特許第5706247号(P5706247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5706247トルク自動検量装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5706247
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】トルク自動検量装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 25/00 20060101AFI20150402BHJP
【FI】
   G01L25/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2011-136643(P2011-136643)
(22)【出願日】2011年6月20日
(65)【公開番号】特開2012-27011(P2012-27011A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-140187(P2010-140187)
(32)【優先日】2010年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】山本 昭将
(72)【発明者】
【氏名】毛野 克彦
【審査官】 三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102006055614(DE,A1)
【文献】 特開平11−64146(JP,A)
【文献】 特開2003−130750(JP,A)
【文献】 実開平3−2230(JP,U)
【文献】 実開平5−92671(JP,U)
【文献】 特開平11−44602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 25/00,
G01M 17/00,
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイナモメータのトルク測定用回転子に連結されて、当該ダイナモメータのトルク検量を行うトルク自動検量装置であって、
一端がエンジンの出力軸に接続される前記トルク測定用回転子の他端側に配置されるものであり、
基台に対して回転自在に設けられ、前記トルク測定用回転子に同軸に連結される連結軸と、
前記連結軸と一体的に回転するものであり、当該連結軸に対して伸びる検量アームと、
前記連結軸を、当該連結軸がトルク測定用回転子の他端に連結される連結位置及びトルク測定用回転子の他端から離間した離間位置の間で移動させる移動機構と、
前記連結位置においてトルク測定用回転子に設けられた被係合部に係合し、トルク測定用回転子及び連結軸を回転方向において固定する回転方向固定機構と、
前記移動機構を制御する制御機構とを備え、
前記制御機構が、前記移動機構を制御して連結軸を連結位置に移動させて、前記回転方向固定機構によりトルク測定用回転子及び連結軸を回転方向において固定して連結する連結ステップを行うトルク自動検量装置。
【請求項2】
前記検量アームの左右の各自由端部に荷重を加える検量錘の個数又は種類を変更する荷重可変機構をさらに備え、
前記制御機構が、前記連結ステップの後に、前記荷重可変機構を制御して検量アームに加わる荷重を変更しつつダイナモメータを検量するトルク検量ステップを行う請求項1記載のトルク自動検量装置。
【請求項3】
前記トルク測定用回転子の他端に前記被係合部が設けられており、前記被係合部が、トルク測定用回転子の回転中心周りに設けられた複数の固定用孔からなり、
前記回転方向固定機構が、前記連結軸の先端部において前記固定用孔に対応して設けられた複数の固定ピンと、当該固定ピン及び前記連結軸の間に介在して設けられ、前記固定ピンを固定用孔に係合する方向に付勢する付勢部材と、前記固定ピンが前記固定用孔に係合したか否かを検出するための係合検出部とを有し、
前記制御機構が、前記連結位置において、前記係合検出部からの検出信号により、前記固定ピンが固定用孔に係合していないと判断した場合に、前記固定ピンが前記固定用孔に係合するまでトルク測定用回転子を回転させる請求項1又は2記載のトルク自動検量装置。
【請求項4】
前記検量アームを水平に調整する水平調整機構を備え、
前記制御機構が、前記連結が前記トルク測定用回転子に連結された状態で、前記水平調整機構を制御して検量アームを水平にする請求項1、2又は3記載のトルク自動検量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンダイナモやシャシダイナモ等のダイナモメータにより得られるトルク計測値を検量するトルク検量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンダイナモやシャシダイナモ等のダイナモメータのトルク検量は、例えば特許文献1等に示すように、ダイナモメータの例えば回転ドラムや回転軸等のトルク測定用回転子に検量アームを固定することによって行われている。
【0003】
この検量アームの固定は、ユーザが手作業で行っており、具体的にユーザは、トルク測定用回転子の所定位置に持ち上げ静止させた状態で、ボルトを締めることによって固定している。
【0004】
しかしながら、検量アームは大型且つ重量の重いものもあり、固定作業を複数人で行う必要があったり、別途固定器具が必要になったりして、重労働で大がかりな作業となってしまう。また、固定作業が手間であり作業時間が長時間となってしまうという問題もある。さらに、検量アームの落下や転倒の恐れもあり安全性の面で問題がある。
【0005】
そして、検量アームをトルク測定用回転子に固定した後に行われる検量は、検量アームに1つ1つ検量錘を吊り下げる又は載置することによって行われている。
