(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記首皮把持手段は、一端が前記咽側把持部材側に係止され他端が前記背側把持部材側に係止された付勢バネにより前記首皮を挟んだ状態を保持するトグル機構を有することを特徴とする請求項2に記載の食鳥屠体の首皮取り装置。
前記首皮把持手段で把持される首皮位置より上方の背側首皮に水平方向に切れ込みを入れる背側首皮切断手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の食鳥屠体の首皮取り装置。
前記シャックルに吊り下げられた前記食鳥屠体の肩部に当接して該肩部の位置決めをする肩乗せ台をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の食鳥屠体の首皮取り装置。
前記把持手段の前段に設けられ、前記食鳥屠体の左右肩部近傍の前記首皮にそれぞれ切れ込みを入れる肩部首皮切断手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の食鳥屠体の首皮取り装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、食鳥屠体の解体・脱骨処理では、シャックルに吊り下げられた状態の食鳥屠体(以下、ワークという)を放血、脱毛した後、内蔵等の除去(中抜き)、解体、脱骨を行っている。この一連の処理は、例えば特許文献1等に開示されている。
これらの処理工程は、通常、シャックルが取り付けられたオーバーヘッドコンベアによって移動するワークに対して連続的に行われる。この連続した工程の中で、中抜きで摘出された内蔵の一部や脱骨で除去された骨等のように食用として不適切な部位は分離され、廃棄される。
【0003】
従来、食鳥屠体の首皮も採取に手間が掛かる為回収しない場合もあった。しかし、近年、首皮を焼き鳥の素材として直接食したり、あるいはミンチにした首皮を増量材や結着剤としてチキンナゲットや肉団子等の加工食品に用いるようになり、首皮の需要は急速に増加しつつある。首皮の利用を目的としてこれを分離する場合は、手作業によりワークから首皮を切り離して回収していた。
【0004】
ところが、このような手作業による首皮の分離は、作業効率が悪く、歩留まりの低下を引き起こすこととなる。
そこで、特許文献2には、食鳥屠体から自動的に首皮を分離除去する装置が開示されている。この装置は、頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体を対象としており、まず、首骨の延在方向に沿って首皮の背側に切れ目が入れられた食鳥屠体の肩と首皮の腹側部位とをそれぞれ把持し、これらを首骨延在方向に互いに離隔するように引っ張り、首皮を首骨の基部で切開する。そして、肩と首皮とをさらに引っ張り、首皮を首骨から分離するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、食鳥の首皮は、背側の方が脂がのって製品としての価値は高いことが知られている。しかしながら、特許文献2に記載の装置では、首皮の背側に切れ目が入れられた食鳥屠体を用いているため、背側が切り開かれてしまい製品価値が低下してしまう可能性があった。
また、この装置は首皮を引っ張る際に腹側部位を部分的に把持するようにしているので、回収される首皮形状が不均一となり、さらに歩留まりも低下してしまうという問題もあった。
さらにまた、この装置は内臓が除去された食鳥屠体のみを対象としており、食鳥屠体の脱骨・解体処理の一連の処理工程の中でこの装置を組み込む位置が限定されてしまうため、設備全体としての設計自由度が低くなるという問題もあった。
