(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出面内における検出器エレメント(16.1〜16.8;360.1〜360.6)の幾何学的な重心が、1つの半径(R)の1つの円上に位置することを特徴とする請求項4に記載の光学式位置測定装置。
検出面内における検出器エレメント(160.1〜160.8;260.1〜260.6)の幾何学的な重心が、相異なる2つの半径(R1,R2)の2つの円上に位置することを特徴とする請求項6に記載の光学式位置測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高い効率と測定尺の汚れに対する出来る限り高い耐性を持った形で走査面内の細かい縞模様の確実な検出を可能とする光学式位置測定装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を持つ位置測定装置によって解決される。
【0007】
本発明の位置測定装置の有利な実施構成は、従属請求項に記載された措置から明らかとなる。
【0008】
ここで、本発明では、一方において、位置測定装置の走査光路内に走査格子の特別な実施形態を配備する。即ち、全ての増分信号を生成する走査格子は、測定方向に対して配置された、走査格子周期TP
AG=TP
S の周期的な複数のブロックから構成される。各ブロックは、専ら測定方向に対して配置された、幅b
x =TP
AG/nのn個の格子区間を有する。各格子区間は、その格子区間を通過して伝播して行く光束の複数の空間方向への偏向を生じさせる周期的な格子構造を備えている。1つのブロック内の格子区間によって生じる空間方向は異なる。他方において、検出面内には、それらの相異なる空間方向に対して検出器エレメントを配置するものと規定する。検出面は、走査格子から出て来た光束が空間的に完全に分離されている範囲内に有る。
【0009】
この場合、格子区間が専ら測定方向に対して配置されているために、従来技術により周知のシステムと比べて汚れ易さが低減される結果となることが、特に有利であることが分かっている。更に、生成される増分信号の変調度は、格子区間の所定の幅のために向上する。更に、それぞれ複数の空間方向に偏向された光束を使用するために、信号生成時の高い効率が保証されることを指摘しておきたい。
【0010】
ここでは、本発明による措置によって、光学式位置測定装置の走査面内における非常に細かい縞模様を高い効率で確実に走査することも可能となる。
【0011】
本発明による実現可能な構成では、本発明による光学式位置測定装置は、測定方向に対して相対的に移動する2つの物体に関するずれに応じた、n個(n>1)の位相のずれた増分信号を生成するために、測定尺と、走査格子が走査面内に配置されるとともに、走査格子の後に複数の検出器エレメントが配置された走査ユニットとから構成され、光源から放射された光束と走査光路内の測定尺及び任意選択による更に別の格子との相互作用によって、走査面内に縞模様周期TP
S の縞模様が生じる。この全ての増分信号を生成するための走査格子は、測定方向に対して配置された走査格子周期TP
AG=TP
S の周期的な複数のブロックから構成され、各ブロックは、専ら測定方向に対して配置された、幅b
x =TP
AG/nのn個の格子区間を有し、各格子区間は、その格子区間を通過して伝播して行く光束を複数の空間方向に偏向させる周期的な格子構造を備えており、1つのブロック内の格子区間によって生じる空間方向は異なる。検出面内には、それらの相異なる空間方向に対して、検出器エレメントが配置されており、検出面は、走査格子から出て来た光束が空間的に完全に分離されている範囲内に有る。
【0012】
有利には、格子構造は、相異なる光学特性が交番する、格子区間周期TP
G で周期的に配置された構造エレメントから構成され、それらの構造エレメントは、それぞれ1つの格子区間内において測定方向と垂直な軸に対して同じ回転角で配置されている。
【0013】
ここで、1つのブロック内に4個(n=4)の相異なる格子区間が有る場合、その格子区間の構造エレメントに対して、相異なる2つ又は4つの回転角を選定することができる。
【0014】
即ち、
・相異なる2つの回転角を規定した場合には、これらの回転角をα
1 =0°、α
2 =0°、α
3 =90°、α
4 =90°として選定するか、或いは
・相異なる4つの回転角を規定した場合には、これらの回転角をα
1 =0°、α
2 =30°、α
3 =90°、α
