【文献】
JING-Liang He,4-ps passively mode-locked Nd:Gd0.5Y0.5VO4 laser with a semiconductor saturable-absorber mirror,optics letters,2004年12月 1日,Vol.29 No.23,P.2803-2805,意見書添付文献
【文献】
池末明生,固体レーザーの現状とセラミックス化への期待,マテリアルインテグレーション,1999年,Vol.12 No.4,P.49-56
【文献】
井上幸治 他,強磁場印加によるハイドロキシアパタイトの結晶配向,材料とプロセス,日本,日本鉄鋼協会,2002年 3月 1日,Vol.15, No.1, pp.226
【文献】
秋山順 他,強磁場中試料回転スリップキャスティングによるc軸配向HApバルク体の作製,日本金属学会誌,日本,日本金属学会,2006年,Vol.70, No.5, pp.412-414
【文献】
Tohru S Suzuki,Orientation Amplification of Alumina by Colloidal Filtration in a Strong Magnetic Field and Sintering,Advanced Engineering Materials,2001年,3 No.7,P.490-492
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記単結晶粒子がアパタイト系化合物よりなり、かつ前記希土類元素がセリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホロミウム(Ho)よりなる群から選ばれる少なくとも一種である場合、又は
前記単結晶粒子がバナデート系化合物よりなり、かつ前記希土類元素がプロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)よりなる群から選ばれる少なくとも一種である場合であって、
前記成形工程で静磁場を印加する請求項6に記載の透光性多結晶材料の製造方法。
前記単結晶粒子がアパタイト系化合物よりなり、かつ前記希土類元素がプロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)よりなる群から選ばれる少なくとも一種である場合、又は
前記単結晶粒子がバナデート系化合物よりなり、かつ前記希土類元素がセリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホロミウム(Ho)よりなる群から選ばれる少なくとも一種である場合であって、
前記成形工程で回転磁場を印加する請求項7に記載の透光性多結晶材料の製造方法。
前記成形工程で印加する磁場の強度が1T(テスラ)以上であり、該成形工程で前記単結晶粒子の結晶温度が300K以下となるように温度制御する請求項5に記載の透光性多結晶材料の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の透光性多結晶材料及びその製造方法の実施形態について詳しく説明する。なお、本発明の透光性多結晶材料及びその製造方法は、説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0031】
本実施形態の透光性多結晶材料の製造方法は、準備工程と、成形工程と、焼成工程とを備えている。
【0032】
準備工程では、希土類元素が添加された光学的に異方性の単結晶粒子を含む原料粉末を溶液中に分散させて、懸濁液を準備する。
【0033】
ここに、光学的に異方性の単結晶粒子とは、屈折率が結晶方位によって変化する単結晶粒子、すなわち屈折率に結晶方位依存性を有する単結晶粒子のことである。光学的に異方性の単結晶粒子としては、六方晶、三方晶及び正方晶のうちのいずれか一つの結晶構造を有するものを挙げることができる。
【0034】
六方晶の結晶構造を有する単結晶粒子として、好ましくは、アパタイト系化合物よりなる単結晶粒子、アルミナ系化合物よりなる単結晶粒子等を挙げることができる。また、正方晶の結晶構造を有する単結晶粒子として、好ましくは、バナデート系化合物よりなる単結晶粒子、イットリウムリチウムフロライド系化合物よりなる単結晶粒子等を挙げることができる。