【0007】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、製品価値の高い首皮を高い歩留まりで回収することができる食鳥屠体の首皮取り装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る食鳥屠体の首皮取り装置は、頭部が除去された食鳥屠体の首皮を取る食鳥屠体の首皮取り装置において、前記首皮が頸椎方向に咽部から頭部付け根まで切開された前記食鳥屠体を肢部が上方となるように吊り下げるシャックルと、前記シャックルに吊り下げられた前記食鳥屠体の首部周囲を複数の把持部材で囲んで前記首皮を把持する首皮把持手段と、前記首皮把持手段を下方に移動させる移動機構とを備え、前記複数の把持部材はそれぞれ、前記頸椎に対応した湾曲形状を有する湾曲部と、前記湾曲部の端部からその径方向外側に延出した平面形状を有し、頸椎方向に凹凸が形成された平面部とを含み、複数の前記把持部材の前記湾曲部により前記頸椎周囲の前記首皮を把持し、且つ2つの対面する前記平面部により前記湾曲部からはみ出た前記首皮を挟み込んだ状態で、前記移動機構により前記首皮把持手段を下方に移動させることにより前記首皮を前記頸椎から剥離するようにしたことを特徴とする。
【0009】
この食鳥屠体の首皮取り装置では、首皮把持手段によって、食鳥屠体の首部周囲を囲んで首皮を把持するようにしたので、首皮の全周に亘って引っ張る力を与えることができ、形状のよい首皮を回収することが可能となり、また歩留まりを向上させることも可能となる。さらに、食鳥屠体の腹腔に器具等を挿入しないで首部周囲を囲んで首皮を把持して引っ張るようにしたので、中抜き前及び中抜き後のいずれの食鳥屠体にも適用でき、この装置を脱骨・解体処理のラインに組み込むことも出来る。
また、頸椎周囲に位置する把持部材に湾曲部を形成したので、首皮とともに頸椎が抜けることを防止できる。さらに、湾曲部からはみ出た首皮は、頸椎方向に凹凸が形成された平面部で挟み込むようにしたので、強固に首皮を掴んで確実に頸椎から首皮を剥離することが可能となる。
さらにまた、首皮が頸椎方向に咽部から頭部付け根まで切開された食鳥屠体を用いたので、胸側から首皮が切り開かれ、脂がのった上質の背側首皮を形状よく残すことができ、高品質の首皮を回収することが可能となる。
【0010】
上記食鳥屠体の首皮取り装置において、前記首皮把持手段は、前記首部の咽側を把持する咽側把持部材と、前記首部の背側を把持する背側把持部材とからなり、前記咽側把持部材と前記背側把持部材とが支点を中心に開閉するクランプ状に形成されていることが好ましい。
このように、咽側把持部材と背側把持部材とが支点を介して連結され、該支点を中心に開閉するクランプ状に形成されていることにより、2つの把持部材間で、湾曲部または平面部の凹凸が互いにずれることを防止できる。
【0011】
この場合、上記食鳥屠体の首皮取り装置は、前記首皮把持手段は、一端が前記咽側把持部材側に係止され他端が前記背側把持部材側に係止された付勢バネにより前記首皮を挟んだ状態を保持するトグル機構を有することが好ましい。
このように、首皮把持手段がトグル機構を有することで、首皮を把持した状態を確実に保持することがきる。
【0012】
上記食鳥屠体の首皮取り装置において、前記首皮把持手段で把持される首皮位置より上方の背側首皮に食い込む鋸刃状の引き剥がし手段をさらに備え、前記引き剥がし手段は、前記首皮に食い込んだ状態で前記首皮把持手段とともに前記移動機構により下方に移動するようにしてもよい。
このように、首皮把持手段で把持される首皮位置より上方の背側首皮に食い込む鋸刃状の引き剥がし手段を備えることで、背側首皮をより広範囲に回収でき、歩留まりをより一層向上させることができる。また、背側首皮に食い込む鋸刃状の引き剥がし手段を取り付けるのみであるため、装置の簡素化が図れる。
【0013】
上記食鳥屠体の首皮取り装置において、前記首皮把持手段で把持される首皮位置より上方の背側首皮に水平方向に切れ込みを入れる背側首皮切断手段をさらに備えることが好ましい。
このように、背側首皮に水平方向に切れ込みを入れる背側首皮切断手段を備えることで、背側首皮をより広範囲に回収でき、歩留まりをより一層向上させることができる。
【0014】
