特許第5710591号(P5710591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5710591プロセスチャンバ壁上にシリコンコーティングを使用した残留フッ素ラジカルの除去の促進
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5710591
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】プロセスチャンバ壁上にシリコンコーティングを使用した残留フッ素ラジカルの除去の促進
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20150409BHJP
   H01L 21/22 20060101ALI20150409BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20150409BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20150409BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20150409BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20150409BHJP
【FI】
   H01L21/265 F
   H01L21/22 E
   C23C16/44 Z
   C23C16/42
   C23C16/50
   !H05H1/46 L
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-506092(P2012-506092)
(86)(22)【出願日】2010年4月12日
(65)【公表番号】特表2012-524410(P2012-524410A)
(43)【公表日】2012年10月11日
(86)【国際出願番号】US2010030700
(87)【国際公開番号】WO2010123707
(87)【国際公開日】20101028
【審査請求日】2013年4月9日
(31)【優先権主張番号】61/170,879
(32)【優先日】2009年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/758,167
(32)【優先日】2010年4月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ドンウォン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ドン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】プーン, ツェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェライカル, マーノィ
(72)【発明者】
【氏名】ポルシュネフ, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】フォード, マジード
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−538413(JP,A)
【文献】 特開平03−255622(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0146512(US,A1)
【文献】 特開昭61−034931(JP,A)
【文献】 特開平11−286771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
C23C 16/42
C23C 16/44
C23C 16/50
H01L 21/22
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための装置であって、
内部容積を画定するチャンバ本体を有するプロセスチャンバであり、前記内部容積の内部でフッ素系のプラズマ処理をするように構成されている、前記プロセスチャンバと、
前記チャンバ本体の内表面上に配置されたシリコン含有コーティングであり、シリコンおよび酸素を含む第1の層と、前記第1の層を覆って配置された第2の層とを備え、前記第2の層が少なくとも35原子パーセントのシリコン(Si)であるシリコン含有コーティングとを備え、
前記第2の層が、前記第2の層の外側表面近くの前記第2の層中の酸素の第2の濃度よりも高い前記第1の層と前記第2の層との界面近傍の酸素の第1の濃度をさらに含む、装置。
【請求項2】
前記シリコン含有コーティングが、前記内部容積を画定する前記チャンバ本体の表面を実質的に覆っている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シリコン含有コーティングの少なくとも外側部分が基本的にシリコンから成る、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記シリコン含有コーティングが、
