(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程(d)において、微粒子化複合体膜(B)に対して基材上で一定方向に応力をかけた後に有機溶媒蒸気の暴露を行うか、又は基材上で有機溶媒蒸気を一定方向に流して暴露を行う請求項1に記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
置換基を有してもよいアルキル基が、メチル基、エチル基又はプロピル基であり、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基が、置換基を有してもよい(オリゴ)フェニレン基又は置換基を有してもよい(オリゴ)ナフチレン基であり、置換基を有してもよい(オリゴ)へテロアリール基が、置換基を有してもよい(オリゴ)ピロール基、置換基を有してもよい(オリゴ)チオフェン基、置換基を有してもよい(オリゴ)ベンゾピロール基又は置換基を有してもよい(オリゴ)ベンゾチオフェン基である請求項4に記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
前記工程(d)における有機溶媒がアミド系有機溶媒、ハロゲン系有機溶媒、又は芳香族系有機溶媒である請求項1〜6の何れかに記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
前記アミド系有機溶媒がN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドである請求項7に記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
即ち、本発明は、以下の各項目から構成される。
【0014】
1.(1)無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンとを酸に溶解させた後に、貧溶媒に析出させて複合体(A1)を得る工程(a)
(2)前記複合体(A1)を微粒子化して、微粒子化複合体(A2)を得る工程(b)
(3)前記微粒子化複合体(A2)を基材(基板)上に塗布し、微粒子化複合体膜(B)を得る工程(c)
(4)前記微粒子化複合体膜(B)に、基材(基板)上で有機溶媒蒸気の暴露を行うことにより、ナノサイズ構造物を成長させる工程(d)
の各工程を有することを特徴とする、無置換フタロシアニン及び置換基を有するフタロシアニンを含有し、且つ長径と短径を有するが、その短径が100nm以下であるナノサイズ構造物集合体の製造方法。
2.前記工程(d)において、微粒子化複合体膜(B)に対して基材(基板)上で一定方向に応力をかけた後に有機溶媒蒸気の暴露を行うか、又は基材(基板)上で有機溶媒蒸気を一定方向に流して暴露を行う1.に記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
3.無置換フタロシアニンが、一般式(1)又は(2)で表される1.又は2.に記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
【0016】
(但し、式中、Xは、銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、錫原子、鉛原子、マグネシウム原子、珪素原子、鉄原子、パラジウム原子、TiO、VO、及びAlClからなる群から選ばれる何れかである。)
4.置換基を有するフタロシアニンが、一般式(3)又は(4)で表されるものである1.〜3.の何れかに記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
【0017】
【化2】
Y
1からY
4は、フタロシアニン骨格とZ
1〜Z
4を結合させる結合基を表し、Y
1からY
4が結合基として存在しない場合には、Z
1〜Z
4は、−N
3、−CN、−NC、−NO
2、−NR
2(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−NR
3+(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−OH、−O
−、−SH、−S
−、−SO
2H、−SO
2−、−SO
3H、−SO
3−、−CHO、−COOH、−COO
−、−B(OR)
3(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−SiR
3(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−Si(OR)
3(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−P(=O)(OR)
2(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−P(=O)(OH)
2、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基、置換基を有してもよい(オリゴ)ヘテロアリール基、置換基を有してもよい(ポリ)エーテル鎖、置換基を有してもよい(ポリ)アルキレンイミン鎖、置換基を有してもよいフラーレン類、又は置換基を有してもよいフタルイミドであり、
Y
1からY
4が、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−、−NHC(=O)NH−、−OC(=O)NH−、−NHC(=O)O−、−S(=O)−、−S(=O)
2−、−SO
2NH−、−NHSO
2−、−NHSO
2NH−、−SO
3−、−OS(=O)