4 =−30°として選定する、
ことが可能である。
【0015】
それに代わって、1つのブロック内に相異なる3個(n=3)の格子区間が有る場合、その格子区間の構造エレメントに対して、2つ又は3つの回転角を選定することができる。
【0016】
即ち、その場合には、
・相異なる2つの回転角を規定した場合には、これらの回転角をα
1 =90°、α
2 =90°、α
3 =0°として選定するか、或いは
・相異なる3つの回転角を規定した場合には、これらの回転角をα
1 =90°、α
2 =20°、α
3 =−20°として選定する、
ことが可能である。
【0017】
格子構造は、相異なる構造エレメントがそれぞれ入射して来る光束に対して位相のずれを生じさせる相異なる作用を及ぼす位相格子として構成することができる。
【0018】
それに代わって、格子構造は、相異なる構造エレメントがそれぞれそこに入射して来る光束に対して相異なる透過率を有する振幅格子として構成することもできる。
【0019】
n=4又はn=3を選定することが可能である。
【0020】
有利には、検出器エレメントは、四角形に構成されており、その測定方向の長さが、測定方向と垂直な方向の長さよりも大きい。
【0021】
相異なる格子区間は、同じ格子区間周期を持つことができる。
【0022】
その場合、検出面内における検出器エレメントの幾何学的な重心を半径Rの円上に配置することが可能である。
【0023】
しかし、相異なる格子区間が相異なる2つの格子区間周期を持つことも可能である。
【0024】
その場合、検出面内における検出器エレメントの幾何学的な重心を相異なる半径の2つの円上に配置することが可能である。
【0025】
本発明による光学式位置測定装置の実現可能な構成では、走査ユニットは、光源から放射された光束に関して、
一回目に測定尺に当たり、そこで走査ユニットの方に反射される、相異なる2つの回折次数に対応する2つの部分光束への分割が行われ、
これらの反射された2つの部分光束が、走査ユニットにおいて、逆反射体エレメントによって、測定尺の方向に反射され、そのため、部分光束は、それぞれ格子を二回通り抜けることとなり、
二回目に測定尺に当たった部分光束が、走査ユニットの方向への新たな回折と反射を受けて、
走査ユニットにおいて、反射されて来た少なくとも一対の部分光束が、光軸に対して対称的な角度で走査格子上の同じ地点に当たる、
ように構成される。
【0026】
走査格子とその後に配置された検出器エレメントの間には、集束レンズを配置することができ、その集束レンズによって、相異なる空間方向に偏向された部分光束を検出器エレメント上に集束することが行われる。
【0027】
本発明による位置測定装置の更なる利点及び詳細は、以下における添付図面による実施例の記述から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下において、
図1a〜1dにもとづき、本発明による位置測定装置、特に、そこで用いられる走査格子の第一実施構成を説明する。ここで、
図1aと1bは、それぞれx−z面内における部分走査光路の側面図を模式的に図示している。
図1aでは、光源11から部分光束が反射器エレメント15.1,15.2上に当たるまでの走査光路が図示されている。
図1bは、部分光束が反射器エレメント15.1,15.2に当たってから検出器エレメント16.1〜16.5までの走査光路を図示している。
図1cと1dは、この実施例の走査格子17と検出面の部分図を図示している。
【0030】
この実施例において、本発明による位置測定装置は、反射式測定尺として構成された測定尺20と、それに対して相対的に少なくとも1つの測定方向xに移動する走査ユニット10とを有する。物体は、周知の手法により反射式測定尺20及び走査ユニット10と連結されており、それらの相対位置を位置測定装置により求める。物体は、例えば、相対位置を精密に検出しなければならない機械部分とすることができる。本発明による位置測定装置を用いて生成された増分信号又は位置データは、例えば、図示されていない、機械を制御するための後続の電子機器又は評価ユニットによって更に処理される。
【0031】
この実施例では、直線状に延びる測定尺20を用いて直線的な動きを検出するための位置測定装置が図示されており、当然のことながら、本発明による考察にもとづき、回転式位置測定装置を実現することも可能である。
【0032】
以下では、本発明による位置測定装置の第一実施構成の走査光路を