【0006】
この検量作業においては、ユーザの手作業によって検量アームに検量錘が吊り下げられ又は載置される。この検量錘は1つ1つが重く(例えば20kg)、検量アームに検量錘を載置する作業は、重労働であり、安全性及び作業性の面で難がある。
【0007】
このようなことから、特許文献2等に示すように、検量アームに検量錘を吊り下げる又は載置する作業を軽減すべく、検量錘を自動的に検量アームに載置する自動載置装置が考えられている。
【0008】
しかしながら、この自動載置装置を用いた場合であっても、検量アームをトルク測定用回転子に固定する作業はユーザの手作業であり、さらに、当該検量アーム近傍に自動載置装置を移動させる必要がある。さらに、各検量錘を載置させる際には、ユーザが自動載置装置を操作する必要があり、検量中ユーザは自動載置装置に付きっきりにならざるを得ない。
【0009】
このように検量錘の吊り下げ又は載置作業の負担軽減を図るものがあるとしても、依然としてトルク検量には、検量アームの固定という手作業を伴うものであり、安全性及び作業性に難がある。また、検量アームの固定からトルク検量の終了まで長時間を要するという問題もある。さらに、トルク検量途中において自動載置装置を操作する必要があることから、ユーザはトルク検量中に時間的に制約されてしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−64146号公報
【特許文献2】特開2004−150845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであり、ダイナモメータのトルク検量において、作業性及び安全性を向上させるとともに、トルク検量の時間短縮を可能にする使い勝手の良いトルク自動検量装置を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明に係るトルク自動検量装置は、ダイナモメータのトルク測定用回転子に連結されて、当該ダイナモメータのトルク検量を行うトルク自動検量装置であって、一端がエンジンの出力軸に接続される前記トルク測定用回転子の他端側に配置されるものであり、基台に対して回転自在に設けられ、前記トルク測定用回転子に同軸に連結される連結軸と、前記連結軸と一体的に回転するものであり、当該連結軸に対して伸びる検量アームと、前記連結軸を、当該連結軸がトルク測定用回転子の他端に連結される連結位置及びトルク測定用回転子の他端から離間した離間位置の間で移動させる移動機構と、前記連結位置においてトルク測定用回転子に設けられた被係合部に係合し、トルク測定用回転子及び連結軸を回転方向において固定する回転方向固定機構と、前記移動機構を制御する制御機構とを備え、前記制御機構が、前記移動機構を制御して連結軸を連結位置に移動させて、前記回転方向固定機構によりトルク測定用回転子及び連結軸を回転方向において固定して連結する連結ステップを行うことを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、トルク測定用回転子への検量アームの接続を自動で行うことができる。したがって、検量アームを手作業でトルク測定用回転子に接続することを不要にすることができ、作業性及び安全性を向上させることができる。さらに、検量アームの接続を自動で行うことから、検量時間の短縮も可能にすることができる。
【0014】
また、前記検量アームの左右の各自由端部に荷重を加える検量錘の個数又は種類を変更する荷重可変機構をさらに備え、前記制御機構が、前記連結ステップの後に、前記荷重可変機構を制御して検量アームに加わる荷重を変更しつつダイナモメータを検量するトルク検量ステップを行うことが望ましい。これならば、検量アームへの検量負荷の変更及びトルク検量まで自動で行うことができる。また、検量錘を手作業で検量アームに吊り下げ又は載置することも不要にすることができ、これによっても作業性及び安全性を向上させることができる。さらに、検量錘の吊り下げ又は載置を自動で行うことから、検量時間の短縮も可能にすることができ、その上、ユーザがトルク検量中にトルク検量装置を操作する必要が無く、トルク検量装置に付きっきりになる必要もない。
【0015】
また、検量アームと一体的に回転する連結軸がトルク測定用回転子と同軸に接続されるものであり、トルク測定用回転子との連結を簡単にすることができるとともに、トルク測定用回転子の側周面に径方向に沿って連結する場合に比べて種々のサイズのダイナモメータに対応可能とすることができる。さらに、回転方向固定機構により連結軸及びトルク測定用回転子が回転方向において固定されることから、トルク検量中においてトルク測定用回転子に対して検量アームがずれる心配が無く、精度良くトルク検量を行えるようになる。
【0016】
被係合部及び回転方向固定機構の具体的な実施の態様としては、前記トルク測定用回転子の一端にエンジンの出力軸が接続されるものであり、他端に前記被係合部が設けられており、前記被係合部が、トルク測定用回転子の回転中心周りに設けられた複数の固定用孔からなり、前記回転方向固定機構が、前記連結軸の先端部において前記固定用孔に対応して設けられた複数の固定ピンと、当該固定ピン及び前記連結軸の間に介在して設けられ、前記固定ピンを固定用孔に係合する方向に付勢する付勢部材と、前記固定ピンが前記固定用孔に係合したか否かを検出するための係合検出部とを有し、前記制御機構が、前記連結位置において、前記係合検出部からの検出信号により、前記固定ピンが固定用孔に係合していないと判断した場合に、前記固定ピンが前記固定用孔に係合するまでトルク測定用回転子を回転させることが望ましい。これならば、固定用孔及び固定ピンがトルク測定用回転子の回転中心周りに設けられており、回転方向において確実に固定することができる。また、固定ピンが付勢部材によって係合方向に付勢されていることから、仮に固定ピンが固定用孔に挿入されなかった場合には付勢部材が固定ピンが受ける衝撃を吸収することになり、トルク測定用回転子及び連結軸の連結部分の破損を防止することができる。さらに、制御機構が係合検出部からの検出信号により、係合の有無を判断してトルク測定用回転子を回転することにより、固定ピンを固定用孔に確実に挿入させることができる。
