(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スピンドルと、該スピンドルのスラスト方向をエアで支持するスラストエアベアリングと、該スピンドルのラジアル方向をエアで支持するラジアルエアベアリングと、該スピンドルを回転可能に収容し該スピンドルとの間に該スラストエアベアリングと該ラジアルエアベアリングを画成するスピンドルハウジングと、該スピンドルに連結されて該スピンドルを回転するモータと、を備えたエアスピンドルユニットであって、
該スラストエアベアリング及び該ラジアルエアベアリングにエア供給源からの高圧エアを分配する該スピンドルハウジングに配設されたエア分配弁を具備し、
該ラジアルエアベアリングは、該スピンドルの第1の領域をエアで支持する第1のラジアルエアベアリングと、該スピンドルの第2の領域をエアで支持する第2のラジアルエアベアリングとを含み、
該エア分配弁は、
該エア供給源からの高圧エアを導入するエア導入口と、
該第1のラジアルエアベアリングにエアを供給する第1エア供給口と、
該第2のラジアルエアベアリングにエアを供給する第2エア供給口と、
該エア導入口から導入されるエアの圧力が所定の圧力以上の場合には、該第1エア供給口を閉塞し該第2エア供給口を開放するとともに、該エア導入口から導入されるエアの圧力が該所定の圧力未満の場合には、該第1及び第2エア供給口とも開放するエア分配調整手段と、含み、
該エア分配調整手段は、一端に該エア導入口を有し他端に該第1及び第2エア供給口を有するシリンダと、
内部にエア通路が形成された大径の鍔部と該鍔部より小径で該鍔部の中央部に連結するロッド部とからなり、該シリンダ内に移動可能に収容されたピストンと、
該ピストンの該ロッド部に外嵌され該ピストンの該鍔部と該シリンダの内周面に形成された支持部との間に介装されたコイルばねと、
該ロッドの先端に形成された該第1エア供給口を選択的に閉塞するエア閉塞部と、
該エア導入口と該ピストンの該鍔部との間に形成された圧力室とを含み、
該圧力室に導入されるエアの圧力が前記所定の圧力以上の場合には、該エアの圧力により該ピストンが該コイルばねの付勢力に抗して移動されて該エア閉塞部が該第1エア供給口を閉塞し、該圧力室のエアの圧力が該所定の圧力未満の場合には、該コイルばねの付勢力により該ピストンが該圧力室のエアの圧力に抗して移動されて該エア閉塞部が該第1エア供給口を開放することを特徴とするエアスピンドルユニット。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の数多くのデバイスが表面に形成され、且つ個々のデバイスが分割予定ライン(ストリート)によって区画された半導体ウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに加工された後、切削装置(ダイシング装置)によって分割予定ラインを切削して個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の電気機器に広く利用されている。
【0003】
切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に支持するエアスピンドルユニットと、チャックテーブルとエアスピンドルユニットとを相対的に加工送りする加工送り手段とを少なくとも備えていて、ウエーハを高精度に個々のデバイスに分割することができる。
【0004】
エアスピンドルユニットは、スピンドルと、スピンドルのスラスト方向をエアで支持するスラストエアベアリングと、スピンドルのラジアル方向をエアで支持するラジアルエアベアリングと、スピンドルを回転可能に収容しスピンドルとの間にスラストエアベアリングとラジアルエアベアリングを画成するスピンドルハウジングと、スピンドルに連結されてスピンドルを回転するモータとを備えていて、摩擦抵抗が殆どない状態でスピンドルが回転可能に支持され、振動が抑制されて高精度な切削を可能にしている(例えば、特開平11−117939号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スピンドルを高速回転可能に保持するためには、エアスピンドルユニットに供給されるエアの圧力は例えば0.5MPa以上必要である。工場に供給されるエアの圧力が例えば0.6MPaであったとしてもエアの使用が集中してその圧力が0.4MPaに下がる場合があり、このようにエアの圧力が低下するとラジアルエアベアリングがスピンドルを支えきれずにスピンドルがスピンドルハウジングに接触するカジリ現象が生じて、エアスピンドルユニットが破損するという問題がある。
【0007】