上記食鳥屠体の首皮取り装置において、前記シャックルに吊り下げられた前記食鳥屠体の肩部に当接して該肩部の位置決めをする肩乗せ台をさらに備えることが好ましい。
このように、肩部の位置決めをする肩乗せ台を備えることで、大きさが異なる食鳥屠体に対しても常に最適な範囲の首皮を回収することが可能となる。
【0015】
上記食鳥屠体の首皮取り装置において、前記把持手段の前段に設けられ、前記食鳥屠体の左右肩部近傍の前記首皮にそれぞれ切れ込みを入れる肩部首皮切断手段をさらに備えることが好ましい。
このように、肩部首皮切断手段によって、食鳥屠体の左右肩部近傍の首皮にそれぞれ切れ込みを入れるようにしたので、確実に広範囲の首皮を回収することができ、より一層の歩留まり向上が図れる。
【0016】
上記食鳥屠体の首皮取り装置において、前記シャックルを搬送するオーバーヘッドコンベアと、鉛直方向に立設され同一円周上に配置された複数のスライドガイドと、前記複数のスライドガイドを連結する連結部とを有し、前記オーバーヘッドコンベアの可動部に係合して回転する円筒フレームと、前記円筒フレームの内側に、固定して配設された固定ドラムと、前記固定ドラムの外周面に設けられたガイドレールと、前記円筒フレームの外側に、固定して配設された外側フレームとを備え、前記首皮把持手段が前記スライドガイドに対してスライド自在に取り付けられ、前記円筒フレームの回転に伴って前記首皮把持手段が前記ガイドレールに沿って上下動することにより前記移動機構が構成されることを特徴とすることが好ましい。
【0017】
通常、食鳥屠体の脱骨・解体処理においては、シャックルに吊り下げた食鳥屠体をオーバーヘッドコンベアで搬送しながら連続処理するようになっている。そこで、上記したように、オーバーヘッドコンベアに係合して回転する円筒フレームによって各動作が実施されるようにすることで、新たに駆動装置を設ける必要がなくなり、イニシャルコスト及びランニングコストを安価にできる。
【0018】
この場合、上記食鳥屠体の首皮取り装置において、前記外側フレームに設けられ、前記背側把持部材に取り付けられたカムローラを案内するカムをさらに備え、前記カムローラが前記カムに沿って上下動することにより前記咽側把持部材と前記背側把持部材とが開閉するようにしてもよい。
このように、円筒フレームとともに移動する背側把持部材のカムローラが、外側フレームに固定されたカムに沿って上下動することで、駆動装置を用いずに咽側把持部材と背側把持部材の開閉動作を行うことが可能となる。
【0019】
またこの場合、前記首皮を排出する首皮排出手段をさらに備え、前記首皮排出手段は、前記首皮把持手段の下方に設けられた首皮排出路と、前記円筒フレームと連動して前記首皮排出路上に落下した前記首皮を集めるスクレーパと、前記スクレーパで集められた前記首皮を排出する排出口とを有することが好ましい。
このように、首皮排出手段を設けることにより、食鳥屠体から分離した首皮を容易に回収することが可能となる。
【0020】
本発明に係る食鳥屠体の首皮取り方法は、頭部が除去された食鳥屠体の首皮を取る食鳥屠体の首皮取り方法において、前記食鳥屠体の前記首皮を頸椎方向に咽部から頭部付け根まで切開する工程と、前記切開された食鳥屠体を肢部が上方となるようにシャックルに吊り下げた状態で、前記食鳥屠体の首部周囲を複数の把持部材からなる首皮把持手段で囲んで前記首皮を把持する工程と、前記把持部材で把持した前記首皮の左右肩部近傍にそれぞれ切り込みを入れる工程と、前記首皮把持手段を下方に移動させて前記首皮を前記頸椎から剥離する工程とを備えることが好ましい。
【0021】
この食鳥屠体の首皮取り方法によれば、食鳥屠体の首皮を頸椎方向に咽部から頭部付け根まで切開することで、胸側から首皮が切り開かれ、脂がのった上質の背側首皮を形状よく残すことができ、高品質の首皮を回収することが可能となる。
また、食鳥屠体の首部周囲を首皮把持手段で囲んで首皮を把持するようにしたので、首皮の全周に亘って引っ張る力を与えることができ、形状のよい首皮を回収することが可能となり、さらに歩留まりを向上させることも可能となる。
