特許第5712768号(P5712768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5712768波長変換部材、発光装置、及び波長変換部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712768
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】波長変換部材、発光装置、及び波長変換部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/80 20060101AFI20150416BHJP
   C04B 35/44 20060101ALI20150416BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20150416BHJP
   H01L 33/50 20100101ALN20150416BHJP
【FI】
   C09K11/80CPM
   C04B35/44
   C04B35/50
   !H01L33/00 410
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-99452(P2011-99452)
(22)【出願日】2011年4月27日
(65)【公開番号】特開2011-256371(P2011-256371A)
(43)【公開日】2011年12月22日
【審査請求日】2013年5月24日
(31)【優先権主張番号】特願2010-108249(P2010-108249)
(32)【優先日】2010年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】綿谷 和浩
(72)【発明者】
【氏名】塚谷 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 康
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−004753(JP,A)
【文献】 特開2002−189080(JP,A)
【文献】 特開2006−332501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
C04B 35/44
C04B 35/50
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記組成式(1)
(A1-xx3512 (1)
(式中、AはY,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素、BはCe,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素、CはAl及びGaから選ばれる1種類以上の元素であり、xは0.002≦x≦0.2である。)
で示されるガーネット相と、
(B)モノクリニック相及びシリケート相から選ばれる1種類以上の相
とを含有する多結晶の焼結セラミックスであり、(A)相中に(B)相からなる微細結晶が包含されて分散してなることを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
上記モノクリニック相が、Y,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Ce,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Al及びGaから選ばれる1種類以上の元素と、酸素とを含有することを特徴とする請求項1記載の波長変換部材。
【請求項3】
上記シリケート相が、Y,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Ce,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Al及びGaから選ばれる1種類以上の元素と、ケイ素と、酸素とを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の波長変換部材。
【請求項4】
上記(B)相からなる微細結晶の平均粒径が0.1μm以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の波長変換部材。
【請求項5】
焼結セラミックスの気孔率が0.1体積%以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の波長変換部材。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項記載の波長変換部材を用いた発光装置であり、光源からの光の一部が上記波長変換部材を透過し、かつ光源からの光の一部が上記波長変換部材にて波長変換されて発光することを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1記載の波長変換部材を製造する方法であって、(A)相に含まれる各元素を(A)相を与える組成で含有する原料粉末と、(B)相に含まれる各元素を(B)相を与える組成で含有する原料粉末とを混合し、得られた混合粉末を成形し、得られた成形体を加熱して焼結することを特徴とする波長変換部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から発光した光の一部を透過し、一部を波長変換する波長変換部材、それを用いた発光装置、及び波長変換部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは、現在利用可能な光源の中で最も効率的な光源の一つである。近年、青色発光LEDと蛍光体を組み合わせた白色LEDについての開発が盛んに行われている。例えば、特開2007−150331号公報(特許文献1)では、ガーネット等を含む波長変換部材として、発光素子より放出される光を波長変換する透光性で、かつ均質な波長変換部材と、この波長変換部材を備える発光装置について示されている。そして、その波長変換部材が、従来の蛍光体とそれを分散させる樹脂とを組み合わせた波長変換層と比較して、高い耐熱性と高い機械的強度とが期待でき、発光素子の出力が大きくなるに従い増大する発熱に対して、高い耐久性が期待できるとされている。
