【文献】
Macromol. Chem. Phys.,1994年,195,1147-64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繰り返し単位[B]が、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、トリシクロ[4.3.12,5.0]−3−デセン、トリシクロ[4.3.12,5.0]−デカ−3,7−ジエン、テトラシクロ[6.5.12,5.01,6.08,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、および11−フェニルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンから選択される少なくとも1種の単量体に由来する単位である請求項1記載の開環メタセシス共重合体水素化物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いる一般式(3)で表される環状オレフィン系単量体は、カルボン酸無水物基を有する環状オレフィン系単量体であり、mが0であるビシクロヘプテン誘導体、mが1であるテトラシクロドデセン誘導体、mが2であるヘキサシクロヘプタデセン誘導体が含まれる。
【0011】
式(3)中、Oは酸素原子を表し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。ここでいう炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状または環状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などのアルキル基、およびこれらに対応するビニル基やアリル基などのアルケニル基、アルカジエニル基、アルカトリエニル基、アルカテトラエニル基;シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基などの炭化水素基を挙げることができる。
【0012】
こうした単量体の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物などのビシクロヘプテン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−8−ドデセン−3,4−ジカルボン酸無水物、3−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−8−ドデセン−3,4−ジカルボン酸無水物、3−フェニルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−8−ドデセン−3,4−ジカルボン酸無水物、3−n−ヘキシルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−8−ドデセン−3,4−ジカルボン酸無水物などのテトラシクロドデセン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−11−ヘプタデセン−4,5−ジカルボン酸無水物、4−メチルヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−11−ヘプタデセン−4,5−ジカルボン酸無水物、4−フェニルヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−11−ヘプタデセン−4,5−ジカルボン酸無水物などのヘキサシクロヘプタデセン誘導体などを挙げることができる。これらの単量体の中でも、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−8−ドデセン−3,4−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−11−ヘプタデセン−4,5−ジカルボン酸無水物などが製造コストおよび簡便性の観点から好ましい。
【0013】
本発明に用いる一般式(4)で表される環状オレフィン系単量体は、無置換または炭素数1〜20の炭化水素基を有する環状オレフィン系単量体であり、nが0でR
3またはR
5がR
4またはR
6と結合していないビシクロヘプテン誘導体、nが0でR
3またはR
5がR
4またはR
6と結合して環を形成しているビシクロヘプテン誘導体、nが1であるテトラシクロドデセン誘導体、およびnが2であるヘキサシクロヘプタデセン誘導体が挙げられる。
【0014】
上記R
3〜R
6は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。R
3またはR
5がR
4またはR
6と結合していない場合には、R
3〜R
6の具体例としては、R
1およびR
2について例示したものと同様のものが挙げられる。また、R
3またはR
5がR
4またはR
6と結合している場合には、R
3〜R
6の具体例としては、ビニレン基、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基などを挙げることができ、これらの基にはさらに炭化水素基が置換されていてもよい。
【0015】
nが0でR
3またはR
5がR
4またはR
6と結合していないビシクロヘプテン誘導体の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヘプチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ノニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ウンデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−トリデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、5−テトラデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ペンタデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヘキサデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヘプタデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−オクタデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ノナデシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンなどが挙げられ、特にビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンなどを用いると、耐熱性、機械的強度が高度にバランスされる。
