特許第5712921号(P5712921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5712921トリアジン環含有重合体およびそれを含む膜形成用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5712921
(24)【登録日】2015年3月20日
(45)【発行日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】トリアジン環含有重合体およびそれを含む膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/06 20060101AFI20150416BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20150416BHJP
   C09D 179/04 20060101ALI20150416BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20150416BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20150416BHJP
【FI】
   C08G73/06
   C08L79/04 Z
   C09D179/04 Z
   H01L21/312 A
   G02B1/04
【請求項の数】23
【全頁数】102
(21)【出願番号】特願2011-512355(P2011-512355)
(86)(22)【出願日】2010年5月6日
(86)【国際出願番号】JP2010057761
(87)【国際公開番号】WO2010128661
(87)【国際公開日】20101111
【審査請求日】2013年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2009-112880(P2009-112880)
(32)【優先日】2009年5月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-142249(P2009-142249)
(32)【優先日】2009年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-173329(P2009-173329)
(32)【優先日】2009年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-176265(P2009-176265)
(32)【優先日】2009年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-74628(P2010-74628)
(32)【優先日】2010年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-74651(P2010-74651)
(32)【優先日】2010年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】小澤 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】飛田 将大
(72)【発明者】
【氏名】小出 泰之
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−156001(JP,A)
【文献】 特公昭32−003145(JP,B1)
【文献】 特表2001−503077(JP,A)
【文献】 特開平07−113009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00−73/26
C08L 79/00−79/08
C09D 179/04
G02B 1/04
H01L 21/312
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むことを特徴とするトリアジン環含有重合体。
【化1】
{式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、Arは、式(3)〜(19)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【化2】
〔式中、R1〜R128は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、
1は、単結合、C=OまたはNR129(R129は、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表し、
2およびW3は、互いに独立して、単結合、CR130131(R130およびR131は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNR129(R129は前記と同じ意味を表す。)を表し、
1およびX2は、互いに独立して、単結合、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(20)
【化3】
(式中、R132〜R135は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、
1およびY2は、互いに独立して、単結合または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。)
で示される基を表す。〕}
【請求項2】
前記Arが、式(6)〜(12)で示される群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項3】
前記Arが、式(8)、(9)および(12)で示される群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項4】
前記Arが、式(6)、(13)および(15)〜(19)で示される群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項5】
前記Arが、下記式(21)または(22)で表される請求項1記載のトリアジン環含有重合体。
【化4】
(式中、R136〜R159は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、R158およびR159は一緒になって環を形成していてもよい。)、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
【請求項6】
前記繰り返し単位構造が、式(23)で示される請求項1記載のトリアジン環含有重合体。
【化5】
【請求項7】
前記Arが、下記式で表される少なくとも1種である請求項1記載のトリアジン環含有重合体。
【化6】
【請求項8】
下記式(25)で表される繰り返し単位構造を含む請求項1記載のトリアジン環含有重合体。
【化7】
(式中、R、R′およびR77〜R80は、前記と同じ意味を表す。)
【請求項9】
下記式(26)で表される繰り返し単位構造を含む請求項8記載のトリアジン環含有重合体。
【化8】
(式中、RおよびR′は、前記と同じ意味を表す。)
【請求項10】
前記繰り返し単位構造が、式(27)で示される請求項8記載のトリアジン環含有重合体。
【化9】
【請求項11】
少なくとも1つの末端が、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、またはエステル基でキャップされている請求項1〜10のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項12】
少なくとも1つのトリアジン環末端を有し、このトリアジン環末端が、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、またはエステル基でキャップされている請求項11記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体を含む膜形成用組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体を含む膜。
【請求項15】
基材と、この基材上に形成された請求項14記載の膜とを備える電子デバイス。
【請求項16】
基材と、この基材上に形成された請求項14記載の膜とを備える光学部材。
【請求項17】
請求項14記載の膜を少なくとも1層備える、電荷結合素子または相補性金属酸化膜半導体からなる固体撮像素子。
【請求項18】
請求項14記載の膜をカラーフィルター上の平坦化層として備える固体撮像素子。
【請求項19】
ハロゲン化シアヌルまたはジアミノアリール化合物および有機溶媒を含む溶液を60〜150℃に加熱し、この温度で、前記溶液中に、ジアミノアリール化合物またはハロゲン化シアヌルを加えて一段階でトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーを得ることを特徴とする請求項1記載のトリアジン環含有重合体の製造方法。
【請求項20】
ハロゲン化シアヌルおよびジアミノアリール化合物を、有機溶媒中、−50〜50℃で反応させる第1工程と、この工程に続いて60〜150℃で反応させる第2工程とからなることを特徴とする請求項1記載のトリアジン環含有重合体の製造方法。
【請求項21】
ハロゲン化シアヌル化合物と、ジアミノアリール化合物とを、前記ハロゲン化シアヌル化合物に対して、0.05〜500当量の有機モノアミンの存在下で重合させることを特徴とする請求項1記載のトリアジン環含有重合体の製造方法。
【請求項22】
下記式(1′)で表される繰り返し単位構造を含むトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーと、架橋剤とを含むことを特徴とする組成物
【化10】
(式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、Ar′は、芳香環および複素環のいずれか一方または双方を含む2価の有機基を表す。)
【請求項23】
前記Ar′が、式(3)〜(6′)、および(7′)〜(19)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す請求項23記載の組成物。
【化11】
〔式中、R1〜R128は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、
2およびW3は、互いに独立して、単結合、CR130131(R130およびR131は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNR129(R129は前記と同じ意味を表す。)を表し、
1およびX2は、互いに独立して、単結合、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(20)
【化12】
(式中、R132〜R135は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、
1およびY2は、互いに独立して、単結合または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。)
で示される基を表す。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン環含有重合体およびそれを含む膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで高分子化合物を高機能化する試みが種々行われてきている。例えば、高分子化合物を高屈折率化する方法として、芳香族環、ハロゲン原子、硫黄原子を導入することがなされている。中でも、硫黄原子を導入したエピスルフィド高分子化合物およびチオウレタン高分子化合物は、眼鏡用高屈折率レンズとして実用化されている。
【0003】
しかしながら、ポリマー単独では屈折率1.7を超える材料設計が難しいことから、さらなる高屈折率化を達成し得る最も有力な方法として、無機の金属酸化物を用いる方法が知られている。
例えば、シロキサンポリマーと、ジルコニアまたはチタニアなどを分散させた微粒子分散材料とを混合してなるハイブリッド材料を用いて屈折率を高める手法が報告されている(特許文献1)。
さらに、シロキサンポリマーの一部に高屈折率な縮合環状骨格を導入する手法も報告されている(特許文献2)。
【0004】
また、高分子化合物に耐熱性を付与するための試みも数多くなされており、具体的には、芳香族環を導入することで、高分子化合物の耐熱性を向上し得ることがよく知られている。例えば、置換アリーレン繰り返し単位を主鎖に有するポリアリーレンコポリマーが報告され(特許文献3)、この高分子化合物は主として耐熱性プラスチックへの応用が期待されている。
【0005】
一方、メラミン樹脂は、トリアジン系の樹脂としてよく知られているが、黒鉛などの耐熱性材料に比べて遥かに分解温度が低い。
これまで炭素および窒素からなる耐熱性有機材料としては、芳香族ポリイミドや芳香族ポリアミドが主として用いられているが、これらの材料は直鎖構造を有しているため耐熱温度はそれほど高くない。
また、耐熱性を有する含窒素高分子材料としてトリアジン系縮合材料も報告されている(特許文献4)。
【0006】
ところで、近年、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、および有機薄膜トランジスタ(TFT)等の電子デバイスを開発する際に、高機能な高分子材料が要求されるようになってきた。
【0007】
求められる具体的な特性としては、1)耐熱性、2)透明性、3)高屈折率、4)高溶解性、5)低体積収縮率などが挙げられる。
しかし、上述した眼鏡用高屈折率レンズ用材料は一般的に耐熱性が乏しく、200℃以下の温度範囲で作製する必要があるため、大気下、300℃で焼成するなどのプロセスには不向きである。
また、芳香族環やトリアジン環を導入した高分子化合物は、一般的に溶媒への溶解性が不足しているため、安全性溶剤であるレジスト溶剤には不溶であり、一方、高溶解性を示す材料は、透明性が低いのが一般的である。
【0008】
一方、無機金属酸化物を用いた材料は、屈折率と透明性とがトレードオフの関係にあるため、高屈折率を保持したまま透明性を向上することが困難である。
また、この材料は性質の異なる微粒子を含むことから、エッチングやアッシングなどのドライプロセスを経る場合、エッチレートが不安定となって均一な膜厚の被膜が得られにくく、デバイスを作製する際のプロセスマージンが狭くなるという問題もある。
【0009】
ところで、高分岐ポリマーには、ハイパーブランチポリマーとデンドリマーとに大別される。
ハイパーブランチポリマーとは、例えば、ABx型の多官能性モノマー(ここでAとBは互いに反応する官能基、Bの数Xは2以上)を重合させて得られる不規則な分岐構造を有する高分岐ポリマーである。
一方、デンドリマーとは、規則的な分岐構造を有する高分岐ポリマーである。ハイパーブランチポリマーは、デンドリマーより合成が容易であり、高分子量体も合成しやすいという特徴がある。
トリアジン環を有するハイパーブランチポリマーは難燃剤用途として合成された報告例がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−246877号公報
【特許文献2】特開2008−24832号公報
【特許文献3】米国特許第5886130号明細書
【特許文献4】特開2000−53659号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエンス、第106巻、95−102頁(2007年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、金属酸化物を添加しなくとも、ポリマー単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、低体積収縮を達成できるトリアジン環含有重合体、およびこれを含む膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、トリアジン環および芳香環を有する繰り返し単位を含む重合体が、ポリマー単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、低体積収縮を達成でき、電子デバイスを作製する際の膜形成用組成物として好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むことを特徴とするトリアジン環含有重合体、
【化1】
{式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、Arは、式(3)〜(19)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【化2】
〔式中、R1〜R128は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、W1は、単結合、C=OまたはNR129(R129は、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表し、W2およびW3は、互いに独立して、単結合、CR130131(R130およびR131は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNR129(R129は前記と同じ意味を表す。)を表し、X1およびX2は、互いに独立して、単結合、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(20)
【化3】
(式中、R132〜R135は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、Y1およびY2は、互いに独立して、単結合または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。)で示される基を表す。〕}
2. 前記Arが、式(6)〜(12)で示される群から選ばれる少なくとも1種である1のトリアジン環含有重合体、
3. 前記Arが、式(8)、(9)および(12)で示される群から選ばれる少なくとも1種である1のトリアジン環含有重合体、
4. 前記Arが、式(6)、(13)および(15)〜(19)で示される群から選ばれる少なくとも1種である1のトリアジン環含有重合体、
5. 前記Arが、下記式(21)または(22)で表される1のトリアジン環含有重合体、
【化4】
(式中、R136〜R159は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、R158およびR159は一緒になって環を形成していてもよい。)、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
6. 前記繰り返し単位構造が、式(23)で示される1のトリアジン環含有重合体、
【化5】
7. 前記Arが、下記式で表される少なくとも1種である1のトリアジン環含有重合体、
【化6】
8. 下記式(25)で表される繰り返し単位構造を含む1のトリアジン環含有重合体、
【化7】
(式中、R、R′およびR77〜R80は、前記と同じ意味を表す。)
9. 下記式(26)で表される繰り返し単位構造を含む8のトリアジン環含有重合体、
【化8】
(式中、RおよびR′は、前記と同じ意味を表す。)
10. 前記繰り返し単位構造が、式(27)で示される8のトリアジン環含有重合体、
【化9】
11. 少なくとも1つの末端が、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、またはエステル基でキャップされている1〜10のいずれかのトリアジン環含有重合体、
12. 少なくとも1つのトリアジン環末端を有し、このトリアジン環末端が、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、またはエステル基でキャップされている11のトリアジン環含有重合体、
13. 1〜12のいずれかのトリアジン環含有重合体を含む膜形成用組成物、
14. 1〜12のいずれかのトリアジン環含有重合体を含む膜、
15. 基材と、この基材上に形成された14の膜とを備える電子デバイス、
16. 基材と、この基材上に形成された14の膜とを備える光学部材、
17. 14の膜を少なくとも1層備える、電荷結合素子または相補性金属酸化膜半導体からなる固体撮像素子、
18. 14の膜をカラーフィルター上の平坦化層として備える固体撮像素子、
19. ハロゲン化シアヌルまたはジアミノアリール化合物および有機溶媒を含む溶液を60〜150℃に加熱し、この温度で、前記溶液中に、ジアミノアリール化合物またはハロゲン化シアヌルを加えて一段階でトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーを得ることを特徴とする1のトリアジン環含有重合体の製造方法、
20. ハロゲン化シアヌルおよびジアミノアリール化合物を、有機溶媒中、−50〜50℃で反応させる第1工程と、この工程に続いて60〜150℃で反応させる第2工程とからなることを特徴とする1のトリアジン環含有重合体の製造方法、
21. ハロゲン化シアヌル化合物と、ジアミノアリール化合物とを、前記ハロゲン化シアヌル化合物に対して、0.05〜500当量の有機モノアミンの存在下で重合させることを特徴とする1のトリアジン環含有重合体の製造方法、
22. 下記式(1′)で表される繰り返し単位構造を含むトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーと、架橋剤とを含むことを特徴とする組成物
【化10】
(式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、Ar′は、芳香環および複素環のいずれか一方または双方を含む2価の有機基を表す。)
23. 前記Ar′が、式(3)〜(6′)、および(7′)〜(19)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す23の組成物、
【化11】
〔式中、R1〜R128は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、W2およびW3は、互いに独立して、単結合、CR130131(R130およびR131は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNR129(R129は前記と同じ意味を表す。)を表し、X1およびX2は、互いに独立して、単結合、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(20)
【化12】
(式中、R132〜R135は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、Y1およびY2は、互いに独立して、単結合または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。)で示される基を表す。〕
を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属酸化物を用いることなく、単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、低体積収縮を達成し得るトリアジン環含有重合体を提供できる。
本発明の重合体骨格とすることで、1)2級アミンをポリマーのスペーサーとして用いる、2)末端に1級アミンが置換している、場合においても高耐熱性、高透明性を維持でき、これまで、耐熱性および透明性が損なわれると考えられていたモノマーユニットを用いた場合でも、ポリマー骨格を本発明の高分岐または線状型、好ましくはハイパーブランチ型に変更するのみで物性をコントロールできる可能性がある。
本発明のハイパーブランチポリマーが高屈折率を発現するのは、ハイパーブランチ型の構造にすることで、トリアジン環とアリール(Ar)部分が密に集まり、電子密度が上がっているためであると考えられる。
特に、上記Rおよび/またはR′が水素原子の場合、ハイパーブランチ型の構造にすることで、トリアジン環状の窒素原子とアミン部位の水素原子が水素結合し、よりトリアジン環とアリール(Ar)部分が密に集まり、電子密度が上がるものと考えられる。
そのため、硫黄原子をその分子中に有しない重合体であっても、例えば、屈折率1.70(550nmにて測定)以上の高屈折率を示す。
この屈折率の範囲は、使用場面にもよるが、下限値としては、好ましくは1.70以上、より好ましくは1.75以上、さらに好ましくは1.80以上である。上限値は、特に制限されないが、2.00〜1.95以下程度である。
また、フルオレン骨格などの剛直な部位をポリマーの主たる繰り返し単位に用いているにも関わらず、溶解性を損ねることなく、安全性の高いレジスト溶剤に可溶なワニスを調製できる。
さらに、高分子量の化合物であるにもかかわらず、溶剤に溶解したときに低粘度であり、またメタフェニレンジアミン部位を有するポリマーなどは、各種有機溶媒に対する溶解性に優れているため、ハンドリング性に優れる。
そして、金属酸化物を含まず、ポリマー単独で高屈折率を発現できることから、エッチングやアッシングなどのドライプロセスを経る場合でも、エッチレートが一定となり、均一な膜厚の被膜を得ることができ、デバイスを作製する際のプロセスマージンが拡大する。
また、本発明のトリアジン環含有重合体は、合成時の出発原料であるモノマーの種類を変更することで、これが有する諸物性をコントロールできる。
本発明のトリアジン環含有重合体の製法方法では、一段階の加熱工程でゲル化せずに重合体が得られる。また、原料のハロゲン化シアヌル化合物とジアミノアリール化合物を2:3のモル比以外でも、ゲル化せずに重合体が得られることから、トリアジン部分とジアミン部分の組成や得られる重合体の分子量を任意に制御できる。
上記非特許文献1に記載の製造方法では、ハロゲン化シアヌル化合物とジアミノアリール化合物を2:3のモル比で仕込み、三段階の異なる反応温度で反応させることが必要であることが記載されているが、この方法では、得られる重合体の分子量の制御ができない。また、ジメチルアセトアミドに溶解させたハロゲン化シアヌル化合物を室温で滴下しているため、重合体が着色しやすい。
また、本発明のトリアジン環含有重合体は、高耐熱性絶縁材料や、高屈折率が求められているレンズ用部材として好適に利用できる。
以上のような特性を有する本発明のトリアジン環含有重合体を用いて作製した膜は、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)などの電子デバイスを作製する際の一部材として好適に利用できる。
特に高屈折率が求められている固体撮像素子の部材である、フォトダイオード上の埋め込み膜および平坦化膜、カラーフィルター前後の平坦化膜、マイクロレンズ、マイクロレンズ上の平坦化膜およびコンフォーマル膜として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1で得られた高分子化合物[3]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図2】実施例2で得られた高分子化合物[3]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図3】実施例3で得られた高分子化合物[3]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図4】実施例4で得られた高分子化合物[3]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図5参考で得られた高分子化合物[5]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図6】実施例31で得られた被膜の透過率を示す図である。
図7】実施例32で得られた被膜の透過率を示す図である。
図8】実施例33で得られた被膜の透過率を示す図である。
図9】実施例34で得られた被膜の透過率を示す図である。
図10】実施例35で得られた被膜の透過率を示す図である。
図11】実施例36で得られた被膜の透過率を示す図である。
図12】実施例37で得られた被膜の透過率を示す図である。
図13】実施例38で得られた被膜の透過率を示す図である。
図14】実施例39で得られた被膜の透過率を示す図である。
図15】実施例40で得られた被膜の透過率を示す図である。
図16】実施例41で得られた被膜の透過率を示す図である。
図17】実施例42で得られた被膜の透過率を示す図である。
図18】実施例43で得られた被膜の透過率を示す図である。
図19】実施例44で得られた被膜の透過率を示す図である。
図20】実施例45で得られた被膜の透過率を示す図である。
図21】実施例46で得られた被膜の透過率を示す図である。
図22参考で得られた被膜の透過率を示す図である。
図23参考で得られた被膜の透過率を示す図である。
図24参考で得られた被膜の透過率を示す図である。
図25参考10で得られた被膜の透過率を示す図である。
図26】実施例52における透過率測定結果を示す図である。
図27】実施例53におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図28】実施例54におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図29】実施例55におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図30】実施例56におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図31参考11におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図32】実施例60における埋め込み性試験のSEM画像を示す図である。
図33】実施例61における埋め込み性試験のSEM画像を示す図である。
図34】実施例62における埋め込み性試験のSEM画像を示す図である。
図35】実施例65で得られた被膜の透過率を示す図である。
図36】実施例66で得られた被膜の透過率を示す図である。
図37】実施例67で得られた被膜の透過率を示す図である。
図38】実施例68で得られた高分子化合物[7]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図39】実施例70におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図40】実施例73におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図41】実施例74で得られた高分子化合物[11]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図42】実施例76におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図43】実施例77で得られた高分子化合物[13]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図44】実施例78で得られた被膜の透過率を示す図である。
図45】実施例79におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図46】実施例80で得られた高分子化合物[15]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図47】実施例81で得られた被膜の透過率を示す図である。