【0003】
波長変換部材にガーネットを用いた場合、透光性で、かつ均質な波長変換部材の場合、光源から発光した光は、波長変換部材を透過する透過光の場合は、波長変換部材中を直線的に進み、一方、波長変換部材に吸収されて波長変換された波長変換光の場合は、全方向に等方的に発光するため、透過光と波長変換光の配光パターンは異なる。そのため、このような波長変換部材を備える発光装置から発光した光は、色が均一にならず、このような発光装置では、むらのある照明面しか得られない。この対策として、発光装置の外周部に不透明又は半透明の光拡散部材を設置することによって、照明面の色むらの緩和を図ることが行われているが、光拡散部材の使用により、光の一部を光拡散部材によってロスしてしまうことになり、光の利用効率が低下してしまうことにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−150331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、光源から発光した光の一部を透過し、一部を波長変換する波長変換部材において、透過光と波長変換光との配光の違いによる色むらが軽減され、照明面において、均一な色を与えることができる波長変換部材、それを用いた発光装置、及び波長変換部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
波長変換部材を使用した発光装置において、上記のような透過光と波長変換光との配光の違いによる色むらを軽減するためには、透過光の損失をできるだけ抑えつつ、透過光を波長変換部材中で散乱させることが有効である。
【0007】
例えば、波長変換部材を透過する光の散乱を生じさせるためには、焼結体の波長変換部材において、焼結密度を意図的に下げることで気泡を含有させ、発光装置から発光される光の色むらを低減させることが考えられるが、この場合、波長変換部材と気泡の屈折率差が大きすぎるため、波長変換部材と気泡の界面での光の反射、散乱などにより、発光装置の発光効率が低下してしまう欠点がある。
【0008】
そこで、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、発光装置を構成する波長変換部材として、(A)ガーネット相と、(B)ペロブスカイト相、モノクリニック相及びシリケート相から選ばれる1種類以上の相とを含有し、(A)相中に(B)相からなる微細結晶が包含されて分散した多結晶の焼結セラミックスが、波長変換部材を透過する光が、ガーネット相と、ぺロブスカイト相、モノクリニック相又はシリケート相との界面にて適度に散乱され、発光装置としての発光効率の低下を抑制しながら、発光装置より発光される光の色むらを低減することができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記の波長変換部材、発光装置、及び波長変換部材の製造方法を提供する。
請求項1:
(A)下記組成式(1)
(A1-xx3512 (1)
(式中、AはY,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素、BはCe,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素、CはAl及びGaから選ばれる1種類以上の元素であり、xは0.002≦x≦0.2である。)
で示されるガーネット相と、
(B)モノクリニック相及びシリケート相から選ばれる1種類以上の相
とを含有する多結晶の焼結セラミックスであり、(A)相中に(B)相からなる微細結晶が包含されて分散してなることを特徴とする波長変換部材。
請求項
上記モノクリニック相が、Y,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Ce,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Al及びGaから選ばれる1種類以上の元素と、酸素とを含有することを特徴とする請求項1記載の波長変換部材。
請求項
上記シリケート相が、Y,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Ce,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Al及びGaから選ばれる1種類以上の元素と、ケイ素と、酸素とを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の波長変換部材。
請求項
上記(B)相からなる微細結晶の平均粒径が0.1μm以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の波長変換部材。
請求項
焼結セラミックスの気孔率が0.1体積%以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の波長変換部材。
