A.b.基板と配線接続)
図18Dの(j)において、ボンディングワイヤの端部195と配線基板197の接続端子198とが配線接続された状態を示している。以上で半導体チップ積層体の製造が終了する。
【0110】
(第7の実施の形態の効果)
第1の効果は、製品品質、歩留まりの向上である。製造工程において、KGD(Known Good Die)についての特別な選別工程を設けることなく、KGDのみの半導体チップ積層体のパッケージを製造することができる。
【0111】
半導体のパッケージ工程として、ウエハの寸法のまま半導体チップの集合を扱うことができるウエハレベルパッケージ(WLP)の製造工程は、量産的効果を有し、また品質向上に極めて効果的である。ウエハ全体に配置された半導体チップを、連続する一体品としてパッケージを製造することができるからである。しかし、ウエハ上に配置された半導体チップの中には、検査により不良品と認定されたものが含まれるので、パッケージ後の配線基板への実装に際して、不良品については除去しておく手段、工程が、一般には必要である。しかし、第7の実施の形態に係る製造方法によれば、ステップ2A.のa.の半導体チップピックアップ時に、KGDのみをピックアップしてダイアタッチフィルム上に搭載することができるので、不良品除去のための特別な選別工程を設けることなく、KGDのみを用いたパッケージを製造することができる。従って、製品品質、歩留まりの向上を図ることができる。
【0112】
第2の効果は、製品品質、寸法精度の向上である。ステップ2A.のa.において、KGDの半導体チップ181をピックアップして、新たに準備したダイアタッチフィルム183上の、所定の位置に、光学的機器等を使用して搭載する。樹脂封止の封止代、チップ封止体個片化時のダイサ装置のブレード等の数値に基づいて設定した搭載の位置の精度を確保することによって、チップ封止体の寸法精度を向上させることができる。また、半導体チップの側面の封止樹脂の厚さについて、使用環境のニーズに合わせて自由に高精度に製作することができる。従って、ダイシングテープを引張り拡大してチップ封止体を製造する方法等と比較して、一層の製品品質の向上を図ることができる。
【0113】
第3の効果は、工程の簡略化である。樹脂封止の機能を有するダイアタッチフィルムを使用することにより、チップ封止体の積層に際して、改めて積層のための接着層を設ける工程を実施することなく、チップ封止体全体の積層固定を実施することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0114】
(第7の実施の形態の応用例)
配線基板と配線接続されたチップ積層体の使用条件によっては、次の
図19に示すステップ4B.のような、チップ積層体に樹脂封止を施す製造方法が必要となる。
【0115】
図19は、本発明の第7の実施の形態の応用例に係る半導体チップ積層体の製造方法を例示する図である。
【0116】
本製造方法は、(ステップ1.ダイシング)、(ステップ2A.チップ封止体形成)、(ステップ3A.導電接続)、(ステップ4A.チップ積層体の配線接続)及び(ステップ4B.チップ積層体樹脂封止)の工程を有している。前出の(第7の実施の形態)におけるチップ積層体の配線接続を終了した状態に加えて、更にチップ積層体及び配線基板を樹脂封止する「チップ積層体樹脂封止工程」を特徴とする半導体チップの製造方法である。本製造方法の各ステップについて、前出の第7の実施の形態の場合との重複する説明を省き、(ステップ4B.チップ積層体樹脂封止)について説明する。
【0117】
(ステップ4B.チップ積層体樹脂封止)
図20は、(ステップ4B.チップ積層体樹脂封止)の樹脂封止を終えたチップ積層体の状態を例示する図である。封止樹脂201によって、配線接続を終えたチップ積層体191及び配線基板197が樹脂封止された状態である。樹脂封止の方法については、トランスファーモールド法又はポッティング法等を選択する。
【0118】
(第7の実施の形態の応用例の効果)
チップ積層体全体が樹脂封止されているので、係るチップ積層体の応用製品が、機械的、化学的に厳しい環境において使用された場合であっても、その環境に耐え得る高度の品質を提供することができる。
【0119】
(第8の実施の形態)