図48】実施例82におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図49】実施例83で得られた高分子化合物[17]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図50】実施例84で得られた被膜の透過率を示す図である。
図51】実施例85におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図52】実施例86で得られた高分子化合物[21]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図53】実施例87で得られた被膜の透過率を示す図である。
図54】実施例88におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図55】実施例89で得られた高分子化合物[23]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図56】実施例90で得られた被膜の透過率を示す図である。
図57】実施例91におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図58】実施例92で得られた高分子化合物[3]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図59】実施例93で得られた被膜の透過率を示す図である。
図60】実施例94におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図61】実施例95で得られた高分子化合物[25]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図62】実施例96で得られた被膜の透過率を示す図である。
図63】実施例97におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図64】実施例98で得られた高分子化合物[27]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図65】実施例99で得られた被膜の透過率を示す図である。
図66】実施例100におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図67】実施例101で得られた高分子化合物[27]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図68】実施例102で得られた被膜の透過率を示す図である。
図69】実施例103におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図70】実施例104で得られた高分子化合物[5]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図71】実施例106で得られた被膜の透過率を示す図である。
図72】実施例109における埋め込み性試験のSEM画像を示す図である。
図73】実施例110で得られた高分子化合物[27]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図74】実施例111におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図75】実施例112で得られた高分子化合物[27]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図76】実施例113におけるTG−DTA測定結果を示す図である
図77】実施例114で得られた高分子化合物[27]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図78】実施例116におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図79】実施例117で得られた高分子化合物[27]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図80】実施例118におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図81】実施例119で得られた高分子化合物[27]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図82】実施例121で得られた高分子化合物[27]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図83】実施例123におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図84】実施例124で得られた高分子化合物[27]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図85】実施例124におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図86】実施例125で得られた高分子化合物[29]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図87】実施例126におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図88】実施例125で得られた高分子化合物[31]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図89】実施例128におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図90】実施例129で得られた高分子化合物[27]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図91】実施例131におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図92】実施例132で得られた高分子化合物[25]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
図93】実施例134におけるTG−DTA測定結果を示す図である。
図94】実施例188におけるエッジビードリンス後の基板のエッジ部分の光学顕微鏡画像を示す図である。
図95】実施例189におけるエッジビードリンス後の基板のエッジ部分の光学顕微鏡画像を示す図である。
図96】実施例190におけるエッジビードリンス後の基板のエッジ部分の光学顕微鏡画像を示す図である。
図97】実施例191におけるエッジビードリンス後の基板のエッジ部分の光学顕微鏡画像を示す図である。
図98】実施例223における埋め込み性試験の400nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図99】実施例223における埋め込み性試験の750nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図100】実施例224における埋め込み性試験の400nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図101】実施例224における埋め込み性試験の750nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図102】実施例225における埋め込み性試験の400nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図103】実施例225における埋め込み性試験の750nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図104】実施例226における埋め込み性試験の400nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図105】実施例226における埋め込み性試験の750nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図106】実施例227における埋め込み性試験の400nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図107】実施例227における埋め込み性試験の750nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図108】実施例228における埋め込み性試験の400nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図109】実施例228における埋め込み性試験の750nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図110】実施例229における埋め込み性試験の400nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図111】実施例229における埋め込み性試験の750nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図112】実施例230における埋め込み性試験の400nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図113】実施例230における埋め込み性試験の750nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図114】実施例231における埋め込み性試験の400nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図115】実施例231における埋め込み性試験の750nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図116】実施例232における埋め込み性試験の400nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図117】実施例232における埋め込み性試験の750nmのvia部分を観察したSEM画像を示す図である。
図118】実施例233における、ジアミノアリール部分を変換した重合体の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図119】実施例233における、NHピーク比と屈折率の関係を示す図である。
図120】実施例234で得られた高分子化合物[17]の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るトリアジン環含有重合体は下記式(1)または(2)で表される繰り返し単位構造を含むものである。
【0018】
【化13】
【0019】
上記式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、R”は、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基またはアリールオキシ基を表す。
【0020】
本発明において、アルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1〜20が好ましく、重合体の耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1〜10がより好ましく、1〜3がより一層好ましい。また、その構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、1−メチル−シクロプロピル基、2−メチル−シクロプロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、1−メチル−シクロブチル基、2−メチル−シクロブチル基、3−メチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロプロピル基、2,3−ジメチル−シクロプロピル基、1−エチル−シクロプロピル基、2−エチル−シクロプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロペンチル基、2−メチル−シクロペンチル基、3−メチル−シクロペンチル基、1−エチル−シクロブチル基、2−エチル−シクロブチル基、3−エチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロブチル基、1,3−ジメチル−シクロブチル基、2,2−ジメチル−シクロブチル基、2,3−ジメチル−シクロブチル基、2,4−ジメチル−シクロブチル基、3,3−ジメチル−シクロブチル基、1−n−プロピル−シクロプロピル基、2−n−プロピル−シクロプロピル基、1−イソプロピル−シクロプロピル基、2−イソプロピル−シクロプロピル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。
【0021】
上記アルコキシ基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1〜20が好ましく、重合体の耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1〜10がより好ましく、1〜3がより一層好ましい。また、そのアルキル部分の構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、1−メチル−n−ブトキシ基、2−メチル−n−ブトキシ基、3−メチル−n−ブトキシ基、1,1−ジメチル−n−プロポキシ基、1,2−ジメチル−n−プロポキシ基、2,2−ジメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−n−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、1−メチル−n−ペンチルオキシ基、2−メチル−n−ペンチルオキシ基、3−メチル−n−ペンチルオキシ基、4−メチル−n−ペンチルオキシ基、1,1−ジメチル−n−ブトキシ基、1,2−ジメチル−n−ブトキシ基、1,3−ジメチル−n−ブトキシ基、2,2−ジメチル−n−ブトキシ基、2,3−ジメチル−n−ブトキシ基、3,3−ジメチル−n−ブトキシ基、1−エチル−n−ブトキシ基、2−エチル−n−ブトキシ基、1,1,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1,2,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−1−メチル−n−プロポキシ基、1−エチル−2−メチル−n−プロポキシ基等が挙げられる。
【0022】
上記アリール基の炭素数としては特に限定されるものではないが、6〜40が好ましく、重合体の耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数6〜16がより好ましく、6〜13がより一層好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル基、o−クロルフェニル基、m−クロルフェニル基、p−クロルフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−シアノフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0023】
アラルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、炭素数7〜20が好ましく、そのアルキル部分は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
その具体例としては、ベンジル基、p−メチルフェニルメチル基、m−メチルフェニルメチル基、o−エチルフェニルメチル基、m−エチルフェニルメチル基、p−エチルフェニルメチル基、2−プロピルフェニルメチル基、4−イソプロピルフェニルメチル基、4−イソブチルフェニルメチル基、α−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0024】
アルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、1−メチル−n−ブチルアミノ基、2−メチル−n−ブチルアミノ基、3−メチル−n−ブチルアミノ基、1,1−ジメチル−n−プロピルアミノ基、1,2−ジメチル−n−プロピルアミノ基、2,2−ジメチル−n−プロピルアミノ基、1−エチル−n−プロピルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、1−メチル−n−ペンチルアミノ基、2−メチル−n−ペンチルアミノ基、3−メチル−n−ペンチルアミノ基、4−メチル−n−ペンチルアミノ基、1,1−ジメチル−n−ブチルアミノ基、1,2−ジメチル−n−ブチルアミノ基、1,3−ジメチル−n−ブチルアミノ基、2,2−ジメチル−n−ブチルアミノ基、2,3−ジメチル−n−ブチルアミノ基、3,3−ジメチル−n−ブチルアミノ基、1−エチル−n−ブチルアミノ基、2−エチル−n−ブチルアミノ基、1,1,2−トリメチル−n−プロピルアミノ基、1,2,2−トリメチル−n−プロピルアミノ基、1−エチル−1−メチル−n−プロピルアミノ基、1−エチル−2−メチル−n−プロピルアミノ基等が挙げられる。
【0025】
アラルキルアミノ基の具体例としては、ベンジルアミノ基、メトキシカルボニルフェニルメチルアミノ基、エトキシカルボニルフェニルメチルアミノ基、p−メチルフェニルメチルアミノ基、m−メチルフェニルメチルアミノ基、o−エチルフェニルメチルアミノ基、m−エチルフェニルメチルアミノ基、p−エチルフェニルメチルアミノ基、2−プロピルフェニルメチルアミノ基、4−イソプロピルフェニルメチルアミノ基、4−イソブチルフェニルメチルアミノ基、ナフチルメチルアミノ基、メトキシカルボニルナフチルメチルアミノ基、エトキシカルボニルナフチルメチルアミノ基等が挙げられる。
アリールアミノ基の具体例としては、フェニルアミノ基、メトキシカルボニルフェニルアミノ基、エトキシカルボニルフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、メトキシカルボニルナフチルアミノ基、エトキシカルボニルナフチルアミノ基、アントラニルアミノ基、ピレニルアミノ基、ビフェニルアミノ基、ターフェニルアミノ基、フルオレニルアミノ基等が挙げられる。
【0026】
アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基としては、モノアルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、ジアルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、トリアルコキシシリル基含有アルキルアミノ基のいずれでもよく、その具体例としては、3−トリメトキシシリルプロピルアミノ基、3−トリエトキシシリルプロピルアミノ基、3−ジメチルエトキシシリルプロピルアミノ基、3−メチルジエトキシシリルプロピルアミノ基、N−(2−アミノエチル)−3−ジメチルメトキシシリルプロピルアミノ基、N−(2−アミノエチル)−3−メチルジメトキシシリルプロピルアミノ基、N−(2−アミノエチル)−3−トリメトキシシリルプロピルアミノ基等が挙げられる。
【0027】
アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、フルオレニルオキシ基等が挙げられる。
アラルキルオキシ基の具体例としては、ベンジルオキシ基、p−メチルフェニルメチルオキシ基、m−メチルフェニルメチルオキシ基、o−エチルフェニルメチルオキシ基、m−エチルフェニルメチルオキシ基、p−エチルフェニルメチルオキシ基、2−プロピルフェニルメチルオキシ基、4−イソプロピルフェニルメチルオキシ基、4−イソブチルフェニルメチルオキシ基、α−ナフチルメチルオキシ基等が挙げられる。
【0028】
Arは、式(3)〜(19)で示される少なくとも1種を表すが、特に、式(6)〜(19)で示される少なくとも1種が好ましく、式(6)、(8)、(9)、(12)、(13)および(15)〜(19)で示される少なくとも1種がより好ましい。
【0029】
【化14】
【0030】
上記R1〜R128は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、W1は、単結合、C=OまたはNR129(R129は、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表し、W2およびW3は、互いに独立して、単結合、CR130131(R130およびR131は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNR129(R129は上記と同じ)を表す。
これらアルキル基、アルコキシ基としては上記と同様のものが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0031】
また、X1およびX2は、互いに独立して、単結合、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(20)で示される基を表す。
【化15】
【0032】
上記R132〜R135は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、Y1およびY2は、互いに独立して、単結合または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。
これらハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基としては上記と同様のものが挙げられる。
炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
【0033】
本発明における好適なArとしては、フルオレン環を含有する2価の有機基が挙げられ、例えば、下記式(21)または(22)で示される2価の有機基が好適である。
【0034】
【化16】
(式中、R136〜R159は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、R158およびR159は一緒になって環を形成していてもよい。)、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
【0035】
ここで、ハロゲン原子としては、上記と同様のものが挙げられる。
炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基としては、上記と同様のものが挙げられる。
また、R158およびR159が一緒になって形成する環としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられる。
炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基としては、上記と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、R136〜R159としては、水素原子が好ましい。
【0036】
上記式(3)〜(19),(21)および(22)で表されるアリール基の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化17】
【0038】
これらの中でも、より高い屈折率の重合体が得られることから、下記式で示されるアリール基がより好ましい。
【0039】
【化18】
【0040】
さらに、高屈折率を発現させるという点から、アリール(Ar)部分としては、フルオレン骨格やカルバゾール骨格等の環状骨格を有する剛直な構造が、アリール(Ar)部分が密に集まり易く、電子密度が向上するため好適であり、また、単純なベンゼン環も小さな構造であるため、アリール(Ar)部分が密に集まり易く、電子密度が向上するため好適である。
また、W1等のベンゼン環の連結基としては、高い水素結合能を有する、カルボニルを含む基やアミン等の官能基が、アミン部位の水素原子(Rおよび/またはR′が水素原子の場合)と水素結合を形成してよりアリール(Ar)部分が密に集まり易く、電子密度が向上するため好適である。
以上のような観点から、下記式で示されるアリール基が好ましい。
【0041】
【化19】
【0042】
より高い屈折率を発現するという点から下記式で示されるアリール基がより好ましい。
【0043】
【化20】
【0044】
好適な繰り返し単位構造としては、下記式(23)または(24)で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
【化21】
【0046】
また、本発明の重合体がハイパーブランチポリマーの場合、当該重合体を、レジスト溶剤等の安全性の高い溶剤に対する溶解性をより高めることを考慮すると、式(25)で示される繰り返し単位構造を含むことが好ましい。
【化22】
(式中、R、R′およびR77〜R80は、前記と同じ意味を表す。)
【0047】
このような観点から、特に好適な繰り返し単位構造としては、下記式(26)で示されるものが挙げられ、下記式(27)で示される高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)が最適である。
【0048】
【化23】
(式中、RおよびR′は、上記と同じ意味を表す。)
【0049】
【化24】
【0050】
本発明における重合体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500〜500,000が好ましく、さらに500〜100,000が好ましく、より耐熱性を向上させるとともに、収縮率を低くするという点から、2,000以上が好ましく、より溶解性を高め、得られた溶液の粘度を低下させるという点から、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、さらに10,000以下が好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)分析による標準ポリスチレン換算で得られる平均分子量である。
【0051】
本発明のトリアジン環含有重合体の製造法について一例を挙げて説明する。
なお、製造方法は、スキーム1、2、3および4に分類し、各スキームをさらに分類する場合は、aおよびb等で示した。
例えば、下記スキーム1−aに示されるように、繰り返し構造(23’)を有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)は、ハロゲン化シアヌル(28)およびアミノ基を有するビスアミノフェニルフルオレン化合物(29)を適当な有機溶媒中で反応させて得ることができる。
下記スキーム1−bに示されるように、繰り返し構造(27’)を有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)は、ハロゲン化シアヌル(28)およびm−フェニレンジアミン化合物(30)を適当な有機溶媒中で反応させて得ることができる。
【0052】
【化25】
(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表す。Rは上記と同じ意味を表す。)
【0053】
また、下記スキーム2−aに示されるように、繰り返し構造(23’)を有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)は、ハロゲン化シアヌル(28)およびアミノ基を有するビスアミノフェニルフルオレン化合物(29)を適当な有機溶媒中で等量用いて反応させて得られる化合物(31)より合成することもできる。
下記スキーム2−bに示されるように、繰り返し構造(27’)を有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)は、ハロゲン化シアヌル(28)およびm−フェニレンジアミン化合物(30)を適当な有機溶媒中で等量用いて反応させて得られる化合物(32)より合成することもできる。
【0054】
【化26】
(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表す。Rは上記と同じ意味を表す。)
【0055】
さらに、下記スキーム3に示されるように、繰り返し構造(24’)を有する線状重合体は、フェニルアミノ基を有するジハロゲン化トリアジン(33)およびアミノ基を有するビスアミノフェニルフルオレン化合物(29)を適当な有機溶媒中で反応させて得ることができる。
なお、上記式(28)、式(29)、式(30)、式(33)で表される化合物は、例えば、Aldrich社製または東京化成工業(株)製の市販品として入手することができる。
【0056】
【化27】
(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表す。Rは上記と同じ意味を表す。)
【0057】
以上の方法を用いることで、本発明の重合体を、安価に、しかも簡便かつ安全に製造することができる。この製造方法は、一般的なポリマーを合成する際の反応時間よりも著しく短いことから、近年の環境への配慮に適合した製造方法であり、CO2排出量を低減できる。また、製造スケールを大幅に増加させても安定製造することが可能であり、工業化レベルでの安定供給体制を損なわない。
特に、原料である塩化シアヌルの安定性および工業的観点を考慮すると、スキーム2による製法がより好ましい。
【0058】
スキーム1および2の方法の場合、各原料の仕込み量としては、目的とする重合体が得られる限りにおいて任意であるが、トリアジン化合物(28)1当量に対し、ジアミノ化合物(29),(30)0.01〜10当量が好ましい。
特に、スキーム1の方法の場合、ハロゲン化シアヌル(28)2当量に対して、ジアミノ化合物(29),(30)を3当量用いることを避けることが好ましい。官能基の当量をずらすことで、ゲル化物の生成を防ぐことができる。
種々の分子量のトリアジン環末端を多く有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)を得るために、ハロゲン化シアヌル(28)2当量に対して、ジアミノ化合物(29),(30)を3当量未満の量で用いることが好ましい。
一方、種々の分子量のアミン末端を多く有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)を得るために、ジアミノ化合物(29)3当量に対して、ハロゲン化シアヌル(28),(30)を2当量未満の量で用いることが好ましい。
例えば、薄膜を作製した場合に、優れた透明性や耐光性を有するという点では、トリアジン環末端を多く有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)が好ましい。
このように、ジアミノ化合物(29),(30)やハロゲン化シアヌル(28)の量を適宜調節することで、得られる高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)の分子量を容易に調節することができる。
【0059】