【0017】
前記検量アームを水平に調整する水平調整機構を備え、前記制御機構が、前記連結部が前記トルク測定用回転子に連結された状態で、前記水平調整機構を制御して検量アームを水平にすることが望ましい。これならば、検量アームをトルク測定用回転子に連結した状態で検量アームが水平でないことにより生じる検量誤差を防止することができる。特に、固定ピンを固定用孔に挿入するためにトルク測定用回転子を回転させた場合には、トルク測定用回転子の停止応答時間によってはトルク測定用回転子とともに連結軸及び検量アームが回転する恐れがあることから一層好適である。
【0018】
トルク検量はトルク測定用回転子を固定して行う必要があるが、検量アームを連結する前にトルク測定用回転子を固定してしまうと、被係合部と回転方向固定機構が係合せず、うまく連結できない場合が生じる。また、連結できたとしてもその後検量アームを水平に調整しようとした場合、トルク測定用回転子が固定されていては、その調整ができなくなる。このことから、前記トルク測定用回転子を固定する回転子固定機構を備え、前記制御機構が、前記水平調整機構により前記検量アームを水平にした状態で、前記回転子固定機構を制御して、前記トルク測定用回転子を固定することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
このように構成した本発明によれば、ダイナモメータのトルク検量において、作業性及び安全性を向上させるとともに、トルク検量の時間短縮を可能にする使い勝手の良いトルク自動検量装置を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態のトルク自動検量装置及びエンジンダイナモメータの配置を示す模式的斜視図である。
図2】同実施形態のトルク自動検量装置及びエンジンダイナモメータの配置を示す模式的側面図である。
図3】同実施形態のトルク自動検量装置の模式的側面図である。
図4】同実施形態の回転方向固定機構を示す模式図である。
図5】同実施形態の荷重可変機構の検量錘及び検量錘ホルダを示す模式図である。
図6】同実施形態の回転子固定機構を示す模式図である。
図7】同実施形態の制御機構とアクチュエータ及びセンサ類との信号の授受を示す図である。
図8】同実施形態のトルク自動検量装置の連結ステップの一例を示すフローチャートである。
図9】同実施形態のトルク自動検量装置のトルク検量ステップの一例を示すフローチャートである。
図10】同実施形態のトルク自動検量装置のトルク検量ステップの一例を示すフローチャートである。
図11】変形実施形態の荷重可変機構の検量錘及び検量錘ホルダを示す模式図である。
図12】変形実施形態に係る出力軸及び軸回転機構を示す模式図。
図13】変形実施形態に係る出力軸の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明に係るトルク自動検量装置100の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
<装置構成>
本実施形態に係るトルク自動検量装置100は、例えば自動車エンジン等の試験対象エンジンEの出力軸E1に連結されて、当該試験対象エンジンEの性能試験を行うエンジンダイナモメータDのトルク検量を行うものである。
【0023】
なお、エンジンダイナモメータDは、試験対象エンジンEに負荷をかけるとともに、エンジンダイナモメータDに設けたトルクメータ及び回転数メータによって測定したトルク又は回転数をダイナモコントローラに出力し、ダイナモコントローラによってトルク又は回転数が一定となるように負荷の調整を行うように構成されている。このダイナモメータDのトルク測定用回転子である出力軸D1の一端には、試験対象エンジンEの出力軸E1が連結される。また、ダイナモメータの出力軸D1には、トルクメータであるひずみゲージが取り付けられている。
【0024】
具体的にトルク自動検量装置100は、図1及び図2に示すように、エンジンダイナモメータDの出力軸D1(トルク測定用回転子)の他端側に設けられている。具体的にトルク自動検量装置100は、エンジンダイナモメータDが設けられた基台200と同一基台上に設けられており、エンジンダイナモメータDに対して、試験対象エンジンEが配置される側とは反対側に配置されている。なお、トルク自動検量装置100が配置される基台は、ダイナモメータDが配置される基台と別であっても良い。
【0025】
そしてトルク自動検量装置100は、図2及び図3に示すように、エンジンダイナモメータDの出力軸D1に同軸に連結される連結軸2と、連結軸2に対して左右対称に伸びる検量アーム3と、連結軸2及び検量アーム3をダイナモメータDの出力軸D1他端に対して進退移動させる移動機構4と、ダイナモメータDの出力軸D1と連結軸2を回転方向において固定する回転方向固定機構5と、検量アーム3の左右の各自由端部に荷重を加える検量錘61の個数を変更する荷重可変機構6と、検量アーム3を水平に調整する水平調整機構7と、ダイナモメータDの出力軸D1の一端を固定する回転子固定機構8と、移動機構4、荷重可変機構6、水平調整機構7及び回転子固定機構8等を制御する制御機構9とを備える。なお、制御機構9は、図1等には図示していない。
【0026】
以下、各部2〜9について詳述する。
【0027】
