(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5704457
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】深赤色蛍光体、照明用光源および深赤色蛍光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/78 20060101AFI20150402BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20150402BHJP
H01J 61/44 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
C09K11/78CPZ
C09K11/08 B
H01J61/44 N
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-136850(P2011-136850)
(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公開番号】特開2013-1877(P2013-1877A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100112771
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 勝
(72)【発明者】
【氏名】植田 和茂
【審査官】
内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−297643(JP,A)
【文献】
特開2007−112951(JP,A)
【文献】
特開2010−037540(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0114175(US,A1)
【文献】
特開昭63−101476(JP,A)
【文献】
Luminescence Properties of Lanthanide and Transition Metal Ion-Doped Ba2LaNbO6: Detection of MnO6 8- and CrO6 9- Clusters,Inorganic Chemistry,2009年10月19日,Vol.48,Pages 11142-11146
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/00−11/89
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光中心がMn4+であり、母体が(Ae)2(Ln)SbO6からなるダブルペロブスカイト構造であって、AeがCa、SrおよびBaのなかから選ばれる1または2以上の元素であり、LnがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd
、TbおよびYのなかから選ばれる1または2以上の元素であることを特徴とする深赤色蛍光体。
【請求項2】
組成式Ae2LnSb1−xMnxO6で示され、xが0.001〜0.01であることを特徴とする請求項1記載の深赤色蛍光体。
【請求項3】
AeがCaおよびBaのなかから選ばれる1または双方の元素であり、LnがLaであることを特徴とする請求項1または2記載の深赤色蛍光体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の深赤色蛍光体を含む蛍光層を備えることを特徴とする照明用光源。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の深赤色蛍光体を固相反応で製造する方法であって、
Ae炭酸塩、Ln酸化物、Sb酸化物およびMn炭酸塩もしくはMn酸化物を、Ae:Ln:Sb:Mn=2:1:0.99〜0.999:0.001〜0.01のモル比になるように配合し、混合粉末を得る工程と、
該混合粉末を、不活性ガス雰囲気下、800〜1000℃の温度で1〜10時間か焼した後、さらに、1300〜1500℃の温度で1〜10時間焼成する工程と、
を有することを特徴とする深赤色蛍光体の製造方法。
【請求項6】
Ae炭酸塩がCaC03またはBaC03であり、Ln酸化物がLa2O3であり、Sb酸化物がSb2O3であり、Mn炭酸塩もしくはMn酸化物がMnCO3またはMnO2であることを特徴とする請求項5記載の深赤色蛍光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深赤色蛍光体およびそれを用いる照明用光源ならびに深赤色蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯および発光ダイオード等のランプや、液晶ディスプレイおよびプラズマディスプレイ等のディスプレイに可視光線発光体として赤色蛍光体が用いられている。
また最近では、プラズマディスプレイのフルHDテレビや白色LEDの室内照明やバックライトが普及しつつあり、豊かな色感や色調を表現する高品質ディスプレイ装置や白色LEDの需要が拡大している。
【0003】
高品格の色相を表現するためには、可視光領域の広い範囲で発光する蛍光体が不可欠であり、現在RGB三原色の蛍光体を用いて可視光領域を表現することが一般的である。
RGB三原色のなかでも最も波長領域の広い赤色は、高品格の色相を表現するために重要な色であり、一般的な赤色蛍光体だけではなく、特に深みのある赤色を表現する深赤色蛍光体の必要性が高まっている。
【0004】
