特許第5712063号(P5712063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712063
(24)【登録日】2015年3月13日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】真空鋳造装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20150416BHJP
【FI】
   B22D11/06 360B
   B22D11/06 360Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-138691(P2011-138691)
(22)【出願日】2011年6月22日
(65)【公開番号】特開2013-6183(P2013-6183A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】田代 成司
(72)【発明者】
【氏名】大日向 陽一
(72)【発明者】
【氏名】向江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 研二
(72)【発明者】
【氏名】山元 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】富田 守彦
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−126858(JP,A)
【文献】 特開2002−248559(JP,A)
【文献】 特開2006−341294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気の形成が可能な溶解鋳造室とこの溶解鋳造室の下側に連設される予備室とを備える真空鋳造装置であって、
前記溶解鋳造室内に溶解炉と冷却ロールとを有し、溶解炉から出湯される溶湯を冷却ロールにストリップキャストして一次冷却することで薄帯状の鋳造物が形成され、この鋳造物の予備室への落下を許容する透孔が溶解鋳造室の底部に開設され、
前記予備室の上面及び下面に、前記透孔の孔軸上に位置させて上透孔及び下透孔が夫々開設され、透孔及び上透孔の少なくとも一方を開閉して溶解鋳造室と予備室とを相互に隔絶する仕切板が設けられ、下透孔の下面外周縁部に、予備室を通って落下する鋳造物を受け取る、上面を開口した回収容器が着脱自在に装着され、
前記回収容器は、その上面に装着されて回収容器内を密閉する蓋体を有し、予備室に回収容器を取り付けた状態で当該予備室を臨む蓋体の回収容器への脱着を行う脱着手段が予備室に設けられ、脱着手段により回収容器から蓋体を外した状態で、予備室の上透孔と下透孔とを連通して回収容器への鋳造物の落下をガイドすると共に蓋体の回収容器への密着面をガードする筒状部材が予備室内で移動自在に設けられたものにおいて、
前記筒状部材を、鋳造物の落下をガイドするガイド位置から蓋体の回収容器への装着を阻害しない退避位置に移動させ、蓋体の回収容器への装着に先立って、蓋体の外周縁部が密着する回収容器の密着面を払拭する払拭手段を予備室内に設けたことを特徴とする真空鋳造装置。
【請求項2】
請求項1記載の真空鋳造装置であって、前記筒状部材が、回転軸に回動自在に連結されたアームによりガイド位置と退避位置との間で筒状部材が移動自在なものにおいて、
前記払拭手段は筒状部材に付設され、当該筒状部材を、鋳造物の落下をガイドするガイド位置と退避位置との間で移動させると、これに伴って密着面の外方から下透孔を跨いで移動するように構成されていることを特徴とする真空鋳造装置。
【請求項3】
前記払拭手段は、支持アームと、支持アームの下端に連結されるブレードと、ブレードで保持されて密着面を摺動する繊維製品とから構成され、支持アームは、当該支持アームをシール面に向かって付勢する付勢手段と平行リンク機構とを介して筒状部材に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の真空鋳造装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空雰囲気の形成が可能な溶解鋳造室とこの溶解鋳造室に下側に連設される予備室とを備え、予備室に鋳造物を回収する回収容器が着脱自在に装着される真空鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記種の真空鋳造装置は例えば特許文献1で知られている。このものでは、溶解鋳造室内に溶解炉と冷却ロールとを有し、溶解炉から出湯される溶湯を冷却ロールにストリップキャストして一次冷却することで薄帯状の鋳造物が形成される。溶解鋳造室の底部には透孔が開設され、鋳造物が予備室へと落下するようになっている。一方、予備室の上面及び下面には、透孔の孔軸上に位置させて上透孔及び下透孔が夫々開設されている。予備室にはまた、上透孔を開閉して溶解鋳造室と予備室とを相互に隔絶する仕切板が設けられている。そして、下透孔の下面外周縁部に、予備室を通って落下する鋳造物を受け取る、上面を開口した回収容器が着脱自在に装着されるようになっている。
