特許第5705663号(P5705663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705663
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】基板搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20150402BHJP
   F16H 55/18 20060101ALI20150402BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   B25J9/06 E
   F16H55/18
   H01L21/68 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-137310(P2011-137310)
(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公開番号】特開2013-866(P2013-866A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】林 光則
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智史
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−010653(JP,U)
【文献】 特開平08−112787(JP,A)
【文献】 特開平06−297377(JP,A)
【文献】 特開平10−230492(JP,A)
【文献】 特開2001−185596(JP,A)
【文献】 特開2009−018393(JP,A)
【文献】 実開昭62−121090(JP,U)
【文献】 特開2000−117671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
H01L 21/67 − 21/687
F16H 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動アーム部材に関節部を介して従動アーム部材を連結して成る屈伸自在な一対のアームと、基板を支持するハンドとを備え、両アームの従動アーム部材の先端に夫々ギヤが固定され、両ギヤを互いに噛合させた状態でハンドに軸支し、両アームの駆動アーム部材間の角度をアーム間角度、アーム間角度の等角二等分線をアーム中心線として、アーム間角度を可変することでハンドをアーム中心線に沿って直線的に移動させるようにした基板搬送ロボットにおいて、
各ギヤをハンドに軸支する各支軸を、該各支軸に対し偏心した偏心部を介してハンドに回動調整自在に連結することを特徴とする基板搬送ロボット。
【請求項2】
前記各支軸の前記偏心部の外端面に、偏心部の回動角を視認するためのマークが付されることを特徴とする請求項1記載の基板搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を支持するハンドを備える基板搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の基板搬送ロボットとして、駆動アーム部材に関節部を介して従動アーム部材を連結して成る屈伸自在な一対のアームと、基板を支持するハンドとを備え、両アームの従動アーム部材の先端に夫々ギヤが固定され、両ギヤを互いに噛合させた状態でハンドに軸支したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、両アームの駆動アーム部材間の角度をアーム間角度、アーム間角度の等角二等分線をアーム中心線として、両アームの従動アーム部材がその先端のギヤの噛合でアーム中心線に関して対称になるように揺動する。そのため、アーム間角度を可変すると、ハンドがアーム中心線に対し傾くことなく当該中心線に沿って直線的に移動する。
【0004】