一方、植物栽培用の光源の開発も現在進められており、深赤色の光が光合成に適した波長として植物の育成を促進すると考えられている。このような植物栽培用の光源として、深赤色蛍光体を含んだ蛍光ランプが既に報告されており、今後需要が高まってくる可能性がある。
【0005】
現在知られている深赤色蛍光体の例としては、例えば、3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:Mn
4+がある(非特許文献1参照)。
しかし、この深赤色蛍光体は、波長360〜380nmの紫外線励起における発光強度が低いという問題がある。
【0006】
この問題を改善するために、(k−x)MgO・xAF
2・GeO
2:yMn
4+の化学式で示されるマンガン活性の深赤色蛍光体が提案されている(特許文献1参照)。式中、kは2.8〜5の実数であり、xは0.1〜0.7の実数であり、yは0.005〜0.015の実数であり、AはCa、Sr、Ba、Znはまたはこれらの混合物である。
しかし、非特許文献1のものも含め、これらの深赤色蛍光体はF(フッ素)を含むため、化学的に不安定という問題がある。
【0007】
また、ダブルペロブスカイト(double-perovskite)構造のBa
2LaNbO
6にppmオーダーのMn
4+またはCr
3+をドープしてNbサイトに置換、配置した深赤色蛍光体が紹介されている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−202044号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】蛍光体同学会編、「蛍光体ハンドブック」、オーム社、昭和62年、p231
【非特許文献2】P.A.Tanner et al, Inorganic Chemistry, 2009年, Vol.48, 11142−11146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、従来の深赤色蛍光体は高い発光強度と化学的安定性を十分に兼ね備えていない点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る深赤色蛍光体は、発光中心がMn
4+であり、母体が(Ae)
2(Ln)SbO
6からなるダブルペロブスカイト構造であって、AeがCa、SrおよびBaのなかから選ばれる1または2以上の元素であり、LnがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd
、TbおよびYのなかから選ばれる1または2以上の元素であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る深赤色蛍光体は、好ましくは、組成式Ae
2LnSb
1−xMn
xO
6で示され、xが0.001〜0.01であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る深赤色蛍光体は、好ましくは、AeがCaおよびBaのなかから選ばれる1または双方の元素であり、LnがLaであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る照明用光源は、上記の深赤色蛍光体を含む蛍光層を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る深赤色蛍光体の製造方法は、上記の深赤色蛍光体を固相反応で製造する方法であって、
Ae炭酸塩、Ln酸化物、Sb酸化物およびMn炭酸塩もしくはMn酸化物を、Ae:Ln:Sb:Mn=2:1:0.99〜0.999:0.001〜0.01のモル比になるように配合し、混合粉末を得る工程と、
該混合粉末を、不活性ガス雰囲気下、800〜1000℃の温度で1〜10時間か焼した後、さらに、1300〜1500℃の温度で1〜10時間焼成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る深赤色蛍光体の製造方法は、好ましくは、Ae炭酸塩がCaC0
3またはBaC0
3であり、Ln酸化物がLa
2O
3であり、Sb酸化物がSb
2O
3であり、Mn炭酸塩もしくはMn酸化物がMnCO
3またはMnO
2であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る深赤色蛍光体は、発光中心がMn
4+であり、母体が(Ae)
2(Ln)SbO
6からなるダブルペロブスカイト構造であって、AeがそれぞれCa、SrおよびBaのなかから選ばれる1または2以上の元素であり、LnがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd
、TbおよびYのなかから選ばれる1または2以上の元素である。
このため、深赤色蛍光体は、高い発光強度と化学的安定性を兼ね備える。また、深赤色蛍光体は、励起波長が360〜380nmにあり、近紫外線励起の蛍光体として好ましい。
また、本発明に係る照明用光源は、上記の深赤色蛍光体を含む蛍光層を備えるため、深赤色蛍光体の効果を好適に得ることができる。
また、本発明に係る深赤色蛍光体の製造方法は、上記の深赤色蛍光体を固相反応で製造する方法であって、Ae炭酸塩、Ln酸化物、Sb酸化物およびMn炭酸塩もしくはMn酸化物を、Ae:Ln:Sb:Mn=2:1:0.99〜0.999:0.001〜0.01のモル比になるように配合し、混合粉末を得る工程と、混合粉末を、不活性ガス雰囲気下、800〜1000℃の温度で1〜10時間か焼した後、さらに、1300〜1500℃の温度で1〜10時間焼成する工程と、を有するため、上記の深赤色蛍光体を好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は実施例1、2の蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