図1aと1bにもとづき説明する。
【0033】
図示されている例では、光源11、例えば、レーザー光源から放射された光束は、先ずはコリメータレンズ12によってコリメートされる、即ち、平行な光束に変換される。次に、コリメートされた光束は、偏向されること無く、走査板13の支持基板13.1を通り抜ける。支持基板13.1は、平行平面のガラス板として構成されている。その上側と下側には、相異なる光学エレメントが配置されており、その走査光路内での具体的な機能は、以下で詳しく説明する。
【0034】
コリメートされた光束は、走査板13を通過した後、一回目として測定尺20上に、即ち、そこの測定方向xに延びる測定目盛22上に当たる。この反射式測定尺の場合、測定目盛22は、光学的な反射特性が相異なる構造エレメント又は部分領域22.1,22.2の測定方向xに対して周期的な配列から構成される。筋状の部分領域22.1,22.2は、測定方向xと垂直な(以下で目盛線方向とも称する)所定の方向yに延びており、反射式測定尺20の支持体21上に配置されている。図示されている例では、測定目盛22は、反射光用位相格子として構成されており、その構造エレメント又は部分領域22.1,22.2は、そこに当たる光束に対して相異なる位相のずれを生じさせる作用を有する。更に、第一次の回折効率を最大化させるように測定目盛22を構成することも有利である。以下において、測定目盛22の目盛周期は、TP
M と呼ぶこととし、測定方向xに対して順番に並んだ2つの部分領域22.1,22.2の長さとして定義する。実現可能な構成では、目盛周期TP
M は、1.1*λ〜10*λの範囲内で選定され、ここでλは使用する光源11の波長である。従って、VCSEL又はLEDとして構成されたλ=850nmの光源の場合、目盛周期TP
M は、TP
M =2.048μmとすることができる。
【0035】
測定尺20上の第一衝突地点での第一の衝突後、入射して来た光束を走査ユニット10の方に反射させて+/−1次の回折に対応する2つの部分光束に分割することが行われる。走査ユニット10内において、反射されて来た部分光束は、先ずは
図1aに図示されている走査板13の下側の格子14.1,14.2を通り抜ける。この例では、格子14.1,14.2は、透過格子として構成されている。部分光束は、格子14.1,14.2によって所定の手法で偏向され、そして走査板13の上側の平坦な反射器エレメント15.1,15.2に到達する。最初に通り抜ける2つの格子14.1,14.2は、以下においてTP
G1と称する同じ目盛周期を有する。この第一実施例では、格子14.1,14.2の目盛周期TP
G1は、測定目盛22の目盛周期TP
M と異なる形で選定されている。そのように目盛周期TP
G1を選定しているために、部分光束は、格子14.1,14.2の通過後走査板13に対して垂直には伝播しない。
【0036】
図1bに図示されている通り、反射器エレメント15.1,15.2において、部分光束の測定尺20の方向への反射が起こっている。測定尺20上の第一衝突地点と異なる第二衝突地点での二回目の衝突の前に、部分光束は、同じく走査板13の下側に配置された更に別の2つの格子14.3,14.4を通り抜ける。これらの格子14.3,14.4は、通過して行く部分光束をそれぞれ測定尺20上の第二衝突地点の方向に再度偏向させることを行っている。ここで通り抜ける2つの格子14.3,14.4は、以下においてTP
G2と称する同じ目盛周期を有する。
【0037】
本出願人の特許文献2に記載されている通り、格子14.1〜14.4は、2つの光学的機能を有する。それらは、一方において、目盛周期TP
G1又はTP
G2の規則的な周期の偏向格子のように、測定方向xに対して作用する。他方において、入射して来た光束を反射器エレメント15.1,15.2上に集束した後、再びコリメートする円柱レンズのように、測定尺面内の目盛線方向yに対して作用する。
図1aと1bに図示されている例では、格子14.1,14.2が集束を行う一方、格子14.3,14.4が出て行く光束を再びコリメートしている。本出願人の特許文献2に記載されている通りの反射器エレメントとレンズから成る組合せが、測定尺20の目盛線方向yに関する逆反射体エレメントである。光束と円柱レンズの光軸間におけるy方向のずれのために、反射式測定尺20上の第一衝突地点と第二衝突地点間のy方向のずれも同時に生じる。走査格子がそのような全ての光学的な機能を同時に果たすことができるためには、特許文献2に記載されるとともに、