連結軸2は、図2及び図3に示すように、基台200に対して水平方向に回転自在に設けられており、ダイナモメータD側の一端(先端部)に後述する回転方向固定機構5が設けられるとともに、他端側に検量アーム3が一体的に固定されている。この連結軸2は、その回転中心がダイナモメータDの出力軸D1の回転中心と一致するように、水平方向に沿って回転自在に、後述の支持柱431により支持されている。
【0028】
検量アーム3は、特に図3に示すように、連結軸2の他端に固定されて当該連結軸2と一体的に回転するメインアーム部31と、当該メインアーム部31の左右の各自由端部31a、31bに吊り下げられ、検量錘61が載置される載置アーム部32とを備えている。載置アーム部32は、後述する荷重可変機構6により検量錘61が載置される載置板32aと、当該載置板32aに一端が設けられて他端がメインアーム部31の自由端部31a、31bに連結される懸垂アーム要素32bとからなる。なお、メインアーム部31における連結軸2から載置アーム部32が連結されている位置までの長さは左右対称で規定値(L)とされており、載置アーム部32に載置した検量錘61の重量(N)により連結軸2に連結された出力軸D1に生じるトルク(T=N×L)が算出可能に構成されている。
【0029】
移動機構4は、図1図3に示すように、連結軸2をその軸方向に沿って、連結位置P及び離間位置Qの間でスライド移動させるものである。なお、図1及び図2は連結軸2が離間位置にある状態を示している。連結位置Pは、連結軸2がダイナモメータDの出力軸D1の他端に連結される位置であり、トルク自動検量装置100によりエンジンダイナモメータDのトルク検量が行われる位置である(図4参照)。また、離間位置Qは、連結軸2がダイナモメータDの出力軸D1の他端から離間した位置であり、通常の試験対象エンジンEの性能試験が行われる位置である(図4参照)。
【0030】
具体的に移動機構4は、図3に示すように、基台200上面においてエンジンダイナモメータDの出力軸D1(及び連結軸2)の軸方向に沿って設けられたレール部材41と、当該レール部材41上をスライド移動するスライダ42と、当該スライダ42上に設けられた可動台43と、連結軸2が連結位置P及び離間位置Qとなるように可動台43をスライド移動させるアクチュエータ44とを有する。本実施形態のアクチュエータ44はエアシリンダであり、ストローク量が一定とされており、連結位置P及び退避位置の2位置で停止可能なものである。このようなエアシリンダを用いることで移動機構4のアクチュエータ44を安価に構成している。なお、エアシリンダ44は、後述の制御機構9がエアシリンダ44に設けられた電磁弁のON/OFFを制御することにより、供給又は停止される圧縮空気によって動作する。また、可動台43上面には、連結軸2を回転自在に支持する支持柱431が設けられている。アクチュエータ44は、エアシリンダに限定されず、モータ駆動のもの等であっても良い。
【0031】
回転方向固定機構5は、連結位置PにおいてダイナモメータDの出力軸D1の他端に設けられた被係合部10(図1参照)に係合し、出力軸D1及び連結軸2が回転方向において相対的に回転しないように固定するものである。
【0032】
ダイナモメータDの出力軸D1の他端に設けられた被係合部10は、図4に示すように、出力軸D1の回転中心軸周りに設けられた複数の固定用孔からなる。この複数の固定用孔10は、回転中心軸周りの同一円上に等間隔に設けられている。
【0033】
そして回転方向固定機構5は、連結軸2の先端部において固定用孔10に対応して設けられた複数の固定ピン51と、当該固定ピン51及び連結軸2の間に介在して設けられ、固定ピン51を固定用孔10に係合する方向に付勢する付勢部材52と、固定ピン51が固定用孔10に係合したか否かを検出するための係合検出部53(図3参照)とを有する。
【0034】
具体的に固定ピン51と付勢部材52は、連結軸2の先端部に設けられたホルダ54に設けられている。ホルダ54は、固定用孔10に対応した収容部が設けられており、この収容部内に付勢部材52であるコイルばねが伸縮可能に収容されるとともに、固定ピン51がスライド可能に収容される。
【0035】
係合検出部53もホルダ54に設けられており、本実施形態では近接スイッチ(機械的接触なしに動作する位置検出用スイッチ)である。この係合検出部53は、固定ピン51が外部から押されて収容部の内部に挿入された結果、収容部の所定位置に存在することを検出するものであり、その検出信号を後述の制御機構9に出力する。
【0036】
荷重可変機構6は、図3に示すように、検量アーム3の左右の各自由端部31a、31bにそれぞれ設けられており、検量アーム3の載置アーム部32に載置する検量錘61の個数を変更するものである。具体的に荷重可変機構6は、複数の検量錘61と、当該検量錘61を保持する検量錘ホルダ62と、当該検量錘ホルダ62を鉛直方向(上下方向)に昇降移動させる昇降移動部63とを有する。昇降移動部63は、可動台43上に鉛直方向(上下方向)に沿って立設されたレール部材と、当該レール部材上をスライド移動するスライダと、スライダをレール部材上で多点で停止させるためのアクチュエータ部とを有する。レール部材は、可動台43上に設けられた支持部により鉛直方向に沿って設けられている。また、スライダには、検量錘ホルダ62が接続されている。さらに、アクチュエータ部はスライダを所定値毎に停止可能なものであり、本実施形態では、スライダが接続されるボールねじ機構と、当該ボールねじ機構を駆動するステッピングモータとを有する。このステッピングモータは、後述の制御機器により回転角度が制御され、これにより、検量錘ホルダ62の高さ位置が調整される。
【0037】
複数の検量錘61は、図5に示すように、それぞれ概略円板形状をなすものであり、その中心部に検量アーム3の載置アーム部32の懸垂アーム要素32bが挿通される貫通孔61hが形成されている。この貫通孔61hは、懸垂アーム要素32bよりも開口径が大きく、懸垂アーム要素32bとは非接触となるように構成されている。なお、懸垂アーム要素32bの下端に設けられた載置板32aは貫通孔61hよりも大きい。
