【実施例】
【0025】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
<ヒトES細胞及びiPS細胞の維持培養>
ヒトES細胞としてはH1ヒトES細胞(WiCell Research Institute製)又は、京都大学中辻憲夫教授から供与されたKhES−1細胞を用いた。ヒトiPS細胞としては、京都大学山中伸弥教授から供与されたヒトiPS細胞(253G1ヒトiPS細胞)を用いた。そして、これらヒトES細胞及びiPS細胞は、マウス胎仔繊維芽細胞(MEF)との共培養により維持し、継代は6〜8日毎に実施した。
【0027】
H1ヒトES細胞の共培養のための培養液としては、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)とHam’s nutrient mixture F−12(Sigma社製)とを1:1で混合し、これに0.1mM 2−メルカプトエタノール(Wako社製)、200mM L−グルタミン(Invitrogen社製)、1M HEPES(Invitrogen社製)、最小必須培地(MEM)−非必須アミノ酸溶液(Invitrogen社製)、5ng/mL ヒト組み換え塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(R&D社製)と20% ノックアウト血清代替物(KSR)(Invitrogen社製)を加えたものを用いた(以下、HES1培養液とも称する)。
【0028】
KhES−1細胞又はヒトiPS細胞(253G1ヒトiPS細胞)の維持培養のための培養液としては、DMEMとHam’s nutrient mixture F−12とを1:1で混入し、これに0.1mM 2−メルカプトエタノール、200mM L−グルタミン、1M HEPES、MEM−非必須アミノ酸溶液、4ng/mL ヒト組み換えbFGFと20% KSRとを加えものを用いた(以下、HES2培養液とも称する)。
【0029】
また、未分化なヒトES細胞コロニーであることの確認は、組織免疫染色によるOct−4、Sox−2、TRA−1−60、Nanogの発現、及び免疫不全NOD−scidマウスの腎被膜下への移植によるテラトーマ形成能によった。
【0030】
<ヒトES細胞及びiPS細胞から間葉系幹細胞への分化誘導>
血小板採取装置により得られたヒト血小板濃厚血漿を−80℃で冷凍した後解凍することにより血小板を破壊した後、900gで遠心分離して上清を回収し、血小板溶解液(platelet lysate、PL)を作製した。ヒト多能性幹細胞から間葉系幹細胞を分化誘導するために、MEF上で維持培養されていたヒトES細胞やiPS細胞を回収して、又は凍結されていたヒトES細胞やiPS細胞を解凍して、フィーダー細胞を敷かないゼラチンコートされた10cm培養皿に播種し、HES1培養液又はHES2培養液に、5% PLと10,000U ノボ−ヘパリン(持田製薬株式会社製)とを添加し(以下、PL培養液とも称する)、37℃、5%CO
2の条件下で培養した。培養液交換は週2回行い、2〜3週毎に継代培養し、培養6〜8週目に、ヒトES細胞やiPS細胞を均一な紡錘形の細胞へと分化させた。得られた結果を
図1〜3に示す。
【0031】
<間葉系幹細胞の性状の解析>
前記の通りにして得られた均一な紡錘形の細胞の細胞表面マーカーをFACS(製品名:FACSCalibur instrument、BD Medical Systems社製)を用いて検出し、FlowJoソフトウェア(Tomy Digital Biology社製)を用いて解析した。また、得られた均一な紡錘形の細胞の遺伝子発現を、表1に示すプライマーを用いてRT−PCRで検討した。さらに、NH OsteoDiff Medium、NH AdipoDiff Medium(Miltenyi Biotec社製)を用いて、得られた均一な紡錘形の細胞から脂肪細胞や骨芽細胞への分化誘導を行い、各々オイルレッドO(Oil red O)染色、アルカリフォスファターゼ(ALP)染色により各細胞に分化誘導されていることを確認した。得られた結果を
図4〜7に示す。さらに、H1ヒトES細胞又は253G1ヒトiPS細胞から分化誘導された均一な紡錘形の細胞(50細胞)については、染色体検査を実施した。
