【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のシリコーンレジン組成物は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物と、湿気硬化型シリコーン樹脂とが含有されて
おり、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物が、鉄鋼スラグまたはアルミナセメントまたはその混合物に由来のものであることを特徴とする。
【0019】
本発明のシリコーンレジン組成物を用いた保護被覆工法は、本発明のシリコーンレジン組成物を用いることを特徴とする。
【0020】
本発明のシリコーンレジン組成物は
、湿気硬化型シリコーン樹脂と、これらの樹脂の硬化触媒となるカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物と、水または水分とが必要であり、これらの各成分で構成されていることにより、加温することなく常温下で硬化し被膜を形成する。
【0021】
なお、湿気硬化型シリコーン樹脂としては、後記する、分子末端がアルコキシシリル基で封鎖された比較的低分子のシリコーンレジンである、シリコーンアルコキシオリゴマーが好適に使用される。
【0022】
ここで、各成分の配合量としては、使用環境に応じた被膜物性が発現するものであれば
特に限定されないが、樹脂成分が湿気硬化型シリコーン樹脂の場合は、作業性の点から湿
気硬化型シリコーン樹脂が50〜100重量部、カルシウム、マグネシウム、アルミニウ
ムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物が50〜200重量部、水が20
0重量部以下であることが好ましい
。
【0023】
また、本発明のシリコーンレジン組成物には、必要に応じて適宜、ケイ砂、磁器粉、ガラス粉、シラスバルーンなどの無機質系バルーンなどを使用してもよい。
【0024】
次に、本発明のシリコーンレジン組成物を構成する各成分について説明する。
【0025】
(カルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物)
本発明に用いられるカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物は単体の化合物でもよいし、後記する鉄鋼スラグやアルミナセメントまたはその混合物の中に存在しているカルシウムアルミネート類等のように、他の化合物との複合物の状態となっているものでもよい。
【0026】
そして、これらの化合物は、化合物自体あるいは、化合物から水に溶出した微量の金属イオンが触媒となり、シリコーンレジンを硬化させ、被膜を形成させる。
【0027】
本発明に用いられるカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物の配合比率は、作業性の点から、樹脂成分が湿気硬化型シリコーン樹脂の場合には湿気硬化型シリコーン樹脂50〜100重量部に対して50〜200重量部配合されていることが好ましく、樹脂成分がシリコーン樹脂の場合にはシリコーン樹脂50〜100重量部に対して1〜100重量部配合されていることが好ましい。
配合量が上記範囲より少ない場合には硬化に長時間を要し、上記範囲を超える場合には逆に硬化が速くなりすぎるため、それぞれ作業性の問題が生じる恐れがあるからである。
【0028】
また、本発明に用いられるカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物は、被覆する対象材料がコンクリートなどに代表されるような酸性物質に弱い材料である場合には、水に金属イオンが溶出した際の水のpHが9〜13を示すものであることが好ましく、さらにはpHが10.5〜11.5を示すものであることが好ましい。pHが9より小さい場合には硬化に長時間を要し、13を超える場合には逆に硬化が速くなりすぎるため、それぞれ作業性の点において問題が生じる恐れがあるからである。
【0029】
なお、上記のカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物に炭酸カルシウムなどの単体の化合物を使用した場合には、樹脂成分に対する配合量がわずかとなることから、硬化触媒としての該化合物が組成物中に局在して分布することになり、まれに硬化にムラが発生し、良好な被膜を得ることが困難になる場合がある。
従って、組成物中へ均一に分散させて硬化を緩やかにし、良好な被膜を得やすくするためには、上記のカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物としては、後記する鉄鋼スラグやアルミナセメントまたはその混合物などに含まれているカルシウムアルミネート類等のように、他の化合物との複合物の状態となっているものを用いることが好ましい。
【0030】
(鉄鋼スラグまたはアルミナセメントまたはその混合物)
本発明に用いられる鉄鋼スラグとは、金属の精錬時に副産物として回収されるものであり、高炉スラグと製鋼スラグに分類されるものである。なお、高炉スラグはさらに徐冷スラグと水砕スラグに分類される。
鉄鋼スラグの組成としては、酸化カルシウムと二酸化ケイ素を主成分とし、その他の成分として酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、鉄、マンガン、硫黄などが単体あるいはカルシウムアルミネート類などのように他の化合物との複合物の状態となって含まれているものである。