【0016】
nが0でR
3またはR
5がR
4またはR
6と結合して環を形成しているビシクロヘプテン誘導体としては、トリシクロ[4.3.1
2,5.0]−3−デセン、トリシクロ[4.3.1
2,5.0]−デカ−3,7−ジエン(別名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[6.5.1
2,5.0
1,6.0
8,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[6.6.1
2,5.0
1,6.0
8,13]ペンタデカ−3,8,10,12−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン)などが挙げられ、特にトリシクロ[4.3.1
2,5.0]−3−デセン、トリシクロ[4.3.1
2,5.0]−デカ−3,7−ジエン、テトラシクロ[6.5.1
2,5.0
1,6.0
8,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエンなどを用いると、耐熱性と有機溶剤に対する溶解性が高度にバランスされる。
【0017】
nが1であるテトラシクロドデセン誘導体の具体例としては、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−n−ヘキシルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−ビニルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−プロペニルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンなどが挙げられ、特にテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンなどを用いると、耐熱性、有機溶剤に対する溶解性が高度にバランスされて好適である。
【0018】
nが2であるヘキサシクロヘプタデセン誘導体の具体例としては、ヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセン、11−メチルヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセン、11−フェニルヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセンなどが挙げられ、特にヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセン、11−フェニルヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセンなどを用いると耐熱性、有機溶剤に対する溶解性が高度にバランスされて好適である。
【0019】
これらの環状オレフィン系単量体は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。耐熱性、溶媒への溶解性に優れる開環メタセシス共重合体を得るためには、3環体〜6環体の環状オレフィン系単量体、すなわち、テトラシクロドデセン誘導体、ヘキサシクロヘプタデセン誘導体、R
3とR
4が結合して環を形成しているビシクロヘプテン誘導体を使用するのが好ましく、中でも、テトラシクロドデセン誘導体、R
3とR
4が結合して環を形成しているビシクロヘプテン誘導体、具体的には、トリシクロ[4.3.1
2,5.0]−3−デセン、トリシクロ[4.3.1
2,5.0]−デカ−3,7−ジエン、テトラシクロ[6.6.1
2,5.0
1,6.0
8,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンが好ましい。
【0020】
本発明において使用される重合触媒は、複素環式カルベン化合物を配位子として有する有機ルテニウム化合物、好ましくは下記一般式(5)、(6)または(7)で表すことができる中性の電子供与性配位子を有する有機ルテニウム化合物を主成分とする触媒である。
【0021】
[(L
1)
m(Y
1)
nM
1]
x (5)
(式(5)中、M
1はルテニウム原子であり、Y
1は同一または異なっていてもよいアニオン性配位子であり、L
1は同一または異なっていてもよい中性電子供与性配位子を示し、L
1の少なくとも1つは複素環式カルベン化合物である。Y
1および/またはL
1の2個、3個または4個はお互いに結合して多座キレート配位子を形成してもよい。mおよびnは独立に1〜4の整数で、xは1〜6の整数である。)
【0022】
[(L
2)
p(Y
2)
qM
2=C(Q)
r]
y (6)
(式(6)中、M
2はルテニウム原子であり、L
2は同一または異なっていてもよい中性電子供与性配位子を示し、L
2の少なくとも1つは複素環式カルベン化合物であり、Y
2は同一または異なっていてもよいアニオン性の配位子である。Qは同一または異なっていてもよい、水素またはC
1〜C
20の炭化水素基(ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、珪素原子、リン原子または硫黄原子を含む置換基を有していてもよい)である。rは1または2であり、p、qおよびyは独立に1〜4の整数である。)
【0023】
[(L
3)
s(Y
3)
tM
3](X)
z (7)
(式(7)中、M
3はルテニウム原子であり、L
3は同一または異なっていてもよい中性電子供与性配位子を示し、L
3の少なくとも1つは複素環式カルベン化合物であり、Y
3は同一または異なっていてもよいアニオン性配位子である。Xは対アニオンである。sおよびtは独立に1〜4の整数であり、zは1または2である。)
【0024】