本発明の第8の実施に係る発明は、「平面を形成する一群のチップ封止体を一括積層した後に個片化する」点において、「チップ封止体を個片化後に積層する」第3〜7の実施の形態に係る製造方法の発明と異なる。固定枠に設けられたDAF(ダイアタッチフィルム)を使用し、DAF上の複数の半導体チップに対して、パッド連結及び封止を行うことによって、枠付きDAF上のチップ封止体の集合を複数形成した後、光学的位置合わせ機構等を使用して、枠ごと積層し、チップ封止体の全体が硬化した後に、ダイシングして、個々のチップ積層体を得ることを特徴とする。
【0120】
図21は、本発明の第8の実施の形態に係る半導体チップ積層体の製造方法を例示する図である。
【0121】
製造方法は、(ステップ1.ダイシング)、(DAF準備)、(ステップD1.枠付きDAF上のチップ封止体形成)、(ステップE.一括積層)、(ステップF.チップ封止体個片化)、(ステップG.導電接続)及び(ステップH.チップ積層体の配線接続)の各ステップを有して、半導体チップ積層体が製造される。
【0122】
図22A〜
図22Cは、第8の実施の形態に係る製造方法における各状態を例示した図である。以下、
図22A〜
図22Cの各状態の図を参照しながら、
図21に示した製造方法を、ステップの順を追って説明する。
【0123】
(ステップ1.ダイシング)
第7の実施の形態その他で示したダイシングと同様であるので、本ステップの説明を省く。
【0124】
(DAF準備)
ダイアタッチフィルム(DAF)をSUS枠に貼付した状態のものを、チップ封止体の積層数の数だけ、N層分準備する。SUS枠は、製造工程にて変質、変形を生じない材料でできた固定枠であればよい。最下層に相当するSUS枠貼付のDAFに関してのみは、ダイシングテープを貼り付けた上にDAFを積層した状態で準備する。最下層のDAFは、積層したチップ封止体を個片化する時に必要となる。また、積層するための位置合わせマークを、各SUS枠に、又はDAF面に設けておく。
【0125】
(ステップD.枠付きDAF上のチップ封止体形成)
(ステップD. a.半導体チップピックアップ、SUS枠付きDAF上の一定位置に搭載、仮貼り付け)
図22Aの(a)は、ダイシングされた半導体チップ221がピックアップされて、SUS枠222に貼り付けられたダイアタッチフィルム223上の一定位置に載置された配列状態を示している。半導体チップの半導体集積回路側の面の反対側の面である裏面側は、封止樹脂の機能を有するDAFによって封止された状態となる。半導体チップの配列は、例えば、3行×7列、3行×10列等、半導体チップの寸法、チップ封止体全体の寸法、チップ封止体個片化等の各条件により、決定する。
【0126】
(ステップD. b.パッド連結(ワイヤボンディング))
チップ封止体の導電接続に使用されるボンディングワイヤを半導体チップ上のパッドに連結する。連結方法及び連結の形態は、(第7の実施の形態)等と同様である。
【0127】
図22Aの(b)は、パッド連結後の状態を示している。
【0128】
(ステップD1. c.集積回路面、側面及び導電性連結材の樹脂封止)
図22Bの(c)は、集積回路面、側面及び導電性連結材(ボンディングワイヤ)の樹脂封止後の状態を示している。パッド連結及び集積回路面樹脂封止に関しては、(第7の実施の形態)のステップ2A.の説明と重複するので、説明を省く。
【0129】
図22Bの(d)及び(e)は、それぞれ、第2層及び第3層のチップ封止体の樹脂封止後の状態を示している。第8の実施の形態においては、チップ封止体の積層数を3層とした例を示しているので、
図22Bの(e)に示す最下層となる第3層のチップ封止体の最下面には、(DAF準備)において準備したダイシングテープ224が設けられている。
図22Bの(c)から(e)の各図に示されたSUS枠225a,225b,225cの寸法については、次の一括積層時における相互干渉による積層の妨げを防ぐため、外側の幅の寸法W1o,W2o,W3o及び内側の幅の寸法W1i,W2i,W3iのうち、W1i,W2o,W2i,W3oについて、次の数式(A22)を満たす必要がある。SUS枠の縦の寸法についても同様の関係を満たす必要がある。
【0130】
W1i>W2o,W2i>W3o. (A22)