さらにまた、把持部材で把持した首皮の左右肩部近傍にそれぞれ切り込みを入れるようにしたので、確実に広範囲の首皮を回収することができ、より一層の歩留まり向上が図れる。
【発明の効果】
【0022】
以上記載のように本発明によれば、首皮把持手段によって、食鳥屠体の首部周囲を囲んで首皮を把持するようにしたので、首皮の全周に亘って引っ張る力を与えることができ、形状のよい首皮を回収することが可能となり、また歩留まりを向上させることも可能となる。さらに、食鳥屠体の腹腔に器具等を挿入しないで首部周囲を囲んで首皮を把持して引っ張るようにしたので、中抜き前及び中抜き後のいずれの食鳥屠体にも適用でき、この装置を脱骨・解体処理のラインに組み込むことも出来る。
また、頸椎周囲に位置する把持部材に湾曲部を形成したので、首皮とともに頸椎が抜けることを防止できる。さらに、湾曲部からはみ出た首皮は、頸椎方向に凹凸が形成された平面部で挟み込むようにしたので、強固に首皮を掴んで確実に頸椎から首皮を剥離することが可能となる。
さらにまた、首皮が頸椎方向に咽部から頭部付け根まで切開された食鳥屠体を用いたので、胸側から首皮が切り開かれ、脂がのった上質の背側首皮を形状よく残すことができ、高品質の首皮を回収することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0025】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る食鳥屠体の首皮取り装置の全体構成について説明する。ここで、
図1は本発明の実施形態に係る首皮取り装置の側面図で、
図2は
図1のA方向からみた首皮取り装置の平面図である。なお、以下の説明では、頭部が除去された食鳥屠体をワークという。ここで、ワークは既に放血、脱毛等の前処理を施してあり、内臓を除去する中抜きは行っていても行っていなくてもよい。
【0026】
本発明の実施形態に係る首皮取り装置1は、オーバーヘッドコンベア2と、オーバーヘッドコンベア2に係合して回転するスポーク4と、スポーク4に同期して回転するメインシャフト5と、メインシャフト5に取り付けられた円筒フレーム6と、円筒フレーム6の内側に配設された固定ドラム9と、円筒フレーム6に取り付けられた上部ユニット20及び下部ユニット30と、円筒フレーム6とこれらの部品を配設した外側フレーム13とを備えている。
【0027】
オーバーヘッドコンベア2は、シャックル3が所定間隔で取り付けられており、シャックル3に肢部が上方となるように吊り下げられたワーク50を搬送するものである。オーバーヘッドコンベア2には、例えばチェーンコンベアが用いられる。なお、首皮取り装置1の前段で、
図3に示すようにワーク50は咽部53から頭部付け根51までの胸側首皮が切開部位61で切開されている。ここで、
図3(A)はワークの胸側を示す図であり、51は頭部付け根、52は首部、53は咽部、54は肩部、55は胸部、56は手羽部、57は肢部であり、62は後述する肩部首皮切断手段によって切断される切断部位である。
図3(B)はワークの背側を示す図であり、63は後述する背側首皮切断手段によって切断される切断部位である。図中、破線で表す部位は、首皮分離範囲を示す。
また、オーバーヘッドコンベア2は、ワークの脱骨・解体処理の他の工程と兼用してもよく、この場合、オーバーヘッドコンベア2により搬送されるワーク50は脱骨・解体処理の各種の処理工程が施される。
スポーク4は、オーバーヘッドコンベア2に係合して回転するようになっている。例えば、オーバーヘッドコンベア2がチェーンコンベアである場合、スポーク4の外周に放射状に設けられた突起部がチェーンコンベアのチェーン穴部に挿入され、チェーンが移動することによりスポーク4が回転する。
【0028】
シャックル3は、
