【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0071】
(実施例1)
以下の方法で多孔質ムライト焼結体のサンプルを作製した。
【0072】
平均粒径が約1μmのアルミナ(Al
2O
3)粒子(純度99%以上)80gと、平均粒径が約1μmのジルコニア(ZrO
2)粒子(純度99%以上(3molイットリア(Y
2O
3)を安定化材として含む))を1gと、水60gと、少量の有機系分散剤とを混ぜ、ボールミルで半日以上混合した。次に、この混合溶液に平均粒径が60μmのシリカ(SiO
2)粒子(純度99%以上)を添加し、撹拌装置を用いて、さらに1時間混合した。シリカ粒子は、アルミナ:シリカの重量比が80:20となるように添加した。なお、前述のジルコニア粒子の添加量は、アルミナ(Al
2O
3)とシリカ(SiO
2)の総量に対して、1wt%である。
【0073】
次に、得られた混合溶液を室温の大気中で乾燥させ、水等を蒸発させ、混合粒子を得た。
【0074】
次に、得られた混合粒子をCIP法(冷間静水圧等方プレス法)により加圧成形し、寸法が縦約50mm×横約50mm×厚さ約5mmの成形体を製作した。
【0075】
さらに、この成形体を大気中、1650℃で2時間焼成して、焼結体サンプル(以下、「実施例1に係るサンプル」という)を得た。
【0076】
図2および
図3には、実施例1に係るサンプルのSEM写真を示す。
図2は、低倍率の写真であり、
図3は、高倍率の写真である。
図2および
図3に示すように、焼結体内には、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることがわかる。球状気孔の平均気孔径は、約50μmであった。
【0077】
また、実施例1に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコニアのピークの他に、ムライトのピークが認められ、上記方法により、ムライトが生成していることが確認された。
【0078】
さらに、実施例1に係るサンプルの気孔率を測定したところ、気孔率は、27.0%であった。なお、気孔率は、水中置換法により測定した。
【0079】
また、実施例1に係るサンプルの密度(嵩密度)は、2.27g/cm
3であった。なお、密度は、サンプルの寸法と重量の測定結果をもとに算出した。
【0080】
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、多孔質ムライト焼結体のサンプル(以下、「実施例2に係るサンプル」という)を作製した。
【0081】
ただし、実施例2では、焼成時間を4時間とした。焼成温度は、実施例1と同様、1650℃とした。
【0082】
実施例2に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、
図2、3に示した気孔と同様の、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認された。球状気孔の平均直径は、約50μmであった。
【0083】
また、実施例2に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコニアのピークの他に、ムライトのピークが認められ、上記方法により、ムライトが生成していることが確認された。
【0084】
さらに、実施例2に係るサンプルの気孔率および密度を測定したところ、気孔率は、23.5%であり、密度は、2.20g/cm
3であった。
【0085】
(実施例3)
実施例1と同様の方法により、多孔質ムライト焼結体のサンプル(以下、「実施例3に係るサンプル」という)を作製した。
【0086】
ただし、実施例3では、ジルコニア粒子は、アルミナ(Al
2O
3)とシリカ(SiO
2)の総量に対して、3wt%となるように添加した。また、実施例3では、焼成時間を4時間とした。焼成温度は、実施例1と同様、1650℃とした。
【0087】
実施例3に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、
図2、3に示した気孔と同様の、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認された。球状気孔の平均直径は、約50μmであった。
【0088】
また、実施例3に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコニアのピークの他に、ムライトのピークが認められ、上記方法により、ムライトが生成していることが確認された。
【0089】
さらに、実施例3に係るサンプルの気孔率および密度を測定したところ、気孔率は、25.2%であり、密度は、2.19g/cm
3であった。
【0090】
(実施例4)
実施例1と同様の方法により、多孔質ムライト焼結体のサンプル(以下、「実施例4に係るサンプル」という)を作製した。
【0091】
ただし、実施例4では、ジルコニア粒子は、アルミナ(Al
2O
3)とシリカ(SiO