ここで、アニオン性配位子は中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、また、中性電子供与性配位子は中心金属から引き離されたときに中性の電荷をもつ配位子である。対アニオンは、ルテニウム陽イオンとイオン対を形成する陰イオンであり、このような対を形成できる陰イオンであれば特に限定されない。
【0025】
上記一般式(5)、(6)または(7)におけるY
1、Y
2およびY
3の具体例としては、F、Br、ClおよびIなどのハロゲン;ヒドリド、アセチルアセトナート基などのジケトナート基、シクロペンタジエニル基、アリル基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボキシル基、カルボキシル基、アルキルまたはアリールスルフォネート基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基などを挙げることができる。なかでも、ハロゲン、シクロペンタジエニル基、アリル基、アルキル基、アリール基が配位していると重合活性の点で優れている。
【0026】
また、上記一般式(5)、(6)または(7)におけるL
1、L
2およびL
3の具体例としては、酸素、水、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スチビン類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、芳香族類、ジオレフィン類(環状であってもよい)、オレフィン類(環状であってもよい)、イソシアニド類、チオシアネート類、複素環式カルベン化合物などが挙げられる。これらのうち複素環式カルベン化合物が少なくとも1つ配位していると重合活性が高くなり、本発明の共重合体が得られやすくなる。
【0027】
複素環式カルベン化合物としては、下記一般式(8)または(9)で示される化合物が挙げられる。
【0028】
式(8)および(9)中のR
21およびR
22は、互いに独立に、水素またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、りん原子およびケイ素原子の中から選ばれた少なくとも1種を含む置換基を有していてもよいC
1〜C
20の炭化水素基である。
【0029】
式(8)の複素環式カルベン化合物の具体例としては、1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジフェニルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラフェニルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリジン−2−イリデンなどが挙げられる。
【0030】
式(9)の複素環式カルベン化合物の具体例としては、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(2,4,6−トリメチルフェニル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジフェニル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラメチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラフェニル−4−イミダゾリン−2−イリデンなどが挙げられる。
【0031】
また、式(8)または(9)で示されるカルベン化合物以外にも、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロチアゾール−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどが挙げられる。これら複素環式カルベン化合物の中でも、カルベンに隣接するヘテロ原子に嵩高い置換基が結合したもの、具体的には、1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジフェニルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラフェニルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(2,4,6−トリメチルフェニル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロチアゾール−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデンが特に好ましい。
【0032】
さらに上記一般式(6)におけるQの具体例としては、水素、アルケニル基、アルキニル基、アルキル基、アルキリデン基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基などを挙げることができる。なかでも、炭素数1〜100のアルキル基、アルキリデン基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基が配位していると触媒の重合活性が高くなる場合がある。
【0033】
上記一般式(7)におけるXの具体例としては、BF
4−、B(C
6H
5)
4−,B(C
6F
5)
4−、PF
6−、SbF
6−、ClO
4−、IO
4−、p−トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンなどを挙げることができる。なかでも、BF
4−、B(C
6F
5)
4−、PF
6−、SbF
6−が対アニオンとして存在すると触媒活性が高くなる場合がある。
【0034】
上記重合触媒の具体例として、以下のものを挙げることができる。すなわち、一般式(5)で表される重合触媒の例としては、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)ルテニウム、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)ルテニウム、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウム、ジクロロビス〔(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)クロロルテニウム)〕、ジクロロビス〔(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)クロロルテニウム)〕、ジクロロビス〔(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)クロロルテニウム)〕などが挙げられる。
