【実施例1】
【0044】
図1に示すように、中子4 を内包したプリプレグ3 を、室温にて成形用金型15の内周面形状と略同じ形状に賦形して、これを予め加熱した成形用金型15の下型1 に形成した凹部1a内に載置する。
【0045】
プリプレグ3 は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維等の繊維に未硬化の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含浸させたシート状に形成されている。図示例では、プリプレグ3 は断面形状が筒状に形成され、内部に中子4 を介装させている。例えば、二枚のシート状のプリプレグ間に中子4 を包み込むようにする。そして、成形用金型の加熱により、流動可能な状態にあるマトリックス樹脂を含むプリプレグ3 を、前記下型1 と上型2 とからなる成形用金型15内で加圧成形することにより硬化させ、所望の形状をもつ中空部を有する様々な断面の繊維強化プラスチック(FRP )の成形品を成形することができる。熱硬化性樹脂の代わりに熱可塑性樹脂を含浸させた場合は、プリプレグ3 を予め加熱して賦形したプリフォームを、成形用金型にて加圧冷却し、所望の形状のFRP成形品を製造することができる。
【0046】
繊維強化プラスチック(FRP )の成形品として、図示例では断面形状が矩形状の形状を呈しているが、繊維強化プラスチック(FRP )の成形品としては、かかる形状に限定されるものではなく、曲面形状等と組み合わせた断面形状に成形することができる。
繊維に含浸させる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、フェノール樹脂等を用いることができ、熱可可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニール、ポリアミド樹脂などを用いることができる。
【0047】
中子4 は、粒体4aを包装フィルム4bで包装し真空パックして、所望の外形形状としている。中子4 を構成する粒体4aには、アルミナ、ジルコニア等セラミック、ガラス、硬質耐熱樹脂、金属、鋳物砂、石英等の粒体物が用いられ、中子4 の形態保持に用いる包装フィルム4bとしては、ナイロン製のフィルム、ポリエチレン製のフィルム、フッ素樹脂フィルム、シリコーン等を用いることができる。粒体4aとして、特にジルコニア、石英を用いた場合には、これらの材質は熱伝導率が低いため、中子4 の粒体4aとして好適な材料となる。
【0048】
図示例によれば、下型1 の凹部1aに、成形用金型15のキャビティ内に出没可能なピストンロッド5aを有するシリンダ5 を設けている。なお、
図1では、ピストンロッド5aを摺動させるためにシリンダ5 の圧力室に作動流体を給排する配管の図示は省略している。上型2 と下型1 とを互いに近接する方向に移動させることで型締めを行い、下型1 の凹部1aに載置したプリプレグ3 を加熱硬化させることができる。この段階では圧力は高くなく、次の段階でピストンロッド5aを伸長させることにより、中子4 を変形させながら内圧を高めると同時にプリプレグ3 をも成形用金型15の成形面に沿って変形させる。このとき中子4 と成形用金型15との間の圧力を高めるため、型締め機としては上下型2,1 の開閉機構を備えていれば足り、格別な高圧プレス機は不要となる。
【0049】
上型2 と下型1 との間を型締め状態にしたとき、あるいは上型2 と下型1 とによってプリプレグ3 を所定の圧力で加圧している加圧状態にしたとき、上型2 と下型1 との間隔がそれ以上拡がらないようにする。そのため、図示例によれば上型2 に上下型2,1 の間隔を一定に保持する金型間隔保持手段20が設けられている。
図1に示すように、金型間隔保持手段20には、ピストンロッド5aで中子4 を押圧変形させたときに、上型2 に対してプリプレグ3 の変形による押圧力の増大で上型2 が持ち上がらない構成が採用される。
【0050】
図1及び
図6(A) に示す例では、前記金型間隔保持手段20は、上型2 の左右側面上端部(
図1の左右上端肩部)に形成した下傾斜面2a,2a と、同下傾斜面2a,2a に面接触状態で摺接するくさび面21b,21b を有し、上型2 の移動方向(上下方向)に直交する方向(水平方向)に摺動自在な左右一対の押え部材21a,21a と、同押え部材21a,21a を水平方向に移動させて互いに接近及び離間方向に駆動する図示せぬ駆動部とを備えている。左右一対の押え部材21a,21a の対向するくさび面21b,21b の形状は、
