(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5702175
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】メモリ装置
(51)【国際特許分類】
G11C 16/06 20060101AFI20150326BHJP
G11C 16/02 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
G11C17/00 634E
G11C17/00 613
G11C17/00 634D
G11C17/00 632A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-20770(P2011-20770)
(22)【出願日】2011年2月2日
(65)【公開番号】特開2012-160239(P2012-160239A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2014年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】長友 雅彦
【審査官】
小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−057791(JP,A)
【文献】
特開平06−119069(JP,A)
【文献】
特開昭60−043300(JP,A)
【文献】
特開2010−152894(JP,A)
【文献】
特開2003−217287(JP,A)
【文献】
特開平09−091976(JP,A)
【文献】
特開平09−265786(JP,A)
【文献】
特開平11−213664(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0077745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/06
G11C 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性のFET(電界効果トランジスタ)型メモリセルに記憶されたデータに対応して読出し電流を出力するメモリ部と、基準電流を発生する基準電流発生部と、前記読出し電流と前記基準電流とを大小比較してその比較結果を出力する電流比較部と、を備えるメモリ装置であって、
前記メモリ部は電源電圧を昇圧して昇圧電圧を発生する昇圧手段を有し、前記データの読出し時に前記昇圧電圧を前記メモリセルのゲート電圧として印加して前記読出し電流を出力し、
前記基準電流発生部は、前記昇圧電圧に応じた電圧が一方の入力端子に印加される差動増幅器と、前記差動増幅器の出力電圧に応じた電圧を前記差動増幅器の他方の入力端子に印加する帰還手段と、前記差動増幅器の出力電圧に応じて前記基準電流を生成する電流出力手段と、一端が前記昇圧手段の出力に接続され他端が接地されて前記昇圧電圧を分圧して分圧電圧を生成する分圧回路と、を有し、前記分圧電圧が前記差動増幅器の前記一方の入力端子に印加されることを特徴とするメモリ装置。
【請求項2】
前記帰還手段は、前記差動増幅器の出力電圧がゲートに印加される第1のPチャンネルFETと、前記第1のPチャンネルFETのドレインに一端が接続された抵抗と、を有し、前記第1のPチャンネルFETのソースに前記電源電圧が印加され、前記抵抗の他端が接地され、前記第1のPチャンネルFETのドレインの電圧が前記差動増幅器の出力電圧に応じた電圧として前記差動増幅器の他方の入力端子に印加され、
前記電流出力手段は、前記差動増幅器の出力電圧がゲートに印加される第2のPチャンネルFETを有し、前記第2のPチャンネルFETのソースに前記電源電圧が印加され、前記第2のPチャンネルFETのドレインから前記基準電流が出力されることを特徴とする請求項1記載のメモリ装置。
【請求項3】
前記メモリセルは、前記メモリ部にマトリックス状に配列された複数のメモリセルのうちのいずれか1のメモリセルであり、前記メモリ部はコントローラからの指令に応じて前記1のメモリセルを選択して、その選択したメモリセルからの前記読出し電流を出力することを特徴とする請求項1記載のメモリ装置。
【請求項4】
前記基準電流発生部は、前記昇圧電圧を分圧して分圧電圧を生成する分圧回路を有し、前記分圧電圧が前記差動増幅器の前記一方の入力端子に印加されることを特徴とする請求項1又は2記載のメモリ装置。
【請求項5】
