(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
液晶化合物の特性である光学(屈折率)異方性(Δn)(以下、単に「Δn」ということがある)や誘電率異方性(Δε)(以下、単に「Δε」ということがある)を利用した液晶表示素子は、これまで多数作られており、時計を始め、電卓、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、携帯電話、プリンター、コンピューター、テレビ等に広く利用され、需要も年々高くなってきている。液晶化合物には固体相と液体相との中間に位置する固有の液晶相があり、その相形態はネマチック相、スメクチック相及びコレステリック相に大別されるが、これらのうち、表示素子用にはネマチック相が現在最も広く利用されている。また、液晶表示素子に応用されている方式のうち、表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型、IPS(インプレーンスイッチング)型、OCB(光学補償複屈折)型、ECB(電圧制御複屈折)型、VA(垂直配向)型、CSH(カラースーパーホメオトロピック)型、あるいはFLC(強誘電性液晶)等を挙げることができる。また、駆動方式としては、従来のスタティック駆動からマルチプレックス駆動が一般的になり、単純マトリックス方式、最近ではTFT(薄膜トランジスタ)やMIMにより駆動されるアクティブマトリックス(AM)方式が主流となっている。
【0003】
従来、AM方式の液晶ディスプレイとしては、誘電率異方性(Δε)が正の液晶材料を、基板面に水平に、かつ対向する基板間で90度捻れるように配向させたTN型の液晶表示装置が主流であった。しかしながら、このTN型は視野角が狭いという問題点を有しており、広視野角化に向けたさまざまな検討が行われてきた。
【0004】
このTN型に変わる方式として、VA型、中でも非特許文献1や非特許文献2に記載されているようなMVA型、EVA型が開発され、大幅に視野角特性を改善することに成功している。これらは、誘電率異方性が負の液晶材料を2つの基板間に垂直配向させ、かつ基板表面に設けた突起やスリットにより電圧印加時の液晶分子の傾斜方向を規制している方式である。また、最近では、特許文献1に記載されているように、光又は熱により重合するモノマーやオリゴマー等を含有する液晶材料を基板間に封止し、液晶層に印加する電圧を調整しながら重合性成分を重合して液晶の配向方向を決定する液晶表示装置等も提案されており、それらはPS(高分子安定化)型やPSA(高分子安定化配向)型の液晶ディスプレイと呼ばれている。PS(A)の技術は、MVA等の液晶表示装置における光透過率と応答速度の間にあるトレードオフを改善するため、PSA−VA型(又はPS−VA型)として開発が進められている。
【0005】
このように広視野角化に向けた検討が行われ、今日ではノートパソコン、モニター、さらにはテレビに代表されるような大型液晶表示装置への応用が実用化された。しかしながら、それらの液晶表示素子には電界に対する応答速度が遅いという難点があり、いまだに応答速度に関する要求は少なくない。特に動画表示に用いられるテレビ等には高速化が求められる。液晶表示素子で高精細かつ高品位の表示を行うには、応答速度の速い液晶を開発し、使用する必要がある。
【0006】
また、一定フレーム周期で駆動させる場合において、コントラストの良好な表示を得るには、液晶表示素子における電圧保持率(フレーム周期間での電圧保持率)が高いことが望ましい。特に特許文献1に記載されているように液晶材料に光又は熱等のエネルギーを加える場合、化合物の劣化に伴う電圧保持率の低下が懸念される。このような問題に対し、重合性化合物を重合させる際の光又は熱等のエネルギーを小さくすると化合物の劣化が抑えられるため、重合性化合物の重合反応性は高いものが望まれる。
【0007】
また、重合性化合物の重合反応性が低い場合、目的とする液晶表示素子の応答速度が速くなる効果が小さくなるため、また、未反応重合性化合物が後から重合することにより、電圧−透過率特性が変化してしまう恐れがあるため、重合性化合物の重合反応性は高いことが望ましい。
【0008】
特許文献1には、焼き付きを低減したVA液晶表示装置及びそれに用いる組成物が開示されており、特許文献2及び3には三官能(メタ)アクリロイル基を重合性基として導入した重合性化合物が開示されているが、反応性については記載されていない。特許文献4には、電圧保持率が高いVA液晶表示素子を与える配向膜が開示されているが、これらを用いても満足な応答速度を得ることはできなかった。特許文献5及び6には、VA液晶組成物が開示されているが、(メタ)アクリロイル基を重合性基として導入した重合性化合物を用いるという記載はない。特許文献7には、重合性化合物が開示されているが、負の誘電率異方性(Δε)を有する液晶組成物として用いることについては記載も示唆もない。また、三官能(メタ)アクリロイル基を重合性基として持つ化合物は溶解性が悪いという問題があった。
【0009】