上記有機溶媒としては、この種の反応において通常用いられる種々の溶媒を用いることができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピペリドン、N,N−ジメチルエチレン尿素、N,N,N’,N’−テトラメチルマロン酸アミド、N−メチルカプロラクタム、N−アセチルピロリジン、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオン酸アミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルプロピレン尿素等のアミド系溶媒、およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
中でもN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、およびそれらの混合系が好ましく、特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好適である。
【0060】
スキーム1および3の反応、並びにスキーム2の第2段階の反応において、反応温度は、用いる溶媒の融点から溶媒の沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、0〜150℃程度が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
特にスキーム1の反応では、リニア性を抑え、分岐度を高めるという点から、反応温度は60〜150℃が好ましく、80〜150℃が好ましく、80〜120℃が好ましい。
スキーム2の第1段階の方法において、反応温度は、用いる溶媒の融点から溶媒の沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、−50〜50℃程度が好ましく、−20〜50℃程度がより好ましく、−10〜50℃程度がより一層好ましく、−10〜10℃がさらに好ましい。
特にスキーム2の方法では、−50〜50℃で反応させる第1工程と、この工程に続いて60〜150℃で反応させる第2工程とからなる2段階工程を採用することが好ましい。
【0061】
上記各反応において、各成分の配合順序は任意であるが、スキーム1の反応においては、ハロゲン化シアヌル(28)またはジアミノ化合物(29),(30)および有機溶媒を含む溶液を60〜150℃、好ましくは80〜150℃に加熱し、この温度で、当該溶液中に、ジアミノ化合物(29),(30)またはハロゲン化シアヌル(28)を加える方法が最適である。
この場合、予め溶媒に溶かしておく成分および後から加える成分はどちらでもよいが、ジアミノ化合物(29),(30)の加熱溶液中に、ハロゲン化シアヌル(28)を添加する手法が好ましい。
また、スキーム2の反応において、予め溶媒に溶かしておく成分および後から加える成分はどちらでもよいが、ハロゲン化シアヌル(28)の冷却溶液中に、ジアミノ化合物(29),(30)を添加する手法が好ましい。
後から加える成分は、ニートで加えても、上述したような有機溶媒に溶かした溶液で加えてもよいが、操作の容易さや反応のコントロールのし易さなどを考慮すると、後者の手法が好適である。
また、添加は、滴下等によって徐々に加えても、全量一括して加えてもよい。
スキーム1において、加熱した状態で、両化合物を混合した後は、(段階的に温度を上げることなく)一段階で反応させた場合でも、ゲル化することなく、目的とするトリアジン環含有高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)を得ることができる。
【0062】
なお、スキーム1の方法は、上述したアリール(Ar)基を与えるジアミン成分を用いる場合に限られず、任意のジアミノアリール化合物を用いるハイパーブランチポリマーの製造法に適用できる。
例えば、上記W1として、単結合およびC=Oに加え、CR130131(R130およびR131は、上記と同じ。)、O、SO、またはSO2のようなアリール基を与えるジアミン化合物を用いる場合にも適用できる。
【0063】
また、上記スキーム1および3の反応並びにスキーム2の第2段階の反応では、重合時または重合後に通常用いられる種々の塩基を添加してもよい。
この塩基の具体例としては、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムエトキシド、酢酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、酢酸カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、フッ化セシウム、酸化アルミニウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。
塩基の添加量は、ハロゲン化シアヌル(28),(33)1当量に対して1〜100当量が好ましく、1〜10当量がより好ましい。なお、これらの塩基は水溶液にして用いてもよい。
得られる重合体には、原料成分が残存していないことが好ましいが、本発明の効果を損なわなければ一部の原料が残存していてもよい。
いずれのスキームの方法においても、反応終了後、生成物は再沈法等によって容易に精製できる。
【0064】
なお、本発明においては、少なくとも1つの末端トリアジン環のハロゲン原子の一部を、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、エステル基等でキャップしてもよい。
これらの中でも、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基が好ましく、アルキルアミノ基、アリールアミノ基がより好ましく、アリールアミノ基がさらに好ましい。
エステル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基としては上述した基と同様のものが挙げられる。
これらの基は、トリアジン環上のハロゲン原子を対応する置換基を与える化合物で置換することで容易に導入することができ、例えば、下記式スキーム4−a,bに示されるように、アニリン誘導体を加えて反応させることで、少なくとも1つの末端にフェニルアミノ基を有する高分岐重合体(34),(35)が得られる。
【0065】
【化28】
(式中、XおよびRは上記と同じ意味を表す。)
【0066】
この際、有機モノアミンの同時仕込みを行う、すなわち、有機モノアミンの存在下で、ハロゲン化シアヌル化合物と、ジアミノアリール化合物とを反応させることで、ハイパーブランチポリマーの剛直性が緩和された、分岐度の低い柔らかいハイパーブランチポリマーを得ることができる。
この手法によって得られたハイパーブランチポリマーは、溶剤への溶解性(凝集抑制)や、架橋剤との架橋性に優れたものとなるため、後述する架橋剤と組み合わせた組成物として用いる場合に特に有利である。
ここで、有機モノアミンとしては、アルキルモノアミン、アラルキルモノアミン、アリールモノアミンのいずれを用いることもできる。
【0067】
アルキルモノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、1−メチル−n−ブチルアミン、2−メチル−n−ブチルアミン、3−メチル−n−ブチルアミン、1,1−ジメチル−n−プロピルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、2,2−ジメチル−n−プロピルアミン、1−エチル−n−プロピルアミン、n−ヘキシルアミン、1−メチル−n−ペンチルアミン、2−メチル−n−ペンチルアミン、3−メチル−n−ペンチルアミン、4−メチル−n−ペンチルアミン、1,1−ジメチル−n−ブチルアミン、1,2−ジメチル−n−ブチルアミン、1,3−ジメチル−n−ブチルアミン、2,2−ジメチル−n−ブチルアミン、2,3−ジメチル−n−ブチルアミン、3,3−ジメチル−n−ブチルアミン、1−エチル−n−ブチルアミン、2−エチル−n−ブチルアミン、1,1,2−トリメチル−n−プロピルアミン、1,2,2−トリメチル−n−プロピルアミン、1−エチル−1−メチル−n−プロピルアミン、1−エチル−2−メチル−n−プロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン等が挙げられる。
【0068】
アラルキルモノアミンの具体例としては、ベンジルアミン、p−メトキシカルボニルベンジルアミン、p−エトキシカルボニルフェニルベンジル、p−メチルベンジルアミン、m−メチルベンジルアミン、o−メトキシベンジルアミン等が挙げられる。
アリールモノアミンの具体例としては、アニリン、p−メトキシカルボニルアニリン、p−エトキシカルボニルアニリン、p−メトキシアニリン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アントラニルアミン、1−アミノピレン、4−ビフェニリルアミン、o−フェニルアニリン、4−アミノ−p−ターフェニル、2−アミノフルオレン等が挙げられる。
【0069】
この場合、有機モノアミンの使用量は、ハロゲン化シアヌル化合物に対して、0.05〜500当量とすることが好ましく、0.05〜120当量がより好ましく、0.05〜50当量がより一層好ましい。
この場合の反応温度も、リニア性を抑え、分岐度を高めるという点から、反応温度は60〜150℃が好ましく、80〜150℃が好ましく、80〜120℃が好ましい。
ただし、有機モノアミン、ハロゲン化シアヌル化合物、ジアミノアリール化合物の3成分の混合は、低温下で行ってもよく、その場合の温度としては、−50〜50℃程度が好ましく、−20〜50℃程度がより好ましく、−20〜10℃がさらに好ましい。低温仕込み後は、重合させる温度まで一気に(一段階で)昇温して反応を行うことが好ましい。
また、ハロゲン化シアヌル化合物とジアミノアリール化合物の2成分の混合を低温下で行ってもよく、その場合の温度としては、−50〜50℃程度が好ましく、−20〜50℃程度がより好ましく、−20〜10℃がさらに好ましい。低温仕込み後、有機モノアミンを加え、重合させる温度まで一気に(一段階で)昇温して反応を行うことが好ましい。
また、このような有機モノアミンの存在下で、ハロゲン化シアヌル化合物と、ジアミノアリール化合物とを反応させる反応は、上述と同様の有機溶媒を用いて行ってもよい。
なお、スキーム1〜4の方法は、上述したアリール(Ar)基を与えるジアミン成分を用いる場合に限られず、任意のジアミノアリール化合物を用いるハイパーブランチポリマーの製造法に適用できる。
例えば、上記W1として、単結合およびC=Oに加え、CR130131(R130およびR131は、上記と同じ。)、O、SO、またはSO2のようなアリール基を与えるジアミン化合物を用いる場合にも適用できる。
【0070】
上述した本発明の重合体は、他の化合物と混合した組成物として用いることができ、例えば、レベリング剤、界面活性剤、架橋剤、樹脂等との組成物が挙げられる。
これらの組成物は、膜形成用組成物として用いることができ、各種の溶剤に溶かした膜形成用組成物(ポリマーワニスともいう)として好適に使用できる。
重合体を溶解するのに用いる溶剤は、重合時に用いた溶媒と同じものでも別のものでもよい。この溶剤は、重合体との相溶性を損なわなければ特に限定されず、1種でも複数種でも任意に選択して用いることができる。
【0071】
このような溶剤の具体例としては、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、エチルベンゼン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1−オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1−メトキシ−2−ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルノーマルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノーマルプロピル、酢酸イソブチル、酢酸ノーマルブチル、乳酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アリルアルコール、ノーマルプロパノール、2−メチル−2−ブタノール、イソブタノール、ノーマルブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1−メトキシ−2−ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリジノン等が挙げられるが、ポリマーの溶解性および保存安定性の観点から、より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0072】
この際、膜形成組成物中の固形分濃度は、保存安定性に影響を与えない範囲であれば特に限定されず、目的とする膜の厚みに応じて適宜設定すればよい。具体的には、溶解性および保存安定性の観点から、固形分濃度0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%である。
【0073】
本発明においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、重合体および溶剤以外のその他の成分、例えば、レベリング剤、界面活性剤、架橋剤等が含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製(旧(株)ジェムコ製)、商品名メガファックF171、F173、R−08、R−30(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、BYK−302、BYK−307、BYK−322、BYK−323、BYK−330、BYK−333、BYK−370、BYK−375、BYK−378(ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0074】
これらの界面活性剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の使用量は、重合体100質量部に対して0.0001〜5質量部が好ましく、0.001〜1質量部がより好ましく、0.01〜0.5質量部がより一層好ましい。
【0075】
また、特に上述したようなトリアジン環含有ハイパーブランチポリマーを含む下記式(1′)で示されるハイパーブランチポリマーと、架橋剤との組成物は、膜形成用等の組成物として有用である。
【0076】
【化29】
(式中、RおよびR′は、上記と同様の意味を表し、Ar′は、芳香環および複素環のいずれか一方または双方を含む2価の有機基を表す。)
【0077】
Ar′としては、芳香環や複素環を含む2価の有機基であれば任意であるが、好ましくは、上述した式(3)〜(19)で示されるような2価の有機基が挙げられる。なお、式(6)および(7)のW1として、単結合およびC=Oに加え、CR130131(R130およびR131は、上記と同じ。)、O、SO、またはSO2のようなアリール基を与えるジアミン化合物を用いる場合にも適用できる。また、芳香環は、アントラセン環やピレン環のような縮合環を含み、複素環は、キノリン環やインドール環のような縮合環を含む。
Ar′のより好ましい範囲としては、上述したArと同様の範囲が挙げられる。
なお、式(1′)で示されるハイパーブランチポリマーも、上記スキーム1〜4の方法で同様に合成できる。
架橋剤としては、本発明の重合体と反応し得る置換基を有する化合物であれば特に限定されるものではない。
そのような化合物としては、メチロール基、メトキシメチル基などの架橋形成置換基を有するメラミン系化合物、置換尿素系化合物、エポキシ基またはオキセタン基などの架橋形成置換基を含有する化合物、ブロック化イソシアナートを含有する化合物、酸無水物を有する化合物、(メタ)アクリル基を有する化合物、フェノプラスト化合物等が挙げられるが、耐熱性や保存安定性の観点からエポキシ基、ブロックイソシアネート基、(メタ)アクリル基を含有する化合物が好ましい。
また、ブロックイソシアネート基は、尿素結合で架橋し、カルボニル基を有するため屈折率が低下しないという点からも好ましい。
なお、これらの化合物は、重合体の末端処理に用いる場合は少なくとも1個の架橋形成置換基を有していればよく、重合体同士の架橋処理に用いる場合は少なくとも2個の架橋形成置換基を有する必要がある。
【0078】
エポキシ化合物としては、エポキシ基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化の際の高温に曝されると、エポキシが開環し、本発明の重合体との間で付加反応により架橋反応が進行するものである。
架橋剤の具体例としては、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−4−(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3−トリス[p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0079】
また、市販品として、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である、YH−434、YH434L(東都化成(株)製)、シクロヘキセンオキサイド構造を有するエポキシ樹脂である、エポリードGT−401、同GT−403、同GT−301、同GT−302、セロキサイド2021、セロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)807(ジャパンエポキシレジン(株)製)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)152、同154(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、同202(以上、日本化薬(株)製)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である、EOCN−102、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1020、EOCN−1025、EOCN−1027(以上、日本化薬(株)製)、エピコート(現、jER)180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)、脂環式エポキシ樹脂である、デナコールEX−252(ナガセケムテックス(株)製)、CY175、CY177、CY179(以上、CIBA−GEIGY A.G製)、アラルダイトCY−182、同CY−192、同CY−184(以上、CIBA−GEIGY A.G製)、エピクロン200、同400(以上、DIC(株)製)、エピコート(現、jER)871、同872(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED−5661、ED−5662(以上、セラニーズコーティング(株)製)、脂肪族ポリグリシジルエーテルである、デナコールEX−611、同EX−612、同EX−614、同EX−622、同EX−411、同EX−512、同EX−522、同EX−421、同EX−313、同EX−314、同EX−321(ナガセケムテックス(株)製)等を用いることもできる。
【0080】
酸無水物化合物としては、2分子のカルボン酸を脱水縮合させたカルボン酸無水物であり、熱硬化の際の高温に曝されると、無水物環が開環し、本発明の重合体との間で付加反応により架橋反応が進行するものである。
また、酸無水物化合物の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸等の分子内に1個の酸無水物基を有するもの;1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の分子内に2個の酸無水物基を有するもの等が挙げられる。
【0081】
(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化の際の高温に曝されると、本発明の重合体との間で付加反応により架橋反応が進行するものである。
(メタ)アクリル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリグリセリンモノエチレンオキサイドポリアクリレート、ポリグリセリンポリエチレングリコールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
【0082】
上記(メタ)アクリル基を有する化合物は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、NKエステルA−200、A−400、A−600、A−1000、A−TMPT、UA−53H、1G、2G、3G、4G、9G、14G、23G、ABE−300、A−BPE−4、A−BPE−6、A−BPE−10、A−BPE−20、A−BPE−30、BPE−80N、BPE−100N、BPE−200、BPE−500、BPE−900、BPE−1300N、A−GLY−3E、AGLY−9E、A−GLY−20E、A−TMPT−3EO、A−TMPT−9EO、ATM−4E、ATM−35E(以上、新中村化学工業(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPEA−12、同PEG400DA、同THE−330、同RP−1040(以上、日本化薬(株)製)、M−210、M−350(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPHA、同NPGDA、同PET30(以上、日本化薬(株)製)、NKエステル A−DPH、同A−TMPT、同A−DCP、同A−HD−N、同TMPT、同DCP、同NPG、同HD−N(以上、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0083】
ブロック化イソシアネートを含有する化合物としては、イソシアネート基(−NCO)が適当な保護基によりブロックされたブロック化イソシアネート基を一分子中2個以上有し、熱硬化の際の高温に曝されると、保護基(ブロック部分)が熱解離して外れ、生じたイソシアネート基が樹脂との間で架橋反応を起こすものであり、例えば、下記式で示される基を一分子中2個以上(なお、これらの基は同一のものでも、また各々異なっているものでもよい)有する化合物が挙げられる。
【0084】
【化30】
(式中、Rbはブロック部の有機基を表す。)
【0085】
このような化合物は、例えば、一分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物に対して適当なブロック剤を反応させて得ることができる。
一分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートや、これらの二量体、三量体、および、これらとジオール類、トリオール類、ジアミン類、またはトリアミン類との反応物などが挙げられる。
ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エトキシヘキサノール、2−N,N−ジメチルアミノエタノール、2−エトキシエタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;フェノール、o−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、o−、m−またはp−クレゾール等のフェノール類;ε−カプロラクタム等のラクタム類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール等のピラゾール類;ドデカンチオール、ベンゼンチオール等のチオール類などが挙げられる。
【0086】
ブロック化イソシアネートを含有する化合物は、市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、B−830、B−815N、B−842N、B−870N、B−874N、B−882N、B−7005、B−7030、B−7075、B−5010(以上、三井化学ポリウレタン(株)製)、デュラネート(登録商標)17B−60PX、同TPA−B80E、同MF−B60X、同MF−K60X、同E402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、カレンズMOI−BM(登録商標)(以上、昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0087】
アミノプラスト化合物としては、メトキシメチレン基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化の際の高温に曝されると、本発明の重合体との間で脱メタノール縮合反応により架橋反応が進行するものである。
メラミン系化合物としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン CYMEL(登録商標)303、テトラブトキシメチルグリコールウリル 同1170、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン 同1123(以上、日本サイテックインダストリーズ(株)製)等のサイメルシリーズ、メチル化メラミン樹脂であるニカラック(登録商標)MW−30HM、同MW−390、同MW−100LM、同MX−750LM、メチル化尿素樹脂である同MX−270、同MX−280同MX−290(以上、(株)三和ケミカル製)等のニカラックシリーズ等が挙げられる。
オキセタン化合物としては、オキセタニル基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化の際の高温に曝されると、本発明の重合体との間で付加反応により架橋反応が進行するものである。
オキセタン基を有する化合物としては、例えば、オキセタン基を含有するOXT−221、OX−SQ−H、OX−SC(以上、東亜合成(株)製)等が挙げられる。
【0088】
フェノプラスト化合物としては、ヒドロキシメチレン基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化の際の高温に曝されると、本発明の重合体との間で脱水縮合反応により架橋反応が進行するものである。
フェノプラスト化合物としては、例えば、2,6−ジヒドロキシメチル−4−メチルフェノール、2,4−ジヒドロキシメチル−6−メチルフェノール、ビス(2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン、ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)ホルミルメタン、α,α−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルトルエン等が挙げられる。
フェノプラスト化合物は、市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、26DMPC、46DMOC、DM−BIPC−F、DM−BIOC−F、TM−BIP−A、BISA−F、BI25X−DF、BI25X−TPA(以上、旭有機材工業(株)製)等が挙げられる。
【0089】
これらの架橋剤は単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。架橋剤の使用量は、重合体100質量部に対して、1〜100質量部用いられる。
その下限としては、溶剤耐性を考慮すると、好ましくは10質量部、より好ましくは20質量部である。その上限としては、屈折率をコントロールすることを考慮すると、好ましくは50質量部、より好ましくは30質量部である。
架橋剤を用いることで、架橋剤と重合体が有する反応性の末端置換基とが反応し、膜密度の向上、耐熱性の向上、熱緩和能力の向上などの効果を発現できる場合がある。
なお、上記その他の成分は、重合体と溶剤との混合と同時に添加しても、その後に添加してもよく、特に限定されない。
【0090】
本発明の膜形成用組成物は、基材に塗布し、その後、必要に応じて加熱することで所望の膜を形成することができる。
組成物の塗布方法は任意であり、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の方法を採用できる。
【0091】
また、基材としては、シリコン、インジウム錫酸化物(ITO)が成膜されたガラス、インジウム亜鉛酸化物(IZO)が成膜されたガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、プラスチック、ガラス、石英、セラミックス等からなる基材を挙げることができ、可撓性を有するフレキシブル基材を用いることもできる。
焼成温度は、溶媒を蒸発させる目的では特に限定されず、例えば40〜400℃で行うことができる。これらの場合、より高い均一製膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で2段階以上の温度変化をつけてもよい。
焼成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、大気、窒素等の不活性ガス、真空中等の適切な雰囲気下で蒸発させればよい。
焼成温度および焼成時間は、目的とする電子デバイスのプロセス工程に適合した条件を選択すればよく、得られる膜の物性値が電子デバイスの要求特性に適合するような焼成条件を選択すればよい。
【0092】
このようにして得られた本発明の重合体からなる膜は、それ単独で、高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、および低体積収縮を達成できるため、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)などの電子デバイスを作製する際の一部材として好適に利用できる。
【0093】
本発明の重合体は、樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)との組成物として用いてもよい。
樹脂の具体例としては、特に限定されるものではない。熱可塑性樹脂としては、例えば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)等のポリオレフィン系樹脂;PS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、MS(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)等のポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;PMMA(ポリメチルメタクリレート)等の(メタ)アクリル樹脂;PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、PLA(ポリ乳酸)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリグルコール酸;変性でんぷん;酢酸セルロース、三酢酸セルロース;キチン、キトサン;リグニンなどが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その使用量は、上記重合体100質量部に対して、1〜10,000質量部が好ましく、より好ましくは1〜1,000質量部である。
【0094】