【0035】
六方晶系のアパタイト系化合物よりなる単結晶粒子としては、例えば、α
5(βO
4)
3γ(α:Ca又はSr、β:P又はV、γ:OH又はF)の化学式で示されるフッ素アパタイト、水酸アパタイト又はバナジウムアパタイトを挙げることができる。
【0036】
正方晶系のバナデート系化合物よりなる単結晶粒子としては、例えば、YVO
4の化学式で示されるイットリウムオルソバナデート、GdVO
4の化学式で示されるガドリニウムオルソバナデートやLuVO
4の化学式で示されるルテチウムオルソバナデートを挙げることができる。
【0037】
希土類元素は、外殻電子により遮蔽された4f電子の寄与により固有の磁性特性を発現する。このため、光学的に異方性の単結晶粒子に希土類元素を添加することにより、結晶中の希土類イオンにより誘起される磁気異方性を駆動力とした結晶配向制御が可能になる。
【0038】
光学的に異方性の単結晶粒子に添加される希土類元素としては、例えば、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)やイッテルビウム(Yb)を挙げることができる。これらの希土類元素のうちの一種が単独で各単結晶粒子に含まれていてもよいし、あるいは複数種類の希土類元素が各単結晶粒子に含まれていてもよい。またこれらの希土類元素の中でも、特に固体レーザーにドープする代表的な元素であるNd及びYbのうちの少なくとも一方が単結晶粒子に含まれていることが好ましい。なお、ガドリニウム(Gd)およびルテチウム(Lu)は基底状態の軌道角運動量の値が0でありスピン角運動量しか有さないので、結晶軸と磁化の方向が対応しない。ゆえにGdおよびLuの単独での添加は磁気異方性誘起増強効果を生じない。
【0039】
希土類元素が添加された単結晶粒子の準備方法は特に限定されず、例えば、
仮焼きによる固相反応、あるいは湿式合成法により、所定の酸化物粉末に希土類元素を均一分散させればよい。
【0040】
そして、例えば、希土類元素が添加された単結晶粒子としての酸化物粉末と、他の所定の酸化物粉末との混合粉末よりなる原料粉末を、水(溶媒)及び高分子系分散剤に添加することで、懸濁液を準備することができる。なお、溶媒及び分散剤の種類、並びに分散剤の添加濃度については、特に限定されず、原料粉末の状態に応じて適宜選択することができる。また、この懸濁液を準備する際、希土類元素が添加された単結晶粒子としての酸化物粉末を複数種類用いてもよい。
【0041】
成形工程では、磁場空間でスリップキャスティングを行うことにより、前記懸濁液から成形体を得る。
【0042】
このときのスリップキャスティングの方法は特に限定されず、例えば、石膏製等の多孔性容器に前記懸濁液を注ぎ込み、重力方向に脱水して乾燥、成形すればよい。
【0043】
本実施形態の製造方法における成形工程では、このスリップキャスティングを磁場空間で行う。このとき印加する磁場の強度は、希土類元素が添加された単結晶粒子の磁気異方性の大きさに応じて適宜設定可能であるが、1T(テスラー)以上であることが望ましく、1.4T程度であることが特に望ましい。1.4T程度の磁場強度であれば、汎用の電磁石装置により直径180mm、ギャップ70mm程度の範囲において均質な磁場を容易に発生させることができるため、大口径の透光性多結晶材料を容易に製造することが可能になるからである。また、本実施形態において印加磁場強度の上限は磁場発生装置の制約により15Tであることがよい。希土類イオンの異方性により、1.4Tという低磁場の印加によっても単結晶粒子を高度に配向させることが可能である。
【0044】
成形工程で印加する磁場の発生手段は、印加しようとする磁場強度に応じて適宜選定可能である。超伝導磁石や永久磁石を用いてもよいが、均質かつ広大な磁場空間を容易に得られることから電磁石を用いることが望ましい。
【0045】
磁場印加の具体的方法は、希土類元素が添加された単結晶粒子の磁化容易軸の方向により決められる。すなわち、希土類元素が添加された単結晶粒子における磁化容易軸がc軸である場合は静磁場を印加し、希土類元素が添加された単結晶粒子における磁化容易軸がa軸である場合は鉛直方向を軸とする回転磁場を印加する。