【0031】
ここで、鉄鋼スラグを使用する場合には、作業性の点から高炉スラグを用いることが好ましい。製鋼スラグについては、使用するグレードによってシリコーンレジン組成物の硬化が速くなりすぎて、作業性の点から使用しづらい場合があるからである。
【0032】
本発明に用いられるアルミナセメントとは、ボーキサイトと石灰石から製造されるセメントであり、アルミン酸石灰を主成分とするものである。
【0033】
なお、本発明に用いられる鉄鋼スラグとアルミナセメントについては、上記のカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物が含有されているものであれば、両者が混合されたものであってもよい。
【0034】
さらに、本発明に用いられる鉄鋼スラグやアルミナセメントは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物を有するものであれば、物性は特に限定されないが、作業性、可使時間の点からブレーン比表面積が3000〜10000cm
2/gの範囲のものであることが好ましい。
ブレーン比表面積が3000cm
2/gより小さい場合には作業性の悪化の問題が生じ、10000cm
2/gを超える場合には作業性の悪化、可使時間の短縮の問題が生じる恐れがあるからである。
【0035】
(水)
本発明のシリコーンレジン組成物における水の配合量については、特に限定されず、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物の溶解性や作業性などの点から適宜決定することができる。
なお、樹脂成分に湿気硬化型シリコーン樹脂を用いる場合には、空気中の水分が硬化に寄与することから、原料としての水を特段、配合しないこともできる。
【0036】
(湿気硬化型シリコーン樹脂)
本発明に用いられる湿気硬化型シリコーン樹脂としては、シリコーンアルコキシオリゴマーが好適に使用され、より具体的には下記一般式(1)
R
1aSi(OR
2)
4−a (1)
(式中、R
1は同一又は異種の炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基、R
2は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2もしくは3のアシル基、又は炭素数3〜5のアルコキシアルキル基を表し、aは0、1、2のいずれかの数である。)で表されるシラン化合物の部分(共)加水分解縮合物の1種又は2種以上の混合物からなるシリコーンアルコキシオリゴマーが湿気硬化型シリコーン樹脂として好適に使用される。
【0037】
上記一般式(1)中のR
1は、同一又は異種の炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、又はこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したクロロメチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基等、シアノ基で置換したシアノエチル基等、エポキシ基で置換したグリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシルエチル基等、(メタ)アクリル基で置換したメタクリロキシプロピル基、アクリロキシプロピル基等、アミノ基で置換したアミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基等、メルカプト基で置換したメルカプトプロピル基等が例示される。
【0038】
上記一般式(1)中のR
2は、前記と同様に炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2もしくは3のアシル基、又は炭素数3〜5のアルコキシアルキル基である。
【0039】
なお、シリコーンレジン組成物として使用した際の硬化性や被膜特性、組成物の保存安定性、汎用性、コスト面の観点から、上記一般式(1)におけるR
1はメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基であることが好ましく、更にはメチル基、フェニル基であることが好ましい。またR
2についても同様の観点から、メチル基、エチル基から選択されるアルキル基であることが好ましい。
【0040】
また、上記一般式(1)中のaは0、1、2のいずれかの数であるが、シリコーンレジン組成物の硬化性、硬化被膜の表面硬度、耐クラック性、基材との密着性といった観点からは、湿気硬化型シリコーン樹脂中で、a=1のシラン化合物の部分(共)加水分解縮合物の占める割合が30モル%以上であることが好ましく、更には40〜100モル%であることがより好ましい。
また、a=0のシラン化合物の部分(共)加水分解縮合物の占める割合は、湿気硬化型シリコーン樹脂中0〜40モル%であることが好ましく、a=2のシラン化合物の部分(共)加水分解縮合物の占める割合は、湿気硬化型シリコーン樹脂中0〜60モル%であることが好ましい。
ここで、湿気硬化型シリコーン樹脂の原料であるシラン化合物として、a=1のシラン化合物に加えて、a=0のシラン化合物を配合すると、硬化被膜の表面硬度をより高くすることができるが、配合量が多すぎるとクラックが発生するおそれがある。また、a=2のシラン化合物を併用すると、硬化被膜に強靱性と可撓性が与えられるが、配合量が多すぎると十分な架橋密度が得られないために、表面硬度や硬化性が低下するおそれがある。