前記第1の層と前記第2の層との間に配置され、シリコンを含む第3の層と、
前記第3の層と前記第2の層との間に配置され、シリコンおよび酸素を含む第4の層と
をさらに備えている、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の層の前記外側表面近くの酸素の前記濃度が実質的にゼロである、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記シリコン含有コーティングが、ホウ素、ヒ素、ゲルマニウム、炭素、窒素、およびリンのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1ないしのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
プロセスチャンバ内でシリコン含有コーティングを形成するための方法であって、
前記プロセスチャンバの内部容積へシリコン含有ガスおよび酸素含有ガスを含む第1のプロセスガスを供給することであり、前記プロセスチャンバが前記内部容積の内部でフッ素系のプラズマ処理をするように構成されている、前記供給することと、
第1の層および第2の層を備えるシリコン含有コーティングを形成することであり、前記第1の層がシリコンおよび酸素を含み、前記第1の層が少なくとも部分的に前記第1のプロセスガスから前記プロセスチャンバの内表面上の少なくとも一部の上に形成され、前記第2の層が前記第1の層を覆って形成され、前記第2の層が少なくとも35原子パーセントのシリコンである、前記形成することと、
を含む方法。
【請求項8】
前記シリコン含有コーティングが、シリコンを含む第3の層と、シリコンおよび酸素を含む第4の層とをさらに含み、
前記方法が、
前記第1の層と前記第2の層との間に前記第3の層を形成することと、
前記第3の層と前記第2の層との間に前記第4の層を形成することと
をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の層が酸素をさらに含み、前記第1の層と前記第2の層との界面近傍の前記第2の層中の酸素の第1の濃度が、前記第2の層の外側表面近くの前記第2の層中の酸素の第2の濃度よりも高い、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロセスチャンバ内に基板を設置することと、
前記プロセスチャンバへフッ素含有ガスプラズマ前駆物質を供給することと、
前記フッ素含有ガスから前記プロセスチャンバ内にプラズマを形成することと、
前記プラズマを用いて前記基板を処理することと
をさらに含む、請求項ないしのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のプロセスガスが、ホウ素、ヒ素、ゲルマニウム、炭素、窒素、およびリンのうちの少なくとも1つをさらに含み、かつ前記フッ素含有ガスが、ホウ素、ヒ素、ゲルマニウム、炭素、窒素、およびリンのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に半導体基板処理に関する。
【背景技術】
【0002】
相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術が、集積回路において広く使用されている。CMOSデバイス製造中に通常使用される基板処理方法は、例えば、プラズマドーピングプロセスにおいて、フッ素系プラズマ前駆物質の使用を必要とする。しかしながら、プラズマドーピングプロセス中に分解した過剰なフッ素ラジカルは、下地基板の上の、下部CMOS構造を激しく腐食し、重大なプロセスインテグレーション問題やデバイス性能劣化などをもたらす。
【0003】
したがって、フッ素系プラズマ基板プロセスにおいて過剰なフッ素ラジカルを減少させるための方法および装置の改良が求められている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、基板を処理するための方法および装置が提供される。いくつかの実施形態では、基板処理のための装置は、内部容積を画定するチャンバ本体を有するプロセスチャンバと、チャンバ本体の内表面上に配置されたシリコン含有コーティングであって、外側表面が少なくとも35原子パーセントのシリコン(Si)であるシリコン含有コーティングとを含む。プロセスチャンバは、基板処理用の任意の適切なプロセスチャンバとすることができる。本装置は、プラズマを形成するように構成されたプロセスチャンバを含むことができる。形成されるプラズマはフッ素系でよい。
【0005】