図1dに模式的に図示されている通り、格子ラインが曲がった格子として走査格子を構成しなければならず、以下において、そのような格子構造に関しては、回折用偏向/レンズエレメントとも呼ぶこととする。
【0038】
従って、図示されている第一実施例では、支持基板13.1を備えた走査板13と、格子14.1,14.2,14.3,14.4と、平坦な反射器エレメント15.1,15.2とから成る構造ユニットは、走査ユニット10の側面上の逆反射体エレメントとしての機能を果たしている。その逆反射体エレメントによって、測定尺20から出て来た部分光束を測定尺20の方向に戻すような偏向を行って、そこへの二回目の衝突を起こすようにしている。この場合、逆反射は、所定のy方向に対して行われる。
【0039】
図示されている
図1a〜1dの実施例では、測定尺20上の第二衝突地点において、それぞれ当たって来た部分光束の走査ユニット10の方向への新たな回折と反射が生じている。次に、信号を生成するために使用される部分光束は、走査光路内の結合格子としての役割を果たすとともに、走査板13の下側に配置された透過格子17上に当たる。
【0040】
測定尺20と走査ユニット10が相対的にずれた場合、光束と走査光路内の測定尺及び相異なる格子との相互作用のために、走査面内には、縞模様周期TP
S を有する、ずれに応じて変調された縞模様が発生する。ここでの目盛周期TP
M =2.048μmの測定尺20と格子周期TP
AG1 =2.194μm,TP
AG2 =1.861μmの格子14.1〜14.4による実施例では、凡そ縞模様周期TP
S =30μmが得られる。
【0041】
本発明による位置測定装置の場合、走査格子17によって、走査面内の縞模様の空間的に周期的な強度分布を検出面内の相異なる地点に変換しており、そのために、この実施例では、追加の集束レンズ18が更に配備されている。走査面内の縞模様の空間的な強度分布を空間方向に応じた強度分布に変換することによって、縞模様内の同じ特性の地点が空間的に同じ拡大方向に対応付けられる。走査面内の周期的な縞模様がずれに応じて変調されている場合、そのことは、走査格子17によって、縞模様の同じ位相位置の地点がそれぞれ方向に応じて同じように偏向されることを意味する。走査格子17から出て来た光束が空間的に完全に分離されている範囲内に有る検出面では、相異なる空間方向に対して、全部で8つの検出器エレメント16.1〜16.8が配置されている。検出器エレメント16.1〜16.8によって、ずれに応じて位相のずれた増分信号が検出されるが、
図1bでは、全ての検出器エレメントは図示されていない。
【0042】
この場合、この実施例で配備されている集束レンズ18は、基本的には不要であるが、走査格子17から同じ拡大方向に向かう部分光束を特に小さい検出器エレメント16.1〜16.8上に集束させることを可能とするものである。それによって、走査ユニット10のコンパクトな構造も可能となる。検出器エレメントの面を縮小することによって、検出器エレメントのキャパシタンスが一層小さくなり、その結果信号雑音が低減される。更に、集束レンズによって、走査ユニットの構造の高さ又は検出器エレメントのキャパシタンスを大きくすること無く、より大きな横断面を持つ光束を走査のために使用することができることとなる。より大きな走査面によって、基本的に、より安定した増分信号も得られる。
【0043】
図1cは、
図1aと1bの実施例で使用される走査格子の部分図を走査面内に生じる縞模様周期TP
S の縞模様Sと一緒に図示している。上述した通り、実現可能な例では、縞模様周期TP
S =30μmである。
【0044】
縞模様Sを空間方向に応じた強度分布に変換するために使用される走査格子17は、多くのブロックから構成され、各ブロックは、専ら測定方向xに対して配置された4個(n=4)の格子区間17.1〜17.4を有する。格子区間17.1〜17.4は、それぞれ四角形に構成されており、長手方向が所定のy方向、即ち、測定方向xと垂直な方向に延びている。そのようなブロックが配置されている走査格子周期TP
AGは、縞模様周期TP
S と一致している。この実施例では、1つの縞模様周期TP
S 内には、測定方向xに対して相異なる構成の4個(n=4)の格子区間17.1〜17.4が配置されており、それぞ各格子区間17.1〜17.4を通過して伝播して行く光束に対して空間的に相異なる偏向作用を生じさせており、この場合1つのブロック内の格子区間17.1〜17.4によって生じる空間方向は異なっている。従って、相異なる格子区間17.1〜17.4の測定方向xに対する幅b