2−、−N=N−、−C(=O)OC(=O)−、−C(=O)NHC(=O)−、−(CR
2)
n−(nは1〜10の整数を、Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−CH=CH−、−C≡C−で表される結合基である場合には、Z
1〜Z
4は、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基、置換基を有してもよい(オリゴ)へテロアリール基、置換基を有してもよい(ポリ)エーテル鎖、置換基を有してもよい(ポリ)アルキレンイミン鎖、置換基を有してもよいフラーレン類、置換基を有してもよいフタルイミド、又は−SiR
3(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)であり、a、b、c及びdは各々独立に0〜4の整数を表すが、そのうち少なくとも一つは0ではない。
Xは、銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、錫原子、鉛原子、マグネシウム原子、珪素原子、鉄原子、パラジウム原子、チタニル(TiO)、バナジル(VO)、塩化アルミニウム(AlCl)からなる群から選ばれる何れかである。)
5.置換基を有してもよいアルキル基が、メチル基、エチル基又はプロピル基であり、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基が、置換基を有してもよい(オリゴ)フェニレン基又は置換基を有してもよい(オリゴ)ナフチレン基であり、置換基を有してもよい(オリゴ)へテロアリール基が、置換基を有してもよい(オリゴ)ピロール基、置換基を有してもよい(オリゴ)チオフェン基、置換基を有してもよい(オリゴ)ベンゾピロール基又は置換基を有してもよい(オリゴ)ベンゾチオフェン基である4.に記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
6.前記工程(a)における酸が、硫酸、クロロ硫酸、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸である1.〜5.の何れかに記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
7.前記工程(d)における有機溶媒がアミド系有機溶媒、ハロゲン系有機溶媒、又は芳香族系有機溶媒である1.〜6.の何れかに記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
8.前記アミド系有機溶媒がN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドである7.に記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
9.前記ハロゲン系有機溶剤が、クロロホルム、塩化メチレン又はジクロロエタンである7.に記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
10.前記芳香族系有機溶媒が、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼンである7.に記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法。
11.1.〜10.の何れかに記載のナノサイズ構造物集合体の製造方法により得られるナノサイズ構造物集合体を含有する電子デバイス。
【0018】
<フタロシアニンナノサイズ構造物(ナノワイヤ又はナノロッド)集合体の製造方法>
本発明の製造方法の一形態は、以下の工程を有することに特徴を有する。
(1)無置換フタロシアニン及び置換基を有するフタロシアニンとを酸に溶解させた後に、貧溶媒に析出させて複合体(A1)を得る工程(a)
(2)前記複合体(A1)を微粒子化して、微粒子化複合体(A2)を得る工程(b)
(3)前記微粒子化複合体(A2)を基板上に塗布し複合体膜(B)を得る工程(c)
(4)前記微粒子化複合体膜(B)を有機溶媒蒸気に暴露し、ナノサイズ構造物を成長させる工程(d)
【0019】
・工程(a)
一般にフタロシアニン類は硫酸等の酸溶媒に可溶であることが知られており、本発明のフタロシアニンナノサイズ構造物の製造方法においても、まず無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンとを硫酸、クロロ硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の酸溶媒に溶解させる。その後に水等の貧溶媒に投入して無置換フタロシアニン及び置換基を有するフタロシアニンとの複合体(A1)を析出させる。
【0020】
ここで、置換基を有するフタロシアニンの無置換フタロシアニンに対する混合比は5〜200質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは30〜120質量%である。混合比が5質量%以上の場合は、置換基を有するフタロシアニンが有する置換基(官能基あるいはポリマー側鎖)の作用により、後述する工程を経て一方向に結晶成長して良好にナノワイヤー又はナノロッド化する傾向を有しており、一方、200質量%以下の範囲にあれば該官能基やポリマー側鎖が結晶成長を阻害するほど多くないため、良好に一方向結晶成長を経てナノワイヤー又はナノロッド化し、粒子状となることはない。
なお、ここで言う混合比は[(置換基を有するフタロシアニンの質量)/(無置換フタロシアニンの質量)]×100である。
【0021】