【0035】
一般式(6)で表される重合触媒の例としては、ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクリリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリドなどの2つの複素環式カルベン化合物が配位したルテニウム化合物;(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン](ペンタメチルシクロペンタジエニル)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](ペンタメチルシクロペンタジエニル)ベンジリデンルテニウムジクロリドなどの複素環式カルベン化合物と他の中性電子供与性化合物が配位したルテニウム化合物などが挙げられる。
【0036】
一般式(7)で表される重合触媒の例としては、[(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)(CH
3CN)
3Ru](BF
4)
2、[(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)(CH
3CN)
2(Cl)Ru](BF
4)、[(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)(CH
3CN)
3Ru](PF
6)
2、[(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)(CH
3CN)
3Ru](BF
4)
2、[(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)(CH
3CN)
2(Cl)Ru](BF
4)、[(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)(CH
3CN)
3Ru](PF
6)
2、[(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(CH
3CN)
3Ru](BF
4)
2、[(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(CH
3CN)
2(Cl)Ru](BF
4)、[(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(CH
3CN)
3Ru](PF
6)
2などが挙げられる。
【0037】
さらに、一般式(5)、(6)および(7)で表される重合触媒の重合活性を高めるために、例えば、N
2CHCOOC
2H
5などのジアゾ化合物、フェニルアセチレンなどのアセチレン化合物または(C
2H
5)
3SiH、Ph
2MeSiH(Phはフェニルを、Meはメチルを表す。)などのシリル化合物を、ルテニウム金属に対して、重量比で1〜100倍の割合で添加することもできる。
上述した触媒のうち、一般式(6)で表される重合触媒は高い重合活性を示すので、好適に使用できる。
【0038】
本発明において、重合反応は溶媒中で行っても、無溶媒中で行ってもよいが、重合反応後、ポリマーを単離せずにそのままin−situで水素化反応を行う場合は溶媒中で重合する方が好ましい。重合溶媒は、重合体を溶解し、かつ重合を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。
【0039】
具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどの含窒素系炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどの含ハロゲン系炭化水素を使用することができる。
【0040】
これらの溶媒の中でも、本発明の重合体を容易に溶解することができるものとして、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類、含ハロゲン系炭化水素を使用することが好ましく、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類を使用するのが最も好ましい。
重合を溶媒中で行う場合には、環状オレフィン系単量体の濃度は、1〜50重量%とすることが好ましく、2〜45重量%とすることがより好ましく、5〜40重量%とすることが特に好ましい。環状オレフィン系単量体の濃度が1重量%未満では共重合体の生産性が悪くなり、50重量%を超えると重合後の粘度が高すぎて、その後の水素化などが困難となるためである。
【0041】
本発明の方法において、環状オレフィン系単量体に対する重合触媒の割合は、(重合触媒中の金属ルテニウム:環状オレフィン系単量体)の比で、1:100〜1:2,000,000(モル:モル)、好ましくは1:500〜1:1,000,000(モル:モル)、より好ましくは1:1,000〜1:500,000(モル:モル)である。触媒量が1:100の比よりも多くなると触媒除去が困難となり、1:2,000,000の比よりも少なくなると十分な重合活性が得られないことによる。
【0042】
重合反応は、上記単量体と重合触媒とを混合することにより開始される。重合温度は特に制限はないが、通常、−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜180℃、より好ましくは−30℃〜160℃、最も好ましくは0℃〜140℃である。重合時間は、通常1分〜100時間であり、重合の進行状況によって適宜調節することができる。
【0043】
本発明においては、開環メタセシス共重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤を用いることができる。分子量調整剤の具体例としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなどその他の酸素含有ビニル化合物;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などを挙げることができる。