x は、それぞれb
x =TP
S /4であり、一般的に言うとb
x =TP
S /n(n>1又はn=2,3,4...)である。
【0045】
相異なる構成の4つの格子区間17.1〜17.4は、それぞれの構成のために、そこに入射して来る光束に対して空間的に相異なる偏向作用を生じさせる。そのために、格子区間は、それぞれ相異なる光学特性を有する構造エレメントが周期的に配置された周期的な格子構造を備えている。格子区間の格子構造が振幅格子として構成されているか、或いは位相格子として構成されているかに応じて、相異なる光学特性は、例えば、相異なる位相のずれを生じさせる作用か、或いは相異なる透過率となる。即ち、振幅格子の構造エレメントは、例えば、周期的に配置された透過性と非透過性の部分領域等とすることができる。
【0046】
構造エレメントは、各格子区間内において周期的に配置されており、格子区間内の構造エレメントの周期は、以下において格子区間周期TP
G と呼ぶこととする。
図1cの実施例では、相異なる4つの格子区間17.1〜17.4の全てが、同じ格子区間周期TP
G =1.875μmを有する。
【0047】
この実施構成では、1つのブロック内の相異なる4つの格子区間17.1〜17.4は、周期的な構造エレメントが測定方向xと垂直に延びる軸yに対して配置されている回転角α
i (i=1
... 4)に関して互いに異なっている。
図1cでは、例えば、格子区間17.2に関する回転角α
2 が表示されており、ここではα
2 =30°に選定されている。更に、
図1cから分かる通り、この変化形態では、相異なる4つの格子区間17.1〜17.4に対して相異なる4つの回転角α
i (i=1
... 4)が規定されており、α
1 =0°、α
2 =30°、α
3 =90°、α
4 =−30°に選定されている。
【0048】
そのような回転角α
i (i=1
... 4)に選定されているために、各格子区間17.1〜17.4に対応する縞模様Sの部分により所定の空間的な偏向が生じ、それは、周知の格子・回折公式から導き出すことができる。本発明では、各格子区間17.1〜17.4において、そこに入射して来る光束の2つの空間方向への偏向が少なくとも起こる、即ち、+1次と−1次の回折による偏向が少なくとも起こる。この実施例では、信号を取得するために更に別の次数の回折を評価する必要はない。
【0049】
即ち、
図1dの図面に対応する検出面内において、各格子区間17.1〜17.4に関する検出面内での偏向角+/−βが、次の表にもとづき得られる。
【0051】
従って、走査格子17の格子区間17.1からは、増分信号S_0°が生成され、格子区間17.2からは、増分信号S_90°が生成され、格子区間17.3からは、増分信号S_180°が生成され、格子区間17.4からは、増分信号S_270°が生成される。そのため、この第一実施例は、4フェーズシステムであり、それらの位相のずれた4つの増分信号S_0°,S_90°,S_180°,S_270°を周知の手法で評価することが可能である。
【0052】
この検出面内には、
図1dに図示されている通り、格子区間17.1〜17.4からそれに対応する+/−1次の回折による偏向作用が生じる相異なる空間方向に対して、8つの検出器エレメント16.1〜16.8が配置されている。
【0053】
そこで、8つの検出器エレメント16.1〜16.8によって、ずれに応じて位相のずれた4つの増分信号S_0°,S_90°,S_180°,S_270°を検出することができる。
図1dでは、8つの検出器エレメント16.1〜16.8の各々に対して、相異なる4つの増分信号S_0°,S_90°,S_180°,S_270°のどれを検出しているのかが表示されている。
【0054】
更に、
図1dから分かる通り、この実施例では、8つの検出器エレメント16.1〜16.8の幾何学的な重心が半径Rの円上に有り、実現可能な構成では、R=2mmに選定される。同様に、
図1dにおいて、この場合、検出器エレメント16.1〜16.8が四角形に構成されており、ここでは測定方向xの長さが、それと垂直な方向yの長さよりも長いことが分かる。このような検出器エレメントの幾何学的な形態のために、走査ユニットの測定尺に対する相対的なピッチ運動に関して、特に大きな許容範囲を保証することが可能となる。
【0055】