いくつかの実施形態では、プロセスチャンバ内にシリコン含有コーティングを形成するための方法は、プロセスチャンバの内部容積へシリコン含有ガスを含む第1のプロセスガスを供給することと、プロセスチャンバの内表面上に、外側表面が少なくとも35パーセントのシリコンであるシリコン含有コーティングを形成することとを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、シリコン含有コーティングは、シリコンから成るか、または基本的にシリコンから成る。いくつかの実施形態では、シリコン含有コーティングは、シリコンおよび酸素(O)の層と、シリコンの層とを交互に含むことができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、一方の表面上に配置されたシリコンおよび酸素表面を有することができ、酸素濃度がコーティング全体にわたって徐々に減少させることにより、本質的にシリコンの、またはシリコンリッチの反対側表面が得られる。
【0007】
したがって、本発明の上記フィーチャを詳細に理解することができるように、添付図面に一部が示されている実施形態を参照することにより、上記に要約されている本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、添付図面は、本発明の典型的な実施形態を示しているにすぎず、本発明の範囲を限定するものではないので、本発明には他の同様に有効な実施形態が可能であることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のいくつかの実施形態による、半導体基板を処理するのに適した装置の図である。
図2】A〜Cは、本発明のいくつかの実施形態による、プロセスチャンバの内表面上に配置されたシリコン含有コーティングの実施形態の図である。
図3】本発明のいくつかの実施形態によって基板を処理するための方法の図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態によってプロセスチャンバの内表面上にシリコン含有コーティング形成するための方法の図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態によってプロセスチャンバの内表面上にシリコン含有コーティング形成するための方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
理解を容易にするために、可能である場合には、複数の図に共通な同一の要素を示すために、同一の参照番号を使用している。図は、原寸に比例して示されておらず、見やすくするために簡潔化する場合がある。一実施形態の要素および特徴は、さらなる説明なしに別の実施形態に有利に組み込むことができることが意図されている。
【0010】
本発明の実施形態は、一般に、フッ素系プラズマ基板処理のための装置および方法に関する。いくつかの実施形態では、チャンバ内に存在する残留フッ素ラジカルを有利に減少させるために、シリコンコーティングまたはシリコンリッチコーティングを有するプロセスチャンバを設ける。いくつかの実施形態では、プロセスチャンバの内表面上にコーティングを形成するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、プラズマドーピングのための方法が本明細書において提供される。本発明は、プロセスチャンバ内の残留フッ素ラジカルを除くことで基板の腐食を軽減することによって、基板処理を有利に改善することができる。
【0011】
本発明の実施形態は、プロセスチャンバ内に過剰な望ましくないフッ素ラジカルをもたらすプラズマドーピングプロセス、または他の何らかのそのようなプロセス用に構成されたプロセスチャンバのような、任意の適切なプロセスチャンバ内に組み込むことができる。非限定的な実施例として、そのような適切な1のシステムは、Santa Clara、CaliforniaのApplied Materials,Inc.から入手可能なP3i反応装置である。そのような適切な反応装置およびその動作の方法は、本発明の譲受人に譲渡され、参照によって本明細書中に組み込まれている米国特許第7166524号に公表されている。
【実施例】
【0012】
本発明のいくつかの実施形態による基板を修正および処理するのに適したシステムの一実施例を、トロイダル源プラズマ浸漬型イオン注入装置100を図示する図1に関連して下記に説明する。図1を参照すると、トロイダル源プラズマ浸漬型イオン注入装置100は、円柱状側壁104および円盤形状をした天井106によって画定される円柱状プロセスチャンバ102を有する。プロセスチャンバの床面の位置にある基板支持部108は、処理される基板110を支持する。天井106上のガス分配プレートまたはシャワーヘッド112は、ガス分配パネル116からそのガスマニホールド114内にプロセスガスを受け取り、ガス分配パネルのガス出力は、1または複数の個々のガス供給部118からのガスのうちの任意の1つまたは混合物とすることができる。真空ポンプ120は、基板支持部108と側壁104との間に画定されたポンピングアニュラス122に連結される。処理領域124が、基板110とガス分配プレート112との間に画定される。
【0013】
