【実施例】
【0052】
本発明を次の実施例、比較例及び試験例に基づき説明する。
但し、各材料は、上記表1及び表2に示す材料を用いた。
(実施例1、比較例1)
早強セメント、乾燥珪砂、更には低炭素材料等を均一に混合し、各早強性注入モルタルプレミクス製品を調製した。
以下の表3及び表4には、早強性注入モルタルプレミクス製品中、CO
2排出量の多い早強セメント、砂、低炭素材料についての配合割合を示すとともに、該プレミクスモルタル製品製造時のCO
2排出量を、該早強セメント、砂、低炭素材料について計算し、その結果も表3及び表4に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
上記表中、比較例1−1は、低炭素性複合材を含まない早強性注入モルタルプレミクス製品として、該製品中に含まれ且つCO
2排出量の多い早強セメントと、砂について示したものである。実施例1−1では、比較例1−1の早強性注入モルタルプレミクス製品と比べて、単位質量あたり最もCO
2排出量の大きい早強セメントを質量で8.6質量%低減し、実施例1−2では早強セメントを質量で12.0質量%低減し、さらに実施例1−3では早強セメントを質量で29.8質量%低減し、その低減分を低炭素性複合材(シラスバルーン、バイオマスボイラ灰、シリカフューム、硫酸リチウム、高性能減水剤)で置き換えて添加配合して調製した早強性注入モルタルプレミクス製品である。
また、比較例1−2は、早強セメントを質量で36質量%低減し、その低減分を低炭素材料を2種以上用いて置き換えて添加配合して調製し、比較例1−3は、早強セメントを質量で10質量%低減し、その代わりに低炭素材料を1種類だけに置き換えて添加配合して調製した、早強性注入モルタルプレミクス製品である。
【0056】
上記表3及び表4より、比較例1−1と比べて、実施例1−1では約0.031CO
2−kg/kg(約7.9%)、実施例1−2では約0.043CO
2−kg/kg(約11.1%)、実施例1−3では約0.11CO
2−kg/kg(約28.8%)、比較例1−2では約0.14CO
2−kg/kg(約35%)、比較例1−3では約0.038CO
2−kg/kg(約9.9%)のプレミクス製品製造時CO
2排出量の低減が実現されている。
【0057】
次いで、上記各早強性注入モルタルプレミクス製品に、水を水/セメント(W/C)質量比が18質量%となるように配合して、各早強性注入モルタルを調製した。
【0058】
注入モルタルは施工時にモルタルポンプで圧送されることが多く、また一般的にセメント/砂比が1/1と富配合(モルタル組成においてセメント量が多いこと)でペースト量が多くなるため、圧送時に砂が分離してポンプ閉塞を起こすことがあるため、注入モルタルには材料分離抵抗性と圧送性が所望される。
【0059】
得られた各早強性注入モルタルの材料分離抵抗性について以下の試験を行った。
具体的には、
図1に示す装置(直径200mm、高さ1mの円柱)に、上記各実施例及び比較例で得られた早強性注入モルタルを注入充填して硬化させた。各早強性注入モルタルは、元来流動性に優れるため、主として比重の重いセメントと砂が下方に偏った状態となる。
各硬化させた円柱状のモルタルを、
図1に示すように、高さ250mmごとに均等に4分割して、各切断部を上部体、中上部体、中下部体、下部体として切断した。硬化モルタル上部体と下部体の比重を測定し、その結果を表5に示す。
【0060】
【表5】
【0061】
表5中、各硬化モルタルの上部体と下部体との比重差が0.50以下のものは、材料分離による硬化体にばらつきがないことから、材料分離抵抗性(少ないほど良好)の評価を良好とした。
◎・・比重差が0.20未満
○・・比重差が0.20〜0.50
×・・比重差が0.5を超える
【0062】
表5中、実施例1−1〜1−3のものは、比重差が0.50以下であり、材料分離抵抗性に優れるものと評価できた。比重差が少ないほど、材料分離による硬化体性能のバラツキが少ないことを表す。
【0063】
次いで得られた各早強性注入モルタルの圧送性について試験を行った。
具体的には、上記各実施例及び比較例で得られた各早強性注入モルタルを、