請求項
請求項1乃至のいずれか1項記載の波長変換部材を用いた発光装置であり、光源からの光の一部が上記波長変換部材を透過し、かつ光源からの光の一部が上記波長変換部材にて波長変換されて発光することを特徴とする発光装置。
請求項
請求項1記載の波長変換部材を製造する方法であって、(A)相に含まれる各元素を(A)相を与える組成で含有する原料粉末と、(B)相に含まれる各元素を(B)相を与える組成で含有する原料粉末とを混合し、得られた混合粉末を成形し、得られた成形体を加熱して焼結することを特徴とする波長変換部材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の波長変換部材を透過した光は、波長変換部材中、ガーネット相と、ペロブスカイト相、モノクリニック相又はシリケート相との界面にて散乱するので、この波長変換部材を用いた発光装置では、光の損失が少なく、また、発光色の均一性が良好になる。即ち、このような波長変換部材を使用した発光装置では、波長変換部材を透過する光と波長変換された光との配光の均一性が、従来のものと比べて改善され、色むらの改善された照明面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】波長変換部材中、(B)相が、(A)相に包含されて分散している状態の模式図である。
図2】実施例1で得られた波長変換部材の電子顕微鏡像及びEPMA像である。
図3】実施例2で得られた波長変換部材の電子顕微鏡像及びEPMA像である。
図4】実施例3で得られた波長変換部材の電子顕微鏡像及びEPMA像である。
図5】比較例1で得られた波長変換部材の電子顕微鏡像及びEPMA像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の波長変換部材は、(A)相として、ガーネット相と、(B)相としてペロブスカイト相、モノクリニック相及びシリケート相から選ばれる1種類以上の相とを含有する多結晶の焼結セラミックスである。また、本発明の波長変換部材は、(A)相を主相とし、(B)相で形成された微細結晶が、主相としての(A)相で形成された結晶中に、包含されて分散されている。
【0013】
これらの相の状態は、具体的には、例えば、図1に示される波長変換部材の断面模式図のように、ガーネット相((A)相)の結晶1中に、ペロブスカイト相、モノクリニック相及びシリケート相から選ばれる1種類以上の相((B)相)の微細結晶2が分散して分布した構造であり、異なる2種の相が、いわゆる海島構造を形成した状態である。
【0014】
波長変換部材をこのような相構造の多結晶の焼結セラミックスとすることで、これを、光源からの光の一部が波長変換部材を透過し、かつ光源からの光の一部が波長変換部材にて波長変換されて発光する発光装置に用いれば、波長変換部材を透過する光、また、波長変換部材により変換された光も、ガーネット相と、ぺロブスカイト相、モノクリニック相又はシリケート相との界面にて適度に散乱され、発光装置としての発光効率の低下を抑制しながら、発光装置より発光される光の色むらを低減することができる。
【0015】
(A)相と(B)相との比率((B)相/(A)相)は、0.001〜0.2、特に0.001〜0.1であることが好ましい。この比率が上記範囲を超えると、発光効率が低下する場合があり、上記範囲未満では、散乱による色むら改善の効果が低下する場合がある。この比率は、焼結体を製造する際の、両相を与える原料粉末の比率を調整することにより設定することができる。
【0016】
(B)相からなる微細結晶の平均粒径は0.1μm以上であることが好ましく、また、1mm以下が好ましい。0.1μm未満では、透過光の散乱の効果が低下するおそれがあり、1mmを超えると(B)相の結晶粒径が大きすぎるため、透過光の透過率の低下を招くおそれがある。
【0017】
また、焼結セラミックスの気孔率は、0.5体積%以下、特に0.1体積%以下であることが好ましい。気孔率が上記範囲を上回ると、波長変換部材中を透過する光、更には、波長変換部材に吸収されて波長変換された光が、波長変換部材中の気孔に散乱されて、ロスしてしまうため、発光効率の低下を招いてしまうおそれがある。
【0018】
本発明の波長変換部材では、(A)相のガーネット相として、下記組成式(1)
(A1-xx3512 (1)
(式中、AはY,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素、BはCe,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素、CはAl及びGaから選ばれる1種類以上の元素であり、xは0.002≦x≦0.2である。)
で示されるガーネット相が好適である。
【0019】
一方、(B)相のペロブスカイト相としては、Ce,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素を含有する酸化物ペロブスカイト相、特に、Y,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Ce,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Al及びGaから選ばれる1種類以上の元素と、酸素とを含有するペロブスカイト相が好適である。このようなペロブスカイト相として具体的には、下記組成式(2)
(A1-yy)CO3 (2)
(式中、A、B及びCは、上記と同じであり、yは0.002≦y≦0.98である。)
で示されるものが挙げられる。
【0020】