例えば、(メタ)アクリル樹脂との組成物は、(メタ)アクリレート化合物と上記重合体とを混合し、(メタ)アクリレート化合物を重合させて得ることができる。
(メタ)アクリレート化合物の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0095】
これらの(メタ)アクリレート化合物の重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、光照射または加熱により行うことができる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(159頁、発行人:高薄一弘、発行所:(株)技術情報協会、1991年発行)に記載されている。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、チバ・ジャパン(株)製 商品名: イルガキュア 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア 1116、1173、BASF社製 商品名:ルシリン TPO、UCB社製 商品名:ユベクリル P36、フラテツリ・ランベルティ社製 商品名:エザキュアー KIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等が挙げられる。
【0096】
光重合開始剤は、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して、0.1〜15質部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
重合に用いる溶剤は、上記膜形成用組成物で例示した溶剤と同様のものが挙げられる。
【0097】
また、本発明は、重量平均分子量が500〜500,000、かつ、550nmにおける屈折率が1.70以上であり、硫黄原子をその分子中に有しない重合体も提供する。
この屈折率の範囲は、使用場面にもよるが、下限値としては、好ましくは1.70以上、より好ましくは1.75以上、さらに好ましくは1.80以上である。上限値は、特に制限されないが、2.00〜1.95以下程度である。
この重合体は、好ましくはハロゲン原子を構造に有さない構造である。
また、この重合体の構造は、好ましくはハイパーブランチポリマーである。さらに好ましくは、構造中に水素原子を有するアミノ基を有しており、この水素原子の一部が他の部位と水素結合しているハイパーブランチポリマーである。
この水素結合量は、赤外分光法によって算出され、その下限は0.3以上が好ましく、0.4以上であることが好ましい。
ここで、水素結合量は、水素結合しているNHのピークの最大吸光度の値(IH)と水素結合していないNHのピークの最大吸光度の値(IF)とを読み取り、IH/IF+IHの式より算出できる。
この重合体は、好ましくはトリアジン環を含む構造である。
また、この重合体と架橋剤との組成物は、膜形成用等の組成物として有用である。
架橋剤の具体例としては、上述の架橋剤と同様である。
この組成物は、金属酸化物を用いることなく、高屈折率が求められているレンズ用部材や液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)などの電子デバイスを作製する際の一部材として好適に利用できる。
特に高屈折率が求められている固体撮像素子の部材である、フォトダイオード上の埋め込み膜および平坦化膜、カラーフィルター前後の平坦化膜、マイクロレンズ、マイクロレンズ上の平坦化膜およびコンフォーマル膜として好適に利用できる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
1H−NMR]
装置:Varian NMR System 400NB(400MHz)
JEOL−ECA700(700MHz)
測定溶媒:DMSO−d6
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)(δ0.0ppm)
[GPC]
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:Shodex KF−804L+KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(以下、THF)
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
[紫外線可視分光光度計]
装置:(株)島津製作所製 SHIMADSU UV−3600
[エリプソメーター]
装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE
[示差熱天秤(TG−DTA)]
装置:(株)リガク製 TG−8120
昇温速度:10℃/分
測定温度:25〜750℃
[電子顕微鏡]
装置:日本電子(株)製 電子顕微鏡S−4800
【0099】
[実施例1]高分子化合物[3]の合成
【化31】
【0100】
空気下、200mL四口フラスコに9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン[2](9.29g、0.027mol、Aldrich製)を加え、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAc)80mLに溶解し、オイルバスで100℃に加熱した。その後、DMAc20mLに溶解した2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](3.69g、0.02mol、東京化成工業(株)製)を加えて重合を開始した。
5分後、アニリン(3.34g、0.036mol)を加え、10分間撹拌して重合を停止した。室温まで放冷後、炭酸カリウム(15g、0.11mol)を水1,000mLに溶解した水溶液中に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、THF50mLに再溶解させ、ヘキサン540mLとエタノール60mLに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で40℃、6時間乾燥し、目的とする高分子化合物[3](以下、HB−TFA90と略す)12.4gを得た。
HB−TFA90の1H−NMRスペクトルの測定結果を図1に示す。得られたHB−TFA90は式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TFA90のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは9,200、多分散度Mw/Mnは2.33であった。
【0101】
[実施例2]
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン[2](8.37g、0.024mol)、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](3.69g、0.02mol)、アニリン(5.64g、0.06mol)を用い、実施例1と同様の手法で合成を行い、分子量が実施例1と異なる高分子化合物[3](以下、HB−TFA56と略す)11.5gを得た。HB−TFA56の1H−NMRスペクトルの測定結果を図2に示す。得られたHB−TFA56は式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TFA56のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,600、多分散度Mw/Mnは2.67であった。
【0102】
[実施例3]
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン[2](7.32g、0.021mol)、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](3.87g、0.01mol)、アニリン(5.64g、0.06mol)を用い、実施例1と同様の手法で合成を行い、分子量が実施例1と異なる高分子化合物[3](以下、HB−TFA32と略す)10.9gを得た。HB−TFA32の1H−NMRスペクトルの測定結果を図3に示す。HB−TFA32は式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TFA32のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,200、多分散度Mw/Mnは2.02であった。
【0103】
[実施例4]
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン[2](6.48g、0.018mol)、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](4.06g、0.022mol)、アニリン(5.64g、0.06mol)を用い、実施例1と同様の手法で合成を行い、分子量が実施例1と異なる高分子化合物[3](以下、HB−TFA20と略す)10.8gを得た。HB−TFA20の1H−NMRスペクトルの測定結果を図4に示す。HB−TFA20は式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TFA20のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,000、多分散度Mw/Mnは1.58であった。
【0104】
参考]高分子化合物[5]の合成
【化32】
【0105】
2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンに代えて、4,6−ジクロロ−N−フェニル−1,3,5−トリアジン−2−アミン[4](6.48g、0.018mol)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン[2](6.48g、0.018mol)、アニリン(5.64g、0.06mol)を用いて合成を行い、目的とする線状高分子化合物[5](以下、L−TF39と略す)10.8gを得た。L−TF39の1H−NMRスペクトルの測定結果を図5に示す。得られたL−TF39は式(2)で表される構造単位を有する化合物である。L−TF39のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,900、多分散度Mw/Mnは1.78であった。
【0106】
<被膜形成用組成物の調製>
[実施例6]
空気下、10mLナスフラスコに、実施例1で得られたHB−TFA90 1.0000gを加え、溶媒としてシクロヘキサノン3.9950gを加えた。次いで、商品名メガファックR−30(DIC(株)製)の5質量%シクロヘキサノン溶液0.0100gを加え、溶液が均一になるまで3時間撹拌した。撹拌後、溶質は完全に溶解し、薄黄色透明溶液として、固形分の総質量%が10質量%のポリマーワニス(以下、HB−TFA90Vと略す)を得た。
【0107】
[実施例7]
実施例2で得られたHB−TFA56を用いた以外は、実施例6と同様にポリマーワニスを調製し、薄黄色透明溶液として、固形分の総質量%が10質量%のポリマーワニス(以下、HB−TFA56Vと略す)を得た。
【0108】
[実施例8]
実施例3で得られたHB−TFA32を用いた以外は、実施例6と同様にポリマーワニスを調製し、薄黄色透明溶液として、固形分の総質量%が10質量%のポリマーワニス(以下、HB−TFA32Vと略す)を得た。
【0109】
[実施例9]
実施例4で得られたHB−TFA20を用いた以外は、実施例6と同様にポリマーワニスを調製し、薄黄色透明溶液として、固形分の総質量%が10質量%のポリマーワニス(以下、HB−TFA20Vと略す)を得た。
【0110】
参考
参考で得られたL−TF39を用いた以外は、実施例6と同様にポリマーワニスを調製し、薄黄色透明溶液として、固形分の総質量%が10質量%のポリマーワニス(以下、L−TF39Vと略す)を得た。
【0111】
実施例6〜9および参考例2で得たポリマーワニスは、完全に溶質が溶解し、均一なワニスであった。また、23℃55RH%の条件で1ヶ月放置しても、溶質が析出することはなく、保存安定性が優れていた。
【0112】
<被膜の作製と屈折率>
[実施例11]
実施例6で得られたHB−TFA90Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、被膜(以下、HB−TFA90F1と略す)を得た。
【0113】
[実施例12]
実施例6で得られたHB−TFA90Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、200℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA90F2と略す)を得た。
【0114】
[実施例13]
実施例6で得られたHB−TFA90Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、250℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA90F3と略す)を得た。
【0115】
[実施例14]
実施例6で得られたHB−TFA90Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、300℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA90F4と略す)を得た。
【0116】
[実施例15]
実施例7で得られたHB−TFA56Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、被膜(以下、HB−TFA56F1と略す)を得た。
【0117】
[実施例16]
実施例7で得られたHB−TFA56Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、200℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA56F2と略す)を得た。
【0118】
[実施例17]
実施例7で得られたHB−TFA56Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、250℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA56F3と略す)を得た。
【0119】
[実施例18]
実施例7で得られたHB−TFA56Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、300℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA56F4と略す)を得た。
【0120】
[実施例19]
実施例8で得られたHB−TFA32Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、被膜(以下、HB−TFA32F1と略す)を得た。
【0121】
[実施例20]
実施例8で得られたHB−TFA32Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、200℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA32F2と略す)を得た。
【0122】
[実施例21]
実施例8で得られたHB−TFA32Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、250℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA32F3と略す)を得た。
【0123】
[実施例22]
実施例8で得られたHB−TFA32Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、300℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA32F4と略す)を得た。
【0124】
[実施例23]
実施例9で得られたHB−TFA20Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、被膜(以下、HB−TFA20F1と略す)を得た。
【0125】
[実施例24]
実施例9で得られたHB−TFA20Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、200℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA20F2と略す)を得た。
【0126】
[実施例25]
実施例9で得られたHB−TFA20Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、250℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA20F3と略す)を得た。
【0127】
[実施例26]
実施例9で得られたHB−TFA20Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、300℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TFA20F4と略す)を得た。
【0128】
参考
参考で得られたL−TF39Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、被膜(以下、L−TF39F1と略す)を得た。
【0129】
参考
参考で得られたL−TF39Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、200℃で5分間焼成し、被膜(以下、L−TF39F2)を得た。
【0130】
参考
参考で得られたL−TF39Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、250℃で5分間焼成し、被膜(以下、L−TF39F3)を得た。
【0131】
参考
参考で得られたL−TF39Vをシリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、300℃で5分間焼成し、被膜(以下、L−TF39F4)を得た。
【0132】
上記実施例11〜26および参考例3〜5で作製した各被膜について、屈折率および膜厚を測定した。その結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
表1の結果から、実施例11におけるHB−TFA90F1の屈折率は波長550nmで1.7250、波長633nmで1.7025であり、ポリマー単体として非常に高屈折率であることがわかった。
さらに、実施例11〜14を比較すると、大気中、300℃で5分間の焼成工程を加えても、屈折率が低下せず、熱時の屈折率の安定性が非常に高いことが証明された。また、実施例12と実施例14の膜厚を比較しても、200℃から300℃までの工程の間に514.5nmから509.8nmしか膜厚の変化がないことから、体積収縮率が極めて低いことがわかった。
実施例15〜18、実施例19〜22、実施例23〜26、参考3〜6においても、焼成温度の上昇とともに、大きな屈折率の低下は確認されず、体積収縮率に関しても、低体積収縮率であることがわかった。
また、ポリマーの分子量に対する屈折率の変化は、実施例12、実施例16、実施例20および実施例24を比較すると、屈折率は波長550nmでそれぞれ1.7287、1.7300、1.7335、1.7377であり、分子量が低いポリマーが高い屈折率を発現する傾向であることがわかった。
高分岐構造を有するポリマーを用いた実施例19と直線構造を有するポリマーを用いた参考とを比較すると、屈折率は波長550nmでそれぞれ1.7277、1.7322であり、直線構造を有するポリマーが高い屈折率を発現する傾向であることがわかった。
【0135】
<被膜の作製と透過率>
[実施例31]
実施例6で得られたHB−TFA90Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、HB−TFA90F1を得た。HB−TFA90F1の透過率を測定した結果を図6に示す。
【0136】
[実施例32]
実施例6で得られたHB−TFA90Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、200℃で5分間焼成し、HB−TFA90F2を得た。HB−TFA90F2の透過率を測定した結果を図7に示す。
【0137】
[実施例33]
実施例6で得られたHB−TFA90Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、250℃で5分間焼成し、HB−TFA90F3を得た。HB−TFA90F3の透過率を測定した結果を図8に示す。
【0138】
[実施例34]
実施例6で得られたHB−TFA90Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、300℃で5分間焼成し、HB−TFA90F4を得た。HB−TFA90F4の透過率を測定した結果を図9に示す。
【0139】
[実施例35]
実施例7で得られたHB−TFA56Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、HB−TFA56F1を得た。HB−TFA56F1の透過率を測定した結果を図10に示す。
【0140】
[実施例36]
実施例7で得られたHB−TFA56Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、200℃で5分間焼成し、HB−TFA56F2を得た。HB−TFA56F2の透過率を測定した結果を図11に示す。
【0141】
[実施例37]
実施例7で得られたHB−TFA56Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、250℃で5分間焼成し、HB−TFA56F3を得た。HB−TFA56F3の透過率を測定した結果を図12に示す。
【0142】
[実施例38]
実施例7で得られたHB−TFA56Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、300℃で5分間焼成し、HB−TFA56F4を得た。HB−TFA56F4の透過率を測定した結果を図13に示す。
【0143】
[実施例39]
実施例8で得られたHB−TFA32Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、HB−TFA32F1を得た。HB−TFA32F1の透過率を測定した結果を図14に示す。
【0144】
[実施例40]
実施例8で得られたHB−TFA32Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、200℃で5分間焼成し、HB−TFA32F2を得た。HB−TFA32F2の透過率を測定した結果を図15に示す。
【0145】
[実施例41]
実施例8で得られたHB−TFA32Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、250℃で5分間焼成し、HB−TFA32F3を得た。HB−TFA32F3の透過率を測定した結果を図16に示す。
【0146】
[実施例42]
実施例8で得られたHB−TFA32Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、300℃で5分間焼成し、HB−TFA32F4を得た。HB−TFA32F4の透過率を測定した結果を図17に示す。
【0147】
[実施例43]
実施例9で得られたHB−TFA20Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、HB−TFA20F1を得た。HB−TFA20F1の透過率を測定した結果を図18に示す。
【0148】
[実施例44]
実施例9で得られたHB−TFA20Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、200℃で5分間焼成し、HB−TFA20F2を得た。HB−TFA20F2の透過率を測定した結果を図19に示す。
【0149】
[実施例45]
実施例9で得られたHB−TFA20Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、250℃で5分間焼成し、HB−TFA20F3を得た。HB−TFA20F3の透過率を測定した結果を図20に示す。
【0150】
[実施例46]
実施例9で得られたHB−TFA20Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、300℃で5分間焼成し、HB−TFA20F4を得た。HB−TFA20F4の透過率を測定した結果を図21に示す。
【0151】
参考
参考で得られたL−TF39Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、L−TF39F1を得た。L−TF39F1の透過率を測定した結果を図22に示す。
【0152】
参考
参考で得られたL−TF39Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、200℃で5分間焼成し、L−TF39F2を得た。L−TF39F2の透過率を測定した結果を図23に示す。
【0153】
参考
参考で得られたL−TF39Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、250℃で5分間焼成し、L−TF39F3を得た。L−TF39F3の透過率を測定した結果を図24に示す。
【0154】
参考10
参考で得られたL−TF39Vを石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで、300℃で5分間焼成し、L−TF39F4を得た。L−TF39F4の透過率を測定した結果を図25に示す。
【0155】
実施例31〜34、実施例35〜38、実施例39〜42、実施例43〜46、および参考7〜10で得られた被膜について、可視光領域である400〜800nmの透過率を比較すると、透過率は焼成温度の上昇とともに低下することなく、90%以上を保持していることがわかった。また、屈折率が高いため、透過率はハンチングしているが、これらの透過率の平均透過率をとると、95%以上となり極めて良好な透明性を発現していることがわかる。
【0156】
<耐光性試験>
耐光性試験における、光照射は財団法人日本ウエザリングテストセンターにて行い、照度が38.7W/m2のキセノンアークランプを光源とした。
[実施例51]
実施例14で作製したHB−TFA90F4に上記の光源を用い、12.5時間、光照射した。この光照射は100万Lux相当の光照射量に換算される。100万Luxとは、屋外暴露1年間に相当することが一般的に知られている。
100万Lux照射後の被膜(以下、HB−TFA90F4Iと略す)の屈折率および膜厚を測定した結果を表2に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
表2に示されるように、HB−TFA90F4は100万Luxの光照射で550nmおよび633nmの屈折率が若干低下するものの、膜厚は1nm程度収縮したのみで、良好な耐光性を有していることがわかった。
【0159】
[実施例52]
実施例34で作製したHB−TFA90F4について、実施例51と同様の光照射を行い、透過率を測定した。その結果を図26に示す。
図26に示されるように、HB−TFA90F4は100万Luxの光照射で、可視光領域の透過率に変化がないことがわかった。
実施例51および実施例52の結果を総合すると、HB−TFA90F4は100万Luxの光照射に対して、屈折率、透過率、膜厚の変化がほとんどなく、良好な耐光性を有していることが証明された。
【0160】
<耐熱性試験>
[実施例53]HB−TFA90の5%重量減少測定
実施例1で得られた高分子化合物[3]3.57mgを白金パンに加え、TG−DTAにより昇温速度15℃/minで測定を行った。その結果を図27に示す。5%重量減少は498℃であった。また、DSC測定によりガラス転移温度を測定したところ、289℃に転移点が観測された。
【0161】
[実施例54]HB−TFA56の5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例2で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は476℃であった。その結果を図28に示す。
【0162】
[実施例55]HB−TFA32の5%重量減少測定
実施例53と同様にして実施例3で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は466℃であった。その結果を図29に示す。
【0163】
[実施例56]HB−TFA20の5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例4で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は465℃であった。その結果を図30に示す。
【0164】
参考11]L−TF39の5%重量減少測定
実施例53と同様にして、参考で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は465℃であった。その結果を図31に示す。
【0165】
<埋め込み性試験>
〈埋め込み性試験用組成物の調製〉
[実施例58]
空気下、10mLナスフラスコに実施例4で得られたHB−TFA20 2.0000gを加え、溶媒としてシクロヘキサノン8.0000gを加え、ウェイブローターを用いて室温にて完全に溶解させ、HB−TFA20の20質量%シクロヘキサノン溶液を調製した。次いで、この20質量%シクロヘキサノン溶液1.0000gに、シクロヘキサノン0.7220gを加え、その後、架橋剤としてエポキシ基を含有する化合物であるエポリードGT−401(ダイセル化学工業(株)製)の10質量%シクロヘキサノン溶液0.1500g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して7.5質量部)加えた。さらに、密着促進剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)の2質量%シクロヘキサノン溶液0.1000g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して1質量部)加え、界面活性剤として、商品名メガファックR−30(DIC(株)製)の0.1質量%シクロヘキサノン溶液0.2000g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.1質量部)加え、溶液が均一になるまで3時間撹拌した。撹拌後、溶質は完全に溶解し、無色薄黄色溶液として、固形分の総質量%が10質量%のポリマーワニス(以下、HB−TFA20SV1と略す)を得た。
【0166】
[実施例59]