【0046】
回転磁場を印加する場合、磁場の回転速度は0.1rpm〜100rpmであることが好ましい。磁場の回転速度が0.1rpm未満の場合には単結晶粒子の配向性が低下するおそれがあり、100rpmを越える場合には、遠心力に起因する分散性の低下に伴い配向性が低下するおそれがある。
【0047】
具体的には、希土類元素としてセリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)又はホロミウム(Ho)が添加されたアパタイト系化合物よりなる単結晶粒子(例えば、Nd:FAP(Ca
5(PO
4)
3F)においては、磁化容易軸がc軸になる。すなわち、磁化率の異方性が、χa<χcとなる。このため、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy又はHoが添加されたアパタイト系化合物よりなる単結晶粒子の場合、
図1(a)に示されるように、c軸と印加磁場方向が平行となる方向に磁気トルクが生じるため、任意方向の静磁場を印加することで一軸的配向性が得られる。これにより、各単結晶粒子の結晶方向が一方向に揃った成形体を得ることができる。
【0048】
同様に、希土類元素としてプロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)又はイッテルビウム(Yb)が添加されたバナデート系化合物よりなる単結晶粒子においては、磁化容易軸がc軸になり、磁化率の異方性が、χa<χcとなる。このため、Pm、Sm、Er、Tm又はYbが添加されたバナデート系化合物よりなる単結晶粒子の場合、c軸と印加磁場方向が平行となる方向に磁気トルクが生じるため、任意方向の静磁場を印加することで一軸的配向性が得られる。これにより、各単結晶粒子の結晶方向が一方向に揃った成形体を得ることができる。
【0049】
一方、希土類元素としてPm、Sm、Er、Tm又はYbが添加されたアパタイト系化合物よりなる単結晶粒子(例えば、Yb:FAP(Ca
5(PO
4)
3F)においては、磁化容易軸がa軸になる。すなわち、磁化率の異方性が、χc<χaとなる。このため、Pm、Sm、Er、Tm又はYbが添加されたアパタイト系化合物よりなる単結晶粒子の場合、a軸が磁場印加方向と平行に配向する。このとき、
図1(b)に示されるように、c軸は磁場と垂直な面内でトルクを受けず、任意の方向と成り得る。このため、磁場印加方向と垂直な方向を回転軸方向とする回転磁場を印加することにより、c軸が一軸的に配向した成形体を得ることができる。すなわち、各単結晶粒子の結晶方向が一方向に揃った成形体を得ることができる。
【0050】
同様に、希土類元素としてCe、Pr、Nd、Tb、Dy又はHoが添加されたバナデート系化合物よりなる単結晶粒子においては、磁化容易軸がa軸になり、磁化率の異方性が、χc<χaとなる。このため、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy又はHoが添加されたバナデート系化合物よりなる単結晶粒子の場合、a軸が磁場印加方向と平行に配向し、c軸は任意の方向と成り得るため、磁場印加方向と垂直な方向を回転軸方向とする回転磁場を印加することにより、c軸が一軸的に配向した成形体を得ることができる。
【0051】
なお、このような磁気特性と磁場印加方法との関係は、六方晶、三方晶又は正方晶のいずれの場合においても同じである。すなわち、単結晶粒子の結晶構造が六方晶、三方晶又は正方晶のいずれの場合であっても、希土類元素が添加された単結晶粒子の磁化容易軸方向に応じて所定の磁場印加方法を採用することにより、各単結晶粒子の結晶方向が一方向に揃った成形体を得ることができる。
【0052】
ここに、単結晶粒子における磁化容易軸は、結晶構造、添加されている希土類元素のイオン種及び結晶温度に依存する。例えば、Ybが1.8at.%添加されたYVO
4単結晶の磁気異方性の温度依存性を
図2に示す。なお、
図2において、□印は1.8at.%Yb:YVO
4単結晶におけるc軸方向の磁化率を示し、●印は1.8at.%Yb:YVO