2)の総量に対して、5wt%となるように添加した。また、実施例4では、焼成時間を4時間とした。焼成温度は、実施例1と同様、1650℃とした。
【0092】
実施例4に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、
図2、3に示した気孔と同様の、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認された。球状気孔の平均直径は、約50μmであった。
【0093】
また、実施例4に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコニアのピークの他に、ムライトのピークが認められ、上記方法により、ムライトが生成していることが確認された。
【0094】
さらに、実施例4に係るサンプルの気孔率および密度を測定したところ、気孔率は、24.6%であり、密度は、2.24g/cm
3であった。
【0095】
(実施例5)
実施例1と同様の方法により、多孔質ムライト焼結体のサンプル(以下、「実施例5に係るサンプル」という)を作製した。
【0096】
ただし、実施例5では、ジルコニア粒子として、イットリア(Y
2O
3)を安定化材として含まないものを使用した。このジルコニア粒子の直径は、1μm以下であり、実施例1と同様である。また、ジルコニア粒子は、アルミナ(Al
2O
3)とシリカ(SiO
2)の総量に対して、10wt%となるように添加した。また、実施例5では、焼成時間を4時間とした。焼成温度は、実施例1と同様、1650℃とした。
【0097】
実施例5に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、
図2、3に示した気孔と同様の、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認された。球状気孔の平均直径は、約50μmであった。
【0098】
また、実施例5に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコニアのピークの他に、ムライトのピークが認められ、上記方法により、ムライトが生成していることが確認された。
【0099】
さらに、実施例5に係るサンプルの気孔率および密度を測定したところ、気孔率は、27.1%であり、密度は、2.35g/cm
3であった。
【0100】
(実施例6)
実施例1と同様の方法により、多孔質ムライト焼結体のサンプル(以下、「実施例6に係るサンプル」という)を作製した。
【0101】
ただし、実施例6では、ジルコニア粒子として、イットリア(Y
2O
3)を安定化材として含まないものを使用した。このジルコニア粒子の直径は、1μm以下であり、実施例1と同様である。また、ジルコニア粒子は、アルミナ(Al
2O
3)とシリカ(SiO
2)の総量に対して、1wt%となるように添加した。また、実施例6では、焼成温度を1600℃とし、焼成時間を6時間とした。
【0102】
実施例6に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、
図2、3に示した気孔と同様の、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認された。球状気孔の平均直径は、約50μmであった。
【0103】
また、実施例6に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコニアのピークの他に、ムライトのピークが認められ、上記方法により、ムライトが生成していることが確認された。
【0104】
さらに、実施例6に係るサンプルの気孔率および密度を測定したところ、気孔率は、28.4%であり、密度は、2.31g/cm
3であった。
【0105】
(実施例7)
実施例1と同様の方法により、多孔質ムライト焼結体のサンプル(以下、「実施例7に係るサンプル」という)を作製した。
【0106】
ただし、実施例7では、ジルコニア粒子として、イットリア(Y
2O
3)を安定化材として6mol%含むものを使用した。このジルコニア粒子の直径は、1μm以下であり、実施例1と同様である。また、ジルコニア粒子は、アルミナ(Al
2O
3)とシリカ(SiO
2)の総量に対して、10wt%となるように添加した。また、実施例7では、焼成温度を1600℃とし、焼成時間を2時間とした。
【0107】
実施例7に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、
図2、3に示した気孔と同様の、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認された。球状気孔の平均直径は、約50μmであった。
【0108】
また、実施例7に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコニアのピークの他に、ムライトのピークが認められ、上記方法により、ムライトが生成していることが確認された。
【0109】
さらに、実施例7に係るサンプルの気孔率および密度を測定したところ、気孔率は、25.7%であり、密度は、2.35g/cm