【0038】
また、各検量錘61は、同一重量もの(例えば35kg)であり、検量錘ホルダ62に保持される検量錘61は、上部の検量錘61よりも下部の検量錘61が小径且つ肉厚となるように構成されている。
【0039】
検量錘ホルダ62は、複数の検量錘61の形状(外径及び厚さ)に対応して形成された階段状の収容凹部621を備えており、各収容凹部621毎に対応する検量錘61が1つずつ収容される。つまり、検量錘ホルダ62は、下に行くに従って、各検量錘61を収容する収容空間が同心円状に縮径するとともに、その深さが大きくなるように構成されている。また、収容凹部621に各検量錘61が収容された状態で、各検量錘61の間には所定の隙間が形成される。
【0040】
そして、昇降移動部63により検量錘ホルダ62を徐々に下降させていくと、検量錘ホルダ62の収容凹部621に収容された検量錘61から下から順番に載置アーム部32の載置板32a上に載置されていく。載置アーム部32に検量錘61が載置された状態で、当該検量錘61は、載置アーム部32に載置されていない検量錘61(検量錘ホルダ62に収容されている検量錘61)と接触しないように構成されている。なお、図5においては、検量アーム3に検量錘61が載置されていない状態(左側の図)と、検量アーム3に全ての検量錘61が載置された状態(右側の図)とを示している。
【0041】
水平調整機構7は、図3に示すように、検量アーム3のメインアーム部31の下方において、連結軸2の両側に左右対称位置に設けられており、メインアーム部31の左右両側を下方から押し上げることによってメインアーム部31を水平位置に調整する。具体的に水平調整機構7は、可動台43上面に鉛直方向に移動可能に設けられた可動部材71と、当該可動部材71を鉛直方向に沿ってスライド移動させるアクチュエータ72とを備えている。このアクチュエータ72はエアシリンダを用いて構成されており、左右両側に設けられた水平調整機構7は、同一の力でメインアーム部31を押し上げる。これにより、検量アーム3(メインアーム部31)が水平位置に調整される。また、エアシリンダ72は、後述の制御機構9がエアシリンダ72に設けられた電磁弁のON/OFFを制御することにより、供給又は停止される圧縮空気によって動作する。なお、2つの水平調整機構7のエアシリンダ72のストローク量を同一にし、当該ストローク量をメインアーム部31が水平位置となるときのストローク量としておけば、水平調整機構7によりメインアーム部31を押し上げることによってメインアーム部31を水平位置に調整することもできる。なお、アクチュエータ72は、エアシリンダに限定されず、モータ駆動のもの等であっても良い。
【0042】
回転子固定機構8は、ダイナモメータDの出力軸D1の一端を基台200に対して固定するものである。より詳細に回転子固定機構8は、ダイナモメータDの出力軸D1の他端に連結軸2が連結され、水平調整機構7により検量アーム3が水平に調整された後に、出力軸D1の一端を固定する。具体的な構成は、図2及び図6に示すように、出力軸D1の一端側に設けられて、試験対象エンジンEの出力軸E1が接続されるカップリング部材11の外側周面に設けられた挿入孔11hに挿入される固定ピン81と、当該固定ピン81を挿入位置S及び離脱位置Tの間でスライド移動させるアクチュエータ82とを備えている。
【0043】
固定ピン81及びアクチュエータ82は、カップリング部材11の下方に設けられ、固定ピン81がカップリング部材11に向かって鉛直方向に沿ってスライド移動するように構成されている。本実施形態のアクチュエータ82はエアシリンダであり、後述の制御機構9がエアシリンダ72に設けられた電磁弁のON/OFFを制御することにより、供給又は停止される圧縮空気によって動作する。なお、挿入位置Sとは、固定ピン81が挿入孔11hに挿入された位置であり、出力軸D1の一端が基台200に対して固定される位置である。離脱位置Tとは、固定ピン81が挿入孔11hから抜け出て、出力軸D1の一端が基台200に対して固定されていない位置である(図6参照)。アクチュエータ82は、エアシリンダに限定されず、モータ駆動のもの等であっても良い。
【0044】
また、出力軸D1の一端に設けられたカップリング部材11には、次のように挿入孔11hが設けられている。つまり、連結軸2が出力軸D1に連結された状態(更には検量アーム3が水平に調整された状態)において挿入孔11hが鉛直下方を向き、固定ピン81と対向するように形成されている。なお、出力軸D1は、一回転中複数の回転角度で連結軸2と連結可能に構成されていることから、カップリング部材11に設けられる挿入孔11hも、連結される各回転角度において固定ピン81が挿入可能なように、連結される各回転角度に対応して複数の挿入孔11hが設けられている。本実施形態では、出力軸D1に60度等配で固定用孔が設けられ、60度毎に連結軸2と連結可能であることから、挿入孔11hも60度等配されている。
【0045】
制御機構9は、上述した移動機構4、荷重可変機構6、水平調整機構7及び回転子固定機構8を制御して、トルク検量を自動化するものである。その機器構成としては、図7に示すように、CPU、メモリ、入出力インタフェース等を備えた例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等の専用のコンピュータ、又は汎用のコンピュータを用いて構成されている。そして、メモリ内部に記憶させたプログラムによりCPU及び周辺機器が協働することにより、図7に示すように、各部と信号の授受を行うことにより、後述する所定の動作手順に従って、前記複数の機構をシーケンス制御してトルク自動検量を行う。