【0041】
なお、本発明に用いられる湿気硬化型シリコーン樹脂の原料となるシラン化合物のより具体的な例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メトキシプロポキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシプロポキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、シアノエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルビス(メトキシエトキシ)シラン、ジメチルビス(メトキシプロポキシ)シラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジアセトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジイソプロポキシシラン、メチルエチルジアセトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルプロピルジイソプロポキシシラン、メチルプロピルジアセトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジイソプロポキシシラン、ジビニルジアセトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、メチルビニルジイソプロポキシシラン、メチルビニルジアセトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジエトキシシラン、ジアリルジイソプロポキシシラン、メチルアリルジメトキシシラン、メチルアリルジエトキシシラン、メチルアリルジイソプロポキシシラン、メチルアリルジアセトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジイソプロポキシシラン、メチルフェニルジアセトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルメチルジメトキシシラン、シアノエチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン又はアシロキシシランを挙げることができる。
【0042】
そして、本発明に用いられる湿気硬化型シリコーン樹脂となるシリコーンアルコキシオリゴマーは、上記したようなシラン化合物の部分(共)加水分解縮合物であり、特に、上記したようなシラン化合物の2量体(シラン化合物2モルに水1モルを作用させてアルコール2モルを脱離させ、ジシロキサン単位としたもの)〜100量体としたものが好ましく、より好ましくは2〜50量体としたものであり、更に好ましくは2〜30量体としたものである。また、2種以上のシラン化合物を原料とする部分共加水分解縮合物を使用することも可能である。
また、本発明の湿気硬化型シリコーン樹脂は、上記した部分(共)加水分解縮合物を単独で使用してもよいし、構造の異なる2種類以上の部分(共)加水分解縮合物を使用することも可能である。さらに、あるいは原料シラン化合物を一部併用したり、チタン酸エステル類や有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物に代表される硬化触媒を併用することも可能である。
【0043】
本発明に用いられる湿気硬化型シリコーン樹脂の粘度は、25℃において1〜5,000mm
2/sであることが好ましく、さらに3〜1,000mm
2/sであることが好ましい。
【0044】
(シリコーン樹脂)
本発明に用いられるシリコーン樹脂は、シロキサン結合を有するものであって、上記したカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物またはこれら化合物から溶出した金属イオンによって硬化するものであれば特に限定されない。また、本発明に用いられるシリコーン樹脂は、水溶性タイプのものを使用することもできるが、シリコーンレジン組成物の撥水性能の面から、オルガノシリコーン化合物を乳化剤、水、水混和性有機溶剤などによって乳化、分散させたエマルジョンタイプまたはディスパージョンタイプのものを用いることが好ましい。
【0045】
本発明に用いられるシリコーン樹脂にエマルジョンタイプまたはディスパージョンタイプのものを使用する場合には、これらの平均粒径は、保存安定性の点から1,000nm以下、特に800nm以下であることが好ましい。1,000nmを超える場合には経時分離の問題が生じる恐れがあるからである。
【0046】
また、本発明に用いられるシリコーン樹脂にエマルジョンタイプまたはディスパージョンタイプのものを使用する場合には、取り扱い性の点からシリコーン樹脂の不揮発分(固形分)が5〜80質量%であることが好ましく、さらには10〜70質量%であることが好ましい。不揮発分が5質量%より小さい場合にはシリコーンレジン組成物の粘度が低くなりすぎ成形性低下の問題が生じ、80質量%を超える場合にはシリコーン樹脂の粘度が高くなりすぎ作業性低下の問題が生じる恐れがあるからである。
【0047】
次に、シリコーン樹脂にエマルジョンタイプまたはディスパージョンタイプのものを使用する場合の各構成成分について説明する。
【0048】
(オルガノシリコーン化合物)
ここで、エマルジョンタイプまたはディスパージョンタイプのシリコーン樹脂を使用する場合には、被膜特性の点から、平均組成式が[RSiO