3であった。
【0110】
(実施例8)
実施例1と同様の方法により、多孔質ムライト焼結体のサンプル(以下、「実施例8に係るサンプル」という)を作製した。
【0111】
ただし、実施例8では、ジルコニア粒子として、イットリア(Y
2O
3)を安定化材として6mol%含むものを使用した。このジルコニア粒子の直径は、1μm以下であり、実施例1と同様である。また、ジルコニア粒子は、アルミナ(Al
2O
3)とシリカ(SiO
2)の総量に対して、1wt%となるように添加した。また、実施例
8では、焼成温度を1550℃とし、焼成時間を4時間とした。
【0112】
実施例8に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、
図2、3に示した気孔と同様の、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認された。球状気孔の平均直径は、約50μmであった。
【0113】
また、実施例8に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコニアのピークの他に、ムライトのピークが認められ、上記方法により、ムライトが生成していることが確認された。
【0114】
さらに、実施例8に係るサンプルの気孔率および密度を測定したところ、気孔率は、26.5%であり、密度は、2.29g/cm
3であった。
【0115】
(実施例9)
実施例1と同様の方法により、多孔質ムライト焼結体のサンプル(以下、「実施例9に係るサンプル」という)を作製した。
【0116】
ただし、実施例9では、ジルコニア粒子は、アルミナ(Al
2O
3)とシリカ(SiO
2)の総量に対して、10wt%となるように添加した。また、実施例9では、焼成温度を1550℃とし、焼成時間を6時間とした。
【0117】
実施例9に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、
図2、3に示した気孔と同様の、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認された。球状気孔の平均直径は、約50μmであった。
【0118】
また、実施例9に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコニアのピークの他に、ムライトのピークが認められ、上記方法により、ムライトが生成していることが確認された。
【0119】
さらに、実施例9に係るサンプルの気孔率および密度を測定したところ、気孔率は、28.7%であり、密度は、2.30g/cm
3であった。
【0120】
表1には、各サンプルの作製条件、気孔率および密度をまとめて示した。
【0121】
【表1】
(比較例1)
平均粒径が約1μmのアルミナ(Al
2O
3)粒子(純度99%以上)80gと、平均粒径が約1μmのジルコニア(ZrO
2)粒子(純度99%以上、イットリア(Y
2O
3)を含まないもの)を3gと、水60gと、造孔剤5gと、少量の有機系分散剤とを混ぜ、ボールミルで半日以上混合した。次に、この混合溶液に平均粒径が5μmのシリカ(SiO
2)粒子(純度99%以上)を添加し、撹拌装置を用いて、さらに1時間混合した。シリカ粒子は、アルミナ:シリカの重量比が80:20となるように添加した。なお、前述のジルコニア粒子の添加量は、アルミナ(Al
2O
3)とシリカ(SiO
2)の総量に対して、3wt%である。
【0122】
次に、得られた混合溶液を室温の大気中で乾燥させ、水等を蒸発させ、混合粒子を得た。
【0123】
次に、得られた混合粒子をCIP法(冷間静水圧等方プレス法)により加圧成形し、寸法が縦約50mm×横約50mm×厚さ約5mmの成形体を製作した。
【0124】
さらに、この成形体を大気中、1650℃で2時間焼成して、焼結体サンプル(以下、「比較例1に係るサンプル」という)を得た。
【0125】
比較例1に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、非球状の、いびつに変形した多数の気孔が形成されていることが確認された。気孔の平均直径は、約25μmであった。
【0126】
また、比較例1に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコニアのピークの他に、ムライトのピークが認められ、上記方法により、ムライトが生成していることが確認された。
【0127】
比較例1に係るサンプルの気孔率を測定したところ、気孔率は、17.8%程度であった。また、比較例1に係るサンプルの密度は、2.64g/cm
3であった。
【0128】
(比較例2)
平均粒径が約1μmのアルミナ(Al
2O
3)粒子(純度99%以上)80gと、水60gと、少量の有機系分散剤とを混ぜ、ボールミルで半日以上混合した。次に、この混合溶液に平均粒径が60μmのシリカ(SiO
2)粒子(純度99%以上)を添加し、撹拌装置を用いて、さらに1時間混合した。シリカ粒子は、アルミナ:シリカの重量比が80:20となるように添加した。
【0129】