図6(A) に示すように、相対す
るくさび面21b,21b 間の間隔が下方に向かって拡開する形状とされている。
【0051】
上型2 と下型1 とによる型締め状態又は加圧状態にあって、一対の押え部材21a,21a を上型2 の左右側面の上端部に形成された下傾斜面に向けて接近するように水平に移動させることにより、上型2 の左右側面の上端部に形成した下傾斜面2a,2a とくさび面21b ,21bとによるくさび作用が働く。ここで、前記押え部材21a の左右方向への移動停止位置により、上下型2,1 の上下成形面間の離間距離が決まり、上型2 の上方への、それ以上の移動が阻止される。すなわち、上型2 と下型1 との間の間隔が前記押え部材21a の停止位置により決まるため、その停止位置を調整することにより上型2 と下型1 との間の間隔を任意に調整することができる。この停止位置が決まると、たとえ上型2 に下方から強大な力が作用したとしても、上型2 は不動状態を維持し、その不動位置が確実に保持されるため、寸法精度の高い成形品を得ることができる。
【0052】
この位置が決まった状態で、押圧手段であるピストンロッド5aを成形用金型15のキャビティ内に突出させて、プリプレグ3 の外周面の一部を押圧して、プリプレグ3 内に内包された中子4 の一部外周面に凹陥部6 を形成する。このように、ピストンロッド5aによってプリプレグ3 を介して中子4 の一部外周面を押圧すると、中子4 内の容積は、粒体4aの容積に突入したピストンロッド5aの容積が強制的に加わった状態になるため、中子4 内の内圧を高めることができる。
【0053】
中子4 の内圧が高まることによって、包装フィルム4bに収納された各粒体4aは相互の粒体間で滑りを生じて前後左右方向に移動することになる。しかも、各粒体4aを包装している包装フィルム4bは伸展できる材質から構成されているので、包装フィルム4bは各粒体4aの移動を許容するように変形する。
【0054】
このように、中子4 の内圧を高め、粒体4a間での滑りを生じさせることにより、中子4 が変形し、
図2に示すような、中子4 とプリプレグ3 との間の空隙や、成形用金型15の成形面とプリプレグ3 との間の空隙を形成させることがない。
【0055】
すなわち、中子4 の内圧が高まることによって、中子4 内の粒体4aは滑りが生じて中子4 を変形させる。そして、プリプレグ3 の内面における四隅から、下型1 の凹部1a壁面に沿って形成される縦の部位の内面に沿った領域に曲がり、シワや空隙が生じないように、中子4 を変形させてプリプレグ3 の内面に密接させることができる。
【0056】
プリプレグ3 を成形用金型15内に載置した際に、中子4 を被包しているプリプレグ3 と中子4 との間に空隙が形成されていても、空隙を構成していた気体は、中子の押圧による内圧を受け、プリプレグ3 を通って成形用金型15の僅かな隙間から大気中に放出される。空気がプリプレグ3 の通過時に形成された通路は、空気の通過後に中子4 による圧力を受けてプリプレグ3 の溶融樹脂が流動して自然に塞がれ、ボイドの発生要因とはならない。
【0057】
また、プリプレグ3 を成形用金型15内に載置した際に、成形用金型15の隅部において、成形用金型15とプリプレグ3 との間に空隙が存在していた場合であっても、中子4 の内部を移動する粒体4aの押圧によってプリプレグ3 を空隙側へと変形させる。そして、この空隙を形成していた空気を成形用金型15から大気中に押し出す。空気が排出された空隙の部分にはプリプレグ3 が移動して、プリプレグ3 は成形用金型15の隅部形状に沿った形状に形成される。これにより、プリプレグ3 を加圧成形して形成した成形品は、例えば、隅部が金型の形状に沿った高品位の成形品になる。
【0058】
中子4 の内圧が高まることによって、各粒体4aは相互の粒体間で滑りを生じて四方に分散移動することになる。しかも、各粒体4aを包装している包装フィルム4bは伸延できる材
質から構成されているので、包装フィルム4bは各粒体4aの移動を許容するように拡張される。
【0059】
このように、中子4 の内圧を高め、粒体4a間での滑りを生じさせることができるので、中子を変形させることができ、