空気下、10mLナスフラスコに実施例4で得られたHB−TFA20 2.0000gを加え、溶媒としてシクロヘキサノン8.0000gを加え、ウェイブローターを用いて室温にて完全に溶解させ、HB−TFA20の20質量%シクロヘキサノン溶液を調製した。次いで、この20質量%シクロヘキサノン溶液1.0000gにシクロヘキサノン0.7220gを加え、その後、架橋剤としてブロック化イソシアナートを含有する化合物であるVESTAGON B 1065(デグザAG製)の10質量%シクロヘキサノン溶液0.1000g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して5質量部)加えた。さらに、密着促進剤として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)の2質量%シクロヘキサノン溶液0.1000g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して1質量部)加え、界面活性剤として、商品名メガファックR−30(DIC(株)製)の0.1質量%シクロヘキサノン溶液0.2000g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.1質量部)加え、溶液が均一になるまで3時間撹拌した。撹拌後、溶質は完全に溶解し、無色薄黄色溶液として、固形分の総質量%が10質量%のポリマーワニス(以下、HB−TFA20SV2と略す)を得た。
【0167】
[実施例60]
実施例9で調製したHB−TFA20Vを用い、埋め込み性試験を行った。埋め込み性試験に用いた構造物基板は材質がシリコンであり、深さが1.6μm、Via径が400nmである。
HB−TFA20Vを構造物基板に500nm狙いでスピンコート法にて製膜し、ホットプレートを用いて150℃で2分間、次いで、300℃で5分間の焼成を行った。
焼成後の製膜された構造物基板は、ダイアモンドペンを用いて基板の端に傷をつけた後、基板をヘキ開し、SEM観察を行った。観察した画像を図32に示す。
図32に示されるように、HB−TFA20Vはクラックが発生しているものの。Viaのボトムにまで材料が到達していることから、埋め込み材料として使用できる可能性が示唆された。
【0168】
[実施例61]
実施例58で得られたHB−TFA20SV1を用いた以外は、実施例60と同様に埋め込み性試験を行った。観察した画像を図33に示す。
【0169】
[実施例62]
実施例59で得られたHB−TFA20SV2を用いた以外は、実施例61と同様に埋め込み性試験を行った。観察した画像を図34に示す。
【0170】
図32図33および図34を比較すると、架橋剤および密着促進剤を添加した方が、埋め込み性が向上していることがわかる。この現象は架橋剤を添加したことで、ポリマー末端のNH2と、エポキシまたはブロックイソシアネートとが架橋することで高分子量体となってクラック耐性が向上すること、密着促進剤を添加したことでサイドスリットが軽減すること、を示唆していると考えられる。
このように、架橋剤および密着促進剤を選択することで、架橋温度やリフロー温度をコントロールでき、表面エネルギーのコントロールができることから、種々の表面を有した埋め込み基材に対して、最適な埋め込み材料を選択することができる。
これらの埋め込み材料は、特に固体撮像素子のフォトダイオード上の平坦化材(埋め込み材)として、好適に用いることができる。
本発明の高分岐ポリマーをフォトダイオード上の平坦化材とする場合、屈折率が1.7以上と高いことから、光導波路の原理でフォトダイオードまで光を誘導できるため、現行のVia径をより小さく設定することが可能となり、高繊細な固体撮像素子を作製することが可能になる。
【0171】
[実施例63]
実施例58で得られたHB−TFA20SV1を用いた以外は、実施例14と同様に、シリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで300℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TF20SVF1)を得た。
HB−TF20SVF1の屈折率および膜厚を測定したところ、550nmにおける屈折率は1.7312、633nmにおける屈折率は1.7120、膜厚は510.5nmとなった。
【0172】
[実施例64]
実施例59で得られたHB−TFA20SV2を用いた以外は、実施例14と同様に、シリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、150℃のホットプレートで2分間の焼成を行い、次いで300℃で5分間焼成し、被膜(以下、HB−TF20SVF2)を得た。
HB−TF20SVF2の屈折率および膜厚を測定したところ、550nmにおける屈折率は1.7443、633nmにおける屈折率は1.7242、膜厚は510.5nmとなった。
【0173】
実施例63,64と実施例26とを比較すると、架橋剤および密着促進剤を添加しても屈折率の著しい低下は確認できなかった。一般的に、架橋剤および密着促進剤は低屈折率な材料であることから、本実施例の添加剤の添加範囲では高分岐ポリマーが有している屈折率を低下させることなく、高屈折率材料として用いることができることが証明された。
さらに、実施例64においては、架橋剤および密着促進剤を添加した場合、添加しない場合よりも屈折率が向上することがわかった。この現象は、高分岐ポリマー末端のアミノ基と架橋剤の反応性基とが架橋して高分子量体となり、添加剤が低屈折率化させる成分として働かず、屈折率を保持、または向上させる成分として働いていることが示唆された。
【0174】
[実施例65]
実施例1で得られたHB−TFA90を用いて硬化膜を作製した。多官能アクリレートとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(0.15g、新中村化学工業(株)製)、HB−TFA90(0.15g)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(9.0mg、製品名イルガキュア907、チバ・ジャパン(株)製)を加え、シクロヘキサノン(2.7g)に溶解させた。その調製した溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒、1,000rpmで30秒スピンコートし、120℃で20分加熱して溶媒を除去した。その後、UVランプにより光照射(100W 高圧水銀ランプ(セン特殊光源(株)、HL−100、照射時間:20分、光源からの距離:5cm、室温で実施))を行い、160℃で5分焼成し、HB−TFA90を混合した硬化膜を得た。
得られた硬化膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は1.7162であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図35に示す。
【0175】
[実施例66]
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(0.09g)、HB−TFA90(0.21g)を用いた以外は、実施例65と同様にして硬化膜を作製した。
得られた硬化膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は1.7336であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図36に示す。
【0176】
実施例65,66と、実施例11とを比較すると、低屈折率である多感能アクリレート系モノマーに添加した場合でも、HB−TFA90単膜に近い、高い屈折率を示すことがわかった。一般的に多官能アクリレート系モノマーとの組成物は屈折率を低下させる傾向にあるが、本発明では、著しい屈折率の低下を招くことのない高屈折率材料として用いることができることが証明された。
【0177】
[実施例67]屈折率および透過率測定
実施例1で得られたHB−TFA90 0.5gをシクロヘキサノン4.5gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて100rpmで5秒間、500rpmで30秒間スピンコートし、150℃で5分間焼成し、溶媒を除去して被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.7428であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図37に示す。
【0178】
[実施例68]高分子化合物[7]の合成
【化33】
【0179】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えて9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン[6](7.52g,0.02mol、東京化成工業(株)製)を用い、これを実施例1と同様の手法で2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](2.74g,0.015mol,東京化成工業(株)製)と反応させ、さらに実施例1と同様にしてアニリン(4.29g、0.045mol)を加えて処理し、目的の高分子化合物[7](以下、HB−TFmAと略す)8.80gを得た。HB−TFmAの1H−NMRスペクトルを図38に示す。得られたHB−TFmAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TFmAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,800、多分散度Mw/Mnは2.09であった。なお、本実施例におけるGPC測定条件は下記のとおりである。
【0180】
[GPC]
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:Shodex OHpak SB−803HQ+SB−804HQ
カラム温度:40℃
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMF)
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
【0181】
[実施例69]屈折率測定
実施例68で得られたHB−TFmA1.0gを、N−メチルピロリドン9.0gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて100rpmで5秒間、800rpmで30秒間スピンコートし、250℃で5分間加熱して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.7105であった。
【0182】
[実施例70]HB−TFmAの5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例68で得られた高分子化合物[7]のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は489℃であった。その結果を図39に示す。
【0183】
[実施例71]高分子化合物[9]の合成
【化34】
【0184】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えてα,α′−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン[8](4.59g、0.013mol、東京化成工業(株)製)を用い、これを実施例1と同様の手法で2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](1.84g、0.010mol、東京化成工業(株)製)と反応させ、さらに実施例1と同様にしてアニリン(2.82g、0.03mol)を加えて処理し、目的の高分子化合物[9](以下、HB−TBAと略す)5.73gを得た。得られたHB−TBAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TBAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは15,900、多分散度Mw/Mnは5.62であった。
【0185】
[実施例72]屈折率測定
実施例71で得られたHB−TBA1.0gを、シクロヘキサノン9.0gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて100rpmで5秒間、800rpmで30秒間スピンコートし、150℃で5分間加熱し、溶媒を除去して被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.6724であった。
【0186】
[実施例73]HB−TBAの5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例71で得られた高分子化合物[9]のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は469℃であった。その結果を図40に示す。
【0187】
[実施例74]高分子化合物[11]の合成
【化35】
【0188】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えて1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン[10](3.57g、0.013mol、東京化成工業(株)製)を用い、これを実施例1と同様の手法で2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](1.85g、0.010mol、東京化成工業(株)製)と反応させ、さらに実施例1と同様にしてアニリン(2.82g、0.03mol)を加えて処理し、目的の高分子化合物[11](以下、HB−TCAと略す)4.92gを得た。HB−TCAの1H−NMRスペクトルを図41に示す。得られたHB−TCAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TCAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,100、多分散度Mw/Mnは2.28であった。
【0189】
[実施例75]屈折率測定
実施例74で得られたHB−TCA1.0gを、シクロヘキサノン9.0gに溶解し、茶色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて100rpmで5秒間、800rpmで30秒間スピンコートし、150℃で5分間加熱し、溶媒を除去して被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.7047であった。
【0190】
[実施例76]HB−TCAの5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例74で得られた高分子化合物[11]のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は469℃であった。その結果を図42に示す。
【0191】
[実施例77]高分子化合物[13]の合成
【化36】
【0192】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えて、3,6−ジアミノカルバゾール[12](0.52g、0.0025mol、東京化成工業(株)製)を用い、これを実施例1と同様の手法で2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](0.56g、0.003mol、東京化成工業(株)製)と反応させ、さらに実施例1と同様にしてアニリン(0.87g、0.009mol)を加えて処理した。再溶解をDMF(13mL)により行い、再沈殿させて目的の高分子化合物[13](以下、HB−TCzAと略す)0.87gを得た。得られたHB−TCzAの1H−NMRスペクトルを図43に示す。得られたHB−TCzAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。
HB−TCzAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,200、多分散度Mw/Mnは2.59であった。なお、GPC測定は、実施例68の条件にて行った。
【0193】
[実施例78]屈折率および透過率測定
実施例77で得られたHB−TCzA0.1gを、N−メチルピロリドン0.9gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスを石英基板上にスピンコーターを用いて100rpmで5秒間、1,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分間、250℃で5分間焼成し、溶媒を除去して被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.8008であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図44に示す。
【0194】
[実施例79]HB−TCzAの5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例77で得られた高分子化合物[13]のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は454℃であった。その結果を図45に示す。
【0195】
[実施例80]高分子化合物[15]の合成
【化37】
【0196】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えてビス(4−アミノフェニル)スルフィド[14](11.83g、0.06mol、東京化成工業(株)製)を用い、これを実施例1と同様の手法で2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](0.56g、0.05mol、東京化成工業(株)製)と反応させ、さらに実施例1と同様にしてアニリン(14.1g、0.15mol)を加えて処理し、目的の高分子化合物[15](以下、HB−TTAと略す)16.85gを得た。HB−TTAの1H−NMRスペクトルの測定結果を図46に示す。得られたHB−TTAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TTAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,100、多分散度Mw/Mnは2.30であった。
【0197】
[実施例81]屈折率および透過率測定
実施例80で得られたHB−TTA1.0gをN−メチルピロリドン9.0gに溶解し、紫色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて100rpmで5秒間、1,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分間、250℃で5分間焼成して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.8008であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図47に示す。
【0198】
[実施例82]HB−TTAの5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例80で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は452℃であった。その結果を図48に示す。
【0199】
[実施例83]高分子化合物[17]の合成
【化38】
【0200】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えてベンゼン−1,4−ジアミン[16](2.70g、0.024mol、東京化成工業(株)製)を用い、実施例1と同様の手法で、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](3.70g、0.02mol、東京化成工業(株)製)と反応させ、さらに実施例1と同様にしてアニリン(8.46g、0.09mol)を加えて処理した。再溶解をDMF(40mL)により行い、再沈殿させて目的の高分子化合物[17](以下、HB−TDAと略す)0.87gを得た。HB−TDAの1H−NMRスペクトルの測定結果を図49に示す。得られたHB−TDAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TDAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは14,900、多分散度Mw/Mnは7.34であった。なお、GPC測定は、実施例68の条件にて行った。
【0201】
[実施例84]屈折率および透過率測定
実施例83で得られたHB−TDA1.0gをN−メチルピロリドン9.0gに溶解し、薄茶色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて100rpmで5秒間、1,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分間、250℃で5分間焼成して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.8010であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図50に示す。
【0202】
[実施例85]HB−TDAの5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例83で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は452℃であった。その結果を図51に示す。
【0203】
[実施例86]高分子化合物[21]の合成
【化39】
【0204】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えて4,4’−ジアミノベンゾフェノン[20](0.75g、0.0034mol、東京化成工業(株)製)を用い、実施例1と同様の手法で2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](0.58 g、0.003mol、東京化成工業(株)製)と反応させ、さらに実施例1と同様にしてアニリン(0.87g、0.009mol、純正化学(株)製)を加えて処理し、目的の高分子化合物[21](以下、HB−TBpAと略す)1.05gを得た。HB−TBpAの1H−NMRスペクトルの測定結果を図52に示す。得られたHB−TBpAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TBpAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,200、多分散度Mw/Mnは2.15であった。
【0205】
[実施例87]屈折率および透過率測定
実施例86で得られたHB−TBpA0.3gをN−メチルピロリドン2.7gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で2分間、250℃で5分間焼成して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.8929であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図53に示す。
【0206】
[実施例88]HB−TBpAの5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例87で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は453℃であった。その結果を図54に示す。
【0207】
[実施例89]高分子化合物[23]の合成
【化40】
【0208】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えて4,4’−ジアミノ−N−メチルジフェニルアミン[22](3.56g、0.013mol、Macromolecules (2003), 36(9), 3115−3127に記載の方法に準じて製造)を用い、実施例1と同様の手法で2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](1.84g、0.010mol、東京化成工業(株)製)と反応させ、さらに、さらに実施例1と同様にしてアニリン(2.80g、0.03mol、純正化学(株)製)を加えて処理した。再溶解をDMF(100mL)により行い、再沈殿させ目的の高分子化合物[23](以下、HB−TDMAと略す)1.77gを得た。HB−TDMAの1H−NMRスペクトルの測定結果を図55に示す。得られたHB−TDMAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TDMAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは7,800、多分散度Mw/Mnは4.49であった。なお、GPC測定は、実施例68の条件にて行った。
【0209】
[実施例90]屈折率および透過率測定
実施例89で得られたHB−TDMA0.3gをN−メチルピロリドン2.7gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で2分、250℃で5分間焼成して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.8034であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図56に示す。
【0210】
[実施例91]HB−TDMAの5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例89で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は462℃であった。その結果を図57に示す。
【0211】
[実施例92]低温仕込み法による高分子化合物[3]の合成
窒素雰囲気下、50mL四口フラスコに9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン[2](3.35g、0.0096mol、Aldrich製)を加え、DMAc23gに溶解し、−10℃に冷却した。その後、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](1.48g、0.008mol、東京化成工業(株)製)を温度が0℃以上にならないように少しずつ加え、その後30分間撹拌した。この反応溶液を、予め100mL四口フラスコにDMAc23gを加え、オイルバスで85℃に加熱してある槽へ、トランスファーチューブを用いて、10分間かけて滴下し、1時間撹拌して重合した。
その後、アニリン(1.46g、0.024mol)を加え、1時間撹拌して重合を停止した。室温まで放冷後、28%アンモニア水溶液(15g、0.024mol)をイオン交換水181gとメタノール42gとの混合溶液に溶解した溶液中に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、THF43gに再溶解させ、イオン交換水215g中で再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[3](以下、HB−TFA110と略す)4.43gを得た。
HB−TFA110の1H−NMRスペクトルの測定結果を図58に示す。得られたHB−TFA110は式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TFA110のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは11,000、多分散度Mw/Mnは3.30であった。
【0212】
[実施例93]屈折率および透過率測定
実施例92で得られたHB−TFA110 1.0gを、シクロヘキサノン9.0gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて500rpmで5秒間、3,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で2分間、250℃で5分間焼成して被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.738であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図59に示す。
【0213】
[実施例94]HB−TFA110の5%重量減少測定
実施例92で得られたHB−TFA110 3.47mgを白金パンに加え、TG−DTAにより昇温速度15℃/minで測定を行った。5%重量減少は496℃であった。その結果を図60に示す。
【0214】
[実施例95]高分子化合物[25]の合成
【化41】
【0215】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えて4,4′−ジアミノベンズアニリド[24](4.18g、0.0184mol、東京化成工業(株)製)を用い、これを実施例1と同様の手法で2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](2.67g、0.014mol、東京化成工業(株)製)と反応させ、さらに実施例1と同様にしてアニリン(4.00g、0.0425mol)を加えて処理した。再溶解をDMF(80mL)を用いて行い、再沈殿させて目的の高分子化合物[25](以下、HB−TAMA1と略す)6.30gを得た。
得られたHB−TAMAの1H−NMRスペクトルを図61に示す。得られたHB−TAMAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。
HB−TAMAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは149,000、多分散度Mw/Mnは44.0であった。なお、GPC測定は、実施例68の条件にて行った。
【0216】
[実施例96]屈折率および透過率測定
実施例95で得られたHB−TAMA1 1.0gを9.0gのN−メチルピロリドンに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒、2,000rpmで30秒スピンコートし、150℃で2分、250℃で5分焼成して溶媒を除去して被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.9387であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図62に示す。
【0217】
[実施例97]HB−TAMA1の5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例95で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は416℃であった。その結果を図63に示す。
【0218】
[実施例98]高分子化合物[27]の合成