【0046】
<動作手順>
次に、本実施形態のトルク自動検量装置100の動作の一例について制御機構9の動作とともに、図8図10のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
(1)連結ステップ(図8参照)
まず、ダイナモメータDにより試験対象エンジンEの性能試験を行っている場合には、ダイナモメータDを停止して、出力軸D1の回転を停止させる(ステップSa1)。
【0048】
ダイナモメータDの出力軸D1が停止していることを確認後、制御機構9の入出力インタフェースに接続された検量開始スイッチS1を押す。この検量開始スイッチS1からの検量開始信号を受信した制御機器9は、以下の順でトルク自動検量における連結ステップを開始する(ステップSa2)。なお、トルク検量開始前においては、トルク自動検量装置100の連結軸2は離間位置Qにあり、ダイナモメータDの出力軸D1と非連結である。
【0049】
まず、制御機器9は、トルク自動検量装置100をダイナモメータDの出力軸D1に連結すべく、移動機構4のエアシリンダ44の電磁弁を制御する。これにより、エアシリンダ44が可動台43をダイナモメータD側に移動させる(ステップSa3)。このとき、可動台43上に設けられた連結軸2及び検量アーム3だけでなく、荷重可変機構6、水平調整機構7も連結軸2と共にダイナモメータD側に移動する。
【0050】
エアシリンダ44により可動台43をダイナモメータD側に移動させて、出力軸D1の他端面と連結軸2の先端面とを近接させる(ステップSa4)。このとき、出力軸D1の他端面及び連結軸2の先端面は、回転方向固定機構5により回転方向の固定が確保できる程度に接近していれば良く、接触することを要しない。
【0051】
ここで、制御機器9は、回転方向固定機構5の近接スイッチ53から検出信号を取得して、固定ピン51が固定用孔10に挿入されているか否か、つまり固定ピン51と固定用孔10との周方向の位置が合致しているかを判断する(ステップSa5)。固定ピン51が固定用孔10に挿入されていなければ、エンジンダイナモメータD内に設けられた回転モータ(不図示)を制御して、出力軸D1を例えば1回転/分等で微速回転させる(ステップSa6)。このとき係合検出部53からの検出信号を常に取得して、固定用ピンが固定用孔10に挿入されたことを検出した場合には、回転モータを停止させて出力軸D1の回転を停止させる(ステップSa7)。なお、出力軸D1を微速回転させる回転モータは、既設の回転モータであっても良いし、別付きの回転モータであっても良い。既設の回転モータで微速回転が難しい場合には、微速回転用の回転モータを別途設けることが望ましい。
【0052】
次に、制御機器9は、水平調整機構7のエアシリンダ72の電磁弁を制御して、検量アーム3が水平位置となるように調整する(ステップSa8)。制御機器9は、水平調整機構7の可動部材71を上昇させてメインアーム部31を水平にした後、可動部材71をメインアーム部31から離間させる。この水平調整の終了後、制御機器9は、回転子固定機構7のエアシリンダ82に供給する圧縮空気を制御して、固定ピン81をカップリング部材11の挿入孔11hに挿入させる。これにより、出力軸D1の一端が基台200に対して固定される(ステップSa9)。
なお、水平調整機構7の可動部材71がメインアーム部31に接触した状態で、回転子固定機構7により出力軸D1を固定するようにし、その後、可動部材71をメインアーム部31から離間させるようにしても良い。
【0053】
(2)トルク検量ステップ
(2−1)ゼロスパン校正ステップ(図8参照)
まず、制御機器9は、検量アーム3に検量錘61の荷重がかかっていない状態(無荷重状態)で、ダイナモメータDに設けられたトルクメータのトルク計測値を直接又はダイナモコントローラを介して取得して、ゼロ点とする(ステップSb1)。
【0054】
そして、制御機器9は、右側の検量アーム3の下方に設けられた荷重可変機構6のステッピングモータの回転角度を制御して、検量錘ホルダ62を下降させて、当該ホルダ62に収容されている検量錘61全てを右側の載置板32aに載置する(ステップSb2)。このときダイナモメータDに設けられたトルクメータのトルク計測値を直接又はダイナモコントローラを介して取得して、プラス側フルレンジの検量データを取得する(ステップSb3)。なお、検量データは、トルクメータのトルク計測値と、検量錘61の重量及び検量アームの長さから得られるトルク算出値とを比較することによって得られる。
【0055】
次に、制御機器9が、右側の荷重可変機構6のステッピングモータを制御して、検量錘ホルダ62を上昇させて、右側の載置板32aの載置された全ての検量錘61を検量アーム3から取り外す(無荷重状態)(ステップSb4)。その後、制御機器9は、トルクメータのトルク計測値を直接又はダイナモコントローラを介して取得して、ゼロ点とする(ステップSb5)。
【0056】
次に、制御機器9は、左側の検量アーム3の下方に設けられた荷重可変機構6のステッピングモータの回転角度を制御して、検量錘ホルダ62を下降させて、当該ホルダ62に収容されている検量錘61全てを左側の載置板32aに載置する(ステップSb6)。このときダイナモメータDに設けられたトルクメータのトルク計測値を直接又はダイナモコントローラを介して取得して、マイナス側フルレンジの検量データを取得する(ステップSb7)。
【0057】
次に、制御機器9が、左側の荷重可変機構6のステッピングモータを制御して、検量錘ホルダ62を上昇させて、左側の載置板32aの載置された全ての検量錘61を検量アーム3から取り外す(無荷重状態)(ステップSb8)。その後、制御機器9は、トルクメータのトルク計測値を直接又はダイナモコントローラを介して取得して、ゼロ点とする(ステップSb9)。