PSA−VA型液晶ディスプレイでは、電圧印加した状態で重合性化合物を重合する。その重合体がMVA型における突起の役割を果たし、電圧印加時の分子傾斜方向を規制する。従って、分子配向領域の分割化を行うことにより、MVA型等と同様に視野角を広げることが可能である。また、MVA型では、その突起のため入射光に対する透明性が低下し、輝度・コントラストの改善が望まれていたが、PSA型では突起が不要となるため、それらの特性が向上し、加えて製造工程の簡略化が可能となる。PSA型では重合性化合物の固定化が重要であり、そのためには高い反応性が求められている。しかしながら、これまで知られている重合性化合物では、溶解性が低いために液晶組成物中に析出してしまったり、反応性が低いため、電圧保持率の低下や、目的とする表示素子の応答速度を速める効果が小さい等の問題があった。また、重合性基の反応性が高かったとしても、VTシフト(電圧に対する透過率挙動の変化)が起こり、液晶表示素子の信頼性を低下させるという問題があった。特許文献8〜10には、PS(A)の技術について開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、その好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の液晶組成物は、誘電率異方性(Δε)が負であるネマチック液晶組成物100質量部に対して、上記一般式(I)で表される重合性化合物を0.01〜3質量部含有することが好ましく、該ネマチック液晶組成物100質量部に対して、該重合性化合物を0.05〜2質量部含有することがさらに好ましい。該重合性化合物が0.01質量部未満になると応答速度が遅くなるおそれがあり、3質量部を超えると溶解性が悪くなるおそれがある。さらに、該ネマチック液晶組成物100質量部に対して、該重合性化合物が0.05〜1質量部であると、電圧保持率が特に良好であるためより好ましい。
【0019】
上記一般式(I)中のC
1、C
2及びC
3で表される環の水素原子を置換してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられ、炭素原子数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシが挙げられ、炭素原子数1〜3のアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニルが挙げられ、上記一般式(I)中のC
1、C
2及びC
3で表される環の水素原子を置換してもよいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
本発明の効果をより確実に奏させる上で、環C
1〜環C
4は、環C
1がベンゼン−1,2,4−トリイル基であり、環C
2、C
3及びC
4は、それぞれ独立に、上記置換基で置換されていてもよい1,4−フェニレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基であることが好ましい。
【0020】
上記一般式(I)中のL
1及びL
2で表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ブタン−1,3−ジイル、2−メチルプロパン−1,3−ジイル、2−メチルブタン−1,3−ジイル、ペンタン−2,4−ジイル、ペンタン−1,4−ジイル、3−メチルブタン−1,4−ジイル、2−メチルペンタン−1,4−ジイル、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(I)中のZ
3、Z
4及びZ
5で表される直接結合、エステル結合、エーテル結合、分岐を有してもよく不飽和結合を有していてもよい炭素原子数2〜8のアルキレン基、又はこれらの組み合わせからなる連結基としては、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−(CH
2)
a−、−(CH
2)
a−O−、−O−(CH
2)
a−、−O−(CH
2)
a−O−、−(CH
2)
a−O−CO−、−CO−O−(CH
2)
a−、−(CH
2)
a−CO−O−、−O−CO−(CH
2)
a−、−(CH
2)
a−O−CO−O−、−O−CO−O−(CH
2)
a−、−O−(CH
2)
a−O−CO−、−CO−O−(CH
2)
a−O−、−O−(CH
2)
a−CO−O−、−O−CO−(CH
2)
a−O−、−O−(CH
2)
a−O−CO−O−、−O−CO−O−(CH
2)
a−O−、−(CH
2CH
2O)
b−、又は−(OCH
2CH
2)
b−等が挙げられる。尚、前記aは2〜8の整数を表し、前記bは1〜3の整数を表す。
【0022】
本発明の液晶組成物において、上記重合性化合物としては、上記一般式(I)において、Z
1及びZ
2がZ
6と違う基であるかL
1とL
2が違う基であるかのどちらかである重合性化合物;Z
1、Z
2及びZ
6のうちの一又は二が直接結合の重合性化合物;p+q+rが1又は2の重合性化合物;Z
3、Z
4及びZ
5の全てがエステル結合である重合性化合物;L
1又はL
2が炭素原子数2〜8のアルキレン基である重合性化合物;環C
1、環C
2、環C
3及び環C