本発明によって、円柱状側壁104の内表面156をシリコン含有コーティング154でコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、シリコン含有コーティングは、チャンバ本体の内表面156(例えば、内部容積を画定するチャンバ本体の表面)を実質的に覆う。いくつかの実施形態では、下記に説明するように、シリコン含有コーティング154を、プラズマドーピングプロセス中に、またはこのようなプロセスの直前に堆積することができる。シリコン含有コーティング154は、1または複数の層を含むことができ、完全にシリコンであるか、基本的にシリコン(例えば、約95パーセント以上のシリコン)から構成されるか、またはシリコンリッチ(例えば、約35パーセント原子以上のシリコン)である(例えば、プロセスチャンバの室内に面し露出した)外側表面または部分を有する。(従来の酸化シリコンコーティングと比較して)約35パーセント以上のシリコンであるコーティングを設けることは、フッ素除去の促進を容易にすることができ、これによって処理中に下にあるシリコンデバイス構造の腐食を減少させることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、図2Aに図示したように、シリコン含有コーティング154は、シリコンからなるか、基本的にシリコンからなるか、またはシリコンリッチの組成を有する単一層とすることができる。例えば、シリコン含有コーティング154は、約35パーセント以上のシリコン組成を有することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、図2Bに図示したように、シリコン含有コーティング154は、シリコンか、基本的にシリコンか、または上に論じたような(例えば、約35パーセント以上のシリコン組成を有する)シリコンリッチである外側表面204または部分と、シリコンおよび酸素(例えば、SiO)を含む内側表面202または部分とを有する単一層とすることができる。内側表面202は、円柱状側壁104の内表面156(または、例えば、図2Cに関連して下記に論じるような、円柱状側壁104の内表面156上に形成した層)に隣接して配置する。外側表面204に向かってコーティング全体にわたって酸素濃度を徐々に減少させることにより、約35パーセント以上のシリコン組成を有する反対側の外側表面204が得られる。酸化シリコン(SiO)であるシリコン含有コーティング154の内側表面を設けることにより、円柱状側壁104の内表面156へのシリコン含有コーティング154の付着力を容易に増大させることができ、これによって、処理中の微粒子形成が低減される。シリコン含有層154内のシリコンの濃度の変化率は、直線的、曲線的、連続的、不連続的、またはこれらの組み合わせとすることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、図2Cに図示したように、シリコン含有コーティング154は、円柱状側壁104の内表面156上に配置されたシリコンおよび酸素からなる第1の層206と、第1の層の最上部に配置されたシリコンの第2の層208とを含む2層以上の層とすることができる。シリコンからなる第2の層208は、単一層のシリコン含有コーティング154に関して上に論じた実施形態のいずれか(例えば、段階的な組成、純粋なシリコン組成、シリコンリッチ組成、基本的にシリコン組成、または一般に約35パーセント以上のシリコン組成)とすることができる。いくつかの実施形態では、シリコン含有コーティング154は、(層210により破線で図示されたように)3層以上の層を含むことができ、交互の層は、シリコンおよび酸素の層とシリコンの層とを含み、少なくとも最外層(例えば、処理領域124に露出した層)が、単一層のシリコン含有コーティング154に関して上に論じた実施形態のうちのいずれかである。
【0017】
上に論じた実施形態のうちのいずれかを含むいくつかの実施形態では、少なくとも最も外側のシリコン含有層は、少なくとも1つのドーパントを含有することができる。このようなドーパントは、ホウ素(B)、ヒ素(As)、リン(P)、ゲルマニウム(Ge)、炭素(C)、窒素(N)、またはその他を含むことができる。シリコン含有コーティング154の最外表面(または部分)へのドーパントの添加は、処理中のフッ素の除去をさらに容易にすることができる。いくつかの実施形態では、シリコン含有コーティング154中に与えられたドーパントを、下記により詳細に論じるように、処理中にフッ素前駆物質ガス中で利用する同じ元素とすることができる。
【0018】
再度図1を参照する。1対の外部凹形導管126、128が、処理領域124を通過するプラズマ電流用の凹形トロイダル経路を作っており、トロイダル経路が処理領域124内で交差している。導管126、128の各々は、プロセスチャンバの両側に連結された1対の端部130を有する。各導管126、128は中空の導電性管である。各導管126、128は、導管の2つの端部間の閉ループ導電性経路の形成を防止するDC絶縁リング132を有している。
【0019】