3/2]
m[R
2SiO]
n(Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、m+nが1.0である。)で示されるオルガノシリコーン化合物を用いたものを使用することが好ましい。
【0049】
ここで、Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどのアルキル基、フェニル、トリル、ナフチルなどのアリール基、ビニル、アリルなどのアルケニル基などが挙げられる。
【0050】
また、水素原子の一部(1個又はそれ以上)がエポキシ基、メルカプト基、メタクリル基、アクリル基、カルボキシル基、アミノ基、ケト基などの反応性基で置換されたものも含まれる。反応性基で置換された有機基としては、3−グリシドキシプロピル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル、3−メルカプトプロピル、3−メタクリロキシプロピル、3−アクリロキシプロピル、3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、N−フェニル−3−アミノプロピル、3−ウレイドプロピル、3−クロロプロピル、10−カルボキシデシル、2−カルボキシエチル、3−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピル、−C
2H
4−CHO、−C
3H
6−S−C
2H
4−CONH−C(CH
3)
2−CH
2COCH
3などが挙げられる。なお、本発明においては、耐候性の点からRの30モル%以上がメチル基であることが望ましい。
【0051】
オルガノシリコーン化合物中の[RSiO
3/2]単位のモル比率(m)は、被膜の硬度と耐久性の点から0.2〜1.0の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜1.0の範囲であり、さらに好ましくは0.4〜1.0の範囲である。0.2より小さい場合には被膜硬度が軟らかくなり、耐久性が低下してしまう恐れがあるからである。
また、オルガノシリコーン化合物中の[R
2SiO]単位のモル比率(n)も同様に、被膜の硬度と耐久性の点から0〜0.8の範囲が好ましく、より好ましくは0〜0.7の範囲であり、さらに好ましくは0〜0.6の範囲である。0.8より大きい場合には被膜硬度が軟らかくなり、耐久性が低下してしまう恐れがあるからである。
【0052】
さらに、オルガノシリコーン化合物については、成分中に硬化性や被膜特性を損なわない範囲で[R
3SiO
1/2]単位(Rは上記の通り)および/または[SiO
2]単位を微量含んでも構わない。但しこの場合には、m+nは0.8〜1.0であることが好ましく、さらには0.9〜1.0であることが好ましい。ここでm+n=1.0でない場合には、残りの単位は[R
3SiO
1/2]単位、[SiO
2]単位であり、これらとの総計が1.0となる。
【0053】
オルガノシリコーン化合物は、該当する単位のクロロシランやアルコキシシランを加水分解、縮合反応する方法など、公知の方法で製造することができる。これら公知の方法で製造されたオルガノシリコーン化合物は、末端基として少量の水酸基や、場合によりさらにアルコキシ基を含有する。そして、この水酸基やアルコキシ基が、上記したカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物またはこれら化合物から溶出した金属イオンを触媒として脱水縮合、脱アルコール縮合することによって加温することなく常温下で硬化し被膜となるのである。
【0054】
ここで硬化性の点から、水酸基の量は0.1〜10質量%、アルコキシ基量は0.1〜10質量%であり、水酸基とアルコキシ基の合計量は0.1〜15質量%であることが好ましい。水酸基とアルコキシ基の合計量が0.1質量%より小さい場合には硬化不良の問題が生じ、15質量%を超える場合には収縮の問題が生じる恐れがあるからである。さらに、アルコキシ基については反応性の点から炭素数が1〜6であることが好ましい。
【0055】
また、オルガノシリコーン化合物については、必要に応じて、乳化剤、水、水混和性有機溶剤を用いることができる。
【0056】
ここで、オルガノシリコーン化合物に乳化剤、水、水混和性有機溶剤を用いる場合には、エマルジョンまたはディスパージョンになった際の安定性の点から、予めオルガノシリコーン化合物の水混和性有機溶剤溶液を作製しておき、次に乳化剤と水とを混合して、撹拌することで乳化分散をさせる方法によって製造することが好ましい。
【0057】
(乳化剤)
乳化剤としては、オルガノシリコーン化合物を水中へ乳化分散させることができるものであれば特に制限はない。そしてこれらの乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン酢酸塩等のカチオン系界面活性剤、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤等を挙げることができる。また、これらの乳化剤は、単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0058】
そしてこれらの乳化剤としては、上記の中でも安定性の面から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのようなノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0059】