前記昇圧手段はチャージポンプからなることを特徴とする請求項1記載のメモリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリ装置に関し、特に不揮発性のメモリセルからの読出し電流を検出してその読出し電流を基準電流と比較するメモリ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は従来のメモリ装置の一構成例を示している。このメモリ装置は、基準電流発生回路1、不揮発性メモリ部2、及び電流比較回路3から構成される。
【0003】
基準電流発生回路1は、PMOSFET(Pチャンネル金属酸化膜型電界効果トランジスタ)11,12,16,18、NMOSFET(Nチャンネル金属酸化膜型電界効果トランジスタ)13〜15及び抵抗17を備えている。同一特性のPMOSFET11,12、同一特性のNMOSFET13,14及びNMOSFET15は差動増幅器を構成している。すなわち、PMOSFET11とNMOSFET13とは、ノードN1で
ドレイン同士で互いに接続され、PMOSFET12とNMOSFET14とは、ノードN2で
ドレイン同士で互いに接続されている。PMOSFET11,12のソースは電源電圧Vccの端子に接続され、NMOSFET13,14のドレインはノードN3を介して定電流源をなすNMOSFET15のドレインに接続されている。NMOSFET15のゲートは電圧Vccの端子に接続され、ソースは接地電位Vssの端子に接続されることにより接地されている。ノードN2はPMOSFET11,12各々のゲートに接続されている。NMOSFET13のゲートが差動増幅器の一方の入力端子をなし、基準電圧Vrefが印加される。NMOSFET14のゲートは差動増幅器の他方の入力端子をなす。ノードN1は差動増幅器の出力端子をなし、PMOSFET16,18のゲートに接続されている。PMOSFET16のドレインはノードN4をなすと共に抵抗17を介して接地電位Vssの端子に接続されている。
【0004】
PMOSFET16と抵抗17とは帰還回路を構成しており、ノードN4が上記のNMOSFET14のゲート(他方の入力端子)に接続されている。PMOSFET18は電流出力回路を構成しており、そのソースが電圧Vccの端子に接続され、ドレインが基準電流Irの出力端(ノードN5)をなしている。
【0005】
メモリ部2は、ワード線デコーダ5、データ線デコーダ6、選択出力部7、定電圧回路8、チャージポンプ9、及びメモリセルマトリックス10を備えている。メモリセルマトリックス10はマトリックス状に配置された不揮発性のFET型メモリセルMC
OO〜MC
mnからなる。メモリセルMC
OO〜MC
mn各々のゲートは、ワード線デコーダ5からのワード線W
0〜W
mに接続され、ドレインは定電圧回路8の出力電圧CDV(例えば、1.4V)の出力端子に接続され、ソースはデータ線D
0〜D
nを介して選択出力部7に接続されている。
【0006】
選択出力部7はデータ線D
0〜D
n毎のNMOSFET7
0〜7
nからなる。NMOSFET7
0〜7
nのゲートにはデータ線デコーダ6からデータ選択線DS
0〜DS
nを介して制御信号が選択的に供給され、その制御信号が供給されたNMOSFET(7
0〜7
nのいずれか1)のドレイン・ソース間がオンとなる。NMOSFET7
0〜7
nのソースは互いに接続されており、選択出力部7の出力となっている。選択出力部7の出力はメモリ部2の出力として電流比較回路3の入力となるノードN6に接続されている。メモリセルMC
OO〜MC
mnのうちのいずれかのデータ読出し時には選択出力部7から読出し電流Imcが電流比較回路3に対して出力される。
【0007】
電流比較回路3は、メモリ部2から読出し電流Imcを受け入れると共に基準電流発生回路1から基準電流Irを受け入れ、読出し電流Imcを基準電流Irと大小比較して論理を示す出力信号outを生成する。電流比較回路3としては特許文献1に読出し回路として開示されている回路を用いることができる。
【0008】
かかる従来のメモリ装置において、メモリ部2のメモリセルMC
OO〜MC
mnのうちのいずれかの1のメモリセルの記憶データを読み出す場合には、その1のメモリセルが図示しないコントローラの指令に応じてワード線デコーダ5及びデータ線デコーダ6により選択され、その1のメモリセルがデータ線を介してノードN6に接続される。すなわち、1のメモリセルからの読出し電流Imcが電流比較回路3に流入する。一方、基準電流発生回路1からは電流比較回路3に基準電流Irが流入する。基準電流Irは論理1に対応する読出し電流Imcの期待値Aと論理0に対応する読出し電流Imcの期待値Bとの中間値である。電流比較回路3内では基準電流Irと検出電流Imcとの大小の差を電圧差に変換し、その差電圧が差動増幅器で増幅され、その1のメモリセルの読出しデータとして出力される。