次に、得られた混合溶液を室温の大気中で乾燥させ、水等を蒸発させ、混合粒子を得た。
【0130】
次に、得られた混合粒子をCIP法(冷間静水圧等方プレス法)により加圧成形し、寸法が縦約50mm×横約50mm×厚さ約5mmの成形体を製作した。
【0131】
さらに、この成形体を大気中、1400℃で6時間焼成して、焼結体サンプル(以下、「比較例2に係るサンプル」という)を得た。なお、この焼成温度は、シリカの融点(1414℃)よりも低いことに留意する必要がある。
【0132】
比較例2に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、球状の気孔は確認されなかった。また、気孔の平均直径は、約15μmであった。
【0133】
また、比較例2に係るサンプルのX線回折分析の結果、シリマナイトのピークが認められ、上記方法では、ムライトの代わりに、シリマナイトが生成していることが確認された。
【0134】
さらに、比較例2に係るサンプルの気孔率を測定したところ、気孔率は、18.9%程度であった。また、比較例2に係るサンプルの密度は、2.58g/cm
3であった。
【0135】
(比較例3)
比較例1と同様の方法により、焼結体のサンプル(以下、「比較例3に係るサンプル」という)を作製した。
【0136】
ただし、比較例3では、平均粒径が60μmのシリカ(SiO
2)粒子(純度99%以上)を使用した。また、比較例3では、ジルコニア粒子は、アルミナ(Al
2O
3)とシリカ(SiO
2)の総量に対して、15wt%となるように添加した。また、比較例3では、焼成温度を1550℃とし、焼成時間を4時間とした。
【0137】
比較例3に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、
図2、3に示した気孔と同様の、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認された。球状気孔の平均直径は、約50μmであった。
【0138】
また、比較例3に係るサンプルのX線回折分析の結果、ジルコンとムライトのピークが認められ、上記方法では、ムライトだけではなく、ジルコンも生成していることが確認された。
【0139】
さらに、比較例3に係るサンプルの気孔率および密度を測定したところ、気孔率は、21.3%であり、密度は、2.61g/cm
3であった。
【0140】
(比較例4)
平均粒径が約0.5μmのアルミナ(Al
2O
3)粒子(純度99%以上)80gと、水60gと、少量の有機系分散剤とを混ぜ、ボールミルで半日以上混合した。次に、この混合溶液に平均粒径が280μmのシリカ(SiO
2)粒子(純度99%以上)を添加し、撹拌装置を用いて、さらに1時間混合した。シリカ粒子は、アルミナ:シリカの重量比が80:20となるように添加した。
【0141】
次に、得られた混合溶液を室温の大気中で乾燥させ、水等を蒸発させ、混合粒子を得た。
【0142】
次に、得られた混合粒子をCIP法(冷間静水圧等方プレス法)により加圧成形し、寸法が縦約50mm×横約50mm×厚さ約5mmの成形体を製作した。
【0143】
さらに、この成形体を大気中、1550℃で4時間焼成して、焼結体サンプル(以下、「比較例4に係るサンプル」という)を得た。
【0144】
比較例4に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認されたが、球状気孔の平均直径は、約250μmであった。
【0145】
また、比較例4に係るサンプルのX線回折分析の結果、アンダリューサイトのピークが認められ、上記方法では、ムライトの代わりに、アンダリューサイトが生成していることが確認された。
【0146】
さらに、比較例4に係るサンプルの気孔率を測定したところ、気孔率は、31.7%程度であった。また、比較例4に係るサンプルの密度は、2.01g/cm
3であった。
【0147】
(比較例5)
平均粒径が約5μmのムライト100gと、水60gと、少量の有機系分散剤とを混ぜ、ボールミルで半日以上混合した。さらに、撹拌装置を用いて、この混合溶液をさらに1時間混合した。
【0148】
次に、得られた混合溶液を室温の大気中で乾燥させ、水等を蒸発させ、混合粒子を得た。
【0149】
次に、得られた混合粒子をCIP法(冷間静水圧等方プレス法)により加圧成形し、寸法が縦約50mm×横約50mm×厚さ約5mmの成形体を製作した。
【0150】
さらに、この成形体を大気中、1600℃で8時間焼成して、焼結体サンプル(以下、「比較例5に係るサンプル」という)を得た。
【0151】
比較例5に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、球状の気孔は確認されず、気孔の平均直径は、約15μmであった。
【0152】
また、比較例5に係るサンプルのX線回折分析の結果、ムライトのピークのみが認められた。
【0153】
さらに、比較例5に係るサンプルの気孔率を測定したところ、気孔率は、14.2%程度であった。また、比較例5に係るサンプルの密度は、2.66g/cm
3であった。
【0154】