図4に示すように、上端の連結部3aでオーバーヘッドコンベア2と連結されており、この連結部3aから棒状部材3bが下方に延出している。棒状部材3bの下端には、ワーク50の両肢部をそれぞれ支持する支持部3eが設けられている。支持部3eは下方に湾曲した棒状部材からなり、この湾曲した内部に肢部を挿入してワーク50を吊り下げられるようになっている。また、棒状部材3bは、支持部3eと結合部3dで互いに相対的な角度が変化可能に接続されることにより、シャックル3の全長が自在に変化するようになっている。
【0029】
図1及び
図2に戻り、メインシャフト5は、外側フレーム13及び固定ドラム9に軸受けを介して支持されている。また、メインシャフト5は、スポーク4に係合してオーバーヘッドコンベア2の駆動力により回転するようになっている。具体的には、この係合機構は、スポーク4から下方に延出した押し板4aと、メインシャフト5から半径方向に延出した受け板5aとからなる。そして、スポーク4の回転に伴い押し板4aが受け板5aに接触して、該受け板5aを押すことによりスポーク4とメインシャフト5とが同期して回転するようになっている。ここで、受け板5a若しくは押し板4aのいずれか一方の接触面に位置調整手段5bを設けることが好ましい。位置調整手段5bには、例えば回転方向に軸が配置されたボルトが用いられる。このボルトの長さを調整することによりスポーク4とメインシャフト5との回転方向における相対位置を微調整でき、ひいてはシャックル3と後述するスライドガイド8との位置合わせを行うことができる。なお、メインシャフト5の下部に、メインシャフト5を上下動させる油圧機構12を設けてもよい。これは、メインシャフト5を停止したいときに、油圧機構12によりメインシャフト5を下げることにより係合機構の係合が解除されてメインシャフト5を停止することができる。
【0030】
円筒フレーム6は、メインシャフト5に取り付けられた円盤状の上部連結部7a及び下部連結部7bと、上部連結部7aと下部連結部7bの間に架け渡され、鉛直方向に立設された複数のスライドガイド8とを有する。この円筒フレーム6は、メインシャフト5とともに回転するようになっている。
固定ドラム9は、円筒フレーム6の内部に配置され、円筒フレーム6の回転には影響されずに固定されている。固定ドラム9の外周面には、上部ガイドレール10及び下部ガイドレール11、さらに第2カム16が設けられている。これらのガイドレール10、11及び第2カム16の構成については後述する。
【0031】
外側フレーム13は、円筒フレーム6の外側に配置され、円筒フレーム6の回転には影響されずに固定されている。外側フレーム13の内側には、後述する第1カム15が設けられている。
また、外側フレームと円筒フレーム6との間には、オーバーヘッドコンベア2の入り口側にガイドバー14が設けられている。ガイドバー14は、円筒フレーム6から一定距離を隔てて円弧状に配置されており、このガイドバー14によりシャックル3に吊り下げられたワーク50が位置決めされるようになっている。
【0032】
また、ワーク50から分離した首皮を排出する首皮排出手段を備えていてもよい。首皮排出手段は、下部ユニット30の下方に設けられた首皮排出路41と、円筒フレーム6と連動して、首皮排出路41上に落下した首皮を集めるスクレーパ42と、スクレーパ42で集められた首皮を排出する排出口43とを有する。このように、首皮排出手段を設けることにより、ワーク50から分離した首皮を容易に回収することが可能となる。
【0033】
続いて、
図5乃至
図9を参照して、スライドガイド8に取り付けられる上部ユニット20及び下部ユニット30について具体的に説明する。ここで、
図5は首皮把持前における上部ユニット及び下部ユニットの具体的構成を示す側面図で、
図6は首皮把持時における上部ユニット及び下部ユニットの具体的構成を示す側面図で、
図7は肩乗せ台及び肩部首皮切断手段の平面図であり、(A)は肩部首皮の切断前の状態を示す図で、(B)は肩部首皮の切断時の状態を示す図で、
図8は固定ドラムに設けられたカムの構成を示す平面図で、
図9は首皮把持手段を示し、
図6のB−B断面図である。
【0034】
図5及び