積層の数が増加する場合にも、係る関係と同様の関係を保つことによって、積層を円滑に行うことができる。
【0131】
(ステップE.一括積層)
各層を構成するチップ封止体が、SUS枠上のダイアタッチフィルムに搭載されたまま一括積層される工程である。
【0132】
図22Bの(f)は、係る一括積層が終了した状態を示している。積層に際しては、封止樹脂の物性に応じて、一括積層の加圧条件、熱硬化条件を設定する。また、積層における各層同士の位置合わせに際しては、光学的機構及び位置制御システムを使用して、その位置精度を確保する。
【0133】
(ステップF.チップ封止体個片化)
チップ封止体の内部にある半導体チップが、縦横に配列されたままで積層された状態、すなわち、半導体チップがマトリックス状になったチップ封止体の集合体を、ダイサ装置を用いて、一括して個片化する工程である。チップ封止体個片化のダイシングに際しては、寸法精度を確保するため、光学的機構及び位置制御システムを使用する。
【0134】
図22Cの(g)は、チップ封止体個片化が終了した状態を示している。個片化された各チップ封止体226が、各々間隔を保持して、ダイシングテープ224の上にある。
【0135】
(ステップG.導電接続)
ダイシングテープ(
図22Cの(g)の224)上の個片化された各チップ封止体226をピックアップして、導電接続を行う。係る導電接続及び次の(ステップH.チップ積層体の配線接続)に関しては、(第7の実施の形態)その他で示した工程の内容と同様であるので、説明を省く。以上の工程によって、前出の
図18Dの(j)に示されたような、配線接続が終了したチップ積層体を得ることができる。
【0136】
また、配線接続を終了したチップ積層体の樹脂封止も可能である。(第7の実施の形態の応用例)において
図20に示したように、配線接続を終了したチップ積層体及び配線基板を樹脂封止してもよい。
【0137】
(第8の実施の形態の効果)
第8の実施の形態においては、個片化の工程について、チップ封止体の積層後に一括して個片化を行うことにより、(第7の実施の形態)に対して、チップ封止体個片化のダイシングの回数が大幅に減少し、工程の簡略化と製品品質の向上を図ることができる。
【0138】
(第8の実施の形態の変形例)
本発明の第8の実施の形態の変形例は、2層の樹脂層を有するダイアタッチフィルムを用いることにより一括して封止積層する製造方法である。物性の異なる2層の樹脂層を有するダイアタッチフィルムを用いて、パッド連結のボンディングワイヤ側等の封止と半導体チップの裏面付近、すなわち、半導体集積回路側の面の反対側の面付近の封止とを、一括積層時に同時に行う製造方法である。パッド連結に使用されているボンディングワイヤ部分等を封止する樹脂には、低粘度を維持する封止樹脂を要するため、所定の低粘度の物性を有する樹脂層を積層した2層のダイアタッチフィルムを準備する。
【0139】
図23は、本発明の第8の実施の形態の変形例に係る半導体チップ積層体の製造方法を例示する図である。
【0140】
製造方法は、(ステップ1.ダイシング)、(DAF準備)、(ステップD2.枠付きDAF上のチップ封止体形成)、(ステップE2.一括積層)、(ステップF.チップ封止体個片化)、(ステップG.導電接続)及び(ステップH.チップ積層体の配線接続)の各ステップを有して、半導体チップ積層体が製造される。
【0141】
図24A及び
図24Bは、第8の実施の形態の変形例に係る製造方法における各状態を、順を追って例示した図である。製造方法の一部分のステップは、前出の(第8の実施の形態)における製造方法のステップと同様の部分を含むので、特に異なるステップについて説明し、説明の重複を避ける。
【0142】
(第8の実施の形態の変形例)においては、使用するダイアタッチフィルムが、物性が異なる2層の樹脂層を有することにより、仮貼り付け、樹脂硬化等の製造条件設定及びその効果が異なる点が、1層のダイアタッチフィルムを使用する(第8の実施の形態)と大きく異なっている。
【0143】
(ステップ1.ダイシング)
前出の第7の実施の形態その他で示したダイシングと同様であるので、説明を省く。
【0144】
(DAF準備)
積層の層数分のSUS枠に貼り付けたダイアタッチフィルムを準備する。
【0145】
(DAF準備 a.)