図2に示すような閉塞経路モデル、具体的には閉塞し易いような配管を組んでモルタルの圧送性を評価するためのモデルを用いて、連続的にポンプ圧送した時の累積容積量に対する、閉塞回数によって表した。その結果を表6に示す。
【0064】
【表6】
【0065】
表6中、例えば、比較例1−1においては、初めの1m
3を圧送するにあたり、圧送時における閉塞は無かった。しかし1m
3を越えると徐々に閉塞しやすくなり、累積で5m
3圧送するまでには6回閉塞した。その後、10m
3まで圧送する過程では7回の閉塞を起こした。
圧送時における閉塞とは、ポンプに急激な負荷がかかってポンプの回転が止まってしまい、モルタルの排出が停止する状態をいう。この時直ちに配管の曲がり部をプラスチックハンマー等で叩く等の外部からの刺激により、配管内部のモルタルを強制的に流動させたり、モルタルが動きやすいように配管を真っ直ぐに伸ばしたり、閉塞して硬くなっている部分を足で踏んで揉みほぐしたりすること等の外部刺激により配管の閉塞を回復させ、圧送を再開した。圧送不能とは、前記例示した外部刺激の作業を行なっても、配管内部のモルタルを再び流動させることが出来なかった状態をいう。
【0066】
表6中、
図2のモデルにおける各硬化モルタルの閉塞回数が10m
3で10回以内であれば、平均で1m
3に1回の閉塞であり、実際の施工において問題がない許容範囲であり、閉塞回数が少ないほど望ましく、材料分離抵抗性と施工性に優れる。即ち、注入モルタルは主にコンクリート構造物の仕上げに使われる材料であり、通常少量ずつを断続的に圧送して、例えば数十リットル〜数百リットル程度を注入することが多いので、1m
3連続して圧送できれば、実際の施工においても問題とはならない。しかし、これ以上閉塞が起こるようであると、閉塞の回復対処に時間がかかり、モルタルの性能にも悪影響が出るので、下記の基準を設けて評価した。閉塞回数が累積圧送量10m
3までで合計10回以内のものを圧送性が良好とする。
◎・・圧送量が10m
3までの場合に合計閉塞回数が1回以下
○・・圧送量が10m
3までの場合に合計閉塞回数が2〜10回
×・・圧送量が10m
3までの場合に合計閉塞回数が11回以上又は圧送不能
【0067】
表6中、実施例1−1〜1−3のものは、閉塞回数が10回以下であり、圧送性が良好であると評価できた。
このように、実施例の早強性注入モルタルは、プレミクスモルタル製品の製造時のCO
2排出量を0.03CO
2−kg/kg以上削減することができるとともに、各早強性注入モルタルが本来所望される材料分離抵抗性及び圧送性に優れるものである。
【0068】
(実施例2、比較例2)
超速硬セメント、乾燥珪砂、更には低炭素材料等を均一に混合し、各超速硬性注入プレミクスモルタル製品を調製した。
以下の表7及び表8には、超速硬性注入プレミクスモルタル製品中、CO
2排出量の多い超速硬セメント、砂、低炭素材料についての配合割合を示すとともに、該プレミクスモルタル製品製造時のCO
2排出量を、該超速硬セメント、砂、低炭素材料について計算し、その結果も表7及び表8に示す。
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
上記表中、比較例2−1は、低炭素性複合材を含まない超速硬性注入モルタルプレミクス製品として、該製品中に含まれ且つCO
2排出量の多い超速硬セメントと、砂について示したものである。実施例2−1では、比較例2−1の超速硬性注入モルタルプレミクス製品と比べて、単位質量あたり最もCO
2排出量の大きい超速硬セメントを質量で約11.0質量%低減し、実施例2−2では超速硬セメントを質量で21.0質量%低減し、さらに実施例2−3では超速硬セメントを質量で34.0質量%低減し、その低減分を低炭素性複合材(シラスバルーン、フライアッシュ、高性能減水剤)で置き換えて添加配合して調製した超速硬性注入モルタルプレミクス製品である。また、比較例2−2は、超速硬セメントを質量で37.0質量%低減し、その低減分を低炭素材料を2種以上用いて置き換えて添加配合して調製し、比較例2−3は、超速硬セメントを質量で20.4質量%低減し、その代わりに低炭素材料を1種類だけに置き換えて添加配合して調製した、超速硬性注入モルタルプレミクス製品である。