図6に示すように、上部ユニット20は、スライドガイド8に対して上下にスライド可能に取り付けられている。具体的に上部ユニット20は、2本のスライドガイド8が貫通する上部基台21を有している。上部基台21には、固定ドラム9に向けて突出するガイドシュー22が設けられている。このガイドシュー22は、固定ドラム9に設けられた上部ガイドレール10に摺動するように係合しており、円筒フレーム6の回転に伴って上部ユニット20が上部ガイドレール10に沿って上下動するようになっている。
【0035】
また、上部基台21には、ボルトを介してL字状の肩乗せ台23が固定されている。
図7に示すように、肩乗せ台23は水平面23aを有し、この水平面23aにワーク50の肩部54(
図3参照)を当接させることによりワーク50の鉛直方向の位置決めをする。すなわち、水平面23aに当接した肩部54を基準として、ここから下方にぶら下がる首部52の首皮分離範囲が決定される。このように、ワーク50の肩部54の位置決めをする肩乗せ台23を備えることで、大きさが異なるワーク50に対しても常に最適な範囲の首皮を回収することが可能となる。
【0036】
さらに、上部基台21には、固定ドラム9の半径方向に該基台21を貫通するロッド24を介して肩部首皮切断手段が取り付けられている。具体的には、肩部首皮切断手段は、第1カッタ27aと、第2カッタ27bと、リンク28とを有する。第1カッタ27aは、肩乗せ台23の水平面23aに固定されている。一方、ロッド24はT字形に形成されており、ロッド24の基台貫通部24aの端部に長尺板部24bが垂直に取り付けられている。リンク28は、一端側に支点28aが設けられ、他端側に支点29bが設けられている。そして、ロッド24の長尺板部24bに、支点28aを介してリンク28が回動自在に取り付けられている。また、リンク28には、他の支点28bを介して第2カッタ27bが回動自在に取り付けられている。さらに、第1カッタ27aと第2カッタ27bとは、支点27cを介して回動自在に連結されている。
【0037】
ここで、ロッド24の固定ドラム9側端部にはカムフォロワ25が設けられている。これに対応して、固定ドラム9には第2カム16が設けられている。
図8に示すように、第2カム16は、固定ドラム9との半径方向の距離が変位するように配置されている。第2カム16は固定ドラム9の円周方向に2箇所設けられており、ワーク50の搬送方向において上流側の第2カム16aは、徐々に固定ドラム9との距離が狭くなるように配置され、下流側の第2カム16bは、徐々に固定ドラム9との距離が広くなるように配置されている。
【0038】
そして、カムフォロワ25が第2カム16に案内されることにより、ロッド24の基台貫通部24aが上部基台21内をスライドし、これに伴い長尺板部24bに取り付けられたリンク28が固定ドラム9の半径方向に移動する。
図7(A)に示すように、ロッド24が外側フレーム15側に位置するときは、リンク28及び第2カッタ27bが外側フレーム15側に押し出されてこれらのカッタが開いている。一方、
図8に示す上流側の第2カム16aの位置において、
図7(B)に示すようにロッド24が固定ドラム9側に移動すると、リンク28及び第2カッタ27bが固定ドラム9側に引き寄せられ、これらのカッタが閉じてカッタ間に存在する肩部首皮を切断するようになっている。肩部首皮を切断した後は、
図8に示す下流側の第2カム16bの位置において、リンク28及び第2カッタ27bが固定ドラム9から押し戻され、
図7(A)の状態に戻る。
【0039】
このように、肩部首皮切断手段によって、ワーク50の左右肩部近傍の首皮にそれぞれ切れ込みを入れるようにしたので、確実に広範囲の首皮を回収することができ、より一層の歩留まり向上が図れる。なお、上記した肩部首皮切断手段による切断部位は、
図3(A)、(B)に示すワーク50において、符号62で示す部位である。
【0040】
図5及び