4の1つ以上の水素原子が、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、炭素原子数1〜3のアシル基又はハロゲン原子で置換されている重合性化合物は、上記ネマチック液晶組成物への溶解性が良いため好ましい。これらのなかでも、Z
1及びZ
2がZ
6と違う基であるかL
1とL
2が違う基であるかのどちらかである重合性化合物;Z
3、Z
4及びZ
5の全てがエステル結合である重合性化合物が特に好ましい。
また、上記一般式(I)において、p+q+rが1又は2の重合性化合物;M
1、M
2及びM
3が全てメチル基である重合性化合物を用いると、信頼性が特に優れるため、より好ましい。
【0023】
上記一般式(I)で表される重合性化合物の具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。
【0030】
上記一般式(I)で表される重合性化合物は、その合成方法には特に制限はなく、従来公知の反応により合成することができる。
【0031】
上記重合性化合物を含有する本発明の液晶組成物には、重合性官能基を有する化合物として、上記一般式(I)で表される三官能化合物に加えて、二官能化合物を用いることが出来る。該二官能化合物としては、通常一般に使用されるものを用いることができ、その具体例としては、特に制限するものではないが、特開2005−15473号公報の段落〔0172〕〜〔0314〕に挙げられている化合物、又は、以下に示す化合物等が挙げられる。尚、該二官能化合物は、上記一般式(I)で表される三官能化合物に対して0〜95質量%含有させることができ、好ましくは0〜70質量%であり、さらに好ましくは0〜50質量%である。ただし、95質量%以上含有させると重合性化合物の反応性が低下するため好ましくない。
【0041】
また、本発明に用いられる誘電率異方性(Δε)が負である上記ネマチック液晶組成物としては、公知の液晶化合物等を適宜用いて誘電率異方性(Δε)が負となるように調製したものを用いることができるが、下記一般式(II)で表される液晶化合物を含有するもの、とりわけ30〜100質量%含有するものが、液晶表示特性が特に優れるため望ましい。下記一般式(II)で表される液晶化合物は、一種のみで用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
【化17】
(式中、環B
1、B
2、B
3及びB
4は、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は2,5−インダニレン環を表し、これらの環の水素原子は、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、塩素原子又はフッ素原子で置換されていてもよく、これらの環中の−CH=は、−N=で置換されていてもよく、これらの環中の−CH
2−は、−S−、−N=又は−O−で置換されていてもよく、環B
3及びB
4の少なくとも一つの環の二つ以上の水素原子が塩素原子、フッ素原子、−CF
3、−OCF
3又は−OCF
2Hで置換されており、これらの置換される基は1種でも2種以上でもよく、
Y
1、Y
2及びY
3は、それぞれ独立に、直接結合、−CH
2−CH
2−、−CF
2−CF
2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH
2−O−、−O−CH
2−、−CF
2−O−、−O−CF
2−、−CH
2−S−、−S−CH
2−、−CF
2−S−、−S−CF
2−、−O−CF
2−C
2H
4−、−C
2H
4−CF
2−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CH
2−CH
2−CO−O−、−O−CO−CH
2−CH
2−又は−C≡C−を表し、
R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数2〜6のアルケニル基を表し、
j、k及びmは、それぞれ独立に0又は1であり、かつj+k+m≧1であり、nは0又は1である。)
【0043】
上記一般式(II)中のB
1、B
2、B
3及びB
4で表される環の水素原子を置換してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基及び炭素原子数1〜3のアルコキシ基としては、上記一般式(I)中のC
1、C
2、C
3及びC
4で表される環の水素原子を置換してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基及び炭素原子数1〜3のアルコキシ基で例示したものが挙げられる。
【0044】
上記一般式(II)中のR
3及びR
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル等が挙げられ、上記一般式(II)中のR
3及びR
4で表される炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル等が挙げられる。
【0045】