最上層に位置するチップ封止体層に相当する部分の半導体集積回路側及びパッド連結のボンディングワイヤ側等を封止するため、「樹脂フィルム2」のみをSUS枠に貼り付けたものを準備する。この「樹脂フィルム2」とは、低粘度性の物性を有する封止樹脂のフィルムを指し、その使用の理由は、以下の通りである。
【0146】
後工程の(ステップE2.一括封止積層)においてチップ封止体を形成する際、フィルム状の封止樹脂がパッド連結に使用されているボンディングワイヤに接したときに、ボンディングワイヤの形状を変形させることなく、上に凸の形状又はM字形等を維持したままで封止できるよう、フィルムの仮貼り付け時に低粘度の物性を維持する樹脂フィルムが必要である。このような低粘度の物性を有する樹脂を「樹脂フィルム2」とする。
【0147】
図24Aの(a)は、チップ封止体の積層の最上層に設けられる「樹脂フィルム2」242がSUS枠243aに貼付された状態を示している。
【0148】
(DAF準備 b.)
半導体チップの裏面付近を封止するダイアタッチフィルム本体を「樹脂フィルム1」とし、係る「樹脂フィルム1」と「樹脂フィルム2」の2種のフィルムを積層したフィルムを、第2層以下のチップ封止体に対し、ダイアタッチフィルムとして準備する。
【0149】
図24Aの(b)は、「樹脂フィルム2」242の上に「樹脂フィルム1」241が積層された状態のダイアタッチフィルムが、SUS枠243bに貼付された状態を示している。ダイアタッチフィルムの材料は、例えば日立化成工業(株)製DF402の系統、リンテック(株)製LE5000の系統又は東レ(株)製WL−NCFの系統等から選択することができる。また、東レ(株)のWL―NCF等は、仮貼り付け時に低粘度の物性を維持することができ、「樹脂フィルム2」として使用することができる。
【0150】
(DAF準備 c.)
