【実施例】
【0028】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0029】
(実施例1)
インジウムを鋳造して得たアノード板を電解槽に配置した。電解槽には、ステンレス板又はチタン板からなるカソード板を交互に配置した。これらのアノード板とカソード板は、平行に複数枚配置した。電解槽には、電解液を供給する。電解液には、硝酸アンモニウム水溶液(NH
4NO
3)を用い電解を開始した。
【0030】
電解開始してから、酸化層が形成されたアノード板を取り出し、大気中で溶解した。この場合、
図1に示すように、ルツボの中に予めインジウムを溶解しておき、この中に表面酸化したインジウムを浸漬しながら溶融した。
このインジウム板を浸漬していくに連れて、下部から溶解していき、インジウム溶湯の上にはスラグが形成された。この分析結果を表1に示す。この表1には、原料インジウムと、表面酸化したインジウムを鋳造した場合のインジウムと、スラグ中との、Si、Fe、Zr、Alの分析結果を対比して示す。
【0031】
【表1】
【0032】
原料インジウムについては、この表1の分析結果に示すように、主な不純物として、Si:10〜50wtppm、Fe:10〜70wtppm、Zr:30〜300wtppm、Al:5〜20wtppmであり、不純物含有量にばらつきがあるものを使用した。
一方、表面酸化したインジウムを鋳造し、精製した後の、インジウムを分析した結果、主な不純物として、Si:<10wtppm、Fe:2wtppm、Zr:3wtppm、Al:2wtppmであった。
他方、スラグの分析結果、主な不純物として、Si:69wtppm、Fe:340wtppm、Zr:1700wtppm、Al:53wtppmであった。
【0033】
この結果から、表面酸化したインジウムについては、不純物の大部分はスラグに移行し、インジウムの不純物が低減していることが確認できた。
前記の通り、表面酸化したインジウム板を溶解して作製することにより、アノード板中の不純物であるSiを10wtppm以下、Feを5wtppm以下、Zrを5wtppm以下、Alを5wtppm以下とすることができた。
【0034】
(実施例2)
インジウム(In)のアノード板を使用し、電解により水酸化インジウムの粉末を製造する工程において、原料となるインジウムを所定の形状に鋳造してインジウムからなるアノード板を製造し、これを電解槽に配置した。電解槽には、ステンレス板又はチタン板からなるカソード板を交互に配置した。これらのアノード板とカソード板は平行に複数枚配置した。電解槽には、電解液を供給する。電解液には、硝酸アンモニウム水溶液(NH
4NO
3)を用い電解を開始した。
【0035】
電解の途中の工程で、アノード表面に酸化層が形成されたので、電解を中断し、酸化層が形成されたアノードを取出し、アノードの再生工程を検討した。そして表面酸化したインジウム板を取り出し、このインジウム板を、ルツボに入れ、これを
図2に示すようにして溶解した。溶解に際しては、新たな補充インジウムを添加した。
実施例1と同様に、インジウムの表面には、凹凸のついた酸化層が形成され、このインジウム板の溶解と共に、インジウムの溶湯の上にはスラグが形成された。そして、このスラグの中に、不純物が濃縮した。
【0036】
表面酸化したインジウムを鋳造し、精製した。この分析結果を、表1に示した。主な不純物として、Si:<10wtppm、Fe:<1wtppm、Zr:<1wtppm、Al:<1wtppmであった。
他方、スラグの分析結果、主な不純物として、Si:100wtppm、Fe:630wtppm、Zr:2500wtppm、Al:76wtppmであった。
【0037】
表面酸化したインジウム板を溶解すると共にインジウムを補充・鋳造してアノード板を再作製することにより、実施例1と同様に、アノード板中の不純物であるSiを10wtppm以下、Feを5wtppm以下、Zrを5wtppm以下、Alを5wtppm以下とすることができた。
【0038】
(実施例3)
インジウム(In)の表面を酸化する工程において、原料となるインジウムを所定の大きさに鋳造してインジウム板(鋳片)とし、これを大気炉に配置した。温度は50°C、24時間で表面酸化を実施した。この表面が酸化されたインジウム板を取り出し、大気中で溶解した。溶解方法は、
図1に示す方法で実施した。
このインジウム板の溶解と共に、インジウムの溶湯の上にはスラグが形成された。そして、このスラグの中に、不純物が濃縮した。
【0039】
精製したインジウムを鋳造し、分析を行った。この分析結果を、表1に示した。主な不純物として、Si:<10wtppm、Fe:1wtppm、Zr:4wtppm、Al:3wtppmであった。
他方、スラグの分析結果、主な不純物として、Si:67wtppm、Fe:240wtppm、Zr:2000wtppm、Al:40wtppmであった。この結果から、表面酸化したインジウムについては、不純物の大部分はスラグに移行し、インジウムの不純物が低減していることが確認できた。
以上の分析結果を、表1に示した。アノード板中の不純物であるSiを10wtppm以下、Feを5wtppm以下、Zrを5wtppm以下、Alを5wtppm以下とすることができた。
【0040】
(実施例4)
インジウム(In)の表面を酸化する工程において、原料となるインジウムを所定の大きさに鋳造してインジウム板(鋳片)とし、これを大気炉に配置し、温度100°C、5時間で表面酸化層を形成した。この表面が酸化されたインジウム板(鋳片)を取り出し、大気中で溶解した。溶解方法は