前記無置換フタロシアニンと前記置換基を有するフタロシアニンの酸溶媒に対する添加量は未溶解分が無く、完全に溶解できる濃度であれば特に制限はないが、該溶液が十分な流動性を有している程度の粘性を保つ範囲として、20質量%以下が好ましい。
【0022】
前記無置換フタロシアニンと前記置換基を有するフタロシアニンとを溶解させた溶液を水等の貧溶媒に投入して前記無置換フタロシアニンと前記置換基を有するフタロシアニンの複合体を析出させる際、該溶液は、貧溶媒に対して、0.01〜50質量%の範囲が好ましい。0.01質量%以上であれば、析出する該複合体の濃度も十分高いので、固形分回収が容易であり、50質量%以下であれば、すべての前記無置換フタロシアニンと前記置換基を有するフタロシアニンが析出して固体状の複合体となり、溶解成分がなく、回収が容易となる。
【0023】
前記の貧溶媒に関して無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンが不溶もしくは難溶性の液体であれば特に制限はないが、析出する複合体の均質性を高く保てることができ、かつ、後述する微細化工程に好適な環境負荷の少ない、水もしくは水を主成分とする水溶液を最も好ましい貧溶媒として挙げることができる。
該複合体は濾紙及び、ブフナーロートを用いて濾過し、酸性水を除去するともに、濾液が中性になるまで水洗して、含水した該複合体を回収することができる。回収した複合体は、含水状態のまま溶媒や水を追加し工程(b)に供しても良いし、又、乾燥して水分を完全に除去した後、N−メチルピロリドンやジクロロベンゼン等の有機溶媒中に湿式分散し、工程(b)に供しても良い。
【0024】
前記工程(a)で得られた無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニンの複合体(A1)は透過型電子顕微鏡による観察結果から、形態が無定形であることが確認された。
【0025】
・工程(b)
工程(b)は、前記工程(a)を経て得られた複合体(A1)を微粒子化することができれば、その方法は特に限定されるものではない。この微粒子化の方法として、乾式法と湿式法があるが、後工程(c)にて、本工程で得られた微粒子化複合体(A2)を塗布することを鑑みると、湿式法で前記複合体(A1)を微粒子化することが好ましい。例えば、工程(a)で得られた複合体(A1)をビーズミル、ペイントコンディショナー等の微小ビーズを用いた湿式分散機や、プライミクス社製のT.K.フィルミックスに代表されるメディアレス分散機を用いて、水もしくは有機溶媒および含水有機溶媒等の分散溶媒とともに湿式分散して、該複合体を微粒子化する。ここで該複合体の分散溶媒に対する質量比に関しては特に制限はないが、分散効率の観点から、固形分濃度を1〜30質量%の範囲で分散処理することが好ましい。微粒子化処理にジルコニアビーズ等の微小メディアを使用する場合は、該複合体の微粒子化の程度を鑑みて、そのビーズ径は0.01〜2mmの範囲にあるとよい。また微小メディアは微粒子化の効率と回収効率の観点から、該複合体の分散液に対して、100〜1000質量%の範囲が最も好適に微粒子化できる。
【0026】
なお、得られた微粒子化複合体(A2)は水もしくは溶媒の分散液のまま、工程(c)に供しても良いし、乾燥して水分もしくは溶媒分を除去し粉末とした上で、工程(c)に供してもよいし、又は乾燥して水分もしくは溶媒分を除去し粉末とし、別の溶媒に再分散させた後、工程(c)に供してもよい。粉末化の方法については特に制限はないが、ろ過、遠心分離、ロータリーエバポレーター等による処理を挙げることができる。さらに真空乾燥機等を用いて水分や溶媒分を完全に除去するまで乾燥してもよい。
【0027】
前記分散液に用いる溶媒には、フタロシアニン類との親和性が低いものでなければ特に制限はないが、例えば、フタロシアニン類との親和性が高いアミド系溶媒、グリコールエステル系溶媒、芳香族有機溶媒、ハロゲン系有機溶媒等が好ましく、具体的には、フタロシアニンと特に親和性が高いN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、クロロホルム、塩化メチレン、又はジクロロエタンを最も好適な分散用有機溶媒として挙げることができる。上記アミド系有機溶媒、グリコールエーテル系有機溶媒、芳香族有機溶媒、ハロゲン系有機溶媒は単独で用いることもできるが、任意の比率で混合して使用することもでき、さらには他の有機溶媒と併用することもできる。
【0028】
上述の微粒子化複合体(A2)に対する有機溶媒の添加量に関しては、適当な流動性を有し、かつ、凝集防止の観点から、微粒子化複合体(A2)の有機溶媒に対する固形分濃度が0.1〜20%の範囲にあり、さらに好ましくは1〜10%である。
なお、微粒子化複合体(A2)を有機溶媒や水分散体として、工程(c)に供する場合、分散攪拌機、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式微粉砕機(ジェットミル)等を併用し、微粒子化複合体(A2)の分散体に対する分散度を向上させても良い。
【0029】
・工程(c)
工程(b)を経て得られた微粒子化複合体(A2)を、粉末あるいは有機溶媒や水分散体として基板に塗布し、微粒子化複合体塗布基板を得る。微粒子化複合体粉末の塗布方法としては、特に制限はなく、公知慣用の方式を採用することができ、具体的には静電粉体塗装、摩擦転写法、ラビング法等が挙げられる。一方、微粒子化複合体(A2)の有機溶媒や水分散体の製膜方法にも、特に制限はなく、公知慣用の塗布又は印刷方式を採用することができ、具体的には、インクジェット法、グラビア法、グラビアオフセット法、オフセット法、凸版法、凸版反転法、スクリーン法、マイクロコンタクト法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ロールコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレイコーター法、静電コーター法、超音波スプレイコーター法、ダイコーター法、スピンコーター法、バーコーター法、スリットコーター法、ドロップキャスト法等が挙げられる。