【0003】
回収容器には冷却機構が組み付けられ、回収した鋳造物を二次冷却できる。この場合、回収容器の上面には、当該回収容器内を密閉する蓋体が着脱自在に取り付けられ、鋳造物を回収した後、回収容器を減圧下に保持できるようになっている。この場合、予備室内には、蓋体を回収容器から脱着するために脱着手段が設けられている。予備室には更に、脱着手段により回収容器から蓋体を外した状態で、予備室の上透孔と下透孔とを連通して回収容器への鋳造物の落下をガイドすると共に蓋体の回収容器への密着面をガードする筒状部材が予備室内で移動自在に設けられている。
【0004】
上記特許文献1記載のものを用いて鋳造物を製造して回収するのに当たっては、先ず、真空鋳造室内にて上向き姿勢の溶解炉内に金属材料を投入すると共に、予備室に蓋付きの回収容器を取り付けた後、予備室内にて蓋体を取り外す。そして、仕切板を開位置に移動し、真空鋳造室、予備室及び回収容器を真空引きし、所定圧力に達すると、仕切板を閉位置に移動して溶解炉内で金属材料を誘導加熱して溶解する。金属材料の溶解が完了すると、溶解炉を傾斜姿勢に傾動させて、溶解炉内の溶湯をタンデッシュに出湯し、冷却ロールにて定量的にストリップキャストする。これに併せて、予備室では、仕切板を開位置に移動し、筒状部材をガイド位置に移動して回収準備状態とする。そして、冷却ロールから剥離した鋳造物が、透孔、上透孔及び下透孔を通って回収容器内に落下して回収され、回収容器内で二次冷却される。
【0005】
ところで、溶解炉内で金属材料を溶解するとき、金属材料の一部が蒸散する。この蒸散した金属材料が凝固して粉塵となって仕切板表面にも溜まる。このような状態で、仕切板を開位置に移動すると、仕切板に溜まった粉塵が予備室へと落下し、蓋体を脱離した回収容器の蓋体との密着面に溜まる。なお、出湯時に飛散した薄帯状のものが、例えば冷却ロールのメンテナンス時に落下したり、排気時に舞い上がって仕切板に堆積する場合もある。このため、鋳造物の回収後に蓋体を回収容器に取り付けても相互に密着しない。結果として、予備室をベントして回収容器を予備室から離脱した場合に、回収容器内への空気の流入を防止できず、当該回収容器を減圧状態(つまり、密閉状態)に保持できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−126858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、鋳造物の回収後に回収容器内を確実に密閉できるようにした真空鋳造装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、真空雰囲気の形成が可能な溶解鋳造室とこの溶解鋳造室の下側に連設される予備室とを備える真空鋳造装置であって、前記溶解鋳造室内に溶解炉と冷却ロールとを有し、溶解炉から出湯される溶湯を冷却ロールにストリップキャストして一次冷却することで薄帯状の鋳造物が形成され、この鋳造物の予備室への落下を許容する透孔が溶解鋳造室の底部に開設され、前記予備室の上面及び下面に、前記透孔の孔軸上に位置させて上透孔及び下透孔が夫々開設され、透孔及び上透孔の少なくとも一方を開閉して溶解鋳造室と予備室とを相互に隔絶する仕切板が設けられ、下透孔の下面外周縁部に、予備室を通って落下する鋳造物を受け取る、上面を開口した回収容器が着脱自在に装着され、前記回収容器は、その上面に装着されて回収容器内を密閉する蓋体を有し、予備室に回収容器を取り付けた状態で当該予備室を臨む蓋体の回収容器への脱着を行う脱着手段が予備室に設けられ、脱着手段により回収容器から蓋体を外した状態で、予備室の上透孔と下透孔とを連通して回収容器への鋳造物の落下をガイドすると共に蓋体の回収容器への密着面をガードする筒状部材が予備室内で移動自在に設けられたものにおいて、前記筒状部材を、鋳造物の落下をガイドするガイド位置から蓋体の回収容器への装着を阻害しない退避位置に移動させ、蓋体の回収容器への装着に先立って、蓋体の外周縁部が密着する回収容器の密着面を払拭する払拭手段を予備室内に設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、払拭手段により、蓋体を回収容器に取り付けるのに先立って回収容器の蓋体との密着面が払拭されるため、回収容器の密着面に溜まった粉塵を除去した上で蓋体を装着できる。このため、予備室から離脱した回収容器内を確実に密閉状態に保持できる。