各導管126、128の環状部分は、環状磁気コア134によって囲まれる。コア134を囲む励起コイル136は、インピーダンス整合デバイス140を介してRF電源138に接続される。環状磁気コア134のうちのそれぞれ1つに接続された2つのRF電源138は、2つのわずかに異なる周波数のものとすることができる。RF電源138から接続されたRF電力は、それぞれの導管126、128を通り処理領域124を通って延びる閉トロイダル経路内に、プラズマイオン電流を生成する。これらのイオン電流は、それぞれのRF電源138の周波数で振動する。電力は、インピーダンス整合回路144またはDC電源150を介して、RFバイアス発電装置142によって基板支持部108に印加される。
【0020】
プラズマ形成と、それに続く基板処理は、ガス分配プレート112を介してプロセスチャンバ324中へとあるプロセスガスまたはプロセスガスの混合物を導入し、導管内および処理領域124内にトロイダルプラズマ電流を作り出すために十分な電源電力を発電装置138から凹形導管126、128に与えることによって実行される。RFバイアス発電装置142によって印加される基板バイアス電圧によって、基板表面近くのプラズマフラックスが決定される。RF電源発電装置138によって与えられるRF電力のレベルによって制御されるプラズマ密度によって、プラズマ速度またはフラックス(毎秒1平方cm当たりの基板表面に接触するイオンの数)が決定される。基板110の位置での累積イオンドーズ量(イオン/平方cm)は、フラックスおよびフラックスを維持する全時間の両者によって決定される。
【0021】
基板支持部108が静電チャックである場合には、基板支持部の絶縁プレート148内部に埋込み電極146を設け、埋込み電極146を、インピーダンス整合回路144またはDC電源150を介してRFバイアス発電装置142に接続する。
【0022】
動作中には、基板110を処理するために、反応装置100内部のプロセスガスからプラズマを発生させることができる。上に説明したように導管126、128内におよび処理領域124内にプラズマイオン電流を作り出すために、発電装置138から凹形導管126、128に十分な電源電力を与えることによって、処理領域124内にプラズマが形成される。いくつかの実施形態では、基板表面へのイオンのフラックスを制御するために、RFバイアス発電装置142によって送達される基板バイアス電圧を調節することができる。いくつかの実施形態では、バイアス電力を与えない。
【0023】
図3は、本発明のいくつかの実施形態によって基板を処理するための方法を図示する。図3の方法は、図1に説明した装置を参照して理解することができる。方法300は、一般に、302において、シリコン系コーティング154をプロセスチャンバの内表面156上に形成することにより開始される。シリコン系コーティング154は、上に説明した実施形態のうちのいずれかとすることができ、様々な方法で形成することができる。
【0024】
例えば、図4に図示したように、シリコン系コーティングを形成するための方法400が提供され、この方法は、402において、シリコン含有ガスを含む第1のプロセスガスをプロセスチャンバ102に供給することにより開始される。いくつかの実施形態では、シリコン含有ガスは、シラン(SiH)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ガス流を強めプラズマ着火を容易にするために、第1のプロセスガスは、アルゴン、ヘリウム、またはその他の不活性ガスをさらに含むことができる。第1のプロセスガスは、約10から約500sccmの流量でチャンバ102に供給することができる。
【0025】
次いで、404では、シリコン含有コーティング154を、プロセスチャンバ102の内表面156上に形成する。シリコン含有コーティングは、402において、プロセスチャンバ102の内表面156上に供給されるシリコン含有ガスの化学気相堆積によって形成することができる。いくつかの実施形態では、例えば、シリコン含有ガスを供給しながら、プロセスチャンバ102を、約5〜約300mTorrの間の圧力で摂氏約0〜約65度の間の温度に維持することができる。いくつかの実施形態では、プロセスガスからのプラズマの着火を容易にするために、およびコーティングの緻密化のために、RF電力を与えることができる。例えば、約200から約1000Wの間のRF電源電力および、任意選択で、約500WまでのRFバイアス電力を与えることができる。このプロセスによって形成されるシリコン含有コーティング154は、少なくとも約35パーセントシリコンの組成を有することができる。約500オングストロームから約10μmの間の厚さにシリコン含有コーティング154を堆積させるために十分な時間にわたって、第1のプロセスガスを供給することができ、堆積プロセスを継続することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、図5に図示したように、シリコン含有コーティング154が、シリコンおよび酸素を含む第1の層(または部分)と、第1の層よりも高いシリコン組成を有する第2の層(または部分)とを含む、シリコン系コーティングを形成するための方法500が提供される。