また、(B)相のモノクリニック相(単斜相)としては、Ce,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素を含有する酸化物モノクリニック相、特に、Y,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Ce,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Al及びGaから選ばれる1種類以上の元素と、酸素とを含有するモノクリニック相が好適である。このようなモノクリニック相として具体的には、下記組成式(3)
(A1-zz429 (3)
(式中、A、B及びCは、上記と同じであり、zは0.002≦z≦0.98である。)
で示されるものが挙げられる。
【0021】
更に、(B)相のシリケート相としては、Ce,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素を含有するシリケート相、特に、Y,Gd及びLuから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Ce,Nd及びTbから選ばれる1種類以上の希土類元素と、Al及びGaから選ばれる1種類以上の元素と、ケイ素と、酸素とを含有するシリケート相が好適である。
【0022】
このような多結晶セラミックスの波長変換部材の製造は、波長変換部材内の気泡を低減でき、更に、(A)相中に(B)相を均一に分散させることができる観点から、焼結法で製造することが好ましいが、その他の方法で製造してもよい。
【0023】
焼結法で製造する場合、具体的には、まず、(A)相に含まれる各元素を(A)相を与える組成で含有する原料粉末として、ガーネット相又はその近傍の組成の含有比率を有するセラミックス粉末を製造する。この製造には、ガーネット相に含有される各元素の酸化物、水酸化物等の粉末を、上記所定の含有比率となるように混合し、大気雰囲気中又は真空中、900〜1500℃の温度で、10分〜8時間焼成することにより、ガーネット相単相組成の原料粉末を得ることができる。
【0024】
(B)相に含まれる各元素を(B)相を与える組成で含有する原料粉末は、ぺロブスカイト相及びモノクリニック相の場合は、ガーネット相と同様に、ぺロブスカイト相若しくはその近傍の組成の含有比率を有するセラミックス粉末、又はモノクリニック相若しくはその近傍の組成の含有比率を有するセラミックス粉末を、各々の相に含有される各元素の酸化物等の粉末を、上記所定の含有比率となるように混合し、大気雰囲気中又は真空中、900〜1500℃の温度で、10分〜8時間焼成することにより、各々の相単相組成の原料粉末を得ることができる。
【0025】
一方、シリケート相の場合、ケイ素を含む化合物、例えば、酸化ケイ素、シリコーン樹脂などの粉末を、(B)相の原料粉末とすればよい。(A)相として、上記組成式(1)で示されるガーネット相を適用した場合、添加したケイ素化合物の一部又は全部は、焼結過程において、組成式(1)中、A,B及びCで表わされる元素とケイ素と酸素とからなるシリケート相を形成するものと考えられる。
【0026】
次に、これら(A)相を構成するための原料粉末と、(B)相を形成するための原料粉末とを、上述した((B)相/(A)相)の比率となるように混合し、得られた混合粉末を、プレス法、スリップキャスト法、シート成型法などによって成形し、得られた成形体を大気雰囲気中、還元雰囲気中又は真空中で、加熱焼成することにより、緻密なセラミックス焼結体である波長変換部材を得ることができる。特に、波長変換部材中の気泡を可能な限り少なくするためには、真空焼結が好ましい。
【0027】
また、波長変換部材の密度を向上させるために、焼結温度は1700℃以上、特に1750℃以上であることが好ましい。また、焼結温度は2000℃以下であることが好ましい。焼結温度が、上記範囲を超えると、経済的に不利である。焼結時間は、通常4〜24時間程度である。この焼結過程において、主相である(A)相が形成されると共に(B)相も形成され、(A)相中に(B)相を分散させて存在させることができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0029】
[実施例1]
純度99.9%、平均粒径1.0μmの酸化イットリウム(Y23)粉末と、純度99.0%、平均粒径0.5μmの酸化アルミニウム(Al23)粉末と、純度99.9%、平均粒径0.2μmの酸化セリウム(CeO2)粉末とを、各々Y:Al:Ce=2.98:5:0.02のモル比でミキサーにて30分混合し、500gの混合粉末を得た。次に、この混合粉末を、大気雰囲気中、1400℃で4時間焼成し、ガーネット相単相組成の原料粉末(1−1)500gを得た。
【0030】
一方、純度99.9%、平均粒径1.0μmの酸化イットリウム(Y23)粉末と、純度99.0%、平均粒径0.5μmの酸化アルミニウム(Al23)粉末と、純度99.9%、平均粒径0.2μmの酸化セリウム(CeO2)粉末とを、各々Y:Al:Ce=2.98:3.00:0.02のモル比で混合し、1gの混合粉末を得た。次に、この混合粉末を、大気雰囲気中、1400℃で4時間焼成し、ぺロブスカイト相単相組成の原料粉末(1−2)1gを得た。
【0031】
これら原料粉末(1−1)及び(1−2)を、ミキサーにて1時間混合し、焼結用の原料粉末(1)を得た。次に、得られた原料粉末(1)を1軸プレスでプレス成形した後、1750℃にて真空焼結することで、緻密な焼結体を得た。得られた焼結体から縦1.5mm、横2.0mm、厚さ200μmの薄板状の焼結体を切り出して、波長変換部材とした。
【0032】