【0010】
ところで、払拭手段が独立の構成部品として予備室に設けられている場合、払拭手段を駆動する部品等が必要となってコスト高を招くだけでなく、ガイド部材をガイド位置から退避位置に移動した後、払拭手段を動作させて回収容器の密着面の粉塵を除去することとなり、蓋体を装着するまでの動作も増加する。本発明においては、請求項1記載の真空鋳造装置であって、前記筒状部材が、回転軸に回動自在に連結されたアームによりガイド位置と退避位置との間で筒状部材が移動自在なものにおいて、前記払拭手段は筒状部材に付設され、当該筒状部材を、鋳造物の落下をガイドするガイド位置と退避位置との間で移動させると、これに伴って密着面の外方から下透孔を跨いで移動するように構成されていることが好ましい。これによれば、退避位置にある筒状部材を、ガイド位置に移動し、再度退避位置に戻すまでの筒状部材の往復動において蓋体の密着面をその全面に亘って確実に払拭でき、しかも、粉塵を回収容器に落として回収し得る。しかも、払拭手段用の駆動手段等は不要となり、有利である。
【0011】
本発明において、前記払拭手段は、支持アームと、支持アームの下端に連結されるブレードと、ブレードで保持されてシール面を摺動する繊維製品とから構成され、支持アームは、当該支持アームをシール面に向かって付勢する付勢手段と平行リンク機構とを介して筒状部材に取り付けられていることが好ましい。これにより、払拭手段が移動する間、繊維部品が常時密着面を摺動させる構成が実現でき、回収容器の密着面に溜まった粉塵を確実に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の真空鋳造装置の内部構造を示す断面図。
図2】予備室を上側から視た図。
図3図2のIII方向から視た払拭手段の筒状部材への取付状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の真空鋳造装置を説明する。図1中、Mは、真空鋳造装置である。真空鋳造装置Mは、真空排気管11aと気体導入管12aとが接続された、筒状の第1の密閉容器1により画成される溶解鋳造室1aと、この溶解鋳造室1aに下側に連設され、真空排気管11bと気体導入管12bとが接続された角筒状の第2の密閉容器2により画成される予備室2aとから構成される。
【0014】
第1の密閉容器1の上面は着脱自在に構成され、この上面には更に、開閉自在な蓋体13が設けられている。また、第1の密閉容器1内には、溶解炉(炉体)3と、タンデッシュ4と、冷却ロール5とが収納されている。溶解炉3は、溶解鋳造室1a内に立設した支柱31に軸支され、図外のシリンダによって、図1中、実線で示す上向き姿勢から、図1中、仮想線で示す前下がりの傾斜姿勢に傾動されるようになっている。そして、蓋体13を開いた状態で上向き姿勢の溶解炉3内に金属材料を投入した後、蓋体13を閉じ、溶解鋳造室1aを所定圧力まで減圧し、溶解炉3内で金属材料を誘導加熱して溶解する。金属材料の溶解が完了すると、溶解炉3を傾斜姿勢に傾動させて、溶解炉3内の溶湯をタンデッシュ4に出湯する。
【0015】
タンデッシュ4は、例えば、セラミック製の箱形状のものであり、その底面部のノズル41に設けた横長のスリットから溶湯を冷却ロール5に定量的にストリップキャストする。冷却ロール5は、所定の回転速度(0.5〜1.5m/sec)で回転するものであり、その外周面が内部から水冷されるようになっている。冷却ロール5にストリップキャストされた溶湯は、冷却ロール5の外周面で一次冷却されて凝固する。そして、薄帯状の鋳造物となって冷却ロール5から剥離して下方に落下する。この落下する鋳造物の下方への通過を許容するように第1の密閉容器1の底面には透孔14が開設されている。
【0016】
一方、第2の密閉容器2には、透孔14の孔軸A上に位置させて上透孔21及び下透孔22が夫々開設され、第1及び第2の密閉容器1、2が、漏斗状のシュート部15を介して相互に連結されている。また、第2の密閉容器2の上面内側には仕切板6が軸支され、当該仕切板6を揺動させて上透孔21を閉じ、第1及び第2の密閉容器1、2を相互に隔絶するようになっている。下透孔22の下面外周縁部には、予備室2aを通って落下する鋳造物を受け取る、上面を開口した筒状の回収容器7が着脱自在に装着される。回収容器7には、図示省略の冷却機構が組み付けられ、回収した鋳造物を二次冷却できるようになっている。なお、冷却機構は公知であるため、ここでは詳細な説明は省略する(特開2002−126858号公報参照)。
【0017】