4単結晶におけるa軸方向の磁化率を示す。
【0053】
図2より明らかなように、結晶温度が低いほど希土類イオンによる磁気異方性誘起効果が大きいことがわかる。1.8at.%Yb:YVO
4の場合、例えば結晶温度を300Kから200Kに低下させることにより磁気異方性の大きさは1.85倍となる。このように成形工程において懸濁液を冷却して結晶温度を低くすることは印加磁場強度を増加させることと等価の効果を有する。一方、成形工程における単結晶粒子の結晶温度が高すぎると、希土類イオンによる磁気異方性誘起効果が小さくなって、単結晶粒子における磁気異方性が小さくなり、結晶の配向制御に必要な印加磁場強度が高くなったり、あるいは結晶の配向制御自体が困難又は不可能になったりする。したがって、成形工程においては、希土類元素が添加された単結晶粒子が所定の磁気異方性を発揮するように温度制御する必要がある。かかる観点より、成形工程では、単結晶粒子の結晶温度が300K以下となるように温度制御することが好ましく、単結晶粒子の結晶温度が273K以下となるように温度制御することがより好ましい。
【0054】
成形工程において、希土類元素が添加されたアパタイト系化合物又はバナデート系化合物よりなる単結晶粒子が磁場配向可能となるように懸濁液を温度制御すれば、1T〜1.4Tの印加磁場強度で結晶方向を高度に一軸配向させることができる。なお、成形工程における単結晶粒子の結晶温度が低ければ低いほど、希土類イオンによる磁気異方性誘起効果が大きくなるため、結晶の配向制御に必要な印加磁場強度を低くできて好ましいが、低温環境下における粒子の分散性と成形性の観点より成形工程における単結晶粒子の結晶温度の下限は180Kとすることが好ましい。
【0055】
焼成工程では、前記成形体を焼成して、結晶方位が制御された多結晶構造を有する透光性の多結晶体よりなる透光性多結晶材料を得る。すなわち、こうして得られた透光性多結晶材料では、多結晶構造を構成する各単結晶粒子の結晶方向が一方向に揃ったものとなる。焼成工程においては磁場を印加しなくても高い配向性を有する透明多結晶材料を得ることができる。
【0056】
この焼成工程では、一次焼結工程と、二次焼結工程とを順に実施する。
【0057】
一次焼結工程では、前記成形体を1600〜1900Kの温度で一次焼結して一次焼結体を得る。一次焼結温度は1700〜1900Kであることがよい。
図3にフッ素アパタイト焼結体(Ca
5(PO
4)
3F
2)の相対密度を示す。相対密度とは、試料中の気孔がゼロであるときの密度(理論密度)に対する、実際の試料密度の比率(百分率)をいう。
【0058】
この焼結体の相対密度は1600K以上、好ましくは1700K以上の処理で飽和する。ゆえに一次焼結工程における処理温度が1600Kよりも低いと、一次焼結段階の緻密化が不十分となるため、二次焼結工程で得られる多結晶材料の透光性が低下する。一方、一次焼結温度が1900Kよりも高いと、異常粒成長により結晶粒が粗大化するため、二次焼結工程で得られる多結晶材料の機械的強度が低下する。この一次焼結工程における雰囲気、時間及び圧力は特に限定されないが、例えば雰囲気:大気、一次焼結時間:0.5〜3時間程度の常圧焼結とすることができる。
【0059】
二次焼結工程では、一次焼結体を1600〜1900Kの温度で熱間等方加圧焼結する。二次焼結での焼結温度は1700〜1900Kであることがよい。二次焼結工程における二次焼結温度が一次焼結温度の下限である1700K未満、更には1600K未満の場合には、熱間等方加圧による緻密化が最適とならないため、得られる多結晶材料の透光性が低下する。一方、二次焼結温度が1900Kよりも高いと、結晶粒が粗大化するため、得られる多結晶材料の機械的強度が低下する。この二次焼結工程のおける雰囲気、時間及び圧力は特に限定されないが、例えば雰囲気:アルゴン、二次焼結時間:0.5〜1時間程度、二次焼結圧力:100〜200MPa程度とすることができる。
【0060】
こうして製造された本実施形態に係る透光性多結晶材料は、希土類元素を含む複数の光学的に異方性の単結晶粒子を成形、焼成して得られた透光性の多結晶体よりなり、各単結晶粒子の結晶方向が一方向に揃った多結晶構造を有する。