このような問題は、スピンドルを支持するラジアルエアベアリングにエアを噴出するエア噴出口を増やすことで解決できるものの、エア噴出口を増やすことによって0.5MPa以上の高圧エアが供給されている場合には、エアベアリングとして機能しない無駄なエアが消費され不経済であるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エアの消費が抑制されるとともに、供給されるエアの圧力が低下してもエアスピンドルユニットにカジリ現象が生じないエアスピンドルユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、スピンドルと、該スピンドルのスラスト方向をエアで支持するスラストエアベアリングと、該スピンドルのラジアル方向をエアで支持するラジアルエアベアリングと、該スピンドルを回転可能に収容し該スピンドルとの間に該スラストエアベアリングと該ラジアルエアベアリングを画成するスピンドルハウジングと、該スピンドルに連結されて該スピンドルを回転するモータと、を備えたエアスピンドルユニットであって、該スラストエアベアリング及び該ラジアルエアベアリングにエア供給源からの高圧エアを分配する該スピンドルハウジングに配設されたエア分配弁を具備し、該ラジアルエアベアリングは、該スピンドルの第1の領域をエアで支持する第1のラジアルエアベアリングと、該スピンドルの第2の領域をエアで支持する第2のラジアルエアベアリングとを含み、該エア分配弁は、該エア供給源からの高圧エアを導入するエア導入口と、該第1のラジアルエアベアリングにエアを供給する第1エア供給口と、該第2のラジアルエアベアリングにエアを供給する第2エア供給口と、該エア導入口から導入されるエアの圧力が所定の圧力以上の場合には、該第1エア供給口を閉塞し該第2エア供給口を開放するとともに、該エア導入口から導入されるエアの圧力が該所定の圧力未満の場合には、該第1及び第2エア供給口とも開放するエア分配調整手段と、含
み、該エア分配調整手段は、一端に該エア導入口を有し他端に該第1及び第2エア供給口を有するシリンダと、内部にエア通路が形成された大径の鍔部と該鍔部より小径で該鍔部の中央部に連結するロッド部とからなり、該シリンダ内に移動可能に収容されたピストンと、該ピストンの該ロッド部に外嵌され該ピストンの該鍔部と該シリンダの内周面に形成された支持部との間に介装されたコイルばねと、該ロッドの先端に形成された該第1エア供給口を選択的に閉塞するエア閉塞部と、該エア導入口と該ピストンの該鍔部との間に形成された圧力室とを含み、該圧力室に導入されるエアの圧力が前記所定の圧力以上の場合には、該エアの圧力により該ピストンが該コイルばねの付勢力に抗して移動されて該エア閉塞部が該第1エア供給口を閉塞し、該圧力室のエアの圧力が該所定の圧力未満の場合には、該コイルばねの付勢力により該ピストンが該圧力室のエアの圧力に抗して移動されて該エア閉塞部が該第1エア供給口を開放することを特徴とするエアスピンドルユニットが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエアスピンドルユニットによると、ラジアルエアベアリングをエア分配弁の第1エア供給口からエアを供給する第1のラジアルエアベアリングと、第2エア供給口からエアを供給する第2のラジアルエアベアリングに分け、供給されるエアの圧力が所定圧力未満になって圧力不足となった際は、第1エア供給口の閉塞を解除して第1及び第2のラジアルエアベアリングにエアを供給してスピンドルの第1の領域及び第2の領域をエアで支持するのでカジリ現象が発生することが防止される。
【0012】
一方、供給されるエアの圧力が所定圧力以上の場合には、第1エア供給口を閉塞して第2エア供給口のみを開放し、スピンドルを第2のラジアルエアベアリングのみで支持するので、高圧エアの消費を抑制でき経済的である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は半導体ウエーハをダイシングして個々のチップ(デバイス)に分割することのできる切削装置2の外観斜視図を示している。
【0015】
切削装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作手段4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像手段によって撮像された画像が表示されるCRT等の表示手段6が設けられている。
【0016】
図2に示すように、ダイシング対象のウエーハWの表面においては、第1のストリートS1と第2のストリートS2とが直交して形成されており、第1のストリートS1と第2のストリートS2とによって区画されて多数のデバイスDがウエーハW上に形成されている。
【0017】
ウエーハWの裏面が粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周部は環状フレームFに貼着されている。これにより、ウエーハWはダイシングテープTを介してフレームFに支持された状態となり、
図1に示したウエーハカセット8中にウエーハが複数枚(例えば25枚)収容される。ウエーハカセット8は上下動可能なカセットエレベータ9上に載置されている。
【0018】