分子量調整剤を、環状オレフィン系単量体に対して、0.1〜100モル%の間の使用量で任意に選択することにより、所望の分子量の開環メタセシス共重合体を得ることができる。
【0044】
開環メタセシス共重合体は、カルボン酸無水物基を有する一般式(1)で表される繰返し単位[A]と、無置換または炭化水素基を有する一般式(2)で表される繰返し単位[B]とを含み、その構成モル比[A]/[B]が5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20である。該共重合体は、上述の一般式(3)の環状オレフィン系単量体と一般式(4)の環状オレフィン系単量体を開環共重合することによって得られ、単量体の組成比を変えることにより、任意に[A]/[B]を選択することができる。重合方法は特に限定されないが、前述の重合触媒および重合方法を使用すると、一般式(3)で表される単量体と一般式(4)で表される単量体の共重合性が従来の重合触媒を使用した場合に比べて大幅に向上するので、容易に任意の組成で共重合させることができる。
【0045】
開環メタセシス共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000〜1,000,000、好ましくは12,000〜500,000、より好ましくは、15,000〜400,000である。分子量が10,000未満では上記共重合体の機械強度が不十分であり、分子量が1,000,000を超えるとその後の水素化反応が困難となる。また、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比(Mw/Mn)の値は、通常6以下、好ましくは3以下、特に好ましくは1.5〜2.8である。Mw/Mnの値の小さい方が該共重合体を用いて得られる成形体の機械的強度などが優れている。開環メタセシス共重合体は、主鎖に炭素−炭素二重結合を有している。
【0046】
本発明の環状オレフィン系開環メタセシス共重合体水素化物は、主鎖炭素−炭素二重結合を水素化してなるものである。主鎖炭素−炭素二重結合を水素化して飽和させると、耐熱性および耐候性が一層向上する。本発明で行う水素化反応では、水素存在下で、重合触媒として利用した有機ルテニウム化合物をそのまま水素化触媒として使用して水素化しても構わないし、別の水素化触媒を新たに添加してもよい。
【0047】
重合触媒と同じルテニウム化合物を水素化触媒として用いる場合は、重合後、新たに水素化触媒を添加することなく、水素を供給して水素化反応を行うことができるが、水素化反応を確実に進行させるためには、エチルビニルエーテルやその他のα−オレフィン類などの触媒改質剤を添加するか、または水素化触媒を新たに添加する方法が好ましい。水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般的に使用されているものであればよく、特に制限されないが、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0048】
均一系触媒としては、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなるチーグラー系触媒とロジウム、ルテニウムなどの貴金属錯体触媒を挙げることができる。遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムなどの組み合わせが挙げられる。
ロジウム、ルテニウムなどの貴金属錯体触媒としては、上記一般式(5)、(6)、(7)で示される有機ルテニウム化合物、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムなどが挙げられる。
【0049】
不均一触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた固体触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどの触媒系が挙げられる。
【0050】
水素化反応は、通常、有機溶媒中で実施する。有機溶媒は生成する水素化物の溶解性により適宜選択することができ、上述した重合溶媒に使用される有機溶媒を使用することができる。
水素化反応において、重合反応溶媒と同じ有機溶媒を使用する場合には、重合反応後の液にそのまま水素添加触媒を添加して水素化反応させることができる。
【0051】
水素化反応は、使用する水素化触媒系によっても適する条件の範囲が異なるが、水素化温度は、通常、−20℃〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃であり、水素圧力は、通常0.1〜50Kg/cm
2、好ましくは0.5〜40Kg/cm
2、より好ましくは1.0〜30Kg/cm
2である。水素化温度が−20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こる。また、水素圧力が0.1Kg/cm
2未満では水素化速度が遅くなり、50Kg/cm
2を超えると高耐圧反応装置が必要となる。
本発明の水素化物の製造方法によれば、水素化反応時間を0.1〜50時間とすると、共重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上を水素化することができる。
【0052】
本発明の開環共重合体水素化物は、式(1)で表される繰返し単位[A]と式(2)で表される繰返し単位[B]とを含む開環共重合体を水素化し、繰り返し単位[A]および[B]中の主鎖二重結合を単結合にしたものである。本発明の開環共重合体水素化物は、主鎖二重結合が単結合になった繰り返し単位[A]と[B]との構成モル比が5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20である。本発明の環状オレフィン系共重合体水素化物の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000〜1,000,000、好ましくは12,000〜500,000、より好ましくは、15,000〜400,000である。また、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比(Mw/Mn)の値は、通常7以下、好ましくは3以下、特に好ましくは1.5〜2.8である。Mw/Mnの値の小さい方が該共重合体水素化物を用いて得られる成形体の機械的強度などが優れている。
【0053】