【0061】
ここに、透光性多結晶材料における透光性とは、吸収や散乱なしに光が多結晶体中を進むこと、すなわち光学的に透明であることを意味する。より具体的には、多結晶体の厚さ:0.8mm、光の波長:1000nmの透過率測定条件における直線透過率が50%以上である(好ましくは70%以上である)ことを意味する。直線透過率とは、透光性多結晶材料の厚み方向の光の透過率を示す。
【0062】
(実施例)
【0063】
以下の実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
【0065】
実施例1では、希土類元素としてNdを、異方性の単結晶粒子としてCa
5(PO
4)
3Fの化学式で示されるフルオロアパタイト(FAP)をそれぞれ用いて、透光性多結晶材料としてのNd:FAPセラミックスを製造した。
【0066】
<準備工程>
【0067】
湿式法により作製した4at.%Nd:FAP単結晶体を乳鉢にて粉砕し、平均粒子径約0.2μmの4at.%Nd:FAP単結晶粒子とした。この4at.%Nd:FAP単結晶粒子3gに、水3mL及び分散剤(アクアリック、日本触媒製)1mLを添加することにより4at.%Nd:FAP懸濁液よりなるスラリー1を作製した。
【0068】
<成形工程>
【0069】
図4に示すように、スラリー1を石膏モールド2に注ぎ、296Kの温度にて、電磁石3を用いて1.4Tの水平方向の磁場を印加しつつ、スラリー1を重力方向に脱水、成形した。
【0070】
ここに、4at.%Nd:FAP単結晶体における磁化容易軸はc軸であるため、4at.%Nd:FAP単結晶体にはc軸と印加磁場方向とが平行となる方向に磁気トルクが発生する。このため、実施例1における成形工程では、石膏モールド2を回転させることなく、水平方向の静磁場をスラリー1に印加することにより、4at.%Nd:FAP単結晶体のc軸を印加磁場方向と平行な方向に一軸的に配向させた。
【0071】
その後、室温で72時間、自然乾燥させて、直径7mm、厚さ10mmの円柱状の成形体を得た。
【0072】
<焼成工程>
【0073】
得られた成形体を大気雰囲気下、加熱温度:1873K、加熱時間:1時間の条件で焼成することにより一次焼結を行なった。得られた一次焼結体の相対密度は90%以上であった。
【0074】
さらに、得られた一次焼結体に対して、アルゴン雰囲気下、加熱温度:1873K、加熱時間:1時間、圧力:196MPaの条件で、カプセルフリーのHIP(Hot Isostatic Pressing:熱間等方加圧成形)処理を施して二次焼結を行い、実施例1のNd:FAPセラミックスを製造した。
【0075】
実施例1で得られたNd:FAPセラミックスを直径7mm、厚さ0.8mmに成形し、波長1000nmの光における直線透過率を測定したところ77%となり、透光性を示した。
【0076】
(実施例2)
【0077】
本実施例では、希土類元素としてYbを、異方性の単結晶粒子として、実施例1と同様、Ca
5(PO
4)
3Fの化学式で示されるFAPをそれぞれ用いて、透光性多結晶材料としてのYb:FAPセラミックスを製造した。
【0078】
<準備工程>
【0079】
湿式法により作製した4at.%Yb:FAP単結晶体を乳鉢にて粉砕し、平均粒子径約0.2μmの4at.%Yb:FAP単結晶粒子とした。この4at.%Yb:FAP単結晶粒子3gに、水3mL及び分散剤(アクアリック:日本触媒製)1mLを添加することにより4at.%Yb:FAP懸濁液(スラリー)よりなるスラリー1を作製した。
【0080】
<成形工程>
【0081】
図4に示すように、スラリー1を石膏モールド2に注ぎ、296Kの温度にて、電磁石3を用いて1.4Tの水平方向の磁場を印加しつつ、スラリー1を重力方向に脱水、成形した。
【0082】
ここに、4at.%Yb:FAP単結晶体における磁化容易軸はa軸であるため、4at.%Yb:FAP単結晶体にはa軸と印加磁場方向とが平行となる方向に磁気トルクが発生する。このとき、4at.%Yb:FAP単結晶体のc軸は磁場と垂直な面内で磁気トルクを受けないため、4at.%Yb:FAP単結晶体のc軸は任意の方向を向き得る。このため、実施例2における成形工程では、印加磁場方向の垂直方向である鉛直方向を回転軸として、石膏モールド2を17rpmで回転させて、水平方向の回転磁場をスラリー1に印加することにより、4at.%Yb:FAP単結晶体のc軸を回転軸方向と平行な方向に一軸的に配向させた。