【0032】
【表1】
【0033】
図1に示した結果から明らかなように、MEF上で維持されていたヒトES細胞(H1ヒトES細胞)を回収して、フィーダー細胞を用いず、ゼラチンをコートした10cm培養皿に播種し、PL培養液で37℃、5%CO
2の条件下で培養すると、6〜8週後に均一な紡錘形の細胞、すなわち間葉系幹細胞が分化誘導された。また、同様の方法を用いて、khES−1細胞や253G1ヒトiPS細胞からも、
図2〜3に示した結果から明らかなように、間葉系幹細胞を分化誘導することができた。
【0034】
さらに、これらの細胞の表面抗原をFACS法にて解析すると、
図4に示した結果から明らかなように、前記均一な紡錘形の細胞は、血液細胞、血管内皮細胞、未分化なES細胞のマーカーであるCD45、CD34、CD14、CD31、SSEA−4は発現しておらず、間葉系幹細胞のマーカーであるCD105、CD166を発現していた。さらに、骨芽細胞や脂肪細胞へ分化誘導すると、
図5〜6に示した結果から明らかなように、ALP染色陽性の骨芽細胞やオイルレッド染色陽性の脂肪細胞に分化したことより、前記の方法によって樹立された細胞は間葉系幹細胞であることが確認された。また、樹立された間葉系幹細胞のRT−PCR法による解析では、
図7に示した結果から明らかなように、未分化なヒトES細胞のマーカーであり、hESC(H1ヒトES細胞)においては遺伝子発現が確認されたOct−4の発現は認められなかった。また、マウス細胞由来のmHPRTの発現もH1ヒトES細胞から樹立された間葉系幹細胞(hESC由来MSC)においては認められなかったため、かかる間葉系幹細胞において、未分化なヒトES細胞やMEFの残存又は混入はないことが確認された。
【0035】
さらに、図には示さないが、H1ヒトES細胞、253G1ヒトiPS細胞から分化誘導された間葉系幹細胞については染色体検査を実施し、いずれも、解析された50細胞全てが正常核型であることを確認した。
【0036】
従って、ヒトPL(血小板溶解液)を用いて6〜8週間培養することにより、異種動物由来の血清を用いることなく、ヒトES細胞から間葉系幹細胞へ分化誘導でき、これらには未分化なヒトES細胞やMEFも混入していないことが確認された。また、かかるヒトPLを用いたヒト多能性幹細胞から間葉系幹細胞への分化誘導法は、ヒト由来のES細胞、ヒト由来のiPS細胞いずれにも適応可能で有り、染色体異常の発生する可能性は非常に低いことを示している。
【0037】
<ヒトES細胞及びiPS細胞の未分化コロニーの形成>
前記の通りにして、6wellプレート上でヒトES細胞やiPS細胞から分化誘導された間葉系幹細胞を、15〜18Gyの放射線照射した後にヒトES細胞やiPS細胞と共培養した。すなわち、この際の培養液として、間葉系幹細胞上に播種する細胞がH1ヒトES細胞であればHES1培養液を、253G1ヒトiPS細胞であればHES2培養液を用いて、間葉系幹細胞との共培養を行い、ヒトES細胞及びiPS細胞の未分化コロニーの形成を行った。得られた結果を
図8〜10に示す。また、一部の実験では、ヒト多能性幹細胞由来間葉系幹細胞と共培養されたヒト多能性幹細胞の未分化性を確認するために、未分化なヒトES細胞のマーカーであるOct−4、Sox−2、TRA−1−60、Nanogの発現を検討した。すなわち、蛍光標識した各々のマーカータンパク質を認識する抗体を用いて、形成されたコロニ―を染色し、蛍光顕微鏡を用いて観察した。得られた結果を
図11〜14に示す。さらに、形成されたコロニ―を構成する細胞が未分化性を維持していることを確認するため、H1ヒトES細胞由来間葉系幹細胞上で培養されたH1ヒトES細胞又は253G1ヒトiPS細胞をNOD−scidマウスに移植し、テラトーマが形成されるかどうかを検証した。
【0038】
図8〜10に示した結果から明らかなように、前記の方法を用いてヒトES細胞やiPS細胞から間葉系幹細胞を分化誘導し、15〜18Gyの放射線照射した後、その上に自己、非自己のヒトES細胞やiPS細胞を播種して6〜10日間共培養すると、MEFによる継代培養中のヒトES細胞やiPS細胞、あるいは解凍直後のヒトES細胞やiPS細胞であっても、未分化コロニーの形成を認めた。また、