【0030】
微粒子化複合体(A2)を塗布する基板としては、塗布によって微粒子化複合体が基板上に固定化されるものであれば、特に制限はなく、金属、無機材料、ガラスや無機酸化物、ポリマー材料を用いることができる。金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、タングステン等を用いることができ、無機材料や無機酸化物としては、例えば、シリコン基板、酸化アルミ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、シリカ等を用いることができ、ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等を用いることができる。ポリマー材料のうち、プラスチックフィルムを基材として用いることで、金属、ガラス、無機酸化物等の基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、またフレキシビリティも付与できる。なお、デバイス化のためには、電極付基板を用いることもできる。
【0031】
・工程(d)
工程(c)を経て得られた微粒子化複合体塗布基板に有機溶媒の蒸気を暴露することによって、該基板上でフタロシアニンナノ構造物を成長させる。工程(d)において、暴露に用いる有機溶媒としては、フタロシアニン類との親和性が低いものでなければ特に制限はないが、例えば、フタロシアニン類との親和性が高いアミド系溶媒、グリコールエステル系溶媒、芳香族有機溶媒、ハロゲン系有機溶媒が好ましく、具体的には、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等を最も好適な有機溶媒として挙げることができる。前記アミド系有機溶媒、グリコールエステル系溶媒、芳香族有機溶媒、ハロゲン系有機溶媒は単独で用いることもできるが、任意の比率で混合して使用することもでき、さらには他の有機溶媒と併用して用いることもできる。
【0032】
有機溶媒の蒸気温度は、0〜300℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは20〜250℃である。蒸気温度が0℃以上であれば、ナノワイヤー又はナノロッド化に十分な濃度の有機溶媒蒸気を発生させることができる。また暴露時間には特に限定は無いが、フタロシアニンナノサイズ構造物の長さ(長径)が100nm以上に成長するまでに、少なくとも10分以上暴露することが好ましい。
【0033】
工程(d)では、前工程(c)で得られた微粒子化複合体膜(B)に基板上で一定方向に応力をかけた後に有機溶媒蒸気の暴露を行うか、又は基板上で有機溶媒蒸気を一定方向に流して該有機溶媒暴露を行ってもよい。これにより、フタロシアニンナノワイヤー又はナノロッドを、応力方向又は上記気流方向に(一方向に)、成長させることが可能となる(配向したナノサイズ構造物よりなる集合体)。なお、このような応力等を加えない場合にはナノワイヤー又はナノロッドが基板に対して垂直方向に伸びるため、基板垂直方向に一定の配向をもったナノワイヤー又はナノロッドを得ることができる(配向したナノサイズ構造物よりなる集合体)。
フタロシアニンあるいはフタロシアニン誘導体等のフタロシアニン類は、前記の様に、代表的な有機半導体の一つであり、高次構造、すなわち、分子の配列や集合状態を制御すること、すなわち分子が一定方向に配列することで良好な半導体特性を示すことが知られており、すなわち、これら分子が一定方向に配列したフタロシアニンナノワイヤー又はナノロッドは、有機半導体として非常に有用な材料である。通常、このような材料を電子デバイス等に供する場合には、該フタロシアニンナノワイヤー又はナノロッドは、一本で用いられることは少なく、複数の集合体として用いられるが、この際、集合体中でのワイヤー又はロッドの配列がランダムであると、電荷の輸送方向が一定にならず、充分な能力を発揮できない場合がある。従って、半導体としての能力を充分に発揮させるためには、該フタロシアニンナノワイヤー又はナノロッドが一定方向に配列した構造を形成することが重要である。
【0034】
本発明の応力とは、例えば、スピンコート法であれば、塗布回転時に基板中央から外端に生じる放射状の液流れに沿ったものであり、また、バーコートやアプリケーターによる塗布では、バーやアプリケーターの移動方向に生じる応力のことをいう。また、微粒子化複合体(A2)を基板上に塗布した後、別の基板を上部から押しつけて動かすことにより、表面に一定方向の応力を付与しても良い。
【0035】
<フタロシアニンナノサイズ構造物(ナノワイヤー又はナノロッド)を構成するフタロシアニン類>
本発明のフタロシアニンナノサイズ構造物としては、無置換フタロシアニンと置換基を有するフタロシアニン(フタロシアニン誘導体)からなる、フタロシアニンナノサイズ構造物を挙げることができる。
【0036】
本発明のフタロシアニンナノサイズ構造物を構成する無置換フタロシアニンには、一般式(1)で表されるフタロシアニン、及び式(2)で表される無金属フタロシアニンを用いることができる。
【0038】