本発明において、上記一般式(II)で表される液晶化合物の中でも、下記一般式(III)で表される液晶化合物を含有する上記ネマチック液晶組成物を用いると、液晶表示特性が特に優れるため好ましい。
【0046】
【化18】
(式中、環B
1、B
2、Y
1、Y
2、Y
3、R
3、R
4、j、k、m及びnは上記一般式(II)と同じであり、E
1、E
2、E
3及びE
4は、水素原子、塩素原子、フッ素原子、−CF
3、−OCF
3又は−OCF
2Hを表し、E
1とE
2、E
3とE
4の組み合わせのうち、少なくとも一組が水素原子以外からなる組み合わせである。)
【0047】
さらに、本発明において、上記一般式(III)におけるE
1、E
2、E
3及びE
4が水素原子又はフッ素原子である液晶化合物(即ち、E
1とE
2、E
3とE
4の組み合わせのうち、一方の組み合わせはフッ素原子のみからなり、他方の組み合わせは水素原子のみからなるか、又は両方の組み合わせがフッ素原子のみからなる液晶化合物)を含有する上記ネマチック液晶組成物を用いると、応答速度等の表示特性及び信頼性がとりわけ優れるため好ましい。また、本発明において、上記一般式(III)におけるE
3及びE
4がフッ素原子であり、Y
2が直接結合であり、kが1であり、mが0である液晶化合物を含有する上記ネマチック液晶組成物を用いると、応答速度等の表示特性及び信頼性がさらに一層優れるため、より好ましい。
【0048】
上記一般式(II)で表される化合物の具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。尚、以下に示す化学式中、R
13は、炭素原子数2〜5のアルキル基を表し、R
14は、炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。
【0053】
これらの中でも、以下の化合物が好ましく用いられる。尚、以下に示す化合物は、一般式(III)で表される液晶化合物に包含されるものである。
【0054】
【化23】
(式中、R
23は、炭素原子数2〜5のアルキル基を表し、R
24は、炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)
【0055】
本発明に用いられる誘電率異方性(Δε)が負である上記ネマチック液晶組成物として、さらに下記一般式(IV)で表される液晶化合物を含有するものを用いると、液晶表示特性がさらに一層優れるため好ましい。上記ネマチック液晶組成物におけるその含有量は好ましくは5〜50質量%であり、さらに好ましくは10〜50質量%である。5質量%未満であると使用効果が乏しく、50質量%を超えて使用すると電圧保持率が低下しやすい。
【0056】
【化24】
(式中、環A
1、A
2及びA
3は、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、これらの環の水素原子は、炭素原子数1〜3のアルキル基又は炭素原子数1〜3のアルコキシ基で置換されていてもよく、これらの環中の−CH=は、−N=で置換されていてもよく、これらの環中の−CH
2−は、−S−、−N=又は−O−で置換されていてもよく、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、直接結合、−CH
2−CH
2−、−CF
2−CF
2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH
2−O−、−O−CH
2−、−CF
2−O−、−O−CF
2−又は−C≡C−を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数2〜6のアルケニル基を表し、
g及びhは、それぞれ独立に、0又は1である。)
【0057】
上記一般式(IV)中のA
1、A
2及びA
3で表される環の水素原子を置換してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基及び炭素原子数1〜3のアルコキシ基としては、上記一般式(I)中のC
1、C
2、C
3及びC
4で表される環の水素原子を置換してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基及び炭素原子数1〜3のアルコキシ基で例示したものが挙げられる。
【0058】
上記一般式(IV)中のR
1及びR
2で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、上記一般式(II)中のR
3及びR
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基として例示したものが挙げられる。
【0059】
上記一般式(IV)で表される化合物の具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。尚、以下に示す化学式中、R
11及びR
12は、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数2〜6のアルケニル基を表す。
【0062】
これらの中でも、以下の化合物が好ましく用いられる。尚、以下に示す化学式中、R
21及びR