図2に示す方法で実施した。
このインジウム板の溶解と共に、インジウムの溶湯の上にはスラグが形成された。そして、このスラグの中に、不純物が濃縮した。
【0041】
精製したインジウムを鋳造し分析を行った。この分析結果を、表1に示した。主な不純物として、Si:<10wtppm、Fe:1wtppm、Zr:4wtppm、Al:4wtppmであった。
他方、スラグの分析結果、主な不純物として、Si:74wtppm、Fe:84wtppm、Zr:1100wtppm、Al:26wtppmであった。この結果から、表面酸化したインジウムについては、不純物の大部分はスラグに移行し、インジウムの不純物が低減していることが確認できた。
以上の分析結果を、表1に示した。アノード板中の不純物であるSiを10wtppm以下、Feを5wtppm以下、Zrを5wtppm以下、Alを5wtppm以下とすることができた。
【0042】
(実施例5)
インジウム(In)の表面を酸化する工程において、原料となるインジウムを所定の大きさに鋳造してインジウム板(鋳片)とし、これを酸素雰囲気炉に配置した。酸化は、温度は70℃、8時間で実施した。この表面が酸化されたインジウム板を取り出し、大気中で溶解した。
この表面が酸化されたインジウム板(鋳片)を取り出し、大気中で溶解した。溶解方法は
図1に示す方法で溶解した。このインジウム板の溶解と共に、インジウムの溶湯の上にはスラグが形成された。そして、このスラグの中に、不純物が濃縮した。
【0043】
精製したインジウムを鋳造し分析を行った。この分析結果を、表1に示した。主な不純物として、Si:<10wtppm、Fe:1wtppm、Zr:1wtppm、Al:1wtppmであった。
他方、スラグの分析結果、主な不純物として、Si:120wtppm、Fe:480wtppm、Zr:3000wtppm、Al:110wtppmであった。この結果から、表面酸化したインジウムについては、不純物の大部分はスラグに移行し、インジウムの不純物が低減していることが確認できた。以上の分析結果を、表1に示した。アノード板中の不純物であるSiを10wtppm以下、Feを5wtppm以下、Zrを5wtppm以下、Alを5wtppm以下とすることができた。
【0044】
(実施例6)
インジウム(In)―10%錫(Sn)合金の表面を酸化する工程において、原料となるインジウムを所定の大きさのインジウム板(鋳片)に鋳造して、これを酸素雰囲気炉に配置した。温度は70℃、8時間で、表面酸化を実施した。
この表面が酸化されたインジウム−錫合金板を取り出し、大気中で溶解した。溶解方法は、
図1に示す方法で実施した。このインジウム板の溶解と共に、インジウムの溶湯の上にはスラグが形成された。そして、このスラグの中に、不純物が濃縮した。
【0045】
精製したインジウムを鋳造し分析を行った。この分析結果を、表1に示した。主な不純物として、Si:<10wtppm、Fe:1wtppm、Zr:1wtppm、Al:1wtppmであった。
他方、スラグの分析結果、主な不純物として、Si:59wtppm、Fe:640wtppm、Zr:2300wtppm、Al:46wtppmであった。この結果から、表面酸化したインジウムについては、不純物の大部分はスラグに移行し、インジウムの不純物が低減していることが確認できた。
以上の分析結果を、表1に示した。アノード板中の不純物であるSiを10wtppm以下、Feを5wtppm以下、Zrを5wtppm以下、Alを5wtppm以下とすることができた。
【0046】
(実施例7)
インジウム(In)―1%銅(Cu)合金の表面を酸化する工程において、原料となるインジウムを所定の大きさのインジウム板(鋳片)に鋳造した後、このインジウム板を酸素雰囲気炉に配置した。温度は70℃、1時間で実施した。
この酸化層を形成したインジウム−錫合金板を取り出し、大気中で溶解した。溶解方法は、
図2に示す方法で行った。このインジウム板の溶解と共に、インジウムの溶湯の上にはスラグが形成された。そして、このスラグの中に、不純物が濃縮した。
【0047】
精製したインジウムを鋳造し分析を行った。この分析結果を、表1に示した。主な不純物として、Si:<10wtppm、Fe:1wtppm、Zr:1wtppm、Al:1wtppmであった。
他方、スラグの分析結果、主な不純物として、Si:69wtppm、Fe:440wtppm、Zr:2100wtppm、Al:66wtppmであった。この結果から、表面酸化したインジウムについては、不純物の大部分はスラグに移行し、インジウムの不純物が低減していることが確認できた。
以上の分析結果を、表1に示した。アノード板中の不純物であるSiを10wtppm以下、Feを5wtppm以下、Zrを5wtppm以下、Alを5wtppm以下とすることができた。
【0048】
(比較例1)
電解あるいは表面酸化の工程を経ずに、大気溶解したが、純度は表1の原料と同じ純度(3N〜4N)の範囲であった。因みに、それぞれの不純物は、Si:10wtppm、Fe:15wtppm、Zr:40wtppm、Al:6wtppmであった。
(比較例2)
電解あるいは表面酸化の工程を経たが、還元雰囲気、例えば水素雰囲気500°Cで溶解したがスラグは発生せず、純度は表1の原料と同じ純度(3N〜4N)の範囲であった。因みに、それぞれの不純物は、Si:30wtppm、Fe:40wtppm、Zr:100wtppm、Al:10wtppmであった。