チップ積層体の個片化のため、ダイシングテープを準備し、その上に「樹脂フィルム1」を貼り付けた状態のSUS枠付きダイアタッチフィルムを準備する。
【0151】
(ステップD2.枠付きDAF上のパッド連結)
ボンディングワイヤを用いたパッド連結は、(第8の実施の形態)等と同様である。
【0152】
図24Aの(c)は、(ステップ1.ダイシング)を終えた半導体チップが、ピックアップされて、ステップ2A.のa.のSUS枠に貼付されたダイアタッチフィルム上の一定位置に搭載された状態を示している。
【0153】
図24Bの(d)は、SUS枠243bに貼付されたダイアタッチフィルム上でパッド連結を終了した半導体チップの状態を示している。
図24Bの(d)に示す層は、最上層のチップ封止体となる。
【0154】
図24Bの(e)は、最上層の直下の第2層となる層について、そのパッド連結が終了した状態を示している。SUS枠243cの寸法は、最上層のチップ封止体用のSUS枠243bと比較して、干渉することがないように小さい寸法となっている。
【0155】
図24Bの(f)は、最下層となる層について、そのパッド連結が終了した状態を示している。この例においては、第3層が最下層である。SUS枠243dの寸法は、第2層のチップ封止体用のSUS枠243cと比較して、干渉することがないように小さい寸法となっている。
【0156】
以上におけるSUS枠の寸法の関係は、SUS枠243a、243b,243c,243dの外側の幅の寸法U1o,U2o,U3o,U4o及び内側の幅の寸法U1i,U2i,U3i,U4iのうち、U1i,U2o,U2i,U3o,U3i,U4oについて、次の数式(A24)を満たす必要がある。SUS枠の縦の寸法についても同様の関係を満たす必要がある。
【0157】
U1i>U2o,U2i>U3o、U3i>U4o (A24)
【0158】
(ステップE2.一括封止積層)
SUS枠の使用によって、多数の半導体チップの樹脂封止及び積層を一括して行うステップである。
【0159】
図24Bの(g)は、(ステップE2.一括封止積層)が終了した状態を示している。
図24A,
図24Bの各状態(a),(d),(e)及び(f)に示されたSUS枠で支持された樹脂フィルム、半導体チップ及びボンディングワイヤが、同時に一時に封止積層されている。
【0160】
次の3ステップ;
(ステップF.チップ封止体個片化)
(ステップG.導電接続)
(ステップH.チップ積層体の配線接続)
の工程は、第8の実施の形態における工程と同様であるので、重複を避け、説明を省く。以上によって、第8の実施の形態の変形例である「2層を有するダイアタッチフィルムを用いた一括封止積層」を行うチップ積層体の製造方法が終了する。
また、配線接続を終了したチップ積層体の樹脂封止も可能である。(第7の実施の形態の応用例)において
図20に示したように、配線接続を終了したチップ積層体及び配線基板を樹脂封止してもよい。
【0161】
(第8の実施の形態の変形例の効果)
2層を有するダイアタッチフィルムを用いることによって、半導体チップの裏面付近以外の封止、すなわちパッドを連結しているボンディングワイヤ部分及び半導体チップの半導体集積回路面と側面等を封止するための個別の封止の工程を設けることなく、全体の一括封止積層の工程において同時に一回で封止及び積層を実施することができるので、工程の簡略化を図ることができる。
【0162】
(第9の実施の形態)
図25は、本発明の第9の実施の形態に係る、チップ積層体250の最下層の半導体チップ251の、配線基板197へのフリップチップ実装を特徴とする半導体チップ積層体260を例示する図である。
図25の(a)及び(b)は、樹脂封止材263の形状のみが相違している。
【0163】
ここで、フリップチップ実装とは、半導体チップの能動素子面を配線基板の接続端子面に対向させ、半導体チップ及び配線基板の端子同士をバンプ等によって直接接続する技術を指す。接続箇所に、アンダーフィル等による封止を施す場合もある。
【0164】