【
図2】
図2は実施例1、2および比較例1、2の蛍光体の発光スペクトル示す図である。
【
図3】
図3は実施例1、2の蛍光体の励起スペクトルを示す図である。
【
図4】
図4は実施例1、2の蛍光体の蛍光強度のMn濃度依存性を示す図である。
【
図5】
図5は本実施の形態に係る深赤色蛍光体の母体の結晶構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0020】
本実施の形態に係る深赤色蛍光体は、発光中心がMn
4+であり、母体が(Ae)
2(Ln)SbO
6からなるダブルペロブスカイト構造であって、Aeがアルカリ土類金属であるCa(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)およびBa(バリウム)のなかから選ばれる1または2以上の元素であり、LnがランタノイドであるLa(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジウム)、Nd(ネオジウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)およびY(イットリウム)のなかから選ばれる1または2以上の元素である。すなわち、AeおよびLnは、それぞれ単一元素であってもよく、また2以上の元素の混合物であってもよい。また、2つのAeは、同一の単一元素であってもよく、異なる単一元素であってもよい。
上記のダブルペロブスカイト構造において、O
6で示されるOの数が実際には6からわずかに変動することは当業者に周知な事項であり、本発明はこの変動範囲のものを含む。
また、深赤色蛍光体は、好ましくは、組成式Ae
2LnSb
1−xMn
xO
6で示され、xが0.001〜0.01である。
このうち、AeがCaおよびBaのなかから選ばれる1または双方の元素であり、LnがLaである深赤色蛍光体は、好適な実施態様である。
ここで、LnおよびSbを母体に含む目的は、Mnの発光強度を増加させることにある。Lnの元素群の各元素イオンは同じ3価の価数でイオン半径が徐々に変化する。その特徴を活かして、結晶構造にひずみを加えて、発光強度を制御する。
【0021】
本実施の形態に係る深赤色蛍光体の母体の結晶構造を
図5に示す。
ダブルペロブスカイト構造A
´A
´´B
´B
´´O
6である母体は、一般的なペロブスカイト構造ABO
3と比較して、結晶構造は少し歪んでおり、組成式では2倍、
図5の単位格子では4倍の原子数になっている。母体は、ペロブスカイト構造のAサイト(ダブルペロブスカイト構造のA
´A
´´サイト)をAeが占有し、Bサイト(ダブルペロブスカイト構造のB
´B
´´サイト)をLnとSbが規則的に占有している。すなわち、Aサイト(12配位)とBサイト(6配位)では、カチオンの局所構造が全く異なるため、AサイトとBサイトを混合して電荷のバランスをとることはほとんどなく、それぞれのサイトで平均電荷がきまり、その上で酸素イオンとのバランスをとる。イオンサイズの小さいSbは優先的にBサイトをとり、Aeの一つはAサイトをとることが前提となるため、この束縛条件下で残りのAeがAサイトに入って平均2価(Aサイト)になり、LnがBサイトに入って平均4価(Bサイト)になることで、構造が最も安定になる。したがって、母体は(Ae)
2(Ln)SbO
6で表される。
母体において、イオンサイズの大きいLa
3+等のLnは、一般的にはAサイトを占有するが、本実施の形態では、イオンサイズの小さいSb
5+(5価のアンチモン)と組み合わせることで、両イオンの平均イオンサイズが小さくなり、またLnおよびSbの平均イオン価数も4となってBサイトを占有する。発光中心として添加されるMnはBサイトのSbと置換する。それに伴い、酸素量も若干変化する。このとき、イオンサイズの大きいLnがBサイトを占有することで、Bサイトのひずみが大きくなり、得られる深赤色蛍光体の発光強度が強くなるものと考えられる。
上記したように、Aeの元素群は同じアルカリ土類金属であり、またLnの元素群は同じ希土類金属であり、それぞれの群中の元素は互いに等しい価数のイオンになり、化学的性質が類似している。このため、それぞれの元素群のなかで元素を置換しても類似の発光特性を示す。一方、Bサイトを占有するイオンサイズの小さいSb
5+は長周期表(長周期型)で5B族に属する半金属であり、これと同様の5価のイオン群である元素として、例えば5A族に属するNb(ニオブ)やTa(タンタル)がある。しかし、これらNb等は遷移金属であり、伝導帯にdバンドを形成し、特にNbはdバンドのエネルギーが低く、発光中心のMnのd軌道と重なって発光に影響を及ぼす可能性がある。一方、SbはNbのdバンドよりエネルギーの高い位置にsバンドを形成し、発光に影響を及ぼすことはほとんどないと考えられる。また、母体中の結合にNbやTaはdバンドを使い、Sbはsバンドを使うため、イオン性・共有性の結合様式や結合の対称性に違いが生じ、そのサイトに添加される発光中心のMnの発光に差が現れると考えられる。したがって、母体の元素のバンドが添加元素のバンドに影響を及ぼさず、添加された発光中心Mnの発光効率を高くする観点から、本実施の形態ではNbやTaの元素を排除し、Lnと組み合わせる元素としてはSbのみを用いる。
【0022】
本実施の形態に係る深赤色蛍光体は、以下に説明する本実施の形態に係る深赤色蛍光体の製造方法により好適に得ることができる。