方法500は、一般に、502において、シリコン含有ガスと酸素含有ガスとを含む第1のプロセスガスをプロセスチャンバ102に供給することにより開始される。シリコン含有ガスは、図4に関連して上に論じたガスのうちのいずれかとすることができる。例えば、適切な酸素含有ガスは酸素(O)である。いくつかの実施形態では、シリコン含有ガスはシラン(SiH)を含むことができ、酸素含有ガスは酸素(O)を含むことができる。第1のプロセスガスは、約10から約500sccmの間の全流量でチャンバ102に供給することができる。シリコン含有ガスが酸素含有ガスとは異なる実施形態では、シリコン含有ガスと酸素含有ガスとは、約10:1から約1:10の間のシリコン含有ガス対酸素含有ガスの流量比で供給することができる。いくつかの実施形態では、シリコン含有ガスおよび酸素含有ガスの各々の流量を、約30から約300sccmの間とすることができる。
【0027】
次に、504において、シリコンおよび酸素を含むシリコン含有コーティング154の第1の部分を、プロセスチャンバ102の内表面156上に形成する。第1の部分は、502において、プロセスチャンバ102の内表面156上に供給されるシリコン含有ガスの化学気相堆積によって形成することができる。いくつかの実施形態では、例えば、第1のプロセスガスを供給しながら、プロセスチャンバ102を、約5〜約300mTorrの間の圧力で摂氏約0〜約65度の間の温度に維持することができる。いくつかの実施形態では、プロセスガスからのプラズマの着火を容易にするために、およびSiコーティングの緻密化のために、RF電力を与えることができる。例えば、約200から約1000Wの間のRF電源電力と、任意選択で、約500WまでのRFバイアス電力を与えることができる。このプロセスによって形成したシリコン含有コーティング154の第1の部分は、酸化シリコン(SiO)の組成を有することができる。シリコンおよび酸素を含むシリコン含有コーティング154の第1の部分または層を約500オングストロームから約10μmの間の厚さに堆積させるために、十分な時間にわたり、第1のプロセスガスを供給することができ、堆積プロセスを継続することができる。
【0028】
次に、506では、プロセスチャンバ102への酸素含有ガスの流れを減少させることができる(酸素含有ガスの流れを終わらせることによることを含む)。いくつかの実施形態では、第1のプロセスガス中のシリコン含有ガスの流れを維持したままで、酸素含有ガスの流れを減少させることができる。いくつかの実施形態では、第1のプロセスガスの流れを停止することができ、(上に論じたものと同様な)シリコン含有ガスを含む第2のプロセスガスを、プロセスチャンバ102へ供給することができる。第2のプロセスガス中のシリコン含有ガスは、第1のプロセスガス中のシリコン含有ガスと同じことも異なることもある。いくつかの実施形態では、第2のプロセスガス中のシリコン含有ガスは、第1のプロセスガス中のシリコン含有ガスと同じである。
【0029】
酸素含有ガスの流れは、(所望の減少率でなど)徐々にまたは周期的に減少させることができ、結果として酸素含有ガスの流れを完全に終結させることがある。いくつかの実施形態では、シリコン含有ガス対酸素含有ガスの流量比を、約3:2と約6:1の間の初期流量比から、約10:1からほぼ純シリコン含有ガスの間の終了流量比へと減少させることができる。いくつかの実施形態では、シリコン含有ガス対酸素含有ガスについての(実際のsccmでの)初期流量比を、約300:200と約300:50の間から、約300:30から約300:0の間の終了流量比までとすることができる。
【0030】
次に、508では、シリコン系コーティング(例えば、外側部分204または第2の層208)を、例えば、上に論じたものと同じ温度および圧力条件で化学気相堆積によってシリコンおよび酸素系コーティング(例えば、内側部分202または第1の層206)の最上部に形成することができる。酸素含有ガスの流量の減少により、シリコン含有コーティング154のシリコン含有量が容易に増加し、その結果、少なくとも約35パーセントシリコンの組成を有するシリコン含有コーティング154の第2の部分(または層)を堆積させることができる。シリコンを含むシリコン含有コーティング154の第2の部分または層を約500オングストロームから約10μmの間の厚さに堆積させるために十分な時間にわたり、第2のプロセスガスを供給することができ、堆積プロセスを継続することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、シリコンおよび酸素を含む第1の部分と、さらに高いシリコン濃度を有する第2の部分とが、シリコン含有コーティング154を一緒に形成する(例えば、図2B参照)。いくつかの実施形態では、シリコンおよび酸素を含む第1の層と、さらに高いシリコン濃度を有する第2の層とが、シリコン含有コーティング154を一緒に形成する(例えば、図2C参照)。いくつかの実施形態では、シリコン含有コーティング154を形成する任意の所望の量の交互層を形成するために、上記のプロセスを要望通りに繰り返すことができる。