22は、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜6のアルケニル基を表す。
【0065】
本発明の液晶組成物に用いる上記ネマチック液晶組成物には、誘電率異方性(Δε)が負となる範囲で、その他にも、通常一般に使用される液晶化合物を使用することができ、該液晶化合物の具体例としては、特に制限するものではないが、例えば、下記の各化合物が挙げられる。尚、以下の化学式中、W
1は、水素原子、又は分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルカノイルオキシ基若しくはアルコキシカルボニル基を表し、これらはハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、W
2は、シアノ基、ハロゲン原子、又はW
1で表される基を示し、W
3、W
4及びW
5は、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を示す。ただし、前記一般式(II)及び(IV)に該当する化合物を除く。
【0068】
また、本発明の液晶組成物には、さらに光重合開始剤を添加して使用することもできる。この光重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4’−イソプロピル)ベンゾイルプロパン等のα−ヒドロキシアセトフェノン類;4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のクロロアセトフェノン類;1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4’−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4’−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2’−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のα−アミノアセトフェノン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα−ジカルボニル類;p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン等のトリアジン類;特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特開2005−97141号公報、特表2006−516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、WO2006/018973号公報に記載の化合物等のα−アシルオキシムエステル類;過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7−ビス(9’−アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアセトフェノン類及びα−アミノアセトフェノン類が好ましい。
【0069】
また、上記光重合開始剤と増感剤との組合せも好ましく使用することができる。該増感剤としては、例えば、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルプレン等が挙げられる。上記光重合開始剤及び/又は上記増感剤を添加する場合、それらの添加量は、合計で、上記一般式(I)で表される重合性化合物100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、0.1〜3質量部の範囲内がより好ましい。
【0070】
また、本発明の液晶組成物には、必要に応じて添加物をさらに含有させてもよい。液晶組成物の特性を調整するための添加物としては、例えば、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、無機物及び有機物等の微粒子化物、並びにポリマー等の機能性化合物が挙げられる。
【0071】
上記保存安定剤は、液晶組成物の保存安定性を向上させる効果を付与することができる。使用できる保存安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、2−ナフチルアミン類、2−ヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。これらを添加する場合は、上記重合性化合物100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。
【0072】
上記酸化防止剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルホスファイト、トリアルキルホスファイト等が挙げられる。
【0073】
上記紫外線吸収剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物又はニッケル錯塩系化合物等によって紫外線吸収能をもたせたものを用いることができる。
【0074】