(比較例6)
平均粒径が約5μmのムライト100gと、水60gと、造孔剤10gと、少量の有機系分散剤とを混ぜ、ボールミルで半日以上混合した。さらに、撹拌装置を用いて、この混合溶液をさらに1時間混合した。
【0155】
次に、得られた混合溶液を室温の大気中で乾燥させ、水等を蒸発させ、混合粒子を得た。
【0156】
次に、得られた混合粒子をCIP法(冷間静水圧等方プレス法)により加圧成形し、寸法が縦約50mm×横約50mm×厚さ約5mmの成形体を製作した。
【0157】
さらに、この成形体を大気中、1600℃で8時間焼成して、焼結体サンプル(以下、「比較例6に係るサンプル」という)を得た。
【0158】
比較例6に係るサンプルをSEMにより観察したところ、焼結体内には、ほぼ球状の多数の気孔が形成されていることが確認された。ただし、球状気孔の平均直径は、約10μmであった。
【0159】
また、比較例6に係るサンプルのX線回折分析の結果、ムライトのピークのみが認められた。
【0160】
さらに、比較例6に係るサンプルの気孔率を測定したところ、気孔率は、45.0%程度であった。また、比較例6に係るサンプルの密度は、1.73g/cm
3であった。
【0161】
表2には、比較例1〜比較例6の各サンプルの作製条件、平均気孔径、気孔率および密度をまとめて示した。
【0162】
【表2】
(強度評価)
前述の方法で製作した実施例1〜実施例9、および比較例1〜比較例6に係る各サンプルを用いて、以下の方法で熱衝撃試験を行い、各サンプルの耐熱衝撃性の評価を行った。
【0163】
まず、各サンプルを約3mm×約4mm×約40mmの寸法の棒状に切り出し、試験片を作製した。この試験片を用いて4点曲げ試験を行い、各サンプルの初期強度Xを測定した。4点曲げ試験は、日本工業規格JISR1601(ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法)に基づき実施した。下部の2つの支点の間の距離L1は、30mmとし、各支点は、試験片の長手方向の中心から、長手方向の外側に向かって15mmの位置に設けた。また、上部の2つの荷重点の間の距離L2は、10mmとし、各荷重点は、試験片の長手方向の中心から、長手方向の外側に向かって5mmの位置に設けた。この状態で、2つの荷重点に荷重をくわえ、試験片が破壊するときの荷重を初期強度Xとした。
【0164】
次に、前述の寸法に切り出した試験片を電気炉に入れて、大気中で425℃まで加熱した。次に、加熱された試験片を水温が25℃の水中に投下した(従って、温度差ΔT=400℃)。その後、室温まで冷却された試験片を用いて、再度4点曲げ試験を行った。これにより、熱衝撃後の強度Yを測定した。
【0165】
各サンプルの初期強度Xに対する熱衝撃後の強度Yの比(すなわちY/X)を求め、この値を「残存率」とした。この「残存率」は、各サンプルの耐熱衝撃性の指標として使用することができ、1に近いほど、そのサンプルは、良好な耐熱衝撃性を有するといえる。
【0166】
前述の表1には、実施例1〜実施例9の各サンプルにおいて得られた初期強度X、熱衝撃後の強度Y、および残存率Y/Xの値を示す。また、
図4および
図5には、それぞれ、各実施例に係るサンプルの初期強度Xおよび残存率Y/Xをグラフ化した図を示す。
【0167】
従来のような有機物系の造孔剤を用いて気孔率が20%〜30%程度のムライト焼結体を製作した場合、その初期強度Xおよび残存率Y/Xは、それぞれ、約30MPaおよび約0.6程度であると予想される。
【0168】
これに対して、
図4および
図5に示すように、実施例1〜9に係るサンプルでは、初期強度が30MPaを超え、残存率Y/Xは、最小でも0.6を超えることがわかった。特に、実施例7に係るサンプルでは、初期強度が70MPaを超えることがわかった。また、実施例1に係るサンプルでは、残存率Y/Xがほぼ1となっており、極めて良好な耐熱衝撃性を有することがわかった。
【0169】
図6には、実施例1〜実施例9の各サンプルの熱衝撃試験前後の強度について得られたワイブルプロットを示す。この結果から、各サンプルの初期強度および熱衝撃試験後の強度のバラツキは、少なく、強度が安定していることがわかる。
【0170】
なお、実験の範囲内では、サンプルの初期強度および耐熱衝撃性に及ぼすジルコニアの添加量の影響は、顕著ではなかった。また、ジルコニア中に含まれるイットリアの量の影響も顕著ではなかった。
【0171】
このように、本発明による方法で製作された多孔質セラミックス焼結体は、良好な初期強度を有するとともに、優れた耐熱衝撃性を有することが確認された。
【0172】
前述の表2には、比較例1〜比較例6の各サンプルにおいて得られた初期強度X、熱衝撃後の強度Y、および残存率Y/Xの値を示す。
【0173】
この結果から、比較例2、比較例4、および比較例6では、サンプルの初期強度Xが30MPaを下回っていることがわかる。また、比較例1〜比較例4、および比較例5〜比較例6では、残存率Y/Xが0.6未満となっており、これらのサンプルは、本発明による方法で作製された多孔質セラミックス焼結体と比較して、耐熱衝撃性が劣ることがわかった。