【0083】
その後、室温で72時間、自然乾燥させて、直径7mm、厚さ10mmの円柱状の成形体を得た。
【0084】
<焼成工程>
【0085】
得られた成形体を実施例1と同様に一次焼結するとともにHIP処理を施して、実施例2のYb:FAPセラミックスを得た。
【0086】
この実施例2で得られたYb:FAPセラミックスは光学的に透明であり、実施例1と同等の透光性を示した。
【0087】
(実施例3)
【0088】
実施例1の焼成工程において、一次焼結での加熱温度を1773Kに変更すること以外は、実施例1と同様にして、実施例3のNd:FAPセラミックスを製造した。なお、実施例3の焼成工程における一次焼結で得られた一次焼結体の相対密度は90%以上であった。
【0089】
この実施例3で得られたNd:FAPセラミックスは光学的に透明であり、実施例1と同等の透光性を示した。
【0090】
(実施例4)
【0091】
実施例2の焼成工程において、一次焼結での加熱温度を1773Kに変更すること以外は、実施例2と同様にして、実施例4のYb:FAPセラミックスを製造した。なお、実施例4の焼成工程における一次焼結で得られた一次焼結体の相対密度は90%以上であった。
【0092】
この実施例4で得られたYb:FAPセラミックスは光学的に透明であり、実施例1と同等の透光性を示した。
【0093】
(実施例5)
【0094】
実施例1の焼成工程において、一次焼結時の圧力を1×10
−4Pa、加熱温度を1643Kに変更すること以外は、実施例1と同様にして、実施例5のNd:FAPセラミックスを製造した。なお、実施例5の焼成工程における一次焼結で得られた一次焼結体の相対密度は90%以上であった。
【0095】
この実施例5で得られたNd:FAPセラミックスは光学的に透明であり、実施例1と同等の透光性を示した。
【0096】
(比較例1)
【0097】
実施例1の焼成工程において、一次焼結での加熱温度を1573Kに変更すること以外は、実施例1と同様にして、比較例1のNd:FAPセラミックスを製造した。なお、比較例1の焼成工程における一次焼結で得られた一次焼結体の相対密度は90%以下であった。
【0098】
この比較例1で得られたNd:FAPセラミックスは光学的に透明ではなく、透光性を示さなかった。
【0099】
(比較例2)
【0100】
実施例2の焼成工程において、一次焼結での加熱温度を1573Kに変更すること以外は、実施例2と同様にして、比較例2のYb:FAPセラミックスを製造した。なお、比較例2の焼成工程における一次焼結で得られた一次焼結体の相対密度は90%以下であった。
【0101】
この比較例2で得られたYb:FAPセラミックスは光学的に透明ではなく、透光性を示さなかった。
【0102】
(比較例3)
【0103】
実施例1の焼成工程において、二次焼結(HIP処理)での加熱温度を1273Kに変更すること以外は、実施例1と同様にして、比較例3のNd:FAPセラミックスを製造した。
【0104】
この比較例3で得られたNd:FAPセラミックスは光学的に透明ではなく、透光性を示さなかった。
【0105】
(比較例4)
【0106】
実施例2の焼成工程において、二次焼結(HIP処理)での加熱温度を1273Kに変更すること以外は、実施例2と同様にして、比較例4のYb:FAPセラミックスを製造した。
【0107】
この比較例4で得られたYb:FAPセラミックスは光学的に透明ではなく、透光性を示さなかった。
【0108】
(結晶方位の評価)
【0109】
実施例1で得られたNd:FAPセラミックス及び実施例2で得られたYb:FAPセラミックス試料について、X線回折装置(「RINT2035」、株式会社リガク製)を用いて結晶方位の評価を行った。
【0110】
その結果を
図5に示す。なお、