ウエーハカセット8の後方には、ウエーハカセット8から切削前のウエーハWを搬出するとともに、切削後のウエーハをウエーハカセット8に搬入する搬出入手段10が配設されている。ウエーハカセット8と搬出入手段10との間には、搬出入対象のウエーハが一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12には、ウエーハWを一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段14が配設されている。
【0019】
仮置き領域12の近傍には、ウエーハWと一体となったフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段16が配設されており、仮置き領域12に搬出されたウエーハWは、搬送手段16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、このチャックテーブル18に吸引されるとともに、複数の固定手段19によりフレームFが固定されることでチャックテーブル18上に保持される。
【0020】
チャックテーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハWの切削すべきストリートを検出するアライメント手段20が配設されている。
【0021】
アライメント手段20は、ウエーハWの表面を撮像する撮像手段22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によって切削すべきストリートを検出することができる。撮像手段22によって取得された画像は、表示手段6に表示される。
【0022】
アライメント手段20の左側には、チャックテーブル18に保持されたウエーハWに対して切削加工を施す切削手段24が配設されている。切削手段24はアライメント手段20と一体的に構成されており、両者が連動してY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0023】
切削手段24は、回転可能なスピンドル26の先端に切削ブレード28が装着されて構成され、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。切削ブレード28は撮像手段22のX軸方向の延長線上に位置している。
【0024】
25は切削加工の終了したウエーハWをチャックテーブル18からスピンナ洗浄ユニット27まで搬送する搬送手段であり、切削加工の終了したウエーハWはスピンナ搬送ユニット27で洗浄されるとともにスピン乾燥される。
【0025】
図3を参照すると、本発明実施形態に係るエアスピンドルユニット36の縦断面図が示されている。切削手段24はエアスピンドルユニット36と、スピンドル26の先端に装着された切削ブレード28とから構成される。
【0026】
エアスピンドルユニット36は、スピンドルハウジング38と、スピンドルハウジング38中に回転可能に収容されたスピンドル26と、スピンドル26に連結されてスピンドル26を回転するステータ46とロータ48とから構成されるモータ44とを含んでいる。
【0027】
エアスピンドルユニット36は更に、スピンドル26の中央部にエア噴出口を有しスピンドル26のラジアル方向をエアで支持する第1のラジアルエアベアリング40aと、第1のラジアルエアベアリング40aを挟んだスピンドル26の両端部にエア噴出口を有しスピンドル26のラジアル方向をエアで支持する第2のラジアルエアベアリング40bを含んでいる。
【0028】
スピンドル26と一体的にスラストプレート26aが形成されており、エアスピンドルユニット36は更に、スピンドル26のスラスト方向をエアで支持するスラストプレート26aの両側に形成されたスラストエアベアリング42を含んでいる。
【0029】
スピンドルハウジング38に形成された第1エア供給路50は分岐エア供給路50aに分岐され、更にエア噴出口50bを介して第1のラジアルエアベアリング40aに接続されている。
【0030】
スピンドルハウジング38に形成された第2エア供給路52は分岐エア供給路52aに分岐され、更にエア噴出口52bを介して第2のラジアルエアベアリング40bに接続されている。
【0031】
また、スピンドルハウジング38に形成された第3エア供給路54は分岐エア供給路54aに分岐され、更にエア噴出口54bを介してスラストプレート26aの両側に形成されたスラストエアベアリング42に接続されている。
【0032】
エア供給源58から供給される高圧のエア、例えば0.6MPaのエアはエア分配弁56を介してスピンドルハウジング38に形成された第1エア供給路50、第2エア供給路52及び第3エア供給路54に分配される。
【0033】
図4を参照すると、エア分配弁56の縦断面図が示されている。エア分配弁56はシリンダ58を含んでおり、シリンダ58の一端部にはエア供給源58からの高圧エアを導入するエア導入口60が形成されている。
【0034】
シリンダ58の他端部には第1のラジアルエアベアリング40aにエアを供給する第1エア供給口62aと、第2のラジアルエアベアリング40bにエアを供給する第2エア供給口62bと、スラストエアベアリング42にエアを供給する第3エア供給口62cが形成されている。