図2に示すように、中子4 とプリプレグ3 との間に空隙を形成させないことができる。しかも、プリプレグ3 を成形用金型15内に載置した際に空隙が生じていても、中子4 の変形は、プリプレグ3 との間での圧力の低い部位において生じるので、上型2 と下型1 との間を型締め状態にする際には空隙は形成されず、プリプレグ3 の肉厚を所定の肉厚に維持しておくことができる。
こうして、所定の肉厚を有し、所望の外周面形状を備えた形状にプリプレグ3 を加圧成形することができる。
【0060】
なお、実施例の説明で用いる各図において、包装フィルム4bを分かり易く説明するため、誇張した状態で包装フィルム4bの肉厚を示している。実際には、包装フィルム4bは、薄いフィルム状に構成されており、通常その厚みは1mm以下である。
【0061】
図3(a)は、成形用金型15による加圧成形が終了した半成形品10a を、成形用金型15から取り出した状態を示している。ピストンロッド5aで押圧したプリプレグ3 の部位には、凹陥部6 が形成されている。
【0062】
図3(b)に示すように、凹陥部6 の底面に排出用の孔を開けると、この孔から中子4 を構成していた粒体4a間に空気が流入し、粒体4a間の結合状態が崩れる。そして、結合状態が崩れた粒体4aを、凹陥部6 に形成した排出用の孔から外部に排出することができる。そして、
図3(c)に示すように、中空部10b を有する成形品10を完成させることができる。
ここで、包装フィルム4bを用いて粒体4aを真空パック包装しているときは、包装フィルム4bを、成形品10に対して剥離性がよい材料で構成しておけば、包装フィルム4bも成形品10から取外すことができる。また、包装フィルム4bを二重にすれば、粒体4aに接する包装フィルム4bを成形品10から取外すことができる。
【0063】
このように、中子4 とプリプレグ3 との間に空隙が存在しない状態でプリプレグ3 に対する加圧成形を行うことができるので、成形品10としては曲がりやシワがない所望の肉厚で所望の品質および外周面形状を有する製品を製造することができる。また、成形用金型を閉めた状態で中子4 内の内圧が低い場合であっても、ピストンロッド5aの突出量を増加させれば、中子4 内の内圧を高めるので、成形品10としては所望の肉厚で所望の外周面形状を有する製品に製造することができる。
【0064】
次に、
図7を用いて、プリプレグ3 における内圧の変化と、上型2 の移動ストローク及びピストンロッド5aの伸長ストロークとの関係を説明する。
図7の説明を行う前に、幾つかの仮定条件について述べる。
例えば、
図1に示す上型2 でプリプレグ3 を押圧する押圧面が長方形形状であって、押圧面の横幅W が100mm の長さで、奥行きが300mm の長さであると仮定する。このとき、押圧面の面積としては、10cm×30cm=300cm
2になる。また、ピストンロッド5aの直径をφ38mmと仮定し、シリンダ5 のシリンダ径をφ130mm と仮定する。そして、上型2 を押圧するプレス装置における油圧シリンダのシリンダ径をφ252mm とする。
【0065】
このとき、前記プレス装置のプレス圧が25kg/ cm
2 であるとすると、このとき上型2 に加えることができる荷重は、プレス圧×油圧シリンダの面積=25kg/ cm
2 ×25.2cm×25.2cm×3.14/4 =約12.5ton になる。そして、前記プレス装置でのプレス圧が25kg/ cm
2 の2 倍である50kg/ cm
2 であるときには、上型2 に加えることができる荷重は、上述したプ
レス圧が25kg/ cm
2 のときの12.5ton の倍である約25ton を加えることができる。
【0066】
12.5ton の荷重を上型2 に加えると、上型2 の押圧面でプリプレグ3 を押圧しているときの単位面積当たりの応力は、荷重/(上型2 の押圧面積)=12,500Kg/300 cm
2 =約42kg/ cm
2 になる。12.5ton の2倍である25ton の荷重を上型2 に加えた場合には、上型2 の押圧面でプリプレグ3 を押圧しているときの単位面積当たりの応力としては、12.5ton の荷重を上型2 に加えたときの倍である約84kg/ cm
2 となる。
【0067】
また、φ130mm のシリンダ5 におけるシリンダ圧が7kg/ cm
2であるとすると、このときピストンロッド5aに加えることができる押圧力は、シリンダ圧×シリンダ5 の面積=7kg/
cm
2×13.0cm×13.0cm×3.14/4 =約929Kg になる。そして、ピストンロッド5aで中子4 を押圧するときの単位面積当たりの応力は、押圧力/ピストンロッド5aの面積=929Kg /3.8cm ×3.8cm ×3.14/4 =約82kg/ cm