【0072】
上記表7及び表8より、比較例2−1と比べて、実施例2−1では約0.04CO
2−kg/kg(約10.3%)、実施例2−2では約0.077CO
2−kg/kg(約19.9%)、実施例2−3では約0.111CO
2−kg/kg(約28.7%)、比較例2−2では約0.135CO
2−kg/kg(約34.9%)、比較例2−3では約0.077CO
2−kg/kg(約19.9%)のプレミクス製品製造時CO
2排出量の低減が実現されている。
【0073】
次いで、上記各超速硬性注入モルタルプレミクス製品に、水を水/セメント(W/C)質量比が18質量%となるように配合して、超速硬性注入モルタルを調製した。
【0074】
得られた各超速硬性注入モルタルの流動性の経時変化について試験を行った。
具体的には、上記各実施例及び比較例で得られた各超速硬性注入モルタルの流動性をJ14ロート試験により、モルタル製造直後(各プレミクスモルタル製品と水とを均一に混練した直後)と、モルタル調製から15分経過後にそれぞれ測定した。その結果を表9に示す。
【0075】
【表9】
【0076】
表9中、各モルタルの混練直後と15分経過後のJ14ロート値が8±2(秒)で、混練後から15分後変化量が3.5(秒)以内であると、超速硬性注入モルタルとしての適用に問題がないと評価した。
即ち、超速硬性注入モルタルは夜間の急速工事に用いられ、ポンプ圧送等は通常行なわれず、20分以内に流し込み・コテ仕上げに適用される材料として利用される。従って、超速硬性注入モルタルは、作業性を考慮してJ14ロート値が8±2(秒)で、混練直後から15分経過後のJ14ロート値の変化量が3.5秒以内であると、実際の施工において問題とはならない。従って下記の基準を設けて評価した。J14ロート値が8±2(秒)で、混練直後から15分経過後のJ14ロート値の変化量が3.5秒以内のものを流動性が良好とする。
◎・・J14ロート値が8±2(秒)で、混練直後から15分経過後のJ14ロート値の変化量が2.5秒以下
○・・J14ロート値が8±2(秒)で、混練直後から15分経過後のJ14ロート値の変化量が3.5秒以下
×・・混練直後及び/若しくは15分経過後のJ14ロート値が8±2(秒)の範囲外並びに/又は混練直後から15分経過後のJ14ロート値の変化量が3.5秒を超える
【0077】
表9中、実施例2−1〜2−3のものは、J14ロート値が8±2(秒)で、混練直後から15分経過後のJ14ロート値の変化量が3.5秒以内であり、流動性、流動保持性(作業性)が良好であると評価できた。
このように、実施例の超速硬性注入モルタルは、プレミクスモルタル製品の製造時のCO
2排出量を0.03CO
2−kg/kg以上削減することができるとともに、超速硬性注入モルタルが本来所望される流動性及び流動保持性(良好なハンドリングタイム・作業性)に優れるものである。
【0078】
(実施例3、比較例3)
早強セメント、低炭素材料及び乾燥珪砂等を均一に混合し、各断面修正材プレミクス製品を調製した。
以下の表10及び表11には、断面修正材プレミクス製品中、CO
2排出量の多い早強セメント、砂、低炭素材料についての配合割合を示すとともに、該プレミクス製品製造時のCO
2排出量を、該早強セメント、砂、低炭素材料について計算し、その結果も表10及び表11に示す。
【0079】
【表10】
【0080】
【表11】
【0081】
上記表中、比較例3−1は、低炭素性複合材を含まない断面修正材プレミクス製品として、該製品中に含まれ且つCO
2排出量の多い早強セメントと、砂について示したものである。実施例3−1では、比較例3−1の断面修正材プレミクス製品と比べて、単位質量あたり最もCO
2排出量の大きい早強セメントを質量で15.8質量%低減し、実施例3−2では早強セメントを質量で30.0質量%低減し、さらに実施例3−3では早強硬セメントを質量で44.0質量%低減し、その低減分を低炭素性複合材(シラス、シラスバルーン、高性能減水剤)で置き換えて添加配合して調製した断面修正材プレミクス製品である。また、比較例3−2は、早強セメントを質量で55.8質量%低減し、その低減分を低炭素材料を2種以上用いて置き換えて添加配合して調製し、比較例2−3は、早強セメントを質量で22.0質量%低減し、その代わりに低炭素材料を1種類だけに置き換えて添加配合して調製した、断面修正材プレミクス製品である。