図11〜14に示した結果から明らかなように、H1ヒトES細胞由来間葉系幹細胞上で培養されたH1ヒトES細胞は、いずれも未分化なヒトES細胞マーカーを発現していた。さらに、図には示さないが、H1ヒトES細胞由来間葉系幹細胞上で培養されたH1ヒトES細胞、253G1ヒトiPS細胞をNOD−scidマウスに移植すると、内胚樣、中胚葉、外胚葉由来の細胞からなるテラトーマが形成され、これらのヒト多能性幹細胞では未分化性が維持されていることが確認できた。
【0039】
(実施例1)
<ヒトES細胞及びiPS細胞から血液細胞への分化誘導>
前記の通りにして、ヒトES細胞やiPS細胞の未分化コロニーの形成が認められる培養6〜10日目に、2mM グルタミンと、4×10
−4M モノチオグリセロール(MTG、Sigma社製)と50mg/mL アスコルビン酸(Sigma社製)とを含む無血清培地であるStemPro−34(Invitrogen社製)培養液に、100ng/mL ヒト幹細胞因子(hSCF)、100ng/mL ヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)、100ng/mL ヒト融合蛋白質−6(ヒトインターロイキン−(IL−)6とヒト可溶性IL−6受容体との複合体、hFP−6)、20ng/mL hIL−3、10ng/mL ヒトトロンボポエチン(hTPO)、10ng/mL 顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、5U/mL ヒトエリスロポエチン(hEPO)、10ng/mL hbFGF、10ng/mL ヒト骨形成タンパク質(hBMP)−4からなるサイトカインカクテルを添加して、培養液を週2回交換しながら、培養を継続した。得られた結果を
図15〜17、26に示す。
【0040】
<血液細胞の同定>
前記の通りにして、10〜14日間共培養して得られた細胞を、ウシ胎児血清(FBS)等を含むMethocult H4435(StemCell Technologies Inc.社製)を用いて、血液コロニー培養し、血液コロニーの形成を行った。また、形成された血液コロニーについては、各コロニーのサイトスピン標本を作製し、May−Grunwald−Giemsa染色又は組織免疫染色して、コロニーを構成している細胞の同定を行った。なお、組織免疫染色は、前記の通りにして得られた細胞を、4% パラホルムアルデヒド(PFA)にて固定した後、Oct−4、Sox−2、TRA−1−60、Nanog、glycophorin A(GPA)、ヘモグロビン(Hb)、βグロビンの発現を、免疫染色により検討した。また、核染色を、Hoechst33342(Molecular Probes社製)を用いて行った。得られた結果を
図18〜25、27〜31に示す。
【0041】
図15〜17に示した結果から明らかなように、前述のように15〜18Gyの放射線照射したH1ヒトES細胞由来の間葉系幹細胞との共培養によりH1ヒトES細胞の未分化コロニー(
図15参照)が形成される培養6〜10日目に、前記サイトカインカクテル等を含むStemPro−34培養液に変更して、培養を継続し、培養液を変更してから10〜14日目にヒトES細胞から形成されたコロニーの中に、未分化な血液細胞が間葉系幹細胞下で増殖していることを示す敷石状細胞群(造血幹細胞や種々の造血前駆細胞等)が確認された(
図16参照)。また、その後造血細胞、または血液細胞と推測される小型円形細胞の増殖が確認された(
図17参照)。
【0042】
さらに、
図18〜23に示した結果から明らかなように、それらの細胞を回収して、血液コロニー培養すると、赤血球系細胞から構成される赤血球系コロニー、好中球、マクロファージや単球等の骨髄球系細胞から構成される骨髄球系コロニー、赤血球系細胞、骨髄球系細胞及び巨核球系細胞から構成される混合コロニーが形成された。
【0043】
また、
図24及び
図25に示した結果から明らかなように、これらの赤血球系コロニーに含まれる細胞は、赤血球系細胞のマーカーであるGPAやHbを発現する赤血球系細胞であることを確認した。さらに、これらの赤血球系細胞が、未熟な一次造血を起源とする胚性赤血球であるか、二次造血を起源とする成人型赤血球であるかを検討したところ、これらの赤血球の95%以上が、二次造血に特異的なβグロビンの発現する成人型赤血球であることを確認した(