【化42】
【0219】
空気下、1,000mL四口フラスコにm−フェニレンジアミン[26](12.17g、0.12mol、Aldrich社製)を加え、DMAc121mLに溶解し、オイルバスで100℃に加熱した。その後、DMAc261.5mLに溶解した2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](26.15g、0.14mol、東京化成工業(株)製)を加えて重合を開始した。
50分後、アニリン(30.6g、0.3mol、純正化学(株)製)を加え、1時間撹拌して重合を停止した。室温まで放冷後、28%アンモニア水溶液(30.4g)を水1,600mLおよびメタノール520mLに溶解した混合溶液中に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、THF400mL、DMF15mLに再溶解させ、イオン交換水2100mLに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、6時間乾燥し、目的とする高分子化合物[27](以下、HB−TmDA12と略す)19.94gを得た。
HB−TmDA12の1H−NMRスペクトルの測定結果を図64に示す。得られたHB−TmDA12は式(25)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TmDA12のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,200、多分散度Mw/Mnは1.23であった。
【0220】
[実施例99]屈折率および透過率測定
実施例98で得られたHB−TmDA12 1.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル9.0gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスを石英基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で2分間、250℃で5分間焼成して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.7752であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図65に示す。
【0221】
[実施例100]HB−TmDA12の5%重量減少測定
実施例98で得られた高分子化合物[27]3.57mgを白金パンに加え、TG−DTAにより昇温速度15℃/minで測定を行ったところ、5%重量減少は434℃であった。その結果を図66に示す。
【0222】
[実施例101]異なる分子量の高分子化合物[27]の合成
実施例98と同様の手法で、m−フェニレンジアミン[26](28.94g、0.27mol、Aldrich社製)、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](36.91g、0.20mol、東京化成工業(株)製)、アニリン(56.53g、0.6mol、純正化学(株)製)を用いて合成を行い、目的の高分子化合物[27](以下、HB−TmDA45と略す)49.78gを得た。HB−TmDA45の1H−NMRスペクトルの測定結果を図67に示す。得られたHB−TmDA45は式(25)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TmDA45のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,600、多分散度Mw/Mnは2.37であった。
【0223】
[実施例102]屈折率および透過率測定
実施例101で得られたHB−TmDA45 1.0gをシクロヘキサノン9.0gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で2分間、250℃で5分間焼成して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.8030であった。
また、得られた被膜の400〜800nmの透過率測定を行った。結果を図68に示す。
【0224】
[実施例103]HB−TmDA45の5%重量減少測定
実施例100と同様にして、実施例101で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は453℃であった。その結果を図69に示す。
【0225】
以上のとおり、式[27]で示される高分子化合物は、ポリマー単体として非常に高屈折率であることがわかる。
【0226】
[実施例104]
【化43】
【0227】
実施例98と同様の手法で、p−フェニレンジアミン[16](7.49g、0.069mol、Aldrich製)、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](18.54g、0.1mol、東京化成工業(株)製)、アニリン(28.30g、0.3mol、純正化学(株)製)を用いて合成を行った。再溶解をDMF(260mL)により行い、再沈殿させて目的の高分子化合物[17](以下、HB−TpDA23と略す)49.78gを得た。HB−TpDA23の1H−NMRスペクトルの測定結果を図70に示す。HB−TpDAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,300、多分散度Mw/Mnは1.75であった。なお、GPC測定は、下記の条件にて行った。
[GPC]
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:Shodex OHpak SB−803HQ+SB−804HQ
カラム温度:40℃
溶媒:DMF
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
【0228】
上記実施例98および実施例104で得られた高分子化合物について、表に示す各溶媒に対する溶解性を検討し、以下の基準にて評価した。なお、溶液は、10質量%高分子化合物となるように調製し、溶解性は、25℃で1時間後に目視で確認した。
○:透明な溶液となり、良好に溶解
×:沈殿物があり、不溶
【0229】
【表3】
【0230】
表3に示されるように、m−フェニレンジアミンを用いた高分子化合物は、p−フェニレンジアミンを用いた高分子化合物に比べ、有機溶媒に対する溶解性が良好であり、特に、電子デバイス分野で汎用されている、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等にも良く溶けることがわかる。
【0231】
<被膜形成用組成物の調製>
[実施例105]
空気下、10mLナスフラスコに実施例101で得られたHB−TmDA45 2.0000gを加え、溶媒としてシクロヘキサノン8.0000gを加え、ウェイブローターを用いて室温にて完全に溶解させ、HB−TmDA45の20質量%シクロヘキサノン溶液を調製した。次いで、この20質量%シクロヘキサノン溶液1.0000gにシクロヘキサノン0.9420gを加え、その後、架橋剤としてエポキシ基を含有する化合物であるエポリードGT−401(ダイセル化学工業(株)製)の10質量%シクロヘキサノン溶液0.2000g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して10.0質量部)を加えた。さらに、密着促進剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)の5質量%シクロヘキサノン溶液0.0400g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して1質量部)を加え、界面活性剤として、商品名メガファックR−30(DIC(株)製)の0.5質量%シクロヘキサノン溶液0.0400g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.1質量部)を加え、溶液が均一になるまで3時間撹拌した。撹拌後、溶質は完全に溶解し、薄黄色透明溶液として、固形分の総質量%が10質量%のポリマーワニス(以下、HB−TmDA45SV1と略す)を得た。
【0232】
<被膜の作製と透過率測定>
[実施例106]
実施例105で得られたHB−TmDA45SV1を石英基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、大気下、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行い、基板上の被膜としてHB−TmDA45F1を得た。HB−TmDA45F1の透過率を測定した結果を図71に示す。
図71に示されるように、HB−TmDA45F1は、大気下にて300℃という高温焼成にも関わらず、透過率が良好であった。具体的には、400〜800nmの可視光領域において、その平均透過率は95%以上を示し、非常に透明性が高い膜であることがわかった。
【0233】
<被膜の作製と屈折率>
[実施例107]
実施例101で得られたHB−TmDA45を用いて、実施例106と同様に、シリコン基板上にスピンコーターを用いて500nm狙いでスピンコートし、大気下、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行い、被膜(以下、HB−TmDA45F2)を得た。
HB−TmDA45F2の屈折率および膜厚を測定したところ、550nmにおける屈折率は1.7604、633nmにおける屈折率は1.7389、膜厚は508.2nmであった。
このように、架橋剤または密着促進剤を加えた組成物においても、屈折率は550nmで1.75を超える非常に高い屈折率を有していることがわかった。
【0234】
<溶剤耐性>
[実施例108]
実施例107で得られたHB−TmDA45F2の溶剤耐性試験を行った。HB−TmDA45F2の本焼成後の膜厚は508.2nmであり、これを初期膜厚とした。HB−TmDA45F2をそれぞれ独立して、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、アセトン、乳酸エチルに完全に浸漬させ、5分間放置した。次いで、エアーで乾燥後、200℃のホットプレートで1分間焼成し、残留溶剤を完全に蒸発させた後、膜厚を測定し、初期膜厚と比較した。
初期膜厚を100%としたとき、プロピレングリコールモノメチルエーテルでは97.5%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートでは99.9%、シクロヘキサノンでは99.7%、アセトンでは99.6%、乳酸エチルでは99.3%となり、各種有機溶剤に対して溶剤耐性が良好であることがわかった。
なお、溶剤耐性試験とは、本焼成後の被膜が溶剤への接触に対して、不溶化していることを示す試験である。溶剤耐性は被膜の上にレジストなどをリコートし、パターニングする後工程が加わった際に必要になる特性であり、溶剤耐性がない場合、リコートする際のレジスト溶剤に溶解してしまい、被膜とレジストとがミキシングされてしまって、本来の特性が発現しないことがある。
【0235】
<埋め込み性試験>
[実施例109]
実施例105で調製したHB−TmDA45SV1を用い、埋め込み性試験を行った。埋め込み性試験に用いた構造物基板は材質がシリコンであり、深さが1.6μm、Via径が400nmである。
HB−TmDA45SV1を構造物基板に500nm狙いでスピンコート法にて製膜し、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行った。
焼成後の製膜された構造物基板は、ダイアモンドペンを用いて基板の端に傷をつけた後、基板をヘキ開し、SEM観察を行った。観察した画像を図72に示す。
図72に示されるように、埋め込み性は良好であり、埋め込み材料として使用できる可能性が示唆された。
本発明の高分岐ポリマーをフォトダイオード上の平坦化材とする場合、屈折率が1.7以上と高いことから、光導波路の原理でフォトダイオードまで光を誘導できるため、現行のVia径をより小さく設定することが可能となり、高繊細な固体撮像素子を作製することが可能になる。
【0236】
[実施例110]低温仕込み法による高分子化合物[27]の合成
窒素下、200mL四口フラスコにDMAc50.41gを加え、塩化ナトリウムを加えた氷浴で−10℃まで冷却し、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](11.06g、0.06mol、Aldrich社製)を加えて溶解した。その後、DMAc41.24gに溶解したm−フェニレンジアミン[26](8.43g、0.078mol)を滴下した。滴下後、30分間撹拌し、この反応溶液を、予め300mL四口フラスコにDMAc91.65gを加えてオイルバスで110℃に加熱してある槽へ、トランスファーチューブを用いて滴下し、1時間撹拌して重合した。
その後、アニリン(1.46g、0.024mol)を加え、1時間撹拌して重合を停止した。室温まで放冷後、28%アンモニア水溶液(36.43g)とイオン交換水731gの混合溶液中で再沈殿させた。沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で120℃、4時間乾燥後、THF95.5g、DMF35.1gおよび28%アンモニア水溶液3.64gで再溶解させ、イオン交換水1365g中で再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[3](以下、HB−TmDA30と略す)17.3gを得た。
HB−TmDA30の1H−NMRスペクトルの測定結果を図73に示す。得られたHB−TmDA30は式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TmDA30のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,000、多分散度Mw/Mnは2.99であった。
【0237】
[実施例111]HB−TmDA30の5%重量減少測定
実施例100と同様にして、実施例110で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は403℃であった。その結果を図74に示す。
【0238】
[実施例112]アニリン同時仕込みによる高分子化合物[27]の合成
窒素下、500mL四口フラスコにDMAc300gを加え、塩化ナトリウムを加えた氷浴で−10℃まで冷却し、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](61.63g,0.33mol,Aldrich社製)を加えて溶解した。その後、DMAc300gに溶解したm−フェニレンジアミン[26](97.55g、0.90mol)とアニリン(15.71g、0.17mol)とを滴下した。滴下後、30分間撹拌し、この反応溶液を、予め2,000mL四口フラスコにDMAc895gを加えてオイルバスで110℃に加熱してある槽へ、トランスファーチューブを用いて滴下し、1時間撹拌して重合した。
室温まで放冷後、28%アンモニア水溶液(229.13g)とイオン交換水4,000gの混合溶液に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、THF550g、DMF50.8gおよび28%アンモニア水溶液20.2gに再溶解させ、イオン交換水4,000g中で再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[27](以下、HB−TmDA18NH2と略す)145.5gを得た。
HB−TmDA18NH2の1H−NMRスペクトルの測定結果を図75に示す。高分子化合物末端NH2由来のシグナルが5ppm付近に観測された。得られたHB−TmDA18NH2は式(25)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TmDA18NH2のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,200、多分散度Mw/Mnは1.91であった。
【0239】
[実施例113]HB−TmDA18NH2の5%重量減少測定
実施例100と同様にして、実施例112で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は440℃であった。その結果を図76に示す。
【0240】
[実施例114]アニリン同時仕込みによる分子量の異なる高分子化合物[27]の合成
窒素下、200mL四口フラスコにm−フェニレンジアミン[26](3.25g、0.03 mol、Aldrich製)、アニリン(0.82g、0.0085mol)を加え、DMAc32mLに溶解し、オイルバスで100℃に加熱した。その後、DMAc31.3mLに溶解した2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](3.13g、0.017mol、東京化成工業(株)製)を加えて重合を開始した。
60分後、さらにアニリン(3.99g、0.042mol)を加え、60分間撹拌して重合を停止した。室温まで放冷後、28%アンモニア水5.29gと純水240mLの混合水溶液中に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、THF60mLとDMF10mLに再溶解させ、純水420mLに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[27](以下、HB−TmDA25と略す)4.36gを得た。
HB−TmDA25の1H−NMRスペクトルの測定結果を図77に示す。得られたHB−TmDA25は式(25)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TmDA25のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,500、多分散度Mw/Mnは1.87であった。
【0241】
[実施例115]屈折率測定
実施例114で得られたHB−TmDA25 0.5gを、シクロヘキサノン4.5gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分、250℃で5分間加熱して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.7830であった。
【0242】
[実施例116]HB−TmDA25の5%重量減少測定
実施例100と同様にして、実施例114で得られた高分子化合物[27]のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は425℃であった。その結果を図78に示す。
【0243】
[実施例117]アニリン低温同時仕込みによる高分子化合物[27]の合成
窒素下、500mL四口フラスコにDMAc223.05gを加え、アセトン−ドライアイス浴により−10℃まで冷却し、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](41.49g、0.225mol、エポニックデグザ社製)を加え溶解した。その後、DMAc148.70gに溶解したm−フェニレンジアミン[26](30.41g、0.281mol)およびアニリン(6.29g、0.068mol)を滴下した。滴下後30分撹拌し、この反応溶液を、予め1,000mL四口フラスコにDMAc304.17gを加えてオイルバスで85℃に加熱してある槽へ送液ポンプにより1時間かけて滴下し、1時間撹拌して重合した。
その後、さらにアニリン(56.58g、0.608mol)を加え、1時間撹拌して反応を終了した。室温まで放冷後、28%アンモニア水溶液(136.61g)とイオン交換水4314gの混合溶液に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、5時間乾燥後、THF407.5gに再溶解させ、イオン交換水2852gに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、20時間乾燥し、目的とする高分子化合物[27](以下、HB−TmDA30と略す)55.0gを得た。
HB−TmDA30の1H−NMRスペクトルの測定結果を図79に示す。得られたHB−TmDA30は式(25)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TmDA30のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,200、多分散度Mw/Mnは2.62であった。
【0244】
[実施例118]HB−TmDA30の5%重量減少測定
実施例100と同様にして、実施例117で得られた高分子化合物[27]のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は410℃であった。その結果を図80に示す。
【0245】
[実施例119]アニリン同時仕込みによる高分子化合物[27]の合成(アニリンの添加割合を変えた例)
窒素下、500mL四口フラスコにm−フェニレンジアミン[26](10.81g、0.10mol、Aldrich製)、アニリン(5.40g、0.056mol)を加え、DMAc108mLに溶解し、オイルバスで100℃に加熱した。その後、DMAc104mLに溶解した2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](10.48g、0.056mol、東京化成工業(株)製)を加えて重合を開始した。
60分後、さらにアニリン(10.72g、0.114mol)を加え、60分間撹拌して重合を停止した。室温まで放冷後、28%アンモニア水17.4gと純水800mLの混合水溶液中に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、THF200mLとDMF30mLに再溶解させ、純水1400mLに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[27](以下、HB−TmDA15と略す)16.36gを得た。
HB−TmDA15の1H−NMRスペクトルの測定結果を図81に示す。得られたHB−TmDA15は式(25)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TmDA15のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,500、多分散度Mw/Mnは1.47であった。
【0246】
[実施例120]屈折率測定
実施例119で得られたHB−TmDA15 0.5gを、シクロヘキサノン4.5gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分、300℃で5分間加熱して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.7830であった。
【0247】
[実施例121]アニリン低温同時仕込みによる高分子化合物[27]の合成(アニリンの添加割合を変えた例)
窒素下、1,000mL四口フラスコにDMAc456.02gを加え、アセトン−ドライアイス浴により−10℃まで冷却し、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](84.83g、0.460mol、エポニックデグザ社製)を加え溶解した。その後、DMAc304.01gに溶解したm−フェニレンジアミン[26](62.18g、0.575mol)、およびアニリン(14.57g、0.156mol)を滴下した。滴下後30分撹拌し、この反応溶液を、予め2,000mL四口フラスコにDMAc621.85gを加えてオイルバスで85℃に加熱してある槽へ送液ポンプにより1時間かけて滴下し、1時間撹拌して重合した。
その後、アニリン(113.95g、1.224mol)を加え、1時間撹拌して反応を終了した。氷浴により室温まで冷却後、トリエチルアミン(116.36g、1.15mol)を滴下し、30分撹拌して塩酸をクエンチした。その後、析出した塩酸塩をろ過除去した。ろ過した反応溶液を28%アンモニア水溶液(279.29g)とイオン交換水8,820gの混合溶液に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、8時間乾燥後、THF833.1gに再溶解させ、イオン交換水6,665gに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、25時間乾燥し、目的とする高分子化合物[27](以下、HB−TmDA40と略す)118.0gを得た。
HB−TmDA40の1H−NMRスペクトルの測定結果を図82に示す。得られたHB−TmDA40は式(25)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TmDA40のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,300、多分散度Mw/Mnは3.44であった。
【0248】
[実施例122]屈折率測定
実施例121で得られたHB−TmDA40 0.5gを、シクロヘキサノン4.5gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分、250℃で5分間加熱して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.790であった。
【0249】
[実施例123]HB−TmDA40の5%重量減少測定
実施例100と同様にして、実施例121で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は419℃であった。その結果を図83に示す。
【0250】
[実施例124]2−エチルヘキシルアミン低温同時仕込みによる高分子化合物[27]の合成
2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](23.0g、0.125mol、東京化成工業(株)製)、m−フェニレンジアミン[26](48.66g、0.45mol、Aldrich製)と2−エチルヘキシルアミン(6.46g、0.05mol、東京化成工業(株)製)を加え、実施例117と同様に低温反応を行った。その後、105℃の反応槽にて重合を行った。60分後、2−エチルヘキシルアミン(37.45g、0.325mol、東京化成工業(株)製)を添加し、60分後、室温まで放冷し実施例117と同様の操作により精製を行い、目的の高分子化合物[27](以下、HB−TmEHと略す)74.24gを得た。HB−TmEHの1H−NMRスペクトルの測定結果を図84に示す。得られたHB−TmEHは式(25)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TmEHのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,500、多分散度Mw/Mnは1.59であった。
得られたHB−TmEH 0.5gを、シクロヘキサノン4.5gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分、250℃で5分間加熱して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.8153であった。
また、実施例100と同様にして、得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は469℃であった。その結果を図85に示す。
【0251】
[実施例125]高分子化合物[29]の合成
【化44】
【0252】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えて、4,4’−スルホニルジアニリン[28](7.45g、0.030moL、東京化成工業(株)製)を用い、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](4.64g、0.025mol、東京化成工業(株)製)と実施例1と同様の手法で反応させた。再溶解をDMF(120mL)により行い、再沈殿させ目的の高分子化合物[29](以下、HB−TSdAと略す)10.30gを得た。HB−TSdAの1H−NMRスペクトルの測定結果を図86に示す。得られたHB−TSdAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TSdAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,200、多分散度Mw/Mnは1.64であった。
【0253】
[実施例126]HB−TSdAの5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例125で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は427℃であった。その結果を図87に示す。
【0254】
[実施例127]高分子化合物[31]の合成
【化45】
【0255】
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンに代えて、4,4’−ジアミノジフェニルメタン[30](11.90g、0.06moL、東京化成工業(株)製)を用い、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](9.22g、0.05mol、東京化成工業(株)製)と実施例1と同様の手法で反応させた。再溶解をDMF(200mL)により行い、再沈殿させ目的の高分子化合物[31](以下、HB−TMAと略す)15.86gを得た。HB−TMAの1H−NMRスペクトルの測定結果を図88に示す。得られたHB−TMAは式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TMAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,700、多分散度Mw/Mnは2.93であった。
【0256】
[実施例128]HB−TMAの5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例127で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は509℃であった。その結果を図89に示す。
【0257】
[実施例129]アニリンを重合槽に入れておいた同時仕込み(低温仕込み)による高分子化合物[27]の合成
窒素下、50mL四口フラスコにDMAc20.27gを加え、アセトン−ドライアイス浴により−10℃まで冷却し、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](3.69g、0.02mol、エポニックデグザ社製)を加えて溶解した。その後、DMAc13.29gに溶解したm−フェニレンジアミン[26](2.70g、0.025mol)を滴下した。滴下後30分撹拌し、この反応溶液を、予め100mL四口フラスコにジメチルアセトアミド27.04g、およびアニリン(0.63g、0.0068mol)を加え、オイルバスで85℃に加熱してある槽へ送液ポンプにより1時間かけて滴下し、その後1時間撹拌して重合した。