2 となる。
上記で計算した数値を用いて、
図7を説明する。
【0068】
図7では、縦軸に応力(kg/ cm
2 )を示し、横軸にピストンロッド5aのストローク(cm)を示している。なお、図は、応力とストロークの関係を分かりやすく説明するためのものであって、スケール等は縮小したり誇張させたりして示している。
プレス装置を作動させると、A 点において上型2 はプリプレグ3 に当接し、プリプレグ3 を押圧することができる。同図中の破線は、上型2 だけでプリプレグ3 を押圧していった場合を示している。太線は、本発明に基づいて、上型2 によるプリプレグ3 の押圧とピストンロッド5aによる中子4 の押圧とを併用した場合を示している。なお、応力がゼロから応力IIに上昇するまでの間は、破線と太線とは重なった状態になっている。
【0069】
最初に、破線について説明する。そして、破線のようにして応力をIIの状態にまで増大させた場合には、成形用金型15とプリプレグ3 との間及びプリプレグ3 と中子4 との間に生じていた余裕を無くすことができるものとする。この場合では、例えば、プレス装置でのプレス圧が25kg/ cm
2 であれば、上型2 をA 点から更にB 点まで移動させることができ、応力としては更に応力I まで増加させることができる。このときの応力I は、仮に上述の計算で求めた42 kg/ cm
2となる。このあとも、引き続きプレス装置の作動を続けることにより、
図7に破線で示すように、C 点まで達する。このときの応力は応力I の大きさとなる。
【0070】
次に、太線について説明する。上述のように、上型2 がB 点に達するまではピストンロッドは作動しておらず、プレス装置による単独の加圧がなされて、プレス装置でのプレス圧を25kg/ cm
2 にして、上型2 をA 点からB 点まで移動させることができ、応力としては応力IIまで増加させることができる。このときの応力IIは、上述の計算で求めた42 kg/ cm
2になる。上型2 がA 点からB 点まで移動したときに、金型間隔保持手段20を作動させて上型2 が下型1 から離れる方向に移動しないよう、その位置を保持する。
【0071】
この保持状態からピストンロッド5aをキャビティ内に突出させる。このとき、ピストンロッド5aは中子4 に当接して中子4 の内圧を上昇させることになるが、中子4 を構成している粒体4aの量が包装体の容積より少ないときには、中子4 を変形させながら、その内圧を所望の内圧まで高めて中子4 を元々の形状に戻すために、ピストンロッド5aをC 点まで伸長させる。このときの応力はIIのままである。そして、成形用金型15とプリプレグ3 との間及びプリプレグ3 と中子4 との間に生じていた空隙を無くそうとするには、ピストンロッド5aをC 点から更にE 点までの任意の点へと伸長させて中子4 内の内圧を所望の内圧まで上昇させていくことになる。
【0072】
このとき、中子4 内の内圧が上昇するとともに、中子4 内を粒体4aが流動して中子4 を
変形させていくと、中子4 とプリプレグ3 との間での圧力も上昇する。そして、太線で示すように上型2 とプリプレグ3 との間の応力は、応力IIの状態から応力I'の状態に向かって上昇していく。ここで、応力IIの状態では粒体4aが中子4 の全体に渡って隈なく行き届いていないときは、更にピストンロッド5aを伸長させる。このとき、上型2 は反力を受けて型を開く上方へと逃げようとする。
【0073】
本発明にあっては、上述のとおり、上型2 には金型間隔保持手段20が設けられている。金型が開く方向へと動こうとする上型2 は、前記金型間隔保持手段20によって不動状態を維持し、上型2 が開く方向に動くことがないため、中子4 の内圧を所望以上に確実に上昇させることができ、プリプレグ3 と金型のキャビティ面との間に存在していた空気を積極的に型外に排出し、所望の形状と品質をもつ高品位の強化繊維プラスチック成形体が得られる。その結果、上述の計算で求めたように、ピストンロッド5aからの押圧力によって82kg/ cm
2 以上の適正な応力を、中子4 を介してプリプレグ3 に作用させることができる。
【0074】
このように、上型2 をA 点から更にD 点まで移動させたときに生じさせた84 kg/ cm
2と略同等の応力82kg/ cm