一般式(1)において、Xとしては、フタロシアニンを構成するものであれば制限はないが、銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、錫原子、鉛原子、マグネシウム原子、珪素原子、鉄原子、パラジウム原子等の金属原子、又、チタニル(TiO)、バナジル(VO)、塩化アルミニウム(AlCl)等の金属酸化物や金属ハロゲン化物を挙げることができ、中でも銅原子、亜鉛原子、鉄原子が特に好ましい。
【0039】
本発明のフタロシアニンナノサイズ構造物を構成する置換基を有するフタロシアニンには、下記一般式(3)又は(4)であるフタロシアニン誘導体を用いることが出来る。
【0041】
一般式(3)において、Xとしては、フタロシアニンを構成するものであれば制限はないが、銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、錫原子、鉛原子、マグネシウム原子、珪素原子、鉄原子、パラジウム原子等の金属原子、又、チタニル(TiO)、バナジル(VO)、塩化アルミニウム(AlCl)等の金属酸化物や金属ハロゲン化物を挙げることができ、中でも銅原子、亜鉛原子、鉄原子が特に好ましい。
【0042】
一般式(3)又は(4)において、Y
1からY
4は、フタロシアニン骨格とZ
1からZ
4を結合させる結合基を表し、Y
1からY
4は存在しなくもよく、Y
1からY
4が結合基として存在しない場合には、Z
1からZ
4は、−N
3、−CN、−NC、−NO
2、−NR
2(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−NR
3+(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−OH、−O
−、−SH、−S
−、−SO
2H、−SO
2−、−SO
3H、−SO
3−、−CHO、−COOH、−COO
−、−B(OR)
3(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−SiR
3(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−Si(OR)
3(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−P(=O)(OR)
2(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−P(=O)(OH)
2、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール(基)、置換基を有してもよい(オリゴ)ヘテロアリール(基)、置換基を有してもよい(ポリ)エーテル鎖、置換基を有してもよい(ポリ)アルキレンイミン鎖、置換基を有してもよいフラーレン類、又は置換基を有してもよいフタルイミドである。
【0043】
一般式(3)又は(4)において、Y
1からY
4は、フタロシアニン環とZ
1からZ
4を結合させる結合基であれば、特に制限なく使用することが可能である。このような結合基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン結合、エチニレン、スルフィド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、ウレア基、ウレタン基、アミド基、アミノ基、イミノ基、ケトン基、エステル基等を挙げることができ、より具体的には、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−、−NHC(=O)NH−、−OC(=O)NH−、−NHC(=O)O−、−S(=O)−、−S(=O)
2−、−SO
2NH−、−NHSO
2−、−NHSO
2NH−、−SO
3−、−OS(=O)
2−、−N=N−、−C(=O)OC(=O)−、−C(=O)NHC(=O)−、−(CR
2)
n−(nは1〜10の整数を、Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す)、−CH=CH−、−C≡C−等である。
【0044】
一般式(3)又は(4)において、Z
1からZ
4は、前記結合基Y
1からY
4を介してフタロシアニン環と結合しえる官能基である。
【0045】
より具体的に、このような官能基としては、例えば、アルキル基、アルキルオキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホン酸基、シリル基、シラノール基、ボロン酸基、ニトロ基、リン酸基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ニトリル基、イソニトリル基、アンモニウム塩、フラーレン類、フタルイミド基等を挙げることができ、さらに具体的には、フェニル基やナフチル基等のアリール基、インドイル基やピリジニル基等のヘテロアリール基、メチル基等のアルキル基等を挙げることができる。この中でも具体的に好ましい基としては、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基、置換基を有してもよい(オリゴ)へテロアリール基、置換基を有してもよい(ポリ)エーテル鎖、置換基を有してもよい(ポリ)アルキレンイミン鎖、置換基を有してもよいフラーレン類、置換基を有してもよいフタルイミド、−SiR
3(Rは水素、又は置換基を有してもよいアルキル基)等を挙げることができる。
【0046】
前記置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基を挙げることができるが、特に、メチル基、エチル基、プロピル基等の低級アルキル基が好ましい。又、エーテル基又はアミノ基を有するアルキル基も好ましく、例えば、下記式
【0048】