図25に示した最下層の半導体チップ251は、絶縁樹脂252及び253によって封止され、最下層のチップ封止体254を形成している。半導体チップ251上のパッド255に接続されたボンディングワイヤ256の端部257が、チップ封止体の側面に露出しており、他のボンディングワイヤ258が、端部257へ接続することによって、最下層のチップ封止体254は、他の3個のチップ封止体259と導電接続されている。パッド255上のボンディングワイヤ256に接して、バンプ261が形成され、バンプ261は、絶縁樹脂253を貫通して、配線基板197に設けられたはんだ端子262Aに接続されている。はんだ端子262Aは、配線基板197上の接続端子262Bに接続されている。最下層のチップ封止体254と配線基板197とが対向している間隙部分には、アンダーフィル166の封止を施す場合がある。
【0165】
ここに、バンプ261は、例えば、後述する(第10の実施の形態)の
図27等に示したバンプを使用することができる。
【0166】
図25の(a)において、チップ積層体250は、樹脂封止材263によって封止されている。すなわち、最下層のチップ封止体254、他の3個のチップ封止体259、他のボンディングワイヤ258、バンプ261、はんだ端子262A及び配線基板197が封止されている。
【0167】
図25の(b)においては、チップ積層体250の全体は、半導体チップからの放熱性の向上等のため、最上層のチップ封止体の絶縁樹脂の表面264を露出させ、樹脂封止材263によって封止されている。
【0168】
(第9の実施の形態の効果)
ほぼチップサイズの小型化されたチップ積層体を、配線基板上にフリップチップ実装することができるので、半導体チップ積層体の性能、品質の向上を図ることができる。
【0169】
(第10の実施の形態)
図26は、本発明の第10の実施の形態に係る半導体チップ積層体の製造方法のステップを例示する図である。本製造方法は、チップ積層体の有する最下層のチップ封止体が、配線基板にフリップチップ接続されていることを特徴とする。前述の第3の実施の形態に係る製造方法のステップ(
図10)と対比すると、(ステップ2B.チップ封止体形成)におけるb2.バンプ形成及び(ステップ4A.チップ積層体樹脂封止)におけるa1.チップ積層体の配線基板搭載(フリップチップ接続)基板加熱、フリップチップ接続の工程が相違している。そこで、相違する2つの工程を中心に、次の
図27及び
図28を参照して説明し、(ステップ2B.チップ封止体形成)における他の工程及び(ステップ3.導電接続)の工程等については、記載の重複を避けるため、その説明を省く。
【0170】
(ステップ2B.チップ封止体形成;b2.バンプ形成)
図27は、チップ封止体形成ステップにおけるフリップチップ接続のためのバンプが形成された状態を例示する図である。
図27の(a)は、その全体図を、(b)は絶縁樹脂による封止後の状態を、(c)は、1個のバンプを示している。なお、前述の
図11(c1)における対応する箇所の同一の符号を使用した。
【0171】
図27の(a)において、パッド連結したボンディングワイヤ114の上側の、パッド113に対応する位置に、バンプ270を形成する。尖頭部271を有するバンプ270形状は、例えば、ワイヤボンダを使用し、次のように形成する。
【0172】
ワイヤボンダのキャピラリに通されたバンプ用の別のボンディングワイヤ(図示せず)の先端を加熱しボールを形成する。キャピラリの先端部の圧力、熱または超音波振動等により、ボンディングワイヤの先端のボールを、パッド連結したボンディングワイヤ114の上側に圧着し、固定させた後、クランプ等によりワイヤを引きちぎることにより、尖頭部271を有するバンプ270を形成する。
【0173】
図27の(b)は、バンプ270が形成された後に、絶縁樹脂116bにより封止された状態を例示する図である(工程c.集積回路面、側面及び導電性連結材の樹脂封止)。バンプ270の尖頭部271は、絶縁樹脂116bの層を貫通して、樹脂層表面にバンプの金属面を露出することができるので、配線基板へのフリップチップ接続を、容易に、また円滑に行うことができる。
【0174】
バンプ270の材質としては、例えば、金、銅等を使用するが、接続の条件によっては、アルミニウムを使用することができる。また、バンプ270の寸法は、例えば、
図27の(c)において、直径dが17〜60μm、高さhが15〜60μmである。高さhは、フリップチップ接続のため、ボンディングワイヤ114の頂点114aより高いことが必要である。なお、バンプの形成は、ワイヤボンダを使用する他に、ボールバンプ積載装置等を使用して、単体のボールバンプをボンディングワイヤ114の上側に積載固定して行うことができる。単体のボールバンプを使用する場合には、ワイヤボンダを用いたときのような尖頭部は生じないが、チップ積層体を配線基板へフリップチップ実装するときの加熱及び加圧によって、表面の絶縁樹脂が軟化してバンプが露出する。従って、封止時のバンプの絶縁層の貫通が仮に不十分であったとしても、解消することができ、配線基板との電気的接続は十分に保たれる。