例えば、シリコン含有コーティング154は、第1の層(または部分)と第2の層(または部分)との間に配置することが可能な1または複数の中間層(または部分)を含むことができる。いくつかの実施形態では、シリコンを含む第3の層を、シリコンおよび酸素を含む第1の層の最上部(例えば、第1の層と第2の層との間)に配置することができ、シリコンおよび酸素を含む第4の層を、第3の層の最上部(例えば、第3の層と第2の層との間)に配置することができる。このようなシリコン含有コーティング154は、プロセスチャンバの内表面上に配置されたシリコンおよび酸素を含む第1の層、第1の層の最上部に配置されたシリコンを含む第3の層、第3の層の最上部に配置されたシリコンおよび酸素を含む第4の層、ならびに第4の層の最上部に配置された少なくとも約35パーセントのシリコンを含む第2の層を含む。上記の層(例えば、第1の層、第2の層、第3の層、第4の層)を形成することができ、本明細書において論じた同様の層のように任意の組成を有することができる。
【0032】
上に論じたいずれかの実施形態などのいくつかの実施形態では、第1のプロセスガスまたは第2のプロセスガスは、ホウ素(B)、ヒ素(As)、リン(P)、ゲルマニウム(Ge)、炭素(C)、窒素(N)、またはその他のドーパントを与えるためにドーパント含有ガスをやはり含むことができる。ドーパント含有ガスは、シリコン含有ガスと同じでも異なってもよい。適切なドーパント含有ガスの例は、BF、B、AsH、PH、PF、GeH、CF、またはその他とすることができる。シリコン含有ガスがドーパント含有ガスとは別であるいくつかの実施形態では、シリコン含有ガスおよびドーパント含有ガスは、約10:1から約1:10の間のシリコン含有ガス対ドーパント含有ガスの流量比で供給することができるか、または、いくつかの実施形態では、sccmで、約300:30から約30:300までのシリコン含有ガス対ドーパント含有ガスの流量比で供給することができる。いくつかの実施形態では、この方法によって形成したシリコン含有コーティング154(または、シリコン含有コーティングの少なくとも外側部分もしくは第2の層)は、1または複数の上記のドーパントの少なくとも1パーセントの組成を有することができる。
【0033】
上に論じたいずれかの実施形態などのいくつかの実施形態では、シリコン含有コーティング154を、プラズマエンハンス型CVDプロセスを用いて形成することができる。上記の化学気相堆積プロセスのうちのいずれかでは、約10mTorrから約100mTorrの間のプロセスチャンバ圧力を維持しながら、プラズマを形成することができる。いくつかの実施形態では、約11から約14MHzの間の周波数で約100から約1500Wの間の電源RF電力を与えることで、プラズマを形成する。
【0034】
前述のものに加えて、シリコン含有コーティング154を所望の厚さまで堆積させながら、追加のプロセスパラメータを調整することができる。例えば、いくつかの実施形態では、化学気相堆積プロセスを実行する時間の長さを、所定の処理期間でまたは所望の厚さのシリコン含有コーティング154(またはシリコン含有コーティングの一部もしくは層)を堆積した後で、設定することができる。
【0035】
再度図3を参照する。次に、304では、基板110を処理するためのプラズマ前駆物質として、フッ素含有ガスをプロセスチャンバ102へ供給する。いくつかの実施形態では、フッ素含有ガスは、ホウ素、ヒ素、リン、ゲルマニウム、炭素、窒素、またはその他のドーパントを含有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、フッ素含有ガスは、三フッ化ホウ素(BF)、三フッ化リン(PF)、五フッ化リン(PF)、三フッ化ヒ素(AsF)、五フッ化ヒ素(AsF)、またはその他を含むことができる。フッ素含有ガスを、約5から約350sccmの流量でプロセスチャンバ102へ供給することができる。
【0036】
次に、306では、基板110の処理を容易にするために、プラズマをフッ素含有ガスから形成する。いくつかの実施形態では、約5から約100mTorrの間の圧力でプロセスチャンバ102を維持しながら、プラズマを形成する。いくつかの実施形態では、約40kHzから約14MHzの間の周波数で約100から約3000WのRF電源電力を与えてプラズマを形成する。方法300は、一般に、基板110のプラズマドーピングの終了によって終わり、必要に応じて基板110をさらに処理することができる。
【0037】
このように、本明細書では、フッ素系プラズマ基板処理のための装置および方法が提供されている。いくつかの実施形態では、チャンバ内に存在する残留フッ素ラジカルを有利に減少させるために、シリコンコーティングまたはシリコンリッチコーティングを有するプロセスチャンバが提供される。本発明は、プロセスチャンバ内の残留フッ素ラジカルを除いて基板の腐食を軽減することによって、基板処理を有利に改善することができる。
【0038】
上記は本発明の実施形態に向けられているが、本発明の別の実施形態およびさらなる実施形態を、本発明の基本的な範囲から乖離せずに考案することができる。
図1
図2
図3
図4
図5