図5中、(A)は実施例1で得られたNd:FAPセラミックスについての評価結果、(B)は実施例2で得られたYb:FAPセラミックスについての評価結果、(C)は希土類元素が添加されていないFAP単結晶体粉末についての評価結果、(D)は希土類元素が添加されていないFAP単結晶体粉末のJCPDSカードデータをそれぞれ示す。
【0111】
図5に示される結果より、(A)の実施例1で得られたNd:FAPセラミックスについては、(001)面の相対強度が上昇しており、c軸配向していることが確認された。また、(B)の実施例2で得られたYb:FAPセラミックスについては、(hk0)面の相対強度が上昇しており、a軸を磁化容易軸とした結晶配向が観察された。
【0112】
したがって、1.4Tの磁場印加により、レーザー媒質として必要な高度で一軸的な配向性の付与が可能であることが確認できた。
【0113】
よって、異方性結晶を用いたレーザセラミック媒体の作製が可能であることが実証された。
【0114】
(その他の実施例)
【0115】
なお、前記実施例1、3、5では、希土類元素としてNdを、異方性の単結晶粒子としてCa
5(PO
4)
3Fの化学式で示されるフルオロアパタイト(FAP)をそれぞれ用い、成形工程で静磁場を印加して、透光性多結晶材料としてのNd:FAPセラミックスを製造する例について説明した。しかし、実施例1、3、5において、希土類元素として、Ndの代わりに、Ce、Pr、Tb、Dy又はHoを用いてもよい。また、異方性の単結晶粒子として、Ca
5(PO
4)
3Fの化学式で示されるフッ素アパタイト(FAP)の代わりに、Sr
5(PO
4)
3F、Sr
5(VO
4)
3F、Ca
5(VO
4)
3F、Ca
5(PO
4)
3OH、Sr
5(PO
4)
3OH、Sr
5(VO
4)
3OH又はCa
5(VO
4)
3OHを用いたりしてもよい。これらの場合にも、実施例1、3、5と同様、成形工程で静磁場を印加することで、透光性多結晶材料を製造することができる。
【0116】
同様に、前記実施例1、3、5において、希土類元素として、Ndの代わりに、Pm、Sm、Er、Tm又はYbを用いるとともに、異方性の単結晶粒子として、Ca
5(PO
4)
3Fの化学式で示されるフッ素アパタイト(FAP)の代わりに、YVO
4の化学式で示されるイットリウムオルソバナデート、GdVO
4の化学式で示されるガドリニウムオルソバナデート又はLuVO
4の化学式で示されるルテチウムオルソバナデートを用いてもよい。これらの場合にも、実施例1、3、5と同様、成形工程で静磁場を印加することで、透光性多結晶材料を製造することができる。
【0117】
また、前記実施例2、4では、希土類元素としてYbを、異方性の単結晶粒子としてCa
5(PO
4)
3Fの化学式で示されるフルオロアパタイト(FAP)をそれぞれ用い、成形工程で回転磁場を印加して、透光性多結晶材料としてのYb:FAPセラミックスを製造する例について説明した。しかし、実施例2、4において、希土類元素として、Ybの代わりに、Pm、Sm、Er又はTmを用いるとともに、異方性の単結晶粒子として、Ca
5(PO
4)
3Fの化学式で示されるフッ素アパタイト(FAP)の代わりに、Sr
5(PO
4)
3F、Sr
5(VO
4)
3F、Ca
5(VO
4)
3F、Ca
5(PO
4)
3OH、Sr
5(PO
4)
3OH、Sr
5(VO
4)
3OH又はCa
5(VO
4)
3OHを用いてもよい。これらの場合にも、実施例2、4と同様、成形工程で回転磁場を印加することで、透光性多結晶材料を製造することができる。
【0118】
同様に、前記実施例2、4において、希土類元素として、Ybの代わりに、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy又はHoを用いるとともに、異方性の単結晶粒子として、Ca
5(PO
4)
3Fの化学式で示されるフッ素アパタイト(FAP)の代わりに、YVO
4の化学式で示されるイットリウムオルソバナデート、GdVO
4の化学式で示されるガドリニウムオルソバナデート又はLuVO
4の化学式で示されるルテチウムオルソバナデートを用いてもよい。これらの場合にも、実施例2、4と同様、成形工程で回転磁場を印加することで、透光性多結晶材料を製造することができる。