以下に、実施例と比較例とを挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例において、部は重量基準である。
(1)分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。
(2)共重合体中の単量体組成比は、
1H−NMRスペクトルにより測定した。
(3)水素化率は、
1H−NMRスペクトルにより測定した。
【0054】
[実施例1]
攪拌機付きガラス反応器に、テトラヒドロフラン240部とテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(TCD)3.9部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(NBCH)36部を加えた。テトラヒドロフラン40部に溶解したビス(1,3−ジイソプロピル−イミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.028部を添加して、60℃で重合を行った。1時間後、重合反応液を多量のイソプロパノールに注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、40℃で40時間減圧乾燥した。開環共重合体の収量は12.5部で、分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=27,500、重量平均分子量(Mw)=147,500であった。共重合体中の単量体組成比はTCD/NBCH=25/75(モル/モル)であった。
【0055】
得られた開環共重合体5部をテトラヒドロフラン80部に溶解した後、攪拌機付きオートクレーブに加えた。次いでビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド0.5部およびエチルビニルエーテル1.8部をテトラヒドロフラン15部に溶解した水素化触媒溶液を添加し、水素圧8Kg/cm
2、100℃で4時間水素化反応を行った。水素化反応液を多量のイソプロパノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、40℃で40時間減圧乾燥し開環共重合体水素化物を得た。水素化物の分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=29,700、重量平均分子量(Mw)=188,100であった。
1H−NMRスペクトル測定により、カルボン酸無水物基が完全に保存されていることおよび主鎖中の炭素−炭素二重結合の99%以上が水素化されていることを確認した。
【0056】
[実施例2]
単量体の仕込み量をテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(TCD)2部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(NBCH)38部に代えた以外は、実施例1と同様に重合を行った。開環共重合体の収量は7.5部で、分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=17,900、重量平均分子量(Mw)=31,700であった。共重合体中の単量体組成比はTCD/NBCH=21/79(モル/モル)であった。
【0057】
次いで、実施例1と同様にして開環共重合体を水素化し、開環共重合体水素化物を得た。水素化物の分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=21,300、重量平均分子量(Mw)=37,800であった。
1H−NMRスペクトル測定により、カルボン酸無水物基が完全に保存されていることおよび主鎖中の炭素−炭素二重結合の99%以上が水素化されていることを確認した。
【0058】
[実施例3]
単量体の仕込み量をテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(TCD)28部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(NBCH)12部に代えた以外は、実施例1と同様に重合を行った。開環共重合体の収量は32.3部で、分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=100,200、重量平均分子量(Mw)=183,400であった。共重合体中の単量体組成比はTCD/NBCH=75/25(モル/モル)であった。
【0059】
次いで、実施例1と同様にして開環共重合体を水素化し、開環共重合体水素化物を得た。水素化物の分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=122,600、重量平均分子量(Mw)=192,300であった。
1H−NMRスペクトル測定により、カルボン酸無水物基が完全に保存されていることおよび主鎖中の炭素−炭素二重結合の99%以上が水素化されていることを確認した。
【0060】
[比較例1]
実施例3のビス(1,3−ジイソプロピル−イミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.028部に代えて、六塩化タングステン0.053部、テトラブチルスズ0.13部およびジブチルエーテル0.048部を用いた以外は、実施例3と同様にして重合反応を行った。しかし、共重合体は得られなかった。
【0061】
[比較例2]
比較例1の六塩化タングステン0.053部、テトラブチルスズ0.13部およびジブチルエーテル0.048部をMo(N−2,6−C
6H
3iPr
2)(CHCMe
3)(OtBu)20.5部に代えた以外は、比較例1と同様にして重合反応を行った。しかし、共重合体は得られなかった。なお、このMo系触媒は、特開平11−130843号公報に記載された極性基を有する環状オレフィンの開環重合が可能とされるものである。iPrはイソプロピル、Meはメチル、tBuはt−ブチルである。
【0062】
[比較例3]
比較例1のテトラブチルスズ0.13部をジエチルアルミニウムクロリド0.045部に代えた以外は、比較例1と同様にして重合反応を行った。得られた開環共重合体の収量は0.8部で、分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=1,200、重量平均分子量(Mw)=3,600であった。共重合体中の単量体組成比はTCD/NBCH=99/1(モル/モル)であった。