【0175】
(ステップ4A.チップ積層体樹脂封止;a1.チップ積層体の配線基板搭載(フリップチップ接続))
図28は、チップ積層体280がフリップチップ実装によって配線基板に搭載されている状態を例示する図である。
【0176】
配線基板197上の接続端子262Bを覆うようにして、フリップチップ実装のためのはんだ端子262Aを形成する。はんだの材質は、例えば、スズ,銀,銅等の合金を使用する。
【0177】
チップ積層体280と配線基板197の位置合わせを行い、次に、配線基板197を加熱してはんだ端子262Aを溶融させる。はんだを溶融するための加熱温度は、例えば230℃である。
【0178】
チップ積層体280の有するバンプ261が、絶縁樹脂253の表面の状態によってその露出が仮に不十分である場合であっても、はんだ端子262Aの加熱時に、チップ積層体280のバンプ261を覆っている絶縁樹脂253が軟化し、チップ積層体280が押圧されることによってバンプ261が軟化した絶縁樹脂253を貫通する。従って、絶縁樹脂253の表面にバンプ261を露出させることができ、はんだ端子262Aと結合させて、チップ積層体280と配線基板197との接続を行うことができる。
【0179】
また、バンプの形態として単体のボールバンプを使用する場合には、絶縁樹脂表面におけるバンプの露出が不十分であっても、同様にして、絶縁樹脂の軟化に応じてボールバンプを絶縁樹脂の表面に露出させることができるので、チップ積層体の配線基板へのフリップチップ接続を行うことができる。
【0180】
次に、チップ積層体の使用環境、条件に応じて、フリップチップ接続の接続箇所のバンプ、チップ封止体の絶縁樹脂及び配線基板をアンダーフィル166によって封止する。更に、チップ積層体280及び配線基板197の全体を樹脂封止して、前述の
図25に示した半導体チップ積層体260を得ることができる。
【0181】
(第10の実施の形態の効果)
チップ積層体を、配線基板にフリップチップ実装する製造方法を提供することにより、短時間で、ほぼチップサイズの小型化されたチップ積層体の配線基板への実装が実現でき、半導体チップ積層体の生産性の向上及び品質の向上を図ることができる。
【0182】
(第11の実施の形態)
図29は、本発明の第11の実施の形態に係る、他のチップ積層体290がフリップチップ実装によって配線基板197に搭載されている状態を例示する図である。最下層の半導体チップ291が、能動素子側の表面のパッド292上に設けられたバンプ293とボンディングワイヤ256上のバンプ261とを介して配線基板197にフリップチップ接続されている。
【0183】
ここに、バンプ293は、例えば、(第10の実施の形態)の
図26の(ステップ2B.チップ封止体形成)におけるb2.バンプ形成において説明したワイヤボンダを用いた方法で、パッド292上に形成することができる。また、ボールバンプ積載装置等を使用して、単体のボールバンプを形成してもよい。
【0184】
なお、半導体チップ積層体295の全体の形態は、
図16に示した形態であってもよい。
【0185】
(第11の実施の形態の効果)
本発明の半導体チップ積層体の形態を利用できる半導体チップの種類を拡大することができ、複合半導体としての機能拡張に貢献することができる。例えば、多端子のロジック回路のCPUとメモリの半導体チップの積層等を実現することができる。
【0186】
(本発明に係る他の実施の形態)
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0187】
例えば、前述の第1乃至第8の実施の形態において示したチップ積層体等に対して、第9、第10または第11の実施の形態に示したフリップチップ実装の技術を適用することができる。すなわち、半導体チップのパッド連結後に形成されたバンプと、チップ積層体の最下層の半導体チップの配線基板へのフリップチップ実装とを特徴とする半導体チップ積層体の技術を適用することができる。係る適用により、チップ積層体の積層に垂直の方向の投影面積を、ほぼチップサイズとすることができるので、半導体チップ積層体の小型化、高性能化を図ることができる。