ここで説明した好適な走査格子の第一実施例は、検出面内での最適なスペース活用を保証するとともに、走査ユニットの所要の構造スペースを低減するものである。以下において、更に別の要件に関して最適化された、本発明による位置測定装置用の走査格子の更に別の実施形態を説明する。
【0056】
図2aと2bにもとづき、本発明による位置測定装置に好適な走査格子170の第二変化形態とその結果得られる検出面内における検出器エレメントの配列とを説明する。また、そのような走査格子は、例えば、
図1aと1bの走査光路にもとづき説明したような位置測定装置に用いることができる。以下に説明する第二実施例も、又もや4フェーズシステムであり、このシステムでは、ずれに応じて変調される位相のずれた、それぞれ90°の位相のずれを有する4つの増分信号S_0°,S_90°,S_180°,S_270°が得られる。従って、変数nは、前の実施例と同様にn=4に選定されている。
【0057】
走査格子170には、測定方向xに対して縞模様周期TP
S でブロック状に配置された、前と同様に4個(n=4)の格子区間170.1〜170.4が配備されている。各ブロック内の各格子区間170.1〜170.4の幅b
x は、又もやb
x =TP
S /4に選定されている。
【0058】
ここでは、前の変化形態と異なり、走査格子170又は相異なる格子区間170.1〜170.4は、相異なる2つの格子区間周期TP
G1,TP
G2を有し、具体的にはTP
G1=2*TP
G2に選定されている。即ち、格子区間170.1と170.3は、大きい方の格子区間周期TP
G1を有し、格子区間170.2と170.4は、小さい方の格子区間周期TP
G2を有する。更に、前述した第一実施構成と異なり、相異なる4つの格子区間170.1〜170.4の回転角α
i (i=1・・・ 4)は、
図2aから分かる通り選定されている、即ち、この変化形態では、相異なる2つの回転角α
i だけが規定されている、つまり回転角α
1 =0°,α
2 =0°,α
3 =90°,α
4 =90°となっている。
【0059】
この場合、検出面内では、
図2bの図面に対応して、各格子区間170.1〜170.4に関する偏向角+/−βが、次の表にもとづき得られる。
【0061】
この表及び
図2bから分かる通り、又もや四角形の検出器エレメントが、その幾何学的な重心を、ここでは半径R1とR2(R2=2*R1)の2つの円上に置く形で配置されている。この場合、図示されている手法の通り、検出器エレメント160.1,160.3,160.5及び160.7の重心が半径R1の円上に位置し、検出器エレメント160.2,160.4,160.6及び160.8の重心が半径R2の円上に位置している。
【0062】
この実施例の場合、
図2aから分かる通り、走査格子170の構造エレメントの全ては、位置測定装置の更に別の格子に対して、特に、構造エレメントが同じくy方向に延びるとともに、測定方向xに対して周期的に配置された測定尺の測定目盛に対して平行又は垂直の方向を向いている。そのような走査格子170の実施形態は、例えば、所謂VCSEL(垂直共振器表面発光レーザー)光源を使用する位置測定装置において有利であることが分かっている。そのような光源では、所謂偏光の回転(Polarisationssprung )が時として発生するので、有利には、VCSEL光源の主偏光軸が測定尺上の測定目盛の構造エレメントに対して+/−45°の角度をとるように光源を配置する。そうすることによって、走査格子170の第二実施構成に関して、同じ格子区間周期TP
G1又はTP
G2を有する、走査格子170の格子区間170.1〜170.4から180°位相のずれた増分信号が生成され、そのためそのような増分信号に関して同じ生成効率が得られることが保証される。
【0063】
その他、この走査格子の実施構成及び検出面内の検出器エレメントの配列に関しては、前述した好適な走査格子の第一変化形態に関する説明を参照されたい。
【0064】
以下において、又もや走査格子270と検出面に検出器エレメント260.1〜260.6が配置された検出面の部分図を図示している
図3aと3bにもとづき、走査格子270の第三実施構成を説明する。そのような走査格子270も、又もや例えば、
図1aと1bの走査光路にもとづき説明したような位置測定装置に用いることができる。この走査格子270の第三実施例は、前述した2つの変化形態と異なり、本発明による位置測定装置において、位相のずれた3つの増分信号S_0°,S_120°及びS_240°が生成される3フェーズシステムに適しており、ここでは、前記の変数nは、n=3に選定されている。