その後、アニリン(4.95g、0.053mol)を加え、1時間撹拌して反応を終了した。氷浴により室温まで冷却後、トリエチルアミン(5.07g、0.05mol)を滴下し、30分撹拌して塩酸をクエンチした。その後、析出した塩酸塩をろ過除去した。ろ過した反応溶液を28%アンモニア水溶液(12.2g)とイオン交換水387gの混合溶液に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、ろ物をTHF39.3gに再溶解させ、イオン交換水306gに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、25時間乾燥し、目的とする高分子化合物[27](以下、HB−TmDA40Hと略す)4.08gを得た。
HB−TmDA40Hの1H−NMRスペクトルの測定結果を図90に示す。得られたHB−TmDA40Hは式(25)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TmDA40HのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,500、多分散度Mw/Mnは2.21であった。
【0258】
[実施例130]屈折率測定
実施例129で得られたHB−TmDA40H 0.5gを、シクロヘキサノン4.5gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分、250℃で5分間加熱して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.7884であった。
【0259】
[実施例131]HB−TmDA40Hの5%重量減少測定
実施例100と同様にして、実施例129で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は430℃であった。その結果を図91に示す。
【0260】
[実施例132]アニリン同時仕込みによる高分子化合物[25]の合成
窒素下、100mL四口フラスコにジメチルアセトアミド20.1gに、4,4’−ジアミノベンズアニリド(6.05g、0.027mol)およびアニリン(0.67g、0.0072mol)を加え、アセトン−ドライアイス浴により−10℃まで冷却した。その後、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](3.69g、0.02mol、エポニックデグザ社製)を、予め−10℃に冷却したDMAc30.2gに溶解させた溶液を滴下した。滴下後30分撹拌し、この反応溶液を、予め200mL四口フラスコにDMAc41.19gをオイルバスで85℃に加熱してある槽へ送液ポンプにより1時間かけて滴下し、1時間撹拌して重合した。
その後、アニリン(4.96g、0.053mol)を加え、1時間撹拌して反応を終了した。氷浴により室温まで冷却後、トリエチルアミン(5.07g、0.05mol)を滴下し、30分撹拌して塩酸をクエンチした。その後、析出した塩酸塩をろ過除去した。ろ過した反応溶液を28%アンモニア水溶液(12.3g)とイオン交換水585gの混合溶液に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、ろ物をTHF64.84gに再溶解させ、イオン交換水586.8gに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、25時間乾燥し、目的とする高分子化合物[25](以下、HB−TAMA40と略す)6.97gを得た。HB−TAMA40の1H−NMRスペクトルの測定結果を図92に示す。得られたHB−TAMA40は式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TAMA40のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,200、多分散度Mw/Mnは2.40であった。
【0261】
[実施例133]屈折率測定
実施例132で得られたHB−TAMA40 0.5gを、NMP4.5gに溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2,000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分、250℃で5分間加熱して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は、1.8592であった。
【0262】
[実施例134]HB−TAMA40の5%重量減少測定
実施例53と同様にして、実施例132で得られた高分子化合物のTG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は420℃であった。その結果を図93に示す。
【0263】
<被膜形成用組成物の調製>
[実施例135]
実施例125で得られたHB−TSdA1.00gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、N−メチルピロリドン(NMPと略す)9.00gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、10%NMP溶液を調製した。5mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TSdAの10%NMP溶液0.50gを秤量し、次いで、架橋剤としてNK−オリゴ UA−53H(新中村化学工業(株)製)をシクロヘキサノン(CHNと略す)で希釈した20%溶液を0.0750g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して30質量部)加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液0.0250g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)加え、さらに、CHN0.2353gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TSdAV1と略す)を調製した。
【0264】
[実施例136]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53HからB−882N(三井ポリウレタン(株)製)に変更した以外は、実施例135と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TSdAV2と略す)を調製した。
【0265】
[実施例137]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53Hからエポリード GT−401(ダイセル化学工業(株)製)に変更した以外は、実施例135と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TSdAV3と略す)を調製した。
【0266】
[実施例138]
実施例127で得られたHB−TMA1.00gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、NMP9.00gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、10%NMP溶液を調製した。5mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TMAの10%NMP溶液0.50gを秤量し、次いで、架橋剤としてNK−オリゴ UA−53H(新中村化学工業(株)製)をCHNで希釈した20%溶液0.0750g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して30質量部)を加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液を0.0250g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)加え、さらに、CHN0.2353gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TMAV1と略す)を調製した。
【0267】
[実施例139]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53HからB−882N(三井ポリウレタン(株)製)に変更した以外は、実施例138と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TMAV2と略す)を調製した。
【0268】
[実施例140]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53Hからエポリード GT−401(ダイセル化学工業(株)製)に変更した以外は、実施例138と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TMAV3と略す)を調製した。
【0269】
[実施例141]
実施例71で得られたHB−TMdA1.00gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、NMP9.00gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、10%NMP溶液を調製した。5mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TMdAの10%NMP溶液0.50gを秤量し、次いで、架橋剤としてNK−オリゴ UA−53H(新中村化学工業(株)製)をCHNで希釈した20%溶液0.0750g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して30質量部)を加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液を0.0250g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)加え、さらに、CHN0.2353gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TMdAV1と略す)を調製した。
【0270】
[実施例142]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53HからB−882N(三井ポリウレタン(株)製)に変更した以外は、実施例141と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0%のワニス(HB−TMdAV2と略す)を調製した。
【0271】
[実施例143]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53Hからエポリード GT−401(ダイセル化学工業(株)製)に変更した以外は、実施例141と同様にワニスを調製し、固形分総量として8.0質量%のワニス(HB−TMdAV3と略す)を調製した。
【0272】
[実施例144]
実施例95で得られたHB−TAMA1.00gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、NMP9.00gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、10%NMP溶液を調製した。5mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TAMA1の10%NMP溶液0.50gを秤量し、次いで、架橋剤としてNK−オリゴ UA−53H(新中村化学工業(株)製)をCHNで希釈した20%溶液0.0750g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して30質量部)を加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液を0.0250g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)加え、さらに、CHN0.2353gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TAMA1V1と略す)を調製した。
【0273】
[実施例145]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53HからB−882N(三井ポリウレタン(株)製)に変更した以外は、実施例144と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TAMA1V2と略す)を調製した。
【0274】
[実施例146]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53Hからエポリード GT−401(ダイセル化学工業(株)製)に変更した以外は、実施例144と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TAMA1V3と略す)を調製した。
【0275】
[実施例147]
実施例132で得られたHB−TAMA40 1.00gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、NMP9.00gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、10%NMP溶液を調製した。5mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TAMA40の10%NMP溶液0.50gを秤量し、次いで、架橋剤としてNK−オリゴ UA−53H(新中村化学工業(株)製)をCHNで希釈した20%溶液0.0750g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して30質量部)を加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液を0.0250g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)加え、さらに、CHN0.2353gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TAMA2V1と略す)を調製した。
【0276】
[実施例148]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53HからB−882N(三井ポリウレタン(株)製)に変更した以外は、実施例147と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TAMA2V2と略す)を調製した。
【0277】
[実施例149]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53Hからエポリード GT−401(ダイセル化学工業(株)製)に変更した以外は、実施例147と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0%のワニス(HB−TAMA2V3と略す)を調製した。
【0278】
[実施例150]
実施例77で得られたHB−TCzA1.00gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、NMP9.00gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、10%NMP溶液を調製した。5mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TCzAの10%NMP溶液0.50gを秤量し、次いで、架橋剤としてNK−オリゴ UA−53H(新中村化学工業(株)製)をCHNで希釈した20%溶液0.0750g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して30質量部)を加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液0.0250g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)を加え、さらに、CHN0.2353gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TCzAV1と略す)を調製した。
【0279】
[実施例151]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53HからB−882N(三井ポリウレタン(株)製)に変更した以外は、実施例150と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TCzAV2と略す)を調製した。
【0280】
[実施例152]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53Hからエポリード GT−401(ダイセル化学工業(株)製)に変更した以外は、実施例150と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TCzAV3と略す)を調製した。
【0281】
[実施例153]
実施例83で得られたHB−TDA1.00gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、NMP9.00gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、10%NMP溶液を調製した。5mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TDAの10%NMP溶液0.50gを秤量し、次いで、架橋剤としてNK−オリゴ UA−53H(新中村化学工業(株)製)をCHNで希釈した20%溶液0.0750g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して30質量部)を加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液0.0250g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)を加え、さらに、CHN0.2353gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TDAV1と略す)を調製した。
【0282】
[実施例154]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53HからB−882N(三井ポリウレタン(株)製)に変更した以外は、実施例153と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TDAV2と略す)を調製した。
【0283】
[実施例155]
架橋剤をNK−オリゴ UA−53Hからエポリード GT−401(ダイセル化学工業(株)製)に変更した以外は、実施例153と同様にワニスを調製し、固形分総量8.0質量%のワニス(HB−TDAV3と略す)を調製した。
【0284】
<溶剤耐性試験>
[実施例156]
実施例135中で調製したHB−TSdAの10%NMP溶液をシリコン基板上にスピンコーターを用いて200nm狙いでスピンコートし、大気下、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行い、基板上の被膜としてHB−TSdA−Fを得た。
得られたHB−TSdA−Fの溶剤耐性試験を行った。HB−TSdA−Fの本焼成後の膜厚は198.5nmであり、これを初期膜厚とした。HB−TSdA−Fはプロピレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを7:3(質量比)で混合し、完全に均一としたシンナー(シンナー73と略す)に完全に浸漬させ、5分間放置した。次いで、エアーで乾燥後、200℃のホットプレートで1分間焼成し、残留溶剤を完全に蒸発させた後、膜厚を測定し、初期膜厚と比較した。
初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は2.5%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0285】
[実施例157]
実施例135で得られたHB−TSdAV1を用い、実施例156と同様に被膜(HB−TCzA−F1)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0286】
[実施例158]
実施例136で得られたHB−TSdAV2を用い、実施例156と同様に被膜(HB−TCzA−F2)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0287】
[実施例159]
実施例137で得られたHB−TSdAV3を用い、実施例156と同様に被膜(HB−TCzA−F3)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0288】
[実施例160]
実施例138中で調製したHB−TMAの10%NMP溶液をシリコン基板上にスピンコーターを用いて200nm狙いでスピンコートし、大気下、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行い、基板上の被膜としてHB−TMA−Fを得た。
得られたHB−TMA−Fの溶剤耐性試験を行った。HB−TMA−Fの本焼成後の膜厚は202.5nmであり、これを初期膜厚とした。HB−TMA−Fはシンナー73に完全に浸漬させ、5分間放置した。次いで、エアーで乾燥後、200℃のホットプレートで1分間焼成し、残留溶剤を完全に蒸発させた後、膜厚を測定し、初期膜厚と比較した。
初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は3.5%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0289】
[実施例161]
実施例138で得られたHB−TMAV1を用い、実施例160と同様に被膜(HB−TMA−F1)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0290】
[実施例162]
実施例139で得られたHB−TMAV2を用い、実施例160と同様に被膜(HB−TMA−F2)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0291】
[実施例163]
実施例140で得られたHB−TMAV3を用い、実施例160と同様に被膜(HB−TMA−F3)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0292】
[実施例164]
実施例141中で調製したHB−TMdAの10%NMP溶液をシリコン基板上にスピンコーターを用いて200nm狙いでスピンコートし、大気下、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行い、基板上の被膜としてHB−TMdA−Fを得た。
得られたHB−TMdA−Fの溶剤耐性試験を行った。HB−TMdA−Fの本焼成後の膜厚は196.6nmであり、これを初期膜厚とした。HB−TMdA−Fはシンナー73に完全に浸漬させ、5分間放置した。次いで、エアーで乾燥後、200℃のホットプレートで1分間焼成し、残留溶剤を完全に蒸発させた後、膜厚を測定し、初期膜厚と比較した。
初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は1.5%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0293】
[実施例165]
実施例141で得られたHB−TMdAV1を用い、実施例164と同様に被膜(HB−TMdA−F1)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0294】
[実施例166]
実施例142で得られたHB−TMdAV2を用い、実施例164と同様に被膜(HB−TMdA−F2)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0295】
[実施例167]
実施例143で得られたHB−TMdAV3を用い、実施例164と同様に被膜(HB−TMdA−F3)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0296】
[実施例168]
実施例144中で調製したHB−TAMA1の10%NMP溶液をシリコン基板上にスピンコーターを用いて200nm狙いでスピンコートし、大気下、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行い、基板上の被膜としてHB−TAMA1−Fを得た。
得られたHB−TAMA1−Fの溶剤耐性試験を行った。HB−TAMA1−Fの本焼成後の膜厚は198.4nmであり、これを初期膜厚とした。HB−TAMA1−Fはシンナー73に完全に浸漬させ、5分間放置した。次いで、エアーで乾燥後、200℃のホットプレートで1分間焼成し、残留溶剤を完全に蒸発させた後、膜厚を測定し、初期膜厚と比較した。
初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は5.6%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0297】
[実施例169]
実施例144で得られたHB−TAMA1V1を用い、実施例168と同様に被膜(HB−TAMA1−F1)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0298】
[実施例170]
実施例145で得られたHB−TAMA1V2を用い、実施例168と同様に被膜(HB−TAMA1−F2)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0299】
[実施例171]
実施例146で得られたHB−TAMA1V3を用い、実施例168と同様に被膜(HB−TAMA1−F3)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0300】
[実施例172]
実施例147中で調製したHB−TAMA2の10%NMP溶液をシリコン基板上にスピンコーターを用いて200nm狙いでスピンコートし、大気下、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行い、基板上の被膜としてHB−TAMA2−Fを得た。
得られたHB−TAMA2−Fの溶剤耐性試験を行った。HB−TAMA2−Fの本焼成後の膜厚は201.5nmであり、これを初期膜厚とした。HB−TAMA2−Fはシンナー73に完全に浸漬させ、5分間放置した。次いで、エアーで乾燥後、200℃のホットプレートで1分間焼成し、残留溶剤を完全に蒸発させた後、膜厚を測定し、初期膜厚と比較した。
初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は3.6%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0301】
[実施例173]
実施例147で得られたHB−TAMA2V1を用い、実施例172と同様に被膜(HB−TAMA2−F1)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0302】
[実施例174]
実施例148で得られたHB−TAMA2V2を用い、実施例172と同様に被膜(HB−TAMA2−F2)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0303】
[実施例175]
実施例149で得られたHB−TAMA2V3を用い、実施例172と同様に被膜(HB−TAMA2−F3)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0304】
[実施例176]
実施例150中で調製したHB−TCzAの10%NMP溶液をシリコン基板上にスピンコーターを用いて200nm狙いでスピンコートし、大気下、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行い、基板上の被膜としてHB−TCzA−Fを得た。
得られたHB−TCzA−Fの溶剤耐性試験を行った。HB−TCzA−Fの本焼成後の膜厚は197.4nmであり、これを初期膜厚とした。HB−TCzA−Fはシンナー73に完全に浸漬させ、5分間放置した。次いで、エアーで乾燥後、200℃のホットプレートで1分間焼成し、残留溶剤を完全に蒸発させた後、膜厚を測定し、初期膜厚と比較した。
初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は2.2%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
[実施例177]
実施例150で得られたHB−TCzAV1を用い、実施例176と同様に被膜(HB−TCzA−F1)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
[実施例178]
実施例151で得られたHB−TCzAV2を用い、実施例176と同様に被膜(HB−TCzA−F2)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
[実施例179]
実施例152で得られたHB−TCzAV3を用い、実施例176と同様に被膜(HB−TCzA−F3)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0305】
[実施例180]
実施例153中で調製したHB−TDAの10%NMP溶液をシリコン基板上にスピンコーターを用いて200nm狙いでスピンコートし、大気下、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行い、基板上の被膜としてHB−TDA−Fを得た。
得られたHB−TDA−Fの溶剤耐性試験を行った。HB−TDA−Fの本焼成後の膜厚は200.1nmであり、これを初期膜厚とした。HB−TDA−Fはシンナー73に完全に浸漬させ、5分間放置した。次いで、エアーで乾燥後、200℃のホットプレートで1分間焼成し、残留溶剤を完全に蒸発させた後、膜厚を測定し、初期膜厚と比較した
初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は4.2%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0306】
[実施例181]
実施例153で得られたHB−TDAV1を用い、実施例180と同様に被膜(HB−TDA−F1)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0307】
[実施例182]