本発明の液晶組成物に必要に応じて含有させる上記添加物は、特に制限無く、作製される重合体の特性を損なわない範囲で適宜使用することができるが、好ましくは、誘電率異方性(Δε)が負である上記ネマチック液晶組成物と上記一般式(I)で表される重合性化合物との合計量100質量部に対して、全任意成分の合計で好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下となるようにする。
【0075】
本発明の液晶組成物は、光、電磁波又は熱を用いる公知の方法を適用して上記重合性化合物を重合させて用いられる。上記光の好ましい種類は、紫外線、可視光線、赤外線等である。電子線、X線等の電磁波を用いてもよい。通常は、紫外線又は可視光線が好ましい。好ましい波長の範囲は150〜500nmである。さらに好ましい範囲は250〜450nmであり、最も好ましい範囲は300〜400nmである。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等が挙げられるが、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプが好ましく使用することができる。光源からの光はそのまま液晶組成物に照射してもよく、フィルターによって選択した特定の波長(又は特定の波長領域)を液晶組成物に照射してもよい。好ましい照射エネルギー密度は、10〜50000mJ/cm
2であり、さらに好ましい範囲は10〜20000mJ/cm
2である。好ましい照度は0.1〜5000mW/cm
2であり、さらに好ましい照度は1〜2000mW/cm
2である。露光量が少ないと重合が不十分となりやすく、露光量が多いと電圧保持率(VHR)が低下する恐れがある。
【0076】
次に、本発明の電気光学表示素子について説明する。本発明の電気光学表示素子は、本発明の液晶組成物を、少なくとも一方の基板上に、液晶分子に電圧を印加するための電極を備えた一対の基板で挟持した後、紫外線等のエネルギー線照射により、上記一般式(I)で表される重合性化合物を重合して作製されたものである。
【0077】
上記基板としては、特に制限はなく、従来から電気光学表示素子に用いられているものを用いることができ、目的の駆動方式及び表示方式に適したものを用いればよい。上記エネルギー線としては、紫外線のほかに、上述の光、電磁波又は熱によるものが挙げられる。
【0078】
本発明の電気光学表示素子は、AM方式、パッシブマトリクス(PM)方式のいずれで駆動をしてもよい。AM方式又はPM方式で駆動する液晶表示素子は、反射型、透過型、半透過型、いずれの液晶ディスプレイ等にも適用ができる。
【0079】
また、本発明の電気光学表示素子は、導電剤を添加した液晶組成物を用いたDS(dynamic scattering)モード素子や、液晶組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、液晶組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子としても使用できる。
【0080】
本発明の液晶組成物は上述のような特性を有するので、中でも負の誘電率異方性を利用した表示モード、例えば、VAモード、IPSモード等で表示するAM方式の液晶表示素子に好適に使用でき、特に、VAモードで表示するAM方式の液晶表示素子に好適に使用できる。
【0081】
VAモード等で表示する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して垂直である。一方、IPSモード等で表示する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して平行である。VAモードで表示する液晶表示素子の構造は、例えば、K. Ohmuro, S. Kataoka, T. Sasaki and Y. Koike, SID ’97 Digest of Technical Papers, 28, 845 (1997)に報告されており、IPSモードで表示する液晶表示素子の構造は、例えば、国際公開第91/10936号(ファミリー:US5576867)に報告されている。
【0082】
本発明の液晶組成物を用いてなる電気光学表示素子は、時計、電卓、測定器、自動車用計器、複写機、カメラ、OA機器、PDA、ノートパソコン、モニター、テレビ、携帯電話、調光窓、光シャッタ、偏光交換素子等の用途に使用することができるが、特にその特性から、大型なPDA、ノートパソコン、モニター、テレビ用途に好適に使用される。
【実施例】
【0083】
以下、実施例等を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等により限定されるものではない。
【0084】
下記参考例においては、Δεが負である本発明に係るネマチック液晶組成物を作製し、下記合成例においては、本発明に係る重合性化合物及び比較用重合性化合物を合成した。
下記実施例1−1〜1−6及び比較例1−1では、参考例で得られたネマチック液晶組成物、及び合成例で得られた本発明に係る重合性化合物又は比較用重合性化合物を用いて液晶組成物を作製し、該液晶組成物の各種特性を比較評価した。尚、比較例1−2では、重合性化合物を用いず、参考例で得られたネマチック液晶組成物そのものの特性を評価した。