(mは1から20の整数であり、R及びR’は、各々独立に炭素数1から20のアルキル基又はアリール基である。)
で表される基も用いることができる。
【0049】
前記置換基を有してもよい(オリゴ)アリール基としては、好ましくは、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいオリゴフェニレン基、置換基を有してもよいオリゴナフチル基等を挙げることができる。置換基としては、アリール基に置換が可能な公知慣用の置換基を挙げることができる。
【0050】
前記置換基を有してもよい(オリゴ)ヘテロアリール基としては、好ましくは、置換基を有してもよいピロール基、置換基を有してもよいチオフェン基、置換基を有してもよいオリゴピロール基、置換基を有してもよいオリゴチオフェン基等を挙げることができる。置換基としては、ヘテロアリール基に置換が可能な公知慣用の置換基を挙げることができる。
【0051】
又、置換基を有してもよいフラーレン類としては、無置換フラーレン、及び公知慣用の置換基を有するフラーレン類を挙げることができ、例えば、C60フラーレン、C70フラーレン、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)等を挙げることできる。
【0052】
前記置換基を有してもよいフタルイミド基としては、例えば、
【0054】
(ここで、qは1から20の整数である。)
で表される基を挙げることができる。置換基としては、フタルイミド基に置換が可能な公知慣用の置換基を挙げることができる。
【0055】
また、置換基を有してもよい(ポリ)エーテル鎖としては、一般式(化7)で表されるポリアルキレンオキシドコポリマーを挙げることができ、即ち、エチレンオキシドポリマーやエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー等のあらゆるポリアルキレンオキシドであり、ブロック重合したものでも、ランダム重合したものでも用いることができる。
【0056】
ここで、一般式(化7)におけるQ’は、炭素数1から30の非環状炭化水素基として、直鎖状炭化水素基でも分岐状炭化水素基でもどちらでもよく、炭化水素基は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基のどちらでもよい。このような非環状炭化水素基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−ヘキシル基、n−ドデシル基、ステアリル基、n−テトラコシル基、n−トリアコンチル基等の直鎖状又は分岐状飽和炭化水素基を挙げることができる。
【0057】
又、直鎖状又は分岐状不飽和炭化水素基としては、炭化水素基が二重結合又は三重結合を有してもよく、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、イソプレン基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ゲラニル基、エチニル基、2−プロピニル基、2−ペンテン−4−イニル基等の直鎖状又は分岐状不飽和炭化水素基を挙げることができる。
【0058】
ポリアルキレンオキシド部分の繰り返し数nには特に制限はないが、分散溶媒との親和性即ち、得られるナノサイズ構造物の分散安定性の観点からは、4以上100以下であることが好ましく、より好ましくは5以上80以下、更により好ましくは10以上50以下である。
【0060】
(ここで、nは4〜100の整数であり、Qは各々独立に水素原子又はメチル基であり、Q’は炭素数1〜30の非環状炭化水素基である。)
【0061】
一般式(3)又は(4)において、a、b、c及びdは各々独立に0から4の整数を表わし、フタロシアニン環に置換するY
1Z
1からY
4Z
4の置換基数を示す。なお、フタロシアニン環に置換する置換基の数aからdのうち少なくとも一つは0ではない。
【0062】
一般式(3)で表される置換基を有するフタロシアニンの具体例としては以下が挙げられるが、これらに限らない。なお、ここで、置換基を有するフタロシアニンの式の括弧の横の数字はフタロシアニン分子に対する置換基の平均導入数を表している。この数が小数である理由は、個々の分子についての置換基導入数は整数であるが、実際の使用に当たっては、置換基導入数の異なるものが混在しているためである。
【0070】
(ここで、Xは、銅原子又は亜鉛原子、nは1〜20の整数、mは置換基の平均導入数を表わす0〜4の数値である。)
【0072】
(ここで、Xは銅原子又は亜鉛原子、nは1〜20の整数、mは置換基の平均導入数を表わす0から4の数値であり、R
1からR
4は、各々独立に水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、アルキルオキシ基又はアルキルチオ基を表す。)
【0074】
(ここで、Xは銅原子又は亜鉛原子、nは1〜20の整数、mは置換基の平均導入数を表わす0から4の数値であり、R
1からR
2は、各々独立に水素原子、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、アルキルオキシ基又はアルキルチオ基を表す。)
【0076】
(但し、式中、Q及びRは水素原子又はメチル基を表す。nは4〜100の数値である。又スルファモイル結合を介してフタロシアニンに結合するポリアルキレンオキシド鎖の導入数mはフタロシアニンが有する4つのベンゼン環に対する平均導入数を表す0〜4の数値である。)
【0078】
又、一般式(4)で表される具体的化合物としては、前記式(化8)から(化18)において中心金属が存在しないフタロシアニン誘導体を挙げることができる。