さらに、これらノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルなどが挙げられる。
【0060】
また、乳化剤の添加量としては、エマルジョン化、被膜硬度、密着性の点からオルガノシリコーン化合物100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜30質量部であり、さらに好ましくは3〜20質量部である。乳化剤の添加量が1質量部より少ないとエマルジョン化が困難であり、50質量部より多いと被膜の硬度や強度、基材との密着性が低下してしまう恐れがあるからである。
【0061】
(水混和性有機溶剤)
水混和性有機溶剤としては、オルガノシリコーン化合物を乳化する際に流動性を付与したり、オルガノシリコーン化合物の粘度を調整したりするために使用されるものであり、SP値(溶解パラメーター)が8.0〜11.0で、水混和性のものであることが好ましい。
ここで、SP値とは溶解パラメーターのことであり、溶解度係数ともいう、Hildebrandにより提唱された液体間の混合性の尺度となる特性値である。
【0062】
なお、SP値はオルガノシリコーン化合物の溶解性と乳化した際のエマルジョンの安定性の点から8.0〜11.0が好ましく、より好ましくは8.5〜10.5である。SP値が8.0より小さい場合にはオルガノシリコーン化合物を均一溶解することができず、11.0より大きい場合には乳化した際のエマルジョンの安定性が低下してしまう恐れがあるからである。
【0063】
また、該有機溶剤は水混和性が必要であり、水混和性がない場合には乳化した際のエマルジョンの安定性が低下してしまう。ここで、水混和性としては20℃における水100gへの溶解度が1g以上のものである必要があり、2g以上のものであることが好ましい。
このような水混和性有機溶剤としては、アルコール系化合物、ケトン系化合物、エステル系化合物、エーテル系化合物などがある。具体的には、セロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルカルビトール、カルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、酢酸ブチルカルビトール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレートなどが挙げられる。
そしてこの中でも水への溶解度の点から、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレートを用いるのが好ましい。
【0064】
水混和性有機溶剤を配合する場合の添加量としては、オルガノシリコーン化合物100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜40質量部であり、さらに好ましくは5〜30質量部である。添加量が1質量部より少ないとオルガノシリコーン化合物溶液の粘度が高く、エマルジョン化が困難であり、乳化安定性も劣る恐れがあるからである。一方、添加量が50質量部より多いとエマルジョンの乾燥に長時間要してしまう恐れがあるからである。
【0065】
また、オルガノシリコーン化合物は、[RSiO
3/2]単位の含有率が高い場合には固体状であること、あるいは縮合反応性が高い場合にはゲル化しやすいことから、通常はトルエンやキシレンといった有機溶剤に希釈された状態で取り扱われる。本発明においては、水混和性有機溶剤溶液をこのような希釈剤として使用することもでき、さらには水混和性有機溶剤溶液をオルガノシリコーン化合物製造時の溶剤として使用することも可能である。
【0066】
ここで、水混和性有機溶剤溶液をオルガノシリコーン化合物の希釈剤として用いる際には、乳化性の点から、水混和性有機溶剤により希釈されたオルガノシリコーン化合物溶液の粘度がB型回転粘度計を用いて測定した場合に、25℃において500〜500,000mPa・sであることが好ましく、さらには1,000〜200,000mPa・sとなるようにすることが好ましい。
【0067】
なお、オルガノシリコーン化合物の希釈剤としては水を用いることもでき、この場合の水の配合量は、オルガノシリコーン化合物100質量部に対して25〜2,000質量部であることが好ましく、さらには50〜1,000質量部であることが好ましい。
【0068】
次に、本発明のシリコーンレジン組成物を用いた保護被覆工法について説明する。
【0069】
(シリコーンレジン組成物を用いた防食方法)
本発明のシリコーンレジン組成物を用いた保護被覆工法としては、従来のコンクリートの保護だけでなく、例えば、工場の煙突の内面(煙道)に代表されるような耐熱、屋外で使用される場合の耐候性、オゾン及び塩素などの過酷な環境にさらされる材料の保護被覆に対しても使用することができる。
【0070】
保護被膜の形成方法としては、本発明のシリコーンレジン組成物を対象材料にスプレー、刷毛、コテなどで塗装する方法などがあげられる。ここで、被膜の厚さについては、保護被覆性の点から0.5〜5mmであることが好ましい。膜厚が0.5mmより薄い場合には遮断性の問題が生じ、5mmより厚い場合には硬化収縮の問題が生じる恐れがあるからであるからである。
【0071】
なお、本発明のシリコーンレジン組成物を用いた保護被覆工法としては、必要に応じて、本発明のシリコーンレジン組成物と対象材料との間にプライマー層を設けても構わないし、本発明のシリコーンレジン組成物による被膜の表面にさらに仕上げ用のトップコート層を設けても構わない。