【0082】
上記表10及び表11より、比較例3−1と比べて、実施例3−1では約0.043CO
2−kg/kg(約11.1%)、実施例3−2では約0.077CO
2−kg/kg(約19.9%)、実施例3−3では約0.11CO
2−kg/kg(約28.4%)、比較例3−2では約0.137CO
2−kg/kg(約35.5%)、比較例3−3では約0.052CO
2−kg/kg(約13.4%)のプレミクス製品製造時CO
2排出量の低減が実現されている。
【0083】
次いで、上記各断面修正材プレミクス製品に、水を水/セメント(W/C)質量比が16質量%となるように配合して、断面修正材モルタルを調製した。
【0084】
得られた各断面修正材モルタルの吹付け施工の施工性について試験を行った。
具体的には、上記各実施例及び比較例で得られた各断面修正材を天井面に吹き付けた(背面吹き付け)場合に、1回の吹付けでどれだけの厚付けが可能であるかを試験した。
厚付けが可能な施工可能厚みは、各断面修正材モルタルを天井面に吹き付け、直ちに左官コテ仕上げを行い、その材料の厚み方向に金属製定規を差し込んで目盛りを読み取り、測定した。なお、吹付け可能厚みの限界は、天井面からのモルタルのダレ(コテで押しつけても垂れてしまう状態)または吹付けたモルタルが落下したり若しくは部分的に剥離したりする状態になる直前の限界の厚みとした。
また、各断面修正材モルタルを調製後、20℃水中で28日養生後の圧縮強度をJIS R 5201に準じて測定した。
これらの結果を表12に示す。
【0085】
【表12】
【0086】
表12中、各モルタルの天井吹付け1回の施工可能厚みが20mmで、材齢28日の圧縮強度が55N/mm
2以上あると、断面修正材モルタルルとしての適用に問題がないと評価した。
即ち、断面修正材は左官コテ施工よりも吹付け施工で用いられ、吹付け施工においては、断面修正材モルタルの付着性と1回の吹付け施工でどれだけの厚付けが可能であるか(厚付け性)、及び強度が重要である。従って、断面修正材モルタルは、天井吹付け1回の施工可能克巳が20mm以上で、かつ材齢28日の圧縮強度が55N/mm
2以上であれば、問題とはならず、かかる基準を満たすものを良好とした。
◎・・天井吹付け1回の施工可能厚みが25mm以上で、材齢28日圧縮強度が58N/mm
2以上
○・・天井吹付け1回の施工可能厚みが20mm以上25mm未満で、材齢28日圧縮強度が55N/mm
2以上58N/mm
2未満
×・・天井吹付け1回の施工可能厚みが20mm未満で、材齢28日圧縮強度が55N/mm
2未満
【0087】
表12中、実施例3−1〜3−3のものは、天井吹付け1回の施工可能厚みが20mm以上で、材齢28日圧縮強度が55N/mm
2以上であり、付着性、厚付け性及び強度が良好であると評価できた。
このように、実施例の断面修正材モルタルは、プレミクスモルタル製品の製造時のCO
2排出量を0.03CO
2‐kg/kg以上削減することができるとともに、断面修正材モルタルが本来所望される付着性、厚付け性、強度に優れるものである。
【0088】
(実施例4、比較例4)
早強セメント、低炭素材料及び乾燥珪砂等を均一に混合し、各半たわみ性舗装注入プレミクス製品を調製した。
以下の表13及び表14には、半たわみ性舗装注入プレミクス製品中、CO
2排出量の多い早強セメント、砂、低炭素材料についての配合割合を示すとともに、該プレミクス製品製造時のCO
2排出量を、該早強セメント、砂、低炭素材料について計算し、その結果も表13及び表14に示す。
【0089】
【表13】
【0090】
【表14】
【0091】
上記表中、比較例4−1は、低炭素性複合材を含まない半たわみ性舗装注入材プレミクス製品として、該製品中に含まれ且つCO