下記実施例2−1〜2−5及び比較例2−1〜2−3では、本発明に係る重合性化合物又は比較重合性化合物の反応性を比較評価した。
下記実施例3−1〜3−2及び比較例3−1では、本発明に係る重合性化合物又は比較用重合性化合物を、本発明に係るネマチック液晶組成物に配合して液晶組成物を作製し、該液晶組成物を用いて電気光学表示素子を作製し、得られた電気光学表示素子の配向安定性(VTシフト)を比較評価した。
【0085】
[参考例]Δεが負であるネマチック液晶組成物の作製
液晶化合物No.1〜No.10を下記の配合比(合計100質量部)に従って混合して、液晶組成物No.1を作成した。なお、液晶化合物No.1〜No.4は上記一般式(IV)に該当する化合物であり、液晶化合物No.5〜No.10は上記一般式(II)に該当する化合物である。
【0086】
【化31】
【0087】
【化32】
【0088】
[合成例]重合性化合物の合成
下記反応式1に従い、以下の手順により、重合性化合物No.1を合成した。
【0089】
【化33】
【0090】
窒素雰囲気下、メタンスルホニルクロリド0.35g(3.07mmol)とテトラヒドロフラン(THF)2gを混合し、−20℃まで冷却したところへ、原料化合物A1.02g(2.69mmol)及びトリエチルアミン(TEA)0.31g(3.07mmol)をTHF2gに溶解したものを滴下した。1時間撹拌後、−20℃にてジメチルアミノピリジン(DMAP)3mg(0.03mmol)、TEA0.31g(3.07mmol)を加え、次いで、原料化合物B1.00g(2.56mmol)をTHF4gに溶解したものを滴下し、室温にて2時間反応させた。反応終了後、0.5N−塩酸及び酢酸エチルを加え油水分離後、有機層を水洗した。得られた有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥後、濾別した。次いで、有機層の脱溶媒を行い、得られた生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=20/1)及び晶析(トルエン/メタノール=2/7)にて精製し、目的物である重合性化合物No.1を1.1g(収率57.3%)得た。なお、目的物であることは、NMR及びIRによる分析で確認した。分析結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0091】
また、以上の重合性化合物No.1についての手法又は公知の手法に準拠して、重合性化合物No.2、重合性化合物No.5、重合性化合物No.9、重合性化合物No.15及び重合性化合物No.16、並びに以下に示す比較化合物No.1〜No.4を合成した。本発明に係る重合性化合物についての分析結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
得られた重合性化合物No.1について、示差走査熱量分析装置(DSC7;パーキンエルマー社製)にて、窒素雰囲気下(50ml/min)、5℃/minの昇温速度で25℃から180℃まで測定して熱転移挙動を確認した。以下にその結果を示す。
【0095】
【化34】
【0096】
得られた重合性化合物No.2について、示差走査熱量分析装置(DSC7;パーキンエルマー社製)にて、窒素雰囲気下(50ml/min)、5℃/minの昇温速度で25℃から180℃まで測定して熱転移挙動を確認した。以下にその結果を示す。
【0097】
【化35】
【0098】
得られた重合性化合物No.5について、示差走査熱量分析装置(DSC7;パーキンエルマー社製)にて、窒素雰囲気下(50ml/min)、5℃/minの昇温速度で25℃から180℃まで測定して熱転移挙動を確認した。以下にその結果を示す。
【0099】
【化36】
【0100】
得られた重合性化合物No.9について、示差走査熱量分析装置(DSC7;パーキンエルマー社製)にて、窒素雰囲気下(50ml/min)、5℃/minの昇温速度で25℃から180℃まで測定して熱転移挙動を確認した。以下にその結果を示す。
【0101】
【化37】
【0102】
得られた重合性化合物No.15について、示差走査熱量分析装置(DSC7;パーキンエルマー社製)にて、窒素雰囲気下(50ml/min)、5℃/minの昇温速度で25℃から180℃まで測定して熱転移挙動を確認した。以下にその結果を示す。
【0103】
【化38】
【0104】
得られた重合性化合物No.16について、示差走査熱量分析装置(DSC7;パーキンエルマー社製)にて、窒素雰囲気下(50ml/min)、5℃/minの昇温速度で25℃から180℃まで測定して熱転移挙動を確認した。以下にその結果を示す。
【0105】
【化38-1】
【0106】
【化39】
【0107】
前記参考例で得られた液晶組成物No.1、前記合成例で得られた重合性化合物No.1、No.2、No.5、No.9、No.15、No.16及び比較化合物No.1〜No.4を用いて、以下の実施例及び比較例を行なった。