【0009】
ところで、このようなメモリ装置においては、電源電圧Vccとして一般的に5V程度の電圧が用いられるが、近時、メモリ装置が組み込まれる機器の電源電圧Vccの低電圧化に伴い、低電圧供給でメモリセルからのデータ読出しを可能にすることが行われている(特許文献2参照)。上記の従来のメモリ装置では、低電圧(例えば、Vcc=2.7Vより大)での読出しを可能にするために、メモリセルのゲートであるワード線には、Vcc依存をほとんど持たないレベルVCW(例えば、3.2V)にチャージポンプ9により昇圧した電圧を印加し、これにより低電圧での読出し電流Imcの減少を抑えている。
【0010】
基準電流発生回路1においては、電源電圧Vccに電圧依存を持たない基準電圧Vref(例えば、1、4V)が入力となるPMOSFET11,12、NMOSFET13,14,15で構成される差動増幅器と、差動増幅器の出力電圧がゲートに印加されるPMOSFET16と抵抗17との接続点のノードN4の電圧を差動増幅器の他方の入力端子にフィードバックする帰還回路とにより、PMOSFET16には電圧Vccに依存しない一定電流が流れる。また、差動増幅器の出力電圧は一定電圧となり、それがPMOSFET18のゲートに印加されるので、PMOSFET18のドレインから電源電圧Vccに電圧依存を持たない読出し電流Imcの中間の基準電流Irを出力することができる。
【0011】
よって、読出し電流Imc及び基準電流Ir共に低電圧での電流減少が少ないため、上記した例えば、Vcc=2.7V程度までの低電圧での読出し動作を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭61−129800号公報
【特許文献2】特表2009−522705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、かかる従来のメモリ装置において、更なる低電圧動作(例えば、Vcc=1.8V〜2.7V)を行う場合には、負荷集中等が原因でチャージポンプ9の昇圧能力の低下が発生することがある。この昇圧能力の低下発生時には、昇圧電圧VCWの電位が低下することで読出し電流Imcが減少し、これにより電流値の関係がImc(期待値B)<Ir<Imc(期待値A)となるべきところが、
図2に示すように、Imc(期待値B)<Imc(期待値A)<Irとなるため期待値Aの読み出しができず、更なる低電圧動作ができないという不具合が発生していた。
【0014】
そこで、本発明の目的は、かかる点を鑑みてなされたものであり、メモリセルから安定して正常な読出しが可能な低電圧動作の範囲を拡げることができるメモリ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のメモリ装置は、不揮発性のFET(電界効果トランジスタ)型メモリセルに記憶されたデータに対応して読出し電流を出力するメモリ部と、基準電流を発生する基準電流発生部と、前記読出し電流と前記基準電流とを大小比較してその比較結果を出力する電流比較部と、を備えるメモリ装置であって、前記メモリ部は電源電圧を昇圧して昇圧電圧を発生する昇圧手段を有し、前記データの読出し時に前記昇圧電圧を前記メモリセルのゲート電圧として印加して前記読出し電流を出力し、前記基準電流発生部は、前記昇圧電圧に応じた電圧が一方の入力端子に印加される差動増幅器と、前記差動増幅器の出力電圧に応じた電圧を前記差動増幅器の他方の入力端子に印加する帰還手段と、前記差動増幅器の出力電圧に応じて前記基準電流を生成する電流出力手段と、
一端が前記昇圧手段の出力に接続され他端が接地されて前記昇圧電圧を分圧して分圧電圧を生成する分圧回路と、を有し、前記分圧電圧が前記差動増幅器の前記一方の入力端子に印加されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のメモリ装置によれば、メモリセルから読出し電流を得るためにメモリセルのゲートに印加される昇圧手段による昇圧電圧が基準電流発生部に供給され、その昇圧電圧に応じて基準電流のレベルが定まるので、電源電圧が低電圧動作でも従来よりも更に低い電圧範囲でメモリセルからの読出し電流と基準電流との大小比較を正確に行うことができ、これによりメモリセルから安定して正常な読出し動作が可能な低電圧動作の範囲を拡大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1のメモリ装置による読出し電流と基準電流との関係を示す図である。