2排出量の多い早強セメントと、砂について示したものである。実施例4−1では、比較例4−1の半たわみ性舗装注入材プレミクス製品と比べて、単位質量あたり最もCO
2排出量の大きい早強セメントを質量で10.5質量%低減し、実施例4−2では早強セメントを質量で22.8質量%低減し、さらに実施例4−3では早強セメントを質量で30.6質量%低減し、その低減分を低炭素
性複合材(シラスバルーン、バイオマスボイラ灰、フライアッシュ、高性能減水剤)で置き換えて添加配合して調製した半たわみ性舗装注入材プレミクス製品である。また、比較例4−2は、早強セメントを質量で36.4質量%低減し、その低減分を低炭素性材料2種以上を用いて置き換えて添加配合して調製し、比較例4−3は、早強セメントを質量で20.4質量%低減し、その代わりに低炭素材料を1種類だけに置き換えて添加配合して調製した、半たわみ性舗装注入材プレミクス製品である。
【0092】
上記表13及び表14より、比較例4−1と比べて、実施例4−1では約0.045CO
2−kg/kg(約9.1%)、実施例4−2では約0.103CO
2−kg/kg(約20.9%)、実施例4−3では約0.141CO
2−kg/kg(約28.7%)、比較例4−2では約0.169CO
2−kg/kg(約34.3%)、比較例4−3では約0.0975CO
2−kg/kg(約19.8%)のプレミクス製品製造時CO
2排出量の低減が実現されている。
【0093】
次いで、上記各半たわみ性舗装注入材プレミクス製品に、水を水/セメント(W/C)質量比が45質量%となるように配合して、半たわみ性舗装注入材モルタルを調製した。
【0094】
得られた各半たわみ性舗装注入材モルタルの流動性の経時変化について試験を行った。
具体的には、上記各実施例及び比較例で得られた各半たわみ性舗装注入材モルタルの流動性をPロート試験により、モルタル製造直後(各プレミクス製品と水とを均一に混練した直後)と、モルタル調製から45分経過後にそれぞれ測定した。その結果を表15に示す。
【0095】
【表15】
【0096】
表15中、各モルタルの混練直後と45分経過後のPロート値が10±2(秒)で、45分変化量が3.5(秒)以内であると、半たわみ性舗装注入材モルタルとしての適用に問題がないと評価した。
即ち、半たわみ性舗装注入材モルタルは、アスファルト合材舗装の粗骨材と粗骨材との間の空隙に浸透させて硬化させる極めて高い流動性が所望される注入材であり、注入完了までに流動性を保持する(ハンドリングタイムの確保)が施工上重要である。
従って、半たわみ性舗装注入材モルタルは、流動性(ハンドリング性)を考慮してPロート値が10±2(秒)で、混練直後から45分経過後のPロート値の変化量が3.5秒以内であると、実際の施工において問題とはならない。従って下記の基準を設けて評価した。Pロート値が10±2(秒)で、混練直後から45分経過後のPロート値の変化量が3.5秒以内のものを流動性が良好とする。
なお、表15中、測定不能とは、流動性が低下してしまい、Pロートから流下しないか、または初めは少し流下するが、Pロート内部の材料が全て流下しきれずに途中で流下が止まってしまう状態をいうものである。
◎・・Pロート値が10±2(秒)で、混練直後から45分経過後のPロート値の変化量が2秒以下
○・・Pロート値が10±2(秒)で、混練直後から45分経過後のPロート値の変化量が2秒を越えて、3.5秒以下
×・・Pロート値が10±2(秒)範囲外及び/又は混練直後から45分経過後のPロート値の変化量が3.5秒を超える
【0097】
表15中、実施例4−1〜4−3のものは、Pロート値が10±2(秒)で、混練直後から45分経過後のPロート値の変化量が3.5秒以内であり、流動性、流動保持性(作業性)が良好であると評価できた。
このように、実施例の半たわみ性舗装注入材モルタルは、プレミクスモルタル製品の製造時の二酸化炭素排出量を0.03CO
2−kg/kg以上削減することができるとともに、半たわみ性舗装注入材モルタルが本来所望される流動性及び流動保持性(良好なハンドリングタイム・作業性)に優れるものである。
【0098】
(実施例5、比較例5)
早強セメント、低炭素材料及び乾燥珪砂等を均一に混合し、各セルフレベリング材プレミクス製品を調製した。