【0065】
この実施形態では、走査格子270は、測定方向xに対して縞模様周期TP
S でブロック状に配置された相異なる3つの格子区間270.1〜270.3を有し、格子区間270.1〜270.3の幅b
x は、それぞれb
x =TP
S /3に選定されている。又もや、相異なる2つの格子区間周期TP
G1,TP
G2(TP
G1=2*TP
G2)が規定されている。格子区間270.2と270.3は、大きい方の格子区間周期TP
G1を有し、格子区間270.1は、小さい方の格子区間周期TP
G2を有する。格子区間270.1〜270.3の構造エレメントの向きに関しては、
図3aから分かる通り、相異なる3つの格子区間270.1〜270.3に対して相異なる2つの回転角α
i (i=1・・・ 2)が選定されている、即ち、回転角α
1 =90°,α
2 =90°,α
3 =0°となっている。
【0066】
この場合、検出面内では、
図3bの図面に対応して、各格子区間270.1〜270.3に関する偏向角+/−βが、次の表にもとづき得られる。
【0068】
この表及び
図3bから分かる通り、又もや6つの検出器エレメント260.1〜260.6が、その幾何学的な重心を、又もや半径R1とR2(R2=2*R1)の2つの円上に置く形で配置されている。この場合、表示されている手法の通り、検出器エレメント260.2,260.3,260.5及び260.6の幾何学的な重心が半径R1の円上に位置し、検出器エレメント260.1及び260.4の重心が半径R2の円上に位置する。
【0069】
この3フェーズシステムの変化形態の特別な利点に関しては、前述したVCSEL光源での偏光の問題に関する説明を参照されたい。
【0070】
次に、同じく
図1aと1bの実施例にもとづき説明した位置測定装置に用いることができる好適な走査格子370の第四実施構成に関して、
図4aと4bを参照すると、この走査格子370の変化形態は、又もや3フェーズシステム(n=3)に適している。
【0071】
走査格子370は、前の実施例と同様に、測定方向xに対して縞模様周期TP
S でブロック状に配置された相異なる3つの格子区間370.1〜370.3を有し、又もや格子区間370.1〜370.3の幅b
x は、それぞれb
x =TP
S /3に選定されている。前の変化形態と異なり、相異なる3つの格子区間の全てにおいて、構造エレメントに関して同じ格子区間周期TP
G が選定されている。
【0072】
格子区間370.1〜370.3の構造エレメントの向きに関しては、
図4aから分かる通り、相異なる3つの格子区間370.1〜370.3に対して相異なる3つの回転角α
i (i=1・・・3)が選定されている、即ち、α
1 =90°,α
2 =20°,α
3 =−20°となっている。
【0073】
この場合、検出面内では、
図4bの図面に対応して、各格子区間370.1〜370.3に関する偏向角+/−βが、次の表にもとづき得られる。
【0075】
本発明による位置測定装置用のこのような走査格子370の変化形態では、そこに示されている+1次と−1次の回折による偏向を生じさせる角度βによって、検出面内において6つの検出器エレメント360.1〜360.6用に使用可能なスペースが最適に活用されていることを指摘しておきたい。走査ユニット用の構造空間容積が比較的小さいコンパクトなシステムが実現されている。
【0076】
当然のことながら、本発明の範囲内には、前述した実施例以外にも、それらに代わる実施形態の可能性が存在する。
【0077】
即ち、
図1aと1bにもとづき説明した走査面内に周期的な縞模様を発生させるための走査光路が必ずしも本発明に関して必須ではないことを指摘しておきたい。そのような縞模様は、別の構成の測定尺及び/又は走査ユニットを用いて、光源から放射された光束と走査光路内の測定尺及び任意選択による更に別の光学格子との相互作用によって発生させることもできる。当然のことながら、本発明では、前述した反射光システムに代わって、透過光用測定尺を用いた透過光システムも基本的には実現可能である。同様に、本発明では、直線的な動きを検出するための位置測定装置以外に、回転式位置測定装置なども構成することができる。
【0078】
更に、前述した透過式走査格子の代わりに、反射式走査格子の変化形態を用いることも可能であり、目盛線方向yに対して斜めに走査格子を照射することも可能である。その場合、走査光路内には、それに対応する反射器エレメントによって光線を更に偏向させることなども必要である。