ところで、両ギヤのバックラッシュが適正範囲を超えると、アーム中心線に関する両アームの対称性に狂いを生じて、ハンドがアーム中心線に対し傾いてしまう。ここで、従来は、ギヤの加工精度でバックラッシュを管理している。そのため、ギヤの摩耗を生じてバックラッシュが適正範囲を超えたときは、ギヤを交換せざるを得ず、その作業に時間がかかって、ロボットの稼働率が低下する不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−18393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、ハンドに軸支するギヤの摩耗を生じてもバックラッシュを適正範囲に簡単に調整できるようにした基板搬送ロボットを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、駆動アーム部材に関節部を介して従動アーム部材を連結して成る屈伸自在な一対のアームと、基板を支持するハンドとを備え、両アームの従動アーム部材の先端に夫々ギヤが固定され、両ギヤを互いに噛合させた状態でハンドに軸支し、両アームの駆動アーム部材間の角度をアーム間角度、アーム間角度の等角二等分線をアーム中心線として、アーム間角度を可変することでハンドをアーム中心線に沿って直線的に移動させるようにした基板搬送ロボットにおいて、各ギヤをハンドに軸支する各支軸を、該各支軸に対し偏心した偏心部を介してハンドに回動調整自在に連結することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、支軸の偏心部を回動させると、偏心部に対し偏心した支軸を介してギヤが径方向に変位し、バックラッシュが調整される。従って、ギヤの摩耗を生じても、偏心部の回動で簡単に短時間でバックラッシュを適正範囲に調整でき、ロボットの稼働率向上に寄与する。
【0009】
ところで、両ギヤを軸支する両支軸の中心がアーム中心線に関して対称な位置に存在しないと、ハンドがアーム中心線に対し傾いてしまう。そのため、本発明においては、各支軸の偏心部の外端面に、偏心部の回動角を視認するためのマークが付されていることが望ましい。これによれば、マークを視認することで両支軸の偏心部を均等に回動調整することができ、両支軸の中心がアーム中心線に関して対称な位置からずれてしまうこと、即ち、ハンドがアーム中心線に対し傾いてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の基板搬送ロボットを備える真空処理装置の平面図。
図2】実施形態の基板搬送ロボットの平面図。
図3】実施形態の基板搬送ロボットの側面図。
図4】(a)実施形態の基板搬送ロボットの要部の拡大平面図、(b)図4(a)のb−b線で切断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、基板Sに各種処理を施す真空処理装置を示している。この真空処理装置は、中央の搬送室Aと、搬送室Aの周囲に配置した、搬入室Bと、搬出室Cと、複数の処理室Dとを備えている。搬送室Aには、本発明の実施形態の基板搬送ロボット1が設置されており、このロボット1により、基板Sが搬入室Bから複数の処理室Dを経由して搬出室Cに搬送される。
【0012】
基板搬送ロボット1は、図2図3に示す如く、上下方向に長手の回転軸2と、第1と第2の一対のアーム3,3と、基板Sを支持するハンド4とを備えている。回転軸2は、内軸21と内軸21に外挿される筒状の外軸22とで構成されている。内軸21と外軸22は、図示省略した各別のモータにより回転駆動される。
【0013】
第1と第2の各アーム3,3は、駆動アーム部材31,31と従動アーム部材32,32とを関節部33,33で上下方向の軸線回りに揺動自在に連結して成るものであり、水平面上で屈伸する。第1アーム3の駆動アーム部材(以下、第1駆動アーム部材という)31は、その基端部において内軸21に連結され、内軸21の回転で内軸21と同一軸線回りに揺動される。また、第2アーム3の駆動アーム部材(以下、第2駆動アーム部材という)31は、その基端部において外軸22に連結され、外軸22の回転で内軸21と同一軸線回りに揺動される。
【0014】
ここで、内軸21と外軸22とを互いに逆方向に回転させると、第1駆動アーム部材31と第2駆動アーム部材31との間のアーム間角度θ(正確には、内軸21と第1アーム3の関節部(以下、第1関節部という)33とを結ぶ線と、内軸21と第2アーム3の関節部(以下、第2関節部という)33とを結ぶ線との間の角度)が可変し、後述する如くハンド4がアーム間角度θの等角二等分線(以下、アーム中心線という)Mに沿って直線的に移動する。また、内軸21と外軸22とを同方向に同期回転させると、ハンド4が回転軸2の周方向に旋回する。従って、ハンド4を各室B,C,Dに対向する周方向位置に旋回させた状態で各室B,C,Dに向けて直線的に進退させることにより、各室B,C,Dに基板Sを搬入、搬出することができる。
【0015】
ハンド4は、基板Sを支持するフォーク状のハンド本体41と、ハンド本体41の基端に取り付けたギヤホルダ42とで構成されている。そして、図4(a)(b)に示す如く、第1アーム3の従動アーム部材(以下、第1従動アーム部材という)32の先端に第1ギヤ5を固定すると共に、第2アーム3の従動アーム部材(以下、第2従動アーム部材という)32の先端に第1ギヤ5と同一の大きさの第2ギヤ5を固定し、第1と第2の両ギヤ5,5を互いに噛合させた状態でギヤホルダ42に軸支している。