2 の応力をピストンロッド5aからの押圧力によって得ることができる。即ち、ピストンロッド5aで中子4 の一部を押圧することによって、例えば、上型2 に25ton の荷重を加えなくても、上型2 に12.5ton の荷重を加えた後に、929kg の押圧力をもつピストンロッド5aで中子4 を押圧することによっても、空隙を解消させることができる。
【0075】
なお、応力とストロークとの関係は、ピストンロッドの伸長長さに基づく容積変化が影響するため、実際には直線ではなく複雑な曲線形状になるが、応力とストロークとの関係を分かり易く説明するため、グラフとしては直線のグラフを用いて説明している。
【0076】
このように、本発明では、大型のプレス装置で上型2 を押圧しなくても、小型のプレス装置と中子4 を押圧するシリンダ5 によって、大型のプレス装置を用いた場合と同様に、成形用金型15とプリプレグ3 との間及びプリプレグ3 と中子4 との間に生じていた空隙を排除することができる。
【0077】
図7では、上型2 に荷重を加えた構成について説明を行ったが、上述した計算で示したようにピストンロッド5aによる押圧力でも、大型のプレス装置で生じさせた応力と略同じ応力をプリプレグ3 に作用させることができる。このため、成形用金型15を型締め状態とした後に、ピストンロッド5aを中子4 に作用させた場合であっても応力I の状態にまで応力を高めることができる。つまり、上型2 に12.5ton の荷重を加えた後にピストンロッド5aを作動させた場合であっても、成形用金型15とプリプレグ3 との間及びプリプレグ3 と中子4 との間に生じていた空隙を無くすことができる。
【0078】
しかして、ピストンロッド5aの突出量によって前述のとおりの高圧が得られるが、プリプレグ3 の全体的な肉厚を更に薄く均一にしようとして、成形時のプリプレグ3 に対する加圧力を更に高めようとすると、上述のようなプレス装置のプレス力の限界を越えて上型2 を上方へ押し上げて、上型2 の成形面と下型1 の成形面との間隔が所望の間隔よりも大きくなる虞れがある。
【0079】
本発明にあっては、上述のように上下型2,1 の上下間隔を一定に保つため、上型2 に金型間隔保持手段20を設けている。
金型間隔保持手段20の左右一対の押え部材21a,21a を上型2 の左右側面の上端部に形成された下傾斜面2a,2a に向けて接近するように水平に移動させると、上型2 の左右側面の上端部に形成した下傾斜面2a,2a とくさび面21b ,21bとによるくさび作用が働く。ここで、前記押え部材21a の左右方向への移動停止位置により、上下型2,1 の上下成形面間の離
間距離が決まり、上型2 の上方への、それ以上の移動が阻止される。すなわち、押え部材21a,21a の接近移動を停止させると、たとえ上型2 に対して下方から如何に強大な力が作用しても、上型2 はそれ以上上方へと移動せず不動状態を維持し、寸法精度の高い成形品を得ることができる。
【0080】
なお、上述の説明では、ピストンロッド5aを下型1 に設けた構成について説明をしてきたが、ピストンロッド5aを上型2 に設けた構成を採用することができる。このとき、ピストンロッド5aを上型2 側に設け、下型1 を土台等の上に載置して移動が規制されている。上型2 は相変わらず上下に可動である。そのため、ピストンロッド5aで中子4 を押圧したときに上型2 が持ち上がらないようにするための金型間隔保持手段20の構成として、
図1と同様の構成を採用できる。
【0081】
本実施例1にあっては、
図1に示すように、ジルコニア粒子(直径1mm、3mmの混合)をナイロンフィルムで真空パック包装した中子4 を作製した。炭素繊維強化エポキシ樹脂プリプレグ3 (三菱レイヨン社製TR3110 391IMU )を5プライで当該中子4 を内包し、成形用金型15の内周面形状と略同形状に、室温にてプリフォームを形成した。プリフォームを予め140℃に加熱した成形用金型15の下型1 に形成した凹部1a内に載置し、上型2 と下型1 の型締めを行い、続いて金型間隔保持手段20を作動させて上型2 が下型1 から離れる方向に移動しないよう、その位置を保持し、続いてピストンロッド5aで中子4 の外周面の一部を82kg/cm
2で押圧した。10分後、型開きを行い、成形品を取り出した。ピストンロッド押圧により形成された凹陥部6 (
図3(a))に排出用の孔を開け、粒体4aを排出用孔から外部に排出し(
図3(b))、中空成形品を得た(
図3(c))。この成形品は寸法精度が高く、外面にシワなど欠陥のない外観に優れるものであった。
【実施例3】