図24参照)。なお、図には示さないが、Oct−4、Sox−2、TRA−1−60、Nanogといった未分化マーカーはこれら細胞において発現していないことも確認された。
【0044】
また、
図26〜28に示した結果から明らかなように、253G1ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞と253G1ヒトiPS細胞との共培養においても、253G1ヒトiPS細胞から形成されたコロニー中に敷石状細胞群が確認され(
図26参照)、10〜14日後に、それらの細胞を回収して血液コロニー培養すると、血液コロニーが形成され(
図27参照)、マクロファージ、骨髄球系細胞等の血液細胞が含まれていた(
図28参照)。
【0045】
さらに、
図29〜31に示した結果から明らかなように、253G1ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞とH1ヒトES細胞との共培養においても、H1ヒトES細胞から形成されたコロニー中に敷石状細胞群(造血幹細胞や種々の造血前駆細胞等)が確認され(図示せず)、10〜14日後に、それらの細胞を回収して血液コロニー培養すると、赤血球コロニー、混合コロニー、骨髄球系コロニー等様々な血液コロニーが形成された。
【0046】
従って、ヒト由来の多能性幹細胞を、ヒト由来の多能性幹細胞から樹立した間葉系幹細胞との共培養下で分化誘導することによって、血液細胞といった分化した細胞を得ることができることが明らかになった。さらには、従前のヒト多能性幹細胞から胚樣体を介して血液細胞に分化誘導する方法(非特許文献1〜2 参照)では得ることが困難だった二次造血に特異的な成人型赤血球も、前述の通り、本発明の方法では95%以上と極めて効率良く得ることができることも明らかになった。
【0047】
また、分化誘導させられる多能性幹細胞と、かかる間葉系幹細胞とが同一人由来のものであっても(前記、H1ヒトES細胞由来の間葉系幹細胞とH1ヒトES細胞との共培養の例、及び、253G1ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞と253G1ヒトiPS細胞との共培養の例 参照)、異なる人由来のものであっても(前記、253G1ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞とH1ヒトES細胞との共培養の例 参照)、同様にヒト由来の多能性幹細胞から分化した細胞を得ることができることも明らかになった。
【0048】
次に、ヒトPL(血小板溶解液)の代わりに自家血清を含む培地にて培養することにより、ヒトiPS細胞から自家由来の間葉系幹細胞を樹立し、さらに当該ヒトiPS細胞を当該間葉系幹細胞との共培養下で、自家血清を用いて血球系細胞に分化させることができるかどうかを以下に示す通り検証した。
【0049】
<ヒトiPS細胞の維持培養>
先ず、N Takayamaら、Journal of Experimental Medicine、2010年12月、207巻、13号、2817〜2830ページの記載に従って、健常成人由来の繊維芽細胞からヒトiPS細胞(SPH−0103)を樹立し、<ヒトES細胞及びiPS細胞の維持培養>に記載の方法と同様の方法にて、MEF上で維持した(
図32 参照)。
【0050】
<ヒトiPS細胞(SPH−0103)から間葉系幹細胞への分化誘導>
次に、MEF上にて維持されていたヒトiPS細胞(SPH−0103)を回収して、フィーダー細胞を敷かないゼラチンコートした10cm培養皿に移し、5%前記健常成人由来の血清(自家血清)を加えたHES1培養液(自家培地)にて、37℃、5%CO
2の条件下で培養した。その結果、培養6〜8週ぐらいで
図33に示すような均一な紡錘形の細胞(間葉系幹細胞)が分化誘導された。
【0051】
<ヒトiPS細胞(SPH−0103)の未分化コロニーの形成>
そして、ヒトiPS細胞(SPH−0103)から分化誘導された間葉系幹細胞に15〜18Gyの放射線を照射した後に、その上で自家iPS細胞(SPH−0103)を共培養することにより、