【0058】
(2−2)検量ステップ
上記のゼロスパン校正ステップ終了後、制御機器9は、左右いずれか一方の荷重可変機構6のステッピングモータを制御して、検量錘61を1つずつ載置板32a上に載置していき、検量アーム3に加えられる各荷重負荷を段階的に増やしていき、それら各荷重負荷における検量データを取得する(ステップSc1)。
【0059】
詳細に言うと、制御機器9は、右側の荷重可変機構6のステッピングモータを制御して、1枚目(検量錘ホルダ62の最下段に収容された検量錘61)が検量アーム3の載置板32a上に載置する。このとき、制御機構9は、トルクメータからトルク計測値を取得して、増量側1個目の検量データを取得する。次に、制御機器9は、右側の荷重可変機構6のステッピングモータを制御して、2枚目(検量錘ホルダ62の下2段目に収容された検量錘61)が検量アーム3の載置板32a上に載置する。このとき、制御機構9は、トルクメータからトルク測定値を取得して、増量側2個目の検量データを取得する。同様にして、制御機構9は、10枚目まで載置板32a上に載置するように右側の荷重可変機構6のステッピングモータを制御して、10個の増量側検量データを取得する。
【0060】
次に、制御機構9は、載置板32a上に載置された10個の検量錘61を1つ1つ取り外しながら、検量アーム3に加えられる各荷重負荷を段階的に減らしていき、各荷重負荷における検量データを取得する(ステップSc2)。
【0061】
つまり、制御機器9は、右側の荷重可変機構6のステッピングモータを制御して、10枚目(検量錘ホルダ62の最上段に収容される検量錘61)を載置板32aから取り外す。このとき、制御機構9は、トルクメータからトルク計測値を取得して、減量側1個目の検量データを取得する。次に、制御機器9は、右側の荷重可変機構6のステッピングモータを制御して、9枚目(検量錘ホルダ62の上2段目に収容される検量錘61)を載置板32aから取り外す。このとき、制御機構9は、トルクメータからトルク計測値を取得して、減量側2個目の検量データを取得する。同様にして、制御機構9は、1枚目まで載置板32aから取り外されるように右側の荷重可変機構6のステッピングモータを制御して、10個の減量側検量データを取得する。
【0062】
また、制御機器9は、右側の荷重可変機構6と同様に、左側の荷重可変機構6のステッピングモータを制御して、増量側及び減量側それぞれ10個の検量データを取得する(ステップSc3)。上記の手順により得られた検量データは、各検量錘61が同一重量とされていることから、ゼロ点からフルレンジまでの等間隔に得ることができ、検量精度を向上させることができる。
【0063】
左右ともに各検量錘61(各荷重負荷)における検量データの取得が終了した後、制御機器9は、移動機構4を制御することによって、連結軸2を出力軸D1の軸方向に沿って離間位置Qにスライド移動させる(ステップSc4)。以上によって、トルク自動検量装置100のトルク自動検量が終了する(ステップSc5)。
【0064】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係るトルク自動検量装置100によれば、トルク測定用回転子への検量アーム3の接続から、当該検量アーム3への検量負荷の変更及びトルク検量まで自動で行うことができる。したがって、検量アーム3を手作業でトルク測定用回転子に接続することを不要にすることができ、作業性及び安全性を向上させることができる。また、検量錘61を手作業で検量アーム3に吊り下げ又は載置することも不要にすることができ、これによっても作業性及び安全性を向上させることができる。さらに、検量アーム3の接続及び検量錘61の吊り下げ又は載置を自動で行うことから、検量時間の短縮も可能にすることができ、その上、ユーザがトルク検量中にトルク検量装置を操作する必要が無く、トルク検量装置に付きっきりになる必要もない。
【0065】
また、検量アーム3と一体的に回転する連結軸2がトルク測定用回転子と同軸に接続されるものであり、トルク測定用回転子との連結を簡単にすることができるとともに、トルク測定用回転子の側周面に径方向に沿って連結する場合に比べて種々のサイズのダイナモメータDに対応可能にすることができる。さらに、回転方向固定機構5により連結軸2及びトルク測定用回転子が回転方向において固定されることから、トルク検量中においてトルク測定用回転子に対して検量アーム3がずれる心配が無く、精度良くトルク検量を行えるようになる。
【0066】
さらに、固定用孔10及び固定ピン51が出力軸D1の回転中心周りに設けられており、回転方向において確実に固定することができる。また、固定ピン51がコイルばね52によって係合方向に付勢されていることから、コイルばね52が固定ピン51が受ける衝撃を吸収することになり、出力軸D1及び連結軸2の連結部分の破損を防止することができる。さらに、制御機構9が近接スイッチ54からの検出信号により、係合の有無を判断して出力軸D1を回転することにより、固定ピン51を固定用孔10に確実に挿入させることができる。
【0067】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0068】
例えば、前記実施形態のトルク自動検量装置は、エンジンダイナモメータを自動検量するものであったが、シャシダイナモメータにも適用することができる。この場合、連結軸は、シャシダイナモメータの回転ローラに軸方向に沿って連結される。
【0069】
また、前記実施形態では、被係合部が固定用孔であり、回転方向固定機構が固定ピン等から構成されたものであったが、逆であっても良い。つまり、被係合部を固定ピン等から構成されるものとして、回転方向固定機構を固定用孔としても良い。
【0070】