【0108】
[実施例1−1〜1−6及び比較例1−1]重合性化合物を含有する液晶組成物の調製
液晶組成物No.1の100質量部に対し、表3に示す重合性化合物をそれぞれ0.5質量部加え、重合性化合物を含有する液晶組成物を得た。得られた重合性化合物を含有する液晶組成物の溶解性、配向性及び電圧保持率(VHR)について、それぞれ以下の方法で評価・測定した。
【0109】
[比較例1−2]
重合性化合物を含まない液晶組成物として液晶組成物No.1の配向性及び電圧保持率をそれぞれ以下の方法で評価・測定した。
【0110】
<溶解性>
得られた液晶組成物について、重合性化合物溶解後の析出物の有無を評価した。1日後に析出物の無いものを○、1日後に析出物が確認できたものを△、溶解後すぐに析出物が確認できたものを×として評価した。
【0111】
<配向性>
得られた液晶組成物を液晶評価用テストセル(セル厚5μm、電極面積8mm×8mm、配向膜JALS2096)に注入後、注入口を封止剤にて封止した。その後、高圧水銀ランプ(1000mJ/cm
2)で光を照射し、サンプルを得た。得られたサンプルについて、偏光顕微観察(クロスニコル下にて電圧OFF時の配向状態)を目視で行い、配向性を確認し、配向が良好だったものを○、配向が乱れていたものを×として評価した。
【0112】
<VHR(光照射後)>
上記配向性の評価において得られたサンプルに対して、以下の装置及び条件によりVHRの測定を行った。
・装置:東陽テクニカ社製VHR−A1
・条件:パルス電圧幅60μs、フレーム周期16.7ms、波高±5V、測定温度25℃
【0113】
以上の溶解性、配向性及び電圧保持率の測定結果を〔表3〕に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
〔表3〕の結果から明らかであるように、三官能(メタ)アクリロイル基を重合性基に有する比較化合物No.1は、液晶組成物に対する溶解性が悪いが、それに比較して、上記一般式(I)で表される重合性化合物は、液晶組成物に対する溶解性が良好である。また、上記一般式(I)で表される重合性化合物を含有する液晶組成物は、配向性及び電圧保持率も良好であった。尚、比較化合物No.1は溶解しなかったため、配向性及び電圧保持率の測定は出来なかった。
【0116】
[実施例2−1]重合性化合物の反応性
<光照射前のサンプル>
実施例1−1で得られた重合性化合物を含有する液晶組成物をアセトニトリルに溶解し、サンプルとした。
<光照射後のサンプル>
実施例1−1で配向性評価に用いた、高圧水銀ランプ(1000mJ/cm
2)で光を照射した液晶評価用テストセルを解体し、重合性液晶組成物をアセトニトリルに抽出し、サンプルとした。
得られたサンプルを液体クロマトグラフィーにて分析し、光照射前に比較した場合の光照射後における重合性化合物の残存率を評価した。その結果を〔表4〕に示す。
【0117】
[実施例2−2〜2−5及び比較例2−1〜2−3]
実施例2−1で用いた液晶組成物を下記[表4]に示す重合性化合物を含有する液晶組成物に替えた以外は実施例2−1と同様の手法で、重合性化合物の残存率を評価した。その結果を〔表4〕に示す。
【0118】
【表4】
【0119】
〔表4〕の結果から明らかであるように、比較化合物では光照射後に該化合物が多く残っているのに対し、本発明に係る重合性化合物では光照射後の残量が少なく、反応性が高い。
【0120】
[実施例3−1〜3−2及び比較例3−1]配向安定性
液晶組成物No.1の100質量部に対し、〔表5〕に示す重合性化合物をそれぞれ0.2質量部加え、加温して溶解を確認して液晶組成物とした。室温まで冷却した該液晶組成物を液晶評価用テストセル(セル厚5μm、電極面積8mm×8mm、配向膜JALS−2096(JSR社製)、アンチパラレルラビング)に注入し、電圧印加しない状態で高圧水銀ランプ(照度40mW/cm
2、光量20J/cm
2)にてエネルギー線照射した。テストセルをエージングした後、電圧−透過率特性(VT特性)を測定して、その測定値を初期値とした。テストセルに4時間及び10時間連続印加した後、VT特性を測定して初期値との差(VT変化量)を調べた。VT変化量は、測定したVT特性の透過率が10%、50%、90%の電圧(V10、V50、V90)における変化量を平均して求めた。結果を〔表5〕に示す。
【0121】
【表5】
【0122】
表5の結果から、上記一般式(I)で表される重合性化合物を含有する本発明の液晶組成物を用いた液晶表示素子においては、該重合性化合物から形成された重合物によって固定化された配向が、安定していることが明らかである。
【0123】
以上の実施例及び比較例より、本発明の液晶組成物に用いられる重合性化合物は溶解性が良好であるため、液晶組成物中に高濃度で用いることが出来、また、析出しにくいため保存安定性にも優れることが分かる。また、重合反応性が高いことより、該重合性化合物を重合する際、紫外線等のエネルギー線照射量が小さくて済むため、液晶組成物の劣化を抑えられ、電圧保持率を高く維持できる。更に、本発明の液晶組成物を用いた液晶表示素子は、連続印加電圧に対してVT変化量が小さいため、素子の信頼性が高いことが明白である。