回収容器7の上面には、径方向外方に向かって延出させたフランジ部71が形成されている。フランジ71は、下方に一段下がった段付き形状であり、外方に位置する第1フランジ部71aが、下透孔21の下面外周縁部に設けたOリング等の第1のシール手段72に密着するようになっている。そして、回収容器7を下透孔21に取り付けると、一段高い内方に位置する第2フランジ部71bの側面が下透孔21に嵌合する。第2フランジ部71bの上面には、回収容器7内を密閉する蓋体74の下面外周縁部に設けたOリング等の第2のシール手段73が密着して回収容器7内を密閉するようになっている。この場合、第2の密閉容器2に回収容器7を取り付けた状態では、蓋体74が予備室2a内に突出するようになっている。
【0018】
第2の密閉容器2内には脱着手段8が設けられている(図1に示す予備室2中、右側のもの)。脱着手段8は、上下動可能な回転軸81と、この回転軸81に回動自在に連結したアーム82と、このアーム82の先端に設けた保持部83とから構成されている。そして、例えば、回転軸81の回転によりアーム82を回動させ、蓋体74の所定位置に保持部を係合させ、回転軸81を上動させることで、第2の密閉容器2内にて蓋体74を回収容器7から脱離し、所定位置に退避できるようになっている。なお、退避した位置から蓋体74を装着する場合には、上記と逆動作をさせればよい。また、蓋体74を保持する機構は上記に限定されるものではない。
【0019】
第2の密閉容器2内には、上透孔21と下透孔22とを連通して回収容器7への鋳造物の落下をガイドする筒状部材9が設けられている(図1に示す予備室2中、左側のもの)。筒状部材9には、回転軸91に回動自在に連結されたアーム92が連結され、図1中、二点鎖線で示す、鋳造物の落下をガイドするガイド位置と、図1中、実線で示す、蓋体74の回収容器7への装着を阻害しない退避位置との間で移動自在となっている。この場合、筒状部材9の下部は下方に向かって拡径する形状に形成され、ガイド位置では、筒状部材9の下端が第2のシール手段73の内方に位置して、内部を落下する鋳造物から第2のシール手段73をガードする役割を果たすようになっている。
【0020】
筒状部材9には払拭手段10が付設されている。払拭手段10は、図2及び図3に示すように、支持アーム101と、支持アーム101の下端に連結されるブレード102と、ブレード102で保持されて密着面を摺動する繊維製品103とから構成されている。繊維製品103としては、耐熱性を有するものであれば、特に制限はなく、例えばガラスウールやガラスクロス製のものが用いられ、ブレード102の全長に亘って設けられている。ブレード102としては、鉄やステンレス等の金属製のものが用いられ、直線状の部材を略三等分し、その両側102b、102cを、中央部102aの延長線に対して所定の角度(例えば、45度)で屈曲させた形態を有し、筒状部材9下面の略半周を囲うようになっている。なお、ブレード102の形状は、筒状部材9をガイド位置と退避位置との間で移動させたとき、その往復動にて密着面全面が繊維製品103により払拭されるものであれば、特に制限はない。また、ブレード102への繊維製品103の取付方法は、当該繊維製品103が保持されるものであれば、特に限定はなく、例えばブレード102に下面にその全長に亘って凹部を形成し、当該凹部に繊維部品を圧入しておけばよい。
【0021】
支持アーム101は、ブレード102の両側に位置するものを橋渡すように設けられた梁部101aと、梁部101aに垂設され、先端が二股状に形成された連結部101bから構成される。そして、梁部101aの中央上面に垂直に立設した連結片101cを介して筒状部材9の外周面に取り付けられている。この場合、筒状部材9の外周面で連結片101cより上方に位置する部分には、上下方向に所定間隔を存して第1及び第2の固定部93、94が設けられている。そして、下方に位置する第1の固定部93と連結片101cとは平行リンク機構104を介して連結されている。これにより、払拭手段10を移動させる場合、連結片101cに直交する支持アーム101が常時水平に保持され、ひいては、ブレード102が傾くことが防止される。また、上方に位置する第2の固定部94と連結片101cとの間には、付勢手段たるコイルばね105が縮設されている。このコイルばね105の付勢力により、回収容器7の第2フランジ部71bの上面に一定の押圧力で繊維製品103が常時圧接する。なお、特に図示して説明しないが、コイルばね105の付勢力は調整できるように構成することが好ましい。以下に、本実施形態の真空鋳造装置Mの動作を説明する。
【0022】