図34に示すように、自家iPS細胞はコロニーを形成し、未分化な状態で維持された。
【0052】
また、前記未分化コロニーついて、未分化なヒトES細胞のマーカーであるOct−4、Sox−2、SSEA−4、TRA−1−60、Nanogの発現を<ヒトES細胞及びiPS細胞の未分化コロニーの形成>に記載の方法と同様に検討した。その結果、
図35に示す通り(TRA−1−60については図には示さないが)、ヒトiPS細胞(SPH−0103)由来の間葉系幹細胞上で培養されたヒトiPS細胞(SPH−0103)は、いずれも未分化なヒトES細胞マーカーを発現しており、未分化性が維持されていることが確認できた。
【0053】
(実施例2)
<ヒトiPS細胞(SPH−0103)から血液細胞への分化誘導>
前記の通りにして、ヒトiPS細胞(SPH−0103)の未分化コロニーの形成が認められる培養6〜10日目に、100ng/mL hSCF、100ng/mL hVEGF、100ng/mL hFP−6、20ng/mL hIL−3、10ng/mL hTPO、10ng/mL G−CSF、5U/mL hEPO、10ng/mL hbFGF、10ng/mL hBMP−4からなるサイトカインカクテルを添加した、2mM グルタミン及び4×10
−4M MTGと50mg/mL アスコルビン酸を含む無血清培地(StemPro−34培養液)に変更して培養を継続した。培養液を変更してから10〜14日目の結果を
図36に示す。
【0054】
図36に示した結果から明らかなように、培養液を変更してから10〜14日目の、ヒトiPS細胞(SPH−0103)から形成されたコロニーの中に、小型円形細胞の増殖が確認された(
図36のa)。また、一部には未分化な血液細胞が間葉系幹細胞下にて増殖していることを示す敷石状細胞群が確認された(
図36のbの矢印が示す箇所)。
【0055】
さらに、その後、それらの細胞を回収して、FBSの代わりに自家血清を用いて血液コロニー培養を行った。すなわち、当該細胞を、30% 自家血清、0.9% メチルセルロース、1% BSA(純度100%)、50μM 2−メルカプトエタノール、100ng/ml hSCF、20ng/ml hIL−3、100ng/ml hIL−6、10ng/ml ヒトG−CSF、5U/ml hEPO、10ng/ml hTPO及びαメディウムからなる培養液にて、37℃、5%CO
2の条件下で血液コロニー培養を行った。得られた結果を
図37及び38に示す。
【0056】
図37に示した結果から明らかなように、前記自家血清を用いた血液コロニー培養によって、赤血球系細胞から構成される赤血球系コロニー(
図37 a、d)、好中球、マクロファージ・単球等の骨髄球系細胞から構成される骨髄球系コロニー(
図37 b、e)、赤血球系細胞、骨髄球系細胞及び巨核球系細胞から構成される混合コロニー(
図37 c、f)が形成された。また、表2に、独立して4回施行した自家間葉系幹細胞との共培養によって形成された血液コロニーについての結果を示す。なお表中、「iPSコロニーの数」は、1回の前記自家血清を用いた血液コロニー培養に供したiPS細胞のコロニーの数を示す。
【0057】
【表2】
【0058】
また、これらの赤血球コロニーに含まれる赤血球系細胞におけるβグロビン等の発現を<血液細胞の同定>に記載の方法と同様の方法にて検討したところ、ほぼ100%の赤血球系細胞にαグロビン、γグロビンが、また約70%の赤血球系細胞にβグロビンが発現していた(
図38 参照)。従って、これらの血液コロニーは二次造血を起源としており、約70%の赤血球系細胞は成人型ヘモグロビンを合成していることが明らかになった。
【0059】
従って、上述のようにヒトPLを用いずとも、自家血清を用いて、間葉系幹細胞を分化誘導し、分化誘導された間葉系幹細胞と自家iPS細胞とを共培養することで、ヒトiPS細胞から異種動物血清(FBS等)やallogeneic(同種異系)血清を用いずに、血液細胞を誘導できることが明らかになった。
【0060】
また、実際に、一人のドナーから樹立されたiPS細胞(SPH−0103)から、そのドナーの血清を用いて、動物細胞・動物血清を用いることなく、赤血球、白血球、巨核球等の血液細胞が分化誘導できることも明らかになった。