図6に戻り、下部ユニット30は、スライドガイド8に対して上下にスライド可能に取り付けられている。具体的に下部ユニット30は、2本のスライドガイド8が貫通する下部基台31を有している。下部基台31には、固定ドラム9に向けて突出するガイドシュー32が設けられている。このガイドシュー32は、固定ドラム9に設けられた下部ガイドレール11に摺動するように係合しており、円筒フレーム6の回転に伴って下部ユニット30が下部ガイドレール11に沿って上下動するようになっている。
【0041】
また、下部基台31には首皮把持手段が取り付けられている。
首皮把持手段は、
図9に示すように、咽側把持部材33と、背側把持部材34とからなる。咽側把持部材33及び背側把持部材34はそれぞれ、ワーク50の頸椎に対応した湾曲形状を有する湾曲部33a、34aと、この湾曲部33a、34aの端部からその径方向外側に延出した平面形状を有し、頸椎方向に凹凸33c、34cが形成された平面部33b、34bとを含む。平面部33b、34bは、互いに対面するようになっており、対面したときに各凹凸33c、34cが互いに嵌合するように形成されていることが好ましい。そして、これらの湾曲部33a、34aによりワーク50の頸椎周囲の首皮を把持し、且つ2つの対面する平面部33b、34bにより湾曲部33a、34aからはみ出た首皮を挟み込むようになっている。
【0042】
図5及び
図6に戻り、首皮把持手段は、咽側把持部材33と背側把持部材34とが支点35を中心に開閉するクランプ状に形成されていることが好ましい。このように、咽側把持部材33と背側把持部材34とが支点35を介して連結され、該支点35を中心に開閉するクランプ状に形成されていることにより、2つの把持部材33、34間で、湾曲部33a、34aまたは平面部33b、34bの凹凸33c、34cが互いにずれることを防止できる。
また、この首皮把持手段は、一端が咽側把持部材33側に係止され他端が背側把持部材34側に係止された付勢バネによりワーク50の首皮を挟んだ状態を保持するトグル機構37を有していてもよい。このように、首皮把持手段がトグル機構37を有することで、首皮を把持した状態を確実に保持することがきる。
【0043】
さらに、首皮取り装置1は、首皮把持手段を含む下部ユニット30を下方に移動させる移動機構を有している。この移動機構は、上述したように、固定ドラム9に設けられた下部ガイドレール11と、下部基台31に設けられたガイドシュー32とから構成されていてもよい。そして、咽側把持部材33及び背側把持部材34でワーク50の首部周囲の首皮を把持した状態で、上記した移動機構により下部ユニット30を下方に移動させることにより首皮を頸椎から剥離する。
【0044】
背側把持部材34には、外側フレーム13側にカムローラ36を設けてもよい。カムローラ36は、外側フレーム13に取り付けられた第1カム15に案内されて上下動する。第1カム15は、回転方向に2箇所設けられており、ワーク搬送方向の上流側に位置する第1カム15aは徐々に上昇するように配置され、カムローラ36を下から押し上げて首皮把持手段を閉じる方向に動作させる。一方、下流側に位置する第1カム15bは徐々に下降するように配置され、カムローラ36を上から押し下げて首皮把持手段を開く方向に動作させる。
【0045】
また、下部ユニット30に、首皮把持手段で把持される首皮位置より上方の背側首皮に食い込む鋸刃状の引き剥がし手段39を設けることが好ましい。この引き剥がし手段39は、アームを介して背側把持部材34に連結し、背側把持部材34とともに動作するようにしてもよい。すなわち、引き剥がし手段39が首皮に食い込んだ状態で、首部周囲を把持する首皮把持手段とともに下部ユニット30を下方に移動させる。
このように、首皮把持手段で把持される首皮位置より上方の背側首皮に食い込む鋸刃状の引き剥がし手段39を備えることで、
図3(B)に示すワークの切断部位63に相当する切れ目を入れることができ、背側首皮をより広範囲に回収でき、歩留まりをより一層向上させることができる。また、背側首皮に食い込む鋸刃状の引き剥がし手段を取り付けるのみであるため、装置の簡素化が図れる。
【0046】