【0063】
[比較例4]
特公昭60−43365号公報の実施例1に記載の方法と全く同じ操作を行い、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物の開環メタセシス単独重合体を得た。すなわち、完全に窒素置換した500mLのオートクレーブに250mLの1,2−ジクロルエタン、150gのノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物(単量体として0.91モル)および1.0モル/Lのジエチルアルミニウムクロライド(有機金属化合物としての濃度)の1,2−ジクロルエタン溶液1.0mLを仕込み、室温にて均一状になるように攪拌した。次に、カルベン錯体として、0.1モル/Lのフェニルエトキシカルベンペンタカルボニルタングステン[(CO)
3WC(OC
2H
5)(C
6H
5)]のトルエン溶液3.0mLを加えた。反応系を75℃に昇温させた後、この温度において60分間攪拌しながら重合を行った。
【0064】
重合終了後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール約1.0重量%を含有する1,2−ジクロルエタンとメタノールとの混合溶液(容量にて約4:1)約50mLを加えて重合を停止し、得られた重合体を約1Lのメタノール液を用いて沈殿させ、この重合体を濾別した。その後、メタノールを使って重合体を十分に洗浄し、ついで約50℃において減圧下で約24時間乾燥を行った。
得られた重合体は20.2gであり、分子量はMn=23,000、Mw=39,000、Mw/Mn=1.70であった。
【0065】
[比較例5]
特開平11−130843号公報の実施例1に記載の方法と全く同じ操作を行い、テトラシクロドデセン−3,4−ジカルボン酸無水物開環メタセシス重合体の一部が加水分解された重合体を得た。すなわち、窒素下で磁気攪拌装置を備えた500mLのオートクレーブに、環状オレフィン系単量体としてテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−8−ドデセン−3,4−ジカルボン酸無水物(10.0g、43.4mmol)をテトラヒドロフラン(以下、THFという、350mL)に溶解し、攪拌を行った。これに開環メタセシス重合触媒としてMo(N−2,6−C
6H
3iPr
2)(CHCMe
3)(OtBu)
2(375mg、0.77mmol)を加え、室温で3時間反応させた。その後、ブチルアルデヒド(278mg、3.85mmol)を加え30分間攪拌し、反応を停止させた。
【0066】
この開環メタセシス重合体溶液にトリメチレンジアミン(570mg、7.70mmol)を加え、水素分圧0.49MPa、80℃で1時間攪拌した後、2Lのメタノール中に加えて開環メタセシス重合体を析出させた。その後、析出した重合体を濾別、メタノール洗浄し、真空乾燥して10.0gの開環メタセシス重合体粉末を得た。その後、5,000mLのオートクレーブにこの開環メタセシス重合体粉末10.0gをTHF(800mL)に溶解して、水素添加触媒として予め調製したジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(5.0mg、0.004mmol)とトリエチルアミン(2.1mg、0.020mmol)のTHF(80mL)溶液を加え、水素圧8.1MPa、165℃で5時間水素化反応を行った。温度を室温まで戻し、水素ガスを放出した。
【0067】
この開環メタセシス重合体水素化物溶液をメタノールに加えて開環メタセシス重合体の水素化物を沈殿させ、濾別分離後、真空乾燥を行うことにより、白色粉末を得た。水素化率は99%であった。該粉末を600mlのベンゼンと1mlのトリフルオロ酢酸の混合液に添加し、室温で30分攪拌し、次いでメタノールを添加して沈殿させ、次いでろ過、乾燥した。さらに該乾燥物をテトラヒドロフランに溶解させ、この溶液を多量のメタノールに添加し沈殿させ、ろ過し、真空乾燥して白色粉末状の開環メタセシス重合体水素化物を得た。
得られた重合体水素化物は8.0gであった。25モル%が加水分解されていた。分子量はMn=13,200、Mw=13,600、Mw/Mn=1.03であった。
【0068】
[実施例4]〜「実施例9]
テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(TCD)2部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(NBCH)38部の代わりに、表1に示す単量体を、表1に記載の量で使用した以外は実施例2と同様に重合および水素添加反応を行い、表1に示す分子量の共重合体および水素添加物を得た。
【0070】
[実施例10]
実施例1〜9および比較例3〜5で得られたノルボルネン系共重合体の水素添加物2重量部をクロロベンゼン6.5重量部にそれぞれ溶解した。各溶液を加圧ろ過し、ろ液を銅基板、シリコン基板それぞれにスピンコートした。これらの基板を60℃、2分間加熱した後、200℃で2時間窒素気流下にて加熱乾燥することにより、銅基板、シリコン基板上に(見かけ上)密着した膜厚30±1μmのノルボルネン系共重合体のフィルムを得た。さらに、スピンコート条件を適切に調整し、前述と同様な操作を行い、テフロン(登録商標)基板上に膜厚約5μmのフィルムを得た。
【0071】
[実施例11]
フィルムの吸水率、誘電率および誘電正接の測定
実施例10で得た各フィルムを丁寧に剥がし、剥がしたフィルムを吸水率、誘電率および誘電正接の測定に使用した。吸水率をJIS K7209に従って測定し、また、誘電率および誘電正接をJIS C2330に従って測定した。結果を表2にそれぞれ示す。
【0073】
[実施例12]
実施例10で得られた銅基板およびシリコン基板に密着した各フィルムの密着性試験を、JIS K5400に従って行った。結果をガラス転移温度とともに表3に示す。
【0075】
比較例のガラス転移温度が165℃〜175℃であるのに対し、実施例1〜9で得られたフィルムのそれは最も低いもので182℃、最も高いものでは210℃と高いガラス転移温度を示していた。
また、銅基板、シリコン基板のいずれとの密着性試験においても、実施例1〜9で得られたフィルムは良好な結果を示した。