【0016】
具体的には、ギヤホルダ42に、第1と第2の一対の支軸6,6を設けている。そして、第1と第2の各従動アーム部材32,32の先端部に第1と第2の各ギヤ5,5と同芯の軸支穴32aを形成し、この軸支穴32aに第1と第2の各支軸6,6に外嵌させたベアリング7を内嵌させて、第1と第2の各ギヤ5,5を第1と第2の各支軸6,6に軸支している。尚、ベアリング7で発塵したパーティクルが軸支穴32aから下方に落下することを防止するために、各従動アーム部材32,32の先端部下面に軸支穴32aを覆うカバー32bを取り付けている。
【0017】
ここで、内軸21と第1関節部33との間の距離と、内軸21と第2関節部33との間の距離は等しく、また、第1関節部33と第1支軸6との間の距離と、第2関節部33と第2支軸6との間の距離は等しい。そして、第1と第2の両支軸6,6がアーム中心線Mに関して対称な位置に設けられていれば、第1従動アーム部材32と第2従動アーム部材32とが第1と第2の両ギヤ5,5の噛合でアーム中心線Mに関して対称になるように揺動する。そのため、アーム間角度θを可変することにより、ハンド4がアーム中心線Mに対し傾くことなく当該中心線Mに沿って直線的に移動する。
【0018】
然し、両ギヤ5,5のバックラッシュがギヤ5,5の摩耗で適正範囲を超えると、第1と第2の両従動アーム部材32,32がアーム中心線Mに関し対称に揺動しなくなり、アーム中心線Mに関する両従動アーム部材32,32の対称性に狂いを生ずる。そして、この狂いにより、ハンド4がアーム中心線Mに対し傾いてしまう。
【0019】
そこで、本実施形態では、第1と第2の各支軸6,6の一端(上端)に、各支軸6,6に対し偏心したフランジ状の偏心部6aを形成すると共に、ギヤホルダ42の上面に、各支軸6,6の偏心部6aが嵌合する凹部42aを形成している。そして、各支軸6,6が偏心部6aを介してギヤホルダ42に回動調整自在に連結されるようにしている。尚、図4では、分かり易くするために、各支軸6,6の中心Oに対する偏心部6aの中心O´の偏心量を実物よりも大きくして図示している。
【0020】
偏心部6aの外端面(上端面)には、その回動角を視認できるように、十字状のケガキから成るマーク6bを付している。更に、偏心部6aには、6角穴6cが形成されており、この穴6cに工具を嵌めて偏心部6aを回動できるようにしている。また、各支軸6,6の下端には、固定ボルト6dが螺入されている。そして、固定ボルト6dの頭部をベアリング7の内輪下端面に当接させ、この当接反力で偏心部6aの下面を凹部42aの底面に圧接させることにより、各支軸6,6が回り止めされるようにしている。
【0021】
第1と第2のギヤ5,5の摩耗でそのバックラッシュが適正範囲を超えたときは、各支軸6,6の固定ボルト6dを緩めた状態で偏心部6aを回動する。これによれば、偏心部6aに対し偏心した支軸6,6の回動で、これに軸支されるギヤ5,5が径方向に変位し、バックラッシュが調整される。従って、ギヤ5,5の摩耗を生じても、偏心部6aの回動で簡単に短時間でバックラッシュを適正範囲に調整でき、ギヤ交換を行う従来例のものに比し基板搬送ロボット1の稼働率が向上する。また、ギヤ5,5の摩耗を生じても、ギヤ5,5を交換することなく長期間使用できるため、ランニングコストの削減を図ることもできる。
【0022】
尚、第1と第2の両支軸6,6の中心がアーム中心線Mに関して対称な位置に存在しないと、ハンド4がアーム中心線Mに対し傾いてしまう。ここで、本実施形態では、各支軸6,6の偏心部6aにマーク6bを付しているため、マーク6bを視認することで両支軸6,6の偏心部6aを均等に回動して、両支軸6,6の中心位置がアーム中心線Mに関して対称になるように調整できる。従って、バックラッシュ調整でハンドがアーム中心線に対し傾いてしまうことを防止できる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、第1と第2の両駆動アーム部材31,31を同一軸線(内軸21の軸線)回りに揺動させるようにしているが、両駆動アーム部材31,31を平行な異なる軸線回りに揺動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
S…基板、1…基板搬送ロボット、3,3…アーム、31,31…駆動アーム部材、32,32…従動アーム部材、33,33…関節部、4…ハンド、5,5…ギヤ、6,6…支軸、6a…偏心部、6b…マーク、θ…アーム間角度、M…アーム中心線。
図1
図2
図3
図4