【0079】
<電子デバイス>
電子デバイスとしては、有機半導体によって構成される通常公知のものであれば特に制限は無く、有機EL、有機電界効果型トランジスタ、有機太陽電池、有機フォトダイオード、有機センサー、有機レーザー、有機サイリスタ等を挙げることができる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
<フタロシアニンナノサイズ構造物集合体(膜)の製造>
・工程(a)
銅フタロシアニン(Fastogen Blue 5380E(商品名、DIC製))1.0gと
【0081】
【化18】
で表される銅フタロシアニン誘導体化合物0.83gを濃硫酸(関東化学製)81gに投入して完全に溶解させ、濃硫酸溶液を調製した。続いて蒸留水730gを1000mLのビーカーに投入し、これを氷水で十分、冷却した後、該蒸留水を撹拌しながら、先に調製した濃硫酸溶液を投入し、銅フタロシアニンと前記銅フタロシアニン誘導体化合物とからなる複合体を析出させた。
【0082】
続いて得られた該複合体を、濾紙を用いてろ過し、蒸留水を用いて十分に洗浄し、含水した該複合体を回収した。
【0083】
・工程(b)
工程(a)で得られた銅フタロシアニンと前記銅フタロシアニン誘導体化合物からなる複合体2.5gを含む含水複合体12.4gを容量50mLのポリプロピレン製容器に投入し、さらに蒸留水を4.3g加えて、該複合体の水に対する重量比を15%とし、次いでφ0.5mmのジルコニアビーズ60gを加えて、ペイントシェイカーを用いて2時間処理した。続いて、該処理にて微粒子(微細)化した複合体をジルコニアビーズから分離回収し、さらに蒸留水を加えて重量50gの微粒子化複合体水分散液(固形物濃度5%)(微粒子化複合体水分散液(1))を得た。
【0084】
・工程(c)
工程(b)で得られた微粒子化複合体水分散液をガラス板上にキャストし、乾燥させた。
【0085】
・工程(d)
工程(c)において得られた微細化複合体塗布ガラス板を、フローセル中に設置し、室温において、ジクロロベンゼン蒸気を窒素ガスによってフローさせ、基板の一方向から1時間暴露した(
図1参照)。このガラス板を取り出して、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、短径が約100nm、短径に対する長さの比率が10以上にまで成長したナノワイヤーが蒸気のフロー方向に成長(配向)していることが確認された(フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)(1))。
【0086】
<トランジスタの製造と評価>
実施例1で得た配向フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)(1)に、配向方向がチャネルとなるように、蒸着成膜によって、金薄膜からなるソース・ドレイン電極をパターン形成した(チャネル長:75μm、チャネル幅:5mm)。さらに、この上に、ゲート絶縁膜として、パリレン膜を化学気相堆積法(CVD法)にて成膜した。なお、パリレン膜は第三化成社製のdiX Cを原材料に、これを減圧下100〜170℃の温度にて昇華させ、引き続き熱分解炉に導入し(熱分解炉温度:650℃)、その後、前記フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)を有する基板を設置した成膜室に導入することで、作製した(膜厚:1μm)。
最後に、イオンコーターを用いて、白金を30nm、堆積させ、ボトムコンタクトトップゲート型のトランジスタ(1)を作製した。
上記各有機トランジスタについて、トランジスタ特性を測定した。トランジスタ特性の測定方法は、デジタルマルチメーター(ケースレー製237)を用いて、ゲート電極に0〜−80V電圧(Vg)をスイープ印加し、−80V印加したソース・ドレイン電極間の電流(Id)を測定することで行なった。移動度は、√Id−Vgの傾きから、周知の方法により求めた。単位はcm
2/V・sである。これらの結果を表1に示す。
【0087】
(実施例2)
実施例1における、ゲート絶縁膜材料を、パリレンに変えて、ポリイミド(サンエバー(商品名、日産化学製))にした以外は、実施例1と同様にして、ボトムコンタクトトップゲート型のトランジスタ(2)を作製した。評価結果を表1に示した。
【0088】
(実施例3)
ガラス基板上に、蒸着成膜によって、チタン/金積層薄膜からなるソース・ドレイン電極をパターン形成した(チャネル長:75μm、チャネル幅:5mm)(基板(3))。なお、各層の厚みは、下層:チタン層5nm、上層:金層30nmとした。
実施例1の工程(c)のガラス基板を前記基板(3)に変え、工程(d)におけるガスフロー方向を基板(3)に形成したチャネル方向と同じにした以外は実施例1と同様にして、トップコンタクトトップゲート型のトランジスタ(3)を作製した。評価結果を表1に示した。
【0089】
(実施例4)
n型のシリコン基板の表面層を熱酸化処理して、シリコン基板上に酸化シリコン(300nm)層を形成した(基板(4))。
実施例1の工程(c)におけるガラス基板を、基板(4)に変えた以外は実施例1と同様にして、配向フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)を得た。
その後、該フタロシアニン集合体(膜)上に、配向方向がチャネルとなるように、蒸着成膜によって、金薄膜からなるソース・ドレイン電極をパターン形成し(チャネル長:75μm、チャネル幅:5mm)、トップコンタクトボトムゲート型のトランジスタ(4)を得た。該トランジスタの評価結果を表1に示した。
【0090】