この波長変換部材の焼結密度を測定したところ4.55g/cm3で、気孔率は0.1体積%であった。この波長変換部材の断面を観察したところ、気泡の少ない緻密な焼結体であった。また、この波長変換部材をXRDで定性分析したところ、主相はYAG相(ガーネット相)であり、それ以外にYAP相(ペロブスカイト相)が確認された。更に、この波長変換部材の組織を電子顕微鏡で観察し、EPMAで分析したところ、平均粒径が約3μmのYAP相が、YAG相に包含されて分散した状態でYAG相中に存在していることが確認された。図2に電子顕微鏡像及びEPMA像を示す。
【0033】
得られた波長変換部材を470nmの光で励起したところ、波長変換部材の内部量子効率は0.90であった。また、この波長変換部材に470nmの点光源を照射したところ、光源の照射面と反対側の面で、色むらのない発光が得られた。
【0034】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、原料粉末(1−1)500gを得た。一方、純度99.9%、平均粒径1.0μmの酸化イットリウム(Y23)粉末と、純度99.0%、平均粒径0.5μmの酸化アルミニウム(Al23)粉末と、純度99.9%、平均粒径0.2μmの酸化セリウム(CeO2)粉末とを、各々Y:Al:Ce=3.98:2.00:0.02のモル比で混合し、1gの混合粉末を得た。次に、この混合粉末を、大気雰囲気中、1400℃で4時間焼成し、モノクリニック相単相組成の原料粉末(2−2)1gを得た。
【0035】
これら原料粉末(1−1)及び(2−2)を、ミキサーにて1時間混合し、焼結用の原料粉末(2)を得た。次に、得られた原料粉末(2)を1軸プレスでプレス成形した後、1750℃にて真空焼結することで、緻密な焼結体を得た。得られた焼結体から縦1.5mm、横2.0mm、厚さ200μmの薄板状の焼結体を切り出して、波長変換部材とした。
【0036】
この波長変換部材の焼結密度を測定したところ4.55g/cm3で、気孔率は0.1体積%であった。この波長変換部材の断面を観察したところ、気泡の少ない緻密な焼結体であった。また、この波長変換部材をXRDで定性分析したところ、主相はYAG相(ガーネット相)であり、それ以外にYAM相(モノクリニック相)が確認された。更に、この波長変換部材の組織を電子顕微鏡で観察し、EPMAで分析したところ、平均粒径が約5μmのYAM相が、YAG相に包含されて分散した状態でYAG相中に存在していることが確認された。図3に電子顕微鏡像及びEPMA像を示す。
【0037】
得られた波長変換部材を470nmの光で励起したところ、波長変換部材の内部量子効率は0.92であった。また、この波長変換部材に470nmの点光源を照射したところ、光源の照射面と反対側の面で、色むらのない発光が得られた。
【0038】
[実施例3]
純度99.9%、平均粒径1.0μmの酸化イットリウム(Y23)粉末と、純度99.0%、平均粒径0.5μmの酸化アルミニウム(Al23)粉末と、純度99.9%、平均粒径0.2μmの酸化セリウム(CeO2)粉末とを、各々Y:Al:Ce=2.99:5:0.01のモル比でミキサーにて30分混合し、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を、大気雰囲気中、1400℃で4時間焼成し、ガーネット相単相組成の原料粉末(3−1)を得た。
【0039】
この原料粉末(3−1)に、酸化ケイ素粉末を2000ppmとなるように添加し、ミキサーにて1時間混合し、焼結用の原料粉末(3)100gを得た。次に、得られた原料粉末(3)を1軸プレスでプレス成形した後、1780℃で真空焼結することで、緻密な焼結体を得た。得られた焼結体から縦1.5mm、横2.0mm、厚さ200μmの薄板状の焼結体を切り出して、波長変換部材とした。
【0040】
この波長変換部材の焼結密度を測定したところ4.54g/cm3で、気孔率は0.2体積%であった。この波長変換部材の断面を観察したところ、気泡の少ない緻密な焼結体であった。また、この波長変換部材をXRDで定性分析したところ、主相はYAG相(ガーネット相)であり、それ以外にシリケート相が確認された。更に、この波長変換部材の組織を電子顕微鏡で観察し、EPMAで分析したところ、平均粒径が約5μmのシリケート相が、YAG相に包含されて分散した状態でYAG相中に存在していることが確認された。図4に電子顕微鏡像及びEPMA像を示す。
【0041】
得られた波長変換部材を470nmの光で励起したところ、波長変換部材の内部量子効率は0.92であった。また、この波長変換部材に470nmの点光源を照射したところ、光源の照射面と反対側の面で、色むらのない発光が得られた。
【0042】
[比較例1]
実施例1と同様の方法で、原料粉末(1−1)500gを得た。次に、得られた原料粉末(2)を1軸プレスでプレス成形した後、1750℃にて真空焼結することで、緻密な焼結体を得た。得られた焼結体から縦1.5mm、横2.0mm、厚さ200μmの薄板状の焼結体を切り出して、波長変換部材とした。
【0043】
この波長変換部材の焼結密度を測定したところ4.55g/cm3で、気孔率は0.1体積%であった。また、この波長変換部材をXRDで定性分析したところ、ガーネット相であった。更に、この波長変換部材の組織を電子顕微鏡で観察し、EPMAで分析したところ、ガーネット相以外の相は観察されなかった。図5に電子顕微鏡像及びEPMA像を示す。
【0044】
得られた波長変換部材を470nmの光で励起したところ、波長変換部材の内部量子効率は0.90であった。また、この波長変換部材に470nmの点光源を照射したところ、光源の照射面と反対側の面で、色むらがある発光しか得られなかった。
図1
図2
図3
図4
図5