【0035】
第1エア供給口62aはスピンドルハウジング38に形成された第1エア供給路50に接続され、第2エア供給口62bは第2エア供給路52に接続され、第3エア供給口62cは第3エア供給路54に接続されている。
【0036】
シリンダ58の内周壁には環状支持部64が一体的に形成されている。シリンダ58内にはピストン66が移動可能に挿入されている。ピストン66は、大径の鍔部68と、鍔部68より小径で鍔部の中央部に連結するロット部70とから構成され、ピストン66内にはエア通路72が形成されている。エア通路72は、ロット部70の下端近傍で横方向に伸長する分岐エア通路72aに連通している。
【0037】
コイルばね74が、ピストン66のロット部70に外嵌するようにピストン66の鍔部68とシリンダ58の環状支持部64との間に介装されている。ピストン66のロット部70の先端には第1エア供給口62aを選択的に閉塞する突起(エア閉塞部)80が形成されている。
【0038】
シリンダ58のエア導入口60とピストン66の大径部68との間に圧力室76が画成されており、シリンダ58の下端部には第1〜第3エア供給口62a,62b,62cに連通する分配室78が形成されている。ピストン66のロット部70に形成された分岐エア通路72aは分配室78に連通している。
【0039】
ピストン66の鍔部68の外周とシリンダ58の内周との間にO−リング82が介装され、ピストン66のロット部70の外周とシリンダ58の環状支持部64の内周との間にO−リング84が介装されている。コイルばね74を収容するコイルばね収容室86はシリンダ58に形成された開放口88を介して大気に連通している。
【0040】
以下、このように構成されたエア分配弁56の作用について
図5を参照して説明する。
図5(A)に示すように、エア分配弁56に供給されるエアの圧力が所定圧力(例えば0.5MPa)以上の場合、例えば0.6MPaの場合には、エア分配弁56の圧力室76に導入されたエアの圧力によりピストン66がコイルばね74の付勢力に抗して下方に移動され、突起(エア閉塞部)80が第1エア供給口62aに嵌合して第1エア供給口62aを閉塞する。
【0041】
よって、エア分配弁56のエア導入口60から導入されたエアは、圧力室76、ピストン66のエア通路72及び分岐エア通路72a、分配室78、第2エア供給口62bを介してスピンドルハウジング38に形成された第2エア供給路52に供給され、更に分岐エア供給路52a及びエア噴出口52bを介して第2のラジアルエアベアリング40bに供給され、スピンドル26を回転可能に支持する。
【0042】
このように、エア分配弁56に供給されるエアの圧力が所定圧力以上の場合には、エア分配弁56の第1エア供給口62aが突起(エア閉塞部)80で閉塞されて、第2のラジアルエアベアリング40bのみでスピンドル26をエアで回転可能に支持するため、高圧エアの消費を抑制でき、経済的である。
【0043】
エア分配弁56の分配室78から第3エア供給口62cを介してスピンドルハウジング38の第3エア供給路54に供給されたエアは、更に分岐エア供給路54a及びエア噴出口54bを介してスラストエアベアリング42に供給され、スピンドル26のスラスト方向をエアで支持する。
【0044】
一方、エア分配弁56に供給されるエアの圧力が所定圧力未満の場合、例えば0.4MPaの場合には、
図5(B)に示すように、圧力室76に供給されるエアの圧力が低いので、コイルばね74の付勢力によりピストン66が圧力室76のエアの圧力に抗して上方に移動され、突起(エア閉塞部)80が第1エア供給口62aから抜け出て第1エア供給口62aを開放する。
【0045】
よって、エア分配弁56に供給された例えば0.4MPaのエアは、第1エア供給口62aからスピンドルハウジング38に形成された第1エア供給路50に供給され、更に分岐エア供給路50a及びエア噴出口50bを介して第1のラジアルエアベアリング40aに供給される。
【0046】
同様に、エア分配弁56の第2エア供給口62bからスピンドルハウジング38の第2エア供給路52に供給されたエアは、分岐エア供給路52a,エア噴出口52bを介して第2のラジアルエアベアリング40bに供給される。
【0047】
このように、エア分配弁56に供給されるエアの圧力が所定圧力未満の場合には、第1のラジアルエアベアリング40a及び第2のラジアルエアベアリング40bにエアが供給されて、スピンドル26を回転可能にエアで支持するため、供給されるエアの圧力が低い場合にもスピンドル26がスピンドルハウジング38の内壁に接する所謂カジリ現象が発生することがない。
【0048】
図5(B)に示すエア分配弁56に供給されるエアの圧力が低い場合にも、圧力分配弁56の第3エア供給口62cから供給されたエアはスピンドルハウジング38の第3エア供給路54、分岐エア供給路54a、エア噴出口54bを介してスラストエアベアリング42に供給され、スピンドル26のスラスト方向をエアで支持する。