先ず、第1の密閉容器1の蓋体13を外して、上向き姿勢の溶解炉3内に金属材料を投入すると共に、第2の密閉容器2の下透孔21に、蓋体74付きの空の回収容器7を取り付ける。この状態では仕切板6が閉位置にある。また、脱着手段8により回収容器7から蓋体74を脱離して退避されている。次に、脱着手段8により回収容器7から蓋体を取り外した状態で、図外の真空ポンプを作動させて真空排気管11aを介して溶解鋳造室1aを真空引きして減圧し、溶解炉3内の金属材料の予備加熱を開始する。溶解鋳造室1a内が所定圧力に達すると、溶解鋳造室1aの真空引きを停止し、気体導入管12aを介してアルゴンガス等の不活性ガスを溶解鋳造室1aに導入し、溶解炉3内で金属材料を誘導加熱して溶解させる。これに併せて、図外の真空ポンプを作動させて真空排気管11bを介して予備室2a及び回収容器7内を夫々所定圧力まで減圧する。そして、予備室2a及び回収容器7内が所定圧力に達すると、真空引きを停止し、気体導入管12bを介してアルゴンガス等の不活性ガスを、溶解鋳造室1aと等圧になるまで導入し、待機状態とする。
【0023】
金属材料の溶解が完了すると、溶解炉3を傾斜姿勢に傾動させて、溶解炉3内の溶湯をタンデッシュ4に出湯し、冷却ロール5にて定量的にストリップキャストする。これに併せて、予備室2aでは、仕切板6を開位置に移動すると共に、筒状部材9をガイド位置に移動し、回収準備状態とする。このとき、仕切板6に溜まった粉塵が予備室2aへと落下して、第2のシール手段73を含む第2フランジ部71bの表面にも粉塵が溜まるが、筒状部材9をガイド位置に移動させる際に、これに付設した払拭手段10の繊維製品103により第2フランジ部71b表面が払拭され、粉塵の一部が回収容器7に回収される。そして、冷却ロール5から剥離した鋳造物が、透孔14、上透孔21及び下透孔22を通って回収容器7内に落下して回収され、回収容器内で二次冷却される。
【0024】
回収容器7への鋳造物の回収が終了すると、筒状部材9をガイド位置から退避位置に移動させて、仕切板6を閉位置に再度移動する。このとき、払拭手段10の繊維製品103により第2ランジ部71bが再度払拭される。そして、脱着手段8により回収容器7に蓋体74が取り付けられる。最後に、仕切板6を開位置に再度移動した後、溶解鋳造室1a及び予備室2aをベントする。これにより、回収容器7に蓋体74が密着して内部が密閉された状態で回収容器7を第2の密閉容器2から取り外される。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、払拭手段10を設けて、蓋体74を回収容器7に装着するのに先立って、密着面たる、第2のシール手段73を含む第2フランジ部71bの表面を払拭するため、密着面に溜まった粉塵を除去した上で蓋体74を取り付けることができる。このため、予備室2aから離脱した回収容器7内を確実に密閉状態に保持できる。しかも、払拭手段10を筒状部材9に付設すると共に、上記の如く構成することで、ガイド位置と退避位置との間で筒状部材9を移動させると、密着面の外方から下透孔22を跨いで繊維製品103が密着面を摺動するようになり、筒状部材9の往復動において内方のフランジ部71bの上面をその全面に亘って確実に払拭でき、その上、粉塵を回収容器7に落として回収し得る。また、払拭手段用の駆動手段等は不要となり、有利である。更に、支持アーム101は、当該支持アーム101を密着面に向かって付勢する付勢手段たる平行リンク機構104とコイルばね105とを介して筒状部材9に取り付けられているため、払拭手段10が移動する間、繊維製品103が常時密着面を摺動し、密着面に溜まった粉塵を確実に除去できる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、筒状部材9に払拭手段10を取り付けたものを例に説明したが、払拭手段10は予備室2a内に別途設けることもでき、また、回収容器7の蓋体との密着面をその全面に亘って払拭できるものであれば、その形態は問わない。更に、上記実施形態では、筒状部材9、ひいては払拭手段10が同一平面内を移動するものを例に説明したが、筒状部材9が予備室内で上下動するように構成し、ガイド位置から退避位置、または、退避位置からガイド位置に移動させる際、一旦筒状部材、ひいては払拭手段を予備室の底面から持ち上げ、移動方向とは逆方向に一旦移動させ、その後、筒状部材9を下げた後、移動させるようにしてもよい。これにより、粉塵を予備室2a内に溜めることなく、回収容器7内に落とし込むことができる。
【符号の説明】
【0027】
M…真空鋳造装置、1a…溶解鋳造室、2a…予備室、3…溶解炉、4…冷却ロール、5…冷却ロール、14、21、22…透孔、6…仕切板、7…回収容器、74…蓋体、8…脱離手段、9…筒状部材、91…回転軸、92…アーム、71…フランジ、71b…第2フランジ部(密着面)、73…第2シール手段(密着面)、10…払拭手段、101…支持アーム、102…ブレード、103…繊維製品、104…平行リンク機構、105…コイルばね(付勢手段)。
図1
図2
図3