(実施例5)
<フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)の製造>
工程(a)〜(c)まで、実施例1と同様に行った後、微粒子化複合体塗布ガラス板を上方より、ガラス板で挟み、一方向にスライドさせることで応力を与えた後(
図2参照)、室温において、ジクロロベンゼン蒸気で飽和したガラス瓶へ入れ、1時間静置した。このガラス板を取り出して、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、短径が約20nm、短径に対する長さの比率が10以上にまで成長したナノワイヤーが応力方向(
図3、4右方向)に成長していることが確認された(
図3、
図4参照)(配向フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)(5))。
【0091】
<トランジスタの製造と評価>
フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)(1)の変わりにフタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)(5)を用いた以外は、実施例1と同様にしてトランジスタを作製した。その評価結果を表1に示した。
【0092】
(実施例6)
<太陽電池の製造と評価>
ガラス基板にスパッタリング法により正極となるITO透明導電層を100nm堆積させ、これをフォトリソグラフィー法により2mm幅の短冊状にパターニングした。得られたパターンITO付きガラス基板を中性洗剤、蒸留水、アセトン、エタノールの順にそれぞれにつき3回15分間超音波洗浄した後、30分間UV/オゾン処理し、この上にPEDOT:PSS水分散液(商品名AI4083、HCStarck社製)をスピンコートすることで、PEDOT:PSSよりなるバッファー層1を60nmの厚さで形成した。これをホットプレートにより100℃で5分間加熱乾燥した後、当該PEDOT:PSS層上に、実施例(1)の工程(a)、(b)により得られた微粒子化複合体水分散液(固形物濃度5%)(微粒子化複合体水分散液(1))をスピンコートし、膜厚100nmの微粒子化複合体膜を形成した。これを室温において、ジクロロベンゼン蒸気で飽和したガラス瓶へ入れ、1時間静置し、フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)(6)を作製した。その後、前記フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)(6)上に、2重量%のPCBM−オルトジクロロベンゼンをスピンコートし電子受容性材料層を積層し、これを蒸着用メタルマスク(2mm幅の短冊パターン形成用)とともに真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度を5×10
−4Paまで高めた後、抵抗加熱法によって、負極となるアルミニウムを2mm幅の短冊パターンになるように蒸着堆積した(膜厚:80nm)。以上のようにして、面積が2mm×2mm(短冊状のITO層とアルミニウム層が交差する部分)である光電変換素子(6)を作製した。
【0093】
このようにして得られた光電変換素子(6)の正極と負極をデジタルマルチメーター(商品名6241A、ADC社製)に接続して、擬似太陽光(簡易型ソーラシミュレータ XES151S、三永電機製作所製、スペクトル形状:AM1.5、強度:100mW/cm
2)の照射下(ITO層側から照射)、大気中で電圧を−0.1Vから+0.8Vまで掃引し、電流値を測定した。この時の短絡電流密度(印加電圧が0Vのときの電流密度の値。以下、J
sc)は5.33mA/cm
2、開放電圧(電流密度が0になるときの印加電圧の値。以下、V
oc)は0.55V、フィルファクター(FF)は0.33であり、これらの値から算出した光電変換効率(PCE)は0.98%であった。なお、FFとPCEは次式により算出した。
FF=JV
max/(J
sc×V
oc)
(ここで、JV
maxは、印加電圧が0Vから開放電圧値の間で電流密度と印加電圧の積が最大となる点における電流密度と印加電圧の積の値である。)
PCE=[(J
sc×V
oc×FF)/擬似太陽光強度(100mW/cm
2)]×100(%)
【0094】
(比較例1)
微粒子化した複合体をジルコニアビーズから分離回収した後、水分散体を作製せず、ろ過する以外は、実施例(1)と同様にして工程(a)〜(b)を行い、微粒子化複合体を得た。
この微粒子化複合体をジクロロベンゼン60gに分散し、2時間攪拌した後にさらに60gのN−メチルピロリドンを加えて、さらに2時間攪拌した。該分散体を、オイルバスを用いて加熱し、90分かけて145℃まで昇温した。145℃に到達後、そのままの温度でさらに30分間加熱を継続した。加熱後の分散液を、メンブレンフィルター(孔径0.1μm)を用いて濾過し、濾残をジクロロベンゼンでよく洗浄した。該濾残をガラス基板上にキャストして(フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)(1)’)、SEM観察を行ったところ、繊維状のフタロシアニンナノワイヤーが、ランダムに凝集しているのが観察された(
図5)。
【0095】
フタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)(1)の変わりにフタロシアニンナノワイヤー集合体(膜)(1)’を用いた以外は実施例(1)と同様にして、トランジスタ(1)’を作製した。評価結果を表(1)に示した。表より、本発明の効果は顕著であるといえる。
【0096】
【表1】