さらに、被係合部及び回転方向固定機構は、固定用孔及び固定ピンに限られず、回転方向における回転が固定されるものであれば、その他の形状、構造であっても良い。例えば、被係合部を出力軸の回転中心周りに対称に設けられた凹部として、回転方向固定機構をその凹部に嵌る凸部としても良い。
【0071】
その上、荷重可変機構の構成としては、検量錘ホルダの昇降移動に伴って、当該検量錘ホルダに収容された検量錘が1つずつ載置アーム部に載置される構成であれば良く、図11に示すように、検量錘の貫通孔が、下側の検量錘ほど大きくなるように構成し、載置板をその貫通孔に対応して下側に行くに従って階段状に拡径するように構成しても良い。
【0072】
加えて、前記実施形態では、ダイナモコントローラと制御機器とを別構成としているが、共通のコンピュータにより構成しても良い。
【0073】
また、図12に示すように、トルク自動検量装置が、出力軸D1を回転させる出力軸回転機構12を有するものであっても良い。
【0074】
なおこの場合、出力軸D1は、図13に示すように、出力軸本体D11と、当該出力軸本体D11の先端部に、出力軸本体D11と同軸上に固定されたギア部材D12と、当該ギア部材D12の先端部に、出力軸本体D11と同軸上に固定されたフランジ部材D13とを有する。このフランジ部材の先端面に固定ピン51が挿入される固定用孔10が形成されている。なお、フランジ部材D13はギア部材D12に対して着脱可能であり、ギア部材D12は出力軸本体D11に対して着脱可能である。このようなものであれば、ギア部材D12の摩耗等により交換が必要な場合には、当該ギア部材D12のみを交換することができる。
【0075】
この出力軸回転機構12は、連結ステップにおいて固定ピン51が固定用孔10に挿入されていない場合、つまり固定ピン51と固定用孔10との周方向の位置が合致していない場合に、出力軸D1に外部から回転力を加えて出力軸D1を回転させるものであり、基台200上において出力軸D1の側方に配置されている。具体的に出力軸回転機構12は、出力軸D1に設けられたギア部材D12に噛み合って当該出力軸D1を回転させるものであり、ギア部材D12の歯に噛み合うギア要素121と、当該ギア要素121を回転させる回転モータ122と、ギア要素121及び回転モータ122を保持する保持部材123と、当該保持部材123を前記ギア要素121がギア部材D12に噛み合う噛み合い位置Xと、前記ギア要素121がギア部材D12から離間する退避位置Yとの間で移動させる保持部材移動機構124とを有する。
【0076】
保持部材移動機構124は、基台200上に固定されており、出力軸D1の軸方向と直交する水平方向に保持部材123をスライド移動させるものであり、レール124aと当該レール124a上をスライド自在に設けられたスライダ124bと、当該スライダ124b上に設けられて保持部材123が固定される固定台124cと、前記スライダ124cをレール124a上でスライド移動させる例えばエアシリンダ等のアクチュエータ部124dとを有する。
【0077】
この出力軸回転機構12を有するトルク自動検量装置100において、制御機器9は、固定ピン51が固定用孔10に挿入されていなければ、保持部材移動機構124のアクチュエータ部124dを制御して、保持部材123(ギア要素121)を退避位置Yから噛み合い位置Xに移動させる。そして制御機器9は、回転モータ122を制御して、ギア要素121及びギア部材D12を介してフランジ部材D13を例えば1回転/分等で微速回転させる(前記実施形態のステップSa6に対応)。
【0078】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0079】
100・・・トルク自動検量装置
D ・・・ダイナモメータ
D1 ・・・トルク測定用回転子(ダイナモメータの出力軸)
200・・・基台
2 ・・・連結軸
3 ・・・検量アーム
P ・・・連結位置
Q ・・・離間位置
4 ・・・移動機構
10 ・・・被係合部
5 ・・・回転方向固定機構
51 ・・・固定ピン
52 ・・・付勢部材
53 ・・・係合検出部
6 ・・・荷重可変機構
61 ・・・検量錘
7 ・・・水平調整機構
8 ・・・回転子固定機構
9 ・・・制御機構
図1
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図2
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図3
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図4
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図5
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図6
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図7
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図8
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図9
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図10
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図11
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図12
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図13
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