本実施の形態に係る深赤色蛍光体の製造方法は、深赤色蛍光体を固相反応で製造する方法であって、Ae炭酸塩、Ln酸化物、Sb酸化物およびMn炭酸塩もしくはMn酸化物を、Ae:Ln:Sb:Mn=2:1:0.99〜0.999:0.001〜0.01のモル比になるように配合し、混合粉末を得る工程と、混合粉末を、不活性ガス雰囲気下、800〜1000℃の温度で1〜10時間か焼(calcination)した後、さらに、1200〜1400℃の温度で1〜10時間焼成する工程とを有する。
Ae炭酸塩としてCaC0
3またはBaC0
3を用い、Ln酸化物としてLa
2O
3を用い、Sb酸化物としてSb
2O
3を用い、Mn炭酸塩もしくはMn酸化物としてMnCO
3またはMnO
2を用いることは好適な実施態様である。
Ae炭酸塩、Ln酸化物、Sb酸化物は母体原料であり、これには発光中心(賦活剤)の原料であるMn炭酸塩またはMn酸化物を加える。
これらの原料を所定のモル比になるように秤量し、メノウ乳鉢を用いて、原料100質量部に対して例えばエタノールを500質量部加えて湿式混合する。ついで、得られた混合粉末を上記の条件でか焼する。これにより、混合粉末中の炭酸塩は微粉末の酸化物に分解され、反応性の高い状態になる。さらに、か焼粉末を上記の条件でアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で焼成することで、本実施の形態に係る深赤色蛍光体が得られる。このとき、2段階焼成を行うと、単一相となり不純物が消滅するため、より好ましい。
【0023】
本実施の形態に係る深赤色蛍光体は、フッ素を含まないため化学的安定に優れ、また、長波長紫外線365〜400nmの励起で、波長650〜700nmにおいて高い発光強度を有する。
【0024】
つぎに、本実施の形態に係る照明用光源は、本実施の形態に係る深赤色蛍光体を含む蛍光層を備える。深赤色蛍光体を含む蛍光層は、深赤色蛍光体を含有させた例えばシリコン樹脂シートとすることができる。
これにより、水銀発光を励起源とする蛍光灯や冷陰極蛍光ランプなどの蛍光ランプの赤色系列の色調や蛍光効率を向上させることができる。また、紫外線LED光源を励起光源として用いるLED素子に適用することができる。
また、これらの照明用光源は、ディスプレイ装置に用いることで、より向上した表示映像を実現できる。また、植物栽培の照明として用いることで、植物の育成を促進することができる。
【実施例】
【0025】
実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
母体原料としてCaCO
3とLa
2O
3とSb
2O
3を使用し、添加する物質(発光中心:賦活剤)の原料としてMnCO
3を用いた。これらの原料をCa:La:Sb:Mn=2:1:0.998:0.002のモル比になるように秤量し、メノウ乳鉢を用いて、原料100質量部に対してエタノールを500質量部加えて湿式混合した。ついで、得られた混合粉末を、アルゴンガス雰囲気で電気炉を用いて900℃で6時間か焼した。その後、アルゴンガス雰囲気で電気炉を用いて1400℃で6時間焼成することを2回繰り返して蛍光体を得た。
【0027】
(実施例2)
CaCO
3に代えてBaCO
3を用いたほかは実施例1と同様の方法で蛍光体を得た。
【0028】
(実施例3〜6) Mnの濃度を0.002から0.001、0.003、0.005および0.01に代えたほかは実施例1と同様の方法で蛍光体を得た。
【0029】
(比較例1)
Mn添加Ba
2LaNbO
6は、BaCO
3(炭酸バリウム), La
2O
3(酸化ランタン), Nb
2O
3(酸化ニオブ) およびMn(CH
3COO)
2(酢酸マンガン)を原料として、固相反応法で作製した。Mnの添加濃度は, 0.035, 0.080, 1.0 atom%とした。原料を目的相の化学量論比にはかりとり、よく粉砕・混合したあと磁器製るつぼで1000℃12h仮焼した。仮焼粉は再度粉砕・混合し、その粉末を1200℃から1400℃で20h焼成し、蛍光体を得た。
【0030】
(比較例2)
MgO, MgF
2, GeO
2を化学量論比で混合し、0.01MnCO
3を添加して、空気中1000℃で数時間焼成した。焼成物を粉砕・混合し、再度空気中1200℃で十数時間焼成して蛍光体を得た。
【0031】
図1に、実施例1、2の蛍光体のX線回折パターンを示した。いずれも結晶構造から計算されるシミュレーションのパターンとほぼ同一で、単一相であり、不純物は観察されなかった。
【0032】
図2に、実施例1(
図2中、(1)で示す)および実施例2(
図2中、(2)で示す)の蛍光体を、蛍光光度計で励起波長を365nmとして測定した発光スペクトルを示した。いずれも、Mn に由来する約650〜700nm付近にブロードなピークを示した。なお、
図2中、(3)および(4)は、比較例1、2の蛍光体の発光スペクトルである。
【0033】
図3に、実施例1、2の蛍光体の励起スペクトルを示した。実施例1では励起波長320nmで、実施例2では励起波長327nmで、それぞれ最大の蛍光強度を示した。
【0034】
図4に、実施例3〜6の蛍光体の励起波長365nmにおける蛍光(Ae=Caの場合は蛍光波長697nm、Ae=Baの場合は蛍光波長682nm)の蛍光強度のMn濃度依存性を示した。
【0035】
上記の結果を表1にまとめて示した。なお、発光強度は、比較例2の従来の3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:Mn
4+蛍光体と比べた長波長紫外線365nm励起下での発光波長における相対的な発光強度である。
【0036】
【表1】