以下の表16及び表17には、セルフレベリング材プレミクス製品中、CO
2排出量の多い早強セメント、砂、低炭素材料についての配合割合を示すとともに、該プレミクス製品製造時のCO
2排出量を、該早強セメント、砂、低炭素材料について計算し、その結果も表16及び表17に示す。
【0099】
【表16】
【0100】
【表17】
【0101】
上記表中、比較例5−1は、低炭素性複合材を含まないセルフレベリング材プレミクス製品として、該製品中に含まれ且つCO
2排出量の多い早強セメントと、砂について示したものである。実施例5−1では、比較例5−1のセルフレベリング材プレミクス製品と比べて、単位質量あたり最もCO
2排出量の大きい早強セメントを質量で14.3質量%低減し、実施例5−2では早強セメントを質量で20.7質量%低減し、さらに実施例5−3では早強硬セメントを質量で28.7質量%低減し、その低減分を低炭素性複合材(シラス、シラスバルーン、シリカフューム、高性能減水剤)で置き換えて添加配合して調製したセルフレベリング材プレミクス製品である。また、比較例5−2は、早強セメントを質量で38.6質量%低減し、その低減分を低炭素材料を2種以上用いて置き換えて添加配合して調製し、比較例5−3は、早強セメントを質量で23.0質量%低減し、その代わりに低炭素材料を1種類だけに置き換えて添加配合して調製した、セルフレベリング材プレミクス製品である。
【0102】
上記表16及び表17より、比較例5−1と比べて、実施例5−1では約0.044CO
2−kg/kg(約13%)、実施例5−2では約0.066CO
2−kg/kg(約20%)、実施例5−3では約0.092CO
2−kg/kg(約27%)、比較例5−2では約0.125CO
2−kg/kg(約37%)、比較例5−3では約0.076CO
2−kg/kg(約23%)のプレミクス製品製造時CO
2排出量の低減が実現されている。
【0103】
次いで、上記各セルフレベリング材プレミクス製品に、水を水/セメント(W/C)質量比が26質量%となるように配合して、セルフレベリング材モルタルを調製した。
【0104】
得られた各セルフレベリング材モルタルの化学抵抗性について試験を行った。
具体的には、上記各実施例及び比較例で得られた各セルフレベリング材モルタルを用いて、材齢28日の硬化体を製造した。得られた各硬化体を3%硫酸ナトリウム溶液に浸漬して、浸漬前、7日浸漬後、90日浸漬後、1年浸漬後の圧縮強度の経時変化を測定した。
その結果を表18に示す。
【0105】
【表18】
【0106】
表18中、各モルタルの硬化体の圧縮強度が、20N/mm
2で以上あると、セルフレベリング材としての適用に問題がないと評価した。
即ち、セルフレベリング材は、建築構造物の床面を流し込むだけで平坦に仕上げる床材料であり、特に広大な酸性泉室の温泉施設の床施工に適用するためのセルフレベリング材として期待されており、そのため酸性の湯水にレベリング材が腐食されないことが重要である。従って、セルフレベリング材は、酸性温泉水に相当する3%硫酸ナトリウム溶液に、各モルタル硬化体を浸漬した場合に、圧縮強度が1年経た後であっても20N/mm
2以上であれば、問題とはならず、かかる基準を満たすものを良好とした。
◎・・3%硫酸ナトリウム溶液に、モルタル硬化体を浸漬した場合に、圧縮強度が1年経た後であっても23N/mm
2以上
○・・3%硫酸ナトリウム溶液に、各モルタル硬化体を浸漬した場合に、圧縮強度が1年経た後であっても20N/mm
2以上で23N/mm
2未満
×・・3%硫酸ナトリウム溶液に、各モルタル硬化体を浸漬した場合に、圧縮強度が1年経た後には20N/mm
2未満
【0107】
表18中、実施例5−1〜5−3のものは、3%硫酸ナトリウム溶液に、モルタル硬化体を1年浸漬した場合でも圧縮強度が20N/mm
2以上であり、化学抵抗性が良好であると評価できた。
このように、実施例のセルフレベリング材は、プレミクスモルタル製品の製造時のCO
2排出量を0.03CO
2−kg/kg以上削減することができるとともに、セルフレベリング材が本来所望される化学抵抗性に優れるものである。