また、下部ユニット30の変形例として、上記した引き剥がし手段39の代わりに、首皮把持手段で把持される首皮位置より上方の背側首皮に水平方向に切れ込みを入れる背側首皮切断手段を備えてもよい。
このように、背側首皮に水平方向に切れ込みを入れる背側首皮切断手段を備えることで、背側首皮をより広範囲に回収でき、歩留まりをより一層向上させることができる。また、背側首皮切断手段によって背側首皮に水平方向に切れ込みを入れるようにしたので、ほぼ均一な形状の首皮を回収できる。
【0047】
次に、
図10及び
図11を参照して、本発明の実施形態に係る首皮処理方法を説明する。ここで、
図10はガイドレール位置に対応した処理工程を説明するための固定ドラムの展開図で、
図11の(1)〜(7)は各処理工程における装置の側断面図である。
図11は、上部ガイドレール10及び下部ガイドレール11が設けられた固定ドラム9の展開図であり、0°から360°までを示している。上記したように、上部ガイドレール10によって、肩乗せ台及び肩部首皮切断手段を含む上部ユニット20が上下動し、下部ガイドレール11によって、首皮把持手段及び引き剥がし手段を含む下部ユニット30が上下動する。
【0048】
まず最初に、
図10の位置1において、
図11(1)に示すように首皮把持手段は開いた状態であり、ガイドバーを介してワーク50が引き込まれる。
図10の位置2において、
図11(2)に示すように首皮把持手段は開いた状態を維持しているが、上部ユニット20及び下部ユニット30がともに上昇する。
図10の位置3において、
図11(3)に示すように首皮把持手段は閉じて首皮周囲を把持する。さらに、
図10の位置4において、
図11(4)に示すように下部ユニット30が下降し、首皮の引き剥がしを開始するとともに、上部ユニット20の肩部首皮切断手段によって両側の肩部首皮に切れ込みを入れる。続いて、
図10の位置5において、
図11(5)に示すように下部ユニット30が最下段まで移動して首皮の引き剥がしを完了するとともに、上部ユニット20が下降する。
図10の位置6において、
図11(6)に示すように首皮把持手段が開いて円筒フレーム6とワーク50とが離れるとともに、分離した首皮を排出する。このとき、下部ユニット30の下方に首皮排出路41を設けておき、スクレーパ42によって落下した首皮を掻き集めて、決められた排出口43より排出するようにしてもよい(
図1参照)。そして、
図10の位置7において、
図11(7)に示すように再度ワーク50の引き込み準備を行う。
【0049】
上述したように本実施形態の首皮取り装置1によれば、首皮把持手段によって、ワーク50の首部周囲を囲んで首皮を把持するようにしたので、首皮の全周に亘って引っ張る力を与えることができ、形状のよい首皮を回収することが可能となる。
図12は、本実施形態における装置で分離回収される首皮の状態を示す図であり、同図に示すように本実施形態における分離首皮は、背側から深く首皮を分離できるため、極めて面積が大きくなる。したがって、製品の歩留まりを向上させることが可能である。
【0050】
さらに、ワーク50の腹腔に器具等を挿入しないで首部周囲を囲んで首皮を把持して引っ張るようにしたので、中抜き前及び中抜き後のいずれのワーク50にも適用でき、この装置1を脱骨・解体処理のラインに組み込むことも出来る。
また、頸椎周囲に位置する把持部材に湾曲部を形成したので、首皮とともに頸椎が抜けることを防止できる。さらに、湾曲部からはみ出た首皮は、頸椎方向に凹凸が形成された平面部で挟み込むようにしたので、強固に首皮を掴んで確実に頸椎から首皮を剥離することが可能となる。
【0051】
さらにまた、首皮が頸椎方向に咽部から頭部付け根まで切開されたワーク50を用いたので、胸側から首皮が切り開かれ、脂がのった上質の背側首皮を形状よく残すことができ、高品質の首皮を回収することが可能となる。
また、オーバーヘッドコンベア2に係合して回転する円筒フレーム6によって切断動作や把持動作等の各動作が実施されるようにすることで、新たに駆動装置を設ける必要がなくなり、イニシャルコスト及びランニングコストを安価にできる。