実施例154で得られたHB−TDAV2を用い、実施例180と同様に被膜(HB−TDA−F2)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0308】
[実施例183]
実施例155で得られたHB−TDAV3を用い、実施例180と同様に被膜(HB−TDA−F3)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0309】
なお、溶剤耐性試験とは、本焼成後の被膜が溶剤への接触に対して、不溶化しているか否かを確認する試験である。溶剤耐性は被膜の上にレジストなどをリコートし、パターニングする後工程が加わった際に必要になる特性であり、溶剤耐性がない場合、リコートする際のレジスト溶剤に溶解してしまい、被膜とレジストとがミキシングされてしまって、本来の特性が発現しないことがある。溶剤耐性は100%であることが求められ、99.5%であっても、リコートする際にミキシングされ、基板面内の膜ムラや、表面のラフネスを増加させる問題となる。
上記に示したとおり、架橋剤を加えない樹脂は製膜した後の溶剤耐性が不良であるが、架橋剤を添加し、熱をかけて樹脂の結合性基と架橋させることで溶剤耐性を発現した。溶剤耐性の付与は目的とするデバイスのプロセスによって選択されれば良いが、一般的な半導体プロセスを経る場合、溶剤耐性が100%であることは一般的に求められる要求性能である。
【0310】
[実施例184]
実施例98で得られたHB−TmDA12 1.20gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、CHN8.80gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、12%CHN溶液を調製した。10mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TmDA12の12%CHN溶液5.00gを秤量し、次いで、架橋剤としてB−882N(三井ポリウレタン(株)製)をCHNで希釈した20%溶液0.60g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して20質量部)を加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液0.03g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)を加え、さらに、CHN0.5725gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量12.0質量%のワニス(HB−TmDA−H1と略す)を調製した。
【0311】
[実施例185]
実施例114で得られたHB−TmDA25 1.20gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、CHN8.80gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、12%CHN溶液を調製した。10mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TmDA25の12%CHN溶液5.00gを秤量し、次いで、架橋剤としてB−882N(三井ポリウレタン(株)製)をCHNで希釈した20%溶液0.60g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して20質量部)を加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液0.03g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)を加え、さらに、CHN0.5725gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量12.0質量%のワニス(HB−TmDA−I1と略す)を調製した。
【0312】
[実施例186]
実施例95で得られたHB−TAMA1.20gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、CHN8.80gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、12%CHN溶液を調製した。10mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TAMAの12%CHN溶液5.00gを秤量し、次いで、架橋剤としてB−882N(三井ポリウレタン(株)製)をCHNで希釈した20%溶液0.60g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して20質量部)を加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液0.03g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)を加え、さらに、CHN0.5725gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量12.0質量%のワニス(HB−TAMA−J1と略す)を調製した。
【0313】
[実施例187]
実施例132で得られたHB−TAMA40 1.20gを10mLの1つ口丸底フラスコに秤量し、CHN8.80gを加え、23℃で24時間撹拌し、完全に溶解させ、12%CHN溶液を調製した。10mLの1つ口丸底フラスコに、HB−TAMA40の12%CHN溶液5.00gを秤量し、次いで、架橋剤としてB−882N(三井ポリウレタン(株)製)をCHNで希釈した20%溶液0.60g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して20質量部)を加え、界面活性剤として、メガファック R−30(DIC(株)製)をCHNで希釈した1%溶液0.03g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.05質量部)を加え、さらに、CHN0.5725gを加えた。23℃で1時間撹拌し、溶液が均一になったのを確認し、固形分総量12.0質量%のワニス(HB−TAMA−K1と略す)を調製した。
【0314】
[実施例188]
実施例184で得たHB−TmDA−H1について、4インチのシリコン基板を用いてエッジビートリンス試験を行った。エッジビードリンスとは、基板にスピンコートで被膜を形成した後に、基板のエッジ部分の被膜をリンス液で除去する工程である。
HB−TmDA−H1を4インチのシリコン基板にポッティングし、(1)回転数:30rpm、加速度:5,000R/S、3秒(プレ回転)、(2)回転数:500rpm、加速度:5,000R/S、1秒(プレ回転)、(3)回転数:1,500rpm、加速度:5,000R/S、40秒(本回転)し、次いで連続して(4)回転数:1,000rpm、加速度:5,000R/S、30秒(エッジビードリンス)、(5)回転数:1,000rpm、加速度:5,000R/S、20秒(エッジ乾燥)し、エッジビードリンスできるかを試験した。リンス液はシンナー73を用いた。
処理後の基板について、エッジ部分を5倍の倍率で光学顕微鏡にて観察した。観察した結果を図94に示す。
【0315】
[実施例189]
実施例185で得たHB−TmDA−I1を用いた以外は、実施例188と同様にエッジビードリンス試験を行った。処理後の基板について、エッジ部分を5倍の倍率で光学顕微鏡にて観察した。観察した結果を図95に示す。
【0316】
[実施例190]
実施例186で得たHB−TAMA−J1を用い、リンス液にCHNを用いた以外は実施例188と同様にエッジビードリンス試験を行った。処理後の基板について、エッジ部分を5倍の倍率で光学顕微鏡にて観察した。観察した結果を図96に示す。
【0317】
[実施例191]
実施例187で得たHB−TAMA−K1を用い、リンス液にCHNを用いた以外は実施例188と同様にエッジビードリンス試験を行った。処理後の基板はエッジ部分を5倍の倍率で光学顕微鏡にて観察した。観察した結果を図97に示す。
【0318】
実施例188、実施例189、実施例190、実施例191を比較すると、アニリンを同時に入れて重合させたポリマーを用いている実施例189および191では、エッジビードリンスできることがわかった。この結果は、1級アミンを同時に加えて重合することでポリマーのコンフォメーションが変化し、溶解性が向上していることを示唆している。
デバイスを作製する際に、一般的にクリーントラックが用いられるが、クリーントラックはスピンコート、エッジビードリンス、バックリンス、焼成等の処理を一貫して行える装置である。この装置は基板の搬送を自動で行うが、基板を持つピンセット部分を汚染しないように、エッジビードリンスする必要がある。エッジビードリンスによって、エッジ部分の被膜を除去できないと、ピンセットが汚染され、パーティクルの原因となりデバイスの歩留まりを低下させる可能性がある。
エッジビードリンスの可否は目的とするデバイスのプロセスによって選択されれば良いが、一般的な半導体プロセスを経る場合、エッジビードリンスによって、基板エッジ部分の残膜を除去できることが一般的に求められる要求性能である。
【0319】
<架橋剤種の変更>
[実施例192]アミン末端を多く有する高分子化合物[27]の合成
窒素下、500mL四口フラスコにDMAc280mLを、塩化ナトリウムを混ぜた表浴で−10℃まで冷却し、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](43.08g、0.23mol、Aldrich社製)を加えて溶解した。その後、DMAc390gに溶解したm−フェニレンジアミン[26](75.80g、0.70mol)を滴下した。滴下後30分撹拌し、この反応溶液を、予め2,000mL四口フラスコにDMAc446gを加え、オイルバスで110℃に加熱してある槽へ、トランスファーチューブを用いて滴下し、1時間撹拌して重合した。その後、アニリン(21.73g、0.23mol)を加え、1時間撹拌して重合を停止した。室温まで放冷後、28%アンモニア水溶液(70.83g)とイオン交換水4,000gの混合溶液に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、THF600gとDMF600gに再溶解させ、イオン交換水3500gに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[27](以下、HB−TmDA20NH2と略す)70.0gを得た。
【0320】
[実施例193]架橋剤なし
空気下、10mLナスフラスコに実施例192で得られたHB−TmDA20NH2 1.0000gを加え、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEと略す)9.0000gを加え、ウェイブローターを用いて室温にて完全に溶解させ、HB−TmDA20NH2の10質量%PGME溶液を調製した。
【0321】
[実施例194]架橋剤B−882N
空気下、10mLナスフラスコに実施例192で得られたHB−TmDA20NH2 2.0000gを加え、PGME8.0000gを加え、ウェイブローターを用いて室温にて完全に溶解させ、HB−TmDA20NH2の20質量%PGME溶液を調製した。次いで、この20質量%PGME溶液1.0000gにPGME0.5083gを加え、その後、架橋剤としてブロックイソシアネート基を含有する化合物であるB−882N(三井ポリウレタン(株)製)の10質量%PGME溶液0.4000g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して20.0質量部)を加えた。さらに、界面活性剤として、商品名メガファック R−30(DIC(株)製)の1.0質量%PGME溶液0.1000g(ポリマーの固形分を100質量部としたのに対して0.5質量部)を加え、溶液が均一になるまで3時間撹拌した。撹拌後、溶質は完全に溶解し、薄黄色透明溶液として、固形分の総質量%が12質量%のポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV1と略す)を得た。
【0322】
[実施例195]架橋剤GT−401
架橋剤としてエポキシ基を含有する化合物であるエポリード GT−401(ダイセル化学工業(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV2と略す)を得た。
【0323】
[実施例196]架橋剤セロキサイド2021P
架橋剤としてエポキシ基を含有する化合物であるセロキサイド2021(ダイセル化学工業(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV3と略す)を得た。
【0324】
[実施例197]架橋剤EHPE3150
架橋剤としてエポキシ基を含有する化合物であるEHPE3150(ダイセル化学工業(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV4と略す)を得た。
【0325】
[実施例198]架橋剤CYMEL303
架橋剤としてメトキシメチレン基を含有する化合物であるCYMEL(登録商標)303(日本サイテックインダストリーズ(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV5と略す)を得た。
【0326】
[実施例199]架橋剤UA−53H
架橋剤としてアクリル基を含有する化合物であるUA−53H(新中村化学工業(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV6と略す)を得た。
【0327】
[実施例200]架橋剤B−830
架橋剤としてブロックイソシアネート基を含有する化合物であるB−830(三井ポリウレタン(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV7と略す)を得た。
【0328】
[実施例201]架橋剤B−5010
架橋剤としてブロックイソシアネート基を含有する化合物であるB−5010(三井ポリウレタン(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV8と略す)を得た。
【0329】
[実施例202]架橋剤B−7075
架橋剤としてブロックイソシアネート基を含有する化合物であるB−7075(三井ポリウレタン(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV9と略す)を得た。
【0330】
[実施例203]架橋剤KAYARAD DPHA
架橋剤としてアクリル基を含有する化合物であるKAYARAD(登録商標)DPHA(日本化薬(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV10と略す)を得た。
【0331】
[実施例204]架橋剤TM−BIP−A
架橋剤としてヒドロキシメチレン基を含有する化合物であるTM−BIP−A(旭有機材工業(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV11と略す)を得た。
【0332】
[実施例205]架橋剤OXT−221
架橋剤としてオキセタン骨格を含有する化合物であるOXT−221(東亜合成(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV12と略す)を得た。
【0333】
[実施例206]架橋剤OX−SQ−H
架橋剤としてオキセタン骨格を含有する化合物であるOX−SQ−H(東亜合成(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV13と略す)を得た。
【0334】
[実施例207]架橋剤OX−SC
架橋剤としてオキセタン骨格を含有する化合物であるOX−SC(東亜合成(株)製)を用いた以外は、実施例194と同様にワニスを調製し、ポリマーワニス(以下、HB−TmDA20NH2SV14と略す)を得た。
【0335】
<耐溶剤性試験>
[実施例208]
実施例193で得たHB−TmDA20NH2の10質量%PGME溶液をシリコン基板上にスピンコーターを用いて200nm狙いでスピンコートし、大気下、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行い、基板上の被膜としてHB−TmDA20NH2−F0を得た。
得られたHB−TmDA20NH2−F0の溶剤耐性試験を行った。HB−TmDA20NH2−F0の本焼成後の膜厚は198.4nmであり、これを初期膜厚とした。HB−TmDA20NH2−F0はシンナー73に完全に浸漬させ、5分間放置した。次いで、エアーで乾燥後、200℃のホットプレートで1分間焼成し、残留溶剤を完全に蒸発させた後、膜厚を測定し、初期膜厚と比較した。
初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は0.0%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0336】
[実施例209]
実施例194で得られたHB−TmDA20NH2SV1を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F1)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0337】
[実施例210]
実施例195で得られたHB−TmDA20NH2SV2を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F2)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0338】
[実施例211]
実施例196で得られたHB−TmDA20NH2SV3を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F3)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は90.5%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0339】
[実施例212]
実施例197で得られたHB−TmDA20NH2SV4を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F4)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0340】
[実施例213]
実施例198で得られたHB−TmDA20NH2SV5を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F5)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0341】
[実施例214]
実施例199で得られたHB−TmDA20NH2SV6を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F6)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0342】
[実施例215]
実施例200で得られたHB−TmDA20NH2SV7を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F7)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は99.9%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0343】
[実施例216]
実施例201で得られたHB−TmDA20NH2SV8を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F8)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は95.6%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0344】
[実施例217]
実施例202で得られたHB−TmDA20NH2SV9を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F9)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0345】
[実施例218]
実施例203で得られたHB−TmDA20NH2SV10を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F10)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0346】
[実施例219]
実施例204で得られたHB−TmDA20NH2SV11を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F11)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は100%となり、溶剤耐性が良好であることがわかった。
【0347】
[実施例220]
実施例205で得られたHB−TmDA20NH2SV12を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F12)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は12.6%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0348】
[実施例221]
実施例206で得られたHB−TmDA20NH2SV13を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F13)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は15.6%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0349】
[実施例222]
実施例207で得られたHB−TmDA20NH2SV14を用い、実施例208と同様に被膜(HB−TmDA20NH2−F14)を作製し、溶剤耐性試験を行った。初期膜厚を100%としたとき、シンナー73で浸漬後は14.5%となり、溶剤耐性が不良であることがわかった。
【0350】
実施例209〜222の結果から、架橋剤にエポキシ基、ブロックイソシアネート基、アクリル基、メトキシメチレン基、ヒドロキシメチレン基を含むことで溶剤耐性が100%となり、オキセタン骨格を有する架橋剤は溶剤耐性が不良で、架橋密度が低いことが示唆された。
これらの架橋剤の中では、300℃焼成などの高温プロセスを経る場合や、100万Lux以上の耐光性が求められる場合など、堅牢性および耐候性が必要なデバイスとして用いる際には、メトキシメチレン基およびヒドロキシメチレン基を有する架橋剤は着色し、透過率を低下させる可能性がある。これに対し、エポキシ基、ブロックイソシアネート基、アクリル基を有する架橋剤は架橋後の構造が熱および光に対して安定であり、堅牢性および耐候性が必要なデバイスとして用いる際に、被膜の透過率を劣化させないことから好ましい。
【0351】
<埋め込み性試験>
[実施例223]
実施例196で調製したHB−TmDA20NH2SV1を用い、埋め込み性試験を行った。埋め込み性試験に用いた構造物基板は材質がシリコンであり、深さが1.6μm、Via径が400nm若しくは750nmである。
HB−TmDA20NH2SV1を構造物基板に500nm狙いでスピンコート法にて製膜し、100℃のホットプレートで1分間の仮焼成を行い、次いで、大気下、300℃のホットプレートで5分間の本焼成を行った。
焼成後の製膜された構造物基板は、ダイアモンドペンを用いて基板の端に傷をつけた後、基板をヘキ開し、SEM観察を行った。400nmのVia部分を観察した画像を図98に、750nmのVia部分を観察した画像を図99に示す。
【0352】
[実施例224]
実施例195で調製したHB−TmDA20NH2SV2を用い、実施例223と同様に埋め込み性試験を行った。400nmのVia部分を観察した画像を図100に、750nmのVia部分を観察した画像を図101に示す。
【0353】
[実施例225]
実施例196で調製したHB−TmDA20NH2SV3を用い、実施例223と同様に埋め込み性試験を行った。400nmのVia部分を観察した画像を図102に、750nmのVia部分を観察した画像を図103に示す。
【0354】
[実施例226]
実施例197で調製したHB−TmDA20NH2SV4を用い、実施例223と同様に埋め込み性試験を行った。400nmのVia部分を観察した画像を図104に、750nmのVia部分を観察した画像を図105に示す。
【0355】
[実施例227]
実施例198で調製したHB−TmDA20NH2SV5を用い、実施例223と同様に埋め込み性試験を行った。400nmのVia部分を観察した画像を図106に、750nmのVia部分を観察した画像を図107に示す。
【0356】
[実施例228]
実施例199で調製したHB−TmDA20NH2SV6を用い、実施例223と同様に埋め込み性試験を行った。400nmのVia部分を観察した画像を図108に、750nmのVia部分を観察した画像を図109に示す。
【0357】
[実施例229]
実施例200で調製したHB−TmDA20NH2SV7を用い、実施例L1Bと同様に埋め込み性試験を行った。400nmのVia部分を観察した画像を図110に、750nmのVia部分を観察した画像を図111に示す。
【0358】
[実施例230]
実施例201で調製したHB−TmDA20NH2SV8を用い、実施例223と同様に埋め込み性試験を行った。400nmのVia部分を観察した画像を図112に、750nmのVia部分を観察した画像を図113に示す。
【0359】
[実施例231]
実施例202で調製したHB−TmDA20NH2SV9を用い、実施例223と同様に埋め込み性試験を行った。400nmのVia部分を観察した画像を図114に、750nmのVia部分を観察した画像を図115に示す。
【0360】
[実施例232]
実施例203で調製したHB−TmDA20NH2SV10を用い、実施例223と同様に埋め込み性試験を行った。400nmのVia部分を観察した画像を図116に、750nmのVia部分を観察した画像を図117に示す。
【0361】
図98〜117に示されるように、埋め込み性は架橋剤の種類によって傾向があり、架橋剤としてB−5010またはB−7075を用いると、埋め込み性が不良となることがわかった。
一方、架橋剤として、B−882N、GT−401、セロキサイド2021P、EHPE3150、Cymel303、UA−53H、B−830、DPHA、TM−BIP−Aを用いることで良好な埋め込み性が発現されることがわかった。
【0362】
本発明の重合体をフォトダイオード上の平坦化材とする場合、屈折率が1.7以上と高いことから、光導波路の原理でフォトダイオードまで光を誘導できるため、現行のVia径をより小さく設定することが可能となり、高繊細な固体撮像素子を作製することが可能になる。
また、目的とするデバイスに合わせて、要求性能を選択することができ、溶剤耐性、エッジビードリンスの可否、埋め込み性をコントロールすることが可能である。特に、固体撮像素子のフォトダイオード上の埋め込み材料として機能発現するためには、溶剤耐性が100%、エッジビードリンスが可能で、埋め込み性が良好であることが求められ、本発明の組成物を用いることで、それらの要求を満たすことができる。さらに、固体撮像素子のレンズとして機能発現するためには、溶剤耐性、エッジビードリンスが可能であることが求められ、本発明の組成物を用いることで、それらの要求を満たすことができる。
【0363】
[実施例233]赤外吸収スペクトルの測定
ジアミノアリール部分を変換した本発明の重合体の赤外吸収スペクトルを測定した。具体的には、実施例95で得られた高分子化合物[25](アミド系)、実施例86で得られた高分子化合物[21](ベンゾフェノン系)、実施例77で得られた高分子化合物[13](カルバゾール系)、実施例101で得られた高分子化合物[27](m−フェニレンジアミン系)、実施例1で得られた高分子化合物[3](ビスアミノフェニルフルオレン系)について赤外吸収スペクトルを測定した。得られた結果を図118に示し、NHピーク比と屈折率の関係を図119に示す。
なお、測定は、重合体を60℃で6時間、真空乾燥した直後に以下の条件で測定した。
測定装置:Thermo Fisher Scientific社製Nicolet 6700 1回反射ATR法(ダイヤモンドヘッド使用)
積算回数:64回
【0364】
[実施例234]アニリン同時仕込みによる高分子化合物[17]の合成
窒素下、200mL四口フラスコにp−フェニレンジアミン[16](4.52g、0.042mol、東京化成工業(株)製)、アニリン(1.10g、0.012mol)を加え、DMAc45mLに溶解し、オイルバスで100℃に加熱した。その後、DMAc55mLに溶解した2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[1](5.55g、0.03mol、東京化成工業(株)製)を加えて重合を開始した。
30分後、アニリン(7.33g、0.078mol)を加え、60分間撹拌して重合を停止した。室温まで放冷後、28%アンモニア水9.1gと純水400mLの混合水溶液中に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、DMF200mLに再溶解させ、純水800mLに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で120℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[17](以下、HB−TpDA600と略す)7.58gを得た。
HB−TpDA600の1H−NMRスペクトルの測定結果を図120に示す。得られたHB−TpDA600は式(1)で表される構造単位を有する化合物である。HB−TpDA600のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは66,000、多分散度Mw/Mnは60.4であった。
[GPC]
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:Shodex OHpak SB−803HQ+SB−804HQ
カラム温度:40℃
溶媒:DMF
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
【0365】
以上に示したように、本発明の重合体は、透明性と耐熱性に優れ、高い屈折率を有し、かつ、様々な溶媒への溶解性に優れているため、液晶表示素子の保護膜、TFTアレイ平坦化膜、カラーフィルター等のオーバーコート、スペーサー材、ELディスプレイの光取り出し向上膜、撮像素子の光取り入れ向上層、LED素子における光取り向上層等に応用可能である。
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