【
図3】本発明によるメモリ装置の構成を示す図である。
【
図4】
図3のメモリ装置による読出し電流と基準電流との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図3は本発明の実施例としてメモリ装置の構成を示している。このメモリ装置は、
図1に示した従来のメモリ装置と同様に、基準電流発生回路(基準電流発生部に相当する)1、メモリ部2、及び電流比較回路(電流比較部に相当する)3から構成される。メモリ部2及び電流比較回路3は従来のメモリ装置のものと同一である。
【0020】
基準電流発生回路1は、従来のメモリ装置のものと同様に、PMOSFET11,12,16,18、NMOSFET13〜15及び抵抗17を備える他に、抵抗101,102を備えている。抵抗101と抵抗102とは直列に接続されて分圧回路を構成している。抵抗101の一端である分圧回路の一端にはチャージポンプ9の出力電圧VCWが印加され、抵抗101の他端と抵抗102の一端とが接続された接続点(ノードN100)が分圧回路の出力であり、NMOSFET13のゲートに接続されている。抵抗102の他端である分圧回路の他端は接地電位Vssの端子に接続されている。
【0021】
基準電流発生回路1のその他の構成は従来のメモリ装置のものと同一であるので、ここでの更なる説明は省略される。
【0022】
かかる本発明によるメモリ装置においては、昇圧手段であるチャージポンプ9の低電圧動作として昇圧能力が十分に満たされる第1の低電圧範囲(例えば、Vcc=2.7Vより大)と、昇圧能力の低下が発生する第2の低電圧範囲(例えば、Vcc=1.8V〜2.7V)とがあるとする。
【0023】
チャージポンプ9の出力電圧VCWはワード線デコーダ5を介してワード線W
0〜W
mのうちのいずれか1のワード線W
iに印加される。また、データ線デコーダ6からの制御信号がデータ選択線DS
0〜DS
nのうちのいずれか1のデータ選択線DS
jにゲートが接続されたNMOSFET7
j(NMOSFET7
0〜7
nのうちのいずれ1のNMOSFET)に供給され、そのNMOSFET7
jがオン状態にされる。NMOSFET7
jのドレインにソースが接続された1のデータ線D
j(データ線D
0〜D
nのうちのいずれか1)上のメモリセルMC
ijに記憶されたデータに応じて読出し電流Imcがそのオン状態にあるNMOSFET7
jを介して電流比較回路3に出力される。
【0024】
読出し電流Imcは
図4に示すように、第1の低電圧範囲では期待値A(論理1に対応)及び期待値B(論理0に対応)共にほぼ一定である。第2の低電圧範囲では期待値A及び期待値B共に電圧Vccの低下に従って低下する。
【0025】
また、チャージポンプ9の出力電圧VCWは基準電流発生回路1内の抵抗101と抵抗102とからなる分圧回路に印加される。この分圧回路の出力電圧が基準電圧Vrefとなって差動増幅器の一方の入力端子であるNMOSFET13のゲートに供給される。
【0026】
第2の低電圧範囲において、チャージポンプ9の昇圧能力の低下が発生すると、チャージポンプ9の出力電圧VCWに応じて基準電圧Vrefが低く設定されることになる。
【0027】
差動増幅器は一方の入力端子の基準電圧Vrefと他方の入力端子(NMOSFET14のゲート)の電圧とが等しくなるように動作するので、差動増幅器の出力電圧(ノードN1の電圧)はチャージポンプ9の昇圧能力の低下時には上昇し、これにより、PMOSFET16に流れる電流及びPMOSFET18に流れる基準電流Irが低下する。すなわち、
図4に示すように、第2の低電圧範囲では電圧Vccの低下に従って読出し電流Imcの期待値A及び期待値Bは基準電流Irと共に低下し、また基準電流Irは期待値Aと期待値Bとの中間値となる。
【0028】
よって、第2の低電圧範囲の動作において、電流比較回路3は読出し電流Imcが基準電流Irに対する差電流が電圧差に変換され、その差電圧が差動増幅器で増幅され、上記のメモリセルMC
ijの読出しデータとして出力されるので、第1の低電圧範囲に加えて第2の低電圧範囲が正常動作範囲となる。
【0029】
なお、上記した実施例においては、昇圧手段としてチャージポンプが用いられているが、本発明はチャージポンプ以外の昇圧手段を用いても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 基準電流発生回路
2 メモリ部
3 電流比較回路
9 チャージポンプ
10 メモリセルマトリックス