【0086】
図5及び
図6(C)を用いて、本発明に係わる実施例3の構成について説明する。実施例1では、金型間隔保持手段20として、単純に傾斜したくさび面21b を有する一対の押え部材21a,21a を用いた構成について説明したが、実施例3では、金型間隔保持手段20として、水平方向に延びる下面に上傾斜面を形成したくさび部23b,23b と、その外側端部から垂直下方に延びる垂直部23f,23f とを有する一対の押え部材23a,23a を用いており、一方の上型2 の左右両端部を、前記一対の押え部材23a,23a を前記両端部に当接させたとき、各押え部材23a,23a の対向面が密接する面形状に形成している。
【0087】
この実施例3では、上型2 の上部キャビティ面が単なる平面ではなく突出部8 を形成した構成としている。
他の構成は、実施例1と同様の構成になっており、同様の構成部材については、実施例1で用いた部材符号と同じ部材符号を用いることにより、その部材についての説明を省略する。
【0088】
左右一対の押え部材23a,23a に形成されたくさび部23b,23b は、
図6(C)に示すように、上型2 に向けて横方向に延びた上傾斜面23c,23c と、この上傾斜面23c,23c の両端縁側から上下に延びる垂直面23d,23e を備えた形状を有するくさび部23b,23b と垂直部23f,23f とからなる。そして、
図5に示すように、上型2 における左右両端部の傾斜面と押え部材23a,23a の上傾斜面23c,23c とが面接触することによって、上型2 の上方への移動を確実に阻止しておくことができる。また、一対の押え部材23a,23a を互いに接近/離間する方向に摺動させることによって、上型2 を下型1 に接近/ 離間方向へと移動させて、上型2 を下型1 との間隔を調整することができる。
【0089】
図5に示すように、上型2 を下型1 に向かって下降させてプリプレグ3 を加圧成形するとき、上型2 に設けた突出部8 で中子4 を強制的に押圧する。そして、この加圧状態は、金型間隔保持手段20を作動させて一対の押え部材23a,23a の間を接近させると、上型2 に形成した傾斜面と各押え部材23a,23a の上傾斜面23c,23c とが面接触することによって、上型2 の上方への移動を確実に阻止して、定位置に保持させておくことができる。
【0090】
この状態からピストンロッド5aを作動させて、中子4 を突出部8 とピストンロッド5aとの間で強制的に押圧変形させる。これによって、既述したとおり、中子4 を変形させ、中子4 とプリプレグ3 との間の空隙をなくすことができる。こうして、本実施例にあっても、所望の肉厚で所望の外周面形状を有する高品位の中空状の強化繊維プラスチック成形品が製造できるようになる。
【0091】
本実施例3にあっては、
図5に示すように、上型2 の上部キャビティ面が単なる平面ではなく突出部8 を形成した構成で、金型間隔保持手段20に、横方向に延びる下面に上傾斜面を形成したくさび部23b,23b と、その外側端部から垂直下方に延びる垂直部23f,23f とを有する一対の押え部材23a,23a を用いて実施例1と同様に成形を行った。型開きを行い、成形品を取り出し、ピストンロッド押圧により形成された凹陥部6 (
図3(a))に排出用の孔を開け、粒体4aを排出用孔から外部に排出し(
図3(b))、中空成形品を得た(
図3(c))。この成形品は寸法精度が高く、外面にシワなど欠陥のない外観に優れる
ものであった。
【0092】
金型間隔保持手段20における一対の押え部材の構成としては、
図6に示したような多様な構成が採用できる。
図6(A)〜
図6(C)の構成については、上述した実施例1〜3として説明したが、
図2及び
図6(B)に示した実施例2の押え部材の変形例を、
図6(D)をもって説明する。
図6(D)に示した一対の押え部材24a,24a は、くさび面24b,24b の形状が鋸歯状に形成されているが、実施例2で示した
図6(B)のような片歯の鋸歯形状でなく両歯の鋸歯形状に構成されている。この例では、図示を省略しているが、上型2 の左右両端部は、前記くさび面24b,24b の形状に対応したくさび面が形成されている。
【0093】
かかる構成によって、金型間隔保持手段20を作動させると、一対の押え部材24a,24a におけるくさび面24b,24b と上型2 の両端部に形成したくさび面とが係合し、上